JP4234573B2 - 固体高分子型燃料電池用電解質膜の製造方法 - Google Patents

固体高分子型燃料電池用電解質膜の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4234573B2
JP4234573B2 JP2003401156A JP2003401156A JP4234573B2 JP 4234573 B2 JP4234573 B2 JP 4234573B2 JP 2003401156 A JP2003401156 A JP 2003401156A JP 2003401156 A JP2003401156 A JP 2003401156A JP 4234573 B2 JP4234573 B2 JP 4234573B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fuel cell
stretching
membrane
film
electrolyte membrane
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2003401156A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005166329A (ja
Inventor
秀一 中田
英俊 真杉
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Kasei Chemicals Corp
Original Assignee
Asahi Kasei Chemicals Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Kasei Chemicals Corp filed Critical Asahi Kasei Chemicals Corp
Priority to JP2003401156A priority Critical patent/JP4234573B2/ja
Publication of JP2005166329A publication Critical patent/JP2005166329A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4234573B2 publication Critical patent/JP4234573B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P70/00Climate change mitigation technologies in the production process for final industrial or consumer products
    • Y02P70/50Manufacturing or production processes characterised by the final manufactured product

Landscapes

  • Fuel Cell (AREA)

Description

本発明は、固体高分子型燃料電池に使用される電解質膜に関する。
近年、技術の進歩により固体高分子型燃料電池が注目されている。その理由としては、固体高分子型燃料電池を構成する固体高分子型燃料電池用電解質膜として高導電性の膜が開発されたこと、また同様に固体高分子型燃料電池を構成する、ガス拡散電極層中の触媒がカーボンに担持された状態のままイオン交換樹脂で被覆されることにより高い活性が得られるようになったこと、等が挙げられる。
しかしながら、現在の固体高分子型燃料電池用電解質膜として用いられる膜は、プロトン電導性が高く、電気抵抗が低いため、高い電池性能を発現する一方で、電池使用の際、含水時の膜の面積(縦×横)方向の寸法変化が生じ、電池寿命が短かくなるという問題が生じている。
具体的には、固体高分子型燃料電池のセル内で発生した水や、燃料ガスと共に供給される水蒸気等により、膜が膨潤したり乾燥するため、膜のシワ、破れ、変形、折り重なり、ピンホール等の原因となり、電池の寿命が短くなるのである。
したがって、固体高分子型燃料電池用電解質膜としては、低電気抵抗で、かつ、含水率の変化や温度変化に伴う面積方向の寸法変化が少ないことが望まれているのである。
固体高分子型燃料電池用電解質膜を、一対のガス拡散電極層の間に挟んで接合した膜電極接合体を作製する際には、通常、加熱下で行われるので、加熱中の収縮による寸法変化や厚みムラが少ないことも望まれている。
上記の問題を解決する方法として、固体高分子型燃料電池用電解質膜を、ガラス転移温度から融点までの温度範囲で二軸延伸して薄膜化と同時に膜の強度を向上させる方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。しかし、この方法は、強度物性向上のためには有効であるが、上記延伸温度範囲で延伸しても、含水率の変化や温度変化(熱収縮)による寸法変化を抑制することは困難である。
また、延伸により膜面積を5〜200%増大させ、含水時の寸法変化率を−5〜+5%にする固体高分子型燃料電池用電解質膜も開示されているが(例えば、特許文献2参照)、開示の手法による延伸倍率と含水時の寸法変化では、膜電極接合体作製時の寸法変化や厚みムラの発生を抑制することは困難である。
さらに、特許文献3には、パーフルオロカーボン重合体の末端がスルホン酸基およびスルホン酸基の前駆体であるSOF基を有する膜を延伸し、延伸配向後、α分散温度以上で拘束熱処理する方法等が記載されているが、実用時の寸法安定性が不十分である。
特開平11−354140号公報 特開2002−343380号公報 国際公開WO02−062879号パンフレット
本発明は、固体高分子型燃料電池製造時および使用時の、加熱および含水状態での、両者での実質的な(面積方向に対する)寸法変化が少ない固体高分子型燃料電池用電解質膜の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために、燃料電池に使用される固体高分子型燃料電池用電解質膜に要求される性能、特に膜強度について鋭意検討を行ったところ、特定の延伸工程と特定の熱処理工程を施した場合にのみ、本発明の課題を解決できる固体高分子型燃料電池用の電解質膜を製造することができることを見出し、本発明を完成させるにいたった。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(I) イオン交換基を有するパーフルオロカーボン重合体の膜を、
(1)該重合体のα分散温度より20℃低い温度以上で、α分散温度より40℃高い温度以下の領域に含まれる延伸温度下で、縦および横方向の同時二軸延伸を行う延伸工程と、
(2)引き続き、膜を固定した状態で延伸温度より高い温度で熱処理する熱処理工程と、
を経てなる固体高分子型燃料電池用電解質膜の製造方法。
(II) イオン交換基がスルホン酸基であることを特徴とする(I)に記載の固体高分子型燃料電池用電解質膜の製造方法。
(III) 延伸工程における二軸の延伸倍率が、各々独立に1.2倍以上3.0倍以下であり、かつ、面積延伸倍率が2〜8倍であることを特徴とする(I)または(II)に記載の固体高分子型燃料電池用電解質膜の製造方法。
(IV) (I)〜(III)のいずれか1つに記載の製造方法により製造された固体高分子型燃料電池用電解質膜であって、かつ、160℃における収縮率が1〜35%の範囲内にあり、80℃湿潤時の寸法変化率が、23℃で湿度50%における収縮率に対して−10〜30%の範囲内にあることを特徴とする固体高分子型燃料電池用電解質膜。
