JP4225837B2 - プラネタリウム投映装置および天文シミュレータ用のプログラム - Google Patents

プラネタリウム投映装置および天文シミュレータ用のプログラム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,擬似宇宙飛行や天体の固有運動の演出が可能なプラネタリウム投映装置および天文シミュレータ用のプログラムに関するものである。本明細書において,プラネタリウムとは,スクリーン上に主として星野の映像を投映する設備をいう。
【0002】
【従来の技術】
近年,電子映像が投映可能なプラネタリウム投映装置や天文シミュレータでは,恒星の固有運動や擬似宇宙飛行の演出が可能なものがある。恒星の固有運動とは,個々の恒星が長い年月の間に宇宙空間内で移動して,地球上から見た見かけ上の位置が個別に変化する現象のことである。また,擬似宇宙飛行とは,例えば地球を脱出して数万光年の彼方の宇宙空間で見た星野を投映するといったシミュレーション機能のことである。
【0003】
なお,前述した恒星の固有運動や擬似宇宙飛行の演出が可能なプラネタリウム投映装置あるいはパソコン用の天文シミュレータソフトとしては,幾つか製品化されたものがある。しかしながら,文献として本発明に関連したものを探しえなかったため,本明細書では先行技術文献情報を記載していない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,前記した従来のプラネタリウム投映装置等には次のような問題点があった。すなわち,恒星の固有運動の演出では,数万年以上の時間の経過によって恒星の位置が変化していく様子をシミュレートしている。そのため,現在の恒星の配列で構成されている星座は,何万年もの年代を進めたり遡ったりすることでその配列が崩れてしまうことがある。一方,星座絵は,地球上から見た状態での現在の恒星の配列から連想された動物等を描いたものである。従って,恒星の配列が崩れた星座に対して星座絵を重ねると,不自然な映像になってしまう。
【0005】
また,擬似宇宙飛行の演出では,観測位置の移動により恒星の投映位置が変化するため,視点移動による視差が生じる。そして,長距離飛行をシミュレートする場合,その視差の影響により恒星の配列がその移動とともに崩れてしまう。従って,恒星の固有運動の演出と同様に,恒星の配列が崩れた星座に対して星座絵を重ねると,不自然な映像になってしまう。
【0006】
さらに,プラネタリウム投映装置では,赤道線,黄道線等の極座標線を投映することがある。しかしながら,これらの極座標線は,地球や太陽を基準として描かれるものである。そのため,擬似宇宙飛行の演出中に地球や太陽から遠く離れた観測位置でこれらの極座標線を投映すると,きわめて不自然な映像となってしまう。
【0007】
また,従来のプラネタリウム投映装置では,操作者自身が不自然な映像になったことを判断し,星座絵等の解説補助を非投映にする必要がある。そのため,操作が複雑であるとともに天文知識が少ない操作者にとっては非常に高度な操作であった。また,不自然な映像であるにもかかわらず解説補助の投映操作を行うこともあり,観客に対して不的確な解説をしてしまうこともあった。
【0008】
本発明は,前記した従来のプラネタリウム投映装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,恒星の固有運動や擬似宇宙飛行の演出が可能であり,操作者に高度な天文知識を要求することなく,観客に対して自然な映像を維持することができるプラネタリウム投映装置および天文シミュレータ用のプログラムを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この課題の解決を目的としてなされたプラネタリウム投映装置は,天体の固有運動の演出が可能なプラネタリウム投映装置であって,基準時刻とシミュレーション時刻との時間差を基に,星野の解説を補助する補助画像の投映可否の判定を行う投映判定手段と,投映判定手段にて投映不可と判定された場合には,補助画像を含まない星野の映像を作成し,投映判定手段にて投映可能と判定された場合には,補助画像を含む星野の映像を作成する映像作成手段と,映像作成手段にて作成された星野の映像をスクリーン上に投映する投映手段とを有するものである。また,別の発明のプラネタリウム投映装置は,擬似宇宙飛行の演出が可能なプラネタリウム投映装置であって,基準天体からシミュレーション位置までの距離を基に,星野の解説を補助する補助画像の投映可否の判定を行う投映判定手段と,投映判定手段にて投映不可と判定された場合には,補助画像を含まない星野の映像を作成し,投映判定手段にて投映可能と判定された場合には,補助画像を含む星野の映像を作成する映像作成手段と,映像作成手段にて作成された星野の映像をスクリーン上に投映する投映手段とを有するものである。
