JP4237896B2 - 無機質繊維製耳付断熱材とその施工方法 - Google Patents

無機質繊維製耳付断熱材とその施工方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラスウール、ロックウール等の無機質繊維製であり、下面に厚い防湿フィルムが接着されている建造物用の耳付断熱材とその施工方法との改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の建造物用の断熱材としては、通商産業省・建設省告示第2号及び建設省告示第998号で指定されているI地域たる北海道と、2地域以下の他の都府県並びに同告示で示された「次世代基準」の1地域たる北海道と青森、岩手の両県の一部と、2地域以下の、北海道と青森、岩手の両県の一部とを除く他の都府県とでは、使用される断熱材とその取付構造が相違している。
【0003】
前記2地域以下の各地域で使用が認められている断熱材とその取付構造は、ガラスウール、ロックウール等の無機質繊維よりなる断熱材を透湿性の室外側外皮と防湿性の室内側外皮とで被覆したものを、その外皮を利用して建造物に固定する構造、施工方法である。
【0004】
しかし前記1地域に指定されている北海道および青森、岩手の両県の一部地域たる寒冷地では、気密性をより一層強化し、熱エネルギーの無駄を無くするため、前記外皮付き断熱材の施工後に、更に室内側から防湿層を形成する合成樹脂フィルムを張設する手段とか、あるいは防湿層の形成されていない裸の断熱材を建造物に固定したのち、別工程として室内側に厚さ0.1mm以上の厚さの合成樹脂フィルムを張設し、防湿層と気密層とを兼ねさせる手段とかを採ることが、前記告示により義務づけられている。
【0005】
前述の防湿層、気密層を別工程として形成する場合、防湿層のとぎれ部分の発生を防止するため、防湿層同士の重ね代を150mm以上としたり、間柱部分では100mm以上の重ね代をとって防湿層の接続を行っている。
【0006】
このため、前記1地域に指定された地域での建造作業では、断熱材の取り付け、固定作業とは別工程の防湿層の形成作業が必要となり、施工壁面等の防湿層形成のためには、防湿層を緊張状態に維持する作業、重ね代を所要寸法に維持して固定する作業等の工程の増加、この作業のための作業員の増加が必然的に発生し、人件費、材料費の増加、工期の長期化等を伴う問題を有している。
【0007】
他方、前記別工程としての防湿層の形成作業を省略できる断熱材は、現時点では存在しない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来技術の有する問題点に鑑み、本発明は、別工程としての、防湿層の張設の必要がなく、単位面積への、断熱材の嵌装、固定、防湿層の形成を1名の作業員で、一連の作業として行うことが可能であり、しかも前述の建設省告示第451号で指定されている1地域並びに同告示で示される「次世代基準」の1地域の断熱材の仕様に適合した構造の断熱材とその施工方法とを提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、請求項1の発明では、無機質繊維製の耳付断熱材を、無機質繊維製の断熱素材の上面、下面および各側面、各端面のうち、少なくとも上面が透湿性を有する外皮で被覆され、下面が防湿性を有する外皮で被覆されている断熱材の前記防湿性を有する外皮の外面に、該外面より広い面積で、かつ外側耳部を形成する厚さ100μm以上の厚さの合成樹脂フィルムを主材とする防湿フィルムが接着されているという構成とした。
【0010】
請求項2の発明では、無機質繊維製の耳付断熱材を、無機質繊維製の断熱素材の上面、下面および各側面、各端面のうち少なくとも上面と下面とが透湿性を有する外皮で被覆されている断熱材において、下面の透湿性の外皮の外面に、該外面より広い面積で、かつ外側耳部を形成する厚さ100μm以上の厚さの合成樹脂フィルムを主材とする防湿フィルムが接着されているという構成とした。
【0011】
