JP4234242B2 - 電子ビーム描画装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子銃から放出された電子ビームを成形や偏向し、さらに縮小投影して試料上に照射し、この試料上に描画を行う電子ビーム描画装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
このような電子ビーム描画装置によるパターン描画は、光波長より短い電子ビーム(電子線)の波長レベルの分解能の精度で描画可能であり、高い解像度でパターンを形成できるものである。
【0003】
反面、このパターン描画は、光露光によるマスク描画方式と異なり、完成パターンを小さな分割パターンビームで直接描画するので、描画に時間がかかるという問題がある。
【0004】
それでも、高精度の細線パターンを形成できるという特徴を持っていることから、光露光方式のリソグラフィー技術の次の技術、或いはASIC(特定用途向け集積回路)などの多品種少量生産の半導体製造に有力なツールとして発展している。
【0005】
パターン描画の方法としては、小さな丸形状の電子ビームをON/OFF制御しながら試料面上に全面スキャンしてパターンを形成する第1の方法と、ステンシアルアパーチャを通過した電子ビームを試料面上に照射してパターン描画するVSB描画の第2の方法とがある。
【0006】
このうちVSB描画を発展させ、繰り返しのパターンを1つのブロックとしてステンシルとして準備し、これを選択描画することで高速描画する一括描画方式の電子ビーム描画の技術も開発されている。
【0007】
図21はこのようなVSB描画方式を用いた電子ビーム描画装置の代表例を示す構成図である。
【0008】
電子銃1から放出される電子ビーム2の光軸上には、電子光学系として、照明レンズ3、第1の成形アパーチャ4、投影レンズ5、成形偏向器6、第2の成形アパーチャ7、縮小レンズ8、対物レンズ9、主偏向器10、副偏向器11、電子検出器12などが配置されている。
【0009】
このうち第1の成形アパーチャ4には、例えば図22に示すように矩形のアパーチャ4aが形成され、第2の成形アパーチャ7には、例えば図23に示すように菱形と矩形とを組み合わせたセルアパーチャ7aなどの各種形状の複数のアパーチャ7b、7c、…が形成されている。
【0010】
このような構成であれば、半導体ウエハ等の試料13に対して描画を行う場合、電子銃1から放出され加速された電子ビーム2は、照明レンズ3により均一な電子ビームに整えられ、第1の成形アパーチャ4を通過することで矩形に成形され、投影レンズ5によって第2の成形アパーチャ7に投影される。
【0011】
このとき、電子ビームの第2の成形アパーチャ7に対する照射位置は、例えばCADデータに従ったビームパターン形状及びその面積になるように成形偏向器6によって制御される。
【0012】
例えば、図24に示すように矩形のアパーチャ4aを通過した矩形の電子ビームを成形偏向器6により偏向し、菱形・矩形のセルアパーチャ7aの一辺に照射させると、例えば三角形状の電子ビーム2aが成形される。
【0013】
この第2の成形アパーチャ7を通過した電子ビームは、縮小レンズ8及び対物レンズ9によって試料13面上に縮小投影され、かつこのときの試料13面上に対する電子ビームの描画位置は、主偏向器10及び副偏向器11により制御される。
【0014】
すなわち、主偏向器10は、試料13に対して描画照射領域のストライブ内位置を図示しないXYステージの位置を参照しながら制御し、かつ副偏向器11は、ストライブ内を細かく分割した描画範囲に対してその位置制御を行う。
【0015】
このように制御された電子ビームパターンを連続的にショットすることで、試料面上にパターンを形成する。又、パターン描画の前には、電子ビームのアライメンと調整を行なっている。
【0016】
試料13に電子ビームが照射されると、試料13からは2次電子や反射電子が発生する。
【0017】
対物レンズ9の下方に配置された電子検出器12は、2次電子や反射電子を検出し、その検出信号を出力する。
【0018】
従って、電子検出器12から出力される検出信号を処理することで、SEM像の検出やビーム調整の制御を行っている。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
このような電子ビーム描画装置の電子光学系は、照明レンズ3や投影レンズ5、縮小レンズ8、対物レンズ9などを電磁レンズで構成するとともに、成形偏向器6や主偏向器10、副偏向器11などを静電偏向器で構成するとともに、これらレンズや偏向器の総合的な光学系特性、ビーム制御法で構築し、かつ機械的な組み立て精度、コンタミネーションなどの影響を十分考慮した構成を余儀なくされている。
【0020】
しかるに、電子光学系に電磁レンズを使用し、光学的に設計から求めた偏向器を電磁レンズと重畳或いは近傍に配置させるので、電磁レンズの内径を大きく形成し、この電磁レンズ内部に偏向器を内蔵する複雑な構造を取っている。
【0021】
又、ビーム解像度を高めるために、電子ビームの加速電圧を高くし、高加速度に加速した電子ビームを例えば試料13面のレジストに打ち込む方式を取っている。
【0022】
一方、試料13面のレジスト下面には各種の多層薄膜が形成されているので、電子ビームは、レジストを透過した後、その一部が多層薄膜で反射し、散乱電子ビームとなって再びレジストを透過して戻る現象が発生したり、電子ビームパターンのショット粗密バラツキ状態により、ビーム照射量の相互干渉が発生する。
【0023】
このような現象が発生すると、パターン描画されたレジストに散乱電子ビームによるボケ露光、いわゆる近接効果が発生し、描画パターンにぼけが発生するとともに解像度が劣化する。
【0024】
このため、高い解像度のパターン描画を行うためには、本来のパターン描画制御の他に、近接効果を補正キャンセルする目的で、パターン形状に応じた近接効果補正制御を行うことが余儀なくされている。
【0025】
これによって電子光学系や制御手段の面でも大掛かりなシステムを必要とし、システムが複雑化し、この複雑化が装置のトラブルを誘発し、結果的にパターン描画の精度が低下するという問題を抱えている。
【0026】
さらに、精度及びスループットを高める機能を盛り込むに従い、益々巨大化したシステムとなってしまう。
【0027】
そこで本発明は、パターン描画精度をキープしながらシステムの小型化・単純化が実現できる電子ビーム描画装置を提供することを目的とする。
【0028】
【課題を解決するための手段】
請求項1によれば、電子ビームに対して少なくとも成形や偏向し、この後に試料に対して縮小投影する電子光学系を備えた電子ビーム描画装置において、前記電子光学系は、少なくとも前記成形、前記縮小投影を行う静電式の各レンズ、及び前記電子ビームを偏向する静電式の偏向器から構成され、さらに前記電子光学系は、電子ビームを任意の形状に調整するためにそれぞれ所定の位置に配置された複数のアパーチャと、前記電子ビームを照明用ビームの電子ビームに調整する静電式照明レンズと、前記複数のアパーチャの各パターンの組み合わせから成るアパーチャ像を得るために前記静電式照明レンズにより調整された前記電子ビームを偏向して前記アパーチャに対する照射位置を制御し、かつ前記アパーチャを通過して得られたパターン像の電子ビームを元の光軸上に戻す少なくとも2つの静電式成形偏向器と、これら静電式成形偏向器を通過した前記電子ビームを縮小する静電式縮小レンズと、この静電式縮小レンズを通過した前記電子ビームを前記試料上に縮小投影する静電式又は電磁式の対物レンズ、及びこの対物レンズにより前記試料上に縮小投影される前記電子ビームを前記試料上に偏向して描画する静電式主偏向器から成る主偏向対物レンズと、前記静電式主偏向器の走査領域内で前記電子ビームを偏向する静電式副偏向器と、前記試料に前記電子ビームが照射されたときに発生する2次電子又は反射電子を検出する電子検出器とを備え、さらに前記静電式主偏向器から前記電子ビームの上流側に配置され、前記電子ビームを偏向して前記静電式主偏向器に対して収差を最小に制御する静電式プリ主偏向器と、前記静電式副偏向器の前記電子ビームの上流側に配置され、前記電子ビームを偏向して前記静電式副偏向器に対して収差を最小に制御する静電式プリ副偏向器とを備え、さらに前記静電式主偏向器と前記静電式プリ主偏向器とは、前記収差を最小に制御するためにそれぞれの制御電圧の連動比を1:1に成立させるために、プリ主偏向センタエレクトロードの軸方向長さ又は内径が調整されている。
【0029】
