JP4234051B2 - 早戻り麺類及びその製造方法 - Google Patents
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また、麺線のほぐれ性、麺のコシ及び復元性を向上させる目的で、麺線を食塩水で茹で処理した後、水洗いする即席麺類の製造方法が提案されている(例えば特許文献2参照。)。しかしながら、この方法では、水洗いすることにより麺表面の食塩を洗い流してしまうため、復元性において十分な効果は得られていない。
すなわち、本発明は、麺類の断面の90%相似形である内部を除いた麺類の周縁部が食塩含量40質量%以上の領域を15%以上含むことを特徴とする早戻り麺類を提供する。
また、本発明は、茹で処理後の麺の水分含量が40〜70質量%となるように原料麺を実質的に食塩を含まない水で茹で処理し、次いで乾燥処理後の早戻り麺類の食塩含量が7〜25質量%になるように5〜25質量%の食塩水で茹で処理し、さらに5〜25質量%の食塩水で茹で処理した麺を乾燥処理することを含む早戻り麺類の製造方法を提供する。
また、本発明は、乾燥処理後の早戻り麺類の食塩含量が7〜25質量%になるように原料麺の表面に食塩を付着させ、表面に食塩が付着した麺を乾燥処理することを含む早戻り麺類の製造方法を提供する。
本発明の早戻り麺類は、さらに麺類の断面の90%相似形である内部の食塩含量40質量%以上の領域が10%以下であるのが好ましい。より好ましくは1〜9%である。前記内部の食塩含量が上記範囲内であれば、喫食時の塩味を抑えることができる。
ここで、麺類の断面の90%相似形とは、麺類の断面の中心から表面までの距離の90%の位置を線で結ぶことによって得られる形状であり、市販の画像処理ソフトウエア(Photoshop(アドビシステムズ社製)、Popimaging Ver. 2.00(Digital being kids社製)等)を用いて作成することができる。なお、早戻り麺類の断面における食塩含量は、例えばエネルギー分散型X線分析装置(EDX)を用いて早戻り麺類の断面の元素組成を定量化し、食塩に換算することにより求めることができる。
本発明の早戻り麺類は、さらに前記周縁部の食塩含量40質量%以上の領域が前記内部の食塩含量40質量%以上の領域の1.5倍以上であるのが好ましい。より好ましくは2〜4倍であり、さらに好ましくは2.5〜3.5倍である。
さらに、本発明の早戻り麺類においては、麺類の水分含量は、好ましくは13質量%以下であり、より好ましくは11〜13質量%である。水分含量が上記範囲内であれば、保存中の品質劣化を防止することができるとともに、亀裂、折れ、曲がり等の物性変化を防止することができる。早戻り麺類の水分含量は、例えば、常温加熱乾燥法により求めることができる。
また、本発明の早戻り麺類の断面形状は円形に限られず、楕円形、三角形、四角形等の任意の形状であってもよい。また、早戻り麺類の断面の大きさも特に制限されないが、断面が大きくなると喫食調理時間が長くなってしまうため、所望の喫食調理時間によって制限される。好ましくは、厚みが2mm以下のもの、より好ましくは、1〜2mmのものである。早戻り麺類の断面の大きさが上記範囲内のものであれば、喫食調理時間を5分以下、より好ましくは3〜4分とすることができる。ここで、喫食調理時間とは、沸騰している湯中に早戻り麺類を入れ、調理した後、ザルで湯切りするまでの時間である。
原料麺が乾麺である場合、実質的に食塩を含まない水で茹で処理する時間は15秒〜10分間であり、5〜25質量%の食塩水で茹で処理する時間は1〜30分間であるのが好ましい。より好ましくは、実質的に食塩を含まない水で茹で処理する時間は1〜5分間であり、5〜25質量%の食塩水で茹で処理する時間は1〜5分間である。
