JP4229444B2 - 軟磁性焼結部材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電磁弁や電磁クラッチ等のアクチュエータに好適な軟磁性焼結部材の製造方法に係り、特に、高磁束密度および高透磁率と、優れた寸法精度とを実現した軟磁性焼結部材の製造技術に関する。
電磁弁、電磁クラッチ等のアクチュエータに用いられる磁心等の軟磁性部材は、磁束密度等の軟磁気特性も重要であるが、小型で複雑な形状を有することから、寸法精度が高いことが重要となる。このため、従来より、純鉄粉等の金属磁性粉末を所定形状に成形、焼結して製造された焼結軟磁性材料が用いられてきた。しかしながら、この焼結磁芯を製造する場合には、複雑な形状を比較的容易に実現することができるが、密度が低いことから磁束密度が低いという問題があった。このため、Fe−P系合金粉末の焼結時の液相発生による緻密化により密度を向上させた軟磁性焼結部材が開発されたが、寸法収縮量が大きく寸法精度が低下するという問題があった。また、特に寸法精度の要請が厳しい場合には、表面を加工して寸法精度を確保していたが、加工により軟磁性部材表面に加工歪みが残留し、軟磁気特性を劣化させるという問題があった。
このような状況の下では、例えば、鉄粉等の磁性粉末を588MPa以上、好ましくは784MPa以上の成形圧力で加圧成形した成形体を収縮しない温度、つまり焼結が完全に行われず、しかも粒子同士は癒着してネックグロースが形成される温度で焼結することで、寸法精度を向上させた軟磁性焼結金属が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載の技術は、高い成形圧力で成形することにより成形体密度を向上させるとともに、焼結をごく僅かに行うことで寸法精度を維持しようとするものである。しかしながら、成形密度は成形圧力に比して等しく向上するものではなく、高圧側では圧力の増加に対して成形体密度向上の割合が小さいことは周知の事実である。しかも、このような成形体を焼結による緻密化が生じないように焼結するため、焼結時の密度向上も果たせず、実施例の記載において、成形体密度は密度比で90%を下回る値となっている。したがって、磁束密度も相応に低い値であると考えられる。
また、高級脂肪酸系潤滑剤を内面に塗布した成形用金型にFeを主成分とする磁性粉末を充填し、成形圧力784MPa以上で温間で加圧成形して、得られた粉末成形体を焼結した焼結軟磁性体も提案されている(特許文献2参照)。この特許文献2に記載の技術は、温間成形を適用するとともに、高圧力で成形することによって高密度化を図ったもので、実施例では95%を超える高い密度比を示し、高い磁束密度と高い透磁率とを示している。しかしながら、これらの値はコストの増加する温間成形技術を用い、1000〜2000MPaもの高圧力で無理矢理高密度化したものであるため、金型の損耗等のコストを考えると決して安価であるとは言えない。
特開平10−324960号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開2003−82401号公報(特許請求の範囲、実施例)
近年、電磁弁、電磁クラッチ等のアクチュエータに用いられる磁心等の軟磁性部材は、装置の高出力化および小型化のために、磁束密度のさらなる向上が要求されるのみならず、装置の応答性のために、透磁率のさらなる向上が要求されている。また、コスト低減に関する要求も厳しいことから、コストが割高となる温間成形技術によらず、通常の冷間成形で軟磁性部材を製造することが好ましい。しかも、金型の損耗等を考慮すると、その際の成形圧力は1200MPa程度に止めることが好ましい。
以上より、本発明は、成形圧力が1200MPaまでの冷間成形において、磁束密度および透磁率を高めるとともに、寸法精度の高い軟磁性焼結部材を製造する方法を提供することを目的としている。この目的に対し、市場の要求特性を考慮して、軟磁気特性の目標値を、印可磁場25A/mにおける磁束密度(B25)については1.5T以上、および、その際の最大透磁率(μ)については4000以上とするとともに、寸法精度の目標値を、真円度を測定した際のプロファイルの変位量について0.030mm以内とする。