請求項2によれば、電子ビームに対して少なくとも成形や偏向し、この後に試料に対して縮小投影する電子光学系を備えた電子ビーム描画装置において、前記電子光学系は、少なくとも前記成形、前記縮小投影を行う静電式の各レンズ、及び前記電子ビームを偏向する静電式の偏向器から構成され、さらに前記電子光学系は、電子ビームを任意の形状に調整するためにそれぞれ所定の位置に配置された複数のアパーチャと、前記電子ビームを照明用ビームの電子ビームに調整する静電式照明レンズと、前記複数のアパーチャの各パターンの組み合わせから成るアパーチャ像を得るために前記静電式照明レンズにより調整された前記電子ビームを偏向して前記アパーチャに対する照射位置を制御し、かつ前記アパーチャを通過して得られたパターン像の電子ビームを元の光軸上に戻す少なくとも2つの静電式成形偏向器と、これら静電式成形偏向器を通過した前記電子ビームを縮小する静電式縮小レンズと、この静電式縮小レンズを通過した前記電子ビームを前記試料上に縮小投影する静電式又は電磁式の対物レンズ、及びこの対物レンズにより前記試料上に縮小投影される前記電子ビームを前記試料上に偏向して描画する静電式主偏向器から成る主偏向対物レンズと、前記静電式主偏向器の走査領域内で前記電子ビームを偏向する静電式副偏向器と、前記試料に前記電子ビームが照射されたときに発生する2次電子又は反射電子を検出する電子検出器とを備え、さらに前記静電式主偏向器から前記電子ビームの上流側に配置され、前記電子ビームを偏向して前記静電式主偏向器に対して収差を最小に制御する静電式プリ主偏向器と、さらに前記静電式副偏向器の前記電子ビームの上流側に配置され、前記電子ビームを偏向して前記静電式副偏向器に対して収差を最小に制御する静電式プリ副偏向器とを備え、さらに前記静電式副偏向器と前記静電式プリ副偏向器とは、前記収差を最小に制御するためにそれぞれの制御電圧の連動比を1:1に成立させるために、プリ副偏向センタエレクトロードの軸方向長さ又は内径が調整されている。
【0030】
請求項3によれば、電子ビームに対して少なくとも成形や偏向し、この後に試料に対して縮小投影する電子光学系を備えた電子ビーム描画装置において、前記電子光学系は、少なくとも前記成形、前記縮小投影を行う静電式の各レンズ、及び前記電子ビームを偏向する静電式の偏向器から構成され、さらに前記電子光学系は、電子ビームを任意の形状に調整するためにそれぞれ所定の位置に配置された複数のアパーチャと、前記電子ビームを照明用ビームの電子ビームに調整する静電式照明レンズと、前記複数のアパーチャの各パターンの組み合わせから成るアパーチャ像を得るために前記静電式照明レンズにより調整された前記電子ビームを偏向して前記アパーチャに対する照射位置を制御し、かつ前記アパーチャを通過して得られたパターン像の電子ビームを元の光軸上に戻す少なくとも2つの静電式成形偏向器と、これら静電式成形偏向器を通過した前記電子ビームを縮小する静電式縮小レンズと、この静電式縮小レンズを通過した前記電子ビームを前記試料上に縮小投影する静電式又は電磁式の対物レンズ、及びこの対物レンズにより前記試料上に縮小投影される前記電子ビームを前記試料上に偏向して描画する静電式主偏向器から成る主偏向対物レンズと、前記静電式主偏向器の走査領域内で前記電子ビームを偏向する静電式副偏向器と、前記試料に前記電子ビームが照射されたときに発生する2次電子又は反射電子を検出する電子検出器とを備え、さらに前記静電式主偏向器から前記電子ビームの上流側に配置され、前記電子ビームを偏向して前記静電式主偏向器に対して収差を最小に制御する静電式プリ主偏向器と、さらに前記静電式副偏向器の前記電子ビームの上流側に配置され、前記電子ビームを偏向して前記静電式副偏向器に対して収差を最小に制御する静電式プリ副偏向器とを備え、さらに前記静電式主偏向器に対する前記静電式プリ主偏向器の制御電圧を加算方向に制御し、かつ前記静電式副偏向器に対する前記静電式プリ副偏向器の制御電圧を減算方向に制御する収差補正手段を備えている。
【0031】
請求項4によれば、電子ビームに対して少なくとも成形や偏向し、この後に試料に対して縮小投影する電子光学系を備えた電子ビーム描画装置において、前記電子光学系は、少なくとも前記成形、前記縮小投影を行う静電式の各レンズ、及び前記電子ビームを偏向する静電式の偏向器から構成され、さらに前記電子光学系は、電子ビームを任意の形状に調整するためにそれぞれ所定の位置に配置された複数のアパーチャと、前記電子ビームを照明用ビームの電子ビームに調整する静電式照明レンズと、前記複数のアパーチャの各パターンの組み合わせから成るアパーチャ像を得るために前記静電式照明レンズにより調整された前記電子ビームを偏向して前記アパーチャに対する照射位置を制御し、かつ前記アパーチャを通過して得られたパターン像の電子ビームを元の光軸上に戻す少なくとも2つの静電式成形偏向器と、これら静電式成形偏向器を通過した前記電子ビームを縮小する静電式縮小レンズと、この静電式縮小レンズを通過した前記電子ビームを前記試料上に縮小投影する静電式又は電磁式の対物レンズ、及びこの対物レンズにより前記試料上に縮小投影される前記電子ビームを前記試料上に偏向して描画する静電式主偏向器から成る主偏向対物レンズと、前記静電式主偏向器の走査領域内で前記電子ビームを偏向する静電式副偏向器と、前記試料に前記電子ビームが照射されたときに発生する2次電子又は反射電子を検出する電子検出器とを備え、さらに前記電磁式対物レンズの磁気フィールド中に前記静電式主偏向器を配置し、さらに前記電磁式対物レンズを構成するコイルの巻回されたポールピースのギャップの中に、前記静電式主偏向器が配置された構造であり、さらに前記ポールピースの先端部には、非磁性シールドが取り付けられている。
【0067】
【発明の実施の形態】
(1) 以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図21と同一部分には同一符号を付してある。
【0068】
図1は電子ビーム描画装置の構成図であり、図2は同装置の断面構造を示す図である。
【0069】
先ず、全体の配置を説明すると、電子銃1から放出される電子ビーム2の光軸上には、電子光学系の各構成要素として、第1の成形アパーチャ4、静電式照明レンズ20、第1の静電式成形偏向器21、第2の成形アパーチャ7、第2の静電式成形偏向器22、第3のアパーチャ23、静電式縮小レンズ24、静電式主偏向対物レンズ25及び電子検出器12が配置されている。
【0070】
このうち静電式主偏向対物レンズ25は、静電式対物レンズ26と静電式主偏向器27とから構成されている。
【0071】
又、電子ビーム2の光軸において、静電式主偏向対物レンズ25の上流側には、静電式副偏向器28、静電式プリ主偏向器29、静電式プリ副偏向器30が配置されている。
【0072】
次に上記電子光学系の各構成要素について説明する。
【0073】
第1の成形アパーチャ4には、上記同様に例えば図22に示すように矩形又は円形のセルアパーチャ4aが形成され、第2の成形アパーチャ7には、例えば図23に示すように菱形と矩形とを組み合わせたセルアパーチャ7aなどの各種形状の複数のセルアパーチャ7b、7c、…が形成されている。
【0074】
静電式照明レンズ20は、電子銃1から放出された電子ビーム2を均一な電子ビーム(照明ビーム)に整えるもので、第1の照明レンズ20a及び第2の照明レンズ20bを光軸上に配置したものとなっている。
【0075】
これら第1及び第2の照明レンズ20a、20bは、それぞれ静電式レンズから構成されるもので、図3に示すように負電圧を印加した電極(エレクトロード)20−1の両側に各電極20−2、20−3を配置し、これら電極20−2、20−3を共にグラウンド(G)に落としたアインツェル型のレンズにより構成されている。
【0076】
このうち第2の照明レンズ20bのクロスオーバは、第3のアパーチャ23の位置に結像するように構成し、かつ第1及び第2の照明レンズ20a、20bに対する印加電圧を可変制御することで、照明ビームの倍率を任意に選択でき、照明ビームの試料面上での電流密度を制御する構成となっている。
【0077】
第1の静電式成形偏向器21は、各偏向器21a、21bから成り、試料13面上に所望のアパーチャ像を得るために静電式照明レンズ20により成形された電子ビームを偏向し、第2の成形アパーチャ7に対する照射位置を制御する機能を有している。
【0078】
第2の静電式成形偏向器22は、各偏向器22a、22bから成り、第2のアパーチャ成形7を通過して得られたアパーチャ像の電子ビームを元の光軸上に戻す機能を有している。
【0079】
これら第1及び第2の静電式成形偏向器21、22は、図4に示すように8極の電極31の両側に各電極32、33を配置し、これら電極32、33を共にグラウンド(G)に落としたもので、8極の電極31のそれぞれに各電圧V1 〜V8 を独立に印加して、電子ビームを偏向制御するものとなっている。
【0080】
