JP3772067B2 - 荷電粒子ビーム照射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体素子の微細パターンの描画や測定に用いられる荷電粒子ビーム照射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
試料上で電子ビームを走査して微細パターンの描画を行う場合、試料上で高い分解能のビームを得るためにビームの収差を低減させる必要がある。ビームを静電偏向器或いは電磁偏向器で偏向する場合、2組の偏向器を互いに偏向収差を打ち消し合うように配置することにより、偏向収差を低減させる方法が知られている。
【0003】
一方、広い領域を描画するため、試料はxy方向に可動なステージ上に設置され、描画時にはこのステージを移動しながら試料にビームを照射する。ステージを移動した時に試料面の高さは一定であることが望ましいが、実際にはステージの移動に伴い試料面の高さに変動が生じる。この高さ変動はビームの位置の変動を引き起こし、描画の位置精度を劣化させる原因になる。そのため、レーザ光を用いた高さ検出器によって試料面の高さを検出し、その検出結果に基づき高さ変動による位置ずれを補正する操作を行っている。しかし、現在の高さ検出器の精度は高々1μm程度であり、十分ではない。例えば、ビームの入射角が最大5mradであり、試料面の高さの測定誤差が1μm程度あると考えると、最大で10nm程度位置精度を劣化させることになる。
【0004】
ところで、ビームが試料に対して垂直に入射される場合は、上記の位置ずれはなくなる。低収差で垂直ランディングの電子ビーム光学系には、次のような文献が知られている([1] H.C.Pfeiffer and G.O.Langer, J.Vac.Sci.Techno1.,19(1981)1058.,[2] M.A.Sturans, P.F.Petric, H.C.Pfeiffer, W.Sticke1 and M.S.Goraon, J.Vac.Sci.Techno1.B, 8(1990)1682.)。しかし、これらは何れも電磁偏向であり、高速の偏向には不向きである。
【0005】
また、特開昭54−82962号公報に開示された発明では、収束磁界内に配置された3段以上の静電偏向器によって、入射角と収差を減少する例が示されている。しかし、全ての偏向器を収束磁界内に配置しているために、3段の偏向器では入射角度及び収差を同時に十分小さくすることは不可能である。また、収束磁場内の狭い領域に4段以上の静電偏向器を精度良く実装することは技術的に難しい。
【0006】
また、特開平6−224108号公報に開示された発明では、対物レンズ内に偏向器を複数段配置し、物面位置に入射角を調整するための補助偏向器を設けている。この例では、物面位置に配置された偏向器でビームを偏向した場合には、レンズ作用のため像面ではビームの入射角度のみが変化し、位置は変わらない原理を利用している。しかし、縮小率が小さい電子ビーム光学系の場合には、最終レンズの1段上流のレンズである縮小レンズの焦点距離を小さくする必要があり、そのためにボア径も小さくなる。縮小レンズは焦点距離が小さいために、最終レンズの物面は縮小レンズのレンズ内部になり、静電偏向器の実装が不可能であるため、この方法は静電偏向には適用できない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来、試料上で高い分解能のビームを得るためにはビームの入射角及び収差を小さくする必要があるが、各種の要因からこれを満足することは極めて困難であった。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮して成されたもので、その目的とするところは、収差及びビームの入射角が小さい実用的な荷電粒子ビーム光学系を構成することができ、微細パターンの描画精度や測定精度の向上等に寄与し得る荷電粒子ビーム照射装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
(構成)
上記課題を解決するために本発明は次のような構成を採用している。
【0010】
即ち本発明は、荷電粒子ビームを収束させる電磁レンズ系と、荷電粒子ビームを試料上の所望の位置に偏向する静電偏向系とを具備した荷電粒子ビーム照射装置において、前記電磁レンズ系の一つである対物レンズの主面と重なる位置に主偏向器を配置し、対物レンズの上極より上流で物面よりも下流に前段偏向器を配置し、主偏向器よりも下流に後段偏向器を配置してなり、前記主偏向器,前段偏向器及び後段偏向器に連動した電圧をかけることにより荷電粒子ビームを偏向し、且つ主偏向器,前段偏向器及び後段偏向器の偏向感度及び位相は、コマ収差とビームの入射角が共に小さくなるように設定されることを特徴とする。
