JP4225730B2 - 自動車外装用フィルム - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は自動車の外装技術に関し、さらに詳しく述べると、耐候性及び耐傷つき性ならびに装飾効果に優れ、製造も容易な自動車外装用フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、自動車の外装部品の製造にはいろいろな材料が使用されている。例えば、モールやピラーは、ステンレス鋼などの鋼板をプレス成形やロールフォーミング成形によって加工することによって製造されている。また、これらの鋼板製の外装部品の表面に樹脂材料を被覆して用いることも多い。最近では、部品の軽量化を図るとともに鋼板とは異なった外観を得るため、樹脂材料だけを射出成形、ブロー成形、押出し成形などしたものが、外装部品として広く用いられている。かかる成形用の樹脂材料としては、当初、ポリ塩化ビニルがその高い成形性、耐候性、耐久性、経済性などから多用されてきたが、その後、廃棄物とした時に発生する問題点やさらなる軽量化という課題が提起されるようになって、ポリプロピレンを主としたポリオレフィン系の樹脂材料の利用へと進みつつある。また、このような樹脂製の外装部品を装飾する方法として、然るべき表面処理を施した後に塗装を行う方法や、部品表面に装飾フィルムを施す方法も広く採用されている。例えば、特開平5−16740号公報には、ポリプロピレン系エラストマーからなるサイドモール本体と、サイドモール本体の意匠面を被覆するフィルム状シートとを具備することを特徴とする自動車用サイドモールが開示されている。フィルム状シートは、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成樹脂材料からにより成形されており、熱溶着又は接着剤によってサイドモール本体に貼付固定されている。また、特開平7−241910号公報には、所定形状のポリプロピレン製基材の表面に、着色ないし模様の施されたポリ塩化ビニルを基材にした装飾フィルムを、前記両樹脂との接着性を考慮した複数層の熱可塑性フィルム接着剤を介して貼付してなることを特徴とする樹脂製外装部品が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
自動車の外装部品において、上記したように、ポリプロピレンなどの樹脂からなる基材の表面に保護フィルムや装飾フィルムを貼付すると、基材として使用する樹脂の特性に由来して部品の軽量化や耐衝撃性の改善を図ることができるばかりでなく、保護フィルムや装飾フィルムに由来する意匠性や外観の向上を図ることができる。
【0004】
しかし、従来の保護フィルムや装飾フィルムでは、主にポリ塩化ビニルを基材に使用しているので、廃棄物を焼却する時に発生する排ガスの処理問題がある。また、かかる保護フィルムや装飾フィルムにおいては、ポリプロピレンやその他のオレフィン系樹脂が欠点としている耐候性や耐傷つき性をもつことが期待されるが、それらの2つの性質を兼ね備えたものがいまだ提案されていない。また、従来の保護フィルムや装飾フィルムでは、表面光沢の自由度が少なく、また、一定の光沢度を再現することが難しいという問題がある。さらに、従来の方法では、外装部品の構造が複雑であるので、フィルムの貼付を含めた製造工程が煩雑となり、製造コストの増加や歩留まりの低下を避けることができないという問題がある。さらにまた、オレフィン系樹脂のフィルムは、それに対する接着剤層の接合力が弱いので、通常、基材の表面にプライマ層を予め形成しておくことが必要であり、これもまた製造工程の煩雑化や製造コストの増加を引き起こす。
【0005】
本発明の目的は、上記したような従来の技術の問題点を解消して、耐候性及び耐傷つき性ならびに装飾効果に優れ、製造も容易な自動車外装用フィルムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、自動車の外装に使用されるフィルムであって、
接着機能を有するオレフィン系樹脂の基材と、該基材によって支持されたウレタン樹脂のトップコート層とを含んでなり、前記基材を介して自動車の外装部品に貼付されることを特徴とする自動車外装用フィルムが提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明による自動車外装用フィルムは、いろいろな形態で実施することができる。
【0008】
本発明の自動車外装用フィルムは、自動車の外装のため、各種の自動車の部品に貼付し、固定して使用することができる。例えば、自動車としては、トラック、バス、乗用車などの他、オートバイ、スクータなどを挙げることができる。また、このような自動車の部品としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、例えばサイドガードモールなどのモール類、ピラー類、その他を挙げることができる。もちろん、もしも所期の効果が得られるのであるならば、必要に応じて、自動車の外装部品以外の部品に対して本発明のフィルムを適用してもよい。その他の適当な外装部品は、例えば、モーターボート、ヨットなどの船舶の外装部品や、電車などの車両の外装部品である。