【0010】
また,本発明の天文シミュレータ用のプログラムは,天体の固有運動の演出が可能な天文シミュレータのコンピュータに,基準時刻とシミュレーション時刻との時間差を基に,星野の解説を補助する補助画像の表示可否の判定を行う表示判定機能と,表示判定機能にて表示不可と判定された場合には,補助画像を含まない星野の画像を作成し,表示判定手段にて表示可能と判定された場合には,補助画像を含む星野の画像を作成する画像作成機能とを実現させるものである。また,別の発明の天文シミュレータ用のプログラムは,擬似宇宙飛行の演出が可能な天文シミュレータのコンピュータに,基準天体からシミュレーション位置までの距離を基に,星野の解説を補助する補助画像の表示可否の判定を行う表示判定機能と,表示判定機能にて表示不可と判定された場合には,補助画像を含まない星野の画像を作成し,表示判定手段にて表示可能と判定された場合には,補助画像を含む星野の画像を作成する画像作成機能とを実現させるものである。
【0011】
すなわち本発明では,投映判定手段にて,現在時刻あるいは現在位置を基に,星座絵,星座線等の補助画像,いわゆる解説補助についての投映可否の判定が行われる。すなわち,投映判定手段にて,現在時刻あるは現在位置について,観客に対して不自然な映像であるか否かを判定している。なお,ここでいう現在時刻および現在位置は,擬似宇宙飛行または天体の固有運動の演出における時刻および位置であって,実際の時刻および観客の位置のことではない。そして,映像作成手段にて,その判定結果に従った画像が作成される。すなわち,不自然な映像と判定された場合には,解説補助を含む映像は作成されない。そして,作成された映像は,投映手段を介してスクリーンに投映される。これにより,不自然な映像になることなく,観客に対して自然な映像を維持することができる。また,プラネタリウム投映装置自体が解説補助の投映可否を自動的に判断している。従って,操作者は高度な天文知識を要求しない。なお,投映手段については,1つであっても複数であってもよい。
【0012】
また,本発明のプラネタリウム投映装置は,補助画像をスクリーン上に表示するか否かを選択する操作手段と,投映判定手段にて補助画像が投映不可と判定された場合には,操作手段にてその補助画像の選択を抑制する操作制御手段とを有し,映像作成手段は,投映判定手段にて投映不可と判定された場合には,操作手段の選択内容に関わらず補助画像を含まない映像を作成することとするとよりよい。すなわち,操作手段により補助画像をスクリーン上に表示するか否かを選択することができる。なお,この選択は,操作者(オペレータ)によって行われる。そして,抑制する手段としては,例えばその補助画像の選択ボタンを非表示にする。あるいは,その補助画像の選択ボタンの表示色を変更してもよい。さらには,その選択ボタンの入力を無効にしてもよい。これにより,操作者は,投映すると不自然な映像となる解説補助を識別することができる。そのため,誤って不自然な映像となる解説補助を投映してしまうことを防ぐことができる。
【0013】
また,本発明のプラネタリウム投映装置の投映判定手段は,基準時刻と現在時刻との時間差により補助画像の投映可否の判定を行うこととするとよりよい。これにより,何万年もの年代を進めたり遡ったりする場合,すなわち天体の固有運動の演出を行う場合に,スクリーンあるいは操作画面の表示が自動的に切り換えられる。これにより,不自然な映像となることはない。
【0014】
また,本発明のプラネタリウム投映装置の投映判定手段は,基準天体から現在位置までの距離により補助画像の投映可否の判定を行うこととするとよりよい。これにより,現在位置を移動させる場合,すなわち擬似宇宙飛行の演出を行う場合に,スクリーンあるいは操作画面の表示が自動的に切り換えられる。これにより,不自然な映像となることはない。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