上記課題を解決し、上記種々の目標値を達成するため、本発明の軟磁性焼結部材の製造方法は、150メッシュ篩下の粉末が1%以下で残部が150メッシュ篩上の粉末からなる純鉄粉末を所望の形状の金型内に充填した後、700〜1200MPaの成形圧力で圧粉成形した成形体を1100〜1300℃または840〜910℃の保持温度で焼結することを特徴としている。
なお、本発明において、150メッシュ篩下の粉末とは、150メッシュ篩を用いて分級した際に、150メッシュ篩を通過した粉末を意味し、150メッシュ篩上の粉末とは、150メッシュ篩を通過せず残留した粉末を意味する。
このような軟磁性焼結部材の製造方法においては、上記純鉄粉末の粒度構成が、150メッシュ篩下の粉末が1%未満であり、かつ100メッシュ篩下の粉末が15%以下であって、残部が100メッシュ篩上の粉末であることが望ましく、また、0.4質量%以下の成形潤滑剤を原料粉末に与えて成形する場合において、成形体の密度比を98%以下とすることも望ましい。
本発明の軟磁性焼結部材の製造方法によれば、原料粉末として150メッシュ篩下の粉末が1%以下で、残部が150メッシュ篩上の粉末からなる純鉄粉末を用い、成形圧力が700〜1200MPaの冷間成形で成形した後所定保持温度で焼結することから、高い磁束密度と透磁率を示す軟磁性焼結部材が、高い寸法精度でかつ低コストに得られるという格別の効果を有する。したがって、本発明により製造した軟磁性焼結部材は、電磁弁、電磁クラッチ等のアクチュエータに好適である。
以下に、本発明の軟磁性焼結部材の製造方法についての好適な実施形態を詳細に説明する。
本発明では、原料粉末として、大部分が150メッシュ篩上の粗大な純鉄粉末を用いる。従来は、充填性の点では、ある程度の大きさの粉末と、その粉末の隙間を埋める小さな粉末との組み合わせが最適とされ、また、焼結時の緻密化の点では、微粉を用いた方が各々の粉末の接触面積が増加することから、焼結が進行し易いとされてきた。このような従来の知見に対し、本発明者等は、純鉄粉末の粗粉を用いた場合には、充填密度は低下するものの、粉末が軟質であるため塑性変形し易く、却って高密度化し易いとの知見を得た。また、本発明者等は、このような粗粉を成形した圧粉体を焼結した場合には、予想外の高い軟磁気特性を示すとの知見も得た。本発明は、これらの知見に鑑みてなされたものである。
すなわち、粉末がある程度の大きさであると、各々の粉末の塑性変形量が乏しく、すぐに加工硬化して緻密化し難いが、粉末がある程度以上の大きさであると、加工硬化して塑性変形能を失うまでに各粉末同士が密着し、高密度化を図り易くなる。このため、粗大な純鉄粉末を用いた場合には、成形圧力が1200MPaまでの冷間成形であっても、成形体密度を密度比95%以上とすることが可能となる。
また、成形時において、粉末に蓄積される加工歪みの量は、粉末表層部で最大であることから、粉末の表面積に比して増大する。このため、粗大な純鉄粉末の方が表面積が小さく、加工歪みの量が小さいことから、後の焼結工程において歪み除去に費やされるエネルギーが小さくて済む。この結果、粗大な純鉄粉末を用いた場合には、焼結の進行および磁気特性向上に寄与する結晶粒の成長に費やすことのできるエネルギーを増加させることができる。
これらの効果は、粉末が大きいほど高いが、少なくとも150メッシュ篩下の粉末の量を1%以下に抑える必要がある。150メッシュ篩下の粉末が1%を超えると、微細な粉末が先に硬化するため、緻密な成形体が得られない。また、100メッシュ篩下の粉末が15%以下であると、粉末の粒度構成が粗大粉側に一層近づくため、好適である。
このような純鉄粉末の粗粉は、通常のアトマイズ粉末もしくは電解粉末を篩って調整してもよい。また、その他に、純鉄板の打ち抜きの際に生じる打ち抜き粉や、純鉄棒等を切削した際に生じる切削粉等の、いわゆる廃粉を洗浄、焼鈍したものを用いてもよい。これらの粉末には、粒径が1mm程度のものもあり、このような粗大な純鉄粉末は極めて好適である。
これら種々の粗粉を用いた場合には、通常の冷間成形を採用し、成形圧力を700MPa以上とすれば、密度比95%以上の成形体が容易に得られる。ただし、成形圧力が700MPaに満たない場合には、成形体の密度比が低下し、焼結後の軟磁気特性が向上せず、しかも寸法精度も低下する。一方、成形圧力が1200MPaを超えても、成形圧力の上昇の割に成形体密度比の向上は乏しく、金型に対する損耗が大きくなるため、上限値は1200MPaとした。
