JP4232145B2 - チオカルボン酸またはその塩の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬、農薬、液晶などの各種有機合成化学物質の原料として有用であるチオカルボン酸およびその塩の製造法に関するものである。さらには、特に医薬原料などとして有用な高純度テトラヒドロフランチオカルボン酸の製造法、光学純度測定法およびテトラヒドロフランチオカルボン酸またはその誘導体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的にチオカルボン酸およびその塩は、酸ハロゲン化物、酸無水物等のカルボン酸誘導体と硫化水素またはその金属塩との反応により製造され、蒸留、再結晶により精製されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
また、一般に光学活性体の光学純度測定法として、比旋光度法、HPLC、GLC等のクロマトグラフ法、NMR法等が知られている(例えば、非特許文献2参照。)。カルボン酸である光学活性テトラヒドロフランカルボン酸の光学純度は、ジアゾメタンによるメチルエステル化後、光学活性カラムを用いたHPLC法により測定されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
チオカルボン酸およびその塩の製造において、毒性が強く、悪臭のある硫化水素を使う方法を採用する場合には、平衡反応であるため過剰の硫化水素存在下、高温、高圧で実施する必要がある(例えば、非特許文献1参照。)。また、硫化水素をピリジン溶媒中で使用することにより室温付近で反応が進行する例(例えば、非特許文献3参照。)があるが、いずれも、収率面(〜70%)で満足できるものではなく、悪臭対策、用いられる反応条件のため、特殊な設備を必要とし、工業的な実施は容易ではない。
【0005】
一方、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム等の硫化水素の金属塩を用いる方法は、生成する酸が硫化水素の金属塩と反応し、硫化水素が発生する。この方法では、チオカルボン酸の収率を上げるため、硫化水素の金属塩を2当量以上用いる必要がある(例えば、非特許文献4参照。)。また、硫化水素の金属塩を溶解し、反応をスムースに進行させるため溶媒として水または、(含水)エタノールを用いたり、市販されている硫化水素の金属塩が一般に含水塩であるため、加水分解、加溶媒分解を併発し、カルボン酸、エステルが副生し、チオカルボン酸の収率は必ずしも高くない(例えば、チオ安息香酸では収率61〜76%)(例えば、非特許文献4参照。)。アルキルチオカルボン酸の場合、特に選択率が低い。また、チオカルボン酸は容易に酸化され、カルボン酸やジスルフィドを生成したり、熱により、重合することも知られており(例えば、非特許文献5参照)、蒸留により効率的に精製することは難しく、工業的規模で医薬、農薬、液晶などの原料となる高純度のチオカルボン酸またはその塩を効率よく得ることは容易ではなかった。特に、テトラヒドロフランチオカルボン酸はテトラヒドロフラン環の開環重合も容易に起こるため、収率よく、高純度のテトラヒドロフランチオカルボン酸およびその塩を得ることは困難であった。
【0006】
【非特許文献1】
ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.), 1960年, 第25巻, p.180
【0007】
【非特許文献2】
「化学総説 光学異性体の分離」、日本化学会、1989年、p.188
【0008】
【特許文献1】
特開平8-59517号公報(第4頁0024欄)
【0009】
【非特許文献3】
ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.), 1953年, 第18巻, p.707
【0010】
【非特許文献4】
オーガニック・シンセシス(Org.Synth.), 1963年, IV, p.924
【0011】
【非特許文献5】
イー・エス・パタイ(E.S.Patai)著、「ザ・ケミストリー・オブ・カルボキシリック・アシッズ・アンド・エステルズ)」、インターサイエンス(Interscience),1969年、第15章
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、環境に対する影響が少なく、工業的に容易に実施可能で、より簡便で効率的な高純度のチオカルボン酸およびその塩を得る方法を提供することである。
【0013】
さらに、チオカルボン酸の場合はチオールとチオンの平衡があり、また、硫黄原子が多重結合に付加する反応を起こすため、ジアゾメタンによる処理では、複雑な反応が起こり、目的とする硫黄原子上でのアルキル化は必ずしも満足できる収率で進まず、従来テトラヒドロフランチオカルボン酸のアルキルエステルは知られておらず、従って、精度良く、かつ簡便に光学純度を測定する方法も知られていなかった。そこで、本発明の他の目的は、容易に実施可能で簡便な光学活性テトラヒドロフランチオカルボン酸の光学純度測定法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者はこれらの問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、塩基の存在下に酸ハロゲン化物または酸無水物と硫化水素の金属塩とを反応させることにより、硫化水素の金属塩の使用量を減らすことができ、硫化水素の発生量を減少できると同時に、チオカルボン酸の収率も向上し、対応するカルボン酸の副生を抑制できるすることを見出した。また、チオカルボン酸と対応するカルボン酸および水の混合物から、20℃における比誘電率が4.0以下である有機溶媒を加え、チオカルボン酸を選択的に有機溶媒中に抽出すること、および、チオカルボン酸と対応するカルボン酸の混合物に塩基を加え、晶析/濾別することにより、高純度のチオカルボン酸または塩が収率良く得られることを見いだした。さらに、テトラヒドロフランチオカルボン酸を塩に変換した後、アルキル化剤と反応させること等によりアルキルエステル化し、光学活性カラムを用いクロマトグラフ法により分析すれば、エナンチオマーが良く分離し、精度良く光学純度を測定できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明は、塩基の存在下に酸ハロゲン化物または酸無水物と硫化水素の金属塩とを反応させること、チオカルボン酸、当該チオカルボン酸に対応するカルボン酸および水の混合物に、20℃における比誘電率が4.0以下である有機溶媒を加え、チオカルボン酸を選択的に有機溶媒中に抽出すること、チオカルボン酸と対応するカルボン酸の混合物に塩基を加え、晶析/濾別することを特徴とする高純度チオカルボン酸またはその塩の製造法、および、テトラヒドロフラン−2−カルボン酸またはその塩の含有量が5%以下のテトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸またはその塩、さらに、テトラヒドロフランチオカルボン酸をアルキルエステル化し、光学活性カラムを用いて、クロマトグラフ法により分析するテトラヒドロフランチオカルボン酸の光学純度測定法、およびテトラヒドロフランチオカルボン酸アルキルエステルである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0017】
