JP4233117B2 - 樹枝状ポリマーのナノコンポジット - Google Patents

樹枝状ポリマーのナノコンポジット Download PDF

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Description

発明の属する分野
本発明は、樹枝状ポリマーと種々の物質との新規なナノコンポジット(nanocomposite)の形成に関する。
発明の背景
線状ポリマー、枝分かれポリマー及び架橋ポリマー中での金属化合物の組織化及び固定化のような種々の古典的ポリマー中でのナノ粒子の形成が文献に記載されている。特に、アイオノマー及びブロックコポリマーを使用する金属、金属イオン及び金属硫化物の固定化が文献に記載されている。
50年以上もの精力的な研究の結果として、錯体の形成に関する法則は物理化学の分野で良く知られるものとなっている。そのような錯体の形成は、樹枝状ポリマーの表面又はそれらの内部で起こりうる。それらの現象は多くの文献の中で説明されてきた。
ナノサイズ物質(nanosized materials)の調製及び分析、物理及び化学は、例えばL.J. De Jongh編集の”Physics and Chemistry Of Metal Cluster Compounds”Kluver Academic, Dordrecht/Boston/London, 1994のようなKluver Academics On the Physics and Chemistry Of Materials With Low-Dimension Structuresの一連の書籍及びそれらの参考文献に記載されている。ナノサイズ物質を調製するために現在使用されている方法の一般的な欠点は、精密かつ費用のかかる設備又は冗長で大規模な調製及び精製プロセスを必要とすることである。小さな有機リガンドと両親媒性分子の組み合わせを使用することによって一時的に安定化されたナノサイズ物質を溶液中で簡単に調製することができる。しかしながら、それらのクラスターは長期間安定性に欠ける。また、ナノサイズ物質の周知の調製方法に共通する欠点は、結果として得られるナノ粒子の粒度及び粒度分布が統計的法則に従うということである。結局、粒度分布が狭いナノ粒子の調製には冗長な精製処理を必要とする。
J.U. Yue等はJ. Am. Chem. Soc. 1993, 115, 4409-4410において、ポリメチルテトラシクロドデセンマトリックス内のポリ(2,3−trans−ビス−tert−ブチラニルジメチル−ノルボルン−5−エン)ドメインにおけるフッ化亜鉛の合成及びそのフッ化亜鉛クラスターの硫化亜鉛への転換を伴うナノサイズ物質の調製技術を報告している。Yue等は、開示した方法はブロックコポリマーのナノスケール領域で化学反応を行うための一般的手法を示すものであると結論付け、所定の出発物質から種々のクラスターを合成できるであろうことを考察している。Yue等は、開示した一般的手法を使用して硫化鉛及び硫化カドミウムクラスターを調製できるであろうと仮定し、それと同じ手法を使用し、他の技術を使用して生成する硫化亜鉛クラスターよりも質の面で優れた硫化亜鉛量子クラスターを生成させたと報告している。
Martin Mollerは、Synthetic Metals, 1991, 41-43, 1159-1162において、ポリスチレン及びポリ−2−ビニルピリジンの官能化ジブロックコポリマーから調製された硫化カドミウム、硫化コバルト、硫化ニッケル及び硫化亜鉛のナノサイズの無機結晶又はクラスターの合成を報告している。前記ジブロックコポリマーは、逐次アニオン重合により狭い分子量分布でもって調製されたものである。溶媒蒸発によって、銅、カドミウム、コバルト、ニッケル、亜鉛及び銀の金属塩を含むフィルムが調製された。続いてそのフィルムをガス状硫化水素により処理して対応する金属硫化物を形成させた。
W. Mahlerは、Inorganic Chemistry, 1988, 27(3), 435-436において、高温(160℃)でエチレン−メタクリル酸コポリマーを金属酢酸塩又は金属アセチルアセトン酸塩と共に摩砕することによるポリマーにトラップされた半導体粒子の調製を報告している。
T. Douglas等は、Science, July 7, 1995 Vol. 269, 54-57において、各クラスター中に500〜3000個の鉄原子を含むアモルファス硫化鉄無機物の合成を報告している。この合成は、ウマ脾臓フェリチンのナノ規模(nanodimensional)のキャビティ内で達成された。この論文には、フェリチン内での酸性(pH5.4)硫化物溶液の反応によって、タンパク質で包まれた硫化鉄の現場ナノスケール合成(in situ nanoscale synthesis)がもたらされることを示している。Douglas等は、そのような生体無機ナノ粒子が生体センサー及び標識、ドラッグキャリヤー並びに診断用の剤及び放射能のある剤として有用であろうと推測している。Douglas等は、ナノ規模の金属硫化物が、技術的重要性のあるもの、恐らくは生物学的重要性のあるものとなりうる半導体の調製に有用であろうという提案もしている。
Y. Wang等は、J. Chem. Phys., 1987, 87(12), 7315-7322, December 15において、Pb2+を交換によりエチレン−メタクリル酸コポリマーフィルムに導入し、次いでその鉛−樹脂錯体を硫化水素と反応させることによるエチレン−メタクリル酸コポリマー中でのナノ規模の硫化鉛の調製を報告している。
J.P. Kuczynski等は、J. Phys. Chem., 1984, 88, 980-984において、Nafionポリマーフィルム中での硫化カドミウムの合成を報告している。小さな硫化カドミウム結晶粒子が、硫化カドミウム単結晶のものに類似する特性を示すことを報告している。
M. Krishnan等は、J. Am. Chem. Soc., 1983, 105, No.23, 7002-7003において、イオン伝導性ポリマー膜(Nafion)全体にわたって分散半導体(CdS)を導入する方法を報告している。イオン伝導性ポリマー膜(Nafion)は、その膜での光触媒反応を促進させるために適切な酸化還元対(redox couple)及び触媒を添加できるものである。予備処理された膜をCd2+溶液(pH=1)に浸漬してイオン交換により膜にCd2+を導入する。その後その膜を硫化水素に暴露することによって、直径が1マイクロメートル以下の球状硫化カドミウム粒子が生成した。メチルバイオロゲン(MV2+)のような陽イオン性酸化還元剤をその膜に導入することができる。Kishnan等は、白金をCdS/MV2+膜系に導入できることも報告しており、類似の技術を使用することによって、酸化チタン及び硫化亜鉛のような他の半導体の導入も可能であろうと推測している。
Albert W-H Mau等は、J. Am. Chem. Soc., 1984, 106, No.22, 6335-6542において、水素発生触媒(Pt)を含むポリマー(Nafion)マトリックス中に埋め込まれた硫化カドミウム結晶での光触媒反応における水からの水素生成効率が、同様な条件下での担持されていないコロイド状又は粉末状半導体を使用して観察されるものよりも高いことを報告している。
Y. Ng Cheong Chan等は、Chem. Mater. 1992, 4, 885-894において、非導電性ポリマーマトリックス全体に均一に分散された、直径が100オングストローム未満であり、狭い粒度分布を有する金属クラスターを形成する方法を報告している。それらの方法は、有機金属ホモポリマーにおける又はミクロ相分離ジブロックコポリマーの有機金属ブロックにおける金属錯体の還元及び固体状態にある金属原子の凝集を伴う。Chan等は、そのような組成物が特異な触媒特性を示すであろうことを示唆している。
Chan等は、J. Am. Chem. Soc. 1992, 114, 7295-7296において、ブロックコポリマーフィルムの球状ミクロドメイン内に均一に分散した単一銀ナノクラスターの合成を報告している。
Sung Soon Im等は、J. Appl. Polym. Sci. 1992, 45, 827-836において、金属硫化物と高い導電性を示すポリアクリロニトリル(PAN)フィルムコンポジットの調製を報告している。このコンポジットは、PANフィルムを水酸化アンモニウム溶液で処理してアミドオキシム基を誘導し、そのアミドオキシム基にCu2+及びCd2+を配位させてアミドオキシム化されたPANフィルムにCu2+及びCd2+を吸収させ、続いて硫化水素ガスで処理することによりCuS−PAN及びCdS−PANコンポジットフィルムを形成するキレート化法により調製される。
M. Francesca Ottaviani等は、J. Am. Chem. Soc. 1994, 116, 661-671において、陰イオン性ポリアミドアミン(PAMAM)Starburst▲R▼デンドリマー(SBDs)により形成されるCu2+錯体の調製及び特性評価について報告している。PAMAM−SBDs(世代0.5〜7.5)を、メタノール中の化学量論的量の水酸化ナトリウムを用いるメチルエステルを末端基とする世代の加水分解にかけると、ナトリウムカルボキシレートを末端基とするPAMAM−SBDsが形成された。カルボキシル化PAMAM−SBDsをCu(NO32水溶液により処理するとSBD/Cu(II)錯体が得られた。Ottaviani等は、電子常磁性共鳴技術を使用して、低pHでカルボキシレート錯体、中間のpHでデンドリマーの内部浸透性構造中の窒素センターとの相互作用を伴うCu(II)−N22錯体、並びにより高いpH及びより高い世代で多数の内部サイトを含むCu(II)−N3O又はCu(II)−N4錯体の3つの異なる錯体を同定した。
Ottaviani等は、J. Phys. Chem. 1996, 100, 11033-11042において、PAMAM−SBDs/Mn(II)錯体の調製を発表している。Ottaviani等は、Mn(II)が、アミノ基を末端とする完全世代(full generation)PAMAM−SBDsと相互作用せず、恐らくは第2の溶媒和殻でカルボキシル化された半世代(half-generation)PAMAM−SBDsの表面カルボキシレート基のみと相互作用するであろうと結論付けている。
Ottaviani等は、J. Phys. Chem. B., 1997, 101, 158-166において、PAMAM−SBDs/Cu(II)錯体の調製及び特性評価を発表している。Ottaviani等は、Cu(II)がpHの関数としてアミノを末端基とする完全世代PAMAM−SBDsと相互作用しないと結論付けている。アミノを末端基とするPAMAM−SBDsにおいて、中間のpHでデンドリマーの内部浸透性構造中の窒素センターとの相互作用を伴うCu(II)−N22、Cu(II)−N3O錯体及びCu(II)−N4錯体を含む3つの異なる錯体が発見された。
Wege等は、Polym. Prepr., ACS Div. Polym. Chem. 1995, 36, 239-240において、アクリル酸メチルと酢酸ビニルの重合をPAMAMデンドリマーの存在下で遊離基開始剤により開始した場合のポリマーハイブリッド(polymer hybrid)の形成を報告している。反応条件に依存して、水溶性ハイブリッド及び水不溶性ハイブリッドの両方が形成される。そのような方法の欠点はその方法が遊離基重合性有機モノマーに限られていること、及びその方法によって生長するポリマー鎖とホストの官能基の間に共有結合をもたらすデンドリマーへの連鎖移動のために分離不可能なハイブリッド網状組織がもたらされ、使用されるデンドリマーの容器特性(container properties)が不可逆的に消失することである。
Meijer等は、ヨーロッパ特許出願第95201373.8号(ヨーロッパ特許出願公開明細書第0,684,044号)において、デンドリマー及び活性物質からなる組成物を開示している。この組成物は、デンドリマーを予め合成された化合物と混合し、次に、デンドリマーの表面を立体障害的に十分な大きさを有し、デンドリマーの末端基との化学結合に容易に入り込み、さらにデンドリマーから分離して部分的に又は完全に吸蔵された化合物の放出を制御することもできるブロッキング剤で処理することによって形成される。そのような方法の欠点は、そのような方法が、予め存在する化合物の包接に限定されていることにある。他の欠点に、その方法が同じ修飾可能な表面基を有するデンドリマーに限られていることである。
Newkome等は、米国特許第5,422,379号明細書において、環境の変化に応じて可逆的に膨張及び収縮することができる単分子ミセルの構築を開示している。これらの単分子ミセルは、種々の構造を有することができるとともに錯体金属であってよい活性反応部位を有することができる。
発明の要約
本発明は、離散的なナノサイズ無機物質がポリマー物質上又は中に分配され、その分配されたナノサイズ無機物質の大きさ及び大きさの分布が樹枝状ポリマーにより決定及び制御される種々のコンポジット組成物を包含する。本発明は、離散的なナノサイズ無機物質がポリマー物質上又は中に分配され、その分配されたナノサイズ無機物質の大きさ及び大きさの分布が樹枝状ポリマーにより決定及び制御されるコンポジット組成物の種々の形成方法にも関する。
前記方法は、樹枝状ポリマーと少なくとも1種の無機物質の間の接合体(conjugate)を生じる非共有結合的共役相互作用を伴う第1ステップを概して含む。このステップでは、前記無機物質の分布から樹枝状ポリマーの大きさ及び大きさの分布についての特徴がもたらされ、樹枝状ポリマー及び樹枝状ポリマーに接合したナノサイズ無機物質の両方が、それらの樹枝状ポリマー及びナノサイズ無機物質の別個の存在同士の間での共有結合的相互作用が存在しないために、それぞれそれらの個々の独自性並びにそれらの個々の物理的及び化学的特性を保持する。第2のステップにおいて、ナノサイズの1つ又は複数の無機物質を反応させ、反応生成物が、樹枝状ポリマーに共有結合することなく樹枝状ポリマーに束縛されたナノ構造コンポジット材料(nanostructural composite material)を形成させる。
【図面の簡単な説明】
図1は、世代、表面基間距離及びプローブの大きさの関数としてポリアミドアミンデンドリマーにおける内部枠組み特性(interior scaffolding properties)、容器特性及び表面枠組み特性(surface scaffolding properties)を示したものである。
図2は、樹枝状ポリマー分子及び複数の樹枝状分子を中間体及びナノコンポジットに変換することについての単純化したスキームを示すものである。
図3は、倍率200,000での{Cu2S−G4.T}ナノコンポジットの鮮明なTEM顕微鏡写真である;
図3Aは、PAMAM G4.Tデンドリマー及び5種のそれぞれ異なるナノコンポジット(Ag2S,ZnS,CuS,Cu2S及びCdS)のSECクロマトグラムを比較したものである;
図3Bは、PAMAM G4.Tデンドリマー及び{Ag2S−G4T}ナノコンポジットのRP−IP−HPLCクロマトグラムを比較したものであり、この図において連続線は純粋なデンドリマーを表し、点線はナノコンポジットを表す;
図3Cは、ホスト及び2種のナノコンポジットのキャピラリーエレクトロフェログラムを比較したものである;
図4Aは、G4.Tの13C−NMRスペクトルである;
図4Bは、{ZnS−G4.T}の13C−NMRスペクトルである(CH3COOH信号は出発物質である酢酸亜鉛(II)によるものである);
図5は、{Cu2S−G4.T}の1H−NMRスペクトルである(CH3COOH信号は出発物質である酢酸銅(II)によるものである);
図6は、PAMAM G4.T及び{Ag2S−G4.T}のUV−可視スペクトルを比較したものであり、[Ag2S]=7.78mM,[G4.T]=0.25mM,2mg/ml溶液,L=0.1cmである;
