JP4232896B2 - 面発光レーザ、波長フィルタ、およびそれらの製造方法 - Google Patents

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本発明は、波長多重伝送用の面発光レーザ、波長フィルタ、およびそれらの製造方法に関する。
活性層の上下にエアーギャップとInPのペアで構成される分布反射型(DBR:Distributed Bragg Reflector)ミラーをもつ光ポンプ型の1.55μm帯面発光レーザが、N.Chiticaらにより報告されている(非特許文献1)。このレーザの断面図を図8と図9とに示す。なお、図9は図8の破線部分Nの拡大図である。エピタキシャル成長層は一回の成長でInP基板101上に形成されている。基板101側のDBRミラー部102は、基板101側からInGaAs層102Aと、InP/InGaAsの4ペアとによって構成されている。1つのペアは、InP層102BとInGaAs層102Cとで構成されている。
レーザ発振部の下のInGaAs層102A、102Cは、エアーギャップ102A、102Cを形成したときに、ウェットエッチングによって一部が除去されるものである。InGaAs層102Aおよび各ペアのInGaAs層102Cの層厚は、空気中での発振波長(λ)の1/4となる厚さである。各ペアのInP層102Bの層厚は、InP中における発振波長(λ)の3/4となる厚さである。
レーザ活性層であるキャビティ部103は、1.55μm波長の多重量子井戸(厚さ:λ/2)の活性層103Aを3層重ねて、その上下にスペーサ層103B、103Cを配した構成である。これらのスペーサ層103B、103CはInPで構成され、層厚はλ/4である。
キャビティ部103の上には、表面側のDBRミラー部104が配されている。DBRミラー部104は、InGaAs/InPの4ペアによって構成され、層厚は基板101側のDBRミラー部102と同様である。1つのペアは、InGaAs層104AとInP層104Bとで構成され、InGaAs層104Aには、エアーギャップ104Aが形成されている。また、本エピタキシャル成長層すべては、ノンドープで構成されている。
こうした構成の面発光レーザが発振するには、レーザ活性層のゲインスペクトルの巾の中に、DBRミラーの共振波長が納まっていなければならない。このゲインスペクトルの巾は、多重量子井戸の活性層を用いた場合、約15nmと狭い。このため、DBRミラーの共振波長がこの中に納まるには、DBRミラーを構成するエアーギャップとInPの層厚とが、約±0.5%以内のバラツキ精度内で制御されなければならない(非特許文献2)。
Appl. Phys. Lett. Vol.78, No.25, 18 June 2001, pp.3935-3937 ( 題 : Room-temperature operation of photopumped monolithic InP vertical-cavity laser with two air-gap Bragg reflector ) C. J. Chang-Hasnain, "Tunable VCSEL", IEEE j. Select, Topics Quantum Electron., vol.6, pp.978-987, 2000.
前述した面発光レーザには、次のような課題がある。この面発光レーザが発振するには、DBRミラーを構成するエアーギャップとInPの層厚とを、約±0.5%以内のバラツキ精度内で制御する必要がある。このため、エピタキシャル成長における層厚のrun-to-runのバラツキ、ウェハの面内バラツキに厳しい制限を受け、レーザ発振をする面発光レーザを歩止まり良く製作することができないという問題があった。
また、ある特定の波長のフィルタを実現するには、DBRミラーの共振波長をその特定の波長に合わせる必要があり、面発光レーザと同様の問題が存在する。
本発明は、前記の課題を解決し、エアーギャップと半導体のペアで構成されるDBRミラーを持つ面発光レーザおよび波長フィルタを構成する層の層厚のエピタキシャル成長におけるrun-to-runのバラツキ、ウェハの面内バラツキに対する制限を緩和し、面発光レーザおよび波長フィルタの製作の歩止まりを向上させることができる、面発光レーザ、波長フィルタ、およびそれらの製造方法を提供することにある。
