JP4228705B2 - 動きベクトル探索方法および装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は動き補償予測符号化技術に係り、特に多段探索法で用いられる動きベクトル探索方法および装置ならびにコンピュータシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
動画像信号を記録あるいは伝送する際の圧縮符号化では、符号化効率を高めるために画像フレーム間の相関を利用した符号化方法が一般に用いられる。画像フレーム間の相関を利用する符号化方式は動き補償予測符号化と呼ばれ、MPEG (Moving Picture Experts Group)2などで採用されている。
【0003】
動き補償予測符号化では、フレーム間の映像の動きの情報(動きベクトル)と、動きベクトルによって生成される予測画像と符号化中のフレームとの差分画像(予測誤差)を符号化する。画像フレーム間の相関が大きければ、予測誤差が小さくなり、符号化する情報量を小さくでき圧縮率を向上させることができる。動き補償予測符号化では、一般に、フレームを16×16画素などの一定サイズのブロックに分割し、分割したブロックごとに動きベクトルを割り当てる。
【0004】
具体的には、すでに符号化が完了しているフレーム(参照フレーム)の中から、ブロックごとに相関が最も大きくなる場所を探し、そのブロック間の差分を求め、符号化する。相関が大きくなる場所を探す処理を動きベクトル探索という。相関の大小は、参照フレームと符号化中フレームとのブロック内の各画素の差異を総和することで評価できる。
【0005】
指定された探索範囲のすべての点を単純に探索し、相関の大きさを調べれば最適な動きベクトルが得られるが、この方法では演算量が極めて大きくなり現実的でない。演算量を削減するために、初めに粗く第1段の探索をおこない、その探索結果を中心にして細かい第2段の探索を行うのが一般的である。このような方法は多段探索法と呼ばれ、例えば非特許文献1などに開示されている。以下、多段探索法について簡単に説明する。
【0006】
図7(A)は、一般的な多段探索法を説明するための画素配列を示す模式図であり、(B)は第2段の探索の様子を示すシーケンス図である。例えば、初めに第1段の探索として2画素精度探索(図7(A)の"1"でラベルされた位置の探索)を実行し、そのなかで最も相関が大きくなる位置を決定する。 続いて、第1段の探索結果である位置を中心に、第2段の探索として1画素精度探索(図7(A)の"2"でラベルされた位置の探索)を実行し、その中で最も相関が大きくなる位置を最終的な動きベクトルとする。
【0007】
通常、第1段の動きベクトル探索は、フレームをサブサンプリングして解像度を下げたフレームデータを用いる。例えば、フレームデータを縦横ともに半分にして第1段の動きベクトル探索をおこない、その探索結果の周囲を探索範囲として本来の解像度で第2段の探索を実行し、最終的な動きベクトルを求める。たとえば図7(B)に示すように、第2段の探索範囲が縦および横方向±1画素の範囲である場合には、探索範囲内のすべての位置(図7(B)の(a)〜(i))でマッチングが行われる。
【0008】
非特許文献2には、このように解像度を下げて動きベクトルを探索する方法の一例が開示されている。非特許文献2に記載された方法では、解像度を下げて縮小した画像による動きベクトル探索と本来の解像度の画像による動きベクトル探索の2種類の探索を行い、予測誤差が小さくなる探索結果を採用する。
【0009】
たとえば、解像度を下げた探索では、まず符号化対象画像と参照画像とを共に水平方向のみN:1にサブサンプリングし、サブサンプリングされた画像上で動きベクトル探索をおこなう。このときサブサンプリングされた画像上ではブロックのサイズも縮小されるが、マッチング単位は本来の解像度のブロックサイズと同一にしている。つまり、本来の解像度でのブロックサイズが水平方向16画素、垂直方向16画素の場合、水平方向のみサブサンプリングしたことでブロックサイズは水平方向16/N画素、垂直方向16画素となるが、探索は水平方向16画素、垂直方向16画素のままでおこなう。したがって水平方向に隣接するN個のブロックを一度に探索することになる。これにより、もし解像度を下げた探索の探索結果が採用された場合には、隣接するN個のブロックで同じ動きベクトルを持つことになる。また、このときの動きベクトルの精度はサブサンプリングされた画像サイズに依存する。例えば水平方向2:1にサブサンプリングして探索をおこない、この探索結果が最終的な動きベクトルとして採用された場合、本来の解像度上で考えると1画素飛ばしの探索をおこなったことと等価な探索精度となる。