【0011】
ここで、後段偏向器の一部或いは全部が、対物レンズのポールピースのギャップの外側に配置されていることが望ましい。また、後段偏向器と試料との間にアパーチャが設けられていることが望ましい。
【0012】
また、主偏向器,前段偏向器及び後段偏向器のz座標をそれぞれ固定し、さらに各偏向器のうち1個の偏向感度と位相を固定し、他の1個の偏向器の偏向感度と位相を固定し、他の1個の偏向器の偏向感度と位相をパラメータとし、残りの1個の偏向器の偏向感度と位相は試料面でコマ収差が0になるように選択して、ビームの試料上での入射角と像面湾曲の等高線マップを作ったとき、像面湾曲の等高線マップの中心点Aと入射角の等高線マップの中心点Bを結ぶ線分AB近傍の点で示される条件になるように各偏向器が構成されることが望ましい。
【0013】
さらに、電磁レンズ系の一つである対物レンズは、等高線マップに像面湾曲が0になる環状領域ができるインレンズ或いはセミインレンズであり、等高線マップ上の線分ABと像面湾曲が0となる環状領域との交点を点Cとしたとき、線分ACの近傍の点で示される条件になるように各偏向器が構成されることが望ましい。
【0014】
(作用)
本発明によれば、対物主偏向器を3段の電極(主偏向器,前段偏向器及び後段偏向器)で構成し、各々の偏向器に連動した電圧を印加すると共に、コマ収差及びビームの入射角を打ち消すように、各々の偏向器の位相と偏向感度を調節することにより、収差を小さくできると共に、単純な構造でビーム分解能の高い垂直入射が可能となる。
【0015】
ここで、主偏向器はほぼ対物レンズのギャップの中心に配置し、前段偏向器は対物レンズのギャップよりも上流で物面よりも下流に配置し、3段目の後段偏向器は主偏向器よりも下流に配置する。この3つの条件を全て満たすことにより初めて分解能の高い垂直入射ビームが実現可能となり、微細パターンの描画精度や測定精度の向上等に寄与することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を図示の実施形態によって説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる電子ビーム描画装置を示す概略構成図であり、特に鏡筒部分の電子ビーム光学系の構成を示している。図中の11は電子銃、12はコンデンサレンズ、13は投影レンズ(2段)、14は縮小レンズ、15は対物レンズ、16はブランキング電極、17は成形偏向器、18は対物偏向器、21はブランキングアパーチャ、22は第1成形アパーチャ、23は第2成形アパーチャ、31はステージ、32は露光用マスクを形成するための基板(試料)、33は試料面の高さ測定器を示している。
【0018】
電子銃11には、接地レベルに対して−50kVの電圧をかける。この電圧印加により、電子銃11から電子ビームが引き出される。電子銃11から引き出された電子ビームは、コンデンサレンズ12によって電子銃のクロスオーバー像を結び、ブランキングアパーチャ21に照射される。そして、ブランキング電極16の電圧が0[V]の時にビームを通過させ、40[V]の時にビームをカットオフするようになっている。
【0019】
ブランキングアパーチャ21を通過したビームは、第1成形アパーチャ22に照射される。第1成形アパーチャ22の像は、投影レンズ13によって第2成形アパーチャ23上に結像される。第1成形アパーチャ22と第2成形アパーチャ23との間のビームの偏向は、成形偏向器17によって行われる。第1成形アパーチャ22と第2成形アパーチャ23は共に矩形であり、この2枚のアパーチャ22,23を用いてビームを任意の大きさの矩形に成形することができる。
【0020】
第2成形アパーチャ23を通過し所望の形に成形されたビームは、縮小レンズ14及び対物レンズ15により30:1に縮小されて、ターゲットとしての平板状の試料32上に結像される。
【0021】
試料32上でのビームの照射位置は、対物偏向器18によって制御される。また、試料32はxy方向に移動できるステージ31に固定されており、移動しながら描画が行われる。試料32上のビーム照射される位置の高さは、高さ測定器33によってモニタする。試料32の高さが変動すると、それによってビーム位置ずれを引き起こされるので、その位置ずれを対物偏向器18の設定値にフィードバックして補正を行う。
【0022】
対物偏向器18は、後述するように3段のオクタポールからなる対物主偏向器及び1段のオクタポールからなる副偏向器によって構成される。対物主偏向器には最大値±200Vの偏向電圧を加え、1mm□の主偏向フィールド内でビームを偏向する。一方、副偏向器には最大値±10Vの偏向電圧を加え、60μm□の副偏向フィールド内で高速の偏向を行う。
【0023】