上記の成形に際して、従来から使用されている潤滑技術を併用してよい。具体的には、粉末を充填する金型内壁に成形潤滑剤を塗布する金型潤滑法、または原料粉末に成形潤滑剤を与える内部潤滑法を併用することができる。成形潤滑剤の与え方については、成形潤滑剤粉末を原料鉄粉末と混合してもよいが、原料鉄粉末表面に付着もしくは被覆するように与えると効果的である。なお、内部潤滑法を採用する場合に、成形密度を高くし過ぎると、潤滑剤の除去が不完全となり、潤滑剤に含有されるC分がFe基地に拡散して磁気特性を損なうので、潤滑剤の完全な除去の観点から、成形潤滑剤は0.4質量%以下に止めるとともに、成形体密度は密度比で98%以下に止めることが推奨される。
焼結は、寸法精度を重視する場合には、純鉄のA変態点(911℃)未満の840℃〜910℃の温度範囲で行う。この理由は以下のとおりである。すなわち、A変態点を超えて加熱すると、鉄の結晶構造が体心立方格子から面心立方格子に変化して収縮が生じ、寸法精度が低下するとともに、磁束密度が一時的に低下する。一方、焼結温度が840℃に満たないと、焼結時の拡散が不十分となり、磁束密度(B25)が目標とする1.5Tを下回るとともに、最大透磁率(μ)が4000を下回る。上記のような好適な焼結温度範囲を採用した場合には、焼結体の優れた寸法精度が得られることから加工が不要となり、加工歪みによる磁気特性の劣化を避けることができる。
一方、磁束密度および最大透磁率の向上を重視する場合には、焼結は、1100〜1300℃の温度範囲で行う。この理由は以下のとおりである。すなわち、焼結温度がA変態点を超えると磁束密度(B25)は一旦低下するが、1100℃以上では磁束密度(B25)が再び目標とする1.5T以上の値に回復し、焼結温度の上昇につれて磁束密度がさらに向上する。また、最大透磁率(μ)は、焼結温度が800℃以上で焼結温度の上昇に伴い急激な増加傾向を示す。よって、1100℃以上の焼結温度で目標とする磁束密度(B25)および目標の2倍近い値の最大透磁率(μ)を得ることができる。なお、寸法精度は、焼結のネックの成長にしたがって寸法が収縮するため低下する傾向を示すが、成形体において密度比が95%以上であるため、その傾向は比較的小さいものである。ただし、焼結温度が1300℃を超えると、軟磁気特性は一層向上するものの、寸法精度の低下が顕著となり、加工が必要な場合が生じてくること、および焼結炉が著しく傷むことから、焼結温度の上限値は1300℃とする。
なお、上記焼結における保持時間は、長いほど結晶粒が成長するので好ましいが、過度に焼結保持時間が長い場合には生産性が低下するので、20〜120分程度が好適である。また、焼結雰囲気は、浸炭性もしくは酸化性のものであると磁気特性が劣化するため、非浸炭性の非酸化性雰囲気とする必要がある。
上記の焼結温度上昇に伴う磁束密度および最大透磁率の向上は、結晶粒の成長と密接に関係する。すなわち、焼結温度が上昇して結晶粒が成長することにより優れた磁束密度および最大透磁率を示す。本発明においては、原料粉末に粗粉を用いたことにより、粉末内部の結晶粒が元々大きく、このため成形体時点での結晶粒が既に大きくなっており、微粉を含む通常の粉末用いたものに比べて有利となっている。また粗粉の塑性変形能により各粉末が密着している結果、通常の微粉を含む場合に比して、焼結におけるネックの成長が速く、かつ、結晶粒がより一層大きく成長することにより、冷間成形であっても、優れた磁束密度および最大透磁率を示す。一方、特許文献2の場合のように、温間成形を用いるとともに加圧圧力を高めても、元々の粉末が小さく、内部の結晶粒が小さい場合には、加工硬化した粉末の歪み除去のエネルギーを余分に費やす上に、元々の結晶粒が小さいものを多量に含むため、結晶粒の成長が遅く、成形体密度が高くても本発明と同等の磁気特性を得られるまでに結晶粒を成長させるためには長時間の焼結が必要となる。
以下に、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明し、本発明の効果を実証する。