[第1の形態]
本形態のプラネタリウム装置は,図1に示すようにドームスクリーン1と,その中央下に設置された投映装置10とを有している。さらに投映装置10は,映像制御部2と,映像投映部3と,魚眼レンズ4と,操作部5と,スピーカ6とを備えている。映像制御部2は,ドームスクリーン1上に投映するビデオ映像を制御するためのものである。また,映像制御部2は,プラネタリウム施設内に放送する音声等を制御することも可能である。映像投映部3は,ビデオ映像をドームスクリーン1上に投映するためのものである。魚眼レンズ4は,ビデオ映像をドームスクリーン1の全体に投映するためのレンズである。操作部5は,操作パネルを通じて操作者が実演中あるいは実演前に映像内容の設定を行うためのものである。操作部5の操作パネルとしては,例えばタッチパネルが該当する。そして,操作部5の操作パネルには複数のボタンが表示されており,操作者はそれらのボタンにより種々の機能を選択することが可能である。選択可能な機能には,星座絵,星座線,極座標線等のいわゆる解説補助機能の他,恒星の固有運動や擬似宇宙飛行等のシミュレーション機能がある。恒星の固有運動の演出を行うためには,あらかじめ目標時刻を設定する必要がある。また,擬似宇宙飛行の演出を行うためには,あらかじめ目標地(経由地も含む)を設定する必要がある。なお,目標時刻および目標地は,操作部5にて実演中に設定することが可能である。
【0017】
図1に示したプラネタリウム装置の映像制御部2は,図2のブロック図に示すように制御部21と,データ格納部22と,映像メモリ23と,映像生成部24と,音声生成部25とを備えている。制御部21は,操作部5からの命令等に従って,映像制御,音声制御,照明制御等を行うものである。データ格納部22は,制御に必要なデータや投映等に必要なファイルを格納するものである。格納されているデータには,例えば各天体の明るさ,固有運動の情報や各星座の名前,配列がある。また,格納されているファイルには,例えば天体の写真画像や星座絵がある。映像生成部24は,ドームスクリーン1上に投映する映像を生成するものである。生成された映像は,映像投映部3に送られてドームスクリーン1上に投映される。音声生成部24は,プラネタリウム施設内に放送される音声を生成するものである。生成された音声は,スピーカ6を介してプラネタリウム施設内に放送される。
【0018】
次に,本形態のプラネタリウム装置にて恒星の固有運動の演出を行う際の動作について説明する。恒星の固有運動の演出では,シミュレーションの時刻T(以下,「現在時刻T」とする)を進める(もしくは遡る)とともにその時間の経過に伴って天体の位置を変化させる処理が行われる。操作者は,操作部5で目標時刻Tsを設定し,恒星の固有運動の演出開始を指示する。なお,目標時刻Tsは,未来の時刻であっても,過去の時刻であってもよい。そして,その指示を受けた映像制御部2では,現在時刻Tを進めるとともに天体の位置を徐々に変化させる映像を作成する。さらに,時間の経過に応じて解説補助の表示や操作部5の操作パネルの表示を切り換える。以下,図3のフローチャートを基に,現在時刻Tを進めたときの本発明の処理について述べる。
【0019】
まず,現在時刻Tを取得する(S11)。次に,取得した現在時刻Tがあらかじめ設定された限界時刻の範囲内であるか否かを判断する(S12)。すなわち,時刻Tが未来側の上限時刻T1(例えば,AD7001年1月1日0時0分0秒)よりも未来の時刻であるか否か,また過去側の下限時刻T2(例えば,BC3000年1月1日0時0分0秒)よりも過去の時刻であるか否かを判断する。時刻Tが範囲外の場合(S12:NO)は,星座絵を投映しているか否かを判断する(S13)。星座絵を投映している場合(S13:YES)は,星座絵を非投映にする(S14)。S14の処理後または星座絵を投映していない場合(S13:NO)は,操作部5の星座絵に関する操作ボタンを操作禁止にする(S15)。具体的には,その操作ボタンの表示色を変更し,その操作ボタンの入力を無効にする。なお,その操作ボタンを非表示としてもよい。S15の処理後または時刻Tが範囲内の場合(S12:YES)は,現在時刻Tが目標時刻Tsに達したか否かを判断する(S16)。目標時刻Tsに達していない場合(S16:NO)は,S11の処理まで戻ってこれまでの処理を繰り返す。目標時刻Tsに達している場合(S16:YES)は,時間経過時の処理を終了する。本処理により現在時刻Tに伴って自動的にドームスクリーン1および操作部5の表示が切り換えられる。
