JP4234865B2 - 鉄系焼結摺動部材ならびにその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、鉄を主成分とする鉄系焼結摺動部材、具体的には素地(マトリックス)の組織がパーライト組織またはフェライト組織またはパーライトとフェライトが共存した組織を呈し、該組織中に炭素が分散含有して存在するとともに組織中に遊離セメンタイトの存在しない鉄系焼結摺動部材ならびにその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉄系焼結摺動部材としては、鉄−銅−黒鉛系含油焼結材料あるいは黒鉛の固体潤滑作用を利用した鉄−黒鉛系焼結材料及び鉄−銅−黒鉛系焼結材料がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来技術における後者の鉄系焼結材料においては、黒鉛の固体潤滑作用を得るには少なくとも3wt%以上の配合量が必要とされるが、この場合、鉄粉末と黒鉛粉末が焼結過程で反応して焼結組織中に高硬度の遊離セメンタイト(Fe3C)を析出するという現象が現れる。この高硬度の遊離セメンタイトの組織中への析出は、相手材、例えば軸との摺動において当該相手材を損傷させるという欠点を惹起することになり、摺動部材においては極力避けなければならない重要な要素である。
【0004】
この遊離セメンタイトの析出を防止する方法としては、鉄−黒鉛系焼結材料においては、▲1▼黒鉛の配合量を少量(0.82wt%以下)とすること、▲2▼遊離セメンタイトの析出し得ない低温度で焼結すること、により一応の解決は見られるが、上記▲1▼の方法では配合した黒鉛の固体潤滑作用を期待することができず、また▲2▼の方法では摺動部材としての機械的強度が低く、いずれの方法によっても得られた焼結摺動部材は黒鉛による固体潤滑作用を十分発揮させることができず、実用に供し難いという問題を残す。
【0005】
さらに別の方法として、黒鉛粉末に銅メッキを施した、所謂被銅黒鉛粉末を使用することにより遊離セメンタイトの析出のない鉄系焼結摺動部材を得ることができるが、この方法においては▲1▼黒鉛粉末に予め銅メッキを施す工程を要し、コスト高になること、▲2▼すべての黒鉛粒子をもれなく銅メッキすることは工業的に困難であること、▲3▼上記▲2▼の結果として、焼結時に鉄と黒鉛との反応を生じ、遊離セメンタイトの析出を完全に防ぎ難いこと、などの問題がある。
【0006】
鉄−炭素−X(金属元素)系の三元系の状態図から、アルミニウム、珪素、錫、チタンなどオーステナイト組織(γ相)にループができる金属元素を配合することにより、組織中に遊離セメンタイトの析出を防止できることが理論づけられている。しかしながら、これら金属元素を単体粉の形態で鉄−炭素系に配合する場合、単体粉の酸化の問題が生じ、該金属元素のフェライト相(α相)中への拡散が十分行われず、結果として組織中に遊離セメンタイトが析出することになる。
【0007】
上述した問題点に鑑み本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、上記三元系状態図からα相生成元素である珪素及び錫に着目し、これら金属元素を合金化させて合金粉の形態で鉄−炭素−X(金属元素)系に配合することにより、珪素及び錫はα相中への拡散が十分に行われ、組織中に遊離セメンタイトの析出しない鉄系焼結体が得られることを知見した。
【0008】
本発明は、斯かる知見に基いて完成されたもので、組織中に遊離セメンタイトの析出がなく、パーライト組織またはフェライト組織またはパーライトとフェライトが共存した組織をもった鉄系焼結摺動部材ならびにその製造方法を得ることを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成するべく本発明の第一の態様の鉄系焼結摺動部材は、銅−珪素−錫の合金粉末または鉄−銅−珪素−錫の合金粉末と銅粉末と炭素粉末と鉄粉末とからなる鉄系焼結摺動部材であって、銅成分15〜25wt%、珪素成分1〜5wt%、錫成分1〜5wt%、炭素成分3〜10wt%、残部鉄成分からなり、素地がパーライト組織またはフェライト組織またはパーライトとフェライトが共存した組織を呈し、該組織中に炭素成分が分散含有されている。
【0010】