純鉄粉末(アトマイズ粉末)を、150メッシュおよび100メッシュの篩を用い、150メッシュ篩下、150メッシュ篩上100メッシュ篩下、および100メッシュ篩上の3種類に分級した。これらを表1に示す割合で配合、混合して粒度構成を調整した原料粉末を各々用意した。次いで、金型潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を有機溶媒中に所定量均一に分散させたものを金型内壁面に塗布し、各原料粉末を充填して、磁気特性評価用のφ30×φ20×t5のリング形状、および寸法精度評価用のφ30×φ27×t5のリング形状に、成形圧力1000MPaで成形した。最後に、得られた成形体をアンモニア分解ガス雰囲気中1200℃で焼結して表1に示す試料番号01〜03の試料(本発明例)と、試料番号04,05の試料(比較例)とを作製した。また、分級を行わない通常の純鉄アトマイズ粉末を用い、上記と同じ条件で試料番号06の試料(比較例)を作製した。さらに、分級を行わない通常の純鉄アトマイズ粉末を用い、粉末を120℃、金型を120℃に加熱して、成形圧力1000MPaで温間成形した以外は上記と同様にして試料番号07の試料(比較例)を作製した。
これらの試料01〜07について、試料作製過程の成形体密度、および試料作成後の焼結体密度をアルキメデス法によって測定し、理論密度に対する密度比を求めた。また、これらの試料について、磁束密度および最大透磁率の磁気特性および寸法精度について測定した。磁束密度の測定は、1次側コイル100回,2次側コイル20回の捲き線を施し、25A/mの磁界を印加し、磁束密度(B25)と最大透磁率(μ)とを測定した。寸法精度は、各試料の真円度を測定して評価した。これは、真円度測定器で測定した外形および内径のプロファイルに対し、外形についてはφ30、内径についてはφ27の基準円からの凹凸の最大値をもって評価した。これらの結果を表1に併記する。なお、表1中、「−#150」は150メッシュ篩下の粉末の量、「+#150〜−#100」は150メッシュ篩上100メッシュ篩下の粉末の量、「−#100」は100メッシュ篩下の粉末の量、および「+#100」は100メッシュ篩上の粉末の量をそれぞれ示す。
Figure 0004229444
表1より、150メッシュ篩下の粉末の量が少ないほど成形体密度が向上し、焼結体密度も向上していることが判る。この結果より、粗大な純鉄粉は、従来考えられていたよりも成形性が優れており、却って微粉を含有しない方が高密度化が可能であることが実証された。この高密度化により、150メッシュ篩下の粉末の量が少ないものほど磁束密度は高い値を示し、150メッシュ篩下の粉末の量が1%以下の場合に、磁束密度(B25)が目標とする1.5T以上の値を示している。また、最大透磁率(μ)も密度の向上に比して増加しており、150メッシュ篩下の粉末の量が10%以下で既に目標とする4000の値を示している。逆に言えば、150メッシュ篩下の粉末の量が多いほど密度が低下し、通常の粉末では磁束密度および透磁率の低下が著しいことが判る。また、通常の粉末を温間成形した場合には、密度をある程度向上させることはできるが、本発明の粗粉を用いて冷間成形を採用した場合ほどの効果は得られていないことが実証された。特に、温間成形を用いた試料番号07の試料と同程度の密度の試料番号05の試料は、磁束密度が目標に達しておらず本発明範囲外のものではあるが、150メッシュ篩下の粉末の量が少ないことにより透磁率に顕著な差が生じており、150メッシュ篩下の粉末の量が透磁率に与える効果が大きいことが実証された。
上記試料番号01の試料(本発明例)と、試料番号06の試料(比較例)および温間成形を用いた試料番号07の試料(比較例)とについて、金属組織を観察した結果を図1に示す。図1より、原料粉末として粗大な粉末を用いた試料番号01の試料は、結晶粒が大きく成長していることが判る。一方、試料番号06の試料は、微粉が多いこと、また冷間成形であることから密度が低く、気孔の多い組織を呈しており、結晶粒も小さい。また、試料番号07の試料は、温間成形で成形体密度を向上させたことにより、気孔の量は試料番号06の試料よりも改善されて少なくなっているものの、原料粉末が微粉を多量に含むため、元々の粉末内部の結晶粒が微細となり、試料番号01の試料ほど結晶粒が成長していないことが判る。この結晶粒の差によって上記の最大透磁率の差が生じたものである。したがって、最大透磁率を向上させるためには、結晶粒を大きく成長させる必要があり、そのためにも粗大な粉末を用いることが得策であることが実証された。
