従来の色変換においては、密度階調表現法にて各色インクの明度を精度良く制御するのが困難であった。すなわち、プリンタ等で印刷を実行する際にはCMYKlclm等の各インク色について単位面積当たりに記録するドットカウントを調整して各色の階調表現をしている。しかし、ドットカウントの単位変動に対する明度変動は高明度域と低明度域とで異なり、双方の明度域で同じ分解能の階調値を使用すると高明度域の色を精度良く制御するのが困難であった。
より具体的には、印刷物の明度は印刷媒体の色と記録されたインク滴との双方に影響されるが、高明度すなわち低インク記録率でインク滴の量AをA+1に増加させた場合と低明度すなわち高インク記録率でインク滴の量BをB+1に増加させた場合とでは、前者の方が明度に対して大きな影響を与える。(A+1)/Aと(B+1)/Bとでは前者の方が大きいからである。また、高インク記録率ではインク滴同士が重なった部分が増加するので、この意味からも明度に与える影響は少なくなる。
かかる事情により、高明度域では低明度域と比較してより詳細にインク量を制御しなければ相対的に精度が悪くなってしまう。従来はインク量を特定するインク量の階調値を256階調とし、全明度域で1階調変化に相当するインク量変化を同じ(すなわち略線形の対応関係)にしていた。また、上記LUTではこの階調値の中から代表的な参照点を規定しており、任意の色についてはこの参照点を利用した補間演算によってインク量階調値を算出する。従って、高明度域では低明度域と比較して分解能の低いデータを利用していることに加え、さらに補間演算によって相対的に大きな誤差を含んでしまう。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、高明度域で高精度に色変換する印刷制御方法および印刷制御装置の提供を目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では所定の値域内に存在する整数値として入力階調値を定義し、さらに高明度域に相当する入力階調値であるほどそれより低明度域に相当する入力階調値より当該入力階調値の単位変化に対応するインク記録率の変化が小さくなるよう定義する。すなわち、高明度域に相当する入力階調値と低明度域に相当する入力階調値とでは階調値の単位変化が意味するインク記録率の変化量が異なっており、高明度域の方がより細かいインク記録率の変化を表現することができる。
例えば、入力階調値の単位変化を整数値の最小変化量”1”とした場合、高明度域で入力階調値が”1”変化したときにインク記録率がm%以下の変化であり、低明度域で入力階調値が”1”変化したときにインク記録率がm%より大きな変化をするように定義することによって実現可能である。以上のような定義により、上記入力階調値を所定の値域内に存在する整数値として定義していても、高明度域で高精度にインク記録率を定義することができ、この定義に基づいて上記対応関係定義データを作成することによって高明度でも高精度に色変換可能になる。
すなわち、コンピュータによって階調値を定義する場合、その値域が限定(例えば8bit、256階調等)され、値は整数で定義するのが一般的である。この定義において、従来のように階調値の単位変化に対応するインク記録率の変化を全明度域で略一定に定義すれば、上述のように高明度域では低明度域と比較して相対的に精度が悪くなってしまう。しかし、本発明のように入力階調値を定義することにより、入力階調値の値域を増やすことなく、高明度で高精度にインク記録率を定義することができる。
上述の定義により、入力階調値とインク記録率とが対応づけられると、インク色毎に入力階調値を規定することによって印刷される色を特定することが可能になる。一方、上記他の画像機器で使用する各色の色成分値(例えば、RGB各色の色成分値やCMYK各色の色成分値等)を組み合わせると上記他の画像機器における色が特定される。そこで、入力階調値の組み合わせと上記色成分値との組み合わせを対応づけることにより、両者を色変換するテーブルデータやプロファイルを作成することが可能になる。
尚、上記入力階調値はハーフトーン処理モジュールに対する入力値であり、ハーフトーン処理モジュールは入力階調値によって定義されるインク記録率に従ってドットマトリクス状の画素毎に記録するドットの有無を決定するモジュールである。従って、入力階調値を上述のように定義するとともにハーフトーン処理モジュールの出力値に従って印刷を行うことにより、高明度でインク記録率を細かく制御しながら印刷を実行することが可能になる。
さらに、上述の定義によって作成された対応関係定義データを参照して上記他の画像機器での色成分値を色変換することにより、高明度の色を高精度に色変換することが可能になる。また、インク記録率は、単位面積当たりに記録されるドットの面積あるいはドットカウント数に相当し、単位面積当たりにドットが記録されていない状態を0%,単位面積当たりに最大数のドットが記録されている状態を100%としている。
同様の定義における対応関係定義データの作成方法として、パッチデータの測色を利用することも可能である。例えば、印刷装置で出力した複数のパッチを測色し、測色結果から他の画像機器で使用する各色の色成分値と印刷装置で使用する各インク色毎のインク量に対応する階調値との対応関係を規定した対応関係定義データを作成可能である。このとき、上記インク量に対応する階調値の全階調数より少数の参照値を各インク色毎に抽出して組み合わせ、上記複数のパッチを特定したパッチデータを生成する。そして、パッチデータに対してハーフトーン処理を実行して上記複数のパッチを印刷し、印刷された複数のパッチを測色して得られる測色データに基づいて上記対応関係定義データを生成する。
この対応関係定義データにおいて、上記インク量に対応する階調値を上記入力階調値と同様に定義する。すなわち、所定の値域内に存在する整数値かつ高明度域に相当する階調値であるほどそれより低明度域に相当する階調値より当該階調値の単位変化に対応するインク記録率の変化が小さくなるように定義する。また、ハーフトーン処理を行うにあたり、階調値の定義に従って上記パッチデータの参照値に相当するインク量を解釈して上記ハーフトーン画像データを生成する。
かかる構成により、高明度の色を指定したパッチについて色の微妙な変化を忠実に反映しながら印刷することができ、このパッチを測色して得られる測色データは高明度のパッチについても高精度に色を特定している。従って、この測色データに基づいて上記他の画像機器で使用する各色の色成分値と印刷装置で使用する各インク色毎のインク量に対応する階調値との対応関係を規定することにより、高精度に色変換可能な対応関係定義データを作成することが可能になる。