本発明の製造法で用いられる酸ハロゲン化物は、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物のいずれであってもよいが、塩化物、臭化物が特に好ましく用いられる。また、酸無水物としては、カルボン酸の対称無水物、環状無水物、混成無水物やカルボン酸とリン酸、ホスフィン酸、硫酸、スルホン酸等の混成無水物等が用いられるが、カルボン酸の対称無水物、混成無水物およびカルボン酸とホスフィン酸、スルホン酸の混成無水物が特に好ましい。収率・反応後の精製の面からは酸ハロゲン化物がより好ましい。酸ハロゲン化物または酸無水物の官能基を除く部分は、目的物質であるチオカルボン酸の骨格を構成するので、以下においてこの部分をチオカルボン酸の骨格という。
【0018】
本発明において、チオカルボン酸の骨格は特に制限はないが鎖状または環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基、アラルキル基、ヘテロ環基が好ましく、アルキル基、飽和ヘテロ環基が特に好ましい。骨格の具体例としてメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノナニル、デカニル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等のアルキル基、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル等のアルケニル基、アセチレニル、プロパルギル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル等のアルキニル基、フェニル、ビフェニル、ナフチル等のアリール基、ベンジル、フェネチル等のアラルキル基、フリル、テトラヒドロフリル、チエニル、テトラヒドロチエニル、ピロリル、ピリジル、ピペリジル等のヘテロ環基をあげることができる。
【0019】
本発明の方法はこれらの骨格の中でも特に炭素数1〜10のアルキル基およびテトラヒドロフリル、テトラヒドロチエニル等の飽和ヘテロ環基に好ましく適応できる。特に好ましいのはテトラヒドロフリル基である。炭素数11以上のアルキル基では、反応の選択性が上がらず、本反応の効果が期待できない。
【0020】
本発明に用いられる硫化水素の金属塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水硫化物、硫化物が好ましいが、アルカリ金属の水硫化物が特に好ましい。
【0021】
本発明において、硫化水素の金属塩の具体例として、水硫化ナトリウム(NaSH)、水硫化カリウム(KSH)、硫化ナトリウム(Na2S)、硫化カリウム(K2S)をあげることができるが、特に水硫化ナトリウム、水硫化カリウム等の水硫化塩が好ましい。硫化水素の金属塩は、水和物であってもかまわない。
【0022】
硫化水素の金属塩の使用量は、酸ハロゲン化物または酸無水物に対し、収率および環境への影響面から1当量以上2当量以下が好ましく、1.2当量以上1.7当量以下が特に好ましい。1当量未満では収率が上がらず、2当量を越えると、
経済性、および、環境面で問題がある。
【0023】
酸ハロゲン化物または酸無水物と硫化水素の金属塩との反応に際して存在させる塩基(以下において塩基Aということがある)は、硫化水素の金属塩以外の化合物であり、アミン等の有機物、金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、重炭酸塩等の無機化合物を挙げることができるが、アミン、金属炭酸塩が好ましく、アミンが特に好ましい。塩基の具体例としてトリエチルアミン、ジイソブチルエチルアミン、ピリジン等のアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム等の金属酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム等の金属重炭酸塩が挙げられるが、トリエチルアミン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが好ましく、特にトリエチルアミンが好ましく用いられる。
【0024】
塩基Aの使用量は、酸ハロゲン化物または酸無水物に対し、モル比で1以上であれば、特に制限はないが、経済性の面からは、モル比で3以上用いるのは好ましくない。
【0025】
本発明の反応実施に当たり、混合を十分に行うため溶媒を使用することが望ましい。使用する溶媒としては、アルコール、エーテル、アミド、炭化水素、ハロゲン化炭化水素等が挙げられるが、反応をスムースに進行させるため、硫化水素の金属塩に対し溶解力があるアルコールが好ましい。加アルコール分解等の副反応を抑制するためには炭素数3〜10のアルコールを使用するのが特に好ましい。炭素数3〜10のアルコールの具体例として1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノールが挙げられる。中でも1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノールが好ましく、1−プロパノール、2−プロパノールが特に好ましい。
【0026】
溶媒の使用量は、反応物の混合が十分行われるようにするため、酸ハロゲン化物または酸無水物に対し、重量比で2以上であれば、特に制限はないが、経済性の面からは、10以下が好ましい。ただし、生成したチオカルボン酸の塩が析出し、不均一になる程度の溶媒量が、副反応を抑制するためには好ましい。
【0027】
本発明の製造法を実施するに当たっては、まず、硫化水素の金属塩と溶媒を混合し、加熱・攪拌等によりできる限り硫化水素の金属塩を溶解させる。塩基Aは硫化水素の金属塩と同時に加えても良いし、硫化水素の金属塩を溶媒に溶解させた後に加えても良い。その後、酸ハロゲン化物または酸無水物を添加する。混合の方法としては、攪拌、振とう、向流接触等が用いられる。処理の方式にも特に制限はなく、例えば、回分式、半回分式あるいは連続式のいずれでもかまわないが、通常は回分式で行う。また、圧力は常圧、加圧、減圧いずれの条件でもかまわないが、通常は常圧で行う。
【0028】
反応温度は、副反応を減らすためには低温の方が良いが、実用的には−20〜50℃の範囲で実施するのが好ましい。特に−10〜25℃の範囲で実施するのが好ましい。反応は、常圧、常温、回分式で実施する場合、酸ハロゲン化物または酸無水物を添加後、6時間以内、通常は3時間程度で終了する。
【0029】
反応終了後、チオカルボン酸は大部分が塩の状態で存在するが、そのまま、濾過、抽出等で塩を分離することもできる。また、塩を水等に溶解させ、酸析後、濾過、抽出等でフリーのチオカルボン酸としても分離可能である。水相への損失を抑えるため、アルコール等の溶媒を予め濃縮しておくことが望ましい。濃縮は、チオカルボン酸の分解を抑制するため、減圧下、100℃以下、さらには、60℃以下で行うのがより好ましい。
【0030】
反応後、副生物は、水に溶解させ、塩酸または硫酸等でpHを4〜6に調整し、濾過、抽出等で分離することにより、効率的に除くことができ、抽出残液から高純度のチオカルボン酸塩が得られる。さらに、残液のpHを3以下より好ましくは、1以下に調整し、チオカルボン酸を濾過、抽出等で分離すれば、より、高純度のチオカルボン酸が得られる。また、はじめに反応液をpH1以下に調整し、フリーのチオカルボン酸を抽出等で分離し、分離したチオカルボン酸を再びアルカリ等でpH4〜6に調整し直し、副生物を抽出することによっても、高純度のチオカルボン酸塩を得ることができる。
【0031】