図7は、G4.T及び酢酸銅とのその錯体のRP−IP−HPLCクロマトグラムを比較したものであり、この図において連続線はデンドリマーを表し、点線は内部Cu錯体を表す;
図8は、ポリプロピレンキュベット内での樹枝状のCdSのUV−可視スペクトルである;
図9は、ポリプロピレンキュベット内での水中のCoSのUV−可視スペクトルである;
図10は、{AgOH−G4.T}、すなわちデンドリマーに包接されたAgOHのUV−可視スペクトルである;
図11は、暗室で1日間貯蔵したデンドリマーに包接されたAgBrのMeOH溶液のポリプロピレンキュベット内でのUV−可視スペクトルである;
図12は、1時間光分解させたAgBrのMeOH溶液のポリプロピレンキュベット内でのUV−可視スペクトルである;並びに
図13は、水中のCu2+(Cu2+/W)、トルエン中の[Cu2+−G4.T](Cu2+/T)及びトルエン中のCuS(CuS/T)のUV−可視スペクトルを比較したものである。
図14は、G4.T PAMAMデンドリマーの存在下水中で形成された金ナノコロイドの吸光度のグラフである。[Au(0)]=33mg/リットル。
図15は、[CuAc231−G4.(NHCHCH(OH)C41064]分子錯体と、転化された樹枝状ミセル内に元素状銅ドメインを含む対応するそのナノコンポジット溶液のUV−可視スペクトルをグラフで比較したものである。
図16は、コロイド状の金の電子顕微鏡写真である。
図17は、コロイド状の金の電子顕微鏡写真である。
図18は、臭素化されたコロイド状の金の電子顕微鏡写真である。
図19は、コロイド状の銅の電子顕微鏡写真である。
図20は、{CuS−G7.0}樹枝状ナノコンポジットの電子顕微鏡写真である。
図21は、{CuS−G9.0}樹枝状ナノコンポジットの電子顕微鏡写真である。
好ましい態様の説明
無制限の量で全く同じように複製されるナノメートルスケールの物体を製造する能力は、現代の物質研究における究極的な難題である。この分野における成功は、顕著な基本的かつ有望な技術的価値を与える。
本発明は、物質の形状及び大きさのナノスコピックスケールでの定義づけを可能にする。このスケールでは、原子状物質とバルク物質の間の物理的及び化学的特性が現れる。一様なナノ物質のうまくいく簡単で経済的な製造法が非常に望ましい。これらの新規ナノコンポジットは、今までにない予期しなかった重要な物理的特性(例えば、溶解性、光学的特性、電気的特性、磁性等)及び化学的特性(例えば、反応性及び選択性等)を示す。
本発明の方法は、所定の組成、大きさ及び大きさの分布でもって無制限の量で全く同じように複製されるナノメートルスケールの物質を製造する簡単で経済的な手段を提供する。
鎖、フィルム、共有結合クラスター及び非共有結合クラスター、架橋した樹枝状ポリマー及び樹枝状ポリマーのような1−D、2−D及び3−D(次元)的特徴を有する種々の構造物への「ゼロ次元的」樹枝状構築ブロック、すなわちデンドリマー、デンドロン(dendrons)、デンドリグラフト(dendrigrafts)及び超分枝ポリマー(hyperbranched polymers)の組み込みによって、ナノコンポジットの製造に関する構造的及び構成的な多様性が広がる。内部枠組み特性、容器特性及び表面枠組み特性のようなこれらの明確に規定される化合物の周期的特性(図1に示す)を利用することによって、コンポジット物質又は従来の有機又は無機ポリマーにおける分散相の大きさ及び大きさの分布を規定及び調節することができる。図1はある特定の金属イオンに対するPAMAMデンドリマーの周期的特性のみを示すものであるが、これらの3つの特性の周期性はいかなる樹枝状ポリマー及びいかなる相互作用する反応物に対しても類似するものである。これらの周期的特性は、表面基の性質及び表面基間距離並びに樹枝状ポリマーの全体的構造に対するプローブの大きさ及び特性の関数である。
この手法において樹枝状ポリマーを使用することの基本的利点は、それらの明確に規定される構造、大きさ及び大きさの分布と、それらがゲストを含むことができるか又は内部リガンド構造及び調節可能な表面構造のためにゲストをその表面に輸送できることにある。
第1段階における拡散の非特異的性質のためにこれらのナノコンポジットにおいて分子/原子レベルの混合を達成できることも1つの利点である。その結果、分散相の分布が極めて狭い巨視的に均質な物質を得ることができる。さらなる利点は、樹枝状中間体(接合体、プレコンポジット物質(precomposite materials))を混合できること又はデンドリマー化学分野で周知の方法に従って樹枝状中間体を組み合わせられることである。樹枝状プレコンポジット又はコンポジットを2官能性又は多官能性モノマー、オリゴマー又はポリマーとさらに反応させ、特定の用途に必要とされる無反応性マトリックス中に溶解又は分散させることができる。樹枝状ナノコンポジットの混合物は、ナノスコピックレベルでのミクロ不均質性を与え、ナノエンジニアリングに関する方法の幅を拡げることができる。
これらの新規なコンポジットの最も特徴的な特性は、少なくとも1つの成分の予め決まった密度ゆらぎが使用される樹枝状ポリマーによりナノスコピックレベルで基本的に決まることである。この基本構造も他の成分の化学的性質によって左右される場合がある。
従って、適切に合成され選ばれた0−D、1−D、2−D及び3−D樹枝状ポリマー構造物を永久的又は一時的な鋳型(templates)として使用することができる。
個々の(「ゼロ次元的」)樹枝状ポリマー及び樹枝状ポリマーの錯体を、それらの表面官能基を使用して1−D、2−D及び3−D網状構造物に変換することができる。(我々の命名法では、「ゼロ次元的」(0−D)単位は個々のデンドリマー、樹枝状ポリマー又は樹枝状クラスターであり、1−Dという表示は鎖を意味し、2−D組織体はナノコンポジットの層を意味し、3−D網状構造物は架橋した樹枝状ポリマーである。)同様に、1−D、2−D及び3−D樹枝状網状構造物(dendritic networks)は金属及びメタロイドとの錯体を形成する。そのような接合体は、より次元の高い樹枝状ポリマー又は樹枝状ナノコンポジットへの前駆体としての機能も果たすことができる(図2)。0−D、1−D、2−D及び3−D構造物のいずれも、化学変換の前又は後で非樹枝状媒体中に(それらの物理的又は化学的に結合した形態で)分散させることができる。非樹枝状媒体が気体である場合に、生成物は、非共有結合的に結合しナノ分散されたゲスト分子(樹枝状ナノコンポジット)を含む樹枝状ポリマーの塊である。非樹枝状媒体が溶剤である場合に、生成物は前記ナノコンポジットの溶液である。それはサスペンション又はエマルジョンであってもよい。非樹枝状媒体が分散した樹枝状ナノコンポジットを含む固形物である場合には、生成物はナノコンポジットであり、その分散相の大きさ及び分布は樹枝状ナノコンポジットにより決定される。任意の次元構造を有する樹枝状ポリマーを金属及びメタロイド化合物のナノコンポジットを製造するための永久的又は一時的鋳型として使用することができる。これらのナノコンポジットにおいて、金属及びメタロイド化合物は所定の大きさ及び大きさの分布を有する有機又は無機物質に分散される。
いかなる次元から始まっても(左欄)、まず、適切に選ばれた樹枝状ポリマーと反応物の第1の基の間で一時的な相互作用(錯化、水素結合、双極子−双極子相互作用、ロンドン分散力、ファンデルワールス相互作用のような非共有結合的接合を伴う)が生じる(真ん中の欄)。これらの中間体は次に1以上のステップで反応、熱、照射等のような物理的又は化学的方法により新規なナノ構造物(図2参照)に化学的に変換される。
これらのコンポジットにおいて、分散した物質の大きさ及び大きさの分布は、樹枝状ポリマーにより決定及び制御される。この樹枝状ポリマーは構成成分のうちの1つであってよいが、最終生成物から除去されてもよく、その役割は分散させるべき物質のための鋳型を提供することである。この最終的に得られるコンポジットの連続相は樹枝状ポリマーである必要はない。
樹枝状ナノコンポジットの製造方法は2つ以上のステップで実施される。第1ステップは、樹枝状ポリマー内での反応物(原子、イオン又は分子)の局在化を伴う。
反応物の局在化とは、第2反応物と反応して生成物を生じ、その生成物が樹枝状ポリマー内部に物理的又は化学的に捕捉されるのに十分な時間、中間世代の樹枝状ポリマーの近傍又は内部に反応物が存在すること;比較的開放的である構造を有するために内部枠組みへの接近を制限することができる明確に規定される表面を有しない低世代の樹枝状ポリマーの内部枠組みとの非共有結合的接合;並びに樹枝状ポリマーの概して任意の世代の表面基との非共有結合的接合を意味する。局在化には、樹枝状ポリマーの内部での1つ又は複数の反応物の物理的束縛、並びに樹枝状ポリマーの内部又は外部との1つ又は複数の反応物との非共有結合的結合形成が包含される。物理的束縛は、樹枝状ポリマーの内部での1つ又は複数の反応物の比較的過渡的な閉じ込めから樹枝状ポリマーの内部又は外部での1つ又は複数の反応物の比較的永久的な捕捉に及ぶ。樹枝状ポリマーの内部又は外部との1つ又は複数の反応物の非共有結合的結合には、イオン結合、ドナー−アクセプター相互作用(配位結合)、水素結合、ファンデルワールス相互作用及びロンドン分散相互作用が包含される。本発明は、分散相が樹枝状ポリマーに共有結合したナノコンポジットを意図したものではない。共有結合形成は、共有結合形成の相対的不可逆性のために、樹枝状ポリマーの特性を変化させ、樹枝状ポリマーが反応物のうちの1つになり樹枝状ポリマーが最終生成物の一部となる場合がある。他の引力(例えば、物理的束縛、イオン結合、配位結合及び水素結合)は全て、共有結合よりもかなり可逆的である。
この方法の第1ステップの間に、ゲスト原子、イオン及び/又は分子は中間世代の樹枝状巨大分子に拡散して、それらの原子、イオン又は分子は例えば中間世代の樹枝状ポリマーの表面又は内部との物理的束縛又は非共有結合的相互作用により局在化し;及び/又はゲスト原子、イオン及び/又は分子は樹枝状ポリマーの概して任意の世代の表面基に非共有結合的に接合し;又はゲスト原子、イオン及び/又は分子は、低世代のデンドリマーの内部枠組み又は表面基に非共有結合的に接合する。ゲスト原子、イオン及び/又は分子と樹枝状ポリマー分子の内部との非共有結合の例には、イオン結合、水素結合、ドナー−アクセプター、配位結合、ファンデルワールス相互作用及びロンドン分散相互作用が包含される。内部又は中間世代デンドリマーへの拡散の駆動力は、内部にある配位部分又は活性結合部位(例えば、N,NH,O,P等の原子)の極めて高い局所的濃度である。
小さな分子錯化剤とは対照的に、樹枝状ポリマーは新規な化学化合物の形成を阻害せず、それらの内部又はそれらの外部に新規な化合物を保持し、革命的なナノコンポジットをもたらす。例えば、新規な化学的存在物(chemical entity)への反応物の化学変換によって、ナノスコピックゲスト分子、クラスター及びナノ粒子が中間世代の樹枝状ポリマーの樹枝状表面に捕捉され及び/又は低世代の樹枝状ポリマーの内部枠組みとの非共有結合的接合により保持されるか、又は樹枝状ポリマーの概して任意の世代の外部官能基との非共有結合的接合により保持される。
前記方法の第2ステップは、ナノサイズの1つ又は複数の無機反応物の変換を伴う。そのような変換には、2つ以上の局在化した反応物を伴う反応に加えて、化学的不安定性、熱、電磁線等により誘発されるゼロ次(zero order)分解反応のような単一反応物の変換を伴う反応が包含される。
元素又は硫化物、ハロゲン化物、酸化物、水酸化物、フォスフェート、スルフェート、水酸化物等のような化合物への適切に選択された化学的又は物理的変換の後に、これらのナノコンポジットはそれらの反応性を保持することができ、その後の反応によってそれらは他のナノコンポジットに変換しうる。結晶化及びそれらの結晶形態の変化のような物理的変化をナノコンポジットが受けることも実証されている。
低世代の樹枝状ポリマー、例えば世代数0〜3のPAMAMデンドリマーは、典型的には、それらが気相又は液相中に分散された場合に、反応生成物を束縛できないほど開放的である。しかしながら、それらが固相中に分散された場合には、反応生成物を束縛し鋳型として作用することができる。これらの低世代樹枝状ポリマーは、内部枠組み基(interior scaffolding group)、すなわちゲスト原子、イオン若しくは分子との非共有結合的相互作用を活性化することのできる外部若しくは表面基よりも樹枝状ポリマーのコアの近くに位置する官能基と、ゲスト原子、イオン及び/若しくは分子と非共有結合的相互作用を達成することができる外部若しくは表面官能基を含むことができる。もう1つの例として、世代数7以上のPAMAMデンドリマーのような比較的高い世代のデンドリマーは、樹枝状ポリマーの内部への反応物の侵入を可能にするほど十分な透過性を有するものではない。しかしながら、これらの高世代の樹枝状ポリマーは、ゲスト原子、イオン及び/又は分子との非共有結合的相互作用を達成できる外部又は表面官能基を含むことができる。ポリ(アミドアミン)デンドリマーの場合には、世代数4〜6のものは、関心のある種々の反応物が接近可能な内部を有するために、中間世代の特性を概して示す。世代数0〜3のPAMAMデンドリマーは、ゲスト原子、イオン及び/又は分子が内部官能基と非共有結合的に接合するが明確に決まった内部に含まれることはできない低世代内部枠組み特性を示す。世代数7以上のPAMAMデンドリマーは、ゲスト原子、イオン及び/又は分子がそれらの内部と相互作用しないが、それらの表面基に非共有結合的に接合することができる高世代の特性を示す。
本発明の1つの観点によれば、少なくとも1種以上の反応物の各々の1つ以上の分子を中間世代の樹枝状ポリマーの透過性表面を通り抜けさせ、樹枝状ポリマーの内部において反応させる方法が提供される。透過性表面は反応物の通り抜けを可能にする。しかしながら、表面は、反応生成物が通過できるほど十分に透過性ではなく、樹枝状ポリマーの内部に反応生成物が捕捉される。前記方法の第1ステップは、樹枝状ポリマーの内部に少なくとも1つの反応物を局在化させることを伴う。樹枝状ポリマー内での局在化は、反応物よりも大きくて樹枝状ポリマー内に捕捉される生成物を形成するような反応物の反応が可能となるほど十分な時間樹枝状ポリマーの内部に反応物を留める任意の機構によって達成することができる。局在化には、過渡的又は比較的永久的な物理的束縛並びに樹枝状ポリマーの内部との非共有結合的結合形成が包含される。1つ又は複数の反応物と樹枝状ポリマーの間の非共有結合には、イオン結合、水素結合、ドナー−アクセプター相互作用、配位結合、ファンデルワールス相互作用及びロンドン分散力が包含される。1つ又は複数の反応物は、次に、2つ以上の反応物の生成物であるか又は1つの反応物の生成物、例えば分解生成物でありうる反応生成物に変換される。形成される反応生成物は、樹枝状ポリマー分子の内部に比較的永久的に物理的に束縛されるか又は樹枝状ポリマー分子の内部との非共有結合的相互作用により樹枝状ポリマー内に束縛され、ポリマー分子に固定化される。
この方法は、例えば、不溶性化合物を可溶化させることに使用できる。例えば、本発明が意図する種々のユニークなコンポジット組成物の中には、ナノサイズの樹枝状ポリマーが特定の溶剤に可溶である分子容器として作用する一方でナノサイズの樹枝状ポリマー分子容器内に捕捉された反応生成物が溶剤に不溶であるものがある。この態様では、水溶性の元素状金属、例えば水溶性の銅、金、銀、水溶性の鉄及びコバルトのような革命的生成物を生成させることができる。本発明は、水溶性の磁石を意図したものである。他の例には、水溶性のハロゲン化銀及び水溶性の金属硫化物が包含される。