請求項3の発明では、請求項1または請求項2の発明に、無機質繊維製の断熱材の上面、下面、各側面および長手方向両端面のうち、少なくとも上下両面を被覆する外皮が、下面の左右両側において、折り畳まれた内側耳部を形成しているという構成要件を付加した。
【0012】
請求項4の発明では、無機質繊維製の耳付断熱材を、無機質繊維製であり、6面が外皮で被覆されていない断熱素材の下面に、該下面より広い面積で、かつ外側耳部を形成する厚さ100μm以上の厚さの合成樹脂フィルムを主材とする防湿フィルムが接着されているという構成とした。
【0013】
請求項5の発明では、請求項1ないし請求項4のいずれかの発明に、防湿フィルムの一側の外側耳部が、断熱材の側面から150 mm 以上の張り出し幅とされ、他側の外側耳部が断熱材の側面から100〜250 mm の範囲の張り出し幅とされているという構成を付加した。
【0014】
請求項6の発明では、無機質繊維製の耳付断熱材を、無機質繊維製の断熱素材の上面および各側面、各端面のうち、少なくとも上面が透湿性を有する外皮で被覆され、該断熱素材の下面に、該下面の面積より広くかつ外側耳部を形成する厚さ100μm以上の厚さの合成樹脂フィルムを主材とする防湿フィルムが接着されており、防湿フィルムの一側の外側耳部が、断熱材の側面から150 mm 以上の張り出し幅とされ、他側の外側耳部が、断熱材の側面から100〜250 mm の範囲の張り出し幅とされているという構成とした
【0015】
請求項7の発明では、請求項1ないし請求項6のいずれかの発明に、断熱材の長手方向の両端の端面から防湿フィルムが、それぞれ250mm以下の張り出し幅で張り出された長手方向耳部を有するという構成を付加した。
【0016】
請求項8の発明では、請求項1ないし請求項7のいずれかの発明に、無機質繊維製の平均繊維径が4〜8μmの範囲から選定されているという構成を付加した。
【0017】
請求項9の発明では、請求項1、請求項2、請求項3並びに請求項5ないし請求項8のいずれかの発明に、直6面体の断熱素材の6面が外皮で被覆されているという構成を付加した。
【0019】
請求項10の発明では、無機質繊維製耳付断熱材の施工方法を、断熱素材の少なくとも上下両面を被覆する外皮が、下面の両側において折り畳まれて外側方へ張り出した内側耳部を形成しており、前記下面の外皮の外面に接着された厚さ100μm以上の厚さの合成樹脂フィルムを主材とする防湿フィルムが外側方へ張り出した外側耳部を形成している断熱材を、防湿フィルムを室内側として、室内側から室外側へ嵌装し、前記内側耳部により柱等の構造物へ固着したのち、前記外側耳部により、柱等の構造物への固着と、隣接する断熱材の防湿フィルムへの接着とを行うという構成とした。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明では、無機質繊維として、平均繊維径4.0〜8.0μm、好ましくは5.0〜6.5μmのガラスウール、ロックウール等が使用され、製品密度としては、耳付断熱材として10〜32Kg/m程度に調製され、断熱層の厚さは、用途により50〜300mmの範囲で選定される。
【0021】
また断熱素材を被覆する外皮たる防湿フィルムは厚さ10〜30μm、透湿フィルムは厚さ8〜15μmの範囲から選定される。この断熱素材を被覆する外皮たる防湿フィルム、透湿フィルムには規則的にあるいはランダムに穴明けしてもよく、この場合、フィルム厚さは9〜50μmの範囲から選定され、穴径は0.1mm〜5mmの範囲で選定される。
【0022】
また断熱素材を被覆している下面の防湿性を有する外皮の外面に接着されている厚さ100μm以上の防湿フィルムとしては、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフイン系ポリエステル等のごとき合成樹脂フィルムが使用でき、またこれ等にアルミニウム等の金属を蒸着したフィルムあるいは異種合成フィルムや金属箔を接着したもの等であってもよい。
【0023】
さらに、断熱素材を被覆している外皮と防湿フィルムとの接着は、ホットメルト接着、熱融着、超音波シール、溶剤型接着剤や粘着剤による接着等による接着が好ましい。
【0024】
