JP4230046B2 - 紫外線及び/又は赤外線遮蔽性塗料組成物、及びフィルム - Google Patents

紫外線及び/又は赤外線遮蔽性塗料組成物、及びフィルム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外線及び/又は赤外線遮蔽性塗料組成物、及び透明基材上にこの組成物の塗膜が設けられた紫外線及び/又は赤外線遮蔽フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
窓などから入射する太陽光には、可視光以外に紫外線や赤外線が含まれている。
紫外線はその波長により、UV-A(320〜400nm)、UV-B(290〜320nm)、UV-C(180〜290nm)に分類され、人体に対して以下のような影響を及ぼす。UV-Aは、皮膚透過量が多くなると肌の色が黒くなるサンタンを起こし、繰り返し被爆すれば真皮内に到達し皮膚の老化の原因になる。UV-Bは、UV-Aに比べて皮膚の深部まで入り込まないが、真皮血管を拡張させ肌に赤みを帯びさせ、その後は水泡を生じサンバーンと呼ばれる日焼けを起こし、より深部まで到達すると、細胞核中のDNAを損傷し皮膚癌の原因となる。UV-Cは、生物を死滅させるほど有害であるが地球には到達しない。また、これらの紫外線によって、食品が変質したり、衣服、カーテンなどが変色したり、有機樹脂のフィルム、パネル、成形品や有機樹脂複合材料が黄変したり、強度が劣化するといった悪影響を受ける。そのため、紫外線を遮蔽することは我々人間が日常生活を送る上で重要になる。
【0003】
赤外線は、紫外線と比較すると光エネルギーは1/10以下と小さいが、熱的作用が大きく、物質に吸収されると熱として放出され温度上昇を伴うという特徴がある。そのため、ビルの窓、家庭用の窓、自動車ガラスなどに赤外線遮蔽機能を持たせると、夏場は大幅な冷房用電力の低減効果、冬場は室内の保温効果が期待できるため、赤外線を遮蔽することは省エネの点からも大きな意味を持つ。
【0004】
そのため、可視光を十分に透過しながら紫外線や赤外線を遮蔽するフィルムをガラスに貼り付け、紫外線や赤外線の入射を防ぐという方法が従来より考えられてきた。(「可視光を十分に透過する」ことについての明確な定義はないが、自動車のフロントガラスは可視光透過率が70%以上必要であるということから、波長500nm 及び700nm の光透過率が70%以上であれば可視光を十分に透過すると考える。)
【0005】
例えば、▲1▼紫外線や赤外線を遮蔽する材料を透明なフィルムに塗布する、▲2▼透明なフィルム表面に紫外線や赤外線を遮蔽する機能を持つ物質の薄膜を真空蒸着あるいはスパッタリングで形成するという方法である。しかし、▲2▼の方法は高価な装置が必要で工程も複雑であり、また、金属薄膜を形成する場合は基板フィルムの透明性を犠牲にしてしまうという問題があるため、主として▲1▼の方法が考えられてきた。例えば、特開昭58−117228号公報、特開昭63−281837号公報、特開平3−143965号公報、特開平4−152131号公報、特開平5−301312号公報、特開平6−262717号公報、特開平7−70363号公報等に記載の如くである。
【0006】
紫外線については、これを遮蔽する材料として、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸系などの有機系紫外線吸収剤や、TiO2 、ZnOなどの無機系紫外線吸収剤があり、これらをバインダに分散させた塗料を透明なフィルムに塗布したり、粘着剤に混ぜて塗布するのが一般的である。しかし、有機系紫外線吸収剤は、バインダや粘着剤への溶解度があまり高くなく配合量を大きくできないため、十分に紫外線を遮蔽するためには塗膜厚を厚くしなければならない。また、有機系材料自体が紫外線により分解、劣化したり、塗膜からブリードアウトして効果がなくなるなど紫外線遮蔽効果の耐久性に乏しいという欠点がある。これに対して、無機系材料は劣化することがほとんどなく、紫外線遮蔽性が長期間維持されるという特徴がある。
【0007】
無機系紫外線吸収剤のうち、TiO2 の場合、粒径が大きいと可視光の透過性が悪いほか、紫外線の吸収がシャープでないため、吸収域が可視光域に入ってしまい黄色味を帯びてしまう等の問題がある。そのため、平均粒子径0.1μm以下の微粒子にすることが検討されたが、透明性が悪いという問題は解決されていない。
【0008】
これに対して、ZnOは吸収端が380nm付近にあり、TiO2 と比較して紫外線の吸収がシャープであり、広い領域で紫外線を吸収することができるが、TiO2 と同様に粒径が大きいと可視光の透過性が悪くなる。しかし、ZnOは屈折率が1.9 付近にあり、TiO2 の2.3 〜2.7 と比較して低いため透過光の拡散が抑えられるので、平均粒子径0.1μm以下の微粒子にし、バインダによる分散性を良くして粒子同士の凝集が起こらないようにすれば、TiO2 と比較して透明性の優れた塗膜が得られる可能性がある。これは、▲1▼平均粒子径を可視光の波長以下にすると、光の共鳴吸収が見られなくなる、▲2▼粒子同士を凝集させなければ、各結晶粒子の境界面での乱反射や光の吸収がなくなる、と考えられるからである。
【0009】
以上のことより、透明性が良く、紫外線遮蔽効果の耐久性に優れた塗膜用に使用される材料として、現状では微粒子ZnOが最も可能性が高いと考えられる。しかしながら、従来知られているバインダでは、ZnO粒子同士を凝集させることなく均一に分散することは困難であるというのが現状である。