本発明のもう1つの観点によると、1つ又は複数の反応物を低世代樹枝状ポリマーに接触させ、1つ又は複数の反応物を低世代樹枝状ポリマーの内部枠組み基と非共有結合的に相互作用させて低世代樹枝状ポリマーの内部枠組み基に非共有結合的に接合させることによって、少なくとも1種以上の反応物の各々の1つ以上の分子を低世代樹枝状ポリマーに局在化させる方法が提供される。低世代樹枝状ポリマーの開放性によって、反応物が非共有結合的に接合しうる内部官能基への接近が可能となるが、適切に選択された表面基が無い場合には、明確に規定される内部での物理的束縛又は固相中への包接は可能でない。1つ又は複数の反応物と低世代樹枝状ポリマーの内部枠組み基の間の非共有結合的接合又は結合には、イオン結合、ドナー−アクセプター相互作用、配位結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用、ロンドン分散相互作用等が包含される。明確に規定される表面及び内部を有する中間世代樹枝状ポリマー同士間で形成されるナノコンポジットの場合のように、低世代樹枝状ポリマーの内部枠組み基と局在化した1つ又は複数の反応物との間の相互作用により形成される接合体は、2つ以上の反応物の生成物であるか又は単一反応物の生成物、例えば分解生成物であることができる反応生成物に変換される。
本発明のさらなる観点によると、表面官能基を有する樹枝状ポリマーと1つ又は複数の反応物とを接触させ、1つ又は複数の反応物を樹枝状ポリマーの外部表面官能基と非共有結合的に相互作用させて樹枝状ポリマーの外部表面官能基に非共有結合的に接合させることによって、概していかなる世代の樹枝状ポリマーに対しても少なくとも1種以上の反応物の各々の1つ以上の分子を局在させる方法が提供される。1つ又は複数の反応物と樹枝状ポリマーの外部表面官能基の間の非共有結合的接合又は結合には、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合、ロンドン分散相互作用、ドナー−アクセプター結合、配位結合等が包含される。局在化した1つ又は複数の無機反応物は続いて2つ以上の反応物の生成物又は単一反応物の生成物、例えば分解生成物であることができる反応生成物に変換される。
比較的開いた構造を有する低世代樹枝状ポリマーの場合には、明確に規定される内部又は表面を有しない場合でも、内部枠組み官能基との相互作用及び/又は外部表面基との相互作用によって、1つ又は複数の無機反応物が局在化しうる。中間世代の樹枝状ポリマーの場合には、1つ又は複数の反応物を、樹枝状ポリマーの内部に束縛させることによって及び/又は樹枝状ポリマーの外部官能基及び/又は内部官能基との非共有結合的相互作用によって局在化させることができる。
本発明のもう1つの観点は、ポリマーマトリックス材料中にナノサイズの無機化合物を分配することに関する。ポリマーマトリックス材料には、概して、コンポジット材料の連続相を形成することができる任意のポリマーが包含される。ポリマーマトリックス材料に、例えば、
A.マトリックスと樹枝状ポリマーの間の化学結合
これは通常他のモノマーと重合又は共重合したアミノメタクリレート、OH、エステル等(アミノ基は容易に相互作用する)のような重合性基を有する樹枝状ポリマーを必要とする;及び
B.物理的に分散された樹枝状ナノコンポジット
例えばポリマー、ポリマー溶液、モノマー溶液又はモノマーに物理的に分散させ、続いてモノマーを重合させる;
のような種々の方式で樹枝状ナノコンポジットを含めることができる。
分散相は、ゼロ次元、1次元、2次元又は3次元的構造物に組織化された樹枝状ポリマーであって、中間世代樹枝状ポリマーの内部に束縛された上記のような局在化した無機反応生成物、低世代樹枝状ポリマーの内部枠組み官能基に非共有結合的に接合した上記のような局在化した無機反応生成物、概して任意の世代の樹枝状ポリマーの外部官能基に非共有結合的に接合した上記のような局在化した無機反応生成物、低世代樹枝状ポリマーの内部枠組み官能基及び外部表面基の両方に非共有結合的に接合した上記のような局在化した無機反応生成物、又は中間世代樹枝状ポリマーの内部に束縛されると共に中間世代樹枝状ポリマーの外部表面官能基に非共有結合的に接合した上記のような局在化した無機反応生成物を有する樹枝状ポリマーを含むことができる。本発明は、物理的方法により分散された離散的なナノサイズ存在物としてポリマーマトリックス中に無機化合物が分配され、無機物質の大きさ及び大きさの分布を決定及び調節するために使用される樹枝状ポリマーが熱分解により除去されたコンポジット材料も包含する。そのようなコンポジットは、樹枝状ポリマーマトリックスを含む樹枝状ナノコンポジットを分配し、続いて好ましくはマトリックス材料の分解が起こらないように樹枝状ポリマーを分解させるのに十分な時間高温にコンポジットを暴露することにより調製される。
樹枝状ポリマーは、1つ又は複数の反応物を樹枝状ポリマーに局在化させる前と、1つ又は複数の反応物を変換させる前又は変換させた後に、ポリマーマトリックス中に分配させることができる。
これらの有機−無機ナノコンポジットは、これまでになかった驚くべき特性を示す。
鮮明な透過型電子顕微鏡写真(TEM)はそれらの金属含有分のために高いコントラストでナノコンポジットを示している(図3)。
樹枝状ナノコンポジットの流体力学的容量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定した場合にそれらのホストと実質的に同じであった。毛管電気泳動(図3C)及び逆相でのイオン対HPLC(図3B)では、ホストの表面特性及び大きさの変化は示されなかったか又は僅かな変化が示された。
それらの13C−NMRスペクトル(図4A及び4B)には分裂が示されているが、金属原子が局在化していることを示唆する狭い炭素の信号が示されている。1H−NMRスペクトルで観察された線は概して幅が広く、全てのプロトンの信号が金属原子の存在により影響を受けていることを示している(図5)。樹枝状ポリマーのほとんどが紫外線のみを吸収すること(例えば図6参照)から、これらのナノコンポジットは概して無機成分の固有色又はそれらのプラズモンピークの固有色を概して示す(図15)。溶液中の樹枝状ナノコンポジットは、それらの表面特性に依存してクラスター形成する場合がある。樹枝状ナノコンポジット溶液は往々にして散乱光では濁りを帯びた外観を呈し(チンダル効果)、一方、透過光では透明に見える。両方の現象は共に分散した粒子のナノメートルスケールサイズに帰因するものである。
もとの樹枝状ポリマーよりもそれらの密度がかなり増加する結果、樹枝状ナノコンポジットの溶液は往々にして、実際の沈殿物は生じずに促進沈降(accelerated sedimentation)を示す。着色ナノコンポジットの場合には、重力の効果のために目に見える濃度勾配が溶液で観察されるであろう。
ナノコンポジットの溶解性は、ゲスト化合物又は物質自体の溶解性というよりはむしろ樹枝状ホストの溶解性により決まる。従って、これらの樹枝状ナノコンポジットは、それらのホストの溶解性に依存して、水及び/又は極性若しくは無極性有機溶剤に可溶な場合がある。それらの溶液は、無機又は有機溶剤中の真の溶液、サブコロイド溶液若しくはコロイド溶液としてふるまう。これらのナノコンポジットの全溶解度(overall solubility)は、閉じ込められていない形態にある可溶性生成物から予想されるものよりも数桁高い。無機成分の極めて小さな大きさのために、ゲスト原子、イオン及び/又は分子について非常に大きな表面積/重量比がもたらされ、この非常に大きな表面積/重量比はナノコンポジットの高い化学的活性に寄与する。
好ましい態様において、ナノサイズの樹枝状ポリマー分子反応容器は、約10〜約1,000オングストロームの好ましい平均直径範囲を有するが、この範囲より大きくても良い。より好ましい平均直径範囲は約10〜約600オングストロームである。樹枝状ポリマーのいかなるものを使用してもよい。好ましい樹枝状ポリマーには、密集星形ポリマー(dense star polymers)及び超櫛形分枝ポリマー(hyper comb-branched polymers)が包含される。個々の樹枝状ポリマーナノリアクター(dendritic polymer nanoreactors)は、反応物に暴露される前又は暴露された後に、物理的相互作用若しくは非共有結合的相互作用又は共有結合形成を通じて凝集してより大きな多細胞反応容器(multi-celled reaction vessels)を形成することができる。適切な樹枝状ポリマーには、線状、分枝又は架橋非樹枝状ポリマーと、デンドリマー、架橋デンドリマー、共有結合的に連結したデンドリマークラスター等との反応生成物のような樹枝状コポリマーが包含される。
中間世代の樹枝状ポリマー分子反応容器の表面は、反応物に対して比較的透過性であるが、反応生成物に対しては比較的透過性ではない。「透過性」なる用語は、反応物が拡散して時間が経つと樹枝状ポリマー分子から出ることができるコンポジットを包括することをねらったものであるが、反応物が樹枝状ポリマー分子から出るのは当該コンポジットが意図した目的のために使用される前ではない。透過性の変化は、表面基(立体障害)の相対密度の変化に又は表面の特性、例えば相対的親水性(relative hydrophilicity)若しくは疎水性又は電荷密度に帰因する場合がある。
樹枝状ポリマーは、拡散により接近可能であれば可溶性である必要はない。しかしながら、可溶性樹枝状ポリマーの使用によって、通常不溶性である化合物を可溶性で扱いやすいものにすることができる。
適切な樹枝状ポリマーにはPAMAM密集星形ポリマーが包含される。他の好ましい樹枝状ポリマーにはポリプロピルアミン(POPAM)デンドリマ及びポリエステルデンドリマーが包含される。
非常に多くの種類の反応物を本発明のより広い観点において使用することができる。特に好ましいものは、反応して元素状金属を生成することができる反応物である。可溶性樹枝状ポリマーとの組み合わせでそれらを使用することによって、可溶性磁石(soluble magnets)のような生成物、及び溶剤可溶な元素状金属を使用する均一相触媒溶液がもたらされる。
好ましい態様に係る溶剤可溶な生成物は、溶剤に可溶性の樹枝状ポリマーと錯化した、実質的に溶剤に不溶性の金属又はメタロイド(As,Sb,BGe,PoSi,Te)化合物を含む。無機錯体は、第1の反応物と、錯体又は配位化合物をもたらす樹枝状ポリマーの配位結合部位とを接触させることにより調製され、続いてこの錯体を、錯化した化合物と反応する試薬に接触させ、ナノスケールレベルで分散した1つ以上の固定化された化合物を含むコンポジットを形成させる。固定化された化合物は、樹枝状ポリマーの不在下では通常実質的に溶剤に不溶性である。
使用することができる樹枝状ポリマーには、概して、デンドリマー、レギュラーデンドロン(regular dendrons)、制御された超分枝ポリマー(controlled hyperbranched polymers)、デンドリグラフト及びランダム超分枝ポリマー(random hyperbranched polymers)を包含する周知の樹枝状構造物のうちのいずれも包含される。樹枝状ポリマーは、多数の反応性基を有する密に枝分かれした構造を有するポリマーである。樹枝状ポリマーは、繰返し単位の幾つかの層又は世代を含み、繰返し単位は全て1対以上の分枝点を含む。デンドリマー及び超分枝ポリマーを包含する樹枝状ポリマーは、少なくとも2個の反応性基を有するモノマー単位の縮合反応により調製される。使用することができるデンドリマーには、1つの原子又は原子団であることができる共通のコアから発散した複数のデンドロンを含むものが包含される。各デンドロンは、概して、末端表面基、2つ以上の分枝官能基を有する内部分枝点及び隣接する分枝点を共有結合的に連結している2価のコネクターを含んでなる。
デンドロン及びデンドリマーは、集束(convergent)又は発散(divergent)合成法により調製できる。
デンドロン及びデンドリマーの発散合成法は、分子の半径方向に外側に向かって枝が累々と付加する連続する一連の幾何学的に漸進する段階的付加を通じて起こる分子生長プロセスを伴う。各樹枝状巨大分子は、コアセル(core cell)、1層以上の内部セル及び表面セルの外層を含み、セルの各々は1つの分枝点を含む。セルは、化学構造及び分枝官能基の点で同じであっても異なっていても良い。表面の分枝セルは、化学的に反応性の又は不活性の官能基を含むことができる。樹枝状枝のさらなる伸長又は樹枝状分枝表面の修飾に、化学的に活性な表面基を使用できる。樹枝状表面を物理的に修飾すること、例えば親水性末端に対する疎水性末端の比を調節すること及び/又は特定の溶剤に対する樹枝状ポリマーの溶解性を改良することに、化学的に不活性の基を使用できる。
デンドリマー及びデンドロンの集束合成法は、デンドロン又はデンドリマーの表面になるものから始まって焦点又はコアに向かって分子半径方向で進展する生長プロセスを伴う。樹枝状ポリマーは、理想的なものであっても非理想的なもの、すなわち不完全なもの又は欠陥のあるものであってもよい。不完全さ(imperfectiosn)は、通常、不完全な化学反応又は避けられない競合する副反応の結果である。現に、実際の樹枝状ポリマーは概して非理想的なものである、すなわちある量の構造的不完全さを含む。
使用することができる超分枝ポリマーは、デンドロン及びデンドリマーのほぼ完全な正則構造に比して非理想的な不規則な枝分かれを高レベルで含む樹枝状ポリマーの類を代表する。特に、超分枝ポリマーは、全ての繰返し単位が分枝点を含むわけではない比較的多数の不規則な枝分かれ領域を含む。デンドリマー、デンドロン、ランダム超分枝ポリマー、制御された超分枝ポリマー及びデンドリグラフトの調製及び特性評価は周知である。デンドリマー及びデンドロンの例並びにそれらの合成法は、米国特許第4,507,466号、第4,558,120号、第4,568,737号、第4,587,329号、第4,631,337号、第4,694,064号、第4,713,975号、第4,737,550号、第4,871,779号及び第4,857,599号明細書に記載されている。超分枝ポリマーの例及びその調製法は例えば米国特許第5,418,301号明細書に記載されている。
本発明の実施化に有用な樹枝状ポリマー又は巨大分子は比較的高い枝分かれ度により特徴付けられる。この枝分かれ度は分子当たりで数平均をとった枝分かれ基の割合、すなわち末端基と枝分かれ基と線状基の合計数に対する末端基と枝分かれ基の和の比として定義される。理想的なデンドロン及びデンドリマーに対して、枝分かれ度は1である。線状ポリマーに対して、枝分かれ度は0である。超分枝ポリマーは、線状ポリマーの枝分かれ度と理想的なデンドリマーの枝分かれ度の中間の枝分かれ度を有し、少なくとも約0.5以上の枝分かれ度が好ましい。枝分かれ度は次のように表される:
Figure 0004233117
(式中、Nxは構造物中のタイプxの単位の数である。)。末端(タイプt)単位及び枝分かれ(タイプb)単位の両方が、完全に枝分かれした構造に寄与するが、線状(タイプ1)単位は枝分かれ因子(branching factor)を減少させる。したがって、
Figure 0004233117
である。ここで、fbr=0は線状ポリマーの場合を表し、fbr=1は完全に枝分かれした巨大分子の場合を表す。
本発明に適する樹枝状ポリマーには、カスケード分子(cascade molecules)、アルボロール(arborols)、樹枝状グラフト化分子(arborescent grafted molecules)等と通常呼ばれている巨大分子も包含される。適切な樹枝状ポリマーには、橋かけされた樹枝状ポリマー(bridged dendritic polymers)、すなわち表面官能基を通じて又は表面官能基同士を連結する連結分子(linking molecule)を通じて樹枝状巨大分子同士が連結されたもの、及び物理的力により団結した樹枝状ポリマー凝集物も包含される。ポリマーコアから生長した球形樹枝状ポリマー及び棒形樹枝状ポリマーも包含される。