以上の結果より、目標とする印可磁場25A/mにおける磁束密度(B25)が1.5T以上であり、かつ最大透磁率(μ)が4000以上であることを実現するためには、150メッシュ篩下の粉末の量を1%以下とすることが有効であることが判る。
また、真円度は密度が高いほど良好な値を示しており、150メッシュ篩下の粉末の量が1%以下の場合には、内外径ともに目標とする真円度0.030mm以内を実現している。
実施例1で分級した粉末を用い、表2に示す配合比で配合、混合して粒度構成を調整した原料粉末を各々用意し、実施例1と同様の条件で試料番号08〜12の試料(本発明例)を作製し、実施例1と同様の条件で各項目を評価した。この結果を実施例1の試料番号01の試料の結果とともに表2に併記する。
Figure 0004229444
表2より、100メッシュ篩下の粉末が少ないほど密度が向上し、磁束密度、最大透磁率および真円度が改善されることが判る。なお、100メッシュ篩下の粉末の量が15%以下の場合には、磁束密度の向上が著しいため、特に好ましい。
実施例1の試料番号01の原料粉末を用いて、表3に示すように成形圧力を変化させて試料番号13,14,17の試料(比較例)と、試料番号15,16の試料(本発明例)とを作製した。これらの試料について実施例1と同様の評価を行った。その結果を実施例1の試料番号01の試料(本発明例)の評価結果とともに表3に併記する。
Figure 0004229444
表3より、成形圧力の増加に伴い密度が向上し、磁束密度および最大透磁率の磁気特性、および真円度が向上するが、本発明の粗粉の効果により、成形圧力700MPa以上の冷間成形でも目標とする磁束密度(B25)を1.5T以上、最大透磁率(μ)を4000以上、および真円度0.030mm以内を満足している。ただし、成形圧力が1200MPaの試料番号16の試料と、成形圧力が1300MPaの試料番号17の試料とを比較すると、密度は若干向上して、磁束密度も若干向上するものの、最大透磁率および真円度の向上の割合が小さいため、金型の損耗等を考慮すると、成形圧力は1200MPaを超える必要はないことが判る。
実施例1の試料番号01の原料粉末を用いて、表4に示すように焼結温度を変化させて試料番号18,19,22,25の試料(比較例)と試料番号20,21,23,24の試料(本発明例)とを作製した。これらの試料について実施例1と同様の評価を行った。その結果を実施例1の試料番号01の試料(本発明例)の評価結果とともに表4に併記する。また、表4の焼結温度と磁束密度および最大透磁率との関係をグラフ化したものを図2に示す。
Figure 0004229444
表4および図2より、磁束密度(B25)は焼結温度がA3変態点(911℃)の手前の温度範囲で目標とする1.5Tを超える値を示したのち変態して一旦低下し、焼結温度が1100℃を超えると再び目標とする1.5T以上の値を示すようになる。また、最大透磁率(μ)は、焼結温度840℃で目標値を超える5000を示したのち焼結温度1100℃まで一定の値を示し、さらに焼結温度を上げると増加する傾向を示す。したがって、磁気特性の目標値を達成する領域は、焼結温度範囲が840〜910℃である領域(1)と、焼結温度範囲が1100℃以上である領域(2)との2領域があることが判る。このうち、上記(1)の領域では、真円度が内外径とも0.010mmと極めて小さい値となっており、寸法精度が特に優れていることが判る。また、上記(2)の領域では、真円度の低下が認められるが、上記(1)の領域に比較して高い磁束密度と高い最大透磁率を示しており、磁気特性の向上に重点を置く場合に特に優れていることが判る。特に、1300℃の焼結温度の試料番号25の試料では、極めて高い磁束密度と最大透磁率を示している。ただし、焼結温度が1200℃を超えると磁気特性向上の割合が低下するとともに、真円度が目標とする0.030mmを超えて寸法精度悪化の影響が大きくなること、および高温による炉の損耗等も考慮すると、焼結温度は1200℃までに止めることが推奨される。