【0010】
また、特許文献1(特開平10−191347号公報)に開示された動き検出方法では、2つのブロックをまとめたセミグローバルブロックを求めて、それに隣接するブロックの動きベクトルを検出することでセミグローバルブロックの大まかな動きを検出する。そして、検出された大まかな位置をサーチ対象としてブロックごとの動きベクトルを検出する。同様に、特許文献2(特開平10−13835号公報)に開示された動き検出方法でも、複数ブロックのうちの1ブロックを代表させて探索している。
【0011】
【非特許文献1】
Renxiang Li 等、“A new three-step search algorithm for block motion estimation”、IEEE Transactions on Circuits and Systems for Video Technology, Vol.4, No.4, August, 1994, pp.438-441
【非特許文献2】
神田等 “ダウンサンプリングによる動きベクトルの広範囲探索”、 映像メディア処理シンポジウム(IMPS96), 1996, pp.99-100
【特許文献1】
特開平10−191347号公報(要約、0029〜0031)。
【特許文献2】
特開平10−13835号公報(要約、0018)。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、非特許文献2で開示されている方法では、2種類の動きベクトル探索法を用いて探索を行っているために演算量が増加するという問題がある。
【0013】
また、解像度を下げた探索の探索結果が採用された場合、隣接する複数のブロックで同一の動きベクトルとなり、かつ、粗い探索による探索結果がそのまま最終的な動きベクトルとなる。このために、画像中の細かい動きに対応することができなくなり探索精度が低下するという問題も生じる。
【0014】
また、特許文献1に開示された方法では、セミグローバルブロックの動きを隣接するブロックの動きで代表させているために、セミグローバルブロック自体の動きを検出していない。特許文献2の方法も同様の代表探索を採用している。このために検索精度が大きく低下する場合が生じうる。
【0015】
本発明の目的は、動きベクトルを高速に探索できる新規な動きベクトル探索方法および装置ならびにコンピュータシステムを提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、探索精度の低下を最小限に抑えて高速に動きベクトルを探索できる動きベクトル探索方法および装置ならびにコンピュータシステムを提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明による動きベクトル探索装置および方法は、対象画像および参照画像の縦方向及び横方向を縮小して縮小対象画像および縮小参照画像をそれぞれ生成し、これら縮小対象画像および縮小参照画像に基づいて、隣接する複数個のブロックからなる探索単位で第1動きベクトルを探索する。探索単位の大きさは、既に動きベクトルを求めた周囲のブロックにおける動きベクトルの方向の一致の程度が大きいほど、大きくされる。検出された第1動きベクトルにより決定される探索範囲内で、縮小前の画像解像度により1ブロック単位で第2動きベクトルを探索し動きベクトルを決定する。
【0018】
通常の階層的動きベクトル探索では、1段目探索および2段目探索ともに、ブロックごとに探索をおこない各ブロックの動きベクトルを検出するが、本発明によれば、1段目の探索において隣接する複数のブロックをまとめて一括探索する。水平方向に隣接するNブロック、垂直方向に隣接するMブロックを一まとめにして一括探索すると、N×Mブロックにつき1つの動きベクトルを検出することになる。2段目探索においては、1段目探索の探索結果となった位置を中心として1ブロックごとに探索を行い、最終的な動きベクトルを決定する。最終的な動きベクトルはブロックごとに検出されるので、探索精度の低下を防ぐことができる。