対物主偏向器は3段の偏向器からなるため、各偏向器の偏向感度と位相(回転角)を調整することにより、コマ収差とビームの入射角を打ち消すことができる。対物主偏向器を構成する3つの偏向器をそれぞれ主偏向器、前段偏向器、後段偏向器に呼ぶことにする。コマ収差と入射角を共に0にする条件は、以下の式で表わされる。
【0024】
L0・w0+L1・w1+L2・w2=0 …(1)
C0・w0+C1・w1+C2・w2=0 …(2)
ここで、L0 ,C0 及びw0 は前段偏向器と後段偏向器を取り除き、主偏向器と対物レンズ15のみを配置した場合の主偏向フィールドコーナーにおける入射角,コマ収差係数と偏向感度である。同様に、L1 ,C1 及びw1 は主偏向器と後段偏向器を取り除き、前段偏向器と対物レンズ15のみを配置した時の主偏向フィールドコーナーにおける入射角,コマ収差係数と偏向感度である。また、L2 ,C2 及びw2 は主偏向器と前段偏向器を取り除き、後段偏向器と対物レンズ15のみを配置した時の主偏向フィールドコーナーにおける入射角,コマ収差係数と偏向感度である。なお、入射角及び偏向感度は大きさと方向を持つベクトル量である。
【0025】
式(1)(2)において、コマ収差係数,入射角,偏向感度は、x成分を実数、y成分を虚数とした複素数になる。式(1)(2)の条件を満たすように対物主偏向器の各偏向器を構成することにより、コマ収差及び入射角の小さい光学系を作ることができる。
【0026】
式(1)(2)の条件を満たしつつ、前段偏向器と主偏向器の位置を固定し、後段偏向器の位置を軸方向に前段偏向器の位置から試料の位置まで移動させた場合の像面湾曲の値を示したグラフが、図2(a)である。図2(a)において、横軸は後段偏向器の中心位置を物面を原点として示しており、縦軸は1mm□の主偏向フィールドのコーナーでの像面湾曲の値を示している。電子線のエネルギーは50kV、試料面上における電子線の収束半角は5mradとしている。図中には、前段偏向器,主偏向器の中心位置及び対物レンズ15の主面の位置が示してある。この計算では、対物レンズ15の主面と主偏向器の位置がほぼ一致する条件で計算した。
【0027】
上記のグラフから分かるように、像面湾曲の値は後段偏向器を下流つまり試料側に移動させる程小さくなる。非点収差も像面湾曲と同様な傾向を示し、後段偏向器を下流に移動させる程、非点収差の絶対値が小さくなる。この傾向は主偏向器の位置を対物レンズ主面の位置からずらした場合にも現れる。よって収差を小さくし、ビーム分解能を向上させるためには対物レンズ主面近傍にある主偏向器よりも後段偏向器を試料側に設置する必要がある。
【0028】
前段偏向器と後段偏向器の位置を固定して、式(1)(2)の条件を満たしつつ主偏向器の位置をパラメータとして変化させた場合の1mm□のフィールドのコーナーにおける像面湾曲の大きさを示したのが、図2(b)である。前段偏向器と後段偏向器の中心位置の座標は図中に示してある。像面湾曲の値は主偏向器が対物レンズ15の主面の近傍で極小値をとる。非点収差も同様の傾向を示す。このため、ビームの収差を小さくするためには、主偏向器を対物レンズ15の主面と重なる位置に配置する必要がある。
【0029】
主偏向器と後段偏向器の位置を固定して、式(1)(2)の条件を満たしつつ前段偏向器の位置をパラメータとして変化させた場合の1mm□のコーナーにおける像面湾曲の値を示したのが、図2(c)である。前段偏向器の位置が試料方向に下がるにつれて、像面湾曲の大きさは単調に増加する。高い分解能を得るためには前段偏向器の位置をできるだけ高い位置に設置する必要がある。一方、前段偏向器は縮小レンズ14と干渉しないように配置しなければならず、前段偏向器の位置の上限が制限される。そこで、前段偏向器を対物レンズ15のポールピースのギャップより上流で、物面より下流に設置することが必要になる。
【0030】
これらの計算の結果、コマ収差及び入射角を打ち消す条件で、トータルの収差を小さくするためには、図3のような構成にする必要があることが分かった。図3において対物主偏向器は、前段偏向器18a、主偏向器18b及び後段偏向器18cからなる。対物レンズ15の主面15aと重なる位置に配置された主偏向器18bは対物主偏向器の中で最も偏向感度が大きい。後段偏向器18cは主偏向器18bよりも試料側に配置される。また、前段偏向器18aは対物レンズ15よりも光源側に配置される。また、対物主偏向器の中で前段偏向器18aが最も感度が小さい。これらの条件を全て満たすことによって初めて低収差,低入射角の実用的な光学系を構成することができる。
【0031】
なお、図3中では前段偏向器18aと主偏向器18bとの間に副偏向器18dが配置されているが、この副偏向器18dは前段偏向器18aよりも上流に配置してもよい。
【0032】