第一の態様の鉄系焼結摺動部材によれば、珪素及び錫を、銅−珪素−錫の合金粉末または鉄−銅−珪素−錫の合金粉末の形態で主成分をなす鉄粉末と銅粉末と炭素粉末に配合することにより、マトリックス(組織)中に遊離セメンタイトの析出が防止される。また、珪素と錫の配合量の多寡によって、素地の組織をパーライト組織またはフェライト組織またはパーライトとフェライトが共存した組織に制御することができ、摺動部材の用途に適した組織を得ることができる。
【0011】
本発明の第二の態様の鉄系焼結摺動部材は、第一の態様の鉄系焼結摺動部材において、炭素は天然黒鉛または人造黒鉛からなる。
【0012】
第二の態様の鉄系焼結摺動部材によれば、パーライト組織またはフェライト組織またはパーライトとフェライトが共存した組織に3〜10wt%の天然黒鉛または人造黒鉛が分散含有されているので、当該鉄系焼結摺動部材に天然または人造黒鉛の固体潤滑作用による自己潤滑性が付与される。
【0013】
本発明の第三の態様の鉄系焼結摺動部材は、第一又は第二の態様の鉄系焼結摺動部材において、潤滑油が15〜20vol%の割合で含油されている。
【0014】
第三の態様の鉄系焼結摺動部材によれば、天然または人造黒鉛の固体潤滑作用と相俟って鉄系焼結摺動部材の自己潤滑性がより一層高められる。
【0015】
本発明の第四の態様の鉄系焼結摺動部材は、銅−珪素−錫の合金粉末または鉄−銅−珪素−錫の合金粉末と銅粉末と炭素粉末と鉄粉末とからなる鉄系焼結層が鋼裏金の表面にろう材を介して一体に接合されてなる複層からなる鉄系焼結摺動部材であって、該鉄系焼結層は銅成分15〜25wt%、珪素成分1〜5wt%、錫成分1〜5wt%、炭素成分3〜10wt%、残部鉄成分からなり、素地がパーライト組織またはフェライト組織またはパーライトとフェライトが共存した組織を呈し、該組織中に炭素成分が分散含有されている。
【0016】
第四の態様の複層からなる鉄系焼結摺動部材によれば、鋼裏金と、銅15〜25wt%、珪素1〜5wt%、錫1〜5wt%、炭素3〜10wt%、残部鉄からなる鉄系焼結層とがろう材を介して一体に接合されているので、該鉄系焼結層の耐圧強度が高められ、すべり板、スラスト軸受等の用途への適用が可能となる。
【0017】
本発明の第五の態様の複層からなる鉄系焼結摺動部材は、第四の態様の複層からなる鉄系焼結摺動部材において、炭素は天然黒鉛または人造黒鉛からなる。
【0018】
第五の態様の複層からなる鉄系焼結摺動部材によれば、鉄系焼結層の素地のパーライト組織またはフェライト組織またはパーライトとフェライトが共存した組織に3〜10wt%の天然黒鉛または人造黒鉛が分散含有されているので、鉄系焼結層は天然または人造黒鉛の固体潤滑作用による自己潤滑性が付与される。
【0019】
本発明の第六の態様の複層からなる鉄系焼結摺動部材は、第四又は第五の態様の複層からなる鉄系焼結摺動部材において、鉄系焼結層には潤滑油が15〜20vol%の割合で含油されている。
【0020】
第六の態様の複層からなる鉄系焼結摺動部材によれば、鉄系焼結層は天然または人造黒鉛の固体潤滑作用と相俟って鉄系焼結摺動部材の自己潤滑性がより一層高められる。
【0021】
本発明の第七の態様の鉄系焼結摺動部材の製造方法は、主成分をなす鉄粉末に対し、炭素粉末3〜10wt%および銅−珪素−錫の合金粉末または鉄−銅−珪素−錫の合金粉末と銅粉末を銅成分として15〜25wt%、珪素成分として1〜5wt%、錫成分として1〜5wt%となるように配合し、混合して混合粉末を形成し、該混合粉末を金型に装填して所望の形状の圧粉体を成形し、この圧粉体を中性もしくは還元性雰囲気に調整した加熱炉内で1100〜1150℃の温度で30〜60分間焼結するものである。
【0022】
第七の態様の鉄系焼結摺動部材の製造方法によれば、α相生成元素である珪素及び錫成分は、銅−珪素−錫の合金粉末または鉄−銅−珪素−錫の合金粉末の形態で鉄成分に配合されるため、焼結過程において当該珪素及び錫成分は鉄成分に拡散固溶して合金化し、素地の組織中に遊離セメンタイトの析出を生じることがない。
【0023】
本発明の第八の態様の鉄系焼結摺動部材の製造方法は、第七の態様の鉄系焼結摺動部材の製造方法において、炭素粉末は天然黒鉛または人造黒鉛からなる。
【0024】
第八の態様の鉄系焼結摺動部材の製造方法によれば、得られた鉄系焼結摺動部材には天然または人造黒鉛が分散含有されることになり、鉄系焼結摺動部材に天然または人造黒鉛の固体潤滑作用により自己潤滑性が付与される。