又、これら第1及び第2の静電式成形偏向器21、22は、例えば各偏向器21a、21b、22a、22bの構成・形状を同一に設計すると、これら4つの電圧連動比を、例えば、+Vi :−Vi :−Vi :+VI や、−Vi :+Vi :+Vi :−VI の組み合わせの連動比の電圧で制御でき、共通の制御電圧の極性を違えた形で制御可能で、電気回路形を簡略化できるものである。
【0081】
さらに、これら第1及び第2の静電式成形偏向器21、22には、図2に示すように各シールド電極34、35、36、及び、37、38、39がそれぞれ設けられている。そして、これら第1及び第2の静電式成形偏向器21、22が連続かつ隣接して配置されている場合には、相互の電場が偏向制御に影響を及ぼさないようにシールドで遮断された構造となっている。
【0082】
特に低加速の電子銃1を適用した電子光学系で構成する場合、電子ビーム2のクロスオーバポイントで電子のクーロン反発現象が顕著になるため、電子光学系の長さを極力短く設計することがポイントになるので、本発明装置では、その対策として、図2に示すように隣接するシールド電極35、38を共用することで、隣接偏向器の干渉を防ぐ構成とし、光路長を短小化する構造にしている。
【0083】
静電式縮小レンズ24は、第1及び第2の静電式成形偏向器21、22を通過した電子ビームを縮小するものである。
【0084】
この静電式縮小レンズ24の上部には、第3のアパーチャ23が設置されている。この第3のアパーチャ23は、第1及び第2の成形アパーチャ4、7等で散乱された不要なビームをカットするために設けられている。
【0085】
この第3のアパーチャ23は、静電式縮小レンズ24に対して近接する位置に設けられているので、図2に示すように静電式縮小レンズ24に接合した構造となっている。
【0086】
この場合、静電式縮小レンズ24の上側シールド電極24aの厚さは、下側シールド電極24bの厚さの少なくとも2倍以上の厚さに形成し、これにより内径が異なったシールド電極を連続させることで生じる不連続のビーム軌道が発生しない安定した光学系としている。
【0087】
主偏向対物レンズ25は、上記図4に示す静電式成形偏向器と同様に、同一円周上に配置された4倍数の多極に分割された複数の電極と、これら電極を挟んで対向配置された各シールド電極とから構成され、このうち各シールド電極は共にグラウンドに落とされている。
【0088】
そして、この主偏向対物レンズ25は、上記の如く1つの構造で静電式対物レンズ26と静電式主偏向器27の双方の機能を有して動作する。そしてこれら静電式対物レンズ26及び静電式主偏向器27には、電圧制御部40が接続されている。そして、この電圧制御部40による静電式対物レンズ26と静電式主偏向器27とに対する電圧制御により、これら静電式対物レンズ26と静電式主偏向器27とは次のような機能を有する。
【0089】
静電式対物レンズ26は、静電式縮小レンズ24を通過した電子ビームを試料13上に縮小投影するもので、電極に同じ電圧が印加されることによって電子ビーム2を収束させるものとなる。
【0090】
静電式主偏向器27は、静電式対物レンズ26により試料13上に縮小投影される電子ビームを試料13上に偏向して描画するもので、電極にレンズ収束電圧とは別の独立制御電圧が加減演算されて印加され、電子ビームを試料13の面上の任意の位置に移動させるものとなる。
【0091】
又、これら静電式対物レンズ26及び静電式主偏向器27には、第1の収差補正部41が接続されている。
【0092】
この収差補正部41は、主偏向対物レンズ25に対しての電子光学系で発生する収差に応じた補正量を複数の電極に加減印加して主偏向系で発生する収差を最小化する制御機能を有している。
【0093】
上記静電式副偏向器28は、静電式主偏向器27の走査領域内で電子ビームを微小偏向する機能を有している。
【0094】
静電式プリ主偏向器29は、静電式主偏向器27に対して電子ビームの上流側に配置され、電子ビーム2を偏向し、試料13面でビーム偏光制御に応じて発生する各種レンズ収差及び偏向収差を最小に制御する機能を有している。
【0095】
これら静電式主偏向器27及び静電式プリ主偏向器29は、試料13面のビーム偏向に応じて発生する各種レンズ収差及び偏向収差を最小にする条件を制御連動比1:1の制御電圧条件で成立するようにプリ主偏向センタエレクトロードの軸方向長さ又は内径が調整されている。
【0096】
さらに、これら静電式主偏向器27及び静電式プリ主偏向器29の両端には、隣接した偏向器の影響をなくすためにシールド電極27aが設けられている。
【0097】
このようにプリ主偏向センタエレクトロードの軸方向の長さ又は内径を設け、かつ静電式プリ主偏向器29、静電式プリ副偏向器30の両端側にシールド電極を配置することにより、静電式プリ主偏向器29と静電式主偏向器27とを同一電圧値の条件で制御できる。
【0098】
静電式プリ副偏向器30は、電子ビーム2を偏向し、試料13面のビーム副偏向に応じて発生する各種レンズ収差及び副偏向収差を最小に制御する機能を有している。
【0099】
上記静電式副偏向器28と静電式プリ副偏向器30とは、制御連動比1:1の制御電圧条件で成立するようにプリ副偏向器センタエレクトロードの軸方向長さ又は内径が調整されている。
【0100】
さらに、これら静電式副偏向器28と静電式プリ副偏向器30の両端には、隣接した偏向器の影響をなくすために各シールド電極28a、28b、30a、30bが設けられている。
【0101】
このようにプリ副偏向センタエレクトロードの軸方向の長さ又は内径を設け、かつ静電式プリ副偏向器30、静電式プリ副偏向器30の両端側にシールド電極を配置することにより、静電式プリ副偏向器30と静電式副偏向器28とを同一電圧値の条件で制御できる。
【0102】
又、静電式プリ主偏向器29と静電式プリ副偏向器30とには、第2の収差補正部42が接続されている。
【0103】
この第2の収差補正部42は、図5に示すように静電式主偏向器27に対する静電式プリ主偏向器29の制御電圧を加算方向に制御し、かつ図6に示すように静電式副偏向器28に対する静電式プリ副偏向器30の制御電圧を減算方向に制御し、総合的な収差を最小化する機能を有している。
【0104】
ところで、上記静電式プリ副偏向器30、静電式プリ主偏向器29、静電式副偏向器28及び静電式主偏向器27は、電子ビーム2の進行方向に沿って配置されており、これら隣接する静電式プリ副偏向器30、静電式プリ主偏向器29、静電式副偏向器28及び静電式主偏向器27の各間には、それぞれ各シールド電極30b(29a)、28a(29b)、28b(27a)が共用するように配置されている。
【0105】
このような各シールド電極を用いることにより相互干渉を防ぐことができ、これより電子光学系全体の長さを短小化し、レンズ収差、偏向収差を小さくしている。
【0106】
主偏向対物レンズ25の下方には、上記電子検出器12が配置されている。そして、この主偏向対物レンズ25における下側シールド電極43は、図7に示すように電子検出器12のシールド電極として共用する構造になっている。この場合、下側シールド電極43の厚さは、上側シールド電極28b(27a)の厚さの少なくとも2倍以上に形成されている。
【0107】
次に上記の如く構成された装置の作用について説明する。
【0108】
試料13は、XYテーブル44上に載置される。
【0109】
電子銃1から放出された電子ビーム2は、矩形又は円形のセルアパーチャを有する第1の成形アパーチャ4に照射され、この第1の成形アパーチャ4を通過する。
【0110】
電子式照明レンズ20は、第1の成形アパーチャ4を通過した電子ビーム2に対し、第2の成形アパーチャ7における目的の1個のセルアパーチャに対して十分大きく、かつ隣接するセルアパーチャに干渉しない大きさのビーム径に拡大する。
【0111】
このとき、第2の照明レンズ20bは、電子ビーム2を第3の成形アパーチャ23の位置に結像する。又、第1及び第2の照明レンズ20a、20bの印加電圧が可変制御されることにより、電子ビーム(ここでは照明ビーム)2の倍率を任意に選択し、電子ビーム2の試料面上の電流密度を制御している。
【0112】
第1の静電式成形偏向器21は、第1の成形アパーチャ4と第2の成形アパーチャ7との各セルアパーチャを組み合わせて所望のアパーチャ像を得るために、静電式照明レンズ20からの電子ビーム2を偏向し、第2の成形アパーチャ7に形成されている各セルアパーチャのうち目的とするセルアパーチャを選択するように照射位置を制御する。
【0113】
第2の静電式成形偏向器22は、第2のアパーチャ成形7を通過して得られたアパーチャ像の電子ビーム2を元の光軸上に振り戻す。
【0114】