(V) (I)〜(III)のいずれか1つに記載の製造方法により製造された固体高分子型燃料電池用電解質膜を少なくとも一層有する、固体高分子型燃料電池用電解質膜の積層体であって、かつ、160℃における収縮率が1〜35%の範囲内にあり、80℃湿潤時の寸法変化率が、23℃、関係湿度50%における収縮率に対して−10〜30%の範囲内にあることを特徴とする固体高分子型燃料電池用電解質膜の積層体。
本発明によれば、含水時および加熱時の面積方向に対する寸法変化率が小さい固体高分子型燃料電池用電解質膜が得られる。そのため、固体高分子型燃料電池製作時、実用時に、該膜の、シワ、破れ、変形、ピンホール等が発生しにくく、長寿命で安定した電池性能が得られる固体高分子型燃料電池とすることができる。
本発明により製造された固体高分子型燃料電池用電解質膜は、電池使用時に、特にシワ等の発生しやすい燃料電池セルのガスケットの直ぐ内側部分でもシワ等の発生を抑制した膜とすることができる。
本発明について、以下に詳細に説明する。
本発明におけるイオン交換基を有するパーフルオロカーボン重合体には、公知の重合体が広く採用され、例えば、フッ化オレフィン化合物と、イオン交換基含有フッ化ビニル化合物との共重合体等を挙げることができる。
フッ化オレフィン化合物としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン等を挙げることができる。
イオン交換基含有フッ化ビニル化合物としては、CF2=CF−(OCF2CFX)−O−(CF2−Yで表される化合物を挙げることができる。(式中、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、mは0〜3の整数、nは1〜12の整数、pは0又は1であり、m+n≧1であり、n=0の場合はp=0である。Yはカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等の、イオンと交換反応を行う公知のイオン交換基である。)
本発明においては、フッ化オレフィン化合物としては、テトラフルオロエチレンが好ましく、イオン交換基含有フッ化ビニル化合物としては、スルホン酸基をイオン交換基とした化学式(1)〜(4)に示す化合物が好ましい。
CF=CFO(CFSOH (1)
CF=CFOCFCF(CF)O(CFSOH (2)
CF=CF(CFSOH (3)
CF=CF(OCFCF(CF))O(CFSOH (4)
上記式中、qは1〜8の整数、rは1〜8の整数、sは1〜8の整数、tは1〜5の整数である。
次に、本発明のイオン交換基を有するパーフルオロカーボン重合体の製造方法の一例として、SOF基を有するフルオロビニル化合物からスルホン酸基をイオン交換基とする重合体を製造する方法について説明する。
先ず、CF2=CF−(OCF2CFX)−O−(CF2−SOFで表されるフルオロビニル化合物(式中、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、mは0〜3の整数、nは1〜12の整数、pは0又は1であり、m+n≧1であり、n=0の場合はp=0である。)とフッ化オレフィン化合物とを重合してパーフルオロカーボン重合体の前駆体(以下、前駆体、と称する)を製造する。
フルオロビニル化合物として化学式(5)〜(8)で表されるものが好ましい。
CF=CFO(CFSOF (5)
CF=CFOCFCF(CF)O(CFSOF (6)
CF=CF(CFSOF (7)
CF=CF(OCFCF(CF))O(CFSOF (8)
上記式中、qは1〜8の整数、rは1〜8の整数、sは1〜8の整数、tは1〜5の整数である。
フルオロビニル化合物とフッ化オレフィン化合物とを、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等、公知の重合方法で共重合することによって前駆体を製造することができる。
本発明において、前駆体は、エーテル結合性の酸素原子等を含んでいてもよい。
前駆体を構成するフルオロビニル化合物とフッ化オレフィン化合物の組成比は、後述する方法で前駆体を本発明のスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体とした状態のイオン交換容量、すなわち、スルホン酸基(SOH基)を有するパーフルオロカーボン重合体中のスルホン酸基の濃度が、好ましくは0.5〜2.0ミリ当量/g乾燥樹脂、より好ましくは0.7〜1.6ミリ当量/g乾燥樹脂となるように設定する。イオン交換容量がこの範囲より低い場合には膜の電気抵抗が大きくなり、高い場合には膜の機械的強度が弱くなる。
前駆体のメルトフローレイト(MFR)は、前駆体の分子量に関連した指数を表すファクターで、膜諸強度、またはフイルム若しくはシート状に押し出し加工成膜する上では重要な因子である。
MFRは、JIS K−7210に準じて測定され、温度270℃、荷重2.16kgで10分間に流出する相当量をg数で表した値であり、0.05〜50g/10分の範囲にあることが好ましく、0.5〜30g/10分の範囲がより好ましい。MFRが50gを越えると分子量が小さくなり、強度が低下する場合があり、0.05g未満では前駆体の成膜が困難な場合がある。
イオン交換容量で示されるパーフルオロビニル化合物とテトラフルオロエチレンの共重合体の組成比と、その共重合体のMFR値には直接の相関関係はなく、同じイオン交換容量であっても、分子量を調整してMFR値を変えることができる。
以上のようにして得られる前駆体をTダイで溶融押出しして成膜し、膜状とした後、引き続き、加水分解および酸処理を行って本発明のイオン交換基を有するパーフルオロカーボン重合体の膜とすることができる。
溶融押し出し法で成膜する際に、同一種同士または異種の重合体の膜を多層状に積層して前駆体の膜を含む積層体とした後、加水分解・酸処理を施してイオン交換基を有するパーフルオロカーボン重合体の積層体としてもよい。さらに、前駆体を本発明のイオン交換基を有するパーフルオロ共重合体にした後、溶媒で溶解、または必要により乳化、懸濁分散させた規定濃度の該液からキャスト成膜した後、同一種同士または異種の重合体の膜と積層して、イオン交換基を有するパーフルオロカーボン重合体の積層体としてもよい。
本発明におけるスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体は、該重合体以外に、フィブリル、織布、不織布、多孔体等の補強材を含んでいてもよい。補強材を含む場合、補強材は、含フッ素重合体からなることが好ましく、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレンまたはパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく重合単位を含む、単独重合体または共重合体が好ましく使用される。
具体的な補強材としては、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE、という)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(以下、FEP、という)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)共重合体(以下、PFA、という)、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体(以下、PETFE、という)、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)共重合体、ポリパーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)等が挙げられる。中でも、特にPTFE、FEP、PFAおよびPETFEが機械的強度および化学的安定性等の特性上、好ましい。