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、エアーギャップと半導体とを交互に積層した反射鏡をもつ面発光レーザにおいて、キャビティを構成する半導体層の少なくとも片方のエアーギャップ側に、共振波長調整用の半導体層を具備し、共振波長を調整するためのエッチングが施されて、前記共振波長調整用の半導体層の前記エアーギャップに露出した部分の層厚が、エアーギャップに露出していない部分の層厚よりも薄くなっていることを特徴とする面発光レーザである。
請求項2の発明は、請求項1に記載の面発光レーザにおいて、前記共振波長調整用の半導体材料が、反射鏡およびスペーサ層を構成する半導体材料に対して選択エッチング性のある材料で構成されることを特徴とする。
請求項3の発明は、エアーギャップと半導体とを交互に積層した反射鏡をもち、キャビティを構成する半導体層の少なくとも片方のエアーギャップ側に、共振波長調整用の半導体層を具備する面発光レーザの製造方法において、前記エアーギャップ加工後に、前記共振波長調整用の半導体層の層厚をエッチングにより変化させることにより、共振波長を変化させることを特徴とする面発光レーザの製造方法である。
請求項4の発明は、エアーギャップと半導体とを交互に積層した反射鏡をもつ波長フィルタにおいて、キャビティを構成する半導体層の少なくとも片方のエアーギャップ側に共振波長調整用の半導体層を具備し、共振波長を調整するためのエッチングが施されて、前記共振波長調整用の半導体層の前記エアーギャップに露出した部分の層厚が、エアーギャップに露出していない部分の層厚よりも薄くなっていることを特徴とする波長フィルタである。
請求項5の発明は、請求項4に記載の波長フィルタにおいて、前記共振波長調整用の半導体材料が、反射鏡およびスペーサ層を構成する半導体材料に対して選択エッチング性のあるもので構成されることを特徴とする。
請求項6の発明は、エアーギャップと半導体とを交互に積層した反射鏡をもち、キャビティを構成する半導体層の少なくとも片方のエアーギャップ側に、共振波長調整用の半導体層を具備する波長フィルタの製造方法において、エアーギャップ加工後に、前記共振波長調整用の半導体層の層厚をエッチングにより変化させることにより、共振波長を変化させることを特徴とする波長フィルタの製造方法である
本発明によれば、エアーギャップ加工後に、調整層である共振波長調整用の半導体層の層厚をエッチングで調整すると、共振波長が変化するので、エアーギャップと半導体層のペアで構成されるDBRミラーのエピタキシャル層厚の制御に対する制限を緩和することができ、面発光レーザおよび波長フィルタを歩止まり良く製作することが可能となる。
本発明によれば、次の効果を達成することができる。つまり、従来はエピタキシャル層厚のrun-to-runのバラツキが±0.5%以内必要であったものが、本発明により、run-to-runのバラツキが±2%以内へと緩和され、面発光レーザおよび波長フィルタの製作の歩止まりを向上させる利点がある。
つぎに、本発明の実施形態について説明する。
[実施形態1]
本実施形態による光ポンプ型の面発光レーザを図1〜3に示す。図1は、面発光レーザを示す断面図であり、図2は、図1のI―I断面を示す断面図である。図3は、図1の破線部分Aを拡大した拡大図である。エピタキシャル成長層が一回の成長でn-InP基板1上に形成される。基板1側のDBRミラー部2は、基板2側からInGaAs層2AとInP/InGaAsの3ペアとによって構成されている。1つのペアは、InP層2BとInGaAs層2Cとで構成されている。
InGaAs層2A、2Cは、エアーギャップ2A、2Cを形成したときの犠牲層となるものである。つまり、InGaAs層2A、2Cは、エアーギャップ2A、2Cを形成するために、一部分が除去される層である。InGaAs層2A、2Cの層厚は、空気中での発振波長(λ)の1/4の奇数倍となる厚さであり、ここでは、λ/4の厚さとした。InP層2Bの層厚はInP中における発振波長(λ)の1/4の奇数倍となる厚さであり、ここでは、3λ/4の厚さとした。InGaAs層2C上には、キャビティ部3が形成されている。
キャビティ部3は、1.55μm波長の多重量子井戸(厚さ:λ/2)の活性層3Aを3層重ねて、その上下にスペーサ層3B、3Cを配した構成である。これらのスペーサ層3B、3Cは、InP層3B、3Cと、InPに組成の非常に近いInGaAsP層3B、3Cとで構成されている。これらの2層を合計した層厚はλ/4とした。InGaAsP層3B、3Cは、数十nm以下の層厚である。また、InGaAsP層3B、3Cは、犠牲層であるInGaAs層2A、2Cのエッチング時にはほとんどエッチングされない。こうしたInGaAsP層3B、3Cは、共振波長調整用の共振波長調整層である。