静電式縮小レンズ24は、第1及び第2の静電式成形偏向器21、22を通過した電子ビーム2を縮小する。すなわち、第1の静電式成形偏向器21、第2の成形アパーチャ7及び第2の静電式成形偏向器22を通過した電子ビーム2は、第2の成形アパーチャ7を起点とするセルパターンビームとしてスタートし、電子光学系の光軸上に振り戻された状態で電子式縮小レンズ24を通過する。
【0115】
そして、主偏向対物レンズ25の静電式対物レンズ26は、静電式縮小レンズ24を通過した電子ビームを試料13上に縮小投影し、これと共に静電式主偏向器27は、静電式対物レンズ26により試料13上に縮小投影される電子ビーム2を試料13上に偏向して描画する。
【0116】
このとき静電式主偏向器27及び静電式副偏向器28は、描画パターン位置に対するビーム位置を制御する。すなわち、静電式主偏向器27は、XYテーブル44上に搭載された試料13に対し、描画領域の位置をXYテーブル44の位置を参照しながら静電式主偏向器27の走査領域内で電子ビームを微小偏向し、かつ静電式副偏向器28は、細かく分割した描画範囲に対して位置制御を行う。
【0117】
さらに、静電式プリ主偏向器29は、電子ビームを偏向し、試料13面でビーム偏光制御に応じて発生する各種レンズ収差及び偏向収差を最小に制御し、静電式プリ副偏向器30は、電子ビーム2を偏向し、試料13面のビーム副偏向に応じて発生する各種レンズ収差及び副偏向収差を最小に制御する。
【0118】
又、第1の収差補正部41は、主偏向対物レンズ25の複数の電極に同一電圧を印加して電子ビーム2を収束するに対し、電子光学系で発生する収差を主偏向量に応じて予め求めた補正量を複数の電極に加減印加して図5に示すように静電式主偏向器27に対する静電プリ主偏向器29の制御電圧を加算方向に制御し、主偏向系で発生する収差を最小化する。
【0119】
第2の収差補正部42は、図6に示すように静電式副偏向器28に対する静電式プリ副偏向器30の制御電圧を減算方向に制御し、総合的な収差を最小化する。
【0120】
このようにして所望のアパーチャ像に形成された電子ビーム2が試料13に照射して、パターンを形成する。
【0121】
なお、描画するジョブと調整するジョブとは別々に行なわれる。
【0122】
電子検出器12は、試料13から発生した2次電子や反射電子を検出し、その検出信号を出力する。
【0123】
従って、電子検出器12から出力される検出信号を処理することで、SEM像の検出やビーム調整の制御を行っている。
【0124】
ここで、電子検出器12には、比較的高い制御電圧が印加され、さらに球面収差を小さくするために主偏向対物レンズ25に対して近接して設置されている。これにより、上記の如く主偏向対物レンズ25における下側シールド電極43は、図7に示すように電子検出器12のシールド電極として共用し、かつ下側シールド電極43の厚さを上側シールド電極28b(27a)の厚さの少なくとも2倍以上に形成している。
【0125】
これは、内径が小さなシールド電極を電子光学系の光軸方向であるZ方向の厚さを考慮せずに配置すると、図8に示すように電場オフセットフィールドΔfが発生し、光学特性に狂いを生じるのを防止している。
【0126】
このように上記第1の実施の形態においては、電子光学系における各構成要素を静電式レンズや静電式偏向器により構成したので、これら静電式レンズや静電式偏向器に用いるシールド電極を隣接する静電式レンズや静電式偏向器との間で共用できるなどにより、電子光学系全体の長さを短小化でき、非常に小型の電子ビーム描画装置を実現できる。
【0127】
又、静電式レンズや静電式偏向器により構成することにより、低加速電子ビーム2を対象にした電子ビーム描画装置に最も適したものとなり、試料13面での近接効果の影響が無く、複雑な近接効果に対する補正制御が必要なくなる。
【0128】
さらに、電子光学系や制御面でも大幅にシステムの簡素化が図ることができ、描画装置でのトラブルが少なくなり、生産現場に充分対応できる。
【0129】
これにより、電子ビーム描画装置の最大の弱点とされる高スループット処理についても、描画精度をキープしながら小型、システムの単純化が実現でき、電子光学系を数台配置した並行制御システムを構築することが可能となり、高スループットな電子ビーム描画装置を構築できる。
(2) 次に本発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図2と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
【0130】
図9は電子ビーム描画装置の構成図である。
【0131】
電子光学系の光軸上には、電磁式対物レンズ50が設けられている。この電磁式対物レンズ50は、円柱形状で、その内側に開口部(ギャップ)が形成されたポールピース51と、このポールピース51に巻回されたコイル52とから構成されている。
【0132】
この電磁式対物レンズ50のポールピース51のギャップ内には、静電式主偏向器53が内蔵された構造となっている。すなわち、電磁式対物レンズ50の磁場フィールド内に静電式主偏向器53が配置されている。
【0133】
このように電磁式対物レンズ50のポールピース51のギャップ内に静電式主偏向器53を内蔵したので、電磁式対物レンズ50によるレンズ機能と、静電式主偏向器53による電子ビーム2に対する偏向機能とをそれぞれ独立して制御する構成となっている。
【0134】
又、ポールピース51の先端部には、非磁性シールド54が取り付けられ、静電式主偏向器53による漏れ電場が他に影響しない構造となっている。
【0135】
なお、静電式主偏向器53への制御配線は、図10に示すようにポールピース51に貫通孔55を設け、この貫通孔55から配線を引き出して行っている。
【0136】
又、ポールピース51には、補助コイル56を設け、電磁式対物レンズ50により発生する磁場を調整するようにしてもよい。
【0137】
静電式主偏向器53は、電磁式対物レンズ50により試料13上に縮小投影される電子ビーム2を試料13上に偏向して描画するもので、電極にレンズ収束電圧とは別の独立制御電圧が加減演算されて印加され、電子ビームを試料13の面上の任意の位置に移動させるものとなる。
【0138】
ここで、上記静電式プリ副偏向器30、静電式プリ主偏向器29、静電式副偏向器28及び静電式主偏向器53は、電子ビーム2の進行方向に沿って配置されており、これら隣接する静電式プリ主偏向器29、静電式副偏向器28及び静電式主偏向器53の各間には、それぞれ各シールド電極30b(29a)、28a(29b)、54が共用するように配置されている。
【0139】
このような各シールド電極を共用する構造により、電子光学系全体の長さを短小化し、レンズ収差、偏向収差を小さくしている。
【0140】
次に上記の如く構成された装置の作用について説明する。
【0141】
電子銃1から放出された電子ビーム2は、矩形又は円形のセルアパーチャを有する第1の成形アパーチャ4に照射される。
【0142】
静電式照明レンズ20は、第1の成形アパーチャ4を通過した電子ビーム2に対し、第2の成形アパーチャ7における目的の1個のセルアパーチャに対して十分大きく、かつ隣接するセルアパーチャに干渉しない大きさのビーム径に拡大する。
【0143】
このとき、第2の照明レンズ20bは、電子ビーム2を第3のアパーチャ23の位置に結像する。又、第1及び第2の照明レンズ20a、20bの印加電圧が可変制御されることにより、電子ビーム2の倍率を任意に選択するとともに試料面上の電流密度を制御する。
【0144】
第1の静電式成形偏向器21は、第1の成形アパーチャ4と第2の成形アパーチャ7との各セルアパーチャを組み合わせて所望のアパーチャ像を得るために、静電式照明レンズ20からの電子ビーム2を偏向し、第2の成形アパーチャ7に形成されている各セルアパーチャのうち目的とするセルアパーチャを選択するように照射位置を制御する。
【0145】
第2の静電式成形偏向器22は、第2のアパーチャ成形7を通過して得られたアパーチャ像の電子ビーム2を元の光軸上に振り戻す。
【0146】
第1の静電式成形偏向器21から第2の成形アパーチャ7及び第2の静電式成形偏向器22を通過した電子ビーム2は、第2の成形アパーチャ7を起点とするセルパターンビームとしてスタートし、電子光学系の光軸上に振り戻された状態で静電式縮小レンズ24を通過する。この静電式縮小レンズ24を通過した電子ビーム2は、縮小される。
【0147】
この電磁式対物レンズ50は、静電式縮小レンズ24を通過した電子ビームを試料13上に縮小投影し、これと共に静電式主偏向器53は、電磁式対物レンズ50により試料13上に縮小投影される電子ビーム2を試料13上に偏向して描画する。
【0148】
このとき静電式主偏向器53は、XYテーブル44上に搭載された試料13に対し、描画領域の位置をXYテーブル44の位置を参照しながら静電式主偏向器53の走査領域内で電子ビームを微小偏向する。