【0025】
本発明の第九の態様の鉄系焼結摺動部材の製造方法は、第七又は第八の態様の鉄系焼結摺動部材の製造方法において、圧粉体を焼結して鉄系焼結摺動部材を得たのち、これに含油処理を施すことにより、鉄系焼結摺動部材には15〜20vol%の割合で潤滑油が含油される。
【0026】
第九の態様の鉄系焼結摺動部材の製造方法によれば、鉄系焼結摺動部材には含油処理により15〜20vol%の潤滑油が含油されるので、天然または人造黒鉛の固体潤滑作用と相俟って鉄系焼結摺動部材の自己潤滑性がより一層高められる。
【0027】
本発明の第十の態様の複層からなる鉄系焼結摺動部材の製造方法は、主成分をなす鉄粉末に対し、炭素粉末3〜10wt%および銅−珪素−錫の合金粉末または鉄−銅−珪素−錫の合金粉末と銅粉末を銅成分として15〜25wt%、珪素成分として1〜5wt%、錫成分として1〜5wt%となるように配合し、混合して混合粉末を形成し、この混合粉末に粉末結合剤の1〜15wt%水溶液を該混合粉末に対し0.1〜5.0wt%添加し均一に混合してこれを原料粉末とし、該原料粉末を圧延ロールに供給して圧延シートを成形したのち、該圧延シートを中性もしくは還元性雰囲気に調整した加熱炉内で1100〜1150℃の温度で焼結して焼結板を作製し、該焼結板を鋼板からなる裏金の表面にロウ材を介して重ね合わせ、これを中性もしくは還元性雰囲気に調整した加熱炉内で該ロウ材のろう接温度で0.1〜5.0kgf/cm2の圧力下で20〜30分間加圧し、該焼結板の裏金表面への接合を行わせるものである。
【0028】
第十の態様の複層からなる鉄系焼結摺動部材の製造方法によれば、原料粉末を圧延ロールに供給して圧延シートを成形するので、原料粉末を形成する各粉末成分の偏析を生じることなく均一なシートを得ることができる。また原料粉末はシートの形態に成形されるので、その取扱いが容易となり、次工程以降の工程が極めて容易となる。
【0029】
本発明の第十一の態様の複層からなる鉄系焼結摺動部材の製造方法は、第十の態様の複層からなる鉄系焼結摺動部材の製造方法において、炭素粉末は天然黒鉛または人造黒鉛からなる。
【0030】
第十一の態様の複層からなる鉄系焼結摺動部材の製造方法によれば、得られた複層からなる鉄系焼結摺動部材の鉄系焼結層には天然または人造黒鉛が分散含有されることになり、鉄系焼結層に天然または人造黒鉛の固体潤滑作用により自己潤滑性が付与される。
【0031】
本発明の第十二の態様の複層からなる鉄系焼結摺動部材の製造方法は、第十又は第十一の態様の複層からなる鉄系焼結摺動部材の製造方法において、鉄系焼結層には含油処理により15〜20vol%の潤滑油が含油されるので、天然または人造黒鉛の固体潤滑作用と相俟って鉄系焼結層の自己潤滑性がより一層高められる。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明の鉄系焼結摺動部材の成分組成について説明する。
【0033】
<銅−珪素−錫合金あるいは鉄−銅−珪素−錫合金粉末について>
本発明においては、珪素及び錫成分は、銅−珪素−錫合金あるいは鉄−銅−珪素−錫合金の形態で使用される。
【0034】
合金中の銅成分は、焼結過程における1083℃の温度で溶融し、主成分をなす鉄成分中に拡散して一部合金化が行われるとともに液相を生じて結合材としての役割を果たし、焼結体を緻密化させて機械的強度を向上させ、さらにパーライト組織を緻密化してパーライト組織の硬度を高める効果を発揮する。また、銅成分は鉄系焼結摺動部材の摺動性能を向上させる。
【0035】
合金中の珪素成分は、主成分をなす鉄成分と親和性が良好で、焼結過程において鉄成分に拡散固溶して合金化する。
【0036】
合金中の錫成分は、上記珪素成分と同様、主成分をなす鉄成分と親和性が良好で、鉄成分へ流動して合金化するとともに焼結過程における232℃の温度から液相を生じて結合材の役割を果たす。また錫成分は前記銅成分との合金化により焼結体を緻密化させて焼結体の靭性及び機械的強度の向上に寄与する。
【0037】
本発明で使用する合金の成分組成の例を示すと、▲1▼銅74wt%−珪素13wt%−錫13wt%、▲2▼銅64wt%−珪素12wt%−錫24wt%、▲3▼鉄30wt%−銅34wt%−珪素12wt%−錫24wt%の合金である。
【0038】