本発明における固体高分子型燃料電池用電解質膜は、イオン交換容量、MFR等の特性が前述の範囲から外れない範囲内で、各種耐熱性ポリマー、エンジニアプラスチック、含窒素成分を含むポリマー等と混合してもよい。
本発明は、上記のイオン交換基を有するパーフルオロカーボン重合体の膜に、特定条件の下で延伸処理および熱処理を施すことによって、固体高分子型燃料電池用電解質膜を製造することにより、本発明の課題を解決したものである。
そこで以下に、本発明の延伸処理および熱処理の条件について詳細に説明する。先ず、延伸処理条件について説明する。
本発明の延伸処理は、同時二軸延伸することを特徴とする。同時二軸延伸とは、パーフルオロカーボン重合体の膜を、面内において縦方向と横方向の二方向に同時に延伸することを言う。
本発明において、縦方向とは、押出し成膜、キャスト成膜等を行って長尺膜を製造する際の巻き取り方向をいい(MD方向)、横方向とは、巻き取り方向と直交する方向(いわゆるTD方向)を言う。
本発明の延伸とは、膜に外力を加えることにより膜面積を増大させる加工のことであり、成形、薬品処理、乾燥等の製造工程の各段階において、物理的な外力を加えられない場合の膜面積の変化は含まれない。
本発明における延伸において、縦方向と横方向で独立に延伸倍率を設定できることが可能であるが、含水時および加熱時の両方の寸法安定性を保持させるためには、(縦方向の延伸倍率×横方向の延伸倍率)で表される面積延伸倍率は2〜8倍の範囲が好ましく、2〜6倍の範囲がより好ましい。面積延伸倍率が2倍未満では、含水時および加熱時の両方の寸法安定性を保持させることが難しくなる。また、面積延伸倍率が6倍を越えると、事業ベースにて生産する場合に、例えば、縦方向および横方向のクリップ間の距離が大きくなり、熱収縮率の点より、製品膜の延伸倍率が不均一になったり、また均一厚みに延伸することが困難になり、製造コストや連続生産性を前提とした品質安定性の面で問題が生じる。
縦方向の延伸倍率と横方向の延伸倍率の個々の倍率は、それぞれの延伸倍率をかけた面積延伸倍率が上記の範囲内であればよく、含水時および加熱時の両方の寸法安定性を保持させるために1.2〜3.0倍の範囲が好ましい。この延伸倍率が1.2倍未満では、延伸効果が得難く、3.0倍を越えると、加熱収縮率が増加し、厚み制御が難しくなる傾向がある。これらの延伸倍率は、原膜の押し出し条件、膜組成等で生じる成形時の配向性比等を考慮して最適値に制御される。目標とする延伸倍率を得るために、延伸を複数回行うこともできる。
本発明は、同時二軸延伸工程における延伸温度として、特定範囲の温度を用いることが特徴である。次に、延伸温度について説明する。
本発明において、イオン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体の膜を、先ず、該重合体のα分散温度より20℃低い温度以上で、α分散温度より40℃高い温度以下の領域に含まれる温度で、同時二軸延伸を行う。
イオン交換基を有するパーフルオロカーボン重合体の膜のα分散温度とは、動的粘弾性測定装置にて測定される、重合体の主鎖が熱運動を開始すると考えられる温度である。例えば、ナイロン等の重合体のα分散温度は、一般的に室温よりもはるかに高いため、延伸終了後にα分散温度以下に冷却することによって主鎖の熱運動を大きく減少させることが可能であり、これによって延伸配向を効果的に安定化させることができる。
例えば、イオン交換基がスルホン酸基の場合の、パーフルオロカーボン重合体のα分散温度は110〜140℃近傍に存在する。そこで、α分散温度を仮に140℃とした場合、延伸工程の延伸温度は120〜180℃の温度領域から設定される。
本発明は、また、延伸工程によって延伸された膜を、引き続き、膜固定した状態で、延伸温度より高い温度で熱処理することを特徴とする。
膜の固定とは、延伸処理した膜が延伸緩和されないよう膜の周囲を固定した状態を施すことを言い、具体的には、膜の端が固定された状態であればよく、チャック式テンターのような装置を用いて、電解質膜の端を固定することができる。
熱処理温度は、延伸温度より高い温度であればよく、好ましくは延伸温度より5℃以上40℃以下の範囲で高く、より好ましくは延伸温度より10℃以上30℃以下の範囲で高く、最も好ましくは延伸温度より15℃以上25℃以下の範囲で高い温度である。
本発明の延伸および熱処理工程は、上記のイオン交換基含有のパーフルオロカーボン重合体の単一層の膜に対して実施することができるほか、単一層の膜同士を積層した積層体であっても実施することは可能である。また、少なくとも単一層の膜を有する積層体、例えば、イオン交換基含有のパーフルオロカーボン重合体の単一層の膜と、異種の重合体の膜との積層体の場合であっても、α分散温度がほぼ同じであれば積層体の状態で延伸工程・熱処理工程を実施することが可能である。α分散温度に差異があった場合には、同一種の各々の膜に延伸工程・熱処理工程を実施した後に積層して積層体とする。
本発明の固体高分子型燃料電池用電解質膜の厚みに関しては、一般的に、薄いと電解質膜の強度が弱く、ハンドリング性が悪く、水素透過率が増加し、また膜電極接合体を作製する場合に電解質膜が破れるおそれがある。一方、厚すぎると、発電中に電解質膜中の水の移動が阻害され発電特性が低下する。
発電中は膜のアノード側とカソード側では含水率が異なり、厚さ方向に含水率の分布ができる。これが発電特性を低下させる原因の一つになっており、電解質膜が厚いほどこの現象が顕著となる。つまり、固体高分子型燃料電池用電解質膜の厚み制御は電池特性を左右する重要な因子であるといえる。したがって、厚みの範囲は、通常、5〜300μmであり、好ましくは10〜200μm、より好ましくは15〜100μmである。前記の膜厚は、積層体の場合も同じ理由から上記の同じ値をとることが好ましい。
本発明の製造方法により製造された固体高分子型燃料電池用電解質膜は、160℃における熱収縮率が1〜35%、好ましくは1〜30%、より好ましくは2〜20%の範囲内である。80℃湿潤時の寸法変化率は−10〜30%、好ましくは−5〜20%、より好ましくは−2〜15%の範囲内である。熱収縮率および寸法変化率がこれらの範囲内であれば、膜電極接合体作製時のシワ発生や厚みムラ、燃料電池発電時の電解質膜の弛みや厚みムラといった問題の発生を防ぐことができる。前記の160℃は、膜電極接合体を作製する際に熱プレスで必要とする温度の範囲であり、80℃湿潤状態とは、燃料電池の動作温度の範囲である。
本発明の固体高分子型燃料電池用電解質膜は、当該膜を複数積層した積層体であっても、当該膜とは異種の重合体の膜との積層体であっても、上記の熱収縮率および寸法変化率を満足するものである。
本発明の固体高分子型燃料電池用電解質膜は、160℃での熱収縮率と80℃湿潤時の寸法変化率の両特性がともに優れた値を示すことを特徴とする。すなわち、本発明の電解質膜が燃料電池の製造時および使用時の実質的な寸法変化が少ないことをあらわすものである。
この両特性ともに優れた値は、本発明の特定の延伸工程および熱処工程を経た場合にのみ達成されるものである。
本発明の固体高分子型燃料電池用電解質膜および積層体は、経時的に多数回(例えば、20回)、乾燥状態および湿潤状態を繰り返しても、乾湿寸法変化および熱収縮率の値が変化することがなく、安定している。