本発明の実施化に使用される樹枝状ポリマーは世代的に単分散又は世代的に多分散のものであることができる。単分散溶液の形態にある樹枝状ポリマーは実質的に全てが同じ世代のものであるため、大きさ及び形状が均一である。多分散溶液の形態にある樹枝状ポリマーはある分布の種々の世代のポリマーを含む。本発明の実施化に使用できる樹枝状ポリマー分子には、内部組成及び外部組成又は官能基が異なるもの同士の混合物が包含される。適切な樹枝状ポリマーの例には、ポリ(エーテル)デンドロン、デンドリマー及び超分枝ポリマー、ポリ(エステル)デンドロン、デンドリマー及び超分枝ポリマー、ポリ(チオエーテル)デンドロン、デンドリマー及び超分枝ポリマー、並びにポリ(アリールアルキレンエーテル)樹枝状ポリマーが包含される。ポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーは、本発明の金属含有錯体の調製に特に有用であることが見いだされた。
本発明の実施化に有用な樹枝状ポリマーには、対称的な枝セル(symmetrical branch cell)(長さが等しいアーム)を有するもの(例えばPAMAMデンドリマー)及び非対称的な枝セル(長さが等しくないアーム)を有するもの(例えばリシン分枝デンドリマー)、分枝デンドリマー、カスケード分子、アルボロール等が包含される。
「樹枝状ポリマー」なる用語は、いわゆる「超櫛形分枝」ポリマーも包含する。これらは、(1)重合中の枝分かれ形成及びグラフト化に対して保護されているか又は無反応性であり反応性末端単位が互いに反応することができないものである第1の組のモノマーの重合を開始させることにより第1の組の線状ポリマー枝分かれを形成するステップ;(2)前記枝分かれ上の反応性末端基と反応することができる反応性部位を複数有するコア分枝又はコアポリマーに前記枝分かれをグラフト化するステップ;(3)各枝分かれの複数のモノマー単位を脱プロトン化又は活性化して反応性部位を生成させるステップ;(4)別に、第2組のモノマーに対して前記ステップ(1)を繰り返すことにより第2の組の線状ポリマー枝分かれを形成するステップ;(5)第2の組の枝分かれの反応性末端基と第1の組の枝分かれ上の反応性部位とを反応させることにより第1の組の枝分かれに第2の組の枝分かれを結合させるステップ;次に、上記ステップ(3)、(4)及び(5)を繰り返して枝分かれの後続の組を付加するステップにより調製される非架橋多分枝ポリマーを包含する。そのような超櫛形分枝ポリマーはヨーロッパ特許出願公開第0473088A2号明細書に開示されている。そのような超櫛形分枝ポリマーを表す式は、
Figure 0004233117
(式中、Cはコア分子であり;各Rは遊離基開始剤、カチオン開始剤、アニオン開始剤、配位重合開始剤及びグループ転移開始剤からなる群から選ばれる開始剤の残基部分であり;A及びBは、少なくとも{(A)−(B)}線状ポリマー鎖の重合中及び{(A)−(B)}コア分枝の先行する{(A)−(B)}分枝へのそのグラフト化の間の分枝又はグラフト化に必要な条件に耐えることのできる重合性モノマー又はコモノマーであり;各Gはグラフト成分であり;記号:
Figure 0004233117
は、Gが(A)単位又は(B)単位に結合できることを表しており;nは、それが記されている世代の櫛形分枝の重合度であり;yはそれが記されている世代の分枝中のB単位の割合であって、0.01〜1の値を有し;上付き記号0、1及びiは櫛形分枝の世代レベルを表し、iは2から始まり当該ポリマーにおける反復する分枝の組の世代数まで続き;少なくともn0及びn’は2以上である)である。
用語を明確にするために、密集星形デンドリマーは反復する末端分枝により構成されるものであり、一方、超櫛形分枝デンドリマーは反復する櫛形分枝により構成されるものであることを注記しておく。密集星形デンドリマーにおいて、後の世代の枝は先の世代の末端部分に結合しているために、枝分かれ度は、先の世代の末端部分の官能価に制限される。先の世代の末端部分の官能価は典型的には2又は3である。対照的に、超櫛形分枝デンドリマーの先の世代のオリゴマー枝に分枝オリゴマーを結合させることによって、世代から世代への分枝度を劇的に増大させることができ、さらに言えば世代から世代への分枝度を変化させることができる。
樹枝状ポリマー、特にデンドリマーは、金属及び/又は金属含有化合物と非共有結合的に結合してそのような金属、金属含有化合物又はメタロイド含有化合物と錯化しそのような金属、金属含有化合物又はメタロイド含有化合物を樹枝状ポリマー内に局在化させることができる配位部分又は結合部位を含むことができる。例えば、PAMAMデンドリマーは、数学的に導かれる樹枝状化法則(dendritic rules)に従って存在する第3級アミン及びアミド基の両方を有する。内部錯化に加えて、デンドリマー表面に向かう拡散抵抗(diffusion resistance)は、デンドリマー内部の半径方向に増大する密度のために、いかなるゲスト分子又は化合物に対しても増加する。この抵抗は、また、世代数の増加に伴って増加し、錯化した分子又は原子をデンドリマー内側に留めておく作用を果たす拡散バリヤーを与える。従って、第4世代以上のデンドリマーのようなより高世代のデンドリマーが、溶液中のデンドリマーのPAMAM群に対して好ましい。
樹枝状ポリマーに接触させて本発明の金属含有錯体を形成することができる金属イオン溶液には、金属又は金属含有化合物が可溶性イオンとして存在する無機塩溶液が包含される。そのような無機塩、溶液を樹枝状ポリマーと混合すると、金属イオン又は金属含有イオンは樹枝状ポリマーに拡散して有効な結合部位と相互作用して樹枝状ポリマーにより又は樹枝状ポリマーの内部に含まれる溶剤により錯化される。樹枝状ポリマーの内部に含まれる溶剤、例えば水は、デンドリマーの外面が溶解する溶剤と異なるものであってもよい。内部構造、表面官能基の数、性質及び密度に依存して、錯化は内部のみで起こるか、又は樹枝状ポリマーの内部と外部の両方で起こる場合がある。樹枝状ポリマー中の共有結合的に結合した配位結合部位の高い局在濃度及び樹枝状ポリマーの表面における拡散バリヤーは、これらのポリマーが化合物を固定化し保持することを可能にする。内部結合部位を有する樹枝状ポリマーを、ナノサイズの有機容器及び/又はナノサイズの反応器として見なすことができる。保持された化合物は樹枝状ポリマーに共有結合的に結合しないために、保持された化合物はそれらの性質及び反応性に従って化学反応することができる。
樹枝状ポリマーに接触させて金属含有錯体を形成することのできる適切な無機塩溶液の例には、酢酸カドミウム、酢酸銅、酢酸亜鉛及び酢酸鉛のような金属酢酸塩;硫酸鉄のような金属硫酸塩;並びに銀トリフルオロメタンスルホネートのような金属トリフルオロメタンスルホネートが包含される。他の例は、後述する実験に関する欄に記載する。
金属−樹枝状ポリマー錯体を形成するために可溶性金属含有イオン溶液を樹枝状ポリマーに接触させる。樹枝状ポリマーを可溶性金属含有イオン溶液と組み合わせる前に、樹枝状ポリマーを溶剤に可溶化させるか又は溶剤で膨潤させることが好ましい。その後、金属−樹枝状ポリマー錯体を、錯化した金属化合物と反応する試薬に接触させて樹枝状ポリマーの不在下では実質的に不溶性の別の金属化合物を形成させる。例えば、金属酢酸塩と樹枝状ポリマーを組み合わせることにより形成される種々の錯体のうちのいずれかを硫化水素と反応させて、水及び有機溶剤のようなほとんどの液体に不溶性である金属硫化物に対して非常に可溶性である金属硫化物/樹枝状ポリマーコンポジットを形成させることができる。他の例として、銀トリフルオロメタンスルホネート−樹枝状ポリマー錯体[CF3SO3Ag−D]を硫化水素ガスと反応させて、水及び/又は有機溶剤に可溶性の硫化銀/樹枝状ポリマーコンポジットを生成させることができる。硫酸鉄(FeSO4)/樹枝状ポリマー錯体を臭化水素ガスと反応させて、水及び/又は種々の有機溶剤に不溶性の硫化鉄/樹枝状ポリマー錯体を形成させることができる。可溶性樹枝状ポリマーに内包される種々の金属硫化物、金属ハロゲン化物、金属水酸化物、金属シュウ酸塩、金属リン酸塩及び元素状金属は後述する実施例に記載する。
樹枝状拡散バリヤーと組み合わされた金属含有化合物の錯化によって、樹枝状ポリマーの世代及び使用される樹枝状ポリマーの個々の構造及び種類に依存して、約10〜約200オングストロームの範囲内の大きさを有する単一/個々の有機容器/反応器が生成する。特に溶剤、温度、デンドリマーのタイプ及び世代、ナノリアクターのキャパシティーのようなパラメーターは、配位部分又は結合部位の性質、数、質及び位置に依存するであろう。不溶性化合物を固定化すると同時に、金属又は物質自体の可溶性というよりはむしろ樹枝状ポリマーホストの可溶性に従って可溶化させることができる。この固定化の間に、錯化及び樹枝状拡散バリヤーの複合効果のために、原子、イオン及び分子はポリマー中に捕捉される。例えば、金属の硫化物、ハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩等のような通常は不溶性とみなされている化合物は、安定なサブコロイド有機溶剤溶液と同様に真の水溶液としてふるまうことができる。
これらの溶液の金属化合物濃度は、水又は有機溶剤中に存在する金属化合物の包接されていない可溶性化合物から予測されるものよりも一桁以上高くなることができる。その結果、金属を担持した樹枝状容器はこれまでにない驚くべき特性を示す。デンドリマーに包接された化合物は、それらを分散させた溶剤から沈殿することなく化学反応にあずかることができる。
さらに、デンドリマー表面を閉じずに透過性を保ちつつナノコンポジットの形成を細かく調整できるように、樹枝状表面を化学的に修飾することができる。例えば、ヒドロキシル、カルボキシル又はアミン末端樹枝状ポリマーを1,2−エポキシデカンのようなエポキシ末端アルカンと反応させて疎水性表面を有する樹枝状ポリマーを形成させることができる。従って、アルキル及び芳香族溶剤を包含する無極牲有機溶剤への当該錯体の溶解度が向上するように所望の通りに金属含有化合物/樹枝状ポリマー錯体の樹枝状ポリマーの表面を修飾することができる。代わりに、水及び/又はアルコールのような極性有機溶剤への当該錯体の溶解度を向上させるために、樹枝状ポリマーの表面にヒドロキシル、カルボキシル又はアミン基のような官能基を提供することができる。樹枝状ポリマーの表面に重合可能な基を結合させるため又は樹枝状ポリマーを架橋させるために2官能性反応物を使用することが可能である。
実際的用途:
この方法は、それらの全体的不溶性(表I参照)又は扱いにくさのためにこれまでは可能でなかった用途への多数の無機物質及び化合物(例えば、硫化物、ハロゲン化物、スルフェート及び他の化学物質)の使用可能性を拡張する。本発明は、明確に規定される分子サイズ枠組みとナノリアクターとしての正確に知られた構造を利用することによって、以前は得ることができなかった革命的な新規化学物質の合成も可能にするとともに、コンポジット中の樹枝状ポリマーに付加する成分の原子レベルの分散のための化学的に反応性のある表面を有する容器又は鋳型としてナノリアクターを利用することを可能にする。例えば、本発明者は、ヒステリシスを示さない、すなわち磁場を繰り返し加えてもその磁性が変化しない極めて小さな磁石を製造できることを発見した。
これらの樹枝状ナノコンポジットをさらにクラスター、ゲル、網状構造物及び他の有用な巨大分子構造物に変換することができるでろう。このようにして得られる樹枝状ポリマーに包接されたナノコンポジットは、有用な化学的性質、触媒的性質、磁性、光学的性質、導電性、光触媒的性質及び電気的活性を有するであろう。これらの「ナノ包接された(nanoencapsulated)」又は「ナノテンプレートされた(nanotemplated)」化合物は、それらのホストから沈殿することなく選択的化学反応にあずかることができる。樹枝状ポリマーナノコンポジットの外面のその後の化学的変換によって、可溶性ナノコンポジットを不溶性のものにして有毒な金属又は金属含有化合物を溶剤から選択的に除去するための有効な手法を与える。樹枝状ポリマーコンポジットを含有する溶液は新規な光学フィルターを提供することができる。樹枝状分子の内部に固定化された種々の金属を明確に規定される任意の比率で有する樹枝状マーカー(dendritic markers)による化学コーディング(chemical coding)を使用して、爆薬のような種々の物質を識別することができる。
樹枝状ナノコンポジットには選択的抽出及び特定の生体ターゲットへの選択的ドラッグデリバリーを含む多くの用途があることが予想される。
半導体及び磁気共鳴造影剤として有用な金属硫化物の例並びに光化学反応物として有用な光及び電磁線に敏感な銀塩の例を参照することにより本発明をさらに詳細に説明する。
実験
化合物の記載を簡略化するために、中括弧を使用してナノコンポジットの構造を示し、無機成分及び場合により有機成分を中括弧内に記載した。例えば、{Cu(OH)2}及び{CuOH−G4.T}のような記号は、それぞれ、水酸化銅(II)を含むナノコンポジットと、CuOH及びPAMAM世代4のトリス修飾(G4.T)デンドリマーから形成されたコンポジットを表す。二重下線は巨視的沈殿物の形成
Figure 0004233117
を表し、[Cu(NH34]OHのような大括弧は錯体化合物を表す。
以下の実験を行って、現存する例の可能性を制限することなく又は他の可能な化学変換の範囲を限定することなく、我々の着想を実証した:
第I例群:銅含有ナノコンポジットの調製
第II例群:金属硫化物水溶液の形成
第III例群:AgOH,AgBr,AgCl,銀及び金ナノコンポジットの調製
第IV例群:臭化銀メタノール溶液の調製
第V例群:硫化銅トルエン溶液の調製
第VI例群:Astramol及びPerstorp樹枝状ホスト中での硫化物ナノコンポジット形成の比較
第VII例群:ゼロ原子価金属の水溶液を使用する磁性のある樹枝状ナノコンポジットの調製
第VIII例群:多種多様な水溶性樹枝状ナノコンポジットの調製
第IX例群:多種多様な不溶性樹枝状ナノコンポジット及びフィルムの調製
以下の実施例で使用した試薬
AgCF3SO3,Bi(CH3COO)3,Cd(CH3COO)2・2H2O,Cu(CH3COO)2・H2O,CaCl2,CoCl2,Pb(CH3COO)2・3H2O,FeSO4,FeCl3,Zn(CH3COO)2,HAuCl4,Mn(CH3COO)2・4H2O及びシュウ酸の10mM溶液
2Sガス;濃NH4OH及び氷酢酸;CaCl2,NaOH,NaCl,NaI及びKBr、アスコルビン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム塩の100mM溶液
(ポリアミドアミン)PAMAM:
1.0mlの
・64個のNH2表面基及び124個の内部リガンド(tert−窒素及びNH−CO基)を含む世代4(EDAコア)PAMAM(G4.0)、表II参照;
・192個の第1級脂肪族ヒドロキシル基を表面基として含むとともに124個の内部リガンド(tert−窒素及びNH−CO基)を含む世代4(EDAコア)トリス修飾PAMAMデンドリマー(G4.T);
・128個のtert−ブチル基を表面基として含むとともに256+128=384個の内部リガンド(tert−窒素及びNH−CO基)を含む世代4(EDAコア)完全世代ピバロイル修飾PAMAMデンドリマー(G5.P);
・128個のOH基を表面基として含むとともに256個の内部リガンド(tert−窒素及びNH−CO基)を含む世代4(EDAコア)完全世代エタノールアミン修飾PAMAMデンドリマー(G5.OH);及び
・表IIに記載されている通りの第1級脂肪族ヒドロキシドを表面基として含むとともに種々の数の内部リガンド(tert−窒素及びNH−CO基)を含む世代3〜7(EDAコア)トリス修飾PAMAMデンドリマー;
の1.0mM溶液(1.0×10-6モル)溶液;並びに
・1,2−エポキシデカンにより修飾された世代4(NH3コア)PAMAM(G4.EO10;疎水性表面)の1.43mM溶液
Figure 0004233117
Figure 0004233117
ASTRAMOL TM (ポリプロピレナミン)デンドリマー