【0009】
本発明の自動車外装用フィルムは、
(1)接着機能を有するオレフィン系樹脂の基材、及び
(2)基材によって支持されたウレタン樹脂のトップコート層
を少なくとも含み、基材を介して自動車の外装部品に直接的に貼付される。予想されなかったことではあるが、本発明のフィルムを使用すると、従来のフィルムのように外装部品の表面に予めプライマ処理を施しておくことは不必要となる。
【0010】
本発明の自動車外装用フィルムにおいて、基材として使用するオレフィン系樹脂は、フィルムの分野で広く使用されている多くのオレフィン系樹脂を包含するけれども、トップコート層の支持機能に追加して外装部品に貼付する能力も必要であるので、それ自体で接着機能を有することが望ましい。基材の接着機能は、その基材のポリプロピレン製外装部品に対する接着力、すなわち、剥離力で表して、14N/25mm以上であるのが好ましく、さらに好ましくは20N/25mm以上である。外装用フィルムの外装部品からの剥離力が14N/25mm以上であれば、そのフィルムを自動車の外装部品に貼付して使用しても、剥がれ等の不都合を生じることなく長期間にわたって安定に使用することができるからである。剥離力が14N/25mmを下回ると、経時変化でフィルムの剥がれが発生する可能性がある。
【0011】
上述のような接着機能を有し、本発明の実施に好適なオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、サーモプラスチックオレフィン(TPО;通常、PPと例えばEPDM(エチレン/プロピレン/ジエンモノマー共重合体)等のゴム成分のブレンド)、アイオノマー、EAA(エチレン/アクリル酸共重合体)、EEA(エチレン/アクリル酸エチル共重合体)、EVA(エチレン/酢酸ビニル共重合体)などを挙げることができる。
【0012】
このような基材は、フィルムの使用目的などに応じて、透明であってもよく、半透明もしくは不透明であってもよい。また、外観や装飾性の向上を図るため、各種の染料、顔料あるいはその他の着色剤、例えばフタロシアニン系青顔料、アゾ系赤顔料、アルミフレーク、マイカ粉などを含有していてもよい。さらに、その他の添加剤、例えば紫外線吸収剤などを含有していてもよい。
【0013】
上記したような基材は、フィルムの使用目的などに応じていろいろな膜厚で使用することができるけれども、通常、その膜厚は約5〜1000μmの範囲であり、好ましくは、約20〜100μmの範囲である。基材の膜厚が5μmを下回ると、十分な支持機能を発現させることができず、反対に1000μmを上回ると、フィルム全体が厚くなるために、外観の低下や作業性の低下を避けることができない。なお、基材はは、通常、単層で用いられるけれども、必要に応じて、2層もしくはそれ以上の多層構造で使用してもよい。
【0014】
基材によって支持されるトップコート層は、ウレタン樹脂から構成される。ここで使用するウレタン樹脂は、好ましくは、2液型ウレタン樹脂である。このウレタン樹脂は、特に、耐候性と耐傷つき性をフィルムに付与できるという点で有用である。
【0015】
トップコート層も、上記した基材と同様に、フィルムの使用目的などに応じて、透明であってもよく、半透明もしくは不透明であってもよい。また、外観や装飾性の向上を図るため、各種の染料、顔料あるいはその他の着色剤、例えばフタロシアニン系青顔料、アゾ系赤顔料、アルミフレーク、マイカ粉などを含有していてもよい。さらに、その他の添加剤、例えば紫外線吸収剤、光沢調整剤などを含有していてもよい。紫外線吸収剤は、外装用フィルムやその下の部品が日光に暴露されている間に劣化するのを効果的に防止する働きがあり、また、光沢調整剤は、外装用フィルムの表面に優れた光沢を付与する働きがある。
【0016】
上記したようなトップコート層は、フィルムの使用目的などに応じていろいろな膜厚で使用することができるけれども、通常、その膜厚は約1〜200μmの範囲であり、好ましくは、約5〜100μmの範囲である。基材の膜厚が1μmを下回ると、十分な耐候性と耐傷つき性をフィルムに付与することができず、反対に200μmを上回っても、そのような機能が顕著に改善されることもない。なお、トップコート層は、通常、単層で用いられるけれども、必要に応じて、2層もしくはそれ以上の多層構造で使用してもよい。
【0017】
本発明の自動車外装用フィルムにおいて、その基材とトップコート層はいろいろな層構成で使用することができる。好ましくは、基材とトップコート層は2層構造で使用することができる。すなわち、本発明の外装用フィルムにおいて、基材及びトップコート層が、他の層を介することなく直接隣接していることが好ましい。