尚、パッチデータは測色対象となるパッチ数だけ作成するが、インク量に対応する階調値の全階調数に相当する参照値を抽出してパッチデータとすることは実質上不可能である。すなわち、現在最も一般的な階調数である256階調を想定すると、全階調数に相当する参照値を抽出してパッチデータにするためには256x個(xはインク色数)ものパッチデータが必要であり、この膨大な数のパッチを測色する作業は実質的に不可能である。そこで、各インクについて全階調数より少数の参照値を抽出し、例えば、1000個のパッチデータを作成することとしている。
また、ハーフトーン処理においては、上記階調値の定義に従ってインクドットの有無を決定し、ドットの有無を示すハーフトーン画像データを取得することができればよい。すなわち、高明度域に相当する階調値と低明度域に相当する階調値では階調値の単位変化に対するインク記録率の変化が異なり、この定義において各階調値が意味するインク記録率を解釈してそのインク記録率となるようにドットの有無を決定する。このハーフトーン画像データにおいては、ドットの有無を特定していればよく、ドット有りの場合にさらにそのドットの大きさ(インクの量)に差を持たせても良い。
尚、上述のように、高明度でのインク記録率の単位変化に対する明度の変化は低明度でのインク記録率の単位変化に対する明度の変化より大きい。このため、一般的なインクでは、各インク色で表現可能な最低明度を含む所定の明度域ではインク記録率を変化させても明度がほとんど変化しない。そこで、このようなインク色で表現可能な最低明度を含む所定の明度域を除外して上記インク量に対応する階調値を定義することも可能である。
すなわち、インク記録率の値域の一部に全階調値を割り当てて上記インク量に対応する階調値を定義する。これにより、印刷媒体上で実質的な明度変化を表現できないようなインク記録率を除外し、実質的に明度が変化し得るインク量にのみ階調値を割り当てることができる。従って、限られた容量でより有効にインク量を階調表現することが可能であり、より微妙な階調変化を表現することが可能になる。
ここで、インク記録率の値域は、印刷媒体にインクを記録しない状態を最小のインク記録率とし、印刷媒体にインクを最大限記録した状態を最大のインク記録率として定義される。尚、簡略のために、インク記録率の値域の一部として全インク色について共通の値域を採用しても良いが、各インク毎に明度の変化率が異なることに鑑みて各インク毎に異なる値域を上記インク記録率の値域の一部として採用しても良い。
さらに、本発明においては、高明度域の分解能が低明度域の分解能より相対的に高くなった対応関係定義データを作成することができればよい。このために、対応関係定義データを作成する段階でインク量と階調値の大小とを略線形に対応させた第1階調値データに対して補正を行っても良い。すなわち、高明度域に相当する階調値であるほどそれより低明度域に相当する階調値より大きな増加率で補正すれば、高明度域であるほどインク記録率の単位変化に対応するインク値データの階調数を増加させることができる。
また、当該第1階調値データに対して階調値が小さな値であるほど補正後の増加率が大きくなるようにγ補正を行ってもよく、この補正によれば第1階調値データが小さな値であるほど補正後のインク値データにおける階調数を増加することができる。かかる構成においては、インク値データが小さいほど高明度を示すこととし、このインク値で特定されるインク量によって印刷した結果を測色することによって対応関係定義データを作成すれば、高明度域の分解能が低明度域の分解能より相対的に高くなった対応関係定義データを作成することができる。
いずれにしても、特定の記憶容量では表現可能な階調数が限られているので、第1階調値データに対して補正を行って、インク値データの大小とインク量とを非線形に対応させる。これにより、階調表現に必要な記憶容量を維持しつつもインク値の相対的な分解能を明度域毎に変更することができ、この仕組みを対応関係定義データに組み込むことにより、高明度域で高精度の色変換を実施することが可能になる。
例えば、8bitの記憶容量では256階調を表現することができるが、インク記録率の0〜100%を0〜256の各階調に対して均等に割り当てると分解能は均一であるところ、n%のインク記録率(nは高明度域の一例)に対して256*n/100ではなくそれより大きな値を対応させる。5%のインク記録率に対して13(≒256*5/100)ではなく40,10%のインク記録率に対して26(≒256*10/100)ではなく61を対応させる場合を例にすると、5〜10%のインク記録率を13階調ではなく21階調で表現することができる。
8bitで256階調を表現する場合、各階調値は整数値であり、小数点以下は切り捨てあるいは四捨五入されることになる。従って、γ補正をすることで高明度域のインク値によってインク記録率の間隔をより多階調で表現することは、高明度域での分解能を低明度域と比較して相対的に向上させたものであると言える。また、インク記録率の全値域を等分割して階調表現した従来のインク量階調値と異なる意味のインク値を利用したものであると言える。
本発明は、この考え方を対応関係定義データの作成時に適用したものであり、この結果、インク量の変化に対する明度の変化率が大きな高明度域において非常に高い精度で色変換することが可能になる。対応関係定義データはインク値と上記他の画像機器で使用する各色の色成分値との対応関係を規定したデータであり、複数の参照点について両者の対応関係を記述したテーブルデータや所定の関数にて両者の関係を特定するプロファイルデータ等である。
いずれにしても対応関係定義データを作成する際には、実際に印刷した複数のパッチを測色して他の画像機器で使用する各色成分値と対応づけており、上述のように分解能が向上されたインク値で測色対象パッチのインク量を特定する。すなわち、複数の測色対象パッチのインク量を特定するインク値が上記と同様に高明度域では低明度域より高い増加率で補正されたインク値であり、このインク値に従って印刷を実行する。
印刷を実行する際には一般にハーフトーン処理を行って単位面積たりのドットカウントを決定するので、このハーフトーン処理の際に上記分解能が向上された後のインク値が意味するインク量を解釈して印刷を実行する。この結果印刷されたパッチを測色して対応関係定義データを作成すれば、この対応関係定義データを参照して色変換を行い、色変換後のインク値について上記と同様のハーフトーン処理を行うことによって、高精度に色変換することが可能になる。すなわち、分解能が向上したインク値の体系を利用することで高明度域の色を精度良く表現可能になり、また、高明度域で精度良く色を特定した参照点を参照した補間演算等を実施することにより高精度に色変換を行うことができる。
本発明では、測色対象となるインク値を決定する際に分版処理を行っても良い。すなわち、印刷装置においてはCMYの3色より多数のインク色、例えば6色や7色のインクを利用して印刷を実行可能に構成する場合が多く、6次元や7次元空間中で測色対象を特定するのは困難である。6色や7色のインクを利用する場合、シアンとライトシアン等代替的に利用されるインクも含み、6色や7色の異なる組み合わせであってもほとんど同じ色になる場合も多いからである。