以上の方法で得られた本発明の固体高分子型燃料電池用電解質膜および積層体は、当該膜および積層体を用いて固体高分子型燃料電池を製造する際、および固体高分子型燃料電池を使用する際に効果を奏する。
以下に、固体高分子型燃料電池の製造方法およびその使用方法の一例について説明する。
固体高分子型燃料電池用電解質膜を、公知の方法により膜の両面に触媒を含むガス拡散電極を密着接合させて膜電極接合体(MEA)が形成される。
ガス拡散電極と固体高分子型燃料電池用電解質膜とは、加熱プレス法等により強固に密着させる工程を必要とする。そのため、本発明の製造方法により得られる固体高分子型燃料電池用電解質膜を用いると、加熱下での熱収縮率が小さいので、膜厚のバラツキを小さくでき、電流密度の均一な、ガス拡散電極との密着性に優れたものとすることができる。
ガス拡散電極は、通常、白金触媒粒子または白金合金触媒粒子を担持させた導電性のカーボンブラック粉末を、PTFE等の疎水性樹脂結着材で保持してなるシート状の多孔質体を用いることができる。
該多孔質体には、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体を含む物を用いることができ、重合体には、本発明の固体高分子型燃料電池用電解質膜を構成するパーフルオロカーボン重合体として挙げた重合体と同じ種類の重合体を用いることができる。カーボンブラック粉末は、上記パーフルオロカーボン重合体と触媒に被覆されていてもよい。
得られたMEAは、必要に応じて複数積層した後、公知の方法により集電体(バイポーラプレート)を最外側に配置して、いわゆる燃料電池セルが形成される。本発明では、一つのMEAから構成した燃料電池セルを燃料電池単セルと称する。
集電体は、表面等にガス流路を有するグラファイト製または金属製のフランジのことであり、電子を外部負荷回路へ伝達する他に、水素や酸素をMEA表面に供給する流路としての機能を持っている。
以上のようにして得られた燃料電池セルは、さらに燃料電池フレーム、ガス供給装置等と組み合わせて燃料電池として作動させることが可能となる。
燃料電池の作動は、一方の電極に水素を、他方の電極に酸素または空気を供給することによって行われる。燃料電池の作動温度は、高温であるほどガス拡散電極中の触媒活性が上がるため好ましいが、通常は水分管理が容易な50〜100℃で作動させることが多い。また、酸素や水素の供給圧力は高いほど燃料電池出力が高まるため好ましいが、膜の破損等によって両者が接触する確率も増加するため、適当な圧力範囲に調整することが好ましい。
本発明の燃料電池の作動条件を、上記の記載に基づき以下に示す条件として、本発明の固体高分子型燃料電池用電解質膜の燃料電池評価を行った。
以下に、本発明の物性値および燃料電池の評価方法について説明する。
(1)MFRの測定(JIS K−7210に準じて測定)
前述のスルホン酸基前駆体の共重合体組成物、約8gを用いて、東洋精機(株)製MELT INDEXER C−50590型にて、温度270℃、荷重2.16kgで10分間に流出する量を求め、g/10分で表す。
(2)イオン交換容量の測定
イオン交換膜およそ2〜10cmを、50mlの25℃の飽和NaCl水溶液(イオン交換水に過飽和状態になるまでNaClを溶解し、上澄み液を使用する)に浸漬し、攪拌しながら10分間放置する。次いで、フェノールフタレインを指示薬として0.01N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定する。中和後、得られたNa型イオン交換膜を純水ですすいだ後、10kPa以下、110℃、1時間真空乾燥して秤量する。中和に要した水酸化ナトリウム当量と真空乾燥重量より、イオン交換容量を算出する。
(3)α分散温度の測定
動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御(株)製、DVA−225)を用いて、所定のサンプル(長さ30mm、幅5mm)形状に切り出し、室温から250℃までの温度範囲を昇温速度5℃/分、空気中、周波数35Hzの条件下で測定し、横軸に温度、縦軸にtanδをプロットし、変化率のピーク温度をα分散温度とする。
(4)膜厚の測定
延伸前後の固体高分子型燃料電池用電解質膜を、23℃、関係湿度50%の恒温室に1時間以上放置した後、膜厚計(東洋精機製作所製:型式B−1)を用いて測定する。また、延伸前後の膜厚により平均延伸面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)を算出する。
(5)160℃における熱収縮率の測定
固体高分子型燃料電池用電解質膜(5cm×4cm)を23℃、関係湿度50%の恒温室で12時間以上放置した後、加熱前の縦方向および横方向の長さを測定する。その後、160℃に加熱したオーブンの中に水平方向に試料をフリーの状態(未拘束状態)で10分間放置したあと、オーブンから取り出す。これを23℃、関係湿度50%の恒温室で1時間以上放置した後、加熱後の縦方向および横方向の長さを測定し、加熱前後の長さから熱収縮率を算出する。
(6)80℃湿潤時の寸法変化率
固体高分子型燃料電池用電解質膜(5cm×4cm)を23℃、関係湿度50%の恒温室で12時間以上放置した後、含水前の縦方向および横方向の長さを測定する。その後、80℃の熱水に30分間浸漬させ、取り出し後、23℃の水中にて、含水後の縦方向および横方向の長さを測定する。含水前後の長さより含水時の寸法変化率を算出する。
(7)燃料電池性能評価
固体高分子型燃料電池用電解質膜を用いて、通常の既知の方法で、燃料電池単セルを製造し、水素ガスと酸素ガスを用いて常圧下80℃で電池発電テストを行い、初期セル電圧が30%低下するまでの時間を求める。
実施例および比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
[実施例1]
CF=CF−O−(CF−SOFで表されるフッ化ビニル化合物と、CF=CFで表される4フッ化エチレンを共重合体の繰り返し単位とする前駆体を、Tダイを用いて溶融押出しし、幅60cm、両耳部を幅10cmスリットした後、巻き取って、幅40cmのロール状の前駆体膜を成膜した。成膜体は、長さは100mで、平均厚さは45μmの長尺の原反である。成膜前に測定した前駆体のMFRは3であった。
得られた前駆体膜を、80℃に加温した加水分解浴(DMSO:KOH:水=5:30:65)に、原反から巻きだしながらケン化し、水洗、55℃に加温した酸性浴(2N−HNO)、水洗(40℃)、乾燥工程を経て、ラミネート工程でポリエチレンテレフタレレート(PET)のフィルムを片面に積層した。
この積層体を、両耳部を幅5cmでスリットし、幅30cmで再び巻き取り、延伸工程に用いるイオン交換基を有するパーフルオロカーボン重合体の延伸用原膜(未延伸膜)を得た。なお、延伸用原膜のPETフィルムを除く部分の厚みは49μmであり、α分散温度は135℃であった。またイオン交換容量は1.4ミリ当量/gであった。
次に、この延伸用原膜(未延伸膜)を巻きだし・巻取り装置を備えた延伸装置を用いて、PETフィルムを取り除きながら巻きだし、延伸温度は160℃とし、巻きだし方向(縦方向)に縦延伸倍率1.6倍、巻きだし方向に直交する方向(横方向)に延伸倍率1.5倍となるように設定し、チャックテンターで延伸速度0.3m/minで、同時二軸延伸をほどこした。
以上の延伸工程を経て得られた膜は、引き続き、延伸工程で用いた装置を用いて、チャックテンターで横方向を固定しながら180℃で熱処理工程を行い、本発明の固体高分子型燃料電池用電解質膜を得た。