【0018】
本発明の自動車外装用フィルムでは、そのトップコート層の側にキャリヤフィルムを備えて、フィルムの取り扱い性を改善することが好ましい。ここで使用するキャリヤフィルムは、好ましくは、剥離可能なキャリヤフィルムである。このキャリヤフィルムは、通常、外装フィルムを部品に貼付するまでの間、トップコート層を被覆するものであって、外装部品の完成後には、あるいは遅くとも外装部品を自動車に取り付けた後には、トップコート層から剥離し、除去される。また、このキャリヤフィルムには、トップコート層に優れた表面光沢を付与する働きもある。すなわち、トップコート層の塗布後であってそれを硬化させる前、そのトップコート層の表面に光沢度を調整したキャリヤフィルムをラミネートすることによって、トップコート層の硬化の段階で、約90の高光沢から20以下の低光沢まで、得られる表面光沢を任意に再現することができる。要するに、本発明によると、キャリヤフィルムの併用によって、表面光沢の自由度を高めたり、一定の光沢度を再現することが容易に可能である。
【0019】
本発明の実施に適当なキャリヤフィルムとしては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、例えば、PET、PEN、カプトン、PPなどを挙げることができる。キャリヤフィルムは、外装用フィルムの使用目的などに応じていろいろな膜厚で使用することができるけれども、通常、その膜厚は約5〜500μmの範囲であり、好ましくは、約12〜100μmの範囲である。
【0020】
本発明の自動車外装用フィルムは、その特性などを改善する目的で、基材、トップコート層及び任意に使用されるキャリヤフィルムの他に、追加の層を任意に有していてもよい。追加の層の位置も、任意に選択可能である。適当な追加の層として、例えば、カラー層、パターン−又は形状印刷層、印刷支持層、接合層などを挙げることができる。
【0021】
本発明の自動車外装用フィルムは、フィルムの成形に一般的に使用されているいろいろな方法を使用して製造することができる。特に適当な製造方法は、基材、トップコート層及び必要に応じてキャリヤフィルムを同時あるいはほぼ同時に成形して、一枚の長尺のフィルムを製造する方法である。
【0022】
本発明の自動車外装用フィルムは、上記したように、各種の部品、特に自動車の外装部品に貼付して使用されるが、外装部品は、特にオレフィン系樹脂、例えばポリプロピレン樹脂などからなるのが好ましい。このような樹脂は、成形性や加工性が良好であるばかりでなく、衝撃吸収性などにも優れているからである。もちろん、必要に応じて、オレフィン系樹脂以外の材料からなる外装部品等に本発明の自動車用外装フィルムを貼付しても差し支えない。
【0023】
本発明によれば、さらに、オレフィン樹脂製の部品と、この部品の露出面(すなわち、自動車等に取り付けた時に露出し、本発明の外装フィルムを貼付することが求められる面)に貼付された本発明の外装フィルムとを含んでなることを特徴とする自動車用外装部品も提供される。本発明の自動車用外装部品の詳細は、上述の記載と、以下の実施例の記載から容易に理解することができるであろう。
【0024】
【実施例】
引き続いて、本発明をその実施例を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではないことを理解されたい。
【0025】
下記の実施例では、外装フィルムの作製のため、次のような市販もしくは試作の材料を使用した。
【0026】
また、ウレタントップコート層の形成のため、それぞれの実施例で下記の第1表に記載のような配合組成(重量部)のウレタン塗工溶液を使用した。
【0027】
【表1】
【0028】
実施例1
下記の第2表に記載の基材(オレフィンフィルム)をコロナトリータ(出力1.0kw)に10m/分の速度で案内して、その基材の片面にコロナ放電処理を行った。次いで、基材のコロナ放電処理面に前記第1表に記載のウレタン塗工溶液をバーコータで、乾燥後の膜厚が約0.03mmとなるように塗布し、熱風オーブンを通して、65℃×3分及び85℃×3分で加熱乾燥した。引き続いて、加熱乾燥後の基材の粘着性があって未硬化のウレタンコート面に、下記の第2表に記載のキャリヤフィルム(表面光沢度156)をラミネータにて貼り合わせた。エア噛みを生じることなくきれいな貼り合わせフィルムを得ることができた。この貼り合わせフィルムをそのままの状態で室温で1週間以上放置したところ、ウレタンコートの硬化が進行し、基材、トップコート層、そしてキャリヤフィルムの3層構造の複合フィルムが完成した。キャリヤフィルムは、トップコート層からスムースに引き剥がすことが可能であり、キャリヤフィルムを剥離して露出したトップコート層の光沢度は、そのキャリヤフィルムの表面光沢度が転写された結果、85.6であった。
実施例2