【0149】
これと共に、静電式副偏向器28は、細かく分割した描画範囲に対して位置制御を行う。
【0150】
さらに、静電式プリ主偏向器29は、電子ビームを偏向し、試料13面でビーム偏光制御に応じて発生する各種レンズ収差及び偏向収差を最小に制御し、静電式プリ副偏向器30は、電子ビーム2を偏向し、試料13面のビーム副偏向に応じて発生する各種レンズ収差及び副偏向収差を最小に制御する。
【0151】
このようにして所望のアパーチャ像に形成された電子ビーム2を試料13に照射してパターンを形成する。
【0152】
電子検出器12は、試料13から発生した2次電子や反射電子を検出し、その検出信号を出力する。この電子検出器12から出力される検出信号を処理することで、SEM像の検出やビーム調整の制御を行っている。
【0153】
このように上記第2の実施の形態においては、電子光学系における各構成要素を静電式レンズや静電式偏向器、電磁式対物レンズにより構成したので、上記第1の実施の形態と同様に、これら静電式レンズや静電式偏向器に用いるシールド電極を隣接する静電式レンズや静電式偏向器との間で共用できるなどにより、電子光学系全体の長さを短小化でき、非常に小型の電子ビーム描画装置を実現できる。
【0154】
又、電磁式対物レンズ50のポールピース51のギャップ内に静電式主偏向器53を内蔵したので、電磁式対物レンズ50によるレンズ機能と、静電式主偏向器53による電子ビーム2に対する偏向機能とをそれぞれ独立して制御できる。
【0155】
又、ポールピース51の先端部に非磁性シールド54を取り付けたので、静電式主偏向器53から発生する漏れ電場を吸収することができ、漏れ電場を隣接する偏向器などに影響を与えることがない。
【0156】
又、静電式主偏向器53への配線をポールピース51に貫通孔55を設けて引き出すので、複雑な配線を簡素化できる。
【0157】
又、静電式レンズや静電式偏向器により構成することにより、低加速電子ビーム2を対象にした電子ビーム描画装置に最も適したものとなり、試料13面での近接効果の影響が無く、複雑な近接効果に対する補正制御が必要なくなる。
【0158】
さらに、電子光学系や制御面でも大幅にシステムの簡素化が図ることができ、描画装置でのトラブルが少なくなり、生産現場に充分対応できる。
【0159】
これにより、電子ビーム描画装置の最大の弱点とされる高スループット処理についても、描画精度をキープしながら小型、システムの単純化が実現でき、電子光学系を数台配置した並行制御システムを構築することが可能となり、高スループットな電子ビーム描画装置を構築できる。
【0160】
図11は、本発明に係わる電子ビーム描画装置の第3の実施の形態を示す構成図である。なお、図11において、上述した図2と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0161】
電子ビーム描画装置では、レンズ及びアパーチャの中心位置に電子ビームの光軸合せを行うための、4組のアライメント機構60〜90を備えている。なお、図11の左側には、光軸合せの一例が示されており、一点鎖線Cは中心位置を示している。一方、第2の成形アパーチャ7の代りに、第2の成形アパーチャ100が配置され、第3の成形アパーチャ23の代りに第3の成形アパーチャ101が配置されている。
【0162】
アライメント機構60は、第1の照明レンズ20aと第2の照明レンズ20bの間に設けられている。アライメント機構70は、第1の静電式成形偏向器21の外周側に設けられている。アライメント機構80は、第2の静電式成形偏向器22の外周側に設けられている。アライメント機構90は、静電式副偏向器28,静電式プリ主偏向器29,静電式プリ副偏向器30の外周側に設けられている。
【0163】
アライメント機構60は、シフト制御を行うアライメント部61と、チルト制御を行うアライメント部62と、これら両アライメント部61,62に挟まれた位置に配置された磁性材からなるシールド部材63とを備えている。また、アライメント部61,62はそれぞれサドル型のアライメントコイル61a,62aから構成されている。
【0164】
アライメント機構70は、シフト制御を行うアライメント部71と、チルト制御を行うアライメント部72とを備えている。なお、シールド電極34〜36は、各アライメント部71,72間のシールド部材を兼ねた構成となっている。また、アライメント部71,72はそれぞれサドル型のアライメントコイル71a,72aから構成されている。
【0165】
アライメント機構80は、シフト制御を行うアライメント部81と、チルト制御を行うアライメント部82とを備えている。なお、シールド電極37〜39は、各アライメント部81,82間のシールド部材を兼ねた構成となっている。また、アライメント部81,82はそれぞれサドル型のアライメントコイル81a,82aから構成されている。
【0166】
アライメント機構90は、シフト制御を行うアライメント部91と、チルト制御を行うアライメント部92とを備えている。なお、シールド電極27a,28a,28b,29a,29b,30a,30bは、各アライメント部91,92間のシールド部材を兼ねた構成となっている。また、アライメント部91,92はそれぞれサドル型のアライメントコイル91a,92aから構成されている。
【0167】
第2の成形アパーチャ100及び第3の成形アパーチャ101は、他の部材とは電気的に絶縁して配置されている。これら第2及び第3の成形アパーチャ100,101は、電子ビームが照射されて発生する電流を検出する電流検出機能を有しており、図示しないモニタ等に接続されアパーチャ穴部の像をモニタ像として表示することで、アライメントコイルの調整を行う。
【0168】
このように構成された電子ビーム描画装置では、上述した第1の実施の形態における電子ビーム描画装置と同様に電子ビームによる描画を行う。なお、描画を行う前に、各アライメント機構60〜90により、シフト制御及びチルト制御を行うことにより、各レンズ24,26及び各成形アパーチャ100,101の中心位置に光軸合せを行う。
【0169】
図12の(a),(b)は、アライメント機構60〜90のうちアライメント機構70について説明するための図である。すなわち、図12の(a)に示すように電子ビーム2は、アライメント部71によりシフト制御され、次にアライメント部72によりチルト制御される。そして、静電式縮小レンズ24に入射することになる。このときの電子ビーム2に作用する磁束密度曲線は図12の(b)に示すようなものとなる。すなわち、シールド電極(シールド部材)35〜37の位置で磁場がゼロ磁場になるため、アライメント部71,72間の干渉がなくなり、独立制御が可能である。
【0170】
一方、図13の(a),(b)は比較のための図である。すなわち、図13の(a)に示すように、シールド部材がない場合には、図13の(b)に示すようにアライメント部71とアライメント部72とが相互に干渉し、磁場の加減演算が発生する場合がある。このため、アライメント部71によるシフト量の制御、アライメント部72によるチルト量の制御を行うと、互いの制御に影響し、精度よくレンズ24の中心に入射させることが困難になる。
【0171】
また、図14〜図17はアライメント機構60〜90の各アライメント部におけるアライメントコイルにそれぞれサドル型コイル、トロイダル型コイルを用いた場合を比較して示す図である。なお、図14及び図16がサドル型コイル、図15及び図17がトロイダル型コイルである。
【0172】
サドル型コイルにおいては、図14の(a)に示すようにコア110に対して、巻線111に図示するような向きに捲回されている。このため、等位磁力線は図14の(b)及び図16の(a)中Mに示すものとなり、電磁力は図14の(b)中Lに示すように発生する。
【0173】
このとき、図16の(b)に示すようにシールド部材112が配置されていると、等位磁力線Mはシールド部材112により遮断され、磁界強度が零となる。
【0174】
一方、トロイダル型コイルにおいては、図15の(a)に示すようにコア113に対して、巻線114が図示するような向きに捲回されている。このため、電磁力は図15の(b)中Qに示すように発生し、等位磁力線は図15の(b)及び図17の(a)中Rに示すようなものとなる。
【0175】
このとき、図17の(b)に示すようにシールド部材112が配置されていても、等位磁力線の流れ方の関係で、シールド部材112を乗り越えて、等位磁力線が沁み込む現象が発生する。したがって、シールド部材を備えたアライメント部としては、トロイダル型コイルよりもサドル型コイルがより効果的に相互干渉を防止することができる。
【0176】