【0020】
なお,時刻Tの限界時刻は,図3の処理では全星座に共通な閾値として設定されているが,星座ごとに設定されていてもよい。このようにすると,星座ごとにドームスクリーン1および操作部5の表示を切り換えることができる。
【0021】
次に,恒星の固有運動の演出を行った場合のドームスクリーン1上の表示例および操作部5の表示例について説明する。図4は,現在時刻Tを進めた場合のドームスクリーン1上の投映イメージを示す図である。図4(A)は,恒星の固有運動の演出開始時点の星野を表している。さらに解説補助として,おおいぬ座の星座絵および星座線が投映されている。また,開始時刻をAD2000年1月15日21時0分0秒とすると,操作パネルの表示は図5に示すような画面となる。この画面では,星座に関する解説補助の選択を行うことが可能である。解説補助の内容としては,例えば星座絵,星座線,星座名等がある。また,星座はおおいぬ座に限らず他の星座も選択することが可能である。また,画面には,現在時刻およびシミュレーション中の観測位置(以下,「現在位置」とする)が表示されている。
【0022】
図4(B)は,図4(A)の時刻から3000年後の星野を表している。この星野では,恒星の固有運動により図4(A)の星野と比較して天体の配置が変化している。例えば,おおいぬ座の前腕部を示す恒星の位置が変化している。図4(C)は,時刻をさらに進めてAD7000年での星野を表している。この時点まで時刻を進めると,図4(A)の時点と比較してかなりの天体の配置が異なっている。そして,この時点の配置からおおいぬを連想することは非常に困難である。それゆえ,自動的に星座絵を非投映にする。具体的には,前述したように上限時刻T1および下限時刻T2を設けてその範囲内であるか否かにより自動的に非投映にする。さらに,操作パネルの表示が図6に示すような画面に切り換えられる。すなわち,星座絵に関するボタンの表示が自動的に切り換えられる。さらに,星座絵に関するボタンの入力を受け付けない状態になる。従って,操作者は,不自然な状態で星座絵を投映してしまうことがない。
【0023】
なお,前述した時間経過時の処理(図3)では,現在時刻Tによって表示を切り換えているが,天体の位置によって表示を切り換えることも可能である。以下,図7のフローチャートを基に,天体の位置によって表示を切り換える処理について述べる。
【0024】
まず,現在時刻Tを取得する(S21)。次に,取得した現在時刻Tでの目印天体の投映位置を算出する(S22)。本処理では,目印天体をシリウス,αケンタウリ,アークトゥルスの3つの恒星とする。なお,目印天体はこれに限るものではない。また,目印天体の数も3つに限るものではない。次に,それらの目印天体について,シミュレーション時刻Tでの投映方向と基準時刻での投映方向とのずれ量(差分)を算出する(S23)。本処理では,基準時刻を2000年とする。なお,それ以外の時刻であっても,星座絵を表示した際に不自然とならない時刻であればいつでもよい。次に,算出したずれ量が許容範囲内であるか否かを判断する(S24)。例えば,3つの目印天体のうち1つでも5度以上のずれがあれば,全体として許容範囲外と判断する。ずれ量が許容範囲外の場合(S24:NO)は,星座絵を投映しているか否かを判断する(S25)。星座絵を投映している場合(S25:YES)は,星座絵を非投映にする(S26)。S26の処理後または星座絵を投映していない場合(S25:NO)は,操作部5にて星座絵の操作ボタンを操作禁止にする(S27)。S27の処理後またはずれ量が許容範囲内の場合(S24:YES)は,現在時刻Tが目標時刻Tsに達しているか否かを判断する(S28)。目標時刻Tsに達していない場合(S28:NO)は,S21の処理まで戻ってこれまでの処理を繰り返す。目標時刻Tsに達している場合(S28:YES)は,時間経過時の処理を終了する。本処理でも,図3に示した処理と同様に現在時刻Tに伴ってドームスクリーン1および操作部5の表示を切り換えることができる。
【0025】