キャビティ部3の上には、表面側のDBRミラー部4が配されている。DBRミラー部4は、InGaAs/InPの3ペアによって構成されている。1つのペアは、InGaAs層4AとInP層4Bとで構成されている。また、InGaAs層4Aには、エアーギャップ4Aが形成されている。InGaAs層4AとInP層4Bとの層厚は、基板側のDBRミラー部2と同様である。さらに、本エピタキシャル成長層すべては、ノンドープで構成されている。上述した層厚は、InGaAsPの共振波長調整層を使わない場合で、レーザ発振を行わせるための層厚のバラツキの範囲としては、±0.5%以内が必要である。
前記構造の面発光レーザは、次のようにして共振波長が調整される。InGaAs層2A、2C、4Aに、エアーギャップ2A、2C、4Aを形成した後に、InGaAsPの共振波長調整層であるInGaAsP層3B、3Cをエッチングすることで、DBRミラーの共振波長を変化させる場合を考える。
InGaAsPの共振波長調整層の厚さを20nmとして、エピタキシャル層の各層厚を4%増加して形成したとする。計算によると、共振波長は1.612μmとなる。共振波長調整用のInGaAsP層3B、3Cをエッチングした場合の共振波長の変化を図4に示す。厚さ20nmのInGaAsP層3B、3Cを完全に除去すると、共振波長は1.554μmとなり、1.55μmの活性層3Aのゲインスペクトルと重なるようになり、レーザ発振が可能となる。これらのことを考慮すると、エピタキシャル層の成長層厚を上述した共振波長調整層を使わない場合の層厚よりも2%大きい設定で成長し、InGaAsPのエッチングで共振波長の調整を行う場合、各層厚のバラツキは、±2%まで許されることになる。すなわち、層厚偏差は4倍以上緩和される。このように、InGaAsPの共振波長調整層を用いることで、許容される層厚のバラツキの範囲を大きいものにすることが可能となる。
エピタキシャル層成長後のレーザの製作プロセスとしては、まず、数十μm巾で100μm程度の長さのメサをエッチングにより形成する。その後、プラズマCVD作製のSiN膜をマスクにして、エアーギャップ加工を行う。加工後の断面図が図2である。犠牲層のInGaAsはFeClと水の混合液とを用いて除去し、エアーギャップ2A、2C、4Aを形成した。この段階で、DBRミラーの共振波長の測定を行い、活性層波長とのズレを把握し、InGaAsPの共振波長調整層のエッチング厚を計算により決定する。
つぎに、DBRミラーやスペーサ層を構成するInP層はほとんどエッチングされないが、共振波長調整用のInGaAsP層は1〜2分程度で除去される速度のエッチング液を用いて所望の厚さのエッチングを行い、活性層のゲイン波長とDBRミラーの共振波長が重なるようにした。このようにすることで、エピタキシャル層の層厚のズレを±2%まで許容して、面発光レーザを発振させることが可能となる。
以上、この発明の実施形態1を詳述してきたが、具体的な構成は本実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。たとえば、本実施形態では、光ポンプ型の面発光レーザについて説明したが、エアーギャップを持つ電流注入型のものでも、同様に本発明が適用可能である。また、本実施形態では、犠牲層としてInGaAsを、共振波長調整層としてInGaAsP層を用いたが、犠牲層としてInAlAs層を用いることも可能である。また、共振波長調整層としてInP組成に近いInAlGaAs層またはInAlGaAsP層等InP層に格子整合するものを用いることも可能である。
さらに、共振波長調整層をスペーサ層の片側のみに設けることも、共振波長の調整幅は狭まるが可能である。
[実施形態2]
本実施形態による波長フィルタについて説明する。実施形態1において、図1、2の活性層3Aの代わりにゲインのないInP層を用いると、波長フィルタとなる。本実施形態による波長フィルタの層構成およびエアーギャップ加工後の断面図を、図5と図6とにそれぞれ示す。また、図5の破線部分Bの拡大図を図7に示す。
本実施形態では、基板11の上にDBRミラー部12が形成され、DBRミラー部12の上にフィルタ部13が形成され、さらに、フィルタ部13の上にDBRミラー部14が形成されている。DBRミラー部12は、InGaAs層12AとInP/InGaAsの3ペアとによって構成されている。1つのペアは、InP層12BとInGaAs層12Cとで構成されている。InGaAs層12AとInGaAs層12Cとには、エアーギャップ12A、12Cが形成されている。
フィルタ部13は、InP層13Aと、この上下に形成されたInGaAsP層13B、13Cとで形成されている。本実施形態では、InGaAsP層13B、13Cが共振波長調整用の共振波長調整層である。