このようにして得られた膜の平均厚みは、延伸処理工程後および熱処理工程後とも21μmであった。縦延伸倍率×横延伸倍率の面積延伸倍率は、延伸処理工程後および熱処理工程後とも2.4倍であった。
熱処理工程を経て得られた本発明の固体高分子型燃料電池用電解質膜の160℃の熱収縮率の、縦方向および横方向の平均値は9.0%であった。また、80℃の湿潤寸法変化率の縦方向および横方向の平均値は8.5%であった。
得られた固体高分子型燃料電池用電解質膜を用いて160℃の熱プレスにて膜電極接合体を作製したが、熱収縮によるシワ発生や破れは観察されなかった。また、室温にて金枠に固定し80℃温水中に浸漬させたが、厚みムラ、シワや破れの発生、弛みは観察されず、寸法安定性に優れた固体高分子型燃料電池用電解質膜であることがわかった。
運転温度80℃で燃料電池評価をしたところ、初期電池発電テストでは168hr(1週間)の運転でもセル電圧低下は30%以内であった。
[実施例2]
CF=CF−O−(CF−SOFで表されるフッ化ビニル化合物と、CF=CFで表される4フッ化エチレンを共重合体の繰り返し単位とする前駆体を、実施例1と同様にTダイを用いて溶融押出しし、幅60cm、両耳部を幅10cmスリットした後、巻き取って、幅40cmのロール状の前駆体膜を成膜した。この成膜体は、長さは100m、平均厚さは185μmの長尺の原反である。成膜前に測定した前駆体のMFRは3であった。
得られた前駆体膜は、80℃に加温した加水分解浴(DMSO:KOH:水=5:30:65)に原反から巻きだしながらケン化し、水洗、55℃に加温した酸性浴(2N−HNO)、水洗(40℃)、乾燥工程を経て、ラミネート工程でポリエチレンテレフタレレート(PET)のフィルムを片面に積層した。
この積層体を両耳部を幅5cmでスリットし、幅30cmで再び巻き取り、延伸工程に用いるイオン交換基を有するパーフルオロカーボン重合体の延伸用原膜(未延伸膜)を得た。延伸用原膜のPETフィルムを除く部分の厚みは200μmであり、α分散温度は135℃であった。またイオン交換容量は1.4ミリ当量/gであった。
次に、この延伸用原膜(未延伸膜)を実施例1と同様の延伸装置を用いて、PETフィルムを取り除きながら巻きだし、延伸温度は160℃とし、巻きだし方向(縦方向)に縦延伸倍率2.5倍、巻きだし方向に直交する方向(横方向)に延伸倍率2.5倍となるように設定し、チャックテンターで延伸速度0.3m/minで、同時二軸延伸工程をほどこした。
以上の延伸工程を経て得られた膜は、引き続き、延伸工程で用いた装置を用いて、チャックテンターで横方向を固定しながら180℃で熱処理工程を行い、本発明の固体高分子型燃料電池用電解質膜を得た。
このようにして得られた膜の平均厚みは、延伸処理工程後および熱処理工程後とも32μmであった。また縦延伸倍率×横延伸倍率の面積延伸倍率も、延伸処理工程後および熱処理工程後とも6.2倍であった。
熱処理工程を経て得られた本発明の固体高分子型燃料電池用電解質膜の160℃の熱収縮率の縦方向および横方向の平均値は9.0%であった。また、80℃の湿潤寸法変化率の縦方向および横方向の平均値は8.5%であった。
得られた固体高分子型燃料電池用電解質膜を用いて160℃の熱プレスにて膜電極接合体を作製したが、熱収縮によるシワ発生や破れは観察されなかった。また、室温にて金枠に固定し80℃温水中に浸漬させたが、厚みムラ、シワや破れの発生、弛みは観察されず、寸法安定性に優れた固体高分子型燃料電池用電解質膜であることがわかった。
運転温度80℃で燃料電池評価をしたところ、初期電池発電テストでは実施例1と同様に、168hr(1週間)の運転でもセル電圧低下は30%以内であった。
[実施例3]
実施例1で作製した延伸用原膜(未延伸膜)を、実施例1と同様の延伸装置を用いて、PETフィルムを取り除きながら巻きだし、延伸温度は160℃とし、巻きだし方向(縦方向)に縦延伸倍率1.2倍、巻きだし方向に直交する方向(横方向)に延伸倍率1.7倍となるように設定し、チャックテンターで延伸速度0.3m/minで、同時二軸延伸工程をほどこした。
以上の延伸工程を経て得られた膜は、引き続き、延伸工程で用いた装置を用いて、チャックテンターで横方向を固定しながら180℃で熱処理工程を行い、本発明の固体高分子型燃料電池用電解質膜を得た。
このようにして得られた膜の平均厚みは、延伸処理工程後および熱処理工程後とも25μmであった。また縦延伸倍率×横延伸倍率の面積延伸倍率も延伸処理工程後および熱処理工程後とも2.0倍であった。
熱処理工程を経て得られた本発明の固体高分子型燃料電池用電解質膜の、160℃の熱収縮率の縦方向および横方向の平均値は8.0%であった。また、80℃の湿潤寸法変化率の縦方向および横方向の平均値は8.2%であった。
得られた固体高分子型燃料電池用電解質膜を用いて160℃の熱プレスにて膜電極接合体を作製したが、熱収縮によるシワ発生や破れは観察されなかった。また、室温にて金枠に固定し、80℃温水中に浸漬させたが、厚みムラ、シワや破れの発生、弛みは観察されず、寸法安定性に優れた固体高分子型燃料電池用電解質膜であることがわかった。
運転温度80℃で燃料電池評価をしたところ、初期電池発電テストでは168hr(1週間)の運転でもセル電圧低下は30%以内であった。
[実施例4]
CF=CFO−CFCF(CF)O−(CF−SOFで表されるフッ化ビニル化合物と、CF=CFで表される4フッ化エチレンを共重合体の繰り返し単位とするフッ素系イオン交換樹脂前駆体を、実施例1と同様にTダイを用いて押出し成膜し、耳部をスリットし、巻き取つて、厚さ45μmのロール状前駆体膜とした。前駆体のMFRは2であった。
得られた前駆体膜を、実施例1と同様に80℃に加温した加水分解浴(DMSO:KOH:水=5:30:65)でケン化し、水洗、55℃に加温した酸性浴(2N−HNO)、水洗(40℃)、乾燥工程を経て、ラミネート工程でPETフィルムをラミネートした。スリット後、両耳部を幅5cmでスリットし、幅30cmで再び巻き取り、延伸用原膜(未延伸膜)を得た。延伸用原膜のPETフィルムを除いた厚みは49μmであった。この延伸用原膜のPETフィルムを除いた部分のα分散温度は112℃であった。またイオン交換容量は0.9ミリ当量/gであった。
次に、この延伸用原膜を、実施例1と同様の延伸装置を用いて、PETフィルムを除きながら延伸温度130℃、縦延伸倍率1.6倍、横延伸倍率1.5倍で延伸工程を施した。以上の延伸工程を経て得られた膜は、引き続き実施例1と同様の装置を用いて横方向を固定しながら熱処理温度が160℃で熱処理工程を施し、本発明の固体高分子型燃料電池用電解質膜を得た。得られた膜の厚みは、延伸工程後も熱処理工程後も22μmであり、縦延伸倍率×横延伸倍率の面積延伸倍率は、延伸工程後も熱処理工程後も2.4倍であった。
得られた電解質膜の160℃の熱収縮率(縦方向と横方向の平均値)は7.5%であった。また、80℃の湿潤寸法変化率(縦方向と横方向の平均値)は6.0%であった。
得られた固体高分子型燃料電池用電解質膜を用いて120℃の熱プレスにて膜電極接合体を作製したが、熱収縮によるシワ発生や破れは観察されなかった。また、室温にて金枠に固定し80℃温水中に浸漬させたが、厚みムラ、シワや破れの発生、弛みは観察されず、寸法安定性に優れた固体高分子型燃料電池用電解質膜であることがわかった。
実施例1と同様に燃料電池評価を行った結果、実施例1〜3と同様の結果を得た。
[実施例5]
CF=CFO−CFCF(CF)O−(CF−SOFで表されるフッ化ビニル化合物と、CF=CFで表される4フッ化エチレンを共重合体の繰り返し単位とするフッ素系イオン交換樹脂前駆体を、実施例1と同様にTダイを用いて押出し、成膜し、耳部をスリットし、巻き取つて厚さ185μmのロール状前駆体膜とした。前駆体のMFRは2であった。