前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、下記の第2表に記載のように、キャリヤフィルムを表面光沢度156のGS50から表面光沢度33.8のU4に変更した。本例でも、エア噛みを生じることなくきれいな貼り合わせフィルムを得ることができた。得られた3層構造の複合フィルムにおいて、キャリヤフィルムを剥離して露出したトップコート層の光沢度は、そのキャリヤフィルムの表面光沢度が転写された結果、25.2であった。
実施例3
前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、下記の第2表に記載のように、キャリヤフィルムの使用を省略した。基材のコロナ放電処理面に前記第1表に記載のウレタン塗工溶液をバーコータで塗布し、熱風オーブンを通して、65℃×3分及び95℃×15分で加熱乾燥したところ、塗工溶液における触媒配合の効果にもより、速やかに硬化が完了し、基材及びトップコート層からなる2層構造の複合フィルムが得られた。この複合フィルムにおいて、トップコート層の光沢度は、91.5であった。
実施例4
前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、下記の第2表に記載のように、トップコート層に対する着色剤の添加を省略するとともに、キャリヤフィルムを、表面光沢度156のGS50から表面光沢度17.9のルミラーX42に変更した。本例でも、エア噛みを生じることなくきれいな貼り合わせフィルムを得ることができた。得られた3層構造の複合フィルムにおいて、キャリヤフィルムを剥離して露出したトップコート層の光沢度は、そのキャリヤフィルムの表面光沢度が転写された結果、17.3であった。
実施例5
前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、下記の第2表に記載のように、トップコート層に対する着色剤をBLK#100の単独使用からBLK#100とサイリシア456(光沢調整剤)の混合使用に変更するとともに、キャリヤフィルムの使用を省略した。基材のコロナ放電処理面に前記第1表に記載のウレタン塗工溶液をバーコータで塗布し、熱風オーブンを通して、65℃×3分及び95℃×15分で加熱乾燥したところ、塗工溶液における触媒配合の効果にもより、速やかに硬化が完了し、基材及びトップコート層からなる2層構造の複合フィルムが得られた。この複合フィルムにおいて、トップコート層の光沢度は、15.5であった。
実施例6
前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、下記の第2表に記載のように、トップコート層に対して添加する着色剤をBLK#100からR960に変更した。本例でも、エア噛みを生じることなくきれいな貼り合わせフィルムを得ることができた。得られた3層構造の複合フィルムにおいて、キャリヤフィルムを剥離して露出したトップコート層の光沢度は、そのキャリヤフィルムの表面光沢度が転写された結果、83.3であった。
実施例7
前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、下記の第2表に記載のように、基材の形成に使用するオレフィンフィルムをPP(FX270)からTPO(ミラストマー7030N)に変更した。本例でも、エア噛みを生じることなくきれいな貼り合わせフィルムを得ることができた。得られた3層構造の複合フィルムにおいて、キャリヤフィルムを剥離して露出したトップコート層の光沢度は、そのキャリヤフィルムの表面光沢度が転写された結果、90.2であった。
実施例8
前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、下記の第2表に記載のように、キャリヤフィルムを表面光沢度156のGS50から表面光沢度128のPB264に変更した。本例でも、エア噛みを生じることなくきれいな貼り合わせフィルムを得ることができた。得られた3層構造の複合フィルムにおいて、キャリヤフィルムを剥離して露出したトップコート層の光沢度は、そのキャリヤフィルムの表面光沢度が転写された結果、72.5であった。
実施例9
前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、下記の第2表に記載のように、基材として使用するオレフィンフィルムの成形法を射出成形法からブロー成形法に変更するとともに、キャリヤフィルムの使用を省略した。基材のコロナ放電処理面に前記第1表に記載のウレタン塗工溶液をバーコータで塗布し、熱風オーブンを通して、65℃×3分及び95℃×15分で加熱乾燥したところ、塗工溶液における触媒配合の効果にもより、速やかに硬化が完了し、基材及びトップコート層からなる2層構造の複合フィルムが得られた。この複合フィルムにおいて、トップコート層の光沢度は、90.9であった。
実施例10