無機質繊維製の断熱素材の下面に接着された防湿フィルムと柱、壁面等との固定は、ガンタッカー止め、ステープル止め、市販の粘着テープによる粘着等により行われ、隣接する断熱材の防湿フィルム同士の接着は、前記粘着テープ等により行われるが、前記粘着テープによる接着は1条または2条列で行うことが好ましい。
【0025】
図1は、請求項1、請求項3、請求項5および請求項8各発明を併せ適用した実施の一例を示しており、既述のごとく平均繊維径4.0〜8.0μmのガラスウールまたはロックウール、好ましくは平均繊維径5.0〜6.5μmのガラスウールまたはロックウールのごとき無機質繊維により、用途により、10〜32Kg/m3の範囲の密度で、50〜300mmの範囲内の厚さに成形された断熱素材1は、上面2、左右両側面3、4が断熱素材1内の湿気を外部へ放出できる透湿性を有するポリエチレン、ポリエスレル等の合成樹脂フィルムの外皮5で被覆されており、下面6は断熱素材1内への湿気の浸入を阻止できる防湿性を有するポリエチレン、ポリエステル等の合成樹脂フィルムの外皮7で被覆されて断熱材1Aに成形されている。
【0026】
前記外皮5の両端片8、9は外側へ折り返され、外皮7の両端片10、11の折り返しにより包被され、端片8、9、10、11は、溶着あるいはホットメルト接着剤による接着等で一体化されて内側耳部12、13を形成している。この内側耳部12、13の張り出し長さは、両側面3、4から25〜30mmとされている。
【0027】
この実施例では、ガラスウールの断熱素材1を密度10Kg/m、厚さ50mm、幅430mm、長さ2740mm、透湿性の外皮5として厚さ9μmのアルミ蒸着穴明きポリエチレンフィルム、防湿性を有する外皮7として厚さ15μmのポリエチレンフィルムを、それぞれ使用している。
【0028】
前記防湿性を有する外皮7の内側耳部12、13を含む全外面には、厚さ100μm以上の、既述のポリエチレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムを主材とする防湿フィルム14が、ホットメルト接着、熱融着、超音波シール、溶剤型接着剤や粘着剤による接着等の手段で接着されている。なお内側耳部12、13と防湿フィルム14とは、非接着とされている。
【0029】
前記防湿フィルム14の図1における左側の張り出した外側耳部15は断熱材1Aの右側面4からの張り出し幅WAが150mm以下とされ、図1において右側の張り出した外側耳部16は、断熱材1の右側面3からの張り出し幅WBが100〜250mmの範囲に選定されている。
【0030】
前記防湿フィルム14の厚さを100μm以上とした理由は、100μm以下の同種の合成樹脂フィルムでは透湿量が単位時間当り10g/m以上と多くなり、断熱効率の向上を図る点で好ましくないことに存する。
【0031】
防湿フィルム14の外側耳部15の張り出し幅WAが150mm以下とされているのは、柱の太さに対応してその長さが変更されるためであり、外側耳部16の張り出し幅WBが100〜250mmとされているのは、柱を介して隣接する隣りの断熱材の防湿フィルムとの重なり代を100〜150mm程度確保するためであり、この重なり代の長さは、柱の太さによって変化する。
【0032】
請求項2の発明は、図1に示す実施例の防湿性を有する下面の外皮7を同実施例の外皮5と同じく透湿性の外皮とし、この透湿性の下面の外皮の外面に、同実施例における防湿性フィルム14と同一防湿性フィルムを接着したものであり、既述の1地域以外の地域に使用される断熱材の防湿性の強化を図るものである。
【0033】
図2は、請求項1、請求項3および請求項8の各発明を併せ適用した実施の一例であり、図1に示す実施例の防湿性フィルム14に相当する防湿性フィルム17の左右の外側耳部18、19の各張り出し幅WCとWDが、共に150mmとされているほかは、図1に示す実施例と同一構成の断熱材である。
【0034】
図3は請求項6の発明の実施の一例を示しており、ガラスウール、ロックウール等の無機質繊維製の断熱素材20は、製品密度16Kg/m3 、厚さ50mm、幅425mm、長さ2740mmとされ上面にのみ透湿性を有する外皮21として、厚さ15μmのアルミ蒸着ポリエチレンフィルムが接着されており、下面には防湿フィルム22として厚さ100μmのポリエチレンフィルムが接着されており、断熱素材20の下面および左右の側面には、外皮が接着されていない。また防湿フィルム22の外側耳部23、24の張り出し幅WE、WFはいずれも150mmとされている。