遊離のチオカルボン酸を抽出するために従来、ジエチルエーテル、酢酸エチル等のいわゆる極性溶媒が用いられてきたが、対応するカルボン酸を含む水溶液から、チオカルボン酸を選択的に抽出するためには20℃における比誘電率が4.0以下のいわゆる非極性溶媒を用いることが好ましい。さらには、20℃における比誘電率が3.5以下の有機溶剤がより好ましい。20℃における比誘電率が4.0以下の有機溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、イソオクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、四塩化炭素、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素、ジイソプロピールエーテル等のエーテルが挙げられるが、なかでも、飽和炭化水素、芳香族炭化水素などの炭化水素や、ハロゲン化炭化水素が好ましい。特に、シクロヘキサン、トルエン、トリクロロエチレンがより好ましい。溶媒の使用量は特に制限はないが、経済性の面からは、チオカルボン酸に対して、20重量倍以下が好ましい。抽出時の水相はチオカルボン酸が遊離していることが必要である。水相のpHは3以下が好ましく、1以下がさらに好ましい。あらかじめ、抽出溶媒を加えてから、pHを下げることにより、酸析と抽出を同時に行うこともできる。抽出の方式にも特に制限はなく、例えば、回分式、半回分式あるいは連続式のいずれでもかまわない。回分式の場合は2回以上に分けて抽出しても良い。また、圧力は常圧、加圧、減圧いずれの条件でもかまわないが、通常は常圧で行う。抽出時の温度は、チオカルボン酸の安定性から50℃以下、より好ましくは、25℃以下が良い。この抽出による精製法は、チオカルボン酸全般に適用できるが、チオ酢酸、テトラヒドロチオカルボン酸などのように対応するカルボン酸が水溶性のものによりよく適用できる。対応するカルボン酸を不純物として含むチオカルボン酸であれば、上記本発明の方法により製造されたチオカルボン酸に限らずどのような製法で得られたものにも適応できるが、カルボン酸の含有量はチオカルボン酸に対し50重量%以下が好ましく、さらには、20重量%以下がより好ましい。このようにして得られた抽出液を濃縮することにより、高純度のチオカルボン酸が得られる。
【0032】
また、対応するカルボン酸、エステル等を不純物として含むチオカルボン酸に塩基を加え、晶析/濾別することにより、高純度のチオカルボン酸塩が収率良く得られ、この塩を酸析すれば、高純度のチオカルボン酸も容易に取得可能である。
【0033】
この塩晶析法は、上記本発明の方法により製造されたチオカルボン酸に限らずどのような製法で合成したチオカルボン酸の精製法としても利用できるが、塩基の存在下、酸ハロゲン化物と水硫化塩との反応で得られた、カルボン酸含有量が5%以下のものの精製により良く適用できる。また、20℃における比誘電率が4.0以下の有機溶媒で抽出したチオカルボン酸溶液をそのまま用いることもできるし、抽出液を濃縮したもの、さらには濃縮後、蒸留によって得られたチオカルボン酸にも適用できる。
【0034】
この塩晶析法の実施に当たり、精製効果を上げるため溶媒を使用することが望ましい。使用する溶媒としては、対応するカルボン酸塩に対し溶解力があるアルコールを含む溶媒が好ましい。アルコールとしては炭素数1〜10のアルコールを使用するのが好ましく、特に炭素数1〜5のアルコールが好ましい。炭素数11以上のアルコールではチオカルボン酸塩とカルボン酸塩の溶解度差が少なくなり、精製効果が上がらない。炭素数1〜5のアルコールの具体例としてメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノールが挙げられる。中でもメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノールが好ましい。弱塩基を使用する場合は、含水溶媒も使用可能である。アルコール溶媒は単独で用いても良いが、他の溶媒を添加しても良い。他の溶媒と混合して用いる場合はメタノールが、単独で用いる場合は2−プロパノールが特に好ましい。アルコールに添加する溶媒としては、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、アミドが挙げられるが、炭化水素、ハロゲン化炭化水素が好ましく、炭化水素がより好ましい。炭化水素の具体例としては、ヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタンなどの飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素が挙げられるが、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンが好ましく用いられ、特にトルエンがより好ましく用いられる。
【0035】
溶媒の使用量は、含まれる不純物量にも依存するが、チオカルボン酸と塩基が混合できれば、特に制限はない。一般に粗チオカルボン酸に対し重量比で2以上であれば良く、経済性の面からは、10以下が好ましい。また、他の溶媒と混合して用いる場合にはアルコールは重量比で0.1程度の使用でも十分効果を発揮する。
【0036】
この塩晶析法に用いられる塩基(以下において塩基Bということがある)としては、アミン、金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、カルボン酸金属塩、アルコキシドを挙げることができるが、副反応を抑制するため、金属炭酸塩、金属重炭酸塩、カルボン酸金属塩、アルコキシドが好ましく、中でも炭素数1〜7のカルボン酸金属塩、炭素数1〜7のアルコキシドが特に好ましい。塩基の具体例としてトリエチルアミン、ジイソブチルエチルアミン、ピリジン等の有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム等の金属酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム等の金属重炭酸塩、蟻酸リチウム、蟻酸ナトリウム、蟻酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム等のカルボン酸金属塩、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、マグネシウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、マグネシウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、カリウムプロポキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムブトキシド、ナトリウムペンチルオキシド、ナトリウムヘキシルオキシド、ナトリウムヘプチルオキシド等アルコキシドが挙げられるが、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、カリウムブトキシドが特に好ましく用いられ、メトキシドが最も好ましく用いられる。なお、塩基Bは前記の塩基Aと同一であっても異なっていてもよい。
【0037】
塩基Bの使用量は、チオカルボン酸に対し、0.7〜1.3当量が好ましく、0.9〜1.1当量が特に好ましい。0.7当量未満では精製収率が上がらず、1.3当量を越えると副生物が多くなり、純度が上がらない。この塩晶析法では塩としては、金属塩およびアンモニウム塩を含むが、金属塩がより好ましい。
【0038】