これら合金中の珪素成分及び錫成分は、焼結過程において成分中の鉄成分と炭素成分との反応を抑制する作用を果たすもので、これにより焼結部材の素地の組織中に遊離セメンタイトの析出を防止する。この珪素成分及び錫成分の焼結過程における鉄成分と炭素成分との反応を抑制する作用は詳らかではないが、これら元素が予め合金化されていることにより珪素及び錫成分が鉄成分中に優先的に固溶し、炭素成分の鉄成分中への固溶を阻止するためであると推察される。
【0039】
そして、珪素成分と錫成分の主成分をなす鉄成分中への配合量の多寡により、焼結部材の素地の組織をパーライト組織またはフェライト組織またはパーライトとフェライトが共存した組織に選択的に制御することができる。すなわち、珪素成分と錫成分の鉄成分中への配合量を上限側に設定することにより、素地の組織をフェライト組織に、また珪素成分と錫成分の鉄成分中への配合量を下限限側に設定することにより、素地の組織をパーライト組織に制御することができる。
【0040】
<炭素粉末について>
炭素は、本発明においては天然黒鉛あるいは人造黒鉛が使用される。炭素はパーライト組織またはフェライト組織またはパーライトとフェライトが共存した組織に分散含有されて固体潤滑作用をなすもので、この固体潤滑作用を発揮させるためには少なくとも3wt%の配合量が必要とされる。また、素地がパーライト組織またはフェライト組織またはパーライトとフェライトが共存した組織を呈し、遊離セメンタイトの析出を生じないため、該炭素を10wt%もの多量の配合が可能となる。しかし、10wt%を超えて配合すると、摺動部材としての機械的強度が損なわれるため、その配合量は10wt%が限度である。
【0041】
<銅粉末について>
本発明においては、上記銅−珪素−錫合金粉末あるいは鉄−銅−珪素−錫合金粉末と炭素粉末と鉄粉末を混合してなる混合粉末の成形性を高めるために、銅粉末が配合される。該銅粉末としては電解銅粉末が好ましく使用される。
【0042】
鉄粉末、銅粉末及び銅−珪素−錫の合金粉末または鉄−銅−珪素−錫の合金粉末は200メッシュの篩を通過する粉末が使用される。また、炭素粉末はその粒径が100μm以上、150μm以下の天然黒鉛または人造黒鉛が使用される。
【0043】
本発明の鉄系焼結摺動部材における上記銅−珪素−錫合金あるいは鉄−銅−珪素−錫合金粉末と銅粉末と炭素粉末と鉄粉末との配合割合は、銅15〜25wt%、珪素1〜5wt%、錫1〜5wt%、炭素3〜10wt%、残部鉄からなる。
【0044】
本発明の鉄系焼結摺動部材は、銅15〜25wt%、珪素1〜5wt%、錫1〜5wt%、炭素3〜10wt%、残部鉄からなる鉄系焼結層を鋼裏金の表面にロウ材を介して一体に接合することにより、複層からなる鉄系焼結摺動部材とすることができる。
【0045】
本発明の鉄系焼結摺動部材は、炭素が3〜10wt%の割合で含有されているので、該摺動部材には該炭素の固体潤滑作用による自己潤滑性が付与されているが、さらに含油処理を施すことにより、該摺動部材に潤滑油を含油することができ、炭素の固体潤滑作用と相俟って自己潤滑性をより一層高めることができる。焼結摺動部材には15〜20vol%の割合で潤滑油が含油される。
【0046】
つぎに、鉄系焼結摺動部材の製造方法について説明する。
【0047】
主成分をなす鉄粉末に対し、炭素粉末3〜10wt%および銅−珪素−錫の合金粉末または鉄−銅−珪素−錫の合金粉末と銅粉末を、銅成分として15〜25wt%、珪素成分として1〜5wt%、錫成分として1〜5wt%となるように配合し、混合して混合粉末を形成する。ついで、該混合粉末を所望の形状を有する金型に装填し、2〜5トン/cm2の圧力下で圧縮成形し、該混合粉末からなる圧粉体を成形する。このようにして得た圧粉体を中性もしくは還元性雰囲気に調整した加熱炉内で1100〜1150℃の温度で30〜60分間焼結し、その後炉冷して炉から取出し、必要に応じて機械加工により所望の寸法に加工して鉄系焼結摺動部材を得る。ここで、中性もしくは還元性雰囲気としては、アンモニア分解ガス、窒素ガス、水素ガスなどが使用される。
【0048】
上述した製造方法において、焼結温度は焼結組織に敏感に影響を及ぼすもので、とくに温度管理には注意を必要とする。本発明では1100〜1150℃の温度範囲で行われる。また、焼結時間は焼結温度ほど敏感に焼結組織に影響を及ぼさないが、焼結体の機械的強度に影響を及ぼす。本発明では30〜60分間で良い結果が得られる。
【0049】