【0019】
このように1段目探索において、複数のブロックをまとめた探索単位で探索することにより、検出するベクトルの本数が少なくなる。したがって、ベクトル検出にかかる演算量が削減され、高速な動きベクトル探索を実現できる。なお、2段目探索においては1ブロックごとに動きベクトルを求めるため、動き探索の精度の低下は最小限に抑えられる。
【0020】
また、1段目探索において複数のブロックを一度に探索することにより、最終的に得られる動きベクトルは隣接するブロック間でその差が小さくなる。そのため、動きベクトルを符号化するために必要となる符号量を少なくすることができ、ブロックデータの符号化のためにより多くの符号量を割り当てることができる。したがって、画質の低下は最小限に抑えられる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明による動きベクトル探索装置の第1実施形態を示すブロック図である。図1において、現フレームバッファ101には符号化中のフレームのデータが格納され、参照フレームバッファ102には参照フレームデータが格納されている。サブサンプリング処理部103は現フレームバッファ101および参照フレームバッファ102からそれぞれ現フレームデータおよび参照フレームデータを入力し、サンプリングによって縮小現フレームデータおよび縮小参照フレームデータを生成する。
【0022】
第1段の動き探索処理部104は、縮小現フレームデータおよび縮小参照フレームデータを用いて動き探索を行い、その探索結果である第1段の動きベクトルの位置情報を第2段の動き探索処理部105へ出力する。第2段の動き探索処理部105は、現フレームバッファ101および参照フレームバッファ102から本来の現フレームデータ及び参照フレームデータを入力し、第1段の動きベクトルの位置を中心として詳細な動きベクトル探索を実行する。こうして、最終的な動きベクトルを決定する。
【0023】
サブサンプリング処理103は縦/横の縮小をおこなう縮小処理部111を有し、縮小処理部111により縮小された縮小現フレームデータおよび縮小参照フレームデータは縮小現フレームバッファ112および縮小参照フレームバッファ113にそれぞれ格納される。第1段の動き探索処理部104は、後述するマッチング単抽出部114およびマッチング演算処理部115から構成される。次に、本実施形態の全体的動作について詳細に説明する。
【0024】
図2は第1実施形態の全体的動作を示すフローチャートである。まず、縮小処理部111は、符号化しようとしている現フレームデータを現フレームバッファ101から入力してサブサンプリングする(ステップS201)。同様に、縮小処理部111は、参照フレームデータを参照フレームバッファ102から入力してサブサンプリングする(ステップS202)。
【0025】
次に、フレームの先頭から第1段の探索処理を開始するため、縮小した現フレームの先頭のブロックにポインタを合わせ(ステップS203)、縮小したデータを用いた第1段の動き探索を開始する。まず、第1段の動き探索処理部104のマッチング単位抽出部211は、複数ブロックからなる予め指定されたマッチング単位(水平方向Nブロック×垂直方向Mブロック)を抽出する(ステップS204)。 ここで、NおよびMは1以上の整数である。
【0026】
続いて、マッチング演算処理部212は、抽出されたN×Mブロック領域をマッチング単位として、縮小画像上で動きベクトル探索を実行し(ステップS205)、現フレームの縮小画像と参照フレームの縮小画像との間で相関が一番高くなる位置を決定する。一つ目のブロックの探索が終了したら、まだ探索が行われていない隣接するブロックにポインタを移動させ(ステップS206)、フレーム内のすべてのブロックについて探索が終了するまで、同様の動きベクトル探索を繰り返す(ステップS207)。この第1段探索では、N×Mブロック領域をマッチング単位として一括探索されるために、各ブロックごとではなくN×Mブロックごとに1個の動きベクトルが検出される。
【0027】