図18の(a)は、第2のアパーチャ100によるアライメントコイルの調整方法を示す図である。すなわち、第2のアパーチャ100は、その表面に照射された電子ビーム2を電流信号に置き換えてモニタに表示する。そして、アライメント機構60、70を電気処理系により、第2のアパーチャ100上の所定のアパーチャエリアを電子ビーム2でスキャンする。このとき、アパーチャ穴部100aをスキャンすると、アパーチャ穴部100aのモニタ像が得られる。スキャンエリアをかえると、アパーチャ穴部100aの位置が移動するので、モニタ上の中心にアパーチャ像を移動する。適正な位置にアパーチャ穴部100aの像が位置するように調整し、さらにレンズ20に電圧を加えてもモニタ像のセンタ位置が変化しないようにアライメントコイルを調整することで、アパーチャセンタに対する電子ビーム2の光軸を合わせ込むことができる。
【0177】
図18の(b)は、第3のアパーチャ101によるアライメントコイルの調整方法を示す図である。すなわち、第3のアパーチャ101は、その表面に照射された電子ビーム2を電流信号に置き換えてモニタに表示する。そして、アライメント機構80を電気処理系により、第3のアパーチャ101上の所定のアパーチャエリアを絞った状態の電子ビーム2でスキャンする。このとき、アパーチャ穴部101aをスキャンすると、アパーチャ穴部101aのモニタ像が得られる。スキャンエリアをかえると、アパーチャ穴部101aの位置が移動するので、モニタ上の中心にアパーチャ像を移動する。適正な位置にアパーチャ穴部101aの像が位置するように、アライメントコイルを調整することで、アパーチャセンタに対する電子ビーム2の光軸を合わせ込むことができる。
【0178】
上述したように本第3の実施の形態に係る電子ビーム描画装置によれば、第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置と同様の効果が得られるとともに、隣接するアライメント部の相互干渉を防止することでアライメント機構60〜90による電子ビームの光軸合せを容易、かつ、高精度に行うことができる。
【0179】
また、第2及び第3の成形アパーチャ100,101を用いることで、アライメント機構60〜80の調整を容易に行うことができる。
【0180】
さらに、アライメント機構70〜90におけるシールド部材は、光学系と独立に設けるのではなく、光学系のシールド極を兼ねて構成しているので、新たにシールド部材としての部品を設ける必要がないので、部品を省略できるとともに、全体を小型化することが可能である。
【0181】
図19は、本発明に係わる電子ビーム描画装置の第4の実施の形態を示す構成図である。なお、図19において図11と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。本電子ビーム描画装置が上述した第3の実施の形態に係る電子ビーム描画装置と異なる点は、アライメント機構60〜80の代りにアライメント機構110〜130を用いている点にある。これらアライメント機構110〜130では、各1個のアライメント部111,121,131を設けるようにしている。この場合、被対象レンズや、被対象アパーチャに対して遠ざける位置に配置すれば、小さなアライメントコイル電流で、大きなアライメントパワーが得られ、スペース効率的に有利である。
【0182】
図20は、本発明に係わる電子ビーム描画装置の第5の実施の形態を示す構成図である。なお、図20において図11と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。本電子ビーム描画装置が上述した第3の実施の形態に係る電子ビーム描画装置と異なる点は、対物レンズ26の代りに電磁レンズ50を使用した場合に適用したケースである。
【0183】
本実施の形態によれば、第2及び第3の実施の形態に係る電子ビーム描画装置と同様の効果を得ることができる。
【0184】
図21は、本発明に係わる電子ビーム描画装置の第6の実施の形態を示す構成図である。なお、図21において、上述した図2と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0185】
本第6の実施の形態に係る電子ビーム描画装置と、上述した第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置とで異なる点は、静電式縮小レンズ24の代りに静電式縮小レンズ140が設けられ、静電式対物レンズ26の代りに静電式対物レンズ141が設けられている点にある。
【0186】
静電式縮小レンズ140は、負の電圧が印加される陰電極(第1の電極)140aと、この陰電極140aの上流側に設けられた上側シールド電極140bと、陰電極140aの下流側に設けられた下側シールド電極140cと、この下側シールド電極140cと陰電極140aとの間に設けられた空間電荷効果低減電極(第2の電極)140dが設けられている。この空間電荷効果低減電極140dには、所定の正の電圧が印加されている。
【0187】
静電式対物レンズ141は、負の電圧が印加される陰電極(第1の電極)141aと、この陰電極141aの上流側に設けられた上側シールド電極141bと、陰電極141aの下流側に設けられた下側シールド電極141cと、この下側シールド電極141cと陰電極140aとの間に設けられた空間電荷効果低減電極(第2の電極)141dが設けられている。この空間電荷効果低減電極141dには、所定の正の電圧が印加されている。
【0188】
次に空間電荷効果低減電極140d,141dの作用について説明する。静電レンズを使用した光学系では、磁場を利用した電磁レンズとは異なり、電子ビームは静電レンズ内で減速と加速の動作を通してレンズ機能を成立している。電子ビームを使用した光学系では、加速電圧が低下するにつれて空間電荷効果が大きくなり、光学収差が増加し、ビームぼけ量が大きくなる。
【0189】
図22の(a),(b)及び図23の(a)〜(c)は、第2の成形アパーチャ7から試料13面上に投影するまでに発生するビームぼけの原理を模式的に示す図である。すなわち、図22中の(b)中αは、ビームを示している。このビームαの中には、第2の成形アパーチャ7からある開き角ビームによって発生するビームβ(光学収差)が含まれている。ビームαとビームβとの差分は静電レンズ内における空間電荷効果で発生したビームぼけを示している。
【0190】
したがって、試料13面におけるビームぼけ量を小さくするにはビームぼけβ及び空間電荷効果によるビームぼけをなるべく小さくする必要がある。すなわち、空間電荷効果低減電極140d,141dに陰電極140a,141aと逆の電圧を印加することで空間電荷効果を低減させることができる。
【0191】
図24は対物レンズ141のレンズ効果をレンズポテンシャルVeで示したものである。図24中実線γ1は空間電荷効果電極141dに電圧を加えない場合、破線γ2は陰電極141aに印加した電圧に対し、正の電圧でその絶対値を0.7倍とした場合、一点鎖線γ3は陰電極141aに印加した電圧に対し、正の電圧でその絶対値を1.2倍とした場合を示している。
【0192】
上述したγ2,γ3の場合において図22の(b)中破線δに示すように、空間電荷効果を低減させることができる。なお、陰電極141aに印加した電圧に対し、正の電圧でその絶対値を0.5〜1倍とした場合がレンズポテンシャルVeが正とはならないので最適な範囲となる。また、0.2〜1.2倍の範囲であれば空間電荷効果に対する低減効果を十分に確認することができる。
【0193】
上述したように、静電レンズを使用した電子ビーム描画装置において、空間電荷効果低減電極140d,141dを設けることによって、静電レンズ内の減速動作で発生する空間電荷効果を小さく押さえ、ぼけの小さな、解像性に優れた電子ビームを得ることができる。
【0194】
なお、空間電荷効果低減電極は、陰電極に対し、電子ビーム2の上流側及び下流側のいずれに設けてもよいが、下流側がより効果的である。また、静電型対物レンズ141側のみ設けるようにしてもよい。
【0195】
図25は、本発明に係わる電子ビーム描画装置の第7の実施の形態を示す構成図である。なお、図25において、上述した図2と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0196】
本第7の実施の形態に係る電子ビーム描画装置では、第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置に加え、制御部150を有している。制御部150は、描画パターンを決める描画制御部151と、この描画制御部151からの信号に基づいて第2の成形アパーチャ7上の適正なセルを選択するCP選択制御部152と、このCP制御部152からの信号に基づいて第1の静電式成形偏向器21及び第2の静電式成形偏向器22を制御する成形偏向AMP153と、この成形偏向AMP153からの信号に基づいて各セルの位置に対応する照明倍率を格納する照明レンズ励起テーブル154と、この照明レンズ励起テーブル154で定められた倍率に基づいて静電式照明レンズ20を制御する励起制御部155と、この励起制御部155からの信号を増幅し、静電式照明レンズ20を駆動するレンズ用AMP156とを備えている。