世代4ポリプロピレナミンデンドリマー(AM−4,DAB(PA)64,FW=7,168;rG=13.9Å、64個のNH2基を表面に含む)の1mMメタノール溶液。
Figure 0004233117
PERSTORP TM (超分枝ポリエステル)
世代5の超分枝ポリエステル(PSG5.FWtheor=14,754、128個のOH基を表面に含む);
樹枝状巨大分子に対する金属イオンの比率は、所定のデンドリマーに属する4つの第3級窒素及び/又はNHCOアミド基又は2つの表面NH2アミノ基が金属イオンに配位するであろうとの一般仮定に基づくものである。当然のことながら、実際の配位数は多くのパラメーターの関数である。特に断らないかぎり室温で全ての実験を行った。
実施例
我々は、不溶性金属硫化物(添付の溶解度のデータを参照)及びハロゲン化銀の例に基づいて我々の着想を実証した。種々のタイプのナノコンポジットに係る多種多様な例も含まれる。
本発明の幾つかの独特の態様を例示するために、銅−デンドリマー内部錯体及び銅含有樹枝状ナノコンポジットの形成についてまず説明する。典型的な代表例として、192個の第1級脂肪族ヒドロキシド基を表面末端基として含む世代4(EDAコア)トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン修飾PAMAMデンドリマー(G4.T)を使用した。
第I例群 銅含有ナノコンポジットの調製
この例の集合において、[Cu(CH3COO)2−PAMAM G4.T]錯体を使用して銅ナノコンポジットのその後の形成を実証した。
例Cu#1[Cu(CH 3 COO) 2 −PAMAM G4.T]の調製
125ml容量Pyrex吸収容器内で、0.362g(2.0×10-5モル)のPAMAMG4.Tデンドリマーを40mlの脱イオン水に溶解させた。この溶液に、20mlの水に溶解させた0.123g(6.19×10-4モル)のCu(CH3COO)2・XH2Oを加えた。Cu(CH3COO)2溶液の淡青色は、銅−デンドリマー錯体の形成を示す濃青色に即座に変化した。低速の乾燥窒素流で反応器を10分間パージし、完全に混合させた。この間に、デンドリマーの内部銅錯体が形成された。内部錯体を、濃青色化合物として固体の形態で単離することができた。
銅イオン−デンドリマー錯体の単離:
内部錯体の溶液を250ml丸底フラスコに移し入れ、ロータリエバポレーターにより40℃で溶剤を蒸発さると、壁面に濃青色固体層[Cu(CH3COO)2G4.T]が得られた。無機銅塩とは対照的に、この物質はメタノールに容易に溶解して濃青色を呈す。例えば、溶剤として5mlのメタノールを使用し、生成物をガラスバイアルに移し入れ、パスツールピペットにより溶液の表面に穏やかな乾燥窒素流を当てることにより溶剤を蒸発させた。減圧下室温での生成物のさらなる乾燥によって0.479g(98%)の内部錯体が青色固体として生成した。逆相イオン対HPLCクロマトグラム(RP−IP HPLC、図5参照)によるとコンポジットのピークに加えて銅のピークも同定できるが、有機溶剤に溶解性であったとしても、熱重量分析(TGA)熱分析曲線と示差走査熱量(DSC)曲線は出発物質のものと異なる。
銅とこのデンドリマーの内部にある一連のリガンドとの間の非常に強い相互作用のため、デンドリマー容器は銅イオンにとって非常に好ましいものであることから、透析によっては、銅と銅含有デンドリマーのほんの一部の分離しか達成できない。表Vは、半透過性10K膜を使用する一連の網羅的透析実験の結果を示すものであり、これらの透析実験において、3×2日間を要して、種々の量のCu2+を含むG4.0及びG4.T PAMAMデンドリマー溶液3mlを3×300mlの脱イオン水に対して透析させた。
Figure 0004233117
この結果は、透析用の水が100倍過剰に存在するにもかかわらず、銅イオンの濃度がデンドリマーの外部よりもその内部で少なくとも数桁高いことを示すものである。半透過膜の内側の銅の濃度は[Cu]0と無関係に実質的に同一であり、これらの最終濃度は使用したデンドリマーの組成及び構造に依存した。しかしながら、逆相イオン対クロマトグラフィーにより示されるように、この錯体は銅イオンとデンドリマーについて別々のピークを示す。このことは内部錯体の一時的性質を示すものである。
上記[Cu(CH3COO)2−PAMAM G4.T]内部錯体を使用し、その後の化学変換により種々の他の銅含有コンポジットを調製し、驚くべき特性を有する前記新規ナノコンポジットの合成を実証した。
例Cu#2{Cu(OH) 2 −PAMAM G4.T}ナノコンポジットの調製
G4.Tの1.0mM溶液1.0ml(1.0×10-6モル)とCu(CH3COO)2の10mM水溶液3.1ml(3.1×10-5モル)を混合することにより[Cu(CH3COO)2−PAMAM G4.T]無機−デンドリマー内部錯体を調製した。得られた溶液において、濃度は、[Cu]=7.56×10-6M及び[G4.T]=2.44×10-7Mであり、リガンド/金属イオン比は4/1であり、金属イオン/デンドリマーモル比は31/1であった。
[Cu(CH 3 COO) 2 −G4.T]
この溶液に、大過剰(4ml)の0.1M NaOH溶液を加えた。生成物溶液は、いかなる沈殿物も生じずにその暗青色を保ち続けた。
Figure 0004233117
この実験とは対照的に、包接させずにCu(CH3COO)2を使用した場合には、鱗片状の緑色を帯びた青色沈殿物
Figure 0004233117
が観察された。この沈殿物は続いて褐色に変色し、次に、水酸化銅(II)の脱水の結果として黒色に変色した。
Figure 0004233117
例Cu#3{CuO−G4.T}ナノコンポジットの調製
G4.Tの1.0mM溶液1.0ml(1.0×10-6モル)とCu(CH3COO)2の10mM水溶液3.1ml(3.1×10-5モル)を混合することにより[Cu(CH3COO)2−PAMAM G4.T]無機−デンドリマー内部錯体を調製した。得られた溶液において、濃度は、[Cu]=7.56×10-6M及び[G4.T]=2.44×10-7Mであり、リガンド/金属イオン比は4/1であり、金属イオン/デンドリマーモル比は31/1であった。
[Cu(CH 3 COO) 2 −G4.T]
この溶液に、1mlの0.1M NaOH溶液を加えた。生成物溶液{Cu(OH)2−G4.T}は、いかなる沈殿物も生じずにその暗青色を保ち続けた。この溶液に1mlの0.1Mアスコルビン酸(C686)溶液を加えた。この溶液は緑色に変色し、次に黄色に変色した、このことはデンドリマーに包接されたCuOH及びCu2Oの形成をそれぞれ示すものである。しかしながら、沈殿は起こらなかった。
Figure 0004233117
この溶液の散乱光は酸化銅(I)の黄色を示す一方で、透過光に補色が観測されることから、白色光源のすぐ前の位置では溶液は透明で淡青色のままで存在した。デンドリマー内部に分散された酸化銅(I)粒子の小さな大きさのために、溶液は光学フィルターとして作用する。
例Cu#4{CuS−PAMAM G4.T}コンポジットの調製
例Cu#1に記載の手法を用いて[Cu(CH3COO)2−PAMAM G4.T]無機−デンドリマー内部錯体を調製した。銅イオン−デンドリマー錯体を単離する代わりに、錯体溶液に硫化水素の低速流をバブリングした。溶液は暗褐色に変色したが、巨視的沈殿(macroscopic precipitation)は観察されなかった。
Figure 0004233117
0.2MのZn(CH3COO)2溶液を充填したガス洗浄塔で白色沈殿物
Figure 0004233117
の形成が観察されるまでH2Sの添加を続けた。0.2MのZn(CH3COO)2溶液を汚染物除去溶液として使用した。次に、H2S流を止め、即座に反応器を窒素で30分間パージして過剰のH2Sを除去した。溶液を250ml丸底フラスコに移し入れ、ロータリーエバポレーターにより40℃で溶剤を蒸発させると、壁面に暗褐色固体層{CuS−G4.T}が得られた。この物質は水に容易に溶解し、暗褐色を呈する。生成物を壁面からかきとり、黒色固体をガラスバイアルに入れた。減圧下室温での生成物のさらなる乾燥によって、0.49g(97%)のナノコンポジットを黒色固体として得た。
例Cu#5{Cu 2 S−PAMAM G4.T}コンポジット
例Cu#1に記載の手法を用いて[Cu(CH3COO)2−PAMAM G4.T]無機−デンドリマー内部錯体を調製した。銅イオン−デンドリマー錯体を単離する代わりに、溶液に硫化水素の低速流をバブリングした。溶液は暗褐色に変色したが、巨視的沈殿は観察されなかった。
Figure 0004233117
0.2MのZn(CH3COO)2溶液を充填したガス洗浄塔で白色沈殿物
Figure 0004233117
の形成が観察されるまでH2Sの添加を続けた。0.2MのZn(CH3COO)2溶液を汚染物除去溶液として使用した。次に、H2S流を止め、反応器を一晩密閉した。16時間の反応時間後に反応混合物は過剰の硫化水素と{CuS−G4.T}ナノコンポジットとの酸化還元反応を示唆する暗緑色に変化していた。
Figure 0004233117
この2番目の反応は、
Figure 0004233117
がその極度に低い溶解性のために水から即座に沈殿することから、ナノコンポジットの形成なしには起こらない(表1参照)。
反応フラスコを窒素でパージして残留H2Sを除去し、次に0.45ミクロンテフロン(Teflon)シリンジフィルターにより硫黄を除去した。溶液を250ml丸底フラスコに移し入れ、ロータリーエバポレーターにより40℃で溶剤を蒸発させると、壁面に{Cu2S−G4.T}の暗緑色固体層が得られた。この物質は水に容易に溶解し、暗緑色溶液を形成する。生成物を壁面からかきとり、黒色固体をガラスバイアルに入れた。減圧下室温での生成物のさらなる乾燥によって、0.49g(97%)のナノコンポジットを黒色固体として得た。
例Cu#6{Cu(0)−G5.P}ナノコンポジットの調製
1.0mMのG5.Pメタノール溶液1.0ml(1.0×10-6モル)と10mMのCu(CH3COO)2水溶液3.1ml(3.1×10-5モル)を混合することにより[Cu(CH3COO)2−PAMAM G5.P]無機−デンドリマー内部錯体を調製した。得られた溶液において、濃度は、[Cu]=7.56×10-6M及び[G5.P]=2.44×10-7Mであり、リガンド/金属イオン比は4/1であり、金属イオン/デンドリマーモル比は31/1であった。
[Cu(CH 3 COO) 2 −G5.P]
この溶液に1mlの0.1Mアスコルビン酸を加えた。この溶液は緑色に変色し、次に短い誘導期間の後、溶液は金属銅の固有色を示した。このことは、ナノ包接されたCu2+がまず最初にCu+に還元され、次にCu(0)に還元される全還元を示すものである。
Figure 0004233117
散乱光中では、この溶液は金属銅の色を示す一方で、デンドリマー内部に分散された銅粒子の非常に小さな大きさのために、透過光中では透明のままであった(チンダル効果)。
第II例群:金属硫化物水溶液の形成
古典的な定性的無機分析法に属する周知の実験法を用いることによって、多数の例を使用して本発明の原理を実証した。長年の研究の間に、これらの観察結果は分析手段になってきた。よって、多くの反応が、特定の金属イオンに特徴的なものとして規定された。これらの反応は、ある条件で著しい変色又は不溶性沈殿物の形成のような容易に観測できるという特徴を持つ。古典的な定性的無機分析法に属する最初の2つの部類において、硫化物イオンとの反応が利用される。しかしながら、樹枝状ポリマーの存在下では、これらの反応は驚くべき結果を与える。
手法Aの概説
1)内部錯体の形成
14.8mlねじ蓋式ガラスバイアルに、世代4(EDAコア)トリス修飾PAMAMデンドリマー(G4.T)の1.0mM水溶液1.0ml(1.0×10-6モル)を加えた(必要となった場合に、内部錯体の形成前における不溶性金属水酸化物のその後の沈殿を防止するために氷酢酸によりpHをpH=3からpH=6の間に調節した)。この溶液に、10mM金属イオン水溶液3.1ml(3.1×10-5モル)を加えた。2つの溶液を混合するため及び空気を除去するために、この液体に乾燥窒素をバブリングした(空気の除去によって、引き続くステップで起こり得る望ましくない酸化を防止することができる)。典型的には、1時間の「静止期間(rest period)」を設けて金属イオンの錯化の平衡状態に達するようにした。この反応混合物において、[M]=7.56×10-6M及び[G4.T]=2.44×10-7Mであり、リガンド/金属イオン比は4/1及び金属イオン/デンドリマーモル比は31/1であった。
2)化学変換
次のステップにおいて、、硫化水素ガスを過剰に反応混合物に導入して金属イオンと反応させた。変色によって金属硫化物の形成が示された。H2Sを30秒間バブリングし、次にバイアルに蓋をし、パラフィンでシールし、室温で一晩放置した。反応が完了した後、試料を30分間音波処理し、次に窒素でパージして過剰のH2Sを除去した。細孔径0.45ミクロンのテフロンシリンジフィルターに通して試料を濾過することにより巨視的沈殿物を除去した。試料を窒素中室温で溶液で貯蔵した。一般的観察結果として、デンドリマーと金属イオン溶液の混合中に変色が起こるであろう。デンドリマーを含まない金属イオン溶液は、H2Sの添加によって急速に沈殿する不溶性硫化物をもたらす一方で、樹枝状ホストの存在下では着色してはいるが透明な溶液が形成される。変色は金属硫化物の形成を示すものであるが、適切に選ばれた樹枝状ポリマーの存在下では沈殿は観測されない。
手法Bの概説
世代4(EDAコア)アミン末端(G4.0)PAMAMデンドリマーの1.0mM水溶液1.0ml(1.0×10-6モル)を加えたことを除き、手法Aと同様(表II参照)。氷酢酸によりpHをpH=3からpH=6の間に調節し、金属水酸化物のその後の沈殿を防止した)。この溶液に、10mMの金属イオン水溶液4.7ml(4.7×105モル)を加えた。この反応混合物において、[M]=8.25×10-6M及び[G4.T]=2.44×10-7Mであり、リガンド/金属イオン比は4/1及び金属イオン/デンドリマーモル比は47/1であった。(M−G4.0)。
デンドリマーが、錯体を形成しうるリガンドをそれらの表面基としても有する場合には、H2S反応によって、巨視的沈殿を起こさずに着色した濁った溶液が得られる。濁りによって、ナノコンポジットの形態で固定化されなかった金属イオンが、硫化物に変換された場合に凝集することが示された。これらの粒子を濾過により溶液から除去すると、硫化銅ナノコンポジットの透明溶液が得られた。
例IIa世代3〜世代7のトリス修飾PAMAMを使用する{Cu 2 S}コンポジットの調製
手法Aを用いた。計算量の10mMのCu(CH3COO)2水溶液を種々のデンドリマー溶液に加え、銅/リガンド比が4に等しくなるように保った。1時間の「静止期間」を設けた。
4種の水溶液の調製
(a)5mlの10mMのCu(CH3COO)2溶液
(b)5mlの10mMのCu(CH3COO)2溶液と2mlの濃水酸化アンモニウムを合わせたもの(配位はNH3により与えられる)、すなわち[Cu(NH342+が形成される;
(c)3.1mlの10mMのCu(CH3COO)2溶液と1mlの1mMのG4.T(金属/デンドリマー比=31/1[Cu(CH3COO)2−G4.T];
(d)4.7mlの10mMのCu(CH3COO)2溶液と1mlの1mMのG4.0(金属/デンドリマー比=47/1){Cu2S−G4.0}。
反応混合物への硫化水素の導入によって、溶液はCuSの形成を示す無色から褐色に変化した。デンドリマーを含まないCu2+水溶液は不溶性黒色
Figure 0004233117
を生成し、この不溶性黒色
Figure 0004233117
は急速に沈殿した。16時間の反応時間後、反応混合物は、過剰の硫化水素による酸化還元反応を示す暗緑色に変化した。{Cu2S−G4.T}及び{Cu2S−G4.0}溶液は濃緑色であったが透明のまま存在した。試料を室温で貯蔵し、試料が数週間安定であることが示された。