この塩晶析法の実施に当たり、チオカルボン酸、塩基の添加方法は特に制限はなく、チオカルボン酸溶液に塩基を加えても良く、塩基にチオカルボン酸を加えても良いが、チオカルボン酸に塩基を加える方が、より好ましい。塩基による処理はチオカルボン酸が塩基と接触できればどのような方法でも良いが、一般には混合が好ましく用いられる。混合の方法としては、攪拌、振とう、向流接触等が用いられる。処理の方式にも特に制限はなく、例えば、回分式、半回分式あるいは連続式のいずれでもかまわないが、通常は回分式で行う。また、圧力は常圧、加圧、減圧いずれの条件でもかまわないが、通常は常圧で行う。
【0039】
処理の温度は副反応を抑制するため、低温が良いが、分離する副生物の溶解度にも依存するため、通常は、−20〜50℃の範囲が良く、−10〜20℃の範囲が特に好ましい。
【0040】
処理の時間も混合の方法により変わるが、攪拌下、回分式、常圧で実施する場合10℃付近では3時間以内、通常は1時間程度で終了する。
【0041】
塩基による処理により、チオカルボン酸は塩として析出し、溶解度差を利用し、濾過等の操作により高純度のチオカルボン酸塩を分離できる。塩の析出量が少ない場合には、溶媒を濃縮しても良い。必要に応じ、洗浄、再結晶等により塩をさらに精製することもできる。高純度のチオカルボン酸塩から、酸析、イオン交換等により高純度チオカルボン酸が容易に得られる。
【0042】
なお、この塩晶析法の方法を光学活性テトラヒドロフランチオカルボン酸などの光学活性体に適用すると、光学純度を上げる効果もある。
【0043】
また、塩基Aの存在下に酸ハロゲン化物または酸無水物と硫化水素の金属塩とを反応させる製造法および/または、チオカルボン酸、対応するカルボン酸および水の混合物に、20℃における比誘電率が4.0以下である有機溶媒を加え、チオカルボン酸を選択的に有機溶媒中に抽出する方法および/またはチオカルボン酸と対応するカルボン酸の混合物に塩基Bを加え、晶析/濾別する方法を、テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸(THFT)またはその塩に適用することで、テトラヒドロフラン−2−カルボン酸(THFC)またはその塩の含有量が5%以下のテトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸またはその塩を得ることができる。さらに、テトラヒドロフラン−2−カルボン酸またはその塩の含有量が2%以下のテトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸またはその塩、テトラヒドロフラン−2−カルボン酸またはその塩の含有量が1%以下のテトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸またはその塩、テトラヒドロフラン−2−カルボン酸またはその塩の含有量が0.5%以下のテトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸またはその塩を得ることもできる。なおここでテトラヒドロフラン−2−カルボン酸含有量は実施例1および12で示した方法でGC分析した値から以下の計算式で求めた数値とする。
このようなテトラヒドロフラン−2−カルボン酸またはその塩の含有量が少なく、光学純度の高いテトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸またはその塩は、医薬、農薬、液晶などの各種有機合成化学物質の原料として有用である。
【0044】
次に、光学活性テトラヒドロフランチオカルボン酸の光学純度測定法について説明する。
【0045】
本発明の光学純度測定法においては、光学活性テトラヒドロフランチオカルボン酸のアルキルエステルを、光学活性カラムを用いて、クロマトグラフ法により分析することにより行う。
【0046】
本光学純度測定法は、テトラヒドロフランチオカルボン酸のフラン環上にチオカルボキシル基以外のハロゲン、アルキル、アルコキシ基等の他の置換基を有するテトラヒドロフランチオカルボン酸にも適用できるが、チオカルボキシル基以外の置換基がないものによりよく適用できる。チオカルボキシル基のフラン環上での位置は2位、3位どちらにも適用できるが、2位に置換した化合物に特に好ましく適用できる。
【0047】
本発明の光学純度測定法において、光学活性テトラヒドロフランチオカルボン酸アルキルエステルのエステル部分のアルキル基は、直鎖状でも分岐していても良く、炭素数は1から10の化合物に良好に適用できるが、中でも炭素数1から5の化合物が良く、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、特に好ましくはメチル基やイソプロピル基が用いられる。炭素数が11以上では、分離の程度が悪くなる。
【0048】
チオカルボン酸のアルキルエステル化法としては、チオカルボン酸塩のアルキル化剤との反応、チオカルボン酸とアルコールとの反応、チオカルボン酸のアルケンへの付加が利用できるが、副反応の少ない、チオカルボン酸塩のアルキル化剤との反応による方法が特に良い。チオカルボン酸塩は、チオカルボン酸を塩基で中和することにより容易に得られる。塩基としては、アミン、金属水素化物、金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、カルボン酸金属塩、アルコキシドを挙げることができるが、副反応を抑制するため、金属炭酸塩、金属重炭酸塩、カルボン酸金属塩、アルコキシドが好ましく、中でもカルボン酸金属塩、アルコキシドが特に好ましい。塩基の金属成分として、アルカリ金属、アルカリ土類金属を挙げることができるが、特にナトリウム、カリウムが良い。アルキル化剤の例として、ハロゲン化アルキル、アルキルトルエンスルホネート、アルキルメタンスルホネートを挙げることができるが、中でもハロゲン化アルキルが良く、特に臭化アルキル、ヨウ化アルキルが最も好ましい。ハロゲン化剤の量は、チオカルボン酸に対して1当量以上であれば良いが、反応を短時間に完結させるためには10当量以上の過剰量を加えた方が良い。反応は通常0℃〜100℃の範囲で行うが、副反応を抑制し、ある程度の反応速度で反応を進行させるためには10℃〜50℃の範囲が良く、特に15℃〜35℃の範囲がよい。また、反応をスムースに進行させるためには、反応に悪影響を及ぼさない溶媒を使用することも可能である。
【0049】
使用できる溶媒の具体例として、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等どのエーテル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類を挙げることができるが、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサンが好ましく、中でもアセトニトリルが最も好ましい。
【0050】
本光学純度測定法では分析法として比旋光度法、NMR法と比較し、精度の良いクロマトグラフ法を利用する。クロマトグラフ法として、ガスクロマトグラフ法、液体クロマトグラフ法が利用できるが、化合物の安定性から考えて、液体クロマトグラフ法がより優れている。
【0051】
本光学純度測定法で使用される光学活性カラムは、セルロース、アミロース、シクロデキストリン等の糖、ポリメタクリル酸エステル、クラウンエーテル、アミド・尿素で化学修飾されたもの、配位子交換型を挙げることができるが、中でも糖で修飾されたもの、特にアミロースで修飾されたものが好適に用いられる。
【0052】
また、このようにして得られたテトラヒドロフランチオカルボン酸のアルキルエステルそのものも医薬、農薬、液晶などの各種有機合成化学物質の原料として有用である。
【0053】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0054】