【0010】
一方、赤外線については、これを遮蔽する材料として、フタロシアニン系、アントラキノン系、シアニン系、アゾ系などの有機色素型や、ジチオール系、メルカプトナフトール系などの有機金属錯塩や、錫ドープ酸化インジウム(以下、ITOと略記する。)、アンチモンドープ酸化錫(以下、ATOと略記する。)のような無機材料があり、これらをバインダに分散させた塗料を透明なフィルムに塗布するのが一般的である。しかし、有機色素や有機金属錯塩の場合、可視光領域の光透過率が低く、暗褐色から暗青色の濃厚な着色をしており、また、700〜1000nm程度の限られた近赤外線領域の吸収材料であるため、これらを窓ガラスに利用した場合、室内外の視認性が悪く、色調から受ける美観性が劣り、室内の冷暖房効果が不十分という問題がある。また、上記有機系材料を用いた赤外線遮蔽層は赤外線遮蔽効果の耐久性が劣るという問題もある。これに対して、ITOやATOのような無機材料の場合は、材料の平均粒子径を0.1μm以下に小さくし、均一に分散しなければ可視光に対して透明にはならないという問題はあるものの、赤外線遮蔽効果の耐久性は優れている。
【0011】
以上のことより、透明性が良く、赤外線遮蔽効果の耐久性に優れた塗膜用に使用される材料として、現状ではITOやATOのような無機材料が最も可能性が高いと考えられる。しかしながら、上記ZnO粒子の場合と同様に従来知られているバインダでは、これらの粒子同士を凝集させることなく均一に分散することは困難であるというのが現状である。
【0012】
また、特開平9−156025号公報によれば、ATO微粒子を分散剤を用いて分散させることが記載されている。しかしながら、分散性は向上するものの、経時によって分散剤自体がブリードアウトしてしまい塗膜が劣化するという問題がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、分散剤等の添加剤を用いることなく、ZnO粒子、ITO粒子及びATO粒子から選ばれる無機系粒子が均一に分散された紫外線及び/又は赤外線遮蔽性塗料組成物を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、この塗料組成物の塗膜が透明基材上に設けられ、透明性、耐久性に優れる紫外線及び/又は赤外線遮蔽フィルムを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は検討を重ねた結果、バインダ樹脂として、特定量のジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレートモノマーから得られるアクリル系共重合体を用いることによって、分散剤を使用しなくても、平均粒子径0.1μm以下のZnO粒子、ITO粒子及びATO粒子から選ばれる無機系粒子が均一に分散された組成物が得られること、そして、その組成物を透明フィルム上に塗布することによって、透明性の高い紫外線及び/又は赤外線遮蔽フィルムが得られることを見出し、本発明に到達したものである。
【0015】
すなわち、本発明の紫外線及び/又は赤外線遮蔽性塗料組成物は、平均粒子径0.1μm以下の無機系紫外線吸収性粒子及び/又は平均粒子径0.1μm以下の無機系赤外線吸収性粒子が、バインダ樹脂に分散された紫外線及び/又は赤外線遮蔽性組成物であって、 前記無機系紫外線吸収性粒子が酸化亜鉛粒子であり、
前記無機系赤外線吸収性粒子がアンチモンドープ酸化錫粒子及び/又は錫ドープ酸化インジウム粒子であり、
前記バインダ樹脂のうちの少なくとも30重量%は、
ジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a)1.8〜12重量%と、
前記モノマー(a)以外の(メタ)アクリレート系モノマー(b)48.2〜98.2重量%と、
記(メタ)アクリレート系モノマー(a)及び(b)と共重合可能なビニル系モノマー(c)0〜50重量%とが共重合されたアクリル系樹脂により構成されており、
前記無機系紫外線吸収性粒子及び/又は前記無機系赤外線吸収性粒子と、前記バインダ樹脂との配合割合は、前記両無機系粒子の総重量をP、前記バインダ樹脂の固形分の総重量をBとして、P/B=1/1〜6/1の範囲であることを特徴とする。
【0016】
本発明において、前記アクリル系樹脂は、ガラス転移温度Tgが0℃以上40℃以下であり、かつ重量平均分子量Mwが70000以上150000以下であることが好ましい。
また、本発明において、バインダ樹脂のうちの少なくとも50重量%が、前記アクリル系樹脂により構成されていることが好ましい。
【0017】
また、本発明の紫外線及び/又は赤外線遮蔽フィルムは、透明基材上に、上記紫外線及び/又は赤外線遮蔽性塗料組成物の塗膜からなる紫外線及び/又は赤外線遮蔽層が設けられていることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
まず、本発明で用いる無機系紫外線吸収性粒子について説明する。無機系紫外線吸収性粒子としては、上述したように透明性に優れることからZnO粒子を用いる。また、透明性を確保するために、粒子の平均粒子径は0.1μm以下であることが必要であり、平均粒子径が0.05μm以下であることがより好ましい。
【0019】
ZnO粒子は公知の方法により製造することができる。例えば、亜鉛のアルコキシドを加水分解する方法、酸性亜鉛塩に炭酸ソーダを添加した後加熱分解する方法、金属亜鉛、酸化亜鉛とモノカルボン酸とを少なくともアルコールからなる溶媒中に溶解又は分散してなる混合物(微量の他元素を添加することもある。)を100℃以上の温度に保持する方法などで製造される。