上記実施例1〜4は、市販のアトマイズ純鉄粉末を篩で分級して粒度構成を調整した例であるが、産業上廃粉として位置づけられ廃棄処理される打ち抜き粉および切削粉の粗大な純鉄粉末を活用した場合の実施例を以下に示す。
打ち抜き粉は、純鉄鋼板を打ち抜き加工した際に発生する廃粉であり、洗浄した後、650℃で焼鈍して用意した。これは、図3に示すように粒径が1mm程度の極めて粗大な純鉄粉末である。また、切削粉は純鉄を切削加工した際に発生する切り粉であり、これも洗浄した後、650℃で焼鈍して用意した。これらの粉末を用いて実施例1と同様に試料を作製し、試料番号26,27の試料(本発明例)を作製した。これについても実施例1と同様の条件で各評価項目について測定した。この結果を、上記アトマイズ純鉄粉末を用いた実施例のうち、100メッシュ篩下の粉末を含まない試料番号08の試料(本発明例)の結果とともに表5に併記する。
Figure 0004229444
表5より、打ち抜き粉や切削粉のような極めて粗大な純鉄粉末を用いても、試料番号08の試料と同等の、本発明目標値を上回る磁気特性および真円度が得られることが判った。このことは、粗大であるが故に、粉末が軟質であるため加工硬化して塑性変形能を失うまでに各粉末間が密着可能で塑性変形し易く、却って高密度化し易いといった本発明の理論を証明するものである。また、同時に、このことは、粗大純鉄粉末の方が表面積が小さく、加工歪みの量が小さいため、後の焼結工程において歪み除去に費やされるエネルギーが小さくて済む結果、焼結の進行および磁気特性向上に寄与する結晶粒の成長に費やせるエネルギーを増やせるといった本発明の理論をも証明するものである。
また、打ち抜き粉や切削粉のような産業上廃粉として処理される粉末を用いても、アトマイズ純鉄粉末を篩って粒度構成を調整した粉末と同等ということは、このような廃粉の再利用が可能であることであり、コスト面および環境対策の面からも推奨することができる。
なお、本実施例の打ち抜き粉や切削粉は、650℃で焼鈍した。この温度で通常の鉄粉末を焼鈍すると粉末同士が結合し、焼鈍後の解砕工程が必要となる。しかしながら、打ち抜き粉や切削粉の場合には、粗大であるため結合し難く、一部結合が生じても容易にほぐすことができるため、この点からも好適である。
以上に示したように、本発明の軟磁性焼結部材の製造方法によれば、軟磁性焼結部材の高磁束密度化および高透磁率化と、優れた寸法精度とを同時に実現することができる。したがって、本発明は、優れた磁気特性および寸法精度が要求される電磁弁や電磁クラッチ等のアクチュエータの製造に好適である。
本発明例である試料番号01の試料と、比較例である試料番号06および07の試料の金属組織を示す写真である。 焼結温度と、磁束密度および最大透磁率の磁気特性との関係を示すグラフである。 使用した純鉄鋼板の打ち抜き粉末の写真である。

Claims (4)

  1. 150メッシュ篩下の粉末が1%以下で残部が150メッシュ篩上の粉末からなる純鉄粉末を所望の形状の金型内に充填した後、700〜1200MPaの成形圧力で圧粉成形した成形体を1100〜1300℃の保持温度で焼結することを特徴とする軟磁性焼結部材の製造方法。
  2. 150メッシュ篩下の粉末が1%以下で残部が150メッシュ篩上の粉末からなる純鉄粉末を所望の形状の金型内に充填した後、700〜1200MPaの成形圧力で圧粉成形した成形体を840〜910℃の保持温度で焼結することを特徴とする軟磁性焼結部材の製造方法。
  3. 前記純鉄粉末の粒度構成が、150メッシュ篩下の粉末が1%未満であり、かつ100メッシュ篩下の粉末が15%以下であって、残部が100メッシュ篩上の粉末であることを特徴とする請求項1または2に記載の軟磁性焼結部材の製造方法。
  4. 0.4質量%以下の成形潤滑剤を原料粉末に与えて成形する場合において、成形体の密度比を98%以下とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の軟磁性焼結部材の製造方法。
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