このようにして得た鉄系焼結摺動部材は、その素地の組織がパーライト組織またはフェライト組織またはパーライトとフェライトが共存した組織を呈し、該組織中に炭素が分散含有されている。これらの組織は成分中の珪素成分と錫成分との配合量の多寡によって制御され、摺動部材の用途によって適宜選択される。
【0050】
このようにして得た鉄系焼結摺動部材は、その使用目的、用途に応じて含油処理を施し、含油焼結摺動部材としての適用が可能である。この含油焼結摺動部材においては、該焼結摺動部材中に含油される潤滑油の含油量が15〜20vol%であり、焼結摺動部材に含有された炭素の固体潤滑作用と相俟って該摺動部材により一層の自己潤滑性を付与することができる。
【0051】
また、上述した成分組成からなる鉄系焼結層をロウ材を介して鋼裏金の表面に一体に接合した、所謂、複層からなる鉄系焼結摺動部材の製造方法について説明する。製造方法にはいくつかの方法があるが、ここでは粉末圧延法を使用した製造方法について説明する。
【0052】
この複層からなる鉄系焼結摺動部材を形成する鋼裏金としては、一般構造用圧延鋼板(JIS G−3101)からなる鋼板が使用される。
【0053】
主成分をなす鉄粉末に対し、炭素粉末3〜10wt%および銅−珪素−錫の合金粉末または鉄−銅−珪素−錫の合金粉末と銅粉末を、銅成分として15〜25wt%、珪素成分として1〜5wt%、錫成分として1〜5wt%となるように配合し、混合して混合粉末を形成する。この混合粉末に粉末結合剤の1〜15wt%水溶液を該混合粉末に対し0.1〜5.0wt%の割合で配合し、均一に混合して該混合粉末に湿潤性を与えた原料粉末を形成する。
【0054】
粉末結合剤として使用できるものとしては、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース(MC)、ゼラチン、アラビアゴム及びスターチなどが挙げられるが、とくにヒドロキシプロピルセルロースの使用が好ましい。粉末結合剤の溶媒としては、水あるいは水以外にエチルアルコール等の親水性化合物の5〜20wt%の水溶液を使用することもできる。
【0055】
粉末結合剤は上記溶媒に対して1〜15wt%加えて水溶液にするのが好ましい。該粉末結合剤水溶液の配合割合は、混合粉末に対して0.1〜5.0wt%が好ましく、これ以上の量を配合すると焼結体組織中に制御できないポア(孔)が増加し、得られる焼結層の強度を低下させる。
【0056】
上記湿潤性が与えられた原料粉末は、ついでコンベア及びホッパーによって圧延ロールに供給され、該圧延ロールによって該原料粉末は圧延シート(圧粉体シート)に形成される。原料粉末の圧延は双ロールを有する横型圧延機が使用される。該横型圧延機のロールへの原料粉末の供給量を一定にすれば、ロール隙間を変えることで圧延荷重が変化し、圧延シートの密度及び厚さを調節することができる。例えば、ロール速度を0.1〜1.0m/minとし、ロール間隔を0.4〜1.0mmとすると、密度5.5〜6.7g/cm2、厚さ1.38〜1.83mmの圧延シートが得られる。該圧延シートを中性もしくは還元性雰囲気に調整した加熱炉内で1100〜1150℃の温度で30〜60分間焼結し、その後炉冷して炉から取出し焼結板を得る。このようにして得た焼結板は上記鋼裏金としての鋼板の寸法に対応した寸法に切断機等を用いて切断する。
【0057】
鋼板の表面にロウ材を配置し、前記焼結板を鋼板の表面に該ロウ材を介して重ね合わせる。ロウ材としては、鉛−錫合金、亜鉛合金、黄銅、青銅、銅が粉末あるいは板の形態で適宜使用される。
【0058】
ロウ材を介して鋼板の表面に重ね合された焼結板を中性もしくは還元性雰囲気に調整した加熱炉内に置き、圧力下で該焼結板の鋼板表面への接合を行わせ、鋼板表面にロウ材を介して一体に接合した複層からなる鉄系焼結摺動部材を得る。
【0059】
この接合工程において、接合時の圧力は焼結組織の密度を増加させ、鋼板との接合強度を向上させるもので、本発明では0.1〜5.0kgf/cm2、好ましくは0.3〜3.0kgf/cm2である。
【0060】
接合温度は、焼結板と鋼板との接合強度に影響を及ぼすものであり、使用するロウ材に適したろう接温度が選択される。該ろう接温度としては、ロウ材の液相線以上の温度あるいは固相線温度と液相線温度の間の温度が使用される。例えば、鉛70wt%−錫30wt%からなる鉛−錫合金をロウ材として使用した場合は185〜265℃、銅89wt%−錫10wt%−燐1wt%からなる青銅をロウ材として使用した場合は800〜900℃である。また、接合時間も接合温度と同様、焼結板と鋼板との接合強度に影響を与える。本発明では、20〜30分間で良い結果が得られる。