【0020】
本発明で用いる無機系赤外線吸収性粒子について説明する。無機系赤外線吸収性粒子としては、上述したように透明性、耐久性に優れることから、ITO粒子、及び/又はATO粒子を用いる。また、透明性を確保するために、粒子の平均粒子径は0.1μm以下であることが必要であり、平均粒子径が0.05μm以下であることがより好ましい。
【0021】
ITO粒子は公知の方法により、例えば一般に、Inと少量のSnの塩を含む水溶液をアルカリと反応させてInとSnの水酸化物を共沈させ、不要な塩を除いた後、大気中で加熱焼成して酸化物にすることによって製造される。(この方法において、さらに不活性ガス中で加圧、熱処理することもある。) また、共沈物の替わりにInとSnの水酸化物や酸化物又はこれらの混合物を用いることもある。本発明で使用されるITOは上記の方法で製造された粒子であってもよいし、又は導電性粉末として市販されている粒子でも特に問題はない。なお、ITO中のSnドープ量は、Sn/(Sn+In)のモル比で0.05〜0.15であることが好ましい。
【0022】
ATO粒子もITO粒子と同様に、共沈法で製造されるのが一般的である。例えば、SnとSbの塩を溶解した液にアルカリを加えてSnとSbの水酸化物混合物を析出させ、不要な塩を除いた後、大気中で加熱焼成する方法で製造される。なお、Sbドープ量は、Sb/(Sn+Sb)のモル比で0.05〜0.2であることが好ましい。
【0023】
次に、本発明で用いる特徴的なアクリル系バインダ樹脂について説明する。
この特徴的アクリル系バインダ樹脂は、ジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a)1.8〜12重量%と、前記モノマー(a)以外の(メタ)アクリレート系モノマー(b)48.2〜98.2重量%と、必要に応じて、前記(メタ)アクリレート系モノマー(a)及び(b)と共重合可能なビニル系モノマー(c)0〜50重量%とが共重合されたものである。このアクリル系バインダ樹脂を使用することにより、ZnO粒子、ITO粒子、ATO粒子を凝集させることなく均一に分散することができる。
【0024】
ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレートモノマー(a)におけるジアルキルアミノ基としては、炭素数1〜8程度、好ましくは1〜6程度の低級アルキル基を有するジ(低級アルキル)アミノ基が挙げられる。例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジヘキシルアミノ、メチルエチルアミノ基等が挙げられる。また、アルキル基同士で環状構造を形成したピペリジン基が挙げられる。従って、ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレートモノマー(a)としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
これらモノマー(a)のうち、好ましいものとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、1種単独で使用、又は2種以上を併用してもよい。
【0026】
特徴的アクリル系バインダ樹脂におけるジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレートモノマー(a)の構成割合は、1.8〜12重量%である。モノマー(a)の構成割合が1.8重量%未満であると、ZnO、ITO、ATO粒子を凝集させることなく分散することができない。一方、モノマー(a)が12重量%を超えると、空気中の水分とバインダが反応して塗料が凝集してしまい、塗膜の透明性が低下してしまう。好ましいモノマー(a)の構成割合は、1.9〜10重量%であり、より好ましくは2.0〜10重量%である。
【0027】
(メタ)アクリレート系モノマー(b)は、前記モノマー(a)以外の(メタ)アクリレート系モノマー(b)であり、48.2〜98.2重量%の構成割合で用いる。
【0028】
このような(メタ)アクリレート系モノマー(b)としては、アルキル基の炭素数が1〜12、好ましくは1〜8のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。より具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、カルボキシエチル(メタ)アクリレートやヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの置換アルキル(メタ)アクリレートも挙げられる。
【0029】
これらのうち、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が入手容易である点、他のビニル系モノマーとの共重合性が良好である点から好ましい。
【0030】
ガラス転移温度Tgのより低いアクリル系共重合体を得る観点からは、メチルメタクリレート(MMA)等の高Tgの要因となるモノマーの共重合割合を小さくし、ブチルアクリレート(BA)、ラウリルアクリレート(LMA)、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)等の低Tgの要因となるモノマーの共重合割合を大きくすることが望ましい。