原料麺が生麺である場合、実質的に食塩を含まない水で茹で処理する時間は1〜5分間であり、5〜25質量%の食塩水で茹で処理する時間は1〜8分間であるのが好ましい。より好ましくは、実質的に食塩を含まない水で茹で処理する時間は1〜3分間であり、5〜25質量%の食塩水で茹で処理する時間は1〜3分間である。実質的に食塩を含まない水及び5〜25質量%の食塩水での茹で処理時間は生産性の面からも短い方がよく、また上記範囲内であれば、コシのない、弾力の弱い麺となることを防止できる。
なお、実質的に食塩を含まない水での茹で処理は、好ましくは茹で処理後の麺の水分含量が40〜70質量%となるように行う。上記範囲の水分含量とすることで麺内部への食塩の浸透を防止することができる。より好ましくは、茹で処理後の麺の水分含量が40〜55質量%となるように行う。麺の水分含量は、例えば105℃常圧加熱乾燥法により求めることができる。
また、5〜25質量%の食塩水での茹で処理は、好ましくは乾燥処理後の早戻り麺類の食塩含量が7〜25質量%になるように行う。より好ましくは、乾燥処理後の早戻り麺類の食塩含量が10〜15質量%になるように行う。上記範囲の食塩含量とすることで喫食時の塩味を抑えることができる。
ここで、実質的に食塩を含まない水とは、上水や地下水等をいう。また、茹で処理とは、水又は食塩水が沸騰した状態で原料麺を茹でることを意味する。
原料麺である乾麺は、生麺を乾燥したものであり、当業者によく知られた任意の方法、例えば、後述の生麺の製造方法によって製造された生麺を、50℃程度の比較的低温で乾燥することによって得ることができる。
また、原料麺である生麺としては、当業者によく知られた任意の方法によって製造された生麺を用いることができる。生麺は、例えば以下のようにして製造することができる。
原料として、デュラムセモリナ、普通小麦粉を使用してドウを調整する。必要に応じて、小麦粉の一部に澱粉、卵、野菜類を添加してもよい。小麦粉に対して25〜37質量%の範囲で水を添加する。この範囲内であれば、性質のよいドウの形成が容易である。このドウからエクストルーダーを用いて、真空状態(水銀柱400〜700mmHg)で脱気しながら、高圧(80〜200kg/cm2)で麺を押し出す。なお、押し出す際、筋付きのダイで押し出す事で復元性を高めることができる。
原料麺の表面に水を噴霧したのち食塩を表面に付着させる方法においては、噴霧する水の量は麺150g当たり2〜10gであるのが好ましく、より好ましくは5〜8gである。また、麺表面に付着させる食塩は麺150g当たり20〜40gであるのが好ましく、より好ましくは25〜35gである。
原料麺の表面に食塩水を塗布する方法においては、食塩水の食塩濃度は15質量%以上であるのが好ましく、より好ましくは15〜25質量%である。
原料麺を蒸煮した後、麺表面の結露した水の上に食塩を付着させる方法においては、蒸煮する時間は好ましくは5秒〜3分間である。また、麺表面に付着させる食塩は麺150g当たり20〜40gであるのが好ましい。
デュラムセモリナ5kgに用水1.45kgを加え、ミキサーで10分混捏を行った。捏ねられたドウをエクストルーダーに移し、650mmHgで脱気しながら押し出し圧力110kg/cm2で線径1.6mmのダイを用いて押し出して生スパゲッティを得た。得られた生スパゲッティを沸騰状態の上水で1分間茹で処理した。茹で処理後のスパゲッティの水分含量は48質量%であった。水切り後、さらに20質量%の食塩水で1分間茹で処理した。水切り後、スパゲッティをリテーナー(150×150×25mm)に充填し、ほぐし機で麺塊の高さを均一に整えた。リテーナーに充填したまま、麺塊を乾燥機中で乾燥した。乾燥は、風速1.5mm/cm2にて、調湿しながら16時間行った(最高温度88℃80%RH30分)。乾燥後のスパゲッティの塩分含量は15質量%であり、水分含量は12質量%であった。得られた乾燥スパゲッティを中火で上水1L中で3分45秒間茹で、アルデンテ状態のスパゲッティを得た。
なお、乾燥スパゲッティの食塩含量は、電量滴定法を用いて塩素量を測定し、当該塩素量から換算して食塩量を求めた。水分含量は、105℃常圧加熱乾燥法を用いて測定した。