次に,本形態のプラネタリウム装置にて擬似宇宙飛行の演出を行う際の動作について説明する。擬似宇宙飛行の演出では,現在位置Pを移動させるとともにその変化に伴って天体の位置を変化させる処理が行われる。操作者は,操作部5で目標地Psを設定し,擬似宇宙飛行の演出開始を指示する。そして,その指示を受けた映像制御部2では,現在位置Pを移動させるとともに天体の位置を変化させる映像を作成する。さらに,それらの変化に応じて解説補助の表示や操作部5の操作パネルの表示を切り換える。以下,図8のフローチャートを基に,現在位置Pを移動させたときの本発明の処理について述べる。
【0026】
まず,基準天体から現在位置Pまでの距離Dを算出する(S31)。基準天体としては,例えば太陽や地球が該当する。次に,算出した距離Dがあらかじめ設定された投映可能距離D1以下であるか否かを判断する(S32)。本処理では,投映可能距離が100天文単位に設定されている。距離Dが投映可能距離D1以下の場合(S32:NO)は,星座絵を投映しているか否かを判断する(S33)。星座絵を投映している場合(S33:YES)は,星座絵を非投映にする(S34)。S34の処理後または星座絵を投映していない場合(S33:NO)は,操作部5の星座絵の操作ボタンを操作禁止にする(S35)。S35の処理後または距離Dが許容範囲内の場合(S32:YES)は,現在位置Pが目標地Psに達したか否かを判断する。目標地Psに達していない場合(S36:NO)は,S31の処理まで戻ってこれまでの処理を繰り返す。目標地Psに達している場合(S36:YES)は,現在位置移動時の処理を終了する。本処理により現在位置Pの移動に伴って自動的にドームスクリーン1および操作部5の表示が切り換えられる。
【0027】
なお,前述した処理では,星座絵を対象に表示の切換えを自動的に行っているが,切換えの対象となる解説補助は星座絵に限るものではない。例えば,赤道座標,黄道座標等の極座標線が表示されていた場合には,そのような極座標線も星座絵とともに自動的に切り換えることも可能である。また,すべての解説補助について,映像を切り換えるとする必要はない。例えば,星座線についてはドームスクリーン1上の表示を切り換えないとしてもよい。その場合,操作部5の表示も切り換えなくてもよい。
【0028】
次に,擬似宇宙飛行の演出を行った場合のドームスクリーン1上の表示例および操作部5の操作パネルの表示例について説明する。図9は,現在位置Pが移動した場合のドームスクリーン1上の投映イメージを示す図である。図9(A)は,擬似宇宙飛行の演出開始地点,具体的には地球上空での星野を表している。さらに解説補助として,はくちょう座の星座絵および星座線が投映されている。また,現在位置Pを地球上空とすると,操作パネルの表示は図5に示すような画面となる。また,現在位置Pを地球とすると,極座標線を表示することが可能である。極座標線を選択する操作パネルの画面としては,例えば図10に示すようなものがある。
【0029】
図9(B)は,目標地Psをはくちょう座のデネブに設定し,観測者の視点をデネブに向けて回転させたときの星野を表している。図9(C)は,デネブに向かって擬似宇宙飛行を開始し,基準天体から100天文単位以上離れた地点での星野を表している。この図9(C)の星野では,擬似宇宙飛行の開始地点(地球上空)比較してかなりの天体の配置が異なっている。そのため,自動的に星座絵を非投映にする。具体的には,前述したように基準天体からの距離Dが投映可能距離D1を超えているか否かによって自動的に非投映にする。さらに,操作パネルの表示が図11に示すような画面に切り換えられる。すなわち,星座絵のボタンの表示が自動的に切り換えられる。また,極座標線の選択画面も同様に図12に示すような画面に切り換えられる。すなわち,極座標線の表示を選択することが不可能になる。従って,操作者は,不自然な状態で星座絵や極座標線を投映してしまうことがない。
【0030】
なお,前述した現在位置移動時の処理(図8)では,現在位置Pと基準天体との距離Dによって表示を切り換えているが,天体の位置によって表示を切り換えることも可能である。以下,図13のフローチャートを基に,天体の位置によって表示を切り換える処理について述べる。
【0031】