【0031】
また、これらのうちの1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用することによって、基材フィルムに対する密着性が良好になる場合が多い。この(メタ)アクリレート系モノマー(b)は、特徴的アクリル系共重合体の主たる構成成分である。
【0032】
ビニル系モノマー(c)は、必要に応じて用いるものであり、前記(メタ)アクリレート系モノマー(a)及び(b)と共重合可能なモノマーである。通常、50重量%までの構成割合、好ましくは30重量%までの構成割合で用いる。
【0033】
このようなビニル系モノマー(c)としては、スチレン又はα−メチルスチレン等のスチレン誘導体、アクリル酸、アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。また、これらのうちの1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。スチレン又はスチレン誘導体は、アクリル系共重合体の耐アルカリ性向上や親疎水性バランス調節、保存安定性向上の作用がある。
【0034】
ガラス転移温度Tgのより低いアクリル系共重合体を得る観点からは、ビニル系モノマー(c)のうちの高Tgの要因となるモノマーの共重合割合を小さくすることが望ましい。
【0035】
(メタ)アクリレートモノマー(a)及び(b)、及びビニル系モノマー(c)の共重合は、公知の方法によって行うことができる。例えば、これらモノマーを乳化剤存在下に乳化重合させる方法、懸濁重合法、溶液重合法等により共重合させて、特徴的アクリル系共重合体を得ることができる。
【0036】
本発明においては、この特徴的アクリル系共重合体をバインダ樹脂全体のうちの30重量%以上、好ましくは50重量%以上の量で用いる。30重量%未満の使用量であると、ZnO、ITO、ATO粒子の分散効果が小さい。もちろん、バインダ樹脂としてこの特徴的アクリル系共重合体のみを用いることも好ましい。この特徴的アクリル系共重合体は、透明被膜を形成すると共に基材フィルムに対して優れた密着性を有し、また、耐熱性、耐候性に優れるものである。
【0037】
本発明においては、前記アクリル系共重合体は、ガラス転移温度Tg≦40℃であり、かつ重量平均分子量Mw≧70000であることが、塗膜の柔軟性を向上させる観点から好ましい。例えば、0℃≦Tg≦40℃であり、かつ70000≦Mw≦150000のアクリル系共重合体が好ましい。
このようなTg及びMwを有するアクリル系共重合体を用いることにより、塗膜の柔軟性が向上し、塗膜が折り曲げられた際にもクラックが入ることが非常に少なくなる。
【0038】
本発明において、上記特徴的アクリル系共重合体と併用することのできる他のバインダ樹脂としては、特に限定されるものではなく、この特徴的アクリル系共重合体との相溶性に優れ、透明被膜形成性、基材フィルムに対する密着性、耐熱性、耐候性に優れるものであればよい。例えば、公知のアクリル系バインダ、ブチラール系バインダ、フッ素系バインダ、ポリエステル系バインダ、ビニール系バインダ、アルキド系バインダ、無機系バインダなどが挙げられる。
【0039】
これらバインダは、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エタノール、n−ブタノールなどのアルコール類、酢酸ブチルなどのエステル類、メチルエチルケトン(MEK)、MIBKなどのケトン類、エチルセルソルブなどのグリコールエーテル類、n−ヘキサン、リグロインなどの飽和炭化水素、若しくは水などに溶解して使用される。
【0040】
本発明の塗料組成物において、ZnO粒子、ITO粒子及びATO粒子から選ばれる無機粒子とバインダ樹脂との配合割合は、無機粒子の総重量をP、バインダ樹脂の固形分の総重量をBとして、P/B=1/1〜6/1の範囲である。P/Bが1/1より小さいと十分な紫外線遮蔽、赤外線遮蔽効果を得るためには塗膜の厚みを厚くせざる得ず、一方、6/1より大きいと分散性が低下し、基材ベースに対する接着性も悪くなる。
【0041】
また、塗料組成物中の全固形分の割合は10〜50重量%が好ましい。10重量%を下回ると、所定の厚みの塗膜を得るためには未乾燥状態での厚みを厚くしなければならないため、塗布時に膜厚の制御が困難になり、均質な膜が得られ難くなるおそれがある。一方、50重量%を上回ると、塗料の粘度が高くなるため薄膜塗布が難しくなり、また、均一塗布も難しくなる。
【0042】
本発明の塗料組成物は、ZnO粒子、ITO粒子及びATO粒子から選ばれる無機粒子とバインダ樹脂とを、適当な溶剤中に混合し、ボールミル、アトライタ、サンドグラインドミル、3本ロール、ジェットミル、ニーダー、ペイントシェーカー、ホモジナイザー、超音波分散機や、これらを組み合わせて使用して分散することにより得ることができる。
【0043】
本発明の紫外線及び/又は赤外線遮蔽フィルムは、上記塗料組成物を透明基材上に常法により塗布、乾燥して、紫外線及び/又は赤外線遮蔽層を形成することにより製造する。透明基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、セルロースアセテート等のフィルムを用いることができる。紫外線及び/又は赤外線遮蔽層の厚さは、フィルムの使用目的に応じて変化させればよいが、例えば、一般に0.5〜10μm程度、好ましくは1〜5μm程度である。この遮蔽層の厚さが増すほど、より高い紫外線及び/又は赤外線遮蔽効果が得られるが、可視光線の透過率は低下するので、フィルムの使用目的に応じて決定するとよい。塗料組成物の塗布は、例えば、ロールコート法、ダイコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、バーコート法により行うとよい。