図2(a)に示したように、収差を低減させるためには後段偏向器18cはできる限り試料32に近い場所に設置させる。図3では、後段偏向器18cの一部が対物レンズ15のポールピースのギャップの外側になるように配置されている。ステージ上部との干渉など実装上難しい問題もあるが、後段偏向器全体が対物レンズ15のポールピースのギャップの外側になるように構成できれば、さらに分解能が高くなる。像面湾曲や非点収差が十分小さくならない場合には、主偏向の偏向量に応じてダイナミックに偏向収差の補正を行う。
【0033】
後段偏向器18cとステージ31との間にアパーチャ24を挿入することにより、後段偏向器18cの電場の漏れがステージ31まで及ぶ効果を低減させることができる。このアパーチャ24は穴の直径に対して軸方向の長さが、同程度かそれ以上の筒状の構造にすることにより、電場の漏れをさらに低減できる。なお、副偏向器18dは前段偏向器18aと主偏向器18bの間に設置する。
【0034】
図3に示されている線19は対物主偏向器でビームを偏向した場合のビームの軌跡を示した図である。但し、この軌跡19は鏡筒の中心軸からの距離を表しており、対物レンズ15の磁場によるビーム回転は示されていない。軸上、軸と並行に入射されたビームは前段偏向器18aにより偏向される。主偏向器18bは対物レンズ15の磁場によるビームの振り戻しを打ち消すように作用し、図3で主偏向器18bの中ではビームはほぼ直進する。後段偏向器18cは偏向されたビームを振り戻し、試料32に対し垂直に入射するように作用している。そのため、後段偏向器18cは主偏向器18bとほぼ逆位相になる。計算の結果、後段偏向器18cと主偏向器18bとの位相差は150°程度以上になる。
【0035】
(第2の実施形態)
図1に示した光学条件で、3段の対物主偏向器のうち、主偏向器18bの位相と偏向感度(w0)は固定値とし、後段偏向器18cの位相,偏向感度(w2)をパラメータとして、コマ収差を0にする式(2)を満たすように前段偏向器18aの位相と偏向感度(w1)を計算で求め、この条件における像面湾曲及び入射角を計算し、マップにしたのが図4である。
【0036】
図4において、x軸,y軸はw2つまり後段偏向器18cの偏向感度を示している。但し、(x,y)の絶対値はスケーリングされた値を用いた。例えば、図4の原点(0,0)は後段偏向器18cを設置しない場合を示している。また、(1,0)の点は(1,0)の条件の後段偏向器18cと偏向感度の絶対値は同じであるが、位相が90°回転している場合を示している。また、(2,0)の条件における後段偏向器18cは(1,0)の条件の後段偏向器18cと位相は同じであるが、偏向感度の絶対値が2倍になる。
【0037】
図4には、点Aを中心とする等高線と点Bを中心とする等高線の2つの等高線が示されている。点Aを中心とする等高線は偏向領域1mm□、収束半径5mradとした場合の像面湾曲であり、点Bを中心とする等高線は偏向領域のコーナーにおける入射角の絶対値を示している。点Bの条件においては、入射角は0であり、垂直入射の条件を満たすが、像面湾曲は50nm以上になる。一方、点Aにおいては像面湾曲は約30nmで極小になるが、入射角は約7mradになる。第1の実施形態に示されている計算結果である図2は、図4における点Bの結果のみを条件を変えてまとめたものである。
【0038】
図4において、線分AB上或いはその近傍の点は入射角度及び像面湾曲を小さくするために有利な条件になる。例えば、点Cと点C’,点C”を比較した場合、点C’は点Cと像面湾曲は同じで、入射角が小さくなっており、点C”は点Cと入射角が同じで像面湾曲が小さくなっている。線分C’C”上或いはその近傍であれば、入射角,像面湾曲共に点Cの条件よりも小さくなっている。以上により、線分ABの近傍が収差及び入射角を小さくするために有利な条件であることが分かる。
【0039】
一方、対物レンズ15の位置をターゲット側にシフトさせ、磁場がターゲット上にかかる、セミインレンズ或いはインレンズにした場合には、図4に示したマップは図5のように変化する。
【0040】
図5においてはAを中心とした等高線が像面湾曲を示しており、Bを中心とした等高線が入射角を示している。像面湾曲は太い実線で示した環状の領域で0になる。これは、像面湾曲の収差係数がこのマップ内で正負にまたがって分布しており、この環状領域で符号が逆転していることになる。2つの等高線分布の中心を結ぶ線分ABと像面湾曲が0になる曲線が交差する点をCとする。ここで、線分BC或いはその近傍は、収差及び入射角を小さくするために特に有利な条件になる。点Bは垂直入射で像面湾曲は約30nmであり、点Cでは像面湾曲が0になり、入射角は3mradである。
【0041】
図4と比較して図5では、環状領域で像面湾曲が極小値0になるため、像面湾曲の最小となる点Cと入射角が最小になる点Bが近くなるため、入射角及び像面湾曲を共に小さくする上で有利になる。
【0042】