【0035】
この実施例の場合は、所定の防湿性を保持しながら製品コストを低減させうる。
【0036】
図4は、請求項1および請求項8の両発明を適用した実施の別例を示しており、断熱素材1の上下両面を被覆する外皮5Aと7Aとの左右両側辺5B、7Bが断熱素材1の左右両側面に沿って折曲され、該両側面に接着された例である。
【0037】
図5は、請求項4および請求項8の両発明を適用した実施の一例を示しており断熱素材1の6面が全く外皮で被覆されることなく、ガラスウールあるいはロックウールが露出されたままとされ、その下面に厚さ100μm以上の防湿フィルム14が直接接着された例である。
【0038】
図6は請求項7の発明の第1の実施例を示しており断熱材1Aの長手方向両端の端面25(図示例では前端面のみを示し、後端面は省略)から、断熱材1Aの下面に接着されている既述の防湿フィルムと同様の防湿フィルム26が、それぞれ250mm以下の張り出し幅Wgで張り出された長手方向耳部27を有している。
【0039】
図7は、請求項7の発明の第2の実施例であり、図6に示す実施例に示す長手方向耳部27に相当する部分が断熱材1Aの幅方向における防湿フィルム28の耳部29、30と連続一体の長手方向耳部31として形成された例である。
【0040】
図8は、請求項7の発明の第3の実施例であり図7に示した実施例における長手方向耳部31に相当する長手方向耳部32に、断熱材1Aの左右両側部33、34の下部に形成されている耳部35、36の外縁と平行に易切断線37、38を形成したものである。図示例では易切断線が短いスリットの連続とされているがミシン穴等であってもよい。
【0041】
請求項7の発明に係る断熱材1Aは、何れの実施例においても、長手方向両端に張り出し幅が250mm以下の長手方向耳部27、31、32が形成されているので、栓間に断熱材1Aを設置したとき、耳部27、31、32により、敷桁あるいは床板等と断熱材の上下端の間の隙間を完全に閉塞できる。
【0042】
特に図7に示す実施例では、隣位の断熱材との間の隙間を完全に閉塞できるし、図8に示す実施例では建造物の構造に応じ、易切断線37、38を切開き、折曲したり、折り畳んで接着する等の手段を採りうる。
【0043】
図9は、請求項9の発明の実施の一例を示しており断熱素材の上下面、左右側面および長手方向の両端面の6面が透湿性を有する外皮39、40、41、42および防湿性を有する外皮43で被覆され外皮43の下面に防湿フィルム44が接着され、ガラスウールの短繊維の飛散による環境悪化を防止できるようにしたものである。
【0044】
請求項2の発明について、断熱素材の上下両面の外皮を透湿性の外皮とする旨を記述したが透湿性を有する外皮としては、図3に示す多数の小円孔を貫設したものの外に、多数の短直線スハット、ミシン目様の小孔等であってもよいことは勿論である。
【0045】
図10ないし図13は、上記断熱材の施工方法のそれぞれ異なる例を、各断熱材1A〜1およびその防湿フィルム等を省略図法で略示し、柱との固着及び防湿フィルム同士の接着等の構造のみを明示しており、図10、図11および図12は、図2に示される断熱材1A〜1Dを建造物の室内側から室外側へ向けて柱間に嵌装し、斜線部分で断熱材1A〜1Dに接着されている各防湿フィルム17A〜17Dを用いて柱45と、柱45の両側の各断熱材との固着、接着の状態を示しており、図10に示す例では、断熱材1Aの外側耳部18Aが、先端近傍でガンタッカー止めあるいはステープル止め46で柱45に固定され、断熱材1Bの外側耳部19Bが外側耳部18Aの外面に重ねられ、先端近傍で粘着テープ47で外側耳部18Aに接着されている。
【0046】
図11に示す例では防湿フィルム17Aの外側耳部18Aが柱45に粘着テープ48で接着された点で図10に示すものと相違している。
【0047】