【0061】
このようにして得られた複層からなる鉄系焼結摺動部材は、焼結板を鋼板表面にロウ材を介して一体に接合して複層化されるもので、焼結層の素地の組織は前述した鉄系焼結摺動部材と同様、パーライト組織またはフェライト組織またはパーライトとフェライトが共存した組織を呈し、該組織中に遊離セメンタイトの析出はなく、炭素は該組織中に分散含有されている。
【0062】
【実施例】
以下、本発明の鉄系焼結摺動部材をその実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に何ら限定されないのである。
【0063】
<実施例1>
25μmのふるいを通過する還元鉄粉76wt%に対し、200メッシュ(74μm)のふるいを通過する銅74wt%−珪素13wt%−錫13wt%の合金粉末を、銅成分として5.7wt%、珪素成分として1wt%、錫成分として1wt%となるように7.7wt%配合し、さらに150メッシュ(100μm)のふるいを通過する電解銅粉末を11.3wt%配合し、V型ミキサーにて20分間混合した後、炭素として、その粒径が100μm以上、150μm以下の天然黒鉛粉末を5wt%配合し、再度V型ミキサーで5分間混合して混合粉末(鉄:76wt%、銅:17wt%、珪素:1wt%、錫:1wt%、天然黒鉛:5wt%)を得た。
【0064】
ついで、この混合粉末を金型中に装填し、成形圧力3トン/cm2で成形して円筒状圧粉体を得た。この円筒状圧粉体をアンモニア分解ガス雰囲気の加熱炉内に置き、1100℃の温度で30分間焼結したのち、機械加工を施し、内径40mm、外径50mm、長さ15mmの鉄系焼結摺動部材を得た。この鉄系焼結摺動部材の密度は5.81g/cm3であった。
【0065】
この鉄系焼結摺動部材の素地の組織はパーライト組織を呈し、組織中に遊離セメンタイトの析出はなく、黒鉛は該組織中に分散含有されているのを確認した。ついで、該鉄系焼結摺動部材に含油処理を施し、含油率17vol%の含油鉄系焼結摺動部材を得た。
【0066】
<実施例2>
25μmのふるいを通過する還元鉄粉73.75wt%に対し、200メッシュ(74μm)のふるいを通過する鉄30wt%−銅34wt%−珪素12wt%−錫24wt%の合金粉末を、鉄成分として3.75wt%、銅成分として4.25wt%、珪素成分として1.5wt%、錫成分として3wt%となるように12.5wt%配合し、さらに150メッシュ(100μm)のふるいを通過する電解銅粉末を13.75wt%配合し、V型ミキサーにて20分間混合した後、炭素として、その粒径が100μm以上、150μm以下の天然黒鉛粉末を5wt%配合し、再度V型ミキサーで5分間混合して混合粉末(鉄:72.5wt%、銅:18wt%、珪素:1.5wt%、錫:3wt%、天然黒鉛:5wt%)を得た。
【0067】
以下、前記実施例1と同様の方法で、内径40mm、外径50mm、長さ15mmの鉄系焼結摺動部材を得た。この鉄系焼結摺動部材の密度は5.78g/cm3であった。
【0068】
この鉄系焼結摺動部材の素地の組織はパーライトとフェライトが共存する組織を呈し、組織中に遊離セメンタイトの析出はなく、黒鉛は該組織中に分散含有されているのを確認した。ついで、該鉄系焼結摺動部材に含油処理を施し、含油率16.5vol%の含油鉄系焼結摺動部材を得た。
【0069】
<比較例>
銅粉末5wt%、天然黒鉛粉末0.5wt%、不可避的不純物粉末3wt%、残部鉄粉末をV型ミキサーにて20分間混合し混合粉末を得た。ついで、この混合粉末を金型中に装填し、成形圧力3トン/cm2で成形して円筒状圧粉体を得た。この円筒状圧粉体をアンモニア分解ガス雰囲気の加熱炉内に置き、1100℃の温度で30分間焼結したのち、機械加工を施し、内径40mm、外径50mm、長さ15mmの鉄系焼結摺動部材を得た。この鉄系焼結摺動部材の密度は5.65g/cm3であった。
【0070】
この鉄系焼結摺動部材の素地の組織はパーライトとフェライトが共存する組織を呈し、組織中に遊離セメンタイトの析出はないことを確認した。ついで、該鉄系焼結摺動部材に含油処理を施し、含油率18.0vol%の含油鉄系焼結摺動部材を得た。
【0071】