第1段の動きベクトル探索が終了すると(ステップS207のYES)、第2段の動き探索処理部105は、現フレームの先頭のブロックにポインタを合わせる(ステップS208)。そして、第1段の探索で決定された動きベクトルを中心に、本来の画像解像度で動きベクトル探索を開始する。すなわち、第2段の動き探索では、第1段動き探索の結果である位置を中心に、1ブロックをマッチング単位として、マッチング処理をおこなう(ステップS209)。一つ目のブロックの探索が終了したら、次のブロックにポインタを移動させ(ステップS210)、すべてのブロックの探索が終了するまで第2段の動き探索を順次実行する(ステップS209〜S211)。フレーム内のすべてのブロックについて探索が終了していたら第2段の探索を終了させ(ステップS211のYES)、最も相関が大きいと判定された位置を最終的な動きベクトルとする。
【0028】
上述した第1実施形態における1段目の動きベクトル探索は、水平方向に隣接したNブロックと垂直方向に隣接したMブロックとからなる画素データをマッチング単位として実行される。そのために、検出される動きベクトルの個数を少なくすることができ、その結果探索に要する演算量が削減され、動きベクトル探索が高速化される。
【0029】
第1段動き探索処理部104では、上述したように、N×Mブロック領域をマッチング単位として一括探索が実行されるために、N×Mブロックで同一の動きベクトルとなる。次に説明する本発明の第2実施形態は、このマッチング単位を画像の動きに応じて変化させることで探索精度の低下を最小限に抑えることが可能である。
【0030】
図3は、本発明による動きベクトル探索装置の第2実施形態を示すブロック図である。なお、図3において、図1に示す第1実施形態と同じ機能を有するブロックには同じ参照番号を付して説明は省略する。第2実施形態は、第1段動き探索処理部304の構成及び動作が第1実施形態のそれらとは異なるので、以下、第1段動き探索処理部304について説明する。
【0031】
図3に示すように、第2実施形態における第1段動き探索処理部304は、動き複雑度判定部314、マッチング単位決定部315、マッチング単位抽出部316、および、マッチング演算処理部317から構成されている。
【0032】
動き複雑度判定部314は、縮小現フレームデータおよび縮小参照フレームデータをサブサンプリング処理部103から入力し、過去の動きベクトルの統計情報や予測誤差の大きさ等に基づいて動きの複雑さを判定する。たとえば、すでに動きベクトルを求めた近隣の複数ブロックにおいてベクトルの方向が一致していない場合、すなわち動きベクトルがバラバラの方向を指している場合に、動きが複雑であると判断する。近隣の複数ブロックにおける動きベクトルの方向の一致の程度(方向の分布の偏りなど)を数量化して動き複雑度を定めてもよい。
【0033】
マッチング単位決定部315は、判定された動きの複雑さに応じてマッチング単位を変化させる。具体的には、動きが複雑であると判断される場合はマッチング単位を小さくする。これによって複雑な動きに対応することができる。また、動きが単調であると判断される場合はマッチング単位を大きくする。これによって探索に要する演算量を削減することができる。
【0034】
マッチング単位抽出部316は決定されたマッチング単位を抽出し、以下、上述したように、抽出されたマッチング単位でマッチング演算処理部317がマッチング処理を実行する。
【0035】
図4は第2実施形態の全体的動作を示すフローチャートである。まず、縮小処理部111は、符号化しようとしている現フレームデータを現フレームバッファ101から入力してサブサンプリングする(ステップS401)。同様に、縮小処理部111は、参照フレームデータを参照フレームバッファ102から入力してサブサンプリングする(ステップS402)。
【0036】
次に、フレームの先頭から第1段の探索処理を開始するため、縮小した現フレームの先頭のブロックにポインタを合わせ(ステップS403)、縮小したデータを用いた第1段の動き探索を開始する。まず、動き複雑度判定部314は過去の動きベクトルの統計情報や予測誤差の大きさ等に基づいて動きの複雑度を判定し(ステップS404)、マッチング単位決定部315は判定された動きの複雑さに応じてマッチング単位の大きさを決定する(ステップS405)。