まず,現在位置Pを取得する(S41)。次に,取得した現在位置Pでの目印天体(シリウス,αケンタウリ,アークトゥルス等)の投映方向を算出する(S42)。次に,目印天体について,現在位置Pでの投映方向と基準位置での投映方向とのずれ量(差分)を算出する(S43)。ここでいう基準位置での投映方向とは,基準位置すなわち地球から見た投映方向のことである。次に,算出したずれ量が許容範囲内であるか否かを判断する(S44)。ずれ量が許容範囲外の場合(S44:NO)は,星座絵を投映しているか否かを判断する(S45)。星座絵を投映している場合(S45:YES)は,星座絵を非投映にする(S46)。S46の処理後または星座絵を投映していない場合(S45:NO)は,操作部5にて星座絵の操作ボタンを操作禁止に変更する(S47)。S47の処理後またはずれ量が許容範囲内の場合(S44:YES)は,現在位置Pが目標地Psに達しているか否かを判断する(S48)。目標地Psに達ていない場合(S48:NO)は,S41の処理まで戻ってこれまでの処理を繰り返す。目標地Psに達している場合(S48:YES)は,現在位置Pの移動時の処理を終了する。本処理でも,図8に示した処理と同様に現在位置Pの移動とともにドームスクリーン1および操作部5の表示を切り換えることができる。
【0032】
以上詳細に説明したように本形態のプラネタリウム装置では,恒星の固有運動の演出中に,現在時刻Tに伴ってドームスクリーン1および操作部5の表示を自動的に切り換えることとしている。すなわち,ドームスクリーン1上に投映されている解説補助を自動的に非投映にすることとしている。さらに,操作部5の操作パネルについて,解説補助に関するボタンの表示を自動的に切り換えることとしている。また,擬似宇宙飛行の演出中にも,現在位置Pの移動に伴ってドームスクリーン1および操作部5の表示を自動的に切り換えることとしている。そのため,不自然な状態で星座絵等の解説補助を投映することがない。また,操作者が誤って解説補助の表示を行うこともない。また,表示の切換えを自動的に行っているため,天文知識が少ない操作者に負担をかけることがない。従って,恒星の固有運動や擬似宇宙飛行の演出が可能であり,操作者に高度な天文知識を要求することなく,観客に対して自然な映像を維持することができるプラネタリウム投映装置が実現されている。
【0033】
[第2の形態]
本形態のプラネタリウム装置は,図14に示すようにドームスクリーン1と,その周縁に設置された投映部11〜16と,操作部18とを有している。操作部18は,ドームスクリーン1全体に投映される映像内容の設定を行うためのものである。各投映部は,ドームスクリーン1上に星野を投映するものであり,それぞれ全天の星野のうち割り当てられた領域を担当している。そして,各投映部の協働により,ドームスクリーン1全体に星野の映像を投映している。詳細には,図15に示すように投映部11〜15が周縁沿いの5領域をそれぞれ担当し,投映部16が天頂部分の1領域を担当している。すなわち,第1の形態のプラネタリウム装置は,1台の投映装置10により映像を投映する単眼式投映装置であるのに対し,本形態のプラネタリウム装置は,複数台の投映部11〜16により映像を投映する多眼式投映装置である。
【0034】
また,本形態のプラネタリウム装置は,図16のブロック図に示すように統合制御部50と,映像制御部51と,複数の映像生成部からなる映像生成部群52と,映像調整部53とを備えている。統合制御部50は,操作部18からの命令等に従って,映像制御,音声制御,照明制御等を行うものである。映像制御部51は,統合制御部50からの命令等に従って,1つの画像を6つの領域に分割するものである。映像生成部群52は,各映像生成部がそれぞれ投映部11〜16に対応しており,それぞれの投映部に対応した映像を生成するものである。映像調整部53は,6分割された領域のうち,重なり部分についての繋ぎ合わせ処理を行うものである。調整された映像は,各投映部に送られてドームスクリーン1上に投映される。
【0035】
このように構成されたプラネタリウム装置であっても,第1の形態と同様に恒星の固有運動や擬似宇宙飛行の演出が可能である。そして,それらの演出中に,統合制御部50にて図3および図8に示したような処理を行うことが可能である。そのため,恒星の固有運動の演出中に,時間の経過に伴って自動的にドームスクリーン1および操作部18の表示を切り換えることが可能である。さらに,擬似宇宙飛行の演出中に,現在位置の移動に伴って自動的にドームスクリーン1および操作部18の表示を切り換えることが可能である。従って,本形態のプラネタリウム投映装置は,操作者に高度な天文知識を要求することはない。また,観客に対して自然な映像を維持することができる。