フィルタ部13の上には、DBRミラー部14が形成されている。DBRミラー部14は、InGaAs/InPの3ペアによって構成されている。1つのペアは、InGaAs層14AとInP層14Bとで構成されている。InGaAs層14Aには、エアーギャップ14Aが形成されている。
実施形態1におけるレーザ活性層3Aおよびスペーサ層3B、3CのInP層3B、3Cが、本実施形態では単一のInP層13Aで構成されている。さらに、本実施形態では、InP層13Aの上下にInGaAsP層13B、13Cが形成されている。つまり、実施形態1における面発光レーザのゲインスペクトル波長をフィルタリングする波長と置き換えれば、実施形態1の面発光レーザと同様に本発明が適用可能である。
本発明は、エアーギャップと半導体とからなる反射鏡をもつものに適用できる。
本発明の実施形態1を示す断面図である。 図1のI―I断面を示す断面図である。 図1の破線部分を拡大した拡大図である。 InGaAsP層をエッチングした場合の共振波長の変化を示す図である。 本発明の実施形態2を示す断面図である。 図5のII―II断面を示す断面図である。 図5の破線部分を拡大した拡大図である。 従来のレーザを示す断面図である。 図8の破線部分を拡大した拡大図である。
符号の説明
1 基板
2、4 DBRミラー部
2A、2C、4A InGaAs層
2A、2C、4A エアーギャップ
2B、4B InP層
3 キャビティ部
3A 活性層
3B、3C スペーサ層
3B、3C InP層
3B、3C InGaAsP層
11 基板
12、14 DBRミラー部
12A、12C、14A InGaAs層
12B、14B、13A InP層
13 フィルタ部
13B、13C InGaAsP層

Claims (6)

  1. エアーギャップ(2A、2C、4A)と半導体(2B、4B)とを交互に積層した反射鏡(2、4)をもつ面発光レーザにおいて、
    キャビティを構成する半導体層の少なくとも片方のエアーギャップ側に、共振波長調整用の半導体層(3B、3C)を具備し、共振波長を調整するためのエッチングが施されて、前記共振波長調整用の半導体層の前記エアーギャップに露出した部分の層厚が、エアーギャップに露出していない部分の層厚よりも薄くなっていることを特徴とする面発光レーザ。
  2. 前記共振波長調整用の半導体材料が、反射鏡(2、4)およびスペーサ層(3B、3C)を構成する半導体材料に対して選択エッチング性のある材料で構成されることを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザ。
  3. エアーギャップ(2A、2C、4A)と半導体(2B、4B)とを交互に積層した反射鏡をもち、キャビティを構成する半導体層の少なくとも片方のエアーギャップ側に、共振波長調整用の半導体層(3B、3C)を具備する面発光レーザの製造方法において、
    前記エアーギャップ加工後に、前記共振波長調整用の半導体層(3B、3C)の層厚をエッチングにより変化させることにより、共振波長を変化させることを特徴とする面発光レーザの製造方法。
  4. エアーギャップ(12A、12C、14A)と半導体(12B、14B)とを交互に積層した反射鏡(12、14)をもつ波長フィルタにおいて、
    キャビティを構成する半導体層の少なくとも片方のエアーギャップ側に共振波長調整用の半導体層(13B、13C)を具備し、共振波長を調整するためのエッチングが施されて、前記共振波長調整用の半導体層の前記エアーギャップに露出した部分の層厚が、エアーギャップに露出していない部分の層厚よりも薄くなっていることを特徴とする波長フィルタ。
  5. 前記共振波長調整用の半導体材料が、反射鏡(12、14)およびスペーサ層を構成する半導体材料に対して選択エッチング性のあるもので構成されることを特徴とする請求項4に記載の波長フィルタ。
  6. エアーギャップ(12A、12C、14A)と半導体(12B、14B)とを交互に積層した反射鏡(12、14)をもち、キャビティを構成する半導体層の少なくとも片方のエアーギャップ側に、共振波長調整用の半導体層を具備する波長フィルタの製造方法において、
    エアーギャップ加工後に、前記共振波長調整用の半導体層(13B、13C)の層厚をエッチングにより変化させることにより、共振波長を変化させることを特徴とする波長フィルタの製造方法。
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