参考例1(テトラヒドロフラン−2−カルボン酸クロリドの製造)
マグネチックスターラー、滴下ロート、温度計、バブラーに繋いだ窒素導入管を付けた500ml四口フラスコに、(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸232.2g(2.0モル、光学純度99.3%ee)を仕込み、室温にて塩化チオニル200ml(326.2g、2.74モル)を1時間かけて攪拌下、滴下した。ガスの発生状況を見ながら、オイルバスで徐々に50℃まで3時間かけて加温した。その後、7〜4kPaの減圧下、オイルバス温度50℃で低沸物を留去し、粗酸クロリド293.8gを得た。一部をサンプリングし、メタノールでメチルエステル化後、以下の条件で分析(絶対検量線法)したところ、純度は87.8wt%、収率は95.8%であった。チオカルボン酸化工程にはさらなる精製をせず、このまま用いた。
(HPLC分析条件)酸クロリド(メチルエステル)の定量
装置 Waters510-484-741システム
カラム Shiseido CAPCELL PAK C18
移動相 水−アセトニトリル(リン酸添加)
検出器(UV) 210nm。
【0055】
実施例1(テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸の製造)
メカニカルスターラー、滴下ロート、温度計、バブラーに繋いだ窒素導入管を付けた1000ml四口フラスコに、水硫化ナトリウム・2水和物69.0g(0.75モル)と2−プロパノール400gを仕込んだ。65℃に加熱し、水硫化ナトリウムを一旦ほぼ溶解させた。50℃まで冷却し、トリエチルアミン50.5g(0.5モル)を加え、さらに氷-食塩浴で冷却し、内温を−5℃にした。内温が5℃を越えないように参考例1で得られた(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸クロリド73.8g(化学純度87.8wt%、純分換算64.80g、0.482モル)を1時間かけて攪拌下、滴下した。スラリー状態の反応混合物を氷冷下で1時間、20℃で2時間攪拌を続けた。その後、減圧(約13KPa)下で1時間脱気した。反応液(スラリー)をサンプリングし、以下のHPLC条件(絶対検量線法)で分析したところ(R)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸の収率は97.0%(純分換算)であった。また、反応液をサンプリング、エバポレーターで濃縮後、残液0.1gあたりクロロホルム2ml、1N硫酸1ml、無水硫酸ナトリウム0.5gを加え、良く振り混ぜた後、クロロホルム層をGCで分析したところ、化学純度95.2%、チオカルボン酸:カルボン酸=97.5:2.5(面積比)であった。反応液21.2gを濾過し、得られた結晶を少量の2−プロパノールでリンスし、乾燥したところ、2.8gの塩が得られた。この塩0.8gを計り取り、クロロホルム2ml、1N硫酸1ml、無水硫酸ナトリウム0.5gを加え、良く振り混ぜた後、クロロホルム層をGCで分析したところ、化学純度99.4%、 チオカルボン酸:カルボン酸=99.4:0.6であった。
【0056】
比較例1(テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸の製造)
メカニカルスターラー、滴下ロート、温度計、バブラーに繋いだ窒素導入管を付けた300ml四口フラスコに、水硫化ナトリウム・2水和物22.1g(0.24モル)とエタノール(99.5%)100gを仕込んだ。65℃に加熱し、水硫化ナトリウムを一旦ほぼ溶解させた後、氷-食塩浴で冷却し、内温を−5℃にした。内温が5℃を越えないように参考例1で得られた(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸クロリド14.7g(化学純度87.8wt%、純分換算12.91g、0.096モル)を1時間かけて攪拌下、滴下した。スラリー状態の反応混合物を氷冷下で1時間、20℃で2時間攪拌を続けた。その後、減圧(約13KPa)下で1時間脱気した。反応液をサンプリングし、実施例1と同様の条件で分析したところ(R)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸の収率は87.5%(純分換算)であった。また、チオカルボン酸:カルボン酸=94.7:5.3(面積比)であった。
【0057】
比較例2(テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸の製造)
メカニカルスターラー、滴下ロート、温度計、バブラーに繋いだ窒素導入管を付けた300ml四口フラスコに、水硫化ナトリウム・2水和物13.8g(0.15モル)と水100gを仕込み、水硫化ナトリウムを溶解させた後、氷浴で冷却し、内温を5℃にした。内温が10℃を越えないように参考例1で得られた(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸クロリド13.3g(化学純度87.8wt%、純分換算11.85g、0.088モル)を1時間かけて攪拌下、滴下した。反応混合物を氷冷下で1時間、20℃で2時間攪拌を続けた。反応液をサンプリングし、実施例1と同様の条件で分析したところ(R)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸の収率は85.0%(純分換算)であった。また、チオカルボン酸:カルボン酸=94.5:5.5(面積比)であった。
【0058】
比較例3(テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸の製造)
溶媒をジメチルホルムアミドに変え、他は比較例1と同様な操作を行った。
(R)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸の収率47%、チオカルボン酸:カルボン酸=83.9:16.1であった。
【0059】
実施例2(チオ安息香酸の製造)
メカニカルスターラー、滴下ロート、温度計、バブラーに繋いだ窒素導入管を付けた300ml四口フラスコに、水硫化ナトリウム・2水和物13.8g(0.15モル)と2−プロパノール80g、トリエチルアミン10.1g(0.1モル)を仕込んだ。65℃に加熱し、水硫化ナトリウムを一旦ほぼ溶解させた。氷-食塩浴で冷却し、内温を−5℃にした。内温が5℃を越えないように安息香酸クロリド14.1g(0.10モル)を1時間かけて攪拌下、滴下した。スラリー状態の反応混合物を氷冷下で1時間、20℃で2時間攪拌を続けた。その後、減圧(約13KPa)下で1時間脱気した。反応液をサンプリングし、以下のHPLC条件(絶対検量線法)で分析したところチオ安息香酸の収率は91.5%であった。実施例1と同様のHPLC条件で分析したところ、チオ安息香酸:安息香酸=97.6:2.4(重量比)であった。
(HPLC分析条件)チオ安息香酸の定量
装置 Waters510-484-741システム
カラム Shiseido CAPCELL PAK C18
移動相 水−アセトニトリル(体積比50:50)リン酸添加
検出器(UV) 210nm。
【0060】
比較例4(チオ安息香酸の製造)