また、6次元空間中での座標値を3次元空間中の座標値に一義的に変換するマトリクス等、所定の変換式を作成するのは困難であるが、3次元空間中での座標値を6次元空間中の座標値に一義的に変換する変換式を作成するのは容易である。従って、CMYの3色によって測色対象となる色を特定しておき、特定の変換式によって当該3色の組み合わせを6色あるいは7色の組み合わせに変換する分版を行うことは非常に容易である。
そこで、測色対象をまずCMY値で特定し、分版を行ってCMY値を第1階調値データに変換し、さらにこの第1階調値データをγ補正すれば、印刷対象のパッチのインク値を容易に特定することができる。尚、分版処理を行う際の元の色がCMY各色の組み合わせで表現されていることにより任意の色を表現することができて好ましいが、むろん、印刷装置で利用する各色インクの組み合わせに容易に変換できる限りにおいて他の表色系(例えばRGB表色系)を採用して第1階調値データとし、第1階調値データをインク値に変換しても良い。
むろん、各色のインク量を特定する複数のインク値データであって、高明度域の分解能が低明度域の分解能より高いインク値データが予め定義されていれば、このデータを取得して印刷を行えばよい。すなわち、測色対象のインク量を特定するインク値データにおいて高明度の分解能が向上していればよく、分解能が向上しているデータであることを加味してハーフトーン処理を行い、印刷を行うことで、上記高精度に色変換可能な対応関係定義データを作成することができる。
測色に際しては印刷結果の色彩値を取得することができれば良く、Lab色空間(L,a,bのそれぞれには通常*が付されるが本明細書では簡単のため省略する。以下同じ。)等の機器非依存色空間での座標を示す測色データが得られればよい。対応関係定義データを作成する際には当該機器非依存色空間での座標を示す測色データと他の画像機器で使用される色データが示す色の当該機器非依存色空間での座標とを利用すればよい。
すなわち、機器非依存色空間での座標が複数の色について判明していれば、補間演算等によって任意の色のインク値および他の画像機器で使用される色データを算出することができるので、任意の色について両者の対応関係を算出して対応関係定義データを規定することができる。他の画像機器で使用される色データについては機器非依存色空間での座標を取得する必要があるので、所定の式にて機器非依存色空間での座標を算出可能なsRGB規格のデータであると好ましい。むろん、他の画像機器での表示色を測色しても良い。
また、本発明において印刷を実行する際にはハーフトーン処理の際に上記分解能が向上された後のインク値が意味するインク量を解釈して印刷を実行することができればよい。このための具体的構成としては逆補正と逆補正の結果得られる小数以下に相当する偏差を反映したハーフトーン処理を採用可能である。すなわち、上記補正に対する逆補正を行う。この結果、逆補正後のインク値は上述のようにインク記録率の0〜100%を0〜256の各階調に対して均等に割り当てた状態と同様になり、各階調値からインク記録率を把握してインク量を決定することが可能になる。
但し、ここでは逆補正した場合の小数以下に相当する偏差を反映してハーフトーン処理を行うので、高明度で高分解能の状況は維持される。むろん、逆補正した場合の小数以下に相当する偏差を無限に考慮することはできないが、ハーフトーン処理時の能力に応じて小数以下の所定桁数の値まで考慮すれば、高精度に色を特定可能である。また、ここでは逆補正した場合の小数以下に相当する偏差を考慮することができれば良く、実際に逆補正を行う構成の他、上記補正後のインク値データのそれぞれについて対応するインク記録率をより高ビット数で特定した値を予め記憶しておいても良い。
γ補正は所定の値域の数値を入力し、当該入力値を所定の関数によって変換した結果を出力する補正であり、γカーブを与える関数を利用している。このγカーブによればγの値の調整のみで入力値が小さな値であるほど大きな値に補正して出力する補正を容易に行うことができ、また、その補正度合いも容易に調整できて便利である。γ補正を実際に行う際にはγカーブを与える関数に対して入力値を代入しても良いし、予めγ補正の結果をテーブル化したデータを参照しても良い。
むろん、このようにγ補正等の補正を行う構成において、上述のように実質的に明度が変化し得るインク量にのみ階調値を割り当てる構成を採用することも可能である。すなわち、上記第1階調値データにて最低明度を示す階調値が印刷媒体上に記録可能な最大のインク記録率に相当するとき、当該最低明度を示す階調値を含む所定の階調値域を除外すると、低明度よりの一部を階調値域から除外することになる。
そして、残りの階調値域が上記インク値データの全階調値域と合致するように補正を行うと、残りの階調値域、すなわち、実質的に変化する明度にインク値データの全階調値を割り当てることが可能になる。従って、限られた容量でより有効にインク量を階調表現することが可能であり、より微妙な階調変化を表現することが可能になる。
また、本発明は上述の対応関係定義データを参照して色変換を行って印刷を行う印刷制御装置としても機能する。すなわち、この対応関係定義データを参照することにより、高明度の色について高精度に色変換を行いつつ印刷を実行することができ、高明度域でのトーンジャンプを防止することができる。
また、このような対応関係定義データ作成装置は単独で実施される場合もあるし、ある機器に組み込まれた状態で他の装置、方法とともに実施されることもあるなど、発明の思想としてはこれに限らず、各種の態様を含むものであって、ソフトウェアであったりハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。
発明の思想の具現化例としてソフトウェアとなる場合には、かかるソフトウェアにおいても当然に発明として機能し、利用される。また、その記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。さらに、一次複製品、二次複製品などの複製段階については全く問う余地無く同等である。
その他、供給方法として通信回線を利用して行なう場合でも本発明が利用されていることにはかわりない。さらに、一部がソフトウェアであって、一部がハードウェアで実現されている場合においても発明の思想において全く異なるものではなく、一部を記録媒体上に記憶しておいて必要に応じて適宜読み込まれるような形態のものとしてあってもよい。また、必ずしも全部の機能を当該プログラム自身で実現するのではなく、外部のプログラムなどに実現させるようなものであっても良い。その場合であっても、各機能をコンピュータに実現させ得るものであればよいからである。
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)色変換テーブル作成の概要:
(2)色変換テーブル作成のための装置および処理:
(3)本発明によって作成したLUTを利用した印刷:
(4)他の実施形態:
(1)色変換テーブル作成の概要:
図1は、本発明にかかる色変換テーブル作成方法の工程を概略的に説明する説明図である。この工程は多くの演算処理を必要とするのでコンピュータを利用するのが好ましい。また、実際に印刷を行うので、作成後の色変換テーブルを利用して印刷を行うプリンタにて印刷を行うのが好ましく、後述するハーフトーン処理(HT)としても当該プリンタで採用しているハーフトーン処理と同じアルゴリズムであることが必要とされる。
本実施形態における色変換テーブルは、173個の参照点についてRGBデータとCMYKlclmデータとの対応関係を定義したテーブルであり、これらの参照点を参照して補間処理を実施することによって任意の色についてRGBデータとCMYKlclmデータとを対応づけることができる。尚、本実施形態においてRGBデータは、コンピュータ用ディスプレイにて使用されるsRGB規格準拠のデータであり各色256階調(0〜255の整数値で各色の階調を指定したデータ)で階調表現したRGB各色の組み合わせによって色を表現している。CMYKlclmデータは、本実施形態にかかるプリンタにて吐出インク量を特定するためのデータであって各色256階調(0〜255の整数値で各色の階調を指定したデータ)であり、各色の組み合わせによって色を表現している。
プリンタによって印刷を行うために、色変換テーブルでは上記RGBデータとCMYKlclmデータとを対応づける必要があるが、CMYKlclmデータはプリンタの機器依存色であることから、色変換テーブルを作成する際には一般にプリンタでの実際の印刷結果を測色する。そして、機器非依存色空間で上記RGBデータとCMYKlclmデータとによる色を対応づけることによって色変換テーブルを作成する。
本実施形態では、当該機器非依存色空間としてLab色空間(通常、この空間をL*a*b*と表記するが、本明細書では簡単のため*を省略して表記する。以下同じ)を採用しており、色変換テーブルの作成工程では、まず、RGBデータとCMYKlclmデータとのそれぞれについてLab色空間の座標値を特定する。RGBデータについては上述のようにsRGB規格に準拠しており、sRGBデータは所定の変換式によってLab色空間内の座標値に変換することができる。図1においては、変換後の座標をL0a0b0と表記しており、この段階で複数のRGBデータについてLab色空間内の座標値に変換する。
色変換テーブルにおいては、RGBデータとCMYKlclmデータとで表現される任意の色について色変換を実施可能にするため、上記参照点はディスプレイおよびプリンタの色域の略全域に分布していることが好ましい。しかし、ディスプレイとプリンタの色域は一般的には異なるので、ディスプレイでの色をプリンタで表現可能な色に変換する色域マッピングを行う。また、画像出力を行う際には肌色や空の青色など、実際の色をそのまま出力するより、人間の記憶色に近い色に変換した方が高画質に見えることが多いので、この類の色については実際の色を記憶色に変換する。図1では、このようにして上記座標L0a0b0を変換して得られるLab色空間内の座標をL1a1b1と表記しており、上記複数のRGBデータは当該L1a1b1と対応づけられる。
一方、CMYKlclmデータはインク量を特定するインク値データであって機器依存色である。従って、実際に印刷を行ったパッチを測色機によって測色することによってLab色空間内の座標値を取得する。但し、CMYKlclmデータは6色のインクの各インク量を適宜組み合わせることによって任意の色を表現するデータであり、多数の組み合わせによって非常に似た色を表現することが可能である。
本実施形態においては103個のパッチを測色するが、インク量空間内で異なる座標であっても似た色は非常に多く存在するので、何ら規則無く測色対象となるインク量の組み合わせを決定してもプリンタの色域の略全域に分布し、また、参照点の配置に偏りが無いように6色の組み合わせを選定することは困難である。そこで、一般的には仮想CMY値を6色インク量に変換する分版処理が行われており、本実施形態においても初期段階で分版処理の考え方を利用する。
分版処理では、CMYの3色について各色256階調で表現しつつ各色を直交軸とした3次元空間(仮想CMY空間)を考え、この仮想CMY空間中で測色対象となる色を示す座標値を決定するとともに、当該座標値を所定の変換式によって6次元のインク値に変換する。すなわち、3次元空間中での座標値を6次元空間中の座標値に変換する変換式を作成するのは容易なので、まず103個の測色対象を3次元の仮想CMY空間内で特定し、この変換式で3次元から6次元への変換を行ってCMYKlclmデータを決定する。
この分版処理においては、分版処理後のインク値からインク記録率を特定できるように変換を行っている。最も単純にはインク記録率の0〜100%を0〜255の各階調に対して均等に割り当てることによって各インク値からインク記録率を特定できるように変換するが、むろん、印刷媒体に対する最大インク記録量の制限やブラックインクの利用制限など種々の制限を加味して変換を行う変換式によって分版を行うことが可能である。いずれにしても、分版処理後のインク値からインク記録率が特定される。
以上のようにしてCMYKlclmデータを特定すると、各色256階調のインク量空間で測色対象となる103組の座標値が得られることになり、この座標値が示す色のパッチを印刷する。インクジェットプリンタにおいては各ドットについて2〜4の階調数、すなわちインク滴を記録する状態と記録しない状態の2階調やインク滴の非記録状態と大中小ドットのそれぞれを記録した状態の4階調等によって階調表現を行うので、上記256階調の各色インク量についてハーフトーン処理を行ってプリンタにおける各ドットの階調を表すデータに変換する。このデータに基づいて印刷を行うと103個のパッチが得られるので、これらを測色機によって測色することによって103個のパッチについてLab色空間内の座標値を特定することができる。図1においては、この座標値をL2a2b2として示している。
以上の工程によって上記256階調のCMYKlclmデータに対応する座標値L2a2b2と256階調のRGBデータに対応する座標値L1a1b1とを特定することができるので、これらからRGBデータとCMYKlclmデータとの対応関係を決定する。座標値L2a2b2と座標値L1a1b1とが同じ色を示しているわけではないが、色空間において103個の座標値が存在するので、座標値L2a2b2から補間演算によって任意のCMYKlclmデータを算出可能であり、座標値L1a1b1から補間演算によって任意のRGBデータを算出することができる。従って、補間演算によってRGBデータとCMYKlclmデータとの対応関係を規定することができ、この結果、上述の色変換テーブルを決定することができる。
以上の工程によって色変換テーブルを決定することができるが、この色変換テーブルでは特定の色についてトーンジャンプを発生させることなく色変換することはできなかった。すなわち、一般にインク量が一定の率で増加したときにその明度は一定の率では変動せず、上記分版ではこのインク量の変動による明度変化に的確に対応した色変換テーブルを特定することができなかった。