【0037】
具体的には、動き複雑度が比較的大きいところではマッチング単位(水平方向Nブロック×垂直方向Mブロック)が小さくなり、動き複雑度が比較的小さいところ(動きの単調なところ)ではマッチング単位が大きくなるように、たとえばNおよびMの値を予め定めテーブル化して格納しておく。マッチング単位抽出部211は、決定されたマッチング単位のサイズに応じてマッチング単位を抽出する(ステップS406)。
【0038】
続いて、マッチング演算処理部317は、抽出されたN×Mブロック領域をマッチング単位として、縮小画像上で動きベクトル探索を実行し(ステップS407)、現フレームの縮小画像と参照フレームの縮小画像との間で相関が一番高くなる位置を決定する。一つ目のブロックの探索が終了したら、まだ探索が行われていない隣接するブロックにポインタを移動させ(ステップS408)、フレーム内のすべてのブロックについて探索が終了するまで、同様の動きベクトル探索(ステップS404〜S408)を繰り返す(ステップS409)。この第1段探索では、N×Mブロック領域をマッチング単位として一括探索されているために、第1段探索結果はN×Mブロックで同一の動きベクトルとなる。
【0039】
第1段の動きベクトル探索が終了すると(ステップS409のYES)、第2段の動き探索処理部105は、現フレームの先頭のブロックにポインタを合わせる(ステップS410)。そして、第1段の探索で決定された動きベクトルを中心に、1ブロックをマッチング単位として、マッチング処理をおこなう(ステップS411)。一つ目のブロックの探索が終了したら、次のブロックにポインタを移動させ(ステップS412)、すべてのブロックの探索が終了するまで第2段の動き探索を順次実行する(ステップS411〜S412)。フレーム内のすべてのブロックについて探索が終了していたら第2段の探索を終了させ(ステップS413のYES)、最も相関が大きいと判定された位置を最終的な動きベクトルとする。
【0040】
このように、動きの複雑なところでは小さいマッチング単位で探索し、動きの単調なところでは大きいマッチング単位で探索するため、探索精度の低下をより小さくし、かつ高速な動きベクトル探索が可能となる。
【0041】
【実施例】
次に、横方向の画素数が720、縦方向の画素数が480の動画像を符号化する場合を具体例として、本発明による動きベクトル探索方法について説明する。
【0042】
符号化方式は横方向16画素、縦方向16画素を一つのブロックとして、ブロックごとに動きベクトルを割り当てる方式を採用しているものとし、第1段の動きベクトル探索のマッチング単位が水平方向2ブロック×垂直方向1ブロックに設定されているものとする。
【0043】
図5は、本発明による動きベクトル探索方法の一実施例を説明するための模式的な流れ図である。まず、水平720画素×垂直480画素のオリジナルフレームデータ501を所定の縮小率(ここでは水平および垂直方向に1/2)でサブサンプリングし、水平360画素×垂直240画素の縮小フレームデータ502を生成する。このとき、1ブロックのサイズは、水平8画素×垂直8画素となる。
【0044】
この縮小フレームデータ502を用いて、8×8ブロックの水平方向2個分となる水平16画素×垂直8画素のサイズをマッチング単位として第1段の複数ブロック一括探索を実行する。上述したように、各ブロックにおいて、あらかじめ指定された探索範囲内のすべての点を探索し相関が最も大きくなる位置を探す。ここでは、第1段探索によって、探索中心から左に6画素(−6)、下に3画素の動きベクトル(−6,3)が特定されたと仮定する。
【0045】
次に、第1段の探索で得られた探索結果の画素位置を本来の解像度の画素位置にマッピングする。ここでは、水平および垂直方向に2倍した位置(−12,6)にマッピングされる。マッピングされた位置(−12,6)とそれを中心とする周辺とが1ブロック(16×16)をマッチング単位として探索される。すなわち、第1段で一括探索した2つのブロックそれぞれについて、(−12,6)に基づいて第2段の探索が実行される。このように第1段の探索結果は隣接する2つのブロックで同一のものになっているが、第2段の探索では1ブロックごとに探索を行うために、最終的に得られる動きベクトルはブロックごとに異なるものとなる。