メカニカルスターラー、滴下ロート、温度計、バブラーに繋いだ窒素導入管を付けた300ml四口フラスコに、水硫化ナトリウム・2水和物27.6g(0.30モル)と90%エタノール100mlを仕込み、加熱し、水硫化ナトリウムを一旦ほぼ溶解させた後、氷-食塩浴で冷却し、内温を−5℃にした。内温が5℃を越えないように安息香酸クロリド14.1g(0.10モル)を1時間かけて攪拌下、滴下した。スラリー状態の反応混合物を氷冷下で1時間、20℃で2時間攪拌を続けた。その後、減圧(約13KPa)下で1時間脱気した。反応液をサンプリングし、実施例2と同様の条件で分析したところチオ安息香酸の収率は80.6%、チオ安息香酸:安息香酸=89.2:10.8(重量比)であった。
【0061】
実施例3(チオ酢酸の製造)
メカニカルスターラー、滴下ロート、温度計、バブラーに繋いだ窒素導入管を付けた300ml四口フラスコに、水硫化ナトリウム・2水和物13.8g(0.15モル)と2−プロパノール80g、トリエチルアミン10.1g(0.1モル)を仕込んだ。65℃に加熱し、水硫化ナトリウムを一旦ほぼ溶解させた。氷-食塩浴で冷却し、内温を−5℃にした。内温が5℃を越えないように塩化アセチル7.85g(0.10モル)を1時間かけて攪拌下、滴下した。スラリー状態の反応混合物を氷冷下で1時間、20℃で2時間攪拌を続けた。その後、減圧(約13KPa)下で1時間脱気した。反応液を約1gサンプリングし、塩化メチレン5ml(内部標準ヘキサデカン100.0mgを含む)、18%塩酸2ml、硫酸ナトリウム1.0gを加え、良く振り混ぜた後、塩化メチレン層を以下のGC条件で分析(内部標準法)したところ、チオ酢酸の収率は87.0%、チオ酢酸:酢酸=98.5:1.5(面積比)であった。
【0062】
比較例5(チオ酢酸の製造)
メカニカルスターラー、滴下ロート、温度計、バブラーに繋いだ窒素導入管を付けた300ml四口フラスコに、水硫化ナトリウム・2水和物27.6g(0.30モル)と90%エタノール150mlを仕込み、、水硫化ナトリウムをほぼ溶解させた後、氷-食塩浴で冷却し、内温を−5℃にした。内温が5℃を越えないようにを塩化アセチル11.0g(0.14モル)を1時間かけて攪拌下、滴下した。スラリー状態の反応混合物を氷冷下で1時間、20℃で2時間攪拌を続けた。その後、減圧(約13KPa)下で1時間脱気した。実施例3と同様の条件で分析したところチオ酢酸の収率は80.1%、チオ酢酸:酢酸=95.9:4.1(面積比)であった。
【0063】
実施例4(テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸の抽出)
テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸(THFT)、テトラヒドロフラン−2−カルボン酸(THFC)各々約100mgを10mlのスクリュー栓付きサンプル瓶に計り取り、トルエン3ml、1N塩酸3mlを加え、1分間激しく振り混ぜた。静置後、分離したトルエン相、水相から各々2mlを分け取り、実施例1と同一のHPLC条件にて分析し、分配比を出した。以下同様に、溶媒を、ヘキサン、シクロヘキサン、トリクレン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン(MIBK)と変え、分配比を求めた。結果を表1に示す。
【0064】
実施例5(チオ安息香酸の抽出)
チオ安息香酸、安息香酸各々約100mgを10mlのスクリュー栓付きサンプル瓶に計り取り、シクロヘキサン3ml、1N塩酸3mlを加え、1分間激しく振り混ぜた。静置後、分離したシクロヘキサン相、水相から各々2mlを分け取り、実施例2と同一のHPLC条件にて分析し、分配比を出した。以下同様に、溶媒を、酢酸エチルに変え、分配比を求めた。結果を表2に示す。
【0065】
実施例6(チオ酢酸の抽出)
チオ酢酸、酢酸各々約100mgを10mlのスクリュー栓付きサンプル瓶に計り取り、ベンゼン3ml、1N塩酸3mlを加え、1分間激しく振り混ぜた。静置後、分離したベンゼン相、水相を分け取り、実施例3と同一のGC条件にて分析し、分配比を出した。以下同様に、溶媒を塩化メチレンに変え、分配比を求めた。結果を表3に示す。
【0066】
実施例7(テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸の抽出)
実施例1で得られた反応スラリーの中から89.02gを抜き出し、エバポレーターで濃縮し、27.30gの半固体を得た。この半固体を水75.4gで溶解し、pHを測定したところ、8.5であった。その中から30.0gを取りだし、18%塩酸でpHを5に調整し、トルエン20mlで2回抽出した。さらに抽出残の水相を18%塩酸でpH1に調整し、トルエン20mlで2回抽出した。
このトルエン抽出液を分析したところ、(R)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸の回収率は91%(HPLC絶対検量線法)、化学純度は99.4%(GC面積比)、1%(面積比)以上の不純物は0個、0.1%(面積比)以上の不純物は2個、0.05%(面積比)以上の不純物は5個であった。
【0067】
比較例6(テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸の抽出)
実施例7と同様に30gの溶解液を、前抽出することなく、18%塩酸でpH1に調整し、トルエン20mlで2回抽出した。このトルエン抽出液を分析したところ、(R)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸の回収率は91%(HPLC絶対検量線法)、化学純度は95.2%(GC面積比)、1%(面積比)以上の不純物は1個、0.1%(面積比)以上の不純物は4個、0.05%(面積比)以上の不純物は13個であった。
【0068】
比較例7(テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸の抽出)
比較例6と同様に30gの溶解液を、そのまま、トルエン20mlで2回抽出した。さらに抽出残の水相を18%塩酸でpH1に調整し、トルエン20mlで2回抽出した。このトルエン抽出液を分析したところ、(R)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸の回収率は91%(HPLC絶対検量線法)、化学純度は99.1%(GC面積比)、1%(面積比)以上の不純物は0個、0.1%(面積比)以上の不純物は2個、0.05%(面積比)以上の不純物は7個であった。
【0069】
実施例8(テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸の製造)
メカニカルスターラー、滴下ロート、温度計、バブラーに繋いだ窒素導入管を付けた1000ml四口フラスコに、水硫化ナトリウム・2水和物69.1g(0.75モル)と2−プロパノール400gを仕込んだ。65℃に加熱し、水硫化ナトリウムを一旦ほぼ溶解させた。50℃まで冷却し、トリエチルアミン50.8g(0.5モル)を加え、さらに氷-食塩浴で冷却し、内温を−5℃にした。内温が5℃を越えないように参考例1で得られた(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸クロリド73.8g(化学純度87.8wt%、純分換算64.80g、0.482モル、光学純度99.3%)を1時間かけて攪拌下、滴下した。スラリー状態の反応混合物を氷冷下で1時間、20℃で2時間攪拌を続けた。反応中ほとんどガスの発生はなく、硫化水素特有の腐乱臭はなかった。その後、滴下ロートを分留頭に付け替え減圧(約13KPa)下で脱気・加熱し、2−プロパノール、トリエチルアミンの混合物363gを蒸留にて回収した。残渣に水250gを加え、18%塩酸でpH5に調整し、トルエン100gにて2回抽出した。抽出残液をさらに18%塩酸でpH1に調整し、トルエン100gで2回抽出し、トルエン抽出液264.1gを得た。HPLC(絶対検量線法)で分析したところ、抽出液には60.8g(0.460モル、純分換算収率95.4%)の(R)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸が含まれていた。また、GCによる分析ではチオカルボン酸:カルボン酸=99.5:0.5であった。