図2は、各色インク毎に単位面積当たりに記録するインク滴の記録率(%)とその明度Lとの関係を示す図であり、具体例としてKClcインクのそれぞれについて示している。同図に示すように、インク記録率の変化に対する明度変化は一定ではなく、その曲線は全色で下に凸である。すなわち、インク滴数が少ない高明度領域ではインク滴数の増大に伴って明度が大きく変化するが、低明度領域になるほどインク滴数の増大に伴って明度の変化が鈍くなる。
また、インクの色自体が濃くなるほど低明度領域でのインク記録率に伴う明度変化率低下の傾向が強くなる。さらに、色変換テーブルでは全階調値についてRGBデータとCMYKlclmデータとの対応関係を定義しているのではなく、上述のように複数の参照点について両者の対応関係を定義しており、CMYKlclmデータの補間精度はCMYKlclmデータの各値について異なってくる。
すなわち、CMYKlclmデータの補間精度は、補間によって得られるCMYKlclmデータにて印刷を実行した場合の色と変換元のRGBデータに相当する色とが一致しているほど高いと言え、補間精度が悪いとトーンジャンプが発生し得る。例えば、各色インク量の値域に略均等に参照点を設けると、各色インク量が小さい高明度域の補間精度は各色インク量の大きい低明度域の補間精度より悪くなる。この場合には高明度に相当する参照点間で記録率変化に対する明度変化が線形ではないし、明度の絶対値も大きく変動するため、わずかなインク量の差異が実際の明度変化として大きく表れるからである。
上記分版のように画一的な変換式で仮想CMY値をインク値に変換すると、このようなインク量の値ごとの特性に対応することが困難であったので、本発明においては、この分版処理の後あるいは分版処理時にそのCMYKlclmデータをγ補正して低インク記録率を与えるCMYKlclmデータに相当する参照点での補間精度を向上させている。すなわち、図2の破線に示すようにインクの特性と逆特性になるような上に凸の入出力特性曲線(インク量階調値の入力値を所定の出力値に変換するに際して、インク記録率の値域と入力値域を一致させ、明度値域を出力値域に一致させた場合に図2の破線のようになる曲線)でγ補正をしている。この結果、小数点以下に相当する値をも考慮してハーフトーン処理を実施することが可能になる。尚、このγ補正は全色同等の曲線を利用しても十分にトーンジャンプ低減の効果があるものの、各色毎にそのインク特性の曲線に対応した曲線に相当する補正曲線を利用しても良い。また、上記ハーフトーン処理においては、当該γ補正によって高精度に補間演算をした後に逆特性の曲線による補正を行っている。
(2)色変換テーブル作成のための装置および処理:
以上のように、本発明においては分版処理においてγ補正を行うことによってトーンジャンプの発生を低減しており、以下においてはより具体的にそのための装置および処理を説明する。図3は本発明にかかる色変換テーブル(LUT)を作成するための処理を示すフローチャートであり、図4は当該処理を実行するためのコンピュータの構成を示すブロック図である。コンピュータ10は演算処理を実行する演算処理部11とデータを蓄積するHDD12とを備えている。また、図示しないインタフェースを介してプリンタ20と接続されており、コンピュータ10から印刷データを出力して印刷を実行することができる。
さらに、コンピュータ10では測色機30によって測色して得られた測色データを取り込むことができる。この測色データは所定の入力機器にて入力したり、記録媒体を介して入力したり、所定のインタフェースを介して接続してデータ転送することによって入力したりするなど、種々の態様を採用可能である。演算処理部11においては、色変換テーブルを作成するための所定のプログラムを実行して演算処理を実行することができ、分版処理部11aはステップS100にて103個の測色用仮想CMY値を取得し、ステップS110にてHDD12に保存された色あわせ前LUT12aを参照しつつ当該仮想CMY値に対応したCMYKlclmデータを生成する。
すなわち、色あわせ前LUT12aは、173個の参照点について上記分版の変換式にて仮想CMY値をCMYKlclmデータに変換して得られた結果をテーブル化したデータであり、この色あわせ前LUT12aによって任意の仮想CMY値を分版して対応するCMYKlclmデータを得ることができる。尚、本実施形態では色あわせ前LUT12aによって仮想CMY値をCMYKlclmデータに変換する構成を採用しているが、むろんここでは分版処理を実行することができれば良く、マトリクス演算式を記憶しておくとともに当該演算式に基づいて仮想CMY値をCMYKlclmデータに変換する構成を採用するなど、種々の構成を採用可能である。
分版処理部11aが分版によってCMYKlclmデータを生成すると、γ補正部11bはステップS120において当該CMYKlclmデータに対して各色毎に上記図2に示す破線のような特性曲線によるγ補正を実施する。図5は仮想CMY値をCMYKlclmデータに分版し、さらにγ補正を実施したときの値の変化例を示す図である。同図の左側には仮想CMYの各色階調値域を略9等分して得られる値を任意に組み合わせて得られる103個の座標を例として示しており、同図中央にはこれらの仮想CMY値を分版して得られる分版後のCMYKlclmデータの例を示している。
同図の右側にはこの分版後のCMYKlclmデータをγ補正した後のデータを示している。このγ補正は入力値を横軸,出力値を縦軸にしたときに上に凸であって上記インク特性の逆特性に相当する特性曲線による補正であり、分版後のCMYKlclmデータの値が小さいほどγ補正前後の値の変化が大きくなるような補正である。尚、γ補正の前後において入力値の最小値および最大値は値が変わらないようにしてあり、出力値は整数としているので、γ補正後の値も整数であり、値域は0〜255である。ここで、補正後の値を整数としているので、整数化の結果としては総ての値について分版後のCMYKlclmデータの値が小さいほどγ補正前後の値の変化が大きくなるとは限らないが、少なくともγ補正の段階では、CMYKlclmデータの値が小さいほどγ補正前後の値の変化が大きくなるように補正する。
尚、上記分版後のCMYKlclmデータについても値は整数であり、値域は0〜255である。また、分版後のCMYKlclmデータでは、その値の大小とインク量とが線形に対応している。しかし、γ補正後のインク値データにおいては、階調値が小さな値(高明度に相当する値)であるほど補正後の増加率が大きくなるように補正している。従って、インク値の大小とインク量とは非線形に対応している。すなわち、本実施形態において、分版後のCMYKlclmデータはインク記録率と線形に対応しているが、インク値データではその値の意味が異なりインク記録率と非線形に対応している。図5の中央、右側のいずれに示すデータもCMYKlclmの各インク色毎のデータであるので、本明細書においては、前者を分版後のCMYKlclmデータ,後者をインク値データとして区別する。