【0036】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,本実施の形態ではプラネタリウム装置に本発明を適用しているが,これに限るものではない。すなわち,平面スクリーンに投映するビデオ映像投映装置であってもよい。また,パーソナルコンピュータ用の天文シミュレータであってもよい。また,テレビゲームやゲーム専用機に適用することも可能である。
【0037】
なお,上述した本発明の実施形態には,特許請求の範囲に記載した発明以外にも,以下の付記に示すような発明が含まれる。
【0038】
[付記1] 擬似宇宙飛行または天体の固有運動の少なくとも一方の演出が可能なプラネタリウム投映装置において,
現在時刻あるいは現在位置を基に,星野の解説を補助する補助画像の投映可否の判定を行う投映判定手段と,
前記投映判定手段にて投映不可と判定された場合には,補助画像を含まない映像を作成し,前記投映判定手段にて投映可能と判定された場合には,補助画像を含む映像を作成する映像作成手段と,
前記映像作成手段にて作成された映像をスクリーン上に投映する投映手段とを有することを特徴とするプラネタリウム投映装置。
【0039】
[付記2] 付記1に記載するプラネタリウム投映装置において,
星野の解説を補助する補助画像をスクリーン上に表示するか否かを選択する操作手段と,
前記投映判定手段にて補助画像が投映不可と判定された場合には,前記操作手段でのその補助画像の選択を抑制する操作制御手段とを有することを特徴とするプラネタリウム投映装置。
【0040】
[付記3] 付記1または付記2に記載するプラネタリウム投映装置において,
前記投映判定手段は,現在の時刻での目印天体の投映位置を算出し,算出された投映位置と基準時刻での目印天体の投映位置との差により補助画像の投映可否の判定を行うことを特徴とするプラネタリウム投映装置。
【0041】
[付記4] 付記1または付記2に記載するプラネタリウム投映装置において,
前記投映判定手段は,現在の位置での目印天体の投映位置を算出し,算出された投映位置と基準位置での目印天体の投映位置との差により補助画像の投映可否の判定を行うことを特徴とするプラネタリウム投映装置。
【0042】
[付記5] 擬似宇宙飛行または天体の固有運動の少なくとも一方の演出が可能な天文シミュレータのコンピュータに,
現在時刻あるいは現在位置を基に,星野の解説を補助する補助画像の表示可否の判定を行う表示判定機能と,
前記表示判定機能にて表示不可と判定された場合には,補助画像を含まない画像を作成し,前記表示判定手段にて表示可能と判定された場合には,補助画像を含む画像を作成する画像作成機能とを実現させることを特徴とする天文シミュレータ用のプログラム。
【0043】
[付記6] 付記5に記載する天文シミュレータ用のプログラムにおいて,
補助画像を画面上に表示するか否かを操作者に選択させる選択機能と,
前記表示判定機能にて補助画像が表示不可と判定された場合には,前記選択機能にてその補助画像の選択を抑制する操作制御機能とを実現させ,
映像作成機能は,前記表示判定機能にて表示不可と判定された場合には,前記選択機能の選択内容に関わらず補助画像を含まない画像を作成することを特徴とする天文シミュレータ用のプログラム。
【0044】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明によれば,恒星の固有運動や擬似宇宙飛行の演出が可能であり,操作者に高度な天文知識を要求することなく,観客に対して自然な映像を維持することができるプラネタリウム投映装置および天文シミュレータ用のプログラムが提供されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の形態に係るプラネタリウム装置の機器構成を示す概略図である。
【図2】第1の形態に係るプラネタリウム装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図3】時刻を進めた場合の制御(その1)を示すフローチャートである。
【図4】時刻を進めた場合の投映イメージを示す図である。
【図5】星座の解説補助を投映するための操作画面の一例(現在位置:地球,年代:AC2003年)を示す図である。