【0070】
実施例9(テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸の製造)
メカニカルスターラー、滴下ロート、温度計、バブラーに繋いだ窒素導入管を付けた1000ml四口フラスコに、水硫化ナトリウム・2水和物65.15g(0.708モル)と2−プロパノール300gを仕込んだ。65℃に加熱し、水硫化ナトリウムを一旦ほぼ溶解させた。室温まで冷却し、炭酸ナトリウム65.10g(0.614モル)を加え、さらに氷冷し、内温を5℃以下にした。内温が10℃を越えないように参考例1で得られた(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸クロリド69.13g(化学純度87.8wt%、純分換算60.70g、0.451モル)を1時間かけて攪拌下、滴下した。スラリー状態の反応混合物を氷冷下で1時間、20℃で2時間攪拌を続けた。反応中ほとんどガスの発生はなく、硫化水素特有の腐乱臭はなかった。その後、滴下ロートを分留頭に付け替え減圧(約13KPa)下で加熱し、2−プロパノール200gを蒸留にて回収した。残渣に水100gを加え、10%塩酸でpH5に調整し、酢酸エチル100mlにて2回抽出した。抽出残液をさらに10%塩酸でpH1に調整し、酢酸エチル100mlで2回抽出した。抽出液を分析したところ、(R)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸が55.37g(0.419モル、純分換算収率92.9%)生成していた。チオカルボン酸:カルボン酸=98.7:1.3であった。
【0071】
実施例10(チオ安息香酸の抽出)
比較例4で得られた反応液121.2g(チオ安息香酸15.71gを含む、チオ安息香酸:安息香酸=89.2:10.8(重量比))を減圧(約13KPa)下で濃縮し、残渣に水100mlを加え、18%塩酸でpH5に調整し、シクロヘキサン50mlにて2回抽出した。抽出残液をさらに18%塩酸でpH1に調整し、シクロヘキサン50mlで3回抽出した。抽出液をHPLC(絶対検量線法)で分析したところ、チオ安息香酸15.59gを含んでいた(回収率99.2%)。また、チオ安息香酸:安息香酸=98.6:1.4(重量比)であった。
【0072】
実施例11(チオ酢酸の抽出)
比較例5で得られた反応液96.8g(チオ酢酸8.44gを含む、チオ酢酸:酢酸=95.9:4.1(面積比)を減圧(約13KPa)下で濃縮し、残渣に水50mlを加え、18%塩酸でpH5に調整し、ベンゼン50mlにて2回抽出した。抽出残液をさらに18%塩酸でpH1に調整し、ベンゼン50mlで3回抽出した。抽出液をGC(内部標準法)で分析したところ、チオ酢酸7.90gを含んでいた(回収率93.6%)。また、チオ酢酸:酢酸=99.6:0.4(面積比)であった。
【0073】
実施例12(テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸の晶析)
実施例8で得られた(R)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸60.8gを含むトルエン溶液264g(チオカルボン酸:カルボン酸=99.5:0.5)を氷−食塩浴で内温が−10℃に冷却し、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液88.0gを内温が0℃を越えないように30分かけて滴下した。0℃で30分、20℃で30分攪拌した後、17kPaの減圧下メタノール/トルエンの混合物77gを留去した。残ったスラリーにトルエン40gを添加した後、結晶を濾別、リンス後、乾燥し、(R)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸ナトリウム68.0gを得た。サンプル0.8gを計り取り、クロロホルム2ml、1N硫酸1ml、無水硫酸ナトリウム0.5gを加え、良く振り混ぜた後、クロロホルム層をGCで分析したところ、化学純度99.6%、 チオカルボン酸:カルボン酸=99.7:0.3であった。光学純度はメチルエステル化後(実施例17参照)、以下の条件で分析したところ、99.9%eeであった。
【0074】
実施例13(テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸の晶析)
粗テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸10.0g(化学純度96.9%、チオカルボン酸:カルボン酸=97.3:2.7)を2−プロパノール40.0gに溶解し、氷−食塩浴で冷却した。内温が0℃以下になっているのを確認し、ナトリウムメトキシド(粉末)4.10gを内温が0℃を越えないように30分にわたり、少量づつ添加した。氷冷下で30分、室温で30分攪拌した後、濾過し、2−プロパノール5gで2回リンスした。乾燥後、10.6gのテトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸ナトリウムを得た。同様に分析したところ、化学純度98.8%、チオカルボン酸:カルボン酸=98.9:1.1(面積比)であった。
【0075】
実施例14(テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸の晶析)
粗(R)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸(化学純度98.1%、光学純度94.1%ee、チオカルボン酸:カルボン酸=98.3:1.7)13.23gを2−プロパノール30gに溶解し、氷冷下、ナトリウムメトキシド5.40g(0.1モル)と2−プロパノール80gのスラリーを添加した。氷冷下で0.5時間、20℃で1時間攪拌を続けた。析出した結晶を濾別、乾燥し、(R)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸ナトリウム13.11gを得た。同様に分析したところ、化学純度98.9%、 チオカルボン酸:カルボン酸=98.9:1.1であった。光学純度は98.9%eeであった。
【0076】
実施例15(テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸の晶析)
粗テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸(化学純度98.1%、 チオカルボン酸:カルボン酸=98.3:1.7)6.61gを2−プロパノール50gに溶解し、氷冷下酢酸ナトリウム4.10g(0.05モル)の水8.2g溶液を5分間で添加した。氷冷下で0.5時間、20℃で1時間攪拌を続けた。反応液をエバポレータで濃縮し、析出した結晶を濾別、乾燥し、テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸ナトリウム4.52gを得た。同様に分析したところ、化学純度99.0%、 チオカルボン酸:カルボン酸=99.0:1.0であった。
【0077】
実施例16(チオ酢酸の晶析)
粗チオ酢酸(化学純度97.4%、 チオ酢酸:酢酸=97.7:2.3)