また、分版後のCMYKlclmデータは階調値の大小とインク量とが略線形に対応しており、上記請求項の第1階調値データに相当する。この場合、仮想CMYによって形成される色空間が請求項の第1色空間に相当する。インク値データはハーフトーン処理部11cに入力される値であるので、上記請求項にいうインク色毎の入力階調値に相当するし、ハーフトーン処理を経て印刷されるインク量に対応するという意味で上記請求項にいう各インク色毎のインク量に対応する階調値にも相当する。尚、分版を行うことが必須ではないので、分版後のデータのみが上記第1階調値データに相当するわけではなく、階調値の大小とインク量とが略線形に対応いれば第1階調値データになり得る。
γ補正部11bがγ補正を行って得られたγ補正後のインク値データ12bはHDD12に保存される。ハーフトーン処理部11cはステップS130にて当該γ補正後のCMYKlclmの各色インク量に基づいてプリンタ20での吐出インク滴を特定するハーフトーン処理を行う。ハーフトーン処理部11cはγ解釈部11c1と階調数低減部11c2とを備えており、γ解釈部11c1は上記インク値データ12bがγ補正を施される前の値を算出することができる。階調数低減部11c2はこのγ補正前の値に基づいてハーフトーン処理を実行し、プリンタ20での各画素について吐出インク滴を特定したデータを生成する。但し、このハーフトーン処理においては、上記ステップS120でのγ補正後の値からγ補正であれば小数に該当する値まで把握し、当該小数以下の数値差も反映させながらハーフトーン処理を行う。
すなわち、ハーフトーン処理においては単位面積当たりに記録するドットカウントを調整することによって階調表現をすべくプリンタ20での各画素の吐出インクを特定するが、CMYKlclm各色について全値域を均等に256階調で表現した場合には、その1階調変化に相当するドットカウントの変化は1ではなく、多数のドット変化になる。従って、ハーフトーン処理においては本来上記小数以下に相当する微妙な変化も表現することができ、小数以下に相当するデータを有していれば、より高精度で色を出力することが可能になる。また、このような仕組みを備える本発明によって作成された色変換テーブルを参照して色変換を行うことによって、後述するようにトーンジャンプの発生を防止することができる。
図6は、このハーフトーン処理を説明するための説明図である。同図左端には、Cインクのインク値データを例示してあり、同図中央左列にはγ解釈部11c1による解釈後のデータを示している。本実施形態において、同列に示す小数以下を含む数値は、Cインクのインク値データに対して上記γ補正と逆の入出力特性をもつ逆γ補正を実施することによって算出することができる。この逆γ補正においては、入力値を所定の出力値に変換するに際して、入力値の最小値および最大値は値が変わらないようにしてある。
従って、逆γ補正後の値の値域も0〜255である。本実施形態において逆γ補正後の値の大小で単位面積当たりに記録するドットカウントの大小を示しており、値0がインク記録率0%,値255がインク記録率100%を示し、値1がインク記録率100×1/255%を示すが、図6の中央左列に示すように、値1.002以下に0.036〜0.0810の7個の値が存在する。従って、100×1/255%以下のインク記録率の差異を反映しながらハーフトーン処理を行うことができる。
また、図6に示すように、インク値データの値が小さいほど当該インク値データの単位変化(すなわち、インク値データにおける”1”の変化)に対するインク記録率の変化が小さい。例えば、インク値データ”1”から”2”へ変化したとき、対応するインク記録率は”0.036”から”0.109”へと変化し、その変化は”0.073”であるのに対し、インク値データ”12”から”13”へ変化したとき、対応するインク記録率は”1.918”から”2.180”へと変化し、その変化は”0.262”であり、前者のインク記録率の変化の方が小さい。
このため、本実施形態に係るインク値データでは、インク記録率が小さな高明度域でより微小なインク記録率の変化を表現可能であると言えるし、高明度域でインク値データの分解能が高いとも言える。尚、本発明のように、分版後のCMYKlclmデータに対してγ補正を行い、ハーフトーン処理時にγ解釈を行わない場合、図6の中央左列に示すような小数点以下の数値は四捨五入等によって総て丸められる。このため、図6の右端に示すように100×1/255%以下のインク記録率は0としか表現できないなど、高明度域で微小なインク記録率の変化を表現することはできない。従って、高明度域で高精度に色変換する対応関係を定義することはできない。
また、逆γ補正後の小数点以下に相当するデータを図6の中央左列に示すように少数点のまま扱っても良いが、むろん、整数値に変換して扱っても良い。例えば、図6の中央右列に16bitとして示したように、16bitの容量で記述される階調値に変換しても良い。すなわち、γ解釈時にインク値データを16bitのデータに変換し、65535階調の数値でインク記録率を表現するように構成してもよく、この場合にも上記と同様に逆γ補正をした場合の小数以下に相当する偏差を反映しつつハーフトーン処理を実施することに相違はない。
尚、インク値データから16bitのデータへ変換するに際しては、予めインク値データと変換後の16bitデータとを対応づけるテーブルを作成し、これを参照するように構成するなどして実現可能である。いずれにしても、ハーフトーン処理部11cの階調数低減部11c2においてドットの吐出,非吐出を決定するための閾値として上記小数以下の数値を含む値あるいは16bitで定義された値を採用することにより、小数以下に相当する偏差を反映しつつハーフトーン処理を実施することができる。
印刷データ生成/出力部11dは、当該ハーフトーン処理後のデータをプリンタ20の各ノズルでのインク滴吐出順に並べる等の処理を行って上記インク値データ12bに対応するパッチを印刷するための印刷データを生成し、プリンタ20に対して出力する。この結果、プリンタ20においては、103個の測色パッチを印刷する(ステップS140)。
測色パッチを印刷した後には、測色機30にて当該測色パッチを測色する(ステップS150)。測色機30は測色対象のLab座標値を測色データとして取得する機器であり、取得した測色データはコンピュータ10のLUT作成部11fに取り込まれる。以上の処理によって測色用仮想CMY値に対して分版、γ補正を実施した後のCMYKlclmデータ(インク値データ)について機器非依存色空間であるLab色空間内の座標値(上記図1のL2a2b2に相当)が得られたことになる。一方、ステップS160以降では、RGBデータに対応するLab色空間内の座標値を取得するための処理を行う。尚、このステップS160,S170は上記ステップS100以前に実行しても良い。