【0044】
本発明のフィルムにおいては、紫外線及び/又は赤外線遮蔽層上に、さらに粘着剤層を設けることが好ましい。粘着剤層は、公知の透明な樹脂粘着剤を用いて形成される。例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルエーテル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール等の樹脂が挙げられる。また、粘着剤層の厚さは5〜30μmが好ましい。なお、粘着剤層の表面には剥離フィルムが必要になるが、剥離フィルムとしては例えばPETフィルムが用いられる。
【0045】
さらに、本発明のフィルムの使用目的によっては、耐キズ性を付与する目的で、透明基材の紫外線及び/又は赤外線遮蔽層とは反対側の面に、ハードコート層を設けてもよい。ハードコート層は膜硬度の高い透明な樹脂膜で形成されるが、例えば、アクリル樹脂、シリコン樹脂等が好ましく用いられる。ハードコート層の厚さは用途に応じて0.3〜10μmの範囲が好ましい。
【0046】
本発明の紫外線及び/又は赤外線遮蔽性塗料組成物によれば、バインダ樹脂として、特定量のジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレートを共重合成分として含むアクリル系共重合体を用いるので、分散剤を用いることなく、ZnO粒子、ITO粒子及びATO粒子から選ばれる無機系粒子が均一に分散される。
そして、この塗料組成物の塗膜が透明基材上に設けられた本発明の紫外線及び/又は赤外線遮蔽フィルムは、所望の紫外線及び/又は赤外線遮蔽効果が得られ、且つ透明性、耐久性に優れるものである。
【0047】
【実施例】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
なお、粒子の平均粒子径は、比表面積(BET値:m2 /g)の測定値から次の式に基づいて算出した。
平均粒子径d(μm)=6/(ρ×BET値)
ここで、ρ:真比重である。
このようにBET値から求めた平均粒子径は、TEM写真で観察した平均粒子径とほぼ一致することを確認している。
【0048】
[実施例1]
(バインダの調製)
メチルメタクリレート(MMA)60重量部、スチレン(St)30重量部、ブチルアクリレート(BA)10重量部、及びジメチルアミノエチルメタクリレート(DAM:CH2 =C(Me)COOC2 4 N(Me)2 :分子量157)5重量部をラジカル重合し、共重合成分の重量比が、MMA/St/BA/DAM=60/30/10/5であるアクリル系バインダ(Tg:80℃、Mw:45000)を得た。
【0049】
(塗料組成物の調製及びフィルムの作製)
平均粒子径0.03μmのZnO 6g、上記アクリル系バインダのトルエン溶液(固形分50重量%、トルエン50重量%)6g、MEK 8g、トルエン8g、シクロヘキサノン8g、及びジルコニアビーズ140gを80mlのガラス瓶に入れ、ペイントシェーカーで分散状態を確認しながら2時間分散を行ない、塗料組成物を得た。
【0050】
この塗料をワイヤーバーコートにより50μm厚のPETフィルム上に、乾燥膜厚が2.0μmになるように塗布、乾燥し、遮蔽層を形成した。
得られたフィルムの塗膜上に、粘着剤としてポリメチルメタクリレートを10μm厚で塗布し、これを3mm厚のガラス板に貼り付けて評価用サンプルとした。このサンプルの波長2500nmから300nmまでの領域の透過率を、分光光度計により測定した。そして、赤外線遮蔽率、可視光透過率、紫外線遮蔽率を以下のようにして評価し、表1にその結果を示した。( 以下の実施例、比較例についても結果を表1〜3に示した。)
【0051】
1.赤外線遮蔽率
{Σ(100−Xi)/λi}/{Σ100/λi}を赤外線遮蔽率とした。
ここで、Xi :波長λiでの透過率(%)
λi :波長(2500〜800nmの範囲で、50nm毎の波長)
【0052】
2.可視光透過率
代表的な波長として700nm、500nmの透過率で表わした。
3.紫外線遮蔽率
波長360nmの遮蔽率で表わした。
【0053】
[実施例2、3、4]
DAMの共重合量をそれぞれ2重量部(実施例2)、7重量部(実施例3)、10重量部(実施例4)とした以外は、実施例1と同様に行なった。
[実施例5、6]
乾燥膜厚がそれぞれ0.5μm(実施例5)、4.0μm(実施例6)となるように遮蔽層を形成した以外は、実施例1と同様に行なった。
【0054】
[比較例1]
DAMを共重合させなかった以外は、実施例1と同様に行なった。
[比較例2、3]
DAMの共重合量をそれぞれ1重量部(比較例2)、15重量部(比較例3)とした以外は、実施例1と同様に行なった。
【0055】
[実施例7]
ZnOに替えて、SbをSb/(Sn+Sb)のモル比で0.1ドープした平均粒子径0.03μmのATO粒子6gを用いた以外は、実施例1と同様に行なった。
[実施例8、9、10]
DAMの共重合量をそれぞれ2重量部(実施例8)、7重量部(実施例9)、10重量部(実施例10)とした以外は、実施例7と同様に行なった。
[実施例11、12]