図12に示す例では、断熱材1Cの防湿フィルム17Cの外側耳部18Cが、前記外側耳部18Aより張り出し長さが短いため、断熱材1C寄り部分でガンタッカー止め49で柱45に固定され、断熱材1Dの防湿フィルム17Dの外側耳部19Dが粘着テープ50で防湿フィルム17Cの外側耳部18Cに接着されると共に、粘着テープ51で柱45に接着されている。
【0048】
図13に示す例では図1に示される断熱材1Gと、図12に示す断熱材1C、1Dと同一構造の断熱材1E、1Fとを用いた施工方法を示しており、柱45Aと断熱材1E、1Fとの固定、接着構造は図12に示す構造と同一であるが、断熱材1Gと柱45Bと、断熱材1Fとの固定、接続構造が図10、図11および図12に示す例と相違している。
【0049】
の例では、断熱材1Fの防湿フィルム17Fの外側耳部19Fがガンタッカー止め52と粘着テープ53とで柱45Bに固定された部分に、断熱材1Gの防湿フィルム17Gの張り出し長さの長い外側耳部18Gが重ねられ、粘着テープ55で柱45Bに固定されている外側耳部19Fの外面に接着されると共に、外側耳部18Gの外端縁が粘着テープ54で、断熱材1Fの防湿フィルム17Fに接着されており、防湿性能が向上させられている。
【0050】
図14は、図7に示される断熱材1Aを柱56、57間に配設し、長手方向耳部31A、31Bを敷桁58、59にガンタッカー止め、ステープル止めで固定するかあるいは粘着テープで接着するようにした使用例であり、図では長手方向耳部31A、31Bが伸ばされて図示されているが、実際には敷桁に巻き付けるように固定される例である。
【0051】
図15は、同じく図7に示される断熱材1Aが柱60、61と天井材62と床材63とで形成された空間部分に配設され上下の長手方向耳部31C、31Dと断熱材1Aの両側縁から張り出している耳部とにより、天井材62、床材63および両側の柱60、61に、既述のごとく接着、固定される例である。
【0052】
図16は、請求項10の発明である施工方法の実施の一例を示しており、柱45C、45D間に請求項3の発明の図2に示される実施例たる断熱材1H、1Jを嵌装し、固定した例である。
【0053】
この実施例における断熱材1H、1Jは、内側耳部12A、13A、13Bが防湿フィルム17H、17Jと遊離させられており、他方防湿外皮7H、7Jは粘着テープあるいはホットメルト接着剤64等により断熱素材の下面に強固に接着されると共に、防湿フィルム17H、17Jは外側耳部19H、19J、19Kを除く部分が粘着テープあるいはホットメルト接着剤65等により防湿外皮7H、7Jに強固に接着されている。
【0054】
請求項10の発明では、断熱材1H、1Jを内側耳部12A、13A、13Bにおいて、柱45C、45D等にガンタッカー止め66等で固定したのち、防湿フィルム17H、17Jの外側耳部19H、19J、19Kをガンタッカー止め67等により柱45C、45Dに固定することにより建造物への断熱材の取付け、すなわち施工が完了する。
【0055】
請求項10の発明は、建造物への断熱材の固定と防湿フィルムの張設を作業員1名のみで行いうる点に特徴を有する。
【0056】
【発明の効果】
請求項1の発明では、少なくとも上面が透湿性の外皮で被覆され、下面が防湿性の外皮で被覆されている断熱材の、前記防湿性を有する外皮の外面に、該外面より広い面積で、かつ外側耳部を張り出し形成された厚さ100μm以上の防湿フィルムが接着されているので、この無機質繊維製耳付断熱材を、各外側耳部を利用して建造物に固着、接着するのみで、通商産業省・建設省告示第2号及び建設省告示第998号で指定される1地域あるいは同告示に示される「次世代基準」で指定される1地域における断熱材の施工が完結し、従来必要であった断熱材施工後の防湿層施工工程を省略でき、従って前記告示の条件を満たすための工程の省略、工期の短縮、工費の節減を図りうる効果を奏する。
【0057】
請求項2および請求項6の発明によると、少なくとも上面が透湿性の外皮で被覆されている断熱材の下面の全外面に該外面より広い面積で、かつ外側耳部を張り出し形成された厚さ100μm以上の防湿フィルムが接着されているので、前記建設省告示で指定された1地域以外に使用される断熱材の断熱効果を、工程の増加、工期の延長等を伴なわず、僅かな工費の増加のみで大幅に向上させうる効果を奏する。