得られた前駆体膜を、実施例1と同様に80℃に加温した加水分解浴(DMSO:KOH:水=5:30:65)でケン化し、水洗、55℃に加温した酸性浴(2N−HNO)、水洗(40℃)、乾燥工程を経て、ラミネート工程でPETフィルムをラミネートした。スリット後、両耳部を幅5cmでスリットし、幅30cmで再び巻き取り、延伸用原膜(未延伸膜)を得た。延伸用原膜のPETフィルムを除いた厚みは200μmであった。この延伸用原膜のPETフィルムを除いた部分のα分散温度は112℃であった。またイオン交換容量は0.9ミリ当量/gであった。
次に、この延伸用原膜(未延伸膜)を、実施例1と同様の延伸装置を用いて、PETフィルムを除きながら延伸温度130℃、縦延伸倍率2.5倍、横延伸倍率2.5倍で延伸を施した。以上の延伸工程を経て得られた膜を、引き続き実施例1と同様の装置を用いて、横方向を固定しながら熱処理温度が160℃で熱処理工程を施し、本発明の固体高分子型燃料電池用電解質膜を得た。得られた膜の厚みは、延伸工程後および熱処理工程後とも33μmであり、縦延伸倍率×横延伸倍率の面積延伸倍率は、延伸工程後および熱処理工程後とも6.1倍であった。
得られた電解質膜の160℃の熱収縮率(縦方向と横方向の平均値)は7.5%であった。また、80℃の湿潤寸法変化率(縦方向と横方向の平均値)は6.0%であった。
得られた固体高分子型燃料電池用電解質膜を用いて120℃の熱プレスにて膜電極接合体を作製したが、熱収縮によるシワ発生や破れは観察されなかった。また、室温にて金枠に固定し80℃温水中に浸漬させたが、厚みムラ、シワや破れの発生、弛みは観察されず、寸法安定性に優れた固体高分子型燃料電池用電解質膜であることがわかった。
実施例1と同様に燃料電池評価を行った結果、実施例1〜4と同様の結果を得た。
[実施例6]
実施例4で作製した延伸用原膜(未延伸膜)を、実施例1と同様の延伸装置を用いて、PETフィルムを除きながら延伸温度130℃、縦延伸倍率1.2倍、横延伸倍率1.7倍で延伸を施した。以上の延伸工程を経て得られた膜を、引き続き実施例1と同様の装置を用いて横方向を固定しながら熱処理温度が160℃で熱処理工程を施し、本発明の固体高分子型燃料電池用電解質膜を得た。得られた膜の厚みは、延伸工程後および熱処理工程後とも24μmであり、縦延伸倍率×横延伸倍率の面積延伸倍率は、延伸工程後および熱処理工程後とも2.0倍であった。
得られた電解質膜の160℃の熱収縮率(縦方向と横方向の平均値)は6.5%であった。また、80℃の湿潤寸法変化率(縦方向と横方向の平均値)は6.0%であった。
得られた固体高分子型燃料電池用電解質膜を用いて、120℃の熱プレスにて膜電極接合体を作製したが、熱収縮によるシワ発生や破れは観察されなかった。また、室温にて金枠に固定し80℃温水中に浸漬させたが、厚みムラ、シワや破れの発生、弛みは観察されず、寸法安定性に優れた固体高分子型燃料電池用電解質膜であることがわかった。
また、実施例1と同様に燃料電池評価を行った結果、実施例1〜5と同様の結果を得た。
[実施例7]
実施例1で得られた縦延伸倍率×横延伸倍率の面積延伸倍率2.4倍の固体高分子型燃料電池用電解質膜1枚と、実施例4で得られた縦延伸倍率×横延伸倍率の面積延伸倍率2.4倍の固体高分子型燃料電池用電解質膜1枚を積層した。さらに、最外側がポリイミドフィルムとなるように2枚のポリイミドフィルムで挟み込み、熱ロールプレスを用いて、ロール通過時の膜温度が210℃、線圧150kg/cmの条件下でプレスを実施した。
得られた固体高分子型燃料電池用電解質膜の積層体の160℃の熱収縮率(縦方向、横方向の平均値)は8.0%であった。また、80℃の湿潤寸法変化率(縦方向と横方向の平均値)は6.0%であった。
以上のようにして得られた固体高分子型燃料電池用電解質膜の積層体を用いて、160℃の熱プレスにて膜電極接合体を作製したが、熱収縮によるシワ発生や破れは観察されなかった。
また、室温にて金枠に固定し80℃温水中に浸漬させたが、厚みムラ、シワや破れの発生、弛みは観察されず、寸法安定性に優れた固体高分子型燃料電池用電解質膜の積層体であることがわかった。
得られた固体高分子型燃料電池用電解質膜の積層体を運転温度80℃で燃料電池評価したところ、初期電池発電テストでは168hr(1週間)の運転でもセル電圧低下は30%以内であり、実施例1〜6同様の結果となった。
[比較例1]
実施例1と同じ前駆体膜を用いて、熱処理工程の温度が160℃である以外は実施例1と同様にして電解質膜を得た。得られた電解質膜の160℃の熱収縮率(縦方向と横方向の平均値)は39.0%であった。また、80℃の湿潤寸法変化率(縦方向と横方向の平均値)は0.7%であった。
得られた電解質膜を用いて、160℃の熱プレスにて膜電極接合体を作製しようとしたが、熱収縮によりセル内相当部の厚み偏差が倍近くなり、厚み斑が発生しており、膜電極接合体は作製できなかった。室温にて、金枠に固定し80℃温水中に浸漬させたが、シワや破れの発生や弛みは観察されなかった。
[比較例2]
実施例1と同じ前駆体膜を用いて、延伸工程の延伸倍率が縦方向および横方向とも1.1倍であること以外は実施例1と同様の方法で電解質膜を得た。得られた電解質膜の延伸後および熱処理後の厚みはいずれも40μmであった。
得られた電解質膜の160℃の熱収縮率(縦方向と横方向の平均値)は2.0%であった。また、80℃の湿潤寸法変化率(縦方向と横方向の平均値)は33.7%であった。
得られた電解質膜を用いて、160℃の熱プレスにて膜電極接合体を作製したが、熱収縮はなく、シワや破れの発生や弛みは観察されなかった。また、室温にて金枠に固定し80℃温水中に浸漬させたが、破れはないが、シワやや弛みが大量に発生していることが観察された。
得られた電解質膜を用いて燃料電池評価をしたところ、初期発電電圧が低く、更には7時間で、発電しなくなった。
[比較例3]
実施例4と同じ前駆体膜を用いて、熱処理温度が130℃である以外は実施例4と同様にして電解質膜を得た。電解質膜の延伸後、熱処理後の厚みはいずれも22μmであった。
得られた電解質膜の160℃の熱収縮率(縦方向と横方向の平均値)は38.0%であった。また、80℃の湿潤寸法変化率(縦方向と横方向の平均値)は0.8%であった。
得られた電解質膜を用いて、160℃の熱プレスにて膜電極接合体を作製したが、熱収縮により延伸前に近い厚みに戻っており、膜電極接合体(MEA)は作製できなかった。また、室温にて金枠に固定し80℃温水中に浸漬させたが、シワや破れの発生や弛みは観察されなかった。
[比較例4]
実施例4と同じ前駆体膜を用いて、延伸倍率が縦方向および横方向ともに1.1倍であること、熱処理温度が130℃であること以外は実施例4と同様にして電解質膜を得た。
得られた電解質膜の160℃の熱収縮率(縦方向と横方向の平均値)は1.0%であった。また、80℃の湿潤寸法変化率(縦方向と横方向の平均値)は35.0%であった。
得られた電解質膜を用いて、160℃の熱プレスにて膜電極接合体を作製したが、熱収縮はなく、シワや破れの発生や弛みは観察されなかった。また、室温にて金枠に固定し80℃温水中に浸漬させた。破れはないが、シワやや弛みが大量に発生している事が観察された。
得られた電解質膜を用いて燃料電池評価をしたところ、初期発電電圧が低く、更には8時間で、発電しなくなった。
本発明の電解質膜製造方法および製造膜は、寸法安定性に優れた固体高分子型燃料電池用電解質膜として、燃料電池の分野で好適に利用できる。