乾燥膜厚がそれぞれ0.5μm(実施例11)、4.0μm(実施例12)となるように遮蔽層を形成した以外は、実施例7と同様に行なった。
【0056】
[比較例4、5、6]
比較例1、2、3それぞれにおいて、ZnOに替えて、実施例7で使用したATOを用いた以外は同様に行なった。
【0057】
[実施例13]
ATOに替えて、SnをSn/(In+Sn)のモル比で0.1ドープした平均粒子径0.03μmのITO粒子6gを用いた以外は、実施例7と同様に行なった。
[実施例14、15]
DAMの共重合量をそれぞれ2重量部(実施例14)、10重量部(実施例15)とした以外は、実施例13と同様に行なった。
【0058】
[比較例7、8、9]
比較例4、5、6それぞれにおいて、ATOに替えて、実施例13で使用したITOを用いた以外は同様に行なった。
【0059】
[実施例16]
顔料として、実施例1で使用したZnOを1.8g、実施例7で使用したATOを4.2g混合して用い、乾燥膜厚が3.0となるように遮蔽層を形成した以外は、実施例1と同様に行なった。
[実施例17]
ZnO量3.0g、ATO量3.0gに替えた以外は、実施例16と同様に行なった。
[実施例18]
ZnO量4.2g、ATO量1.8に替えた以外は、実施例16と同様に行なった。
【0060】
[実施例19、20、21]
実施例16、17、18それぞれにおいて、乾燥膜厚が1.0μmとなるように遮蔽層を形成した以外は、同様に行なった。
[実施例22、23]
DAMの共重合量をそれぞれ2重量部(実施例22)、10重量部(実施例23)とした以外は、実施例17と同様に行なった。
【0061】
[実施例24、25]
実施例22、23それぞれにおいて、ATOに替えて、実施例13で使用したITOを用いた以外は同様に行なった。
【0062】
[比較例10、11、12]
比較例7、8、9それぞれにおいて、ITOに替えて、実施例17で使用したZnO量3.0g、ATO量3.0gを用いた以外は、同様に行なった。
[比較例13、14、15]
比較例10、11、12それぞれにおいて、ZnO量3.0g、ITO量3.0gを用いた以外は、同様に行なった。
【0063】
[実施例26]
DAMの共重合量を5重量部とした以外は、実施例25と同様に行なった。
[実施例27]
実施例1で使用したバインダ樹脂と比較例1で使用したバインダ樹脂を1/1に混合して用いた以外は、実施例1と同様に行なった。
【0064】
[実施例28、29]
ZnOに替えて、実施例7で使用したATO:6gを用い(実施例28)、実施例13で使用したITO:6gを用い(実施例29)た以外は、実施例27と同様に行なった。
【0065】
[実施例30、31]
ZnOに替えて、ATO:3g+ZnO:3gを用い(実施例30)、ITO:3g+ZnO:3gを用い(実施例30)、乾燥膜厚が3.0μmとなるように遮蔽層を形成した以外は、実施例27と同様に行なった。
[実施例32]
平均粒子径が0.015μmのZnOを使用した以外は、実施例1と同様に行なった。
【0066】
[実施例33]
実施例17で用いたZnOを実施例32で用いたZnOに替えた以外は、実施例17と同様に行なった。
[実施例34]
実施例26で用いたZnOを実施例32で用いたZnOに替えた以外は、実施例26と同様に行なった。
【0067】
[実施例35]
平均粒子径が0.015μmのATOを使用した以外は、実施例7と同様に行なった。
[実施例36]
実施例33で用いたATOを実施例35で用いたATOに替えた以外は、実施例33と同様に行なった。
【0068】
[実施例37、38、39、40]
実施例1、7、13、17それぞれにおいて、バインダの共重合成分重量比をMMA/St/BA/DAM=60/30/10/5から、MMA/St/BA/DAM=50/40/10/5に変更したアクリル系バインダ(Tg:81℃、Mw:45000)を用いた以外は、同様に行なった。
[実施例41、42、43、44]
実施例37、38、39、40それぞれにおいて、バインダの共重合成分重量比をMMA/St/BA/DAM=50/40/10/5から、MMA/St/DAM=80/20/5に変更したアクリル系バインダ(Tg:94℃、Mw:45000)を用いた以外は、同様に行なった。
【0069】
また、上記実施例1〜44及び比較例1〜15の各フィルムをガラスに貼り付けることなく、50℃−湿度80%の雰囲気で2ヶ月間保存した後、塗膜表面の観察を行なったが、すべてのフィルムにおいて低分子有機物のブリードアウトは見られなかった。
【0070】
【表1】
Figure 0004230046
【0071】
【表2】
Figure 0004230046
【0072】
【表3】
Figure 0004230046
【0073】
以上の結果をまとめた表1、2及び3より、実施例1〜44の各フィルムはいずれも、各粒子の均一分散性に優れるので、可視光線透過率を低下させることなく、紫外線及び/又は赤外線を遮蔽している。これに対して、比較例のフィルムでは、可視光線透過率が低下している。
【0074】
なお、アクリル系バインダにおけるDAMの共重合量を変化させた時の、赤外線遮蔽率、可視光線透過率、紫外線遮蔽率に及ぼす効果を視覚的に見るために、実施例及び比較例のいくつかのデータをグラフ化し、図1〜5に示す。すなわち、図1〜5はいずれも、アクリル系バインダにおけるDAMの共重合量(他の共重合成分:MMA/St/BAの合計を100重量部とした場合のDAMの重量部)VS.赤外線遮蔽率、可視光線透過率、紫外線遮蔽率(%)を表すグラフである。
【0075】