【図6】星座の解説補助を投映するための操作画面の一例(現在位置:地球,年代:BC7000年)を示す図である。
【図7】時刻を進めた場合の制御(その2)を示すフローチャートである。
【図8】現在位置が変化した場合の制御(その1)を示すフローチャートである。
【図9】現在位置が変化した場合の投映イメージを示す図である。
【図10】極座標線を投映するための操作画面の一例(現在位置:地球,年代:AC2003年)を示す図である。
【図11】星座の解説補助を投映するための操作画面の一例(現在位置:デネブ,年代:AC2003年)を示す図である。
【図12】極座標線を投映するための操作画面の一例(現在位置:デネブ,年代:AC2003年)を示す図である。
【図13】現在位置が変化した場合の制御(その2)を示すフローチャートである。
【図14】第2の形態に係るプラネタリウム装置の機器構成を示す概略図である。
【図15】図14に示したプラネタリウム装置をドーム天頂から見たイメージ図である。
【図16】第2の形態に係るプラネタリウム装置のシステム構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 ドームスクリーン
2 映像制御部(投映判定手段,映像作成手段,操作制御手段)
3 映像投映部(投映手段)
4 魚眼レンズ
5 操作部(操作手段)
6 スピーカ

Claims (5)

  1. 天体の固有運動の演出が可能なプラネタリウム投映装置において,
    基準時刻とシミュレーション時刻との時間差を基に,星野の解説を補助する補助画像の投映可否の判定を行う投映判定手段と,
    前記投映判定手段にて投映不可と判定された場合には,補助画像を含まない前記星野の映像を作成し,前記投映判定手段にて投映可能と判定された場合には,補助画像を含む前記星野の映像を作成する映像作成手段と,
    前記映像作成手段にて作成された前記星野の映像をスクリーン上に投映する投映手段とを有することを特徴とするプラネタリウム投映装置。
  2. 擬似宇宙飛行の演出が可能なプラネタリウム投映装置において,
    基準天体からシミュレーション位置までの距離を基に,星野の解説を補助する補助画像の投映可否の判定を行う投映判定手段と,
    前記投映判定手段にて投映不可と判定された場合には,補助画像を含まない前記星野の映像を作成し,前記投映判定手段にて投映可能と判定された場合には,補助画像を含む前記星野の映像を作成する映像作成手段と,
    前記映像作成手段にて作成された前記星野の映像をスクリーン上に投映する投映手段とを有することを特徴とするプラネタリウム投映装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載するプラネタリウム投映装置において,
    補助画像をスクリーン上に表示するか否かを選択する操作手段と,
    前記投映判定手段にて補助画像が投映不可と判定された場合には,前記操作手段にてその補助画像の選択を抑制する操作制御手段とを有し,
    前記映像作成手段は,前記投映判定手段にて投映不可と判定された場合には,前記操作手段の選択内容に関わらず補助画像を含まない前記星野の映像を作成することを特徴とするプラネタリウム投映装置。
  4. 天体の固有運動の演出が可能な天文シミュレータのコンピュータに,
    基準時刻とシミュレーション時刻との時間差を基に,星野の解説を補助する補助画像の表示可否の判定を行う表示判定機能と,
    前記表示判定機能にて表示不可と判定された場合には,補助画像を含まない前記星野の画像を作成し,前記表示判定手段にて表示可能と判定された場合には,補助画像を含む前記星野の画像を作成する画像作成機能とを実現させることを特徴とする天文シミュレータ用のプログラム。
  5. 擬似宇宙飛行の演出が可能な天文シミュレータのコンピュータに,
    基準天体からシミュレーション位置までの距離を基に,星野の解説を補助する補助画像の表示可否の判定を行う表示判定機能と,
    前記表示判定機能にて表示不可と判定された場合には,補助画像を含まない前記星野の画像を作成し,前記表示判定手段にて表示可能と判定された場合には,補助画像を含む前記星野の画像を作成する画像作成機能とを実現させることを特徴とする天文シミュレータ用のプログラム。
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