対物レンズ15をインレンズ或いはセミインレンズにした場合、球面収差及び軸上の色収差が小さくなることは一般的に知られているが、像面湾曲,入射角についても有利な条件を得ることができることが今回の計算によって示された。また、本実施形態では後段偏向器18cをパラメータとして計算を行ったが、他の2つの偏向器18a,18bの何れかをパラメータにしても本質的に同じであり、最適条件としてほぼ同じ条件が得られる。
【0043】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。実施形態では、電子ビーム描画装置の光学系について適用した例を説明したが、電子ビーム描画装置に限らずイオンビーム描画装置に適用することもできる。さらに、微細パターンの描画に限らず、電子ビームやイオンビーム等を用いて微細パターンの測定を行う各種の測定装置に適用することも可能である。
【0044】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することができる。
【0045】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、対物主偏向器を3段の電極(主偏向器,前段偏向器及び後段偏向器)で構成し、各々の偏向器に連動した電圧を印加すると共に、コマ収差及びビームの入射角を打ち消すように各々の偏向器の位相と偏向感度を調節することにより、簡単な構造で低収差、垂直入射の荷電粒子ビーム光学系が得られる。従って、微細パターンの描画精度や測定精度の向上等に寄与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係わる電子ビーム描画装置を示す概略構成図。
【図2】後段偏向器,主偏向器及び前段偏向器の位置を変えた場合の像面湾曲値の変化を示す図。
【図3】対物偏向器の具体的構成例を示す図。
【図4】コマ収差を0にした場合の像面湾曲及び入射角のマップを示す図。
【図5】対物レンズをセミインレンズにして、コマ収差を0にした場合の像面湾曲及び入射角のマップを示す図。
【符号の説明】
11…電子銃
12…コンデンサレンズ
13…縮小レンズ
14…投影レンズ
15…対物レンズ
15a…対物レンズ主面
16…ブランキング電極
17…成形偏向器
18…対物偏向器
18a…前段偏向器
18b…主偏向器
18c…後段偏向器
18d…副偏向器
21…ブランキングアパーチャ
22…第1成形アパーチャ
23…第2成形アパーチャ
31…ステージ
32…試料
33…高さ測定器
Claims (5)
- 荷電粒子ビームを収束させる電磁レンズ系と、荷電粒子ビームを試料上の所望の位置に偏向する静電偏向系とを具備した荷電粒子ビーム照射装置であって、
前記電磁レンズ系の一つである対物レンズの主面と重なる位置に主偏向器を配置し、対物レンズの上極より上流で物面よりも下流に前段偏向器を配置し、主偏向器よりも下流に後段偏向器を配置してなり、
前記主偏向器,前段偏向器及び後段偏向器に連動した電圧をかけることにより荷電粒子ビームを偏向し、且つ主偏向器,前段偏向器及び後段偏向器の偏向感度及び位相は、コマ収差とビームの入射角が共に小さくなるように設定されることを特徴とする荷電粒子ビーム照射装置。 - 前記後段偏向器の一部或いは全部が、前記対物レンズのポールピースのギャップの外側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム照射装置。
- 前記後段偏向器と試料との間にアパーチャが設けられていることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム照射装置。
- 前記主偏向器,前段偏向器及び後段偏向器のz座標をそれぞれ固定し、さらに各偏向器のうち1個の偏向感度と位相を固定し、他の1個の偏向器の偏向感度と位相をパラメータとし、残りの1個の偏向器の偏向感度と位相は試料面でコマ収差が0になるように選択して、ビームの試料上での入射角と像面湾曲の等高線マップを作ったとき、像面湾曲の等高線マップの中心点Aと入射角の等高線マップの中心点Bを結ぶ線分AB近傍の点で示される条件になるように前記各偏向器が構成されることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム照射装置。
- 前記電磁レンズ系の一つである対物レンズは、前記等高線マップに像面湾曲が0になる環状領域ができるインレンズ或いはセミインレンズであり、前記等高線マップ上の線分ABと像面湾曲が0となる環状領域との交点を点Cとしたとき、線分ACの近傍の点で示される条件になるように前記各偏向器が構成されることを特徴とする請求項4記載の荷電粒子ビーム照射装置。
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