つぎに、上記実施例及び比較例で得た鉄系焼結摺動部材の摺動特性について、下記の条件で試験した結果を説明する。
【0072】
<試験条件>
摺動速度 1.0m/min
負荷面圧 500kgf/cm2(負荷荷重3000kgf)
試験時間 20時間
試験方法 ジャーナル回転試験(相手軸連続回転運動)
【0073】
上記試験条件で行った摺動特性の試験結果は表1に示すとおりである。
【0074】
【表1】
表1中、摺動部材摩耗量及び相手軸摩耗量は試験時間20時間後の寸法変化量を示したもので、その単位はmmである。
【0075】
上述した試験結果から、実施例1及び実施例2の鉄系焼結摺動部材は、摩擦係数が低く、とくに相手軸の摩耗量は極めて低い値を示した。試験後の相手軸表面には、該摺動部材に含有されている黒鉛の固体潤滑作用に起因する黒鉛被膜が形成されているのが確認され、結果として相手軸の摩耗を低く抑えることができたものと推察される。この相手軸の摩耗を低く抑えることは、摺動部材として極めて重要な性質である。一方、比較例の鉄系焼結摺動部材は、実施例からなる鉄系焼結摺動部材との比較において、摩擦係数は比較的低い値で推移したが、潤滑油の消費とともの徐々に摩擦係数が上昇する傾向を示し、この摩擦係数の上昇により相手軸の摩耗を増大させたものと推察される。
【0076】
つぎに、複層からなる鉄系焼結摺動部材の実施例について説明する。
【0077】
<実施例3>
前記実施例1と同様の混合粉末を作製した。この混合粉末に、5.26wt%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)水溶液(HPC100g、エチルアルコール120ml及び水1780ml)を混合粉末重量に0.5%配合し、5分間V型ミキサーで均一に混合して湿潤性をもった原料粉末を得た。
【0078】
該原料粉末を直径603mmの双ロールをもった横型圧延ロールに、ロール間隙間0.5mm、ロール速度0.3m/minの条件下で通し、密度5.70g/cm3、厚さ1.50mmの圧延シート(圧粉体シート)を成形した。該圧延シートをアンモニア分解ガス雰囲気の加熱炉内に置き、1100℃の温度で30分間焼結して、焼結板を作製した。このようにして得た焼結板を幅170mm、長さ600mmの寸法に切断し、幅170mm、長さ600mm、厚さ10mmの一般構造用圧延鋼材(JIS G3101)の鋼板上に鉛−錫合金(鉛70%−錫30%)板からなるロウ材を介して重ね合わせ、アンモニア分解ガス雰囲気に調整した加熱炉内に置き、250℃の温度で20分間、圧力0.5kgf/cm2をかけながら焼結板と鋼板との接合を行わしめた後、機械加工を施し、鋼板上にロウ材を介して一体に接合した複層からなる鉄系焼結摺動部材を得た。
【0079】
この複層からなる鉄系焼結摺動部材の焼結層の密度は5.75g/cm3であり、該焼結層の素地の組織はパーライトとフェライトが共存する組織を呈し、組織中に遊離セメンタイトの析出はなく、黒鉛は組織中に分散含有されているのを確認した。ついで、該鉄系焼結摺動部材に含油処理を施し、含油率16.5vol%の複層からなる含油鉄系焼結摺動部材を得た。
【0080】
<実施例4>
前記実施例2と同様の混合粉末を作製し、以下前記実施例3と同様の方法で、鋼板上にロウ材を介して一体に接合した複層からなる鉄系焼結摺動部材を得た。この複層からなる鉄系焼結摺動部材の焼結層の密度は5.63g/cm3であり、該焼結層の素地の組織はパーライト組織を呈し、組織中に遊離セメンタイトの析出はなく、黒鉛は組織中に分散含有されているのを確認した。ついで、該鉄系焼結摺動部材に含油処理を施し、含油率17.5vol%の含油鉄系焼結摺動部材を得た。
【0081】
上述した実施例3及び実施例4で得た複層からなる鉄系焼結摺動部材の摺動特性について、下記の条件で試験した結果を説明する。
【0082】
【0083】
上記試験条件で行った摺動特性の試験結果は表2に示すとおりである。
【0084】
【表2】
表2中、摺動部材摩耗量及び相手軸摩耗量は試験ストローク10万サイクル試験後の寸法変化量を示したもので、その単位はmmである。
【0085】
上述した試験結果から、実施例3及び実施例4の複層からなる鉄系焼結摺動部材は、前述した実施例の試験結果と同様、摩擦係数が低く、とくに相手軸の摩耗量は極めて低い値を示した。
【0086】
【発明の効果】