【0046】
このように動きベクトル探索を行うことで、通常の探索よりも高速でかつ精度の良く動きベクトルを検出することができる。
【0047】
図6は、本発明による動きベクトル探索装置の他の実施形態であるコンピュータシステムを示すブロック図である。このコンピュータシステムには、プログラム制御プロセッサ601が装備されている。プログラム制御プロセッサ601には、現フレームバッファ611および参照フレームバッファ612の他に、必要なプログラムを格納したプログラムメモリ602と、縮小現フレームバッファ613および縮小参照フレームバッファ614を含む縮小フレームバッファ603と、が接続されている。
【0048】
プログラムメモリ602には、本発明による動きベクトル探索を実行するためのメインプログラムの他に、上述した縮小処理部615、マッチング単位抽出処理部616、複数ブロックを一括探索する第1段動き探索処理部617、1ブロックごとの探索をおこなう第2段動き探索処理部618をそれぞれ機能的に実現するプログラムモジュールが格納されている。プログラムメモリ602には、更に動き複雑度判定部およびマッチング単位決定部が格納され、本発明の第2実施形態をインプリメントすることもできる。メインプログラムおよび各機能モジュールをプログラム制御プロセッサ601で実行することで、本発明による動きベクトル探索が実行される。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明による動きベクトル探索方法及び装置は、サブサンプリングを行って第1の探索を実行する際に、隣接する複数ブロックを一括探索する。このように構成することで、演算量が削減され、動きベクトル探索を高速化できる。また、第2探索においては1ブロックごとに探索をおこなうため、動きベクトル探索の精度の低下は最小限に抑えることができる。
【0050】
さらに、第1探索を実行する際に隣接する複数のブロックを一括探索するため、隣同士のブロックの動きベクトルの差が小さくなる。このため、動きベクトルを符号化するために必要となる符号量を少なくすることができ、ブロックデータの符号化のためにより多くの符号量を割り当てることができる。したがって、動きベクトル探索において若干の探索精度低下が見られるが、画質の低下は最小限に抑えることができる。
【0051】
また、本発明によれば、第1の探索において既に動きベクトルを求めた周囲のブロックにおける動きベクトルの方向の分布に応じてマッチング単位を変化させることができる。このために、動きの複雑なところではマッチング単位を小さくし、動きの単調なところでは大きくする、というように動きに応じた適切な探索が可能となり、探索精度の低下をより小さくし、かつ高速な動きベクトル探索が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による動きベクトル探索装置の第1実施形態を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態の全体的動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明による動きベクトル探索装置の第2実施形態を示すブロック図である。
【図4】第2実施形態の全体的動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明による動きベクトル探索方法の一実施例を説明するための模式的な流れ図である。
【図6】本発明による動きベクトル探索装置の他の実施形態であるコンピュータシステムを示すブロック図である。
【図7】(A)は、一般的な多段探索法を説明するための画素配列を示す模式図であり、(B)は第2段の探索の様子を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
101 現フレームバッファ
102 参照フレームバッファ
103 サブサンプリング処理部
104 第1段動き探索処理部
105 第2段動き探索処理部
111 縮小処理部
112 縮小現フレームバッファ
113 縮小参照フレームバッファ
114 マッチング単位抽出部
115 マッチング演算処理部