Claims (3)

  1. イオン交換基を有するパーフルオロカーボン重合体の膜を、
    (1)該重合体のα分散温度より20℃低い温度以上で、α分散温度より40℃高い温度以下の領域に含まれる延伸温度下で、縦および横方向の同時二軸延伸を行う延伸工程と、
    (2)引き続き、膜を固定した状態で延伸温度より5℃以上40℃以下の範囲で高い温度で熱処理する熱処理工程と、
    を経てなる固体高分子型燃料電池用電解質膜の製造方法。
  2. イオン交換基がスルホン酸基であることを特徴とする請求項1記載の固体高分子型燃料電池用電解質膜の製造方法。
  3. 延伸工程における二軸の延伸倍率が、各々独立に1.2倍以上3.0倍以下であり、かつ、面積延伸倍率が2〜8倍であることを特徴とする請求項1または2記載の固体高分子型燃料電池用電解質膜の製造方法。
JP2003401156A 2003-12-01 2003-12-01 固体高分子型燃料電池用電解質膜の製造方法 Expired - Lifetime JP4234573B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003401156A JP4234573B2 (ja) 2003-12-01 2003-12-01 固体高分子型燃料電池用電解質膜の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003401156A JP4234573B2 (ja) 2003-12-01 2003-12-01 固体高分子型燃料電池用電解質膜の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005166329A JP2005166329A (ja) 2005-06-23
JP4234573B2 true JP4234573B2 (ja) 2009-03-04