【0058】
請求項3の発明によると、断熱素材の上面および下面を被覆する外皮で形成された内側耳部を、断熱材を柱等の構造物へ固定するため固定片として利用できるので、断熱材の固定を強固なものとすることができる効果を奏する。
【0059】
請求項4の発明によると、断熱素材への外皮の接着工程を省略でき、防湿フィルムの接着工程を要するのみであるため、生産効率の向上、使用材料費の節減が図れ、しかも断熱材としての防湿性は接着される厚さ100μm以上の合成樹脂フィルムを主材とする防湿フィルムで完全に維持できる効果を奏する。
【0060】
請求項5の発明によると、一側の耳部が断熱材側面から150mm以上の張り出し幅とされているので建造物の設計に対応させて、無駄の無い張り出し幅の耳部を形成できるし、他側の耳部の張り出し幅は100〜250mmの範囲とされているので、柱の幅の大小あるいは隣位の断熱材との十分な重なり代の確保による断熱効果の向上を図ることができる効果を奏する。
【0061】
請求項7の発明によると、断熱材の長手方向両端の端面から張り出し幅250mm以下の長手方向耳部が形成されているので、柱と天井材との連続部、柱と床材との連続部あるいは部屋の隅部、天井材と敷桁との連続部等において、断熱材と建造物との間に隙間を形成することなく断熱材を組み付けることができる効果があり、更には長手方向耳部の張り出し幅を、断熱効果の維持に必要な最長寸法である250mm以下の必要な寸法としてあり、250mm以上の張り出し幅としても断熱効果の向上は認められないので、防湿フィルムの使用量を必要最小限に留めうる効果も有している。
【0062】
請求項8の発明では、断熱効果の発現が最も大きい平均繊維径4〜8μmの無機質繊維の断熱素材に、請求項1ないし請求項5のいずれかの断熱材の構造的特長を付加したので、無機質繊維製耳付断熱材の断熱効果を最大限に発揮させうる効果を奏する。
【0063】
請求項9の発明によると、既述の請求項1ないし請求項6の各発明の実施に当り、ガラスウールの細断条の飛散による作業環境の悪化を完全に防止できるので、作業効率の向上と工期の短縮を図る面で有意義な効果を奏する。
【0064】
請求項10の発明によると、断熱材の装着、固定、防湿フィルムの張設、接着を、1人の作業員により、個々の断熱材ごとに順次行うことができ、最終的には、従来方法で必要であった、断熱材の嵌装、固定作業とは別作業として行う必要のあった、防湿フィルムの緊張状態での張設、隙間なしの固定、接着を行う工程と、この工程のために必要であった複数の作業員を省略でき、作業の簡略化、工程の短縮、工費の節減等を実現しうる効果を奏し、更に、断熱材の建造物に対する固定を著しく強固にしうる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 請求項1、請求項3、請求項5および請求項8の発明を併せ適用した実施の一例の一部を省略して示した略示斜面図である。
【図2】 請求項1、請求項3および請求項8の発明を併せ適用した実施の一例の一部を省略して示した略示斜面図である。
【図3】 請求項6の発明の実施の一例の一部を省略して示した略示斜面図である。
【図4】 請求項1および請求項8の両発明の実施の一例の一部を省略して示した略字斜面図である。
【図5】 請求項4および請求項8の両発明の実施の一例の一部を省略して示した略示斜面図である。
【図6】 請求項7の発明の第1の実施例の一部を省略して示した略示斜面図である。
【図7】 請求項7の発明の第2の実施例の一部を省略して示した略示斜面図である。
【図8】 請求項7の発明の第3の実施例の一部を省略して示した略示斜面図である。
【図9】 請求項9の発明の実施の一例の一部を省略して示した略示斜面図である。
【図10】 断熱材と柱との固着構造の第1の例の略示横断面図である。
【図11】 断熱材と柱との固着構造の第2の例の略示横断面図である。
【図12】 断熱材と柱との固着構造の第3の例の略示横断面図である。
【図13】 断熱材と柱との固着構造の第4の例の略示横断面図である。
【図14】 図7に示す断熱材と柱、敷桁との固着構造の一例の略示正面図である。