例IIbナノ包接による可溶性CdSの形成
手法Aを用いるとともに10mMのCd(CH3COO)2水溶液3.1ml(3.1×10-5モル)を用いた。氷酢酸により溶液のpHをpH=3からpH=6の間に調節して水酸化物の形成を妨げた。2時間の「静止期間」を設けた。
4種の水溶液の調製
(a)5mlの10mMのCd(CH3COO)2溶液
(b)5mlの10mMのCd(CH3COO)2溶液と2mlの濃水酸化アンモニウムを合わせたもの(NH3配位)[Cd(NH3)]2+
(c)3.1mlの10mMのCd(CH3COO)2溶液と1mlの1mMのG4.T(金属/デンドリマー比=31/1[Cd(CH3COO)2−G4.T];
(d)4.7mlの10mMのCd(CH3COO)2溶液と1mlの1mMのG4.0(金属/デンドリマー比=47/1)[Cd(CH3COO)2−G4.0]。
反応混合物への硫化水素の導入によって、溶液はCdSの形成を示す無色から黄色に変化した。デンドリマーを含まないCd2+水溶液は不溶性黄色
Figure 0004233117
を生成し、この不溶性黄色
Figure 0004233117
は急速に沈殿した。{CdS−G4.T}及び{CdS−G4.0}溶液は淡黄色であったが透明のまま存在した(図8)。試料を室温で貯蔵し、試料が数週間安定であることが示された。
この溶液1滴をスライドガラス上で蒸発させると、黄色透明の均質フィルムが生じた。このフィルムは、水又はメタノールに再溶解しうるものであった。
例IIcナノ包接による可溶性PbSの形成
手法Aを用いるとともに10mMのPb(CH3COO)2水溶液3.1ml(3.1×10-5モル)を用いた。氷酢酸により溶液のpHをpH=3からpH=6の間に調節して水酸化物の形成を妨げた。2時間の「静止期間」を設けた。
4種の水溶液の調製
(a)5mlの10mMのPb(CH3COO)2溶液
(b)5mlの10mMのPb(CH3COO)2溶液と2mlの濃水酸化アンモニウムを合わせたもの(NH3配位)[Pb(NH3)]2+
(c)3.1mlの10mMのPb(CH3COO)2溶液と1mlの1mMのG4.T(金属/デンドリマー比=31/1[Pb(CH3COO)2−G4.T];
(d)4.7mlの10mMのPb(CH3COO)2溶液と1mlの1mMのG4.0(金属/デンドリマー比=47/1)[Pb(CH3COO)2−G4.0]。
反応混合物への硫化水素の導入によって、溶液はPbSの形成を示す無色から褐色を帯びた黒色に変化した。デンドリマーを含まないPb2+水溶液は不溶性黒色
Figure 0004233117
を生成し、この不溶性黒色
Figure 0004233117
は急速に沈殿した。{PbS−G4.T}及び{PbS−G4.0}溶液は褐色を帯びた黒色であったが透明のまま存在した。試料を室温で貯蔵し、試料が数週間安定であることが示された。
例IIdナノ包接による可溶性ZnSの形成
手法Aを用いるとともに10mMのZn(CH3COO)2水溶液3.1ml(3.1×10-5モル)を用いた。氷酢酸により溶液のpHをpH=6に調節して水酸化物の形成を妨げた。2時間の「静止期間」を設けた。
4種の水溶液の調製
(a)5mlのZn(CH3COO)2
(b)5mlのZn(CH3COO)2溶液と2mlの濃水酸化アンモニウムを合わせたもの(NH3配位)[Zn(NH322+
(c)3.1mlの10mMのZn(CH3COO)2溶液と1mlの1mMのG4.T(金属/デンドリマー比=31/1[Zn(CH3COO)2−G4.T];
(d)4.7mlの10mMのZn(CH3COO)2溶液と1mlの1mMのG4.0(金属/デンドリマー比=47/1)[Zn(CH3COO)2−G4.0]。
次のステップにおいて、反応混合物に過剰の硫化水素を導入した。Zn(CH3COO)2溶液と[Zn(NH322+溶液において、ZnSの急速な形成を示す白色沈殿物が観察された。{Zn(CH3COO)2−G4.T}及び{Zn(CH3COO)2−G4.0}は白濁したが、透明のままであった。30秒間のバブリング後、一晩貯蔵するために管に蓋をし、パラフィンでシールした。試料を30秒間音波処理し、次いで窒素でパージしてH2Sを除去した。試料を室温で貯蔵し、試料が数週間安定であることが示された。スライドガラス上で溶液を蒸発させると、無色透明の均質フィルムが生じた。このフィルムを、メタノール及びDMSOに再溶解させることができた。
例IIeナノ包接による可溶性CoSの形成
手法Aを用いるとともに10mMのCo(CH3COO)2水溶液3.1ml(3.1×10-5モル)を用いた。氷酢酸により溶液のpHをpH=6に調節して水酸化物の形成を妨げた。金属イオン錯化が平衡状態に達するように2時間の「静止期間」を設けた。
4種の水溶液の調製
(a)5mlのCo(CH3COO)2溶液
(b)5mlのCo(CH3COO)2溶液と2mlの濃水酸化アンモニウムを合わせたもの(NH3配位)[Co(CH3COO)2−NH3];
(c)3.1mlの10mMのCo(CH3COO)2溶液と1mlの1mMのG4.T(金属/デンドリマー比=31/1[Co(CH3COO)2−G4.T];
(d)4.7mlの10mMのCo(CH3COO)2溶液と1mlの1mMのG4.0(金属/デンドリマー比=47/1)[Co(CH3COO)2−G4.0]。
次のステップにおいて、反応混合物に過剰の硫化水素を導入した。溶液の色は、CoSの形成を示す無色から黒色に変化した。
デンドリマーを含まないCo2+溶液は、少量ではあるが濃黒色の
Figure 0004233117
を生じ、この
Figure 0004233117
は急速に沈殿した。[CoS−NH3]は、黒色沈殿物と(NH42Sの形成による淡褐色液体層を与えた。{CoS−G4.T}及び{CoS−G4.0}溶液は濃黒色であったが、透明のまま存在した。試料を室温で貯蔵し、それらの試料が5日間以上安定であることが示された(図9)。
例IIfナノ包接による可溶性FeSの形成
60mlのねじ蓋式試験管内で、測定した量のFeSO4水溶液を計算量のデンドリマー水溶液と混合した。得られた溶液のpHを氷酢酸によりpH=3からpH=6の間に調節して拡散前の水酸化物の形成を妨げた。この液体に乾燥窒素ガスをバブリングして空気を除去し、引き続くステップでの酸化による硫黄の形成を妨げた。金属イオンの錯化が平衡状態に達するように2時間の「静止期間」を設けた。
第1の試みでの4種の溶液の調製
(a)5mlのFeSO4溶液
(b)5mlのFeSO4溶液と2mlの濃水酸化アンモニウムを合わせたもの(NH3配位)[FeSO4−NH3];
(c)3.1mlの10mMのFeSO4溶液と1mlの1mMのG4.T(金属/デンドリマー比=31/1[FeSO4−G4.T];
(d)4.7mlの10mMのFeSO4溶液と1mlの1mMのG4.0(金属/デンドリマー比=47/1)[FeSO4−G4.0]。
次のステップにおいて、反応混合物に過剰の硫化水素を導入した。溶液の色は、FeSの形成を示す非常に淡い緑色から黒色に変化した。FeSO4溶液からほんの少量の黒色固形物が沈殿したが、{FeS−G4.T}及び{FeS−G4.0}は濃黒色であった。30秒間のバブリング後、試験管に蓋をし、一晩パラフィンでシールした。試料を30分間音波処理し、窒素でパージして過剰のH2Sを除去した。デンドリマーを含まないFe2+溶液は少量の濃黒色のFeSを生じ、このFeSは急速に沈殿した。[FeSO4−NH3]は、(NH42Sの形成に帰因する多量の黒色沈殿物を与えた。{FeSO4−G4.T}及び{FeSO4−C4.0}溶液は濃黒色であったが、数時間以内に分離した。このことは包接が起こらず、反応がデンドリマーの外部でおこったことを示す。次のステップで、G5.T PAMAMを使用せずに同様な試料を調製した。その実験では、G4.Tの場合と同様に包接がうまくいかなかった。しかしながら、「静止期間」を12時間に延長すると、内部への拡散が起こり、H2Sの添加によってナノコンポジットの形成がもたらされた。透明黒色溶液を室温で貯蔵し、その溶液が安定であることが示された。
例IIg{Ag 2 S−G4.T}ナノコンポジットの調製
0.159g(6.19×10-4モル)の銀トリフルオロメタンスルホン酸を使用したことを除き、例Cu#5に記載した方法により{Ag2S−G4.T}を調製した。ロータリーエバポレーターにより40℃で溶剤を蒸発させることによって、フラスコの壁面に暗褐色の硬質層{Ag2S−G4.T}が得られた。この物質は水に容易に溶解して暗褐色を呈する。生成物を壁面からかきとり、黒色固体をガラスバイアルに入れた。減圧下室温での生成物のさらなる乾燥によって、0.53g(101%)のナノコンポジットを黒色固体として得た。原子吸光(AA)分析によりAg含有量は14.28%(理論量12.8%)であると確認された。
例IIh{Cu 2 S−PEI/PEOX G=1.0デンドリグラフト}ナノコンポジットの調製
世代=1.0のPEI/PEOXデンドリグラフト(PEI=100,PEOX=100)の10mM水溶液を同じ理論比(リガンド/金属=4/1)でホストとして使用したことを除き、手法Aを繰り返した。
第1ステップで濃青色の銅錯体が形成されたことが実験的に観察された。その後のH2Sの添加によって、溶液は濃褐色に変化し、次にその色は{CuS−PEI/PEOX}の形成を示す濃緑色に変化し、続いて{Cu2S−PEI/PEOX}ナノコンポジットの形成が起こった({CuS}ナノコンポジットは過剰の還元性H2SガスによりCu2Sに還元されうる)。この溶液は24時間安定であった。
例IIi{Cu 2 S−PEI/PEOX G=1.0デンドリグラフト}ナノコンポジットを調製する試み
世代=1.0のPEI/PEOXデンドリグラフト(PEI=20,PEOX=20)の10mM水溶液を同じ理論比(リガンド/金属=4/1)でホストとして使用したことを除き、手法Aを繰り返した。
第1ステップで濃青色の窒素−銅錯体が形成されたことが実験的に観察された。その後のH2Sの添加によって、溶液は濃褐色に変化し、次に{CuS−PEI/PEOX}の形成を示す濃緑色に変化し、続いて{Cu2S−PEI/PEOX}ナノコンポジットの形成が起こった。{Cu2S−PEI/PEOX}の溶液は不安定で分解し、2時間以内に巨視的沈殿が確認された。
例IIj{Cu 2 S−PEI}ナノコンポジットを調製する試み
線状ポリエチレンイミン(PEI,n=100)の10mM水溶液を同じ理論比(ポリマーリガンド/金属=4/1)でホストとして使用したことを除き、手法Aを繰り返した。
第1ステップで濃青色の窒素−銅錯体が形成されたことが実験的に観察され、次に溶液は、H2S添加後に捕捉されなかった
Figure 0004233117
の沈殿を示す濁りのある褐色に変化した(錯化されなかった
Figure 0004233117
は固体状態のCu2Sに変換されえない)。
第III例群 AgOH,AgBr,AgCl,銀及び金ナノコンポジットの調製
例IIIa:ハロゲン化銀及び水酸化銀を含む水溶性ナノコンポジットの調製
一般手法の説明
CF3SO3Agの10mM溶液及びNaCl,KBr及びNaOHの0.1当量溶液を適切な稀釈により調製した。G4.T及びG4.0の1mM水溶液をナノリアクターとして使用した。
3種の溶液を調製
(a)金属イオン溶液(Ag+);
(b)3.1mlの10mMのAg+溶液と1mlの1mMのG4.Tを合わせたもの(Ag+/デンドリマー比=31/1)[Ag+−G4.T];
(c)4.7mlの10mMのAg+溶液と1mlの1mMのG4.0を合わせたもの(Ag+/デンドリマー比=47/1)[Ag+−G4.0]。
15mlねじ蓋式試験管内で、測定した量のCF3SO3Ag水溶液と計算量のデンドリマー水溶液とを混合した。Ag+イオンの錯化が平衡状態に達するように「静止期間」をとった。
次のステップにおいて、0.5mlの選択したアニオン溶液を試験管に加えて銀イオンと反応させた。AgOH,AgCl及び/又はAgBrの形成を示す変色が起こった。試験管に蓋をし、パラフィンでシールし、暗所に貯蔵した。一般的実験結果として、CF3SO3Ag溶液は、デンドリマー不在下で反応した場合に瞬間的に不溶性沈殿物を形成し、その沈殿物は急速に沈殿する。対照的に、デンドリマーの存在下では、反応によって、サブコロイド粒子の形成を示す透明又は若干濁りのある溶液が得られる(AgCl及びAgBrの場合)。0.45ミクロンテフロンフィルターを通じて{Ag(0)−G4.T}及び{Ag(0)−G4.0}も濾過し、デンドリマー表面での金属イオンの錯化から生じる巨視的大きさの沈殿物を除去した。
試料を暗所内室温で貯蔵した。巨視的沈殿が開始する前の数時間、溶液が安定であることが分かった。過剰の水酸化アンモニウム(任意の銀塩と錯体を形成)は、デンドリマーの不在下では沈殿物の瞬間的な溶解をもたらした。しかしながら、包接された銀化合物の存在下では、色/濁りの消失に数秒間を要した。この観察結果は、錯化プロセスを減速するデンドリマーの表面を通じての立体障害作用を受ける拡散により説明することができる。
例IIIb{Ag(0)ナノコンポジットの調製
CF3SO3Agの10mM水溶液及びメタノール溶液並びに0.1MのL−アスコルビン酸(AA)水溶液を適切な稀釈により調製した。樹枝状ポリマーに関して、PAMAM G4.T,G5.P及びG4.5の1mM水性溶液は、水溶液又はメタノール溶液で使用した。
3種の溶液を調製
(a)金属イオン溶液(Ag+);
(b)3.1mlの10mMのAg+溶液と1mlの1mMのデンドリマー溶液とを合わせたもの(Ag+/デンドリマー比=31/1)[M−G4.T];
(c)3mlの10mMのAg+溶液と1mlの10mMのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩[Ag+−EDTA−Na2]。
15mlねじ蓋式試験管内で、測定した量のCF3SO3Ag水溶液と計算量のデンドリマー水溶液とを混合した。Ag+イオンの錯化が平衡状態に達するように30分間の「静止期間」をとった。
次のステップにおいて、0.5mlのアスコルビン酸(AA)溶液を試験管に加えて銀イオンと反応させた。(a)及び(b)の場合において、褐色沈殿物が観察された。この色はAg(0)金属の形成を示すもので、Ag(0)金属は急速に沈殿した。デンドリマーが存在する場合には、黄色を帯びた褐色の濁りのある透明溶液が形成され、この溶液は24時間以上安定であった。
例IIIc{Au(0)ナノコンポジットの調製
HAuCl4の水溶液(11.8mM)及びL−アスコルビン酸(AA)の0.1M水溶液を調製した。樹枝状ポリマーに関しては、PAMAM G2.T,G4.T及びG7.Tの1mM水溶液を試した。
15mlねじ蓋式試験管内での3種の溶液の調製
(a)金属イオン溶液(HAuCl4);
(b)2mlの11.8mMのHAuCl4溶液と1mlの1mMのデンドリマー溶液を合わせたもの(Au+/デンドリマー比=23.6/1);
(c)2mlの11.8mMのHAuCl4溶液と1mlの1mMのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩とを合わせたもの。
窒素とクロロ金アニオンの間での内部塩形成が平衡状態に達するように「静止期間」をとった。
次のステップにおいて、0.5mlのアスコルビン酸(AA)溶液をバイアルに加えて金アニオンを金属金に還元した。(a)及び(c)の場合において、青色/黒色の変色が観察された。この変色はAg(0)金属の形成を示すもので、Au(0)金属は褐色固体の形態で急速に沈殿した。
デンドリマーが存在する場合に、紫色の透明溶液が形成され、この溶液は24時間以上安定であった。
第IV例群 臭化銀のメタノール溶液の調製
CF3SO3Agの0.10Mメタノール溶液及び飽和KBrメタノール溶液(約0.1当量)を適切な稀釈によって調製した。G=4.0のPAMAMの27.63%メタノール溶液を錯化に使用した。