Family

ID=34725170

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003401156A Expired - Lifetime JP4234573B2 (ja) 2003-12-01 2003-12-01 固体高分子型燃料電池用電解質膜の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4234573B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8128836B2 (en) 2006-06-12 2012-03-06 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Electrolyte membrane and method of selecting the same
JP2008004500A (ja) * 2006-06-26 2008-01-10 Toyota Motor Corp 燃料電池電解質膜用の多孔質膜とその製造方法
KR100897104B1 (ko) * 2006-11-02 2009-05-14 현대자동차주식회사 다층구조를 가진 전해질 강화막의 제조 방법
WO2008093795A1 (ja) 2007-01-31 2008-08-07 Asahi Glass Company, Limited 固体高分子形燃料電池用膜電極接合体、固体高分子形燃料電池およびそれらの製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005166329A (ja) 2005-06-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10644339B2 (en) Polymer electrolyte membrane
US6692858B2 (en) Electrolyte membrane for polymer electrolyte fuel cell and producing method thereof
JP5334273B2 (ja) フッ素系高分子電解質膜
JP2014525115A (ja) 改善された複合ポリマー電解質膜
WO2020162511A1 (ja) 膜電極接合体、水電解装置
US20020064700A1 (en) Solid polymer electrolyte fuel cell and method of its production
WO2004011535A1 (ja) 高分子膜、その製造方法及び固体高分子型燃料電池用膜電極接合体
JP5207582B2 (ja) 寸法変化の少ない電解質膜の製造方法
JP2015076201A (ja) 高分子電解質膜の製造方法及び高分子電解質膜の製造装置
JP6999411B2 (ja) 複合高分子電解質膜
JP4014506B2 (ja) フッ素系イオン交換膜
JP5189394B2 (ja) 高分子電解質膜
JP2002025583A (ja) 固体高分子型燃料電池用電解質膜及びその製造方法
JP4234573B2 (ja) 固体高分子型燃料電池用電解質膜の製造方法
JP2009252723A (ja) 固体高分子形燃料電池用電解質膜、その製造方法及び固体高分子形燃料電池用膜電極接合体
JP4867081B2 (ja) 固体高分子型燃料電池用電解質膜及びその製造方法
JP4188789B2 (ja) 固体高分子型燃料電池用電解質膜の製造方法
JP2014110232A (ja) フッ素系高分子電解質膜
JP2003059512A (ja) 固体高分子型燃料電池用電解質膜の製造方法
JP2005078895A (ja) 陽イオン交換膜、その製造方法及び固体高分子型燃料電池用膜電極接合体
WO2001006586A1 (fr) Pile a combustible du type a polyelectrolyte solide et procede de fabrication y relatif
EP4209620A1 (en) Membrane electrode assembly, solid polymer electrolyte membrane, water electrolysis system and electrolytic hydrogenation system
JP2004067880A (ja) フッ素系イオン交換膜
JP2004071361A (ja) フッ素系のイオン交換膜

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20050615

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20050616

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20061128

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20080620

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080624

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080818

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20080818

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20081021

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20081209

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20081211

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111219

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4234573

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111219

Year of fee payment: 3

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111219

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111219

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121219

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121219

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131219

Year of fee payment: 5

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

EXPY Cancellation because of completion of term