【図15】 図7に示す断熱材と柱、床材、天井材との固着構造の一例を背面から示した略示斜面図である。
【図16】 請求項3の発明たる断熱材と柱との固着構造の実施の一例の略示横断面図である。
【符号の説明】
1 断熱素材
1A 断熱材
2 上面
3、4 側面
5 透湿性の外皮
6 下面
7、14、28 防湿性の外皮
12、13 内側耳部
14 防湿フィルム
15、16、18、19、23、24 外側耳部
25 端面
27、31、32 長手方向耳部
45 柱
WA、WB、WC、WD 張り出し幅

Claims (10)

  1. 無機質繊維製の断熱素材の上面、下面、各側面および各端面のうち、少なくとも上面が透湿性を有する外皮で被覆され、下面が防湿性を有する外皮で被覆されている断熱材において、前記防湿性を有する外皮の外面に、該外面より広い面積で、かつ外側耳部を形成する厚さ100μm以上の厚さの合成樹脂フィルムを主材とする防湿フィルムが接着されている無機質繊維製耳付断熱材。
  2. 無機質繊維製の断熱素材の上面、下面、各側面および各端面のうち少なくとも上面と下面とが透湿性を有する外皮で被覆されている断熱材において、下面の透湿性を有する外皮の外面に、該外面より広い面積で、かつ外側耳部を形成する厚さ100μm以上の厚さの合成樹脂フィルムを主材とする防湿フィルムが接着されている無機質繊維製耳付断熱材。
  3. 無機質繊維製の断熱素材の上面、下面、各側面および長手方向両端面のうち、少なくとも上下両面を被覆する外皮が、下面の左右両側において、折り畳まれた内側耳部を形成している請求項1または請求項2記載の無機質繊維製耳付断熱材。
  4. 無機質繊維製であり、6面が外皮で被覆されていない断熱素材の下面に、該下面より広い面積で、かつ外側耳部を形成する厚さ100μm以上の厚さの合成樹脂フィルムを主材とする防湿フィルムが接着されている無機質繊維製耳付断熱材。
  5. 防湿フィルムの一側の外側耳部が、断熱材の側面から150mm以上の張り出し幅とされ、他側の外側耳部が、断熱材の側面から100〜250mmの範囲の張り出し幅とされている請求項1ないし請求項のいずれかに記載の無機質繊維製耳付断熱材。
  6. 無機質繊維製の断熱素材の上面、各側面および各端面のうち、少なくとも上面が透湿性を有する外皮で被覆され、断熱性素材の下面に、該下面の面積より広く、かつ外側耳部を形成する厚さ100μm以上の厚さの合成樹脂フィルムを主材とする防湿フィルムが接着されており、防湿フィルムの一側の外側耳部が、断熱材の側面から150 mm 以上の張り出し幅とされ、他側の外側耳部が、断熱材の側面から100〜250 mm の範囲の張り出し幅とされている無機質繊維製耳付断熱材。
  7. 断熱材の長手方向両端の端面から、防湿フィルムが、それぞれ250mm以下の張り出し幅で張り出された長手方向外側耳部を有する請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の無機質繊維製耳付断熱材。
  8. 無機質繊維製の平均繊維径が4〜8μmの範囲から選定されている請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の無機質繊維製耳付断熱材。
  9. 直6面体の断熱素材の6面が外皮で被覆されている請求項1、請求項2、請求項3、請求項5、請求項6、請求項7または請求項8のいずれかに記載の無機質繊維製耳付断熱材。
  10. 断熱素材の少なくとも上下両面を被覆する外皮が、下面の両側において折り畳まれて外側方へ張り出した内側耳部を形成しており、前記下面の外皮の外面に接着された厚さ100μm以上の厚さの合成樹脂フィルムを主材とする防湿フィルムが外側方へ張り出した外側耳部を形成している断熱材を、防湿フィルムを室内側として、室内側から室外側へ嵌装し、前記内側耳部により柱等の構造物へ固着したのち、前記外側耳部により、柱等の構造物への固着と、隣接する断熱材の防湿フィルムへの接着とを行う無機質繊維製耳付断熱材の施工方法。
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