図1は、実施例1〜4、比較例1〜3についてのグラフである。
図2は、実施例7〜10、比較例4〜6についてのグラフである。
図3は、実施例13〜15、比較例7〜9についてのグラフである。
図4は、実施例17、22、23、比較例10〜12についてのグラフである。
図5は、実施例24〜26、比較例13〜15についてのグラフである。
【0076】
以上のことから、可視光を十分に透過しつつ紫外線及び/又は赤外線を遮蔽し、さらには低分子有機物のブリードアウトのない安定した遮蔽層塗膜を持つ紫外線遮蔽及び/又は赤外線遮蔽フィルムが得られた。
【0077】
さらに、以下の実施例は、ガラス転移温度Tg≦40℃、かつ重量平均分子量Mw≧70000のアクリル系バインダを用いると、塗膜を折り曲げた際にも白変が生じない遮蔽フィルムが得られたことを示す。
【0078】
[実施例45]
(バインダの調製)
メチルメタクリレート(MMA)50重量部、スチレン(St)15重量部、ブチルアクリレート(BA)35重量部、及びジメチルアミノエチルメタクリレート(DAM)5重量部をラジカル重合し、共重合成分の重量比が、MMA/St/BA/DAM=50/15/35/5で、Tg:40℃、Mw:70000であるアクリル系バインダを得た。
【0079】
(塗料組成物の調製及びフィルムの作製)
SbをSb/(Sn+Sb)のモル比で0.1ドープした平均粒子径0.03μmのATO粒子6g、上記アクリル系バインダのトルエン溶液(固形分50重量%、トルエン50重量%)6g、MEK 8g、トルエン8g、シクロヘキサノン8g、及びジルコニアビーズ140gを80mlのガラス瓶に入れ、ペイントシェーカーで分散状態を確認しながら2時間分散を行ない、塗料組成物を得た。
この塗料をワイヤーバーコートにより50μm厚のPETフィルム上に、乾燥膜厚が2.0μmになるように塗布、乾燥し、遮蔽層を形成した。
【0080】
(評価項目及び評価方法)
▲1▼ 最初に、得られたフィルムを手で180°に折り曲げ、折り曲げた部分が白っぽく変色するか、しないかを目視により観察した。
▲2▼ 次に、得られたフィルムの塗膜上に、粘着剤としてポリメチルメタクリレートを10μm厚で塗布し、これを3mm厚のガラス板に貼り付けて評価用サンプルとした。このサンプルの波長2500nmから300nmまでの領域の透過率を、分光光度計により測定した。そして、赤外線遮蔽率、可視光透過率、紫外線遮蔽率を前述と同様に評価した。
▲3▼ また、この評価用サンプルをキセノンアークに1000時間曝露した後の赤外線遮蔽率、可視光透過率、紫外線遮蔽率も同様に評価した。
▲4▼ 塗膜の黄変度を示す代用特性として、キセノンアークに1000時間曝露した後の波長450nmの透過率の劣化度合いの評価を行った。
透過率(%)の劣化=(曝露前の透過率)−(1000時間曝露後の透過率)
【0081】
[実施例46〜53]
次のアクリル系バインダをそれぞれ用いた以外は、実施例45と同様に行なった。
(実施例46)共重合成分重量比がMMA/St/BA/DAM=40/10/50/5で、Tg:20℃、Mw:7万であるアクリル系バインダ。
(実施例47)共重合成分重量比がMMA/St/LMA/DAM=40/10/50/5で、Tg:12℃、Mw:7万であるアクリル系バインダ。
(実施例48)共重合成分重量比がMMA/St/2EHA/DAM=40/10/50/5で、Tg:5℃、Mw:7万であるアクリル系バインダ。
(実施例49)共重合成分重量比がMMA/St/BA/LMA/DAM=40/10/30/20/5で、Tg:15℃、Mw:7万であるアクリル系バインダ。
(実施例50)共重合成分重量比がMMA/St/BA/DAM=50/15/35/5で、Tg:40℃、Mw:9万であるアクリル系バインダ。
(実施例51)共重合成分重量比がMMA/St/BA/DAM=40/10/50/5で、Tg:20℃、Mw:9万であるアクリル系バインダ。
(実施例52)共重合成分重量比がMMA/St/BA/DAM=30/10/60/5で、Tg:2℃、Mw:11万であるアクリル系バインダ。
(実施例53)共重合成分重量比がMMA/St/BA/DAM=40/0/60/5で、Tg:2℃、Mw:11万であるアクリル系バインダ。
【0082】
[実施例54、55]
乾燥膜厚がそれぞれ0.5μm(実施例54)、4.0μm(実施例55)とした以外は、実施例53と同様に行なった。
[実施例56、57]
共重合成分重量比がMMA/St/BA/DAM=40/0/60/2で、Tg:2℃、Mw:11万であるアクリル系バインダ(実施例56)、共重合成分重量比がMMA/St/BA/DAM=40/0/60/10で、Tg:2℃、Mw:11万であるアクリル系バインダ(実施例57)を用いた以外は、実施例53と同様に行なった。
[実施例7]
比較のために、前述の実施例7について同様の評価を行った結果を示す(以上、表4)。
【0083】
[実施例58〜70]
実施例45〜57それぞれにおいて、ATOの替わりに平均粒子径0.03μmのZnOを用いた以外は、同様に行なった。
[実施例1]
比較のために、前述の実施例1について同様の評価を行った結果を示す(以上、表5)。
【0084】
[実施例71〜83]
実施例45〜57それぞれにおいて、ATOの替わりに平均粒子径0.03μmのITOを用いた以外は、同様に行なった。
[実施例13]
比較のために、前述の実施例13について同様の評価を行った結果を示す(以上、表6)。
【0085】
[実施例84〜89]