10.0gをベンゼン50gに溶解し、氷冷下、ナトリウムメトキシド6.75g(0.125モル)と2−プロパノール60gのスラリーを添加した。
氷冷下で0.5時間、20℃で1時間攪拌を続けた。エバポレーターで濃縮し、スラリー状態で析出した結晶を濾別、乾燥し、チオ酢酸ナトリウム8.65gを得た。サンプル0.5gを計り取り、塩化メチレン2ml、1N硫酸1ml、無水硫酸ナトリウム0.5gを加え、良く振り混ぜた後、塩化メチレン層をGCで分析したところ、化学純度98.7%、 チオ酢酸:酢酸=98.7:1.3であった。
【0078】
実施例17(テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸メチルの製造)
10mlのナス型フラスコに(R)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸ナトリウム210mg(1.36ミリモル)を入れ、アセトニトリル3mlとヨウ化メチル1ml(2.280g、16ミリモル)を加え、室温にて1時間攪拌した。ほぼ均一になった溶液を濃縮し、残渣をクロロホルム10mlに溶解し、不溶物を濾別後、濾液を再び濃縮し、(R)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸メチル154mg(1.05ミリモル)を得た。
【0079】
実施例18(テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸メチルの製造)
実施例17と同様な操作で、(RS)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸ナトリウム20mg(0.13ミリモル)と、アセトニトリル1ml、ヨウ化メチル0.5ml(1.140g、8ミリモル)から(RS)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸メチルを得た。メチルエステル10mgを10mlの下記HPLC溶離液に溶解し、実施例12記載の条件で分析したところ、(R)体、(S)体の保持時間は各々14.0分、9.8分であった。分離係数α=1.62、分離度Rs=2.8で分離は良好に行われている。
【0080】
実施例19(テトラヒドロフラン-2-チオカルボン酸イソプロピルの製造)
25mlのナス型フラスコに(RS)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸ナトリウム308mg(2.0ミリモル)を入れ、アセトニトリル5mlとヨウ化イソプロピル2ml(3.41g、20ミリモル)を加え、50℃にて30分攪拌した。ほぼ均一になった溶液を濃縮し、残渣をヘキサン:2−プロパノール=1000:5混合液10mlに溶解し、不溶物を濾別後、濾液を再び濃縮し、(RS)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸イソプロピル282mg(1.62ミリモル)を得た。
【0081】
実施例20(テトラヒドロフラン-2-チオカルボン酸イソプロピルの製造)
実施例19と同様な操作で、(R)−テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸ナトリウム25mg(0.16ミリモル)と、アセトニトリル2ml、ヨウ化イソプロピル0.5ml(0.852g、5ミリモル)から(R)−テトラヒドフラン−2−チオカルボン酸イソプロピルを得た。イソプロピルエステル約20mgを10mlの下記HPLC溶離液に溶解し、以下の条件で分析したところ、(R)体、(S)体の保持時間は各々21.8分、12.2分であった。分離係数α=2.07、分離度Rs=2.90で分離は良好に行われている。
【0082】
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【発明の効果】
本発明の製造法によれば、環境に対する影響も少なく、簡便な装置、操作により、効率よく高純度チオカルボン酸またはその塩が得られる。また、テトラヒドロフランチオカルボン酸の光学純度を簡単にしかも精度良く知ることができる。
Claims (20)
- テトラヒドロフランチオカルボン酸、チオ安息香酸、チオ酢酸から選択される少なくとも一つのチオカルボン酸またはその塩の製造法であって、塩基の存在下、酸ハロゲン化物または酸無水物と硫化水素の金属塩とを反応させ、反応後、pH4〜6で副生物を分離する工程を含むことを特徴とするチオカルボン酸またはその塩の製造法。
- 塩基がアミンまたは無機化合物である請求項1記載のチオカルボン酸またはその塩の製造法。
- 硫化水素の金属塩が水硫化塩である請求項1または2に記載のチオカルボン酸またはその塩の製造法。
- 反応をアルコール溶媒中で行う請求項1〜3のいずれか1項記載のチオカルボン酸またはその塩の製造法。
- アルコールの炭素数が3〜10である請求項4記載のチオカルボン酸またはその塩の製造法。
- チオカルボン酸、当該チオカルボン酸に対応するカルボン酸および水の混合物に、20℃における比誘電率が4.0以下である有機溶媒を加え、チオカルボン酸を選択的に有機溶媒中に抽出する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の製造法。
- 酸析後、20℃における比誘電率が4.0以下である有機溶媒を加え、前記反応により生成したチオカルボン酸を選択的に有機溶媒中に抽出する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の製造法。
- 有機溶媒が炭化水素またはハロゲン化炭化水素である請求項6または7に記載の製造法。
- 有機溶媒がシクロヘキサン、トルエンまたはトリクロロエチレンである請求項6または7に記載の製造法。
- チオカルボン酸に塩基を加え、晶析する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載のチオカルボン酸またはその塩の製造法。
- 酸析後、20℃における比誘電率が4.0以下である有機溶媒で抽出したチオカルボン酸に前記の塩基と同一または異なる塩基を加え、晶析する工程をさらに含むことを特徴とする請求項7〜10のいずれか記載のチオカルボン酸またはその塩の製造法。
- 晶析した塩を分離する工程をさらに含むことを特徴とする請求項10または11記載のチオカルボン酸またはその塩の製造法。
- アルコールを含む溶媒中で晶析を行う請求項10〜12のいずれか1項に記載のチオカルボン酸またはその塩の製造法。
- アルコールが炭素数1〜5のものである請求項13記載のチオカルボン酸またはその塩の製造法。
- 晶析に際して加える塩基が炭素数1〜7のカルボン酸の金属塩または炭素数1〜7のアルコキシドである請求項10〜14のいずれか記載のチオカルボン酸またはその塩の製造法。
- 晶析に際して加える塩基がメトキシドである請求項15記載のチオカルボン酸またはその塩の製造法。
- チオカルボン酸の骨格がアルキル基または飽和ヘテロ環基である請求項1〜16のいずれか1項に記載の製造法。
- チオカルボン酸がテトラヒドロフランチオカルボン酸である請求項1〜17のいずれか1項に記載の製造法。
- テトラヒドロフランチオカルボン酸がテトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸である請求項18記載の製造法。
- テトラヒドロフラン−2−チオカルボン酸が光学活性体である請求項19記載の製造法。
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