15mlねじ蓋式試験管内で、測定した量のCF3SO3Ag溶液と計算量のデンドリマー溶液とを混合した。Ag+イオンの錯化が平衡状態に達するように30分間の「静止期間」をとった。
(a)金属イオン溶液(Ag+);
(b)2.5mlの0.10MのAg+溶液と0.080mlの27.63%G4.0とを合わせたもの(Ag+/デンドリマー比=25/1)。
次のステップにおいて、2mlのKBrメタノール溶液(Ag+に対して100%過剰)をピペットによりバイアルに加えた。変色によってAgBrの形成が示された。管に蓋をし、パラフィンでシールして暗所に貯蔵した。
一般的実験結果として、デンドリマーの不在下では、CF3SO3Ag溶液から瞬間的に黄色を帯びた白色固体が沈殿した。この固形物は、AgBrのAgへの光分解の結果として、やがて黒色になった。デンドリマーの存在下では、安定なサブコロイド粒子の形成を示唆する透明で濁りのある白色夜液が形成された。
{AgBr−G4.0}試料は濾過の必要がなく、暗所内室温で長時間存在した。しかしながら、日光のもとでは、溶液は淡褐色に変化した。UV−可視スペクトルは、もとの300nmのピークに加えて405nmに第2のピークの存在を示した(図11及び12)。
故意に過剰の水酸化アンモニウム(任意の銀塩と錯体を形成する)を加えると、デンドリマーの不在下で沈殿物の瞬間的な溶解が起こった。しかしながら、ナノ包接された銀化合物の場合には、デンドリマーの表面を通じての拡散が反応を減速させるために、色の消失に数秒間かかった。
第V例群 金属硫化物トルエン溶液の調製
20mlねじ蓋式試験管内で、5mlの10mMのCu2+−酢酸塩水溶液を1.43mMのG=4.0エポキシデカン修飾(アンモニアコア)PAMAMデンドリマートルエン溶液5mlと混合した。このデンドリマーは疎水性表面を有するものであって、その内部においてのみ錯化を行うことができる。得られたヘテロ相溶液を数分間振盪した。デンドリマー内部での銅イオンの錯化に帰因する暗青色の有機相が観察された。このことによって、銅イオンの有機相への移動が確認された。
暗青色トルエン層を分離し、次のステップにおいて過剰の硫化水素ガスを反応混合物に銅イオンと反応させた。{CuS}の形成のために暗青色は褐色を帯びた黄色に変わった。この有機反応混合物は密閉バイアル内で数週間沈殿物を生じずに安定かつ透明のまま存在した(図13)。
同様な実験においてAg+,Cd2+,Fe2+,Ni2+及びMn2+イオンの水溶液を使用しても、トルエンに可溶化された硫化物がもたらされた。
第VI例群 Astramol及びPerstorp樹枝状ホスト中での硫化物ナノコンポジットの形成の比較
この例群において、手法Aを用いて種々のゲストをASTRAMOL G=4(DAB(PA)64)及びPERSTORPポリエステル(世代5)ホスト内で反応させた。48時間の反応時間後の観察結果を表VI(次頁)にまとめた。
Figure 0004233117
第VII例群 ゼロ原子価金属の水溶液を使用する磁性のある樹枝状ナノコンポジットの調製
以下の例において、FeCl3及びCoCl2の希水溶液を種々のホスト中に拡散させて、デンドリマー内でゼロ原子価金属に還元させた。樹枝状ポリマーの不在下では、通常黒色のコロイド溶液が形成され、黒色固形物として急速に沈殿した。しかしながら、デンドリマーの存在下では、同じ手法によると、黒色又は暗褐色ではあるが透明な溶液が得られた。これらの溶液はナノ包接されたゼロ原子価金属を含み、磁性を示した。これらのナノコンポジット溶液の試料を永久磁石の近くに置き、磁場の影響を観察した。磁石はナノコンポジットを素早く引きつけ、均質黒色金属溶液は不均質になり、磁場による濃度勾配を示した。磁気処理がない場合には、ナノコンポジット溶液は1日間安定かつ均質のまま存在した。
例VIIa
G6.T PAMAMの0.5mM水溶液0.5ml(0.25×10-6モル)の及び10mMのFeCl3水溶液2.5ml(2.5×10-5モル)を混合することにより[FeCl3−G6.T]無機−デンドリマー内部錯体を調製した。次のステップにおいて、1〜2滴の氷酢酸を用いてpHを調節し、Fe(OH)3の沈殿を防止した(得られた濃黄色溶液において、濃度は、[Fe]=8.33×10-5M及び[G6.T]=8.33×10-5M)。バイアルを密閉し、Fe3+イオンがデンドリマーの内部に拡散するのに要する時間を与えるために、反応混合物を室温で12時間静置した。バイアルを振盪しながら、この溶液に固体水素化ホウ素ナトリウムを少しずつ加えた。溶液はNaBH4の部分的分解のために発泡し、黒色/暗灰色に変色した。最終的に、溶液は金属鉄に特徴的な金属光沢のある灰色を呈した。これらの金属鉄粒子は、それらのナノスコピックサイズのために非常に反応性が高かったが、磁場が存在しない場合には、溶液は窒素下で1日間安定であった。
試料を磁場中に置いた場合には、鉄ナノ粒子は永久磁化を獲得してナノコンポジットは磁石の方に移動し、続いて黒色ヘテロ層の形成が起きた。次に、バイアルを磁場から離し、数秒間激しく震盪した。加えられた機械的応力の結果、暗灰色溶液が再び形成された。しかしながら、鉄ナノ粒子の残留磁化は、実質的に均一である寿命は短くなり、これらの試料は鉄のやすり屑に似た結晶質凝集物を生じた。
例VIIb
CoCl2を使用したことを除き、例VIIaと同じ手順を用いた。実験結果は同様であったが、{Co(0)−G6.T}の溶液のほうが鉄の溶液よりも安定であり、ナノコンポジットはより低い程度の残留磁化を示した。PAMAM G5.OHのようなより低世代のデンドリマーを使用すると、内部錯体の形成がかなり速くなった(15分間以内)。
例VIIc
Ni(II)−酢酸塩溶液を使用したことを除き、例VIIaと同じ手順を用いた。
実験結果は例VIIbにおけるのと同様であったが、{Ni(0)−G6.T}は低レベルの磁化を示した。
第VIII例群 その他の例
以下の例において、Ca2+,Gd2+,Al3+,UO2 2+及びCo2+の希水溶液をPAMAMホストに拡散させ、続いてデンドリマー中で種々の化合物に化学的に変換させた。樹枝状ポリマーの不在下では、通常巨視的沈殿物が形成され、急速に沈殿した。しかしながら、デンドリマーの存在下では、同じ手法によると、透明なナノコンポジット溶液が得られた。
VIII/1樹枝状ポリマーを使用するナノコンポジットの形態にあるCa 2+ −シュウ酸塩の可溶化
CaCl2、シュウ酸及びEDTA−Na2の0.1M水溶液を調製し、この試験において使用した。樹枝状ポリマーに関し、PAMAM G4.T,ASTRAMOL G=4及びPERSTORP G=5の水又はメタノール中1mM水性溶液を使用した。
比較のために4種の溶液を調製した
(a)1mlの金属イオン溶液(Ca2+);
(b)1mM樹枝状ポリマー溶液1mlに0.1MのCa2+溶液0.3mlを加えた(Ca2+/デンドリマー比=30/1);
(c)0.1MのCaCl2水溶液1.0mlに0.1Mのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA−Na2)1.0mlを加えた;
(d)1mMの樹枝状ポリマー溶液1mlに0.1Mのシュウ酸溶液0.3mlを加えた(シュウ酸/デンドリマー比=30/1)。
30分間の「静止期間」後に、15mlねじ蓋式試験管内で、測定した量の第2の反応物溶液を上記溶液と混合した。第1の反応物が平衡状態に達するようにこの時間をとった。
前記次工程において、バイアルに当量の第2の反応物を加えて反応物#1と反応させた(シュウ酸溶液を(a),(b),(c)に使用し、Ca2+溶液を(d)に使用した。)。
(a)の場合に、白色結晶が1分間以内に沈殿した。(c)の場合に、白色結晶が数分間以内に沈殿した。機械的応力(震盪)を加えても懸濁状態に戻らなかった。
樹枝状ポリマーが存在する場合には、濁りがあるが透明な溶液が形成され、この溶液は5時間以上安定であった。コンポジットの沈殿の順序は、PAMAM<ASTRAMOL<PERSTORPであった。激しく震盪することによって、乳状の外観を取り戻した。
例VIII/2 樹枝状ポリマーを使用するGd2+−シュウ酸塩ナノコンポジットの調製
1.0mMのG4.T PAMAM水溶液1.0ml(1×10-5モル)及び10mMのGd(CH3COO)2水溶液3.1ml(3.1×10-4モル)を混合することにより[Gd(CH3COO)2−G4.T]内部錯体を調製した。バイアルを密閉し、デンドリマー内部へのGd2+イオンの拡散に要する時間を与えるために反応混合物を室温で0.5時間静置した。この溶液に10mMシュウ酸溶液2mlを加えた。樹枝状ポリマーが存在する場合には、溶液は無色かつ透明のままで存在したが、樹枝状ポリマーが存在しない場合には巨視的な結晶質白色沈殿物が観察された。
例VIII/3 樹枝状ポリマーを使用するAl(OH)3ナノコンポジットの調製
1.0mMのG4.T PAMAM水溶液1.0ml(1×10-5モル)及び10mMのAl2(SO43水溶液1.5ml(1.5×10-4モル)を混合することにより[Al2(SO43−G4.T]内部錯体を調製した。バイアルを密閉し、デンドリマー内部へのAl3+イオンの拡散に要する時間を与えるために反応混合物を室温で0.5時間静置した。この溶液に10mMのNaOH溶液1.0mlを加えた。樹枝状ポリマーが存在する場合には、溶液は無色かつ透明のままで存在したが、樹枝状ポリマーが存在しない場合には、巨視的な薄片状の白色(Al(OH)3)沈殿物が観察された。
例VIII/5 ポリマーを使用するリン酸ウラニルナノコンポジットの調製
1.0mMのG4.T PAMAM水溶液1.0ml(1×10-5モル)及び10mMのUO2(CH3COO)2水溶液3.0ml(3.0×10-4モル)を混合することにより[リン酸ウラニル−G4.T]内部錯体を調製した。バイアルを密閉し、デンドリマー内部へのウラニルイオンの拡散に要する時間を与えるために反応混合物を室温で1時間静置した。この溶液に10mMのNa3PO4溶液3.0mlを加えた。樹枝状ポリマーが存在する場合には、溶液は黄色に変化したが透明のまま存在した。ポリマーが存在しない場合には、巨視的な薄片状の黄色リン酸ウラニル沈殿物が観察された。
例VIII/6 樹枝状ポリマーを使用する水酸化コバルト(II)ナノコンポジットの調製
1.0mMのG4.T PAMAM水溶液1.0ml(1×10-5モル)及び10mMのCoCl2水溶液3.1ml(3.1×10-4モル)を混合することにより[CoCl2−G4.T]内部錯体を調製した。バイアルを密閉し、デンドリマー内部へのCo2+イオンの拡散に要する時間を与えるために反応混合物を室温で0.5時間静置した。この溶液に50マイクロリットルの35%ヒドラジン溶液を加えた。樹枝状ポリマーが存在する場合には、溶液は黄色に変化したが透明のまま存在した。樹枝状ポリマーが存在しない場合には、巨視的な薄片状の緑色の水酸化コバルト(II)が即座に沈殿した。
例IX/1 デンドリマーの存在下での金ナノ粒子の形成
A)脂肪族OH表面基を有するPAMAMデンドリマーの使用
HAuCl4水溶液(10.4mM)及び1.0mMのPAMAM G4.T水溶液を調製した。3mlの蒸留水に、このG4.T溶液50μlを加え、次に50μlのHAuCl4と混合した。この溶液は、数分間以内に、コロイド金ナノ粒子の形成に起因する鮮やかな赤色を発現した。若干異なる調製方法同士のUV−可視スペクトルは530〜550nmにピークを示した(図14)。このピークはこれらの粒子の大きさが約50Åであることを示唆するものである(M. Moller et al., Chem. Eur. J. 1966, 2(12, 1552))。3%ヒドラジン溶液10μlを、G4.Tデンドリマーの内部に析出した他の方法では自然分解するAu(OH)3を元素状の金に還元することによって色の発現を促進させることができる。
B)アミノ表面基を有するPAMAMデンドリマーの使用
HAuCl4の水溶液(10.4mM)及びPAMAM G4.0の1.0mM水溶液を調製した。
2.0mlに稀釈されたHAuCl4原液100μl(5.02×10-7モル)に250μlのG5.0溶液(2.17×10-6m)0.25mlを続いて3%ヒドラジン溶液0.25mlを室温で加えた。TEM顕微鏡写真は、これらの条件では、テトラクロロ金酸塩の分解が巨大分子の表面で起こることを示している。この手法によって、個々のデンドリマーが元素状の金により被覆されているとともに連結されている(図16)。
混合の順序を変える場合には、テトラクロロ金酸塩の速い還元が起こってクラスター化されていない粒子が形成される前に、ヒドラジン溶液をデンドリマー溶液に加えた。それらの直径は、デンドリマー分枝のものと同じであるようであった(図17)。元素状臭素による赤色金コロイド溶液の処理によって、平均直径が100nmであるマルチクラスターの形成が起きた。この例は、化学物質の添加順序又は化学物質自体を変えることによって金粒子の大きさをどのようにして制御するかを示す優れた例である(図18)。
例IX/2 CuS及びCu2Sナノコンポジット形成の世代依存性(高表面密度を有する世代の枠組み特性の例示)
この一連のTEM実験において、アミノ表面基を有するEDAコアPAMAMデンドリマー(Gn.0)を利用して、種々の世代を使用した場合のCuS及びCu2Sナノコンポジットの調製におけるパターン変化を例示する。この変化が生じるのは表面基間距離が徐々に短くなるためであり、またその結果、透過性が低下する。銅−ヘキサアクア錯体の大きさが一定であるために、Gが7未満では銅はデンドリマーの内部に侵入することができ、硫化物イオンが加えられるとその内部で析出する。このパターンは、金属の高い電子吸収性のために、きれいなTEM顕微鏡写真上で黒色の点又は暗いスポットから形成された影(クラスター等)をもたらす。
このパターンは、Gが7以上のPAMAMが使用された場合に、暗い領域に取り囲まれた六方最密充填に類似する配置形態にある白色スポットの規則的配列に変化する。これは、これらの場合では、銅−ヘキサアクア錯体が表面を貫通できないと、硫化物イオンとの反応によって表面上で不溶性硫化物となるからである。硫化銅は次に幾つかのデンドリマー分子を相互に連結し、好ましくは自己集成(self assemble)して鎖となるベリー状構造物(berry-like structures)を形成する。
一般手法として、アミノ表面基を有するEDAコアPAMAMデンドリマーを稀釈溶液(1〜2mg/ml)に溶解させ、計算量の酢酸銅溶液を加えた(銅の濃度はデンドリマー中の窒素の濃度と同一であった。)。溶液に窒素をバブリングすることにより溶液を混合した。ある時間(30分〜2時間)の後、H2Sガスを溶液に過剰に導入した。N2により溶液を再びフラッシュし、TEMにより分析した。この手法によって、可溶性CuSナノコンポジットの暗褐色溶液が得られ、このCuSナノコンポジットは暗緑色({Cu2S})にゆっくりと変化した(図19〜21)。
例IX/3 テレフタルジカルボキサルデヒド(TPTDCA)によるPAMAM G4.0の架橋:
2官能性モノマーは樹枝状ポリマーを架橋させるのに特に有用である。例には、メタクロイルクロリド、アクロイルクロリド、メタクロイル無水物、アクロイル無水物、ジエポキシド、グリシジルメタクリレート、1,6−ジイソシアナト−ヘキサン、エチレングリコールジメタクリレート、1,8−ジエポキシオクタン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エピクロロヒドリン、テレフタルジカルボキサルデヒド等がある。
1.715gのTPTDCA(128×10-4m)を室温のメタノール65mlに溶解させた。この溶液に、PAMAM G4.0(1.421g,1.0×10-4m)のMeOH溶液7.79gを室温で滴下添加した。15分間で、白色乳状溶液が形成された。この溶液を冷蔵庫に入れて−5℃に保った。この溶液はその温度で安定であった。透析中又は空気にさらした時に白色ゲルが形成された(最初のステップで可溶性シッフ塩基(Schiff-base)が形成された。)。このゲルは徐々にメタノールを失って、剛いゴム状物質である架橋デンドリマーに乾燥することができた。この架橋は、金属イオンの不在下及び存在下の両方で行うことができる。