ATO/ZnO=5/5(すなわち、ATO量:3g、ZnO量:3g)に混合した以外は、実施例45、51、52、53、56、57とそれぞれ同様に行なった。
[実施例17]
比較のために、前述の実施例17について同様の評価を行った結果を示す(以上、表7)。
【0086】
[実施例90〜95]
ITO/ZnO=5/5(すなわち、ITO量:3g、ZnO量:3g)に混合した以外は、実施例71、77、78、79、82、83とそれぞれ同様に行なった。
[実施例26]
比較のために、前述の実施例26について同様の評価を行った結果を示す(以上、表8)。
【0087】
[実施例96〜100]
これらの実施例では、実施例53で用いたMMA/St/BA/DAM=40/0/60/5、Tg:2℃、Mw:11万のアクリル系バインダと、共重合成分重量比:MMA/St/BA/DAM=50/25/25/5、Tg:58℃、Mw:4.5万のアクリル系バインダの5/5混合樹脂(重量比)を用い、
実施例45で用いたATO(実施例96)、実施例58で用いたZnO(実施例97)、実施例71で用いたITO(実施例98)、実施例84で用いたATO/ZnO=5/5(実施例99)、実施例90で用いたITO/ZnO=5/5(実施例100)を用いた以外は、実施例45、58、71、84、90とそれぞれ同様に行なった。結果を表9に示す。
【0088】
表4〜9から、ガラス転移温度Tg≦40℃、かつ重量平均分子量Mw≧70000のアクリル系バインダを用いた好ましい実施例によると、塗膜を折り曲げた際にも白変が生じない。これは、バインダ樹脂の柔軟性が向上したためと考えられる。
また、バインダ樹脂の共重合成分のうち、ビニル系モノマー(c)としてのスチレンは少ない量か又は用いない方が、キセノンアーク曝露試験での塗膜の黄変度が小さく好ましい。
【0089】
【表4】
Figure 0004230046
【0090】
【表5】
Figure 0004230046
【0091】
【表6】
Figure 0004230046
【0092】
【表7】
Figure 0004230046
【0093】
【表8】
Figure 0004230046
【0094】
【表9】
Figure 0004230046
【0095】
【発明の効果】
本発明の紫外線及び/又は赤外線遮蔽性塗料組成物によれば、上述のように、分散剤を用いることなく、ZnO粒子、ITO粒子及びATO粒子から選ばれる無機系粒子を均一に分散することができる。
従って、この塗料組成物の塗膜が透明基材上に設けられた本発明の紫外線及び/又は赤外線遮蔽フィルムは、所望の紫外線及び/又は赤外線遮蔽効果が得られ、且つ透明性、耐久性に優れるものである。
また、本発明の紫外線及び/又は赤外線遮蔽性塗料組成物は、遮蔽フィルム用途のみならず、窓ガラス、サンバイザー、メガネレンズ等に直接塗布して、遮蔽塗膜を形成することにも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1〜4、比較例1〜3の結果を示すグラフである。
【図2】 実施例7〜10、比較例4〜6の結果を示すグラフである。
【図3】 実施例13〜15、比較例7〜9の結果を示すグラフである。
【図4】 実施例17、22、23、比較例10〜12の結果を示すグラフである。
【図5】 実施例24〜26、比較例13〜15の結果を示すグラフである。

Claims (5)

  1. 平均粒子径0.1μm以下の無機系紫外線吸収性粒子及び/又は平均粒子径0.1μm以下の無機系赤外線吸収性粒子が、バインダ樹脂に分散された紫外線及び/又は赤外線遮蔽性組成物であって、
    前記無機系紫外線吸収性粒子が酸化亜鉛粒子であり、
    前記無機系赤外線吸収性粒子がアンチモンドープ酸化錫粒子及び/又は錫ドープ酸化インジウム粒子であり、
    前記バインダ樹脂のうちの少なくとも30重量%は、
    ジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a)1.8〜12重量%と、
    前記モノマー(a)以外の(メタ)アクリレート系モノマー(b)48.2〜98.2重量%と、
    記(メタ)アクリレート系モノマー(a)及び(b)と共重合可能なビニル系モノマー(c)0〜50重量%とが共重合されたアクリル系樹脂により構成されており、
    前記無機系紫外線吸収性粒子及び/又は前記無機系赤外線吸収性粒子と、前記バインダ樹脂との配合割合は、前記両無機系粒子の総重量をP、前記バインダ樹脂の固形分の総重量をBとして、P/B=1/1〜6/1の範囲であることを特徴とする、紫外線及び/又は赤外線遮蔽性塗料組成物。
  2. 前記アクリル系樹脂は、ガラス転移温度Tgが0℃以上40℃以下であり、かつ重量平均分子量Mwが70000以上150000以下である、請求項1に記載の塗料組成物。
  3. バインダ樹脂のうちの少なくとも50重量%が、前記アクリル系樹脂により構成されている、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
  4. 透明基材上に、請求項1〜項のうちのいずれか1項に記載の紫外線及び/又は赤外線遮蔽性塗料組成物の塗膜からなる紫外線及び/又は赤外線遮蔽層が設けられていることを特徴とする、紫外線及び/又は赤外線遮蔽フィルム。
  5. 紫外線及び/又は赤外線遮蔽層上に、さらに粘着剤層を有する、請求項に記載の紫外線及び/又は赤外線遮蔽フィルム。
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