ステップS160では、sRGBデータ変換部11eが予め用意されたsRGB値を取得し、所定の変換式によってLab色空間内の座標値に変換する(上記図1のL0a0b0に相当)。尚、当該sRGBデータ変換部11eによる変換対象は103個程度であり、RGB各色の値域を9等分して得られる座標を任意に組み合わせるなどして予め変換対象を特定しておけばよい。sRGBデータ変換部11eは、さらにステップS170にて上記色域マッピングおよび記憶色等を考慮した補正を行う。この結果、上記図1のL1a1b1に相当する座標値が得られる。
この座標値は上記LUT作成部11fに取り込まれる。このステップS170と上記ステップS150にてLUT作成部11fは上記図1に示すL1a1b1とL2a2b2とを取得しており、ステップS180においては補間処理によって複数の参照点についてRGBデータとγ補正後のCMYKlclmデータとの対応関係を定義する。
ここではRGBデータとγ補正後のCMYKlclmデータとの対応関係とが定義されれば良い。Lab色空間内の任意の座標に対応するRGBデータおよびLab色空間内の任意の座標に対応するγ補正後のCMYKlclmデータは補間演算によって算出することができるので、当該Lab座標値を介して任意の色について両データの対応関係を定義することができる。ステップS190では、173個の参照点についてRGBデータとγ補正後のCMYKlclmデータとを対応づけ、この対応関係を示すテーブルデータを生成し、HDD12に保存する(LUT12c)。
(3)本発明によって作成したLUTを利用した印刷:
このLUT12cは、プリンタ20にて印刷を実行する際に色変換処理を行うために参照される。以下当該印刷を行うための構成を説明する。図7は、印刷時にLUT12cを使用するコンピュータ構成例を示すブロック図である。コンピュータ110は汎用的なパーソナルコンピュータであり、プリンタドライバ(PRTDRV)210と入力機器ドライバ(DRV)220とディスプレイドライバ(DRV)230とがOS200に組み込まれている。ディスプレイDRV230はディスプレイ180における画像データ等の表示を制御するドライバであり、入力機器DRV220はシリアル通信用I/O190aを介して入力される上記キーボード310やマウス320からのコード信号を受信して所定の入力操作を受け付けるドライバである。
APL250は、カラー画像のレタッチ等を実行可能なアプリケーションプログラムであり、利用者は当該APL250の実行下において上記操作用入力機器を操作して当該カラー画像をプリンタ20にて印刷させることができる。このようなカラー画像の印刷時に本発明によって作成されたLUT12cが参照される。APL250にて作成されるカラー画像の画像データ120aはRGBの各色成分を階調表現したドットマトリクス状のデータであり、sRGB規格に準拠したデータであるとともに、HDD120に保存される。
上記PRTDRV210は印刷を実行するために、画像データ取得モジュール210aと色変換モジュール210bとハーフトーン処理モジュール210cと印刷データ生成モジュール210dとを備えている。また、本発明によって作成されたLUT12cはHDD120に保存されている。APL250実行時に利用者が印刷実行指示を行うと、印刷にかかる画像データ120aが画像データ取得モジュール210aに取得され、画像データ取得モジュール210aは上記色変換モジュール210bを起動する。色変換モジュール210bは、RGBデータをCMYKlclmデータに変換するモジュールであり、LUT12cの参照点を使用して任意のRGBデータをCMYKlclmデータに変換する。このCMYKlclmデータは上述のγ補正が施された後のデータである。
色変換モジュール210bが色変換を行ってCMYKlclmデータを生成すると、当該CMYKlclmの階調データは上記ハーフトーン処理モジュール210cに受け渡される。ハーフトーン処理モジュール210cは、上記ハーフトーン処理部11cと同様の処理を行うモジュールであり、γ解釈部210c1と階調数低減部210c2とを備えている。従って、上記CMYKlclmデータがハーフトーン処理モジュール210に受け渡されると、γ解釈部210c1は上記CMYKlclmデータがγ補正を施される前の値を算出し、階調数低減部210c2はその小数点以下に相当する値をも加味しながらハーフトーン処理を行う。
この結果、CMYKlclm各色でのインク記録率変化に対する明度変化を反映しつつ各ノズルでのインク吐出/非吐出を決定することができる。印刷データ生成モジュール210dはかかるハーフトーン処理後のデータを受け取って、プリンタ20で使用される順番に並べ替えるラスタライズを行う。このラスタライズの後、画像の解像度などの所定の情報を付加して印刷データを生成し、パラレル通信用I/O190bを介してプリンタ20に出力する。プリンタ20においては当該印刷データに基づいて上記ディスプレイ180に表示された画像を印刷する。
この印刷処理において、色変換は本発明によって作成されたLUTを参照して行われるので、ディスプレイ180およびプリンタ20の色域全域に渡って高精度に色変換を行うことが可能であり、トーンジャンプの無い高画質の印刷を実施することができる。以下、図8に則してトーンジャンプを低減する仕組みを説明する。図8の左側には従来のハーフトーン処理の例を示している。この例では、CMYKlclmデータの階調値C0がハーフトーン処理(HT)によって単位面積当たりのドットカウントhとなるように各画素のインク滴の吐出/非吐出が決定され、階調値(C0+1)がハーフトーン処理によって単位面積当たりのドットカウントh+100となるように各画素のインク滴の吐出/非吐出が決定される。
γ補正を行わない従来の処理では、ハーフトーン処理後のドットカウントに”100”の差異があったとしてもCMYKlclmデータの階調値は”1”の差異があるのみである。CMYKlclmデータはLUTを参照した補間演算によって得られるが、コンピュータで扱う各色の階調数は256でありデータ容量を変動させないとすればCMYKlclmデータの階調値”1”以内の差異を表現することはできない。従って、従来のハーフトーン処理ではドットカウントの最小ピッチが”100”になる。
一方、図8の右側には本発明のハーフトーン処理の例を示している。この例において階調値C0に対して上述のγ補正がなされたデータをγC0と示しており、階調値(C0+1)に対してγ補正がなされたデータをγ(C0+1)として示している。また、図8に示す例では、γ(C0+1)がγC0+10と等しい。
すなわち、階調値γC0と階調値γ(C0+1)との間に9階調レベル(γC0+1〜γC0+9)存在するようになる。従って、γ補正がなされたデータによって参照点が定義されたLUT12cを参照して補間処理を行った場合、階調値γC0,γC0+10のみならずその間の値も表現することができる。