本発明の鉄系焼結摺動部材は、その素地の組織をパーライト組織に、またはフェライト組織に、またはパーライトとフェライトが共存する組織に、それぞれ摺動部材の使用用途に応じて適宜制御可能であり、組織中に遊離セメンタイトを析出することなく多量の炭素(黒鉛)が分散含有されているので、該炭素の固体潤滑作用により自己潤滑性が付与されるとともに、潤滑油を含油した摺動部材においては炭素の固体潤滑作用と相俟って一層の自己潤滑性の向上が図られる。また、製造方法においては、α相生成元素である珪素及び錫を、銅との合金あるいは鉄−銅との合金の形態で、主成分をなす鉄及び炭素に配合することにより、焼結摺動部材の素地の組織中に遊離セメンタイトの析出を抑制することができる。
Claims (12)
- 銅−珪素−錫の合金粉末または鉄−銅−珪素−錫の合金粉末と銅粉末と炭素粉末と鉄粉末とからなる鉄系焼結摺動部材であって、銅成分15〜25wt%、珪素成分1〜5wt%、錫成分1〜5wt%、炭素成分3〜10wt%、残部鉄成分からなり、素地がパーライト組織またはフェライト組織またはパーライトとフェライトが共存した組織を呈し、該組織中に炭素成分が分散含有されていることを特徴とする鉄系焼結摺動部材。
- 炭素は、天然黒鉛または人造黒鉛からなる請求項1に記載の鉄系焼結摺動部材。
- 潤滑油が15〜20vol%の割合で含油されている請求項1又は2に記載の鉄系焼結摺動部材。
- 銅−珪素−錫の合金粉末または鉄−銅−珪素−錫の合金粉末と銅粉末と炭素粉末と鉄粉末とからなる鉄系焼結層が鋼裏金の表面にろう材を介して一体に接合されてなる複層からなる鉄系焼結摺動部材であって、該鉄系焼結層は銅成分15〜25wt%、珪素成分1〜5wt%、錫成分1〜5wt%、炭素成分3〜10wt%、残部鉄成分からなり、素地がパーライト組織またはフェライト組織またはパーライトとフェライトが共存した組織を呈し、該組織中に炭素成分が分散含有されていることを特徴とする鉄系焼結摺動部材。
- 炭素は、天然黒鉛または人造黒鉛からなる請求項4に記載の鉄系焼結摺動部材。
- 鉄系焼結層に潤滑油が15〜20vol%の割合で含油されている請求項4又は5に記載の鉄系焼結摺動部材。
- 主成分をなす鉄粉末に対し、炭素粉末3〜10wt%と銅−珪素−錫の合金粉末または鉄−銅−珪素−錫の合金粉末と銅粉末を銅成分として15〜25wt%、珪素成分として1〜5wt%、錫成分として1〜5wt%となるように配合し、混合して混合粉末を形成し、該混合粉末を金型に装填して所望の形状の圧粉体を成形し、この圧粉体を中性もしくは還元性雰囲気に調整した加熱炉内で1100〜1150℃の温度で30〜60分間焼結することを特徴とする鉄系焼結摺動部材の製造方法。
- 炭素粉末は、天然黒鉛または人造黒鉛からなる請求項7に記載の鉄系焼結摺動部材の製造方法。
- 圧粉体を焼結して鉄系焼結摺動部材を得たのち、これに含油処理を施し、15〜20vol%の割合で潤滑油を含油する請求項7又は8に記載の鉄系焼結摺動部材の製造方法。
- 主成分をなす鉄粉末に対し、炭素粉末3〜10wt%と銅−珪素−錫の合金粉末または鉄−銅−珪素−錫の合金粉末と銅粉末を銅成分として15〜25wt%、珪素成分として1〜5wt%、錫成分として1〜5wt%となるように配合し、混合して混合粉末を形成し、この混合粉末に粉末結合剤の1〜15wt%水溶液を該混合粉末に対し0.1〜5.0wt%添加し均一に混合してこれを原料粉末とし、該原料粉末を圧延ロールに供給して圧延シートを成形したのち、該圧延シートを中性もしくは還元性雰囲気に調整した加熱炉内で1100〜1150℃の温度で焼結して焼結板を作製し、該焼結板を鋼板からなる裏金の表面にロウ材を介して重ね合わせ、これを中性もしくは還元性雰囲気に調整した加熱炉内で該ロウ材のろう接温度で0.1〜5.0kgf/cm2の圧力下で20〜30分間加圧し、該焼結板の裏金表面への接合を行わせることを特徴とする複層からなる鉄系焼結摺動部材の製造方法。
- 炭素粉末は、天然黒鉛または人造黒鉛からなる請求項10に記載の複層からなる鉄系焼結摺動部材の製造方法。
- 焼結板の裏金表面への接合を行わせて複層からなる鉄系焼結摺動部材を得たのち、これに含油処理を施し、該裏金表面上の鉄系焼結層に15〜20vol%の割合で潤滑油を含油する請求項10又は11に記載の複層からなる鉄系焼結摺動部材の製造方法。
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