【0197】
図26及び図27は、第2の成形アパーチャ7上のセルの位置によって電子ビーム描画装置に発生する電子光学路長の差異が生じ、これにより縮小率の差異が生じる原理を示す説明図である。
【0198】
図26に示すように、描画すべきパターンに応じて第2の成形アパーチャ7上のセルを選択する場合において、電子銃1の中心位置C上に位置するセル160と、中心位置Cからτ1だけ離間したセル161とでは、中心位置Cに戻るまでの電子光学路長が異なる。すなわち、セル160の場合はK1、セル161の場合はK2となる。このため、第2の成形アパーチャ7を照明したセル161の照明光路κ2は、セル160を照明した場合の照明光路κ1で形成されるクロスオーバχに比べてτ2だけ図27中上方にクロスオーバχ′を形成する。そして、静電式縮小レンズ24により試料13上にパターン像が形成されたセルパターン像の縮小率はセル160を選択した場合と比べて僅かに大きくなる。
【0199】
この変動により試料13上に形成される微細配線露光におけるパターン線幅では、無視できない大きさとなり、パターン間のつなぎ精度が低下し、歩留まりが低下する虞がある。
【0200】
図25に示す電子ビーム描画装置では、上述した第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置における動作に加え、セル161の中心位置Cからの距離τ1により生ずる照明光路が光学上に生ずるτ2の差異をキャンセルし、縮小率を同一とするために、次のように制御を行う。すなわち、描画制御部151から目的とするパターンの描画の指令をCP選択制御部152に送る。照明レンズ20の励起条件を、照明レンズ励起テーブル154に基づいて照明倍率を適当な値に変更する。これにより、電子ビーム2は、図28に示すように補正された補正光路κ3を通って第2の成形アパーチャ7に到達することになる。セル161により成形された電子ビーム2は、セル160の場合の光路と同一の光路を通過し、試料13上にパターン像を結像する。
【0201】
このように、本第7の実施の形態に係る電子ビーム描画装置においては、上述した第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置と同様の効果が得られるとともに、セルの位置が中心位置Cから離れている場合であっても、投影レンズ(静電式縮小レンズ24及び静電式対物レンズ25)の動作条件を変更することなく、同一の縮小率でセルのパターン像を試料13面上に結像させることができる。また、照明レンズ20の照明倍率の変更はセルの随意選択に追従して高速に行うことができるので、描画を高速に行うことができる。
【0202】
図29は本発明の第8の実施の形態に係る電子ビーム描画装置を示す構成図である。なお、図29において、上述した図25と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0203】
本第8の実施の形態に係る電子ビーム描画装置では、第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置に加え、制御部170を有している。制御部170は、描画パターンを決める描画制御部171と、この描画制御部171からの信号に基づいて成形アパーチャ7上の適正なセルを選択するCP選択制御部172と、このCP制御部172からの信号に基づいて第1の静電式成形偏向器21及び第2の静電式成形偏向器22を制御する成形偏向AMP173と、CP制御部172からの信号に基づいて静電式縮小レンズ24の縮小倍率を制御するRLレンズ励起テーブル174と、このRLレンズ励起テーブル174で定められた倍率に基づいて静電式縮小レンズ24を制御する励起制御部175と、この励起制御部175からの信号を増幅し、静電式縮小レンズ24を駆動するRLレンズ用AMP176とを備えている。
【0204】
図29に示す電子ビーム描画装置では、セル161の中心位置Cからの距離τ1により生ずる照明光路が光学上に生ずるτ2の差異をキャンセルし、縮小率を同一とするために、次のように制御を行う。すなわち、描画制御部171から目的とするパターンの描画の指令をCP選択制御部172に送り、セルを選択する。このCP選択制御部172により所望のセルに電子ビーム2が照射されるように成形偏向AMP173を介して静電式成形偏向器21,22を制御する。なお、セルは予め縮小率に応じて大きさを調整して形成されている。
【0205】
一方、RLレンズ励起テーブル174において、選択されたセルに対応するような静電式縮小レンズ24の縮小率を設定する。この縮小率に応じて励起制御部175で静電式縮小レンズ24で制御を行いRLレンズ用AMP176を介して静電式縮小レンズ24を駆動する。
【0206】
これにより、電子ビーム2は補正された補正照明光学路κ4を通って試料13上にパターン像を結像する。
【0207】
このように、本第8の実施の形態に係る電子ビーム描画装置においては、上述した第1の実施の形態に係る電子ビーム描画装置と同様の効果が得られるとともに、セルの位置が中心位置Cから離れた場合であっても、静電式照明レンズ20の動作条件を変更することなく、適正な大きさでセルのパターン像を試料13面上に結像させることができる。また、静電式縮小レンズ24による縮小率の変更はセルの随意選択に追従して高速に行うことができるので、描画を高速に行うことができる。
【0208】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【0209】
【発明の効果】
以上詳記したように本発明によれば、パターン描画精度を維持しながらシステムの小型化・単純化が実現できる電子ビーム描画方法及びその装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる電子ビーム描画装置の第1の実施の形態を示す構成図。
【図2】同装置の外観構造を示す図。
【図3】同装置における静電式レンズの構成図。
【図4】同装置における静電式成形偏向器の構成図。
【図5】静電式主偏向器に対する静電式プリ主偏向器の制御電圧の加算方向を示す図。
【図6】静電式副偏向器に対する静電式プリ副偏向器の制御電圧の減算方向を示す図。
【図7】主偏向対物レンズの下側シールド電極と電子検出器のシールド電極との共用構造を示す図。
【図8】主偏向対物レンズの下側シールド電極を電子検出器のシールド電極として共用したときの作用を説明するための図。
【図9】本発明に係わる電子ビーム描画装置の第2の実施の形態を示す構成図。
【図10】電磁式対物レンズに内蔵の静電式主偏向器への制御配線を示す図。
【図11】本発明に係わる電子ビーム描画装置の第3の実施の形態を示す構成図。
【図12】同装置におけるシールド部材の機能を示す説明図。
【図13】シールド部材がないアライメント部を示す説明図。
【図14】同装置に組込まれたサドル型コイルを示す説明図。
【図15】トロイダル型コイルを示す説明図。
【図16】サドル型のアライメントコイルにおけるシールドの機能を示す説明図。
【図17】トロイダル型のアライメントコイルにおけるシールドの機能を示す説明図。
【図18】同装置における光軸合せ機能を示す説明図。
【図19】本発明に係わる電子ビーム描画装置の第4の実施の形態を示す構成図。
【図20】本発明に係わる電子ビーム描画装置の第5の実施の形態を示す構成図。
【図21】本発明に係わる電子ビーム描画装置の第6の実施の形態を示す構成図。
【図22】電子ビームのぼけの作用について示す説明図。
【図23】電子ビーム描画装置に組込まれた空間電荷効果低減電極の機能を示す説明図。
【図24】同空間電荷効果低減電極による修正の効果を示す説明図。
【図25】本発明に係わる電子ビーム描画装置の第7の実施の形態を示す構成図。
【図26】同電子ビーム描画装置に組込まれた成形アパーチャのセルの位置の違いに基づく光路の違いを示す説明図。
【図27】同光路の違いに基づく描画の変動を示す説明図。
【図28】同光路の違いに基づく描画の変動を修正する原理を示す説明図。
【図29】本発明に係わる電子ビーム描画装置の第8の実施の形態を示す構成図。
【図30】同電子ビーム描画装置の描画の変動を修正する原理を示す説明図。
【図31】従来の電子ビーム描画装置の構成図。
【図32】矩形に形成された第1の成形アパーチャの構成図。
【図33】菱形・矩形に形成された第2の成形アパーチャの構成図。