314 動き複雑度判定度判定部
315 マッチング単位決定部
316 マッチング単位抽出部
317 マッチング演算処理部
601 プログラム制御プロセッサ
602 プログラムメモリ
603 縮小フレームバッファ
611 現フレームバッファ
612 参照フレームバッファ
613 縮小現フレームバッファ
614 縮小参照フレームバッファ
615 縮小処理
616 マッチング単位抽出
617 複数ブロックによる1段目探索
618 1ブロックごとの2段目探索

Claims (4)

  1. 動画像の符号化における動きベクトルを探索する装置において、
    対象画像および参照画像の縦方向及び横方向を縮小して縮小対象画像および縮小参照画像をそれぞれ生成する画像縮小手段と、
    前記縮小対象画像および縮小参照画像に基づいて、隣接する複数個のブロックからなる探索単位で第1動きベクトルを探索する第1探索手段と、
    前記第1動きベクトルにより決定される探索範囲内で、前記縮小前の画像解像度により1ブロック単位で第2動きベクトルを探索し前記動きベクトルを決定する第2探索手段と、
    を有し、
    前記第1探索手段は、既に動きベクトルを求めた周囲のブロックにおける動きベクトルの方向の一致の程度が大きいほど、前記探索単位の大きさを大きくすることを特徴とする動きベクトル探索装置。
  2. 動画像の符号化における動きベクトルを探索する方法において、
    対象画像および参照画像の縦方向及び横方向を縮小して縮小対象画像および縮小参照画像をそれぞれ生成し、
    前記縮小対象画像および縮小参照画像に基づいて、隣接する複数個のブロックからなる探索単位で第1動きベクトルを探索し、
    前記第1動きベクトルにより決定される探索範囲内で、前記縮小前の画像解像度により1ブロック単位で第2動きベクトルを探索することで前記動きベクトルを決定し、
    前記探索単位の大きさ、既に動きベクトルを求めた周囲のブロックにおける動きベクトルの方向の一致の程度が大きいほど、大きくする
    ことを特徴とする動きベクトル探索方法。
  3. 動画像の符号化における動きベクトル探索を実行するコンピュータシステムにおいて、
    対象画像データを格納する対象画像バッファと、
    参照画像を格納する参照画像バッファと、
    動画像の符号化における動きベクトル探索をコンピュータに実行させるための命令からなるプログラムを格納するメモリと、
    前記プログラムを実行するプログラム制御プロセッサと、
    を有し、前記プログラムは、少なくとも、
    前記対象画像および前記参照画像を縮小し、縮小対象画像および縮小参照画像をそれぞれ生成する画像縮小部と、
    前記縮小対象画像および縮小参照画像に基づいて第1動きベクトルを探索する際に隣接する複数のブロックを探索単位として一度に探索する第1探索部と、
    前記第1動きベクトルにより決定される位置の探索範囲内で、前記縮小前の画像解像度により1ブロックごとに第2動きベクトルを探索して前記動きベクトルを決定する第2探索部と、
    を有し、前記第1探索部は、既に動きベクトルを求めた周囲のブロックにおける動きベクトルの方向の一致の程度が大きいほど、前記探索単位のブロック数を大きくすることを特徴とするコンピュータシステム。
  4. 動画像の符号化における動きベクトル探索をコンピュータに実行させるための命令からなるコンピュータプログラムにおいて、
    対象画像および参照画像の縦方向及び横方向を縮小して縮小対象画像および縮小参照画像をそれぞれ生成するステップと、
    前記縮小対象画像および縮小参照画像に基づいて、隣接する複数個のブロックからなる探索単位で第1動きベクトルを探索する第1探索ステップと、
    前記第1動きベクトルにより決定される探索範囲内で、前記縮小前の画像解像度により1ブロック単位で第2動きベクトルを探索することで前記動きベクトルを決定する第2探索ステップと、
    を有し、前記探索単位の大きさ、既に動きベクトルを求めた周囲のブロックにおける動きベクトルの方向の一致の程度が大きいほど、大きくすることを特徴とするコンピュータプログラム。
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