得られたスパゲッティの硬さをクリープメーターで測定し、市販品(乾燥スパゲッティ1.6mm、レトルト生タイプスパゲッティ)を復元させたものと比較した。結果を図1に示す。
(市販品:乾燥スパゲッティの復元方法)
熱水で7分間、茹で処理して、喫食状態に復元させた。
(市販品:容器入りレトルト生タイプスパゲッティの復元方法)
容器にレトルト生タイプスパゲッティを入れ、熱水を注加して1分間保持した後、熱水を容器から排出して、喫食状態に復元させた。
(硬さの測定方法)
測定機器:クリープメータRE3305(クリープメータ物性試験システム)
テスト内容:破断テスト
プランジャー:No27
プランジャースピード:0.1mm/秒
ロードセル:2kgf
(測定結果の評価)
本発明品は、市販の乾燥スパゲッティと同様の破断荷重変遷となっているのに対し、市市販のレトルト生タイプスパゲッティの場合は、市販の乾燥スパゲッティの破断荷重変遷と大きく異なっており、また、破断荷重の最高値が市販の乾燥スパゲッティの半分となっており、歯ごたえの無さを証明している。
実施例1と同様にして、エクストルーダーで線径1.6mmのダイを用いて押し出して生スパゲッティを得た。得られた生スパゲッティに食塩を付着した。次いで、リテーナー(150×150×25mm)に充填し、ほぐし機で麺塊の高さを均一に整えた。リテーナーに充填したまま、麺塊を乾燥機中で乾燥した。乾燥は、風速1.5mm/cm2にて、調湿しながら16時間行った(最高温度88℃80%RH30分)。乾燥後のスパゲッティの塩分含量は約19質量%であり、水分含量は12質量%であった。得られた乾燥スパゲッティを中火で上水1L中で3分45秒間茹で、アルデンテ状態のスパゲッティを得た。
デュラムセモリナ100%の線径1.6mmの乾燥スパゲッティ(市販品)70gをバケットに充填し、沸騰状態の上水で5分茹で処理した。茹で処理後のスパゲッティの水分含量は57質量%であった。水切り後、さらに20質量%の食塩水で1分茹で処理した。水切り後、リテーナー(150×150×25mm)に充填し、ほぐし機で麺塊の高さを均一に整えた。リテーナーに充填したまま、麺塊を乾燥機中で乾燥した。乾燥は、風速1.5mm/cm2にて、調湿しながら16時間行った(最高温度88℃80%RH30分)。乾燥後のスパゲッティの塩分含量は約17質量%であり、水分含量は約12質量%であった。得られた乾燥スパゲッティを火力中火で上水1L中で4分茹で、アルデンテ状態のスパゲッティを得た。
実施例1と同様にして、エクストルーダーで線径1.6mmのダイを用いて押し出して生スパゲッティを得た。得られた生スパゲッティを20質量%の食塩水で1分間茹で処理した。1分間の水洗い後、リテーナー(150×150×25mm)に充填し、ほぐし機で麺塊の高さを均一に整えた。リテーナーに充填したまま、麺塊を乾燥機中で乾燥した。乾燥条件は、風速1.5mm/cm2にて、調湿しながら16時間行った(最高温度88℃80%RH30分)。得られた乾燥スパゲッティの塩分含量は約17質量%であり、水分含量は12質量%であった。得られた早戻り麺類を中火で上水1L中で7分間茹で、アルデンテ状態のスパゲッティを得た。
実施例1と同様にして、エクストルーダーで線径1.6mmのダイを用いて押し出して生スパゲッティを得た。得られた生スパゲッティを20質量%の食塩水で1分間茹で処理した。水切り後、リテーナー(150×150×25mm)に充填し、ほぐし機で麺塊の高さを均一に整えた。リテーナーに充填したまま、麺塊を乾燥機中で乾燥した。乾燥は、風速1.5mm/cm2にて、調湿しながら16時間行った(最高温度88℃80%RH30分)。得られた乾燥スパゲッティの塩分含量は約11質量%であり、水分含量は12質量%であった。得られた乾燥スパゲッティを中火で上水1L中で4分15秒茹で、アルデンテ状態のスパゲッティを得た。
得られた乾燥スパゲッティを中火で上水1L中で3分45秒茹でた以外は、比較例2と同様にして、アルデンテ状態のスパゲッティを得た。