ハーフトーン処理モジュール210cでは、γ解釈によってγ補正前の値を把握しつつハーフトーン処理を行うので、γC0はドットカウントh,γ(C0+1)はドットカウントh+100になるように処理しつつ、その間の階調値γC0+1〜γC0+9についてもドットカウントh+10〜h+90になるように処理することができる。すなわち、ドットカウントの最小ピッチが著しく小さくなる。また、本発明では上述のように上に凸のγ曲線によって、階調値が小さいほど元の値が大きくなるように補正する。従って、厳密には図8に示すようにハーフトーン後のドットカウントの変化ピッチが一定にはならないが、インク記録率に対する明度の変動率が大きな色について微妙な色の変化を表現しつつハーフトーン処理を行うことができることに相違はない。従って、トーンジャンプを低減することができる。
(4)他の実施形態:
以上説明した実施形態は一例であり、高明度域の分解能を低明度域の分解能より相対的に高くすることができる限りにおいて種々の構成を採用可能である。上記γ補正後に得られる階調レベル数としても9階調レベルに限られることはない。すなわち、高明度域において精度を向上すると、低明度域においては表現可能な階調レベル数が少なくなるので、両者の兼ね合いで最も都合の良い状態になるようにγ補正を行えばよい。実際には上記γ補正後によって高明度域の分解能を最大で従来の3倍程度、すなわち、CMYKlclmデータの階調値”1”を階調値”3”に補正する構成であっても非常に高精度に色変換を実施可能である。
さらに、上述の実施形態では、インク記録率の値域の総てに対してインク値データが対応づけられるようにγ補正を行っていたが、上記図2に示すように高インク記録率では、インク記録率の変化に対して明度が大きく変化しない。すなわち、最高インク記録率を含む所定の記録率値域では、実質的に変化のある明度階調表現をすることができない。そこで、インク記録率の値域の一部を利用するため、γ補正対象となる分版後のCMYKlclmデータにおいて、低明度に相当する高インク記録率の一部を除外しても良い。
図9は、分版後のCMYKlclmデータにおいて、低明度に相当する高インク記録率の一部を除外する例を説明する説明図である。同図に示す実線の曲線は、Kインクにおけるインク記録率に対する明度の関係を示しており、当該Kインクにおいては、インク記録率70%〜100%の値域では、ほとんど明度が変化しない。そこで、同図に破線で示す上記実施形態のようにインク記録率0%〜100%に相当するCMYKlclmデータをγ補正によってインク値データに変換するのではなく、同図に示す一点鎖線のようにしてインク記録率0%〜70%に相当するCMYKlclmデータ(階調値0〜179)をγ補正によって256階調のインク値データに変換する。
図10は、前者および後者の実施形態を説明する説明図である。同図上部にはγ補正によって階調値”0”〜”1”の分解能を3倍に変換する例を示し、同図下部には、インク記録率の値域を0%〜70%に限定した例を示している。同図上部に示す例において、分版後のCデータは0〜255の整数値である。これに対して上述のように値が小さいほど補正後の増加率が大きくなるように補正し、得られた結果を整数化すれば、同図上部に示すインク値データとなる。
すなわち、分版後のCデータの”0”,”1”はそれぞれインク値データの”0”,”3”に変換される。このインク値データに基づいて上述のパッチやカラー画像を印刷する際には、ハーフトーン処理モジュールによってγ解釈がなされる。このγ解釈は先のγ補正の逆特性に相当する補正であり、インク値データの”0”,”1”,”2”,”3”はそれぞれ”0”,”0.254”,”0.603”,”1.000”に変換される。従って、分版後のCデータの”0”より大きく”1”以下に相当するインク記録率について3階調で階調表現をすることができる。
一方、図10の下部に示すように0〜255の整数値で定義される分版後のCデータに対して上記図10の上部に示すγ補正と比較して入出力の階調値域を変更したγ補正を実施する。すなわち、分版後のCデータの値0〜255がインク記録率0%〜100%に線形に対応する状況において、分版後のCデータの値0〜179を入力とし、インク値データの階調値が0〜255となるようにする。また、γ値(γ補正時の指数に相当)は上記図10の上部に示すγ補正と同様の値とする。
このγ補正の結果、分版後のCデータの”0”,”1”はそれぞれインク値データの”0”,”4”に変換される。さらに、図10の下部に示す例でハーフトーン処理モジュールによってγ解釈をする際にもγ補正の逆特性に相当する補正を行う。この結果、インク値データの”0”,”1”,”2”,”3”,”4”はそれぞれ”0”,”0.178”,”0.422”,”0.699”,”1.000”に変換される。従って、分版後のCデータの”0”より大きく”1”以下に相当するインク記録率について4階調で階調表現をすることができる。
尚、インク値データの最大値255はγ解釈によって”179”と解釈されるが、上述のように値”179”に相当するインク記録率70%より大きなインク記録率を利用しても印刷物の明度は実質的にほとんど変化しないため、最大値”179”のままハーフトーン画像データを生成しても、充分に階調の豊かな印刷を実施することが可能である。また、図10では、Kインクにて実質的に明度変化をするのが0%〜70%のインク記録率であることによって70%〜100%を除外していたが、むろん、この値は70%に限定されず、インクの特性や高明度側、低明度側で必要とされる階調に応じて変更することが可能である。
さらに、CMYKlclmの全色について同じγ曲線で補正を行うアルゴリズムであれば非常に簡易な計算でγ補正を行うことができるが、むろん、各色毎に異なるγ曲線を使用しても良い。さらに、印刷媒体や印刷モードによってγ曲線を変更しても良い。これらの場合、各γ曲線毎に異なる色変換テーブルを作成し、γ解釈部において各色変換テーブルに対応した解釈を行いながらハーフトーン処理を行うことになる。
さらに、上記実施形態においては分版処理を行って得られたデータについてγ補正を行っていたが、分版処理後のデータを利用することが必須というわけではない。すなわち、本発明においては、高明度域に相当する入力階調値であるほどそれより低明度域に相当する入力階調値より当該入力階調値の単位変化に対応するインク記録率の変化が小さくなるよう定義してハーフトーン処理を行い、印刷を実行できればよい。従って、分版処理以外の手法で得られた測色対象について補正を行ってインク値データを取得しても良い。
10…コンピュータ、11…演算処理部、11a…分版処理部、11b…γ補正部、11c…ハーフトーン処理部、11c1…γ解釈部、11c2…階調数低減部、11d…印刷データ生成/出力部、11e…RGBデータ変換部、11f…LUT作成部、12a…色あわせ前LUT、12b…γ補正後のインク値データ、12c…LUT、20…プリンタ、30…測色機