【図34】第1及び第2の成形アパーチャによる電子ビームの成形作用を示す模式図。
【符号の説明】
1…電子銃、
4…第1の成形アパーチャ、
7…第2の成形アパーチャ、
12…電子検出器、
20…静電式照明レンズ、
21…第1の静電式成形偏向器、
22…第2の静電式成形偏向器、
23…第3の成形アパーチャ、
24…静電式縮小レンズ、
25…静電式主偏向対物レンズ、
27…静電式対物レンズ、
27…静電式主偏向器、
28…静電式副偏向器、
29…静電式プリ主偏向器、
30…静電式プリ副偏向器、
40…電圧制御部、
41…第1の収差補正部、
42…第2の収差補正部、
50…電磁式対物レンズ、
51…ポールピース、
52…コイル、
53…静電式主偏向器、
54…非磁性シールド
60,70,80,90,120,130…アライメント機構
Claims (4)
- 電子ビームに対して少なくとも成形や偏向し、この後に試料に対して縮小投影する電子光学系を備えた電子ビーム描画装置において、
前記電子光学系は、少なくとも前記成形、前記縮小投影を行う静電式の各レンズ、及び前記電子ビームを偏向する静電式の偏向器から構成され、
さらに前記電子光学系は、電子ビームを任意の形状に調整するためにそれぞれ所定の位置に配置された複数のアパーチャと、
前記電子ビームを照明用ビームの電子ビームに調整する静電式照明レンズと、
前記複数のアパーチャの各パターンの組み合わせから成るアパーチャ像を得るために前記静電式照明レンズにより調整された前記電子ビームを偏向して前記アパーチャに対する照射位置を制御し、かつ前記アパーチャを通過して得られたパターン像の電子ビームを元の光軸上に戻す少なくとも2つの静電式成形偏向器と、
これら静電式成形偏向器を通過した前記電子ビームを縮小する静電式縮小レンズと、
この静電式縮小レンズを通過した前記電子ビームを前記試料上に縮小投影する静電式又は電磁式の対物レンズ、及びこの対物レンズにより前記試料上に縮小投影される前記電子ビームを前記試料上に偏向して描画する静電式主偏向器から成る主偏向対物レンズと、
前記静電式主偏向器の走査領域内で前記電子ビームを偏向する静電式副偏向器と、
前記試料に前記電子ビームが照射されたときに発生する2次電子又は反射電子を検出する電子検出器とを備え、
さらに前記静電式主偏向器から前記電子ビームの上流側に配置され、前記電子ビームを偏向して前記静電式主偏向器に対して収差を最小に制御する静電式プリ主偏向器と、
前記静電式副偏向器の前記電子ビームの上流側に配置され、前記電子ビームを偏向して前記静電式副偏向器に対して収差を最小に制御する静電式プリ副偏向器とを備え、
さらに前記静電式主偏向器と前記静電式プリ主偏向器とは、前記収差を最小に制御するためにそれぞれの制御電圧の連動比を1:1に成立させるために、プリ主偏向センタエレクトロードの軸方向長さ又は内径が調整されたことを特徴とする電子ビーム描画装置。 - 電子ビームに対して少なくとも成形や偏向し、この後に試料に対して縮小投影する電子光学系を備えた電子ビーム描画装置において、
前記電子光学系は、少なくとも前記成形、前記縮小投影を行う静電式の各レンズ、及び前記電子ビームを偏向する静電式の偏向器から構成され、
さらに前記電子光学系は、電子ビームを任意の形状に調整するためにそれぞれ所定の位置に配置された複数のアパーチャと、
前記電子ビームを照明用ビームの電子ビームに調整する静電式照明レンズと、
前記複数のアパーチャの各パターンの組み合わせから成るアパーチャ像を得るために前記静電式照明レンズにより調整された前記電子ビームを偏向して前記アパーチャに対する照射位置を制御し、かつ前記アパーチャを通過して得られたパターン像の電子ビームを元の光軸上に戻す少なくとも2つの静電式成形偏向器と、
これら静電式成形偏向器を通過した前記電子ビームを縮小する静電式縮小レンズと、
この静電式縮小レンズを通過した前記電子ビームを前記試料上に縮小投影する静電式又は電磁式の対物レンズ、及びこの対物レンズにより前記試料上に縮小投影される前記電子ビームを前記試料上に偏向して描画する静電式主偏向器から成る主偏向対物レンズと、
前記静電式主偏向器の走査領域内で前記電子ビームを偏向する静電式副偏向器と、
前記試料に前記電子ビームが照射されたときに発生する2次電子又は反射電子を検出する電子検出器とを備え、
さらに前記静電式主偏向器から前記電子ビームの上流側に配置され、前記電子ビームを偏向して前記静電式主偏向器に対して収差を最小に制御する静電式プリ主偏向器と、
さらに前記静電式副偏向器の前記電子ビームの上流側に配置され、前記電子ビームを偏向して前記静電式副偏向器に対して収差を最小に制御する静電式プリ副偏向器とを備え、
さらに前記静電式副偏向器と前記静電式プリ副偏向器とは、前記収差を最小に制御するためにそれぞれの制御電圧の連動比を1:1に成立させるために、プリ副偏向センタエレクトロードの軸方向長さ又は内径が調整されたことを特徴とする電子ビーム描画装置。 - 電子ビームに対して少なくとも成形や偏向し、この後に試料に対して縮小投影する電子光学系を備えた電子ビーム描画装置において、
前記電子光学系は、少なくとも前記成形、前記縮小投影を行う静電式の各レンズ、及び前記電子ビームを偏向する静電式の偏向器から構成され、
さらに前記電子光学系は、電子ビームを任意の形状に調整するためにそれぞれ所定の位置に配置された複数のアパーチャと、
前記電子ビームを照明用ビームの電子ビームに調整する静電式照明レンズと、
前記複数のアパーチャの各パターンの組み合わせから成るアパーチャ像を得るために前記静電式照明レンズにより調整された前記電子ビームを偏向して前記アパーチャに対する照射位置を制御し、かつ前記アパーチャを通過して得られたパターン像の電子ビームを元の光軸上に戻す少なくとも2つの静電式成形偏向器と、
これら静電式成形偏向器を通過した前記電子ビームを縮小する静電式縮小レンズと、
この静電式縮小レンズを通過した前記電子ビームを前記試料上に縮小投影する静電式又は電磁式の対物レンズ、及びこの対物レンズにより前記試料上に縮小投影される前記電子ビームを前記試料上に偏向して描画する静電式主偏向器から成る主偏向対物レンズと、
前記静電式主偏向器の走査領域内で前記電子ビームを偏向する静電式副偏向器と、
前記試料に前記電子ビームが照射されたときに発生する2次電子又は反射電子を検出する電子検出器とを備え、
さらに前記静電式主偏向器から前記電子ビームの上流側に配置され、前記電子ビームを偏向して前記静電式主偏向器に対して収差を最小に制御する静電式プリ主偏向器と、
さらに前記静電式副偏向器の前記電子ビームの上流側に配置され、前記電子ビームを偏向して前記静電式副偏向器に対して収差を最小に制御する静電式プリ副偏向器とを備え、
さらに前記静電式主偏向器に対する前記静電式プリ主偏向器の制御電圧を加算方向に制御し、かつ前記静電式副偏向器に対する前記静電式プリ副偏向器の制御電圧を減算方向に制御する収差補正手段を備えたことを特徴とする電子ビーム描画装置。 - 電子ビームに対して少なくとも成形や偏向し、この後に試料に対して縮小投影する電子光学系を備えた電子ビーム描画装置において、
前記電子光学系は、少なくとも前記成形、前記縮小投影を行う静電式の各レンズ、及び前記電子ビームを偏向する静電式の偏向器から構成され、
さらに前記電子光学系は、電子ビームを任意の形状に調整するためにそれぞれ所定の位置に配置された複数のアパーチャと、
前記電子ビームを照明用ビームの電子ビームに調整する静電式照明レンズと、
前記複数のアパーチャの各パターンの組み合わせから成るアパーチャ像を得るために前記静電式照明レンズにより調整された前記電子ビームを偏向して前記アパーチャに対する照射位置を制御し、かつ前記アパーチャを通過して得られたパターン像の電子ビームを元の光軸上に戻す少なくとも2つの静電式成形偏向器と、
これら静電式成形偏向器を通過した前記電子ビームを縮小する静電式縮小レンズと、
この静電式縮小レンズを通過した前記電子ビームを前記試料上に縮小投影する静電式又は電磁式の対物レンズ、及びこの対物レンズにより前記試料上に縮小投影される前記電子ビームを前記試料上に偏向して描画する静電式主偏向器から成る主偏向対物レンズと、
前記静電式主偏向器の走査領域内で前記電子ビームを偏向する静電式副偏向器と、
前記試料に前記電子ビームが照射されたときに発生する2次電子又は反射電子を検出する電子検出器とを備え、
さらに前記電磁式対物レンズの磁気フィールド中に前記静電式主偏向器を配置し、
さらに前記電磁式対物レンズを構成するコイルの巻回されたポールピースのギャップの 中に、前記静電式主偏向器が配置された構造であり、
さらに前記ポールピースの先端部には、非磁性シールドが取り付けられたことを特徴とする電子ビーム描画装置。
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