TPTDCA架橋G4.0デンドリマーの硫化銅ナノコンポジットへの変換
架橋した固体ゲル粒子を10mM酢酸銅(II)溶液に一晩入れた。黄色を帯びた乾燥ゲルは、暗緑色に変化した。この変色は、ゲルの樹枝状ドメインに存在する窒素リガンドへの銅イオンの結合を示すものである。この暴露によって、Cu2+はCuSになった。Cu2+は固体相中で拡散せず、また銅イオンはリガンドにのみ結合するために、導入されたCuSの分布は固体物質中のデンドリマーの分布と必ず同一になる。従って、G4.0 PAMAMデンドリマーによりCuSの分布が発生し、決定され、制御される。
例IX/4 金属イオン含有デンドリマーの金属−デンドリマーナノコンポジットへの架橋
EDAコアG5.0 PAMAMの1mlメタノール溶液(25.05%,250mg,8.67×10-6モル)に、0.1MのCoCl2メタノール溶液0.86ml(20.64mg,8.67×10-5モル)を加えた。5分後に、74.4mg(1.162×10-3モル)TFTDCAを10%メタノール溶液で加え、続いて100mgのNaBH4を加えた。室温でのTFTDCAによる架橋(シッフ塩基の形成)は10〜15秒間を必要としたが、NaBH4の添加はデンドリマー同士の間に安定な−NH−CH2−Ph−CH2−NH−結合を与えただけでなく、配位したCo塩を磁性のあるCo4B化合物に還元した。生成物の最終的な外観は黒色ゲルであったが、窒素下で乾燥させることができて黒色固体になった。
例IX/5 シリケートマトリックス中での金属−デンドリマーナノコンポジットの調製
0.270gのG4.Tデンドリマー及び0.045gの酢酸銅(II)を2.0mlの水に溶解させて暗青色の[(CuAc215−G4.T]内部錯体を得た。この溶液に、5mlのテトラエチルオルトシリケート(Aldrich)及び4mlのエタノールを混合し、その混合物をペトリ皿に入れた。2日後に溶液は無色上部相と固体暗青色下部相に分離していた。上部相をデカントし、下部相を室温で乾燥させると0.45gの硬質濃青色固体、すなわち[(CuAc215−G4.T]内部錯体を含むシリケートマトリックスが得られた。この修飾されたシリケート(0.16g)を180℃でさらに2日間乾燥させると、PAMAMの分解が起こり(分解温度110〜130℃)、シリケートマトリックス中に硬質暗褐色酸化銅ナノコンポジットが生じた。0.17gの同様な修飾されたシリケートマトリックスSiO4{(CuAc215−G4.T}を密閉バイアル内でH2Sにより処理すると、暗褐色固体の形態にあるSiO4{(CuS)15−G4.T}ナノコンポジット0.18gが得られた。
注記:表面官能基がリガンドとして利用される場合であっても表面官能基はさらなる変換に利用可能である。その高い安定性のために、金属又はメタロイドに対して能動的に結合形成するようなリガンドとも共有結合を形成することができる。例えば、[(CuAc231−G4.0]と1,2−エポキシヘキサンの反応を参照されたい。
例IX/6 銅(II)内部錯体[(CuAc231−G4.0]の表面修飾
56.8mgのEDAコアG4.0 PAMAM(4.0×10-6モル)のメタノール溶液1mlに37.5mg(2.56×10-4モル)の酢酸銅(II)を加えた。全ての無機化合物が溶解したときに1mlの1,2−エポキシヘキサン(当量:30.85μl)を加え、64時間反応させた。溶液の色は灰色を帯びた青色に変わった。ロータリーエバポレーターで溶剤を除去することによってフィルムの形態の青色固体0.141gが得られた。この固体は塩化メチレン、クロロホルム、トルエン及び水に不溶性であったが、メタノールに可溶性であった。この中間体生成物は、n−アルカン鎖に取り囲まれた球状デンドリマーであって、その内部に錯体銅イオンを含むもの[(CuAc231−G4.NHCHCH(OH)C410]であった。この物質0.070gを2.5mlのメタノールに溶解させ、10mlの30%ヒドラジン溶液を加えた。還元剤の添加により即座に還元され、淡褐色溶液は5分間で赤色に変化した。図15に示されているUVスペクトル上の分散ピークの出現及びその位置から、転化された樹枝状共有結合ミセル(共有結合したヘキシル鎖を有するPAMAM G4.0分子)の大きさに対応する50Åの大きさのCu(0)粒子が示唆される。
例IX/7 PAMAM−メタクリレート樹脂(G2(OH)−MMA)の合成及びそのナノコンポジットフィルムへの修飾
エタノールアミン表面を有するEDAコアPAMAM G=2(G2(OH),Mw=4352)の36.3%メタノール溶液13.8gからロータリーエバポレーターにより減圧下3日間溶剤を蒸発させた。G2(OH)を50mlのDMFに溶解させ、滴下漏斗、N2ライン及び機械的攪拌機を備えた500ml3つ口丸底フラスコに移し入れた。0℃に冷却後、6.0mlのトリエチルアミン(43ミリモル)を加え、3.5mlのメチルメタクロイルクロリド(90%、34.8ミリモル)を5mlのDMFで稀釈したものを滴下添加した。混合物を一晩攪拌し、次に200mlの水で稀釈し、CH2Cl2で抽出した。水による最初の稀釈の後に、黄色沈澱物が相間に浮遊しており、抽出前にこれを濾過すると架橋したPAMAMであることが確認された。乾燥によって3.49gの黄色ポリマーが得られ、一方、塩化メチレンによる抽出では粘稠液体の形態の単量体アクリレート化PAMAMデンドリマー0.69gが得られ、これを冷凍庫に貯蔵した。
この黄色ポリマーの一部を、酢酸銅(II)の飽和メタノール溶液に浸漬した。5分間以内に、樹脂は非常に黒みがかった青色の物質に変化した。このことはCuイオンのPAMAMマトリックスへの拡散及び強い錯化を示すものである。H2Sガス中での修飾されたマトリックスの貯蔵によって黒色CuSナノコンポジットが得られた。
例IX/8 Perstorpポリエステル−メタクリレート樹脂(PS−G4)−MMA)の合成及びそのCuS含有ナノコンポジットマトリックス又はフィルムへの修飾(用いた手法は、M. Johannson. A. HultによるJ. of Coatings Technology 67, No. 849, p.36, 1995年10月に記載されている合成法に変更を加えたものである)
5.01g(6.84×10-4モル)の世代4のPerstorpポリエステルを100ml丸底フラスコに入れ、ヒートガンにより融解させた。得られた融解物を25mlのメタノールに溶解させ、次に溶剤からストリッピングし、乾燥させた。9.75mlのトリエチルアミン及びポリエステルを35のTHFに溶解させ、氷浴状で0℃に冷却した。6.0mlのメチルメタクロイルクロリドを20mlのTHFで稀釈し、上記温度を保ちながら滴下添加した。温度を一晩上昇させ、溶剤をロータリーエバポレーターで蒸発させた。残渣を50mlの塩化メチレンに溶解させ、水で、次にNa2CO3で、そして再び水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで一晩乾燥させた。結果として得られた物質は、化学量論滴に置換可能なOH基上に65%のメタクリル酸エステルを含んでいた(分子当たり36〜38個のMMA)。それは、希CH2Cl2溶液中に貯蔵した場合には安定であった。溶剤を除去することによって、即座に重合が起こり、蜂蜜状の液体は急速にゲルになった。そのゲルは塩化メチレンに部分的に再溶解したために、依然として可溶性の単量体の形態にあるものを既に架橋していた物質から分離した。既に架橋していた物質を濾過して空気中で乾燥させた。
そのポリマーは3.56gの淡褐色を帯びた固体を与えた。この固体の色は、酢酸銅(II)の飽和メタノール溶液に浸漬した場合に灰色を帯びた青色(マトリックス内Cu錯体)に変化した。このCu錯体含有マトリックスを、その修飾されたマトリックスをH2Sで処理することにより暗褐色のCuS含有ナノコンポジットに変換させることができた。
可溶性の単量体の形態にあるものの塩化メチレン溶液は、Ni2+,Cu2+,Fe3+及びCo2+イオンの0.1Mメタノール溶液と完全に混和性であった。これらの溶液から、反応性Ni2+,Cu2+,Fe3+及びCo2+イオンを含むフィルムをスライドガラス上にキャストすることができる。このフィルムをさらに反応させてナノコンポジットにすることもできる。
例IX/9 メタクロイルクロリドによるG4.0 PAMAMデンドリマーの架橋及びそのCuS含有ナノコンポジットへの修飾
5.06gのEDAコア世代4アミノ表面PAMAM(G4.0,3.56×10-4モル)を45mlの無水DMF及び25mlのピリジンに溶解させた。この溶液を0℃に冷却し、3.0mlのメチルメタクロイルクロリド(10mlのDMFで稀釈されたもの)を5分間で加えた。さらに30分後に、透明な橙色ゲルが主反応生成物としてフラスコの壁面に形成された。この生成物はMeOHに可溶ではなかったが、膨潤して軟質ゲルを形成した。このポリマーの一部を0.1M酢酸銅(II)水溶液に入れた。ポリマーはすぐに暗青色に変化した。このことはCu2+イオンのPAMAM分子との錯化を示すものである。H2Sにより乾燥した青色樹脂を処理することによって、CuSナノコンポジットの形成のために、急速に暗褐色に変色した。
請求の範囲により規定される本発明の真意又は範囲から逸脱することなくここに記載したような本発明の好ましい態様への種々の改良をなせることが当業者により明らかになるであろう。

Claims (12)

  1. 少なくとも1つの金属、金属含有化合物又はメタロイド含有化合物である第1反応物を樹枝状ポリマーに接触させて前記樹枝状ポリマーに前記第1反応物を錯化させることにより、前記樹枝状ポリマーに前記第1反応物が局在化した前記樹枝状ポリマーと前記第1反応物との錯体を形成する工程;並びに
    前記樹枝状ポリマーと錯化した前記第1反応物と反応することのできる第2反応物を前記錯体に接触させ、前記第1反応物を第2反応物と反応させることにより、前記第1反応物と前記第2反応物とを反応生成物に変換する工程であって、前記反応生成物の大きさ及び大きさの分布が樹枝状ポリマーにより決定及び制御される離散的に存在するものとして前記反応生成物がナノスケールレベルでコンポジット中に分散しており、樹枝状ポリマーに束縛されたか、樹枝状ポリマーに非共有結合的に接合したか又は樹枝状ポリマーに束縛され且つ樹枝状ポリマーに非共有結合的に接合した反応生成物に変換する工程;
    を含み、前記第1反応物と前記第2反応物の前記反応生成物が、前記樹枝状ポリマーが可溶性である溶剤に不溶性であることを特徴とする、コンポジット組成物の形成方法。
  2. 前記第1反応物が、少なくとも1つの金属又は金属含有化合物から選ばれ、イオンの形態で樹枝状ポリマーと錯化することを特徴とする、請求項1に記載のコンポジット組成物の形成方法。
  3. 前記第1反応物が、金属酢酸塩、金属硫酸塩、金属トリフルオロメタンスルホン酸塩及び金属ハロゲン化物から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のコンポジット組成物の形成方法。
  4. (A)少なくとも1つの金属、金属含有化合物又はメタロイド含有化合物である反応物を樹枝状ポリマーに接触させて前記樹枝状ポリマーに前記反応物を錯化させることにより、前記樹枝状ポリマーに前記反応物が局在化した前記樹枝状ポリマーと前記反応物との錯体を形成する工程;並びに
    (B)前記反応物を反応生成物に変換する工程であって、前記反応生成物の大きさ及び大きさの分布が樹枝状ポリマーにより決定及び制御される離散的に存在するものとして前記反応生成物がナノスケールレベルでコンポジット中に分散しており、樹枝状ポリマーに束縛されたか、樹枝状ポリマーに非共有結合的に接合したか又は樹枝状ポリマーに束縛され且つ樹枝状ポリマーに非共有結合的に接合した反応生成物に変換する工程;
    を含み、前記工程(A)において、第1溶媒とこの溶媒に可溶性である前記樹枝状ポリマーを含む第1相と、前記樹枝状ポリマーが不溶性である第2溶媒とこの溶媒に可溶性である前記反応物を含む第2相との混合相中において、前記反応物が、前記第1相と前記第2相の間の界面を通過して樹枝状ポリマー分子の内部に侵入すること、及び前記反応生成物が前記第1溶媒に不溶性であることを特徴とする、コンポジット組成物の形成方法。
  5. 前記反応物が、少なくとも1つの金属又は金属含有化合物から選ばれ、イオンの形態で樹枝状ポリマーと錯化することを特徴とする、請求項4に記載のコンポジット組成物の形成方法。
  6. 前記反応物が、金属酢酸塩、金属硫酸塩、金属トリフルオロメタンスルホン酸塩及び金属ハロゲン化物から選ばれることを特徴とする、請求項4に記載のコンポジット組成物の形成方法。
  7. 少なくとも1つの金属、金属含有化合物又はメタロイド含有化合物である第1反応物を樹枝状ポリマーに接触させて前記樹枝状ポリマーに前記第1反応物を錯化させることにより、前記樹枝状ポリマーに前記第1反応物が局在化した前記樹枝状ポリマーと前記第1反応物との錯体を形成する工程;並びに
    前記樹枝状ポリマーと錯化した前記第1反応物と反応することのできる第2反応物を前記錯体に接触させ、前記第1反応物を第2反応物と反応させることにより、前記第1反応物と前記第2反応物とを反応生成物に変換する工程であって、前記反応生成物の大きさ及び大きさの分布が樹枝状ポリマーにより決定及び制御される離散的に存在するものとして前記反応生成物がナノスケールレベルでコンポジット中に分散しており、樹枝状ポリマーに束縛されたか、樹枝状ポリマーに非共有結合的に接合したか又は樹枝状ポリマーに束縛され且つ樹枝状ポリマーに非共有結合的に接合した反応生成物に変換する工程;
    により調製され、前記第1反応物と前記第2反応物の前記反応生成物が、前記樹枝状ポリマーが可溶性である溶剤に不溶性であることを特徴とするコンポジット組成物。
  8. 前記第1反応物が、少なくとも1つの金属又は金属含有化合物から選ばれ、イオンの形態で樹枝状ポリマーと錯化することを特徴とする、請求項7に記載のコンポジット組成物。
  9. 前記第1反応物が、金属酢酸塩、金属硫酸塩、金属トリフルオロメタンスルホン酸塩及び金属ハロゲン化物から選ばれることを特徴とする、請求項7に記載のコンポジット組成物。
  10. (A)少なくとも1つの金属、金属含有化合物又はメタロイド含有化合物である反応物を樹枝状ポリマーに接触させて前記樹枝状ポリマーに前記反応物を錯化させることにより、前記樹枝状ポリマーに前記反応物が局在化した前記樹枝状ポリマーと前記反応物との錯体を形成する工程;並びに
    (B)前記反応物を反応生成物に変換する工程であって、前記反応生成物の大きさ及び大きさの分布が樹枝状ポリマーにより決定及び制御される離散的に存在するものとして前記反応生成物がナノスケールレベルでコンポジット中に分散しており、樹枝状ポリマーに束縛されたか、樹枝状ポリマーに非共有結合的に接合したか又は樹枝状ポリマーに束縛され且つ樹枝状ポリマーに非共有結合的に接合した反応生成物に変換する工程;
    により調製され、前記工程(A)において、第1溶媒とこの溶媒に可溶性である前記樹枝状ポリマーを含む第1相と、前記樹枝状ポリマーが不溶性である第2溶媒とこの溶媒に可溶性である前記反応物を含む第2相との混合相中において、前記反応物が、前記第1相と前記第2相の間の界面を通過して樹枝状ポリマー分子の内部に侵入すること、及び前記反応生成物が前記第1溶媒に不溶性であることを特徴とするコンポジット組成物。
  11. 前記反応物が、少なくとも1つの金属又は金属含有化合物から選ばれ、イオンの形態で樹枝状ポリマーと錯化することを特徴とする、請求項10に記載のコンポジット組成物。
  12. 前記反応物が、金属酢酸塩、金属硫酸塩、金属トリフルオロメタンスルホン酸塩及び金属ハロゲン化物から選ばれることを特徴とする、請求項10に記載のコンポジット組成物。
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