検量線用試料の調製:
(1)スパゲッティ粉砕物と食塩(微粉)を所定の濃度になるように混合し、めのう乳鉢で良く混ぜた。食塩濃度は、0、10、20、30、100質量%に調製した。
(2)調製粉末500mgをFT-IR用打錠機の金型に入れ、打錠した(加圧重量:6トン/cm2、加圧時間:10分)。
スパゲッティの調製:
試料乾燥スパゲッティの断面が水平かつ平滑になるように割り、塩素を含まない弾力性のあるポリエチレン系樹脂の消しゴムに面を揃えて包埋した。測定条件を一定にするために、複数の試料を同時に包埋した。
測定試料の前処理:
(1)試料台に導電性カーボンテープを張り、この上に検量線用試料及び測定用乾燥スパゲッティを装着した。複数のサンプルを一つの試料台にまとめて装着した。
(2)測定用乾燥スパゲッティの表面をスパッタリングにより金で被覆した。
検量線用試料の測定:
走査型電子顕微鏡を用いて検量線用試料を50倍で観察し、画面上で水平方向の分析ラインを設定して、走査型電子顕微鏡に装着したエネルギー分散型X線分析装置により食塩含量のライン分析を行った。分析条件詳細については下記表1の通りである。
検量線用試料と同一条件(ワーキングディスタンス、加速電圧、電流強度、スポットサイズなど)で、食塩含量のライン分析及び元素マッピングを行った。測定用乾燥スパゲッティの中心部及び周縁部の食塩濃度は、図2の検量線をもとに算出した。各測定用乾燥スパゲッティの中心部および周縁部の食塩濃度を下記表3に示す。また、各測定用乾燥スパゲッティの元素マッピング及びX線強度マッピングを図3〜7に示す。なお、周縁部の食塩含量については、ライン分析の左側及び右側の値を示す。
また、食塩含量測定で用いた各装置は下記表4の通りである。
(1)上記元素マッピング像を画像処理ソフトウエアPhotoshop(アドビシステムズ社製)で開き、矩形選択ツールでパスタ断面がちょうど囲まれるような長方形を選択して切り取り、背景を除去して背景除去画像を得た。
(2)前記背景除去画像を、画像解析アプリケーションPopimaging Ver. 2.00(Digital being kids社製)で二値化してパスタ断面が白、背景が黒の二値化画像を得た。
(3)前記二値化画像を画像処理ソフトウエアPhotoshop(アドビシステムズ社製)で開き、白黒を反転させ、90%に縮小してパスタ断面の90%相似形の画像を得た。
(4)画像処理ソフトウエアPhotoshop(アドビシステムズ社製)を用いて、前記背景除去画像と前記90%相似形の画像とを、重ねた。このとき、両画像のパスタ断面の中心を重ね、パスタ断面の周縁部の画像を得た。
(5)画像解析アプリケーションPopimaging Ver. 2.00(Digital being kids社製)を用いて前記背景除去画像と前記90%相似形の画像とを重ねた画像を適切に二値化して、周縁部の食塩含量40質量%以上の領域を求めた。周縁部の二値化画像(食塩含量40%以上)を図9に示す。なお、図8には、得られたパスタ断面の二値化画像(食塩含量40%以上)を示す。また、食塩含量40%以上の分布のデータを表5に示す。
Claims (5)
- 麺類の断面の90%相似形である内部を除いた麺類の周縁部が食塩含量40質量%以上の領域を15%以上含み、麺類の断面の90%相似形である内部が食塩含量40質量%以上の領域を10%以下含み、かつ、麺類の食塩含量が7〜25質量%であることを特徴とする早戻り麺類。
- 前記周縁部の食塩含量40質量%以上の領域が前記内部の食塩含量40質量%以上の領域の1.5倍以上である、請求項1記載の早戻り麺類。
- 麺類の水分含量が13質量%以下である、請求項1又は2記載の早戻り麺類。
- 麺類の厚みが1〜2mmである、請求項1〜3のいずれか1項記載の早戻り麺類。
- 麺類の喫食調理時間が3〜4分である、請求項1〜4のいずれか1項記載の早戻り麺類。
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