前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、下記の第2表に記載のように、基材として使用するオレフィンフィルムをPP(FX270)からアイオノマーフィルム(ハイミラン1605、三井デュポンポリケミカル社製)に変更するとともに、キャリヤフィルムを表面光沢度156のGS50から表面光沢度33.8のU4に変更した。本例でも、エア噛みを生じることなくきれいな貼り合わせフィルムを得ることができた。得られた3層構造の複合フィルムにおいて、キャリヤフィルムを剥離して露出したトップコート層の光沢度は、そのキャリヤフィルムの表面光沢度が転写された結果、25.9であった。
【0029】
【表2】
【0030】
実施例1〜8及び実施例10では、それぞれの例で調製した複合フィルムを金型にセットし、その複合フィルムの基材側に該当する成形樹脂を射出成形した。複合フィルムと成形樹脂が一体化した後、十分に冷却するのを待って成形品を金型から取り出した。キャリヤフィルムを併用した例では、この段階で、キャリヤフィルムを成形品から取り除いた。トップコート層の表面は、キャリヤフィルムを併用した場合、そのキャリヤフィルムの表面光沢度に応じて高光沢から低光沢まで再現可能であった。また、キャリヤフィルムを併用しなかった場合でも、トップコート層に対する光沢調整剤の添加の有無により、トップコート層の表面において高光沢から低光沢までを再現可能であった。
【0031】
実施例9では、調製した複合フィルムを金型の片面に、該当する成形樹脂が複合フィルムの基材にあたるようにセットした後、ブロー成形した。複合フィルムと成形樹脂が一体化した後、十分に冷却するのを待って成形品を金型から取り出した。
【0032】
実施例1〜10のそれぞれにおいて、基材もしくはトップコート層に配合した着色剤の添加効果によって、優れた色外観も得ることができた。
〔評価試験〕
前記実施例1〜10のそれぞれにおいて製造した成形品について、耐候性及び耐傷つき性を次のような試験方法で評価した。また、比較のため、比較例1(PP/射出成形;フィルム被覆を有しない無垢の成形品)及び比較例2(アイオノマーフィルム/射出成形;フィルム被覆を有しない無垢の成形品)についても同様な評価試験を行った。
耐候性(促進耐候試験):
この試験では、供試成形品をスガ試験機、サンシャインカーボンWOM促進耐候試験機に取り付け、BP65℃で3000時間にわたって光を連続照射しながら、降雨あり/なしを12分/48分にわたって併用した。供試成形品を試験機から取り出した後、成形品上の複合フィルムの外観を目視によって評価した。
【0033】
試験の結果、実施例1〜10では外観異常は少しも観察されなかった。これに対して、比較例1では成形品のひび割れが観察され、また、比較例2では成形品の黄変及び光沢落ちが観察された。
耐傷つき性(ブラシ洗車試験):
この試験では、供試成形品に試験用ダスト8種類(JIS Z8901に規定)を塗布した後、ガソリンスタンド等に設置されている高速洗車機と同等の洗車機専用ナイロンブラシ(220mm長さ)を使用して模擬洗車試験を実施した。洗車条件は、ブラシ回転数150rpm、10秒稼動を10回反復、であった。
【0034】
試験の結果、実施例1〜10では複合フィルムの傷つき等は少しも観察されなかった。これに対して、比較例1及び2では成形品の全面にブラシによる引っ掻き傷が観察された。
【0035】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、耐候性及び耐傷つき性を同時に満足させることができるばかりでなく、装飾効果に優れ、また、プライマ処理などを施すことなく、短縮された製造工程で容易に製造できる自動車外装用フィルムを提供することができる。
【0036】
また、本発明によれば、このような外装フィルムの優れた特性などを生かした自動車用外装部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動車外装用フィルムの1使用例を示した断面図である。
【図2】図1に示した自動車外装用フィルムの層構成を示した断面図である。
【図3】本発明の自動車外装用フィルムのもう1つの構成例を示した断面図である。
【符号の説明】
1…基材
2…トップコート層
3…サイドガードモール
4…キャリヤフィルム
10…自動車外装用フィルム
20…自動車用外装部品
21…ドア
Claims (4)
- 自動車の外装に使用されるフィルムであって、
接着機能を有するオレフィン系樹脂の基材と、該基材によって支持された2液型ウレタン樹脂のトップコート層とを含んでなり、該基材及び該トップコート層が、他の層を介することなく直接隣接しており、前記基材を介して、オレフィン系樹脂からなる自動車の外装部品に貼付されるフィルムであり、かつ
前記基材に前記トップコート層をコーティングした後、キャリヤフィルムを前記トップコート層の表面にラミネートしたことを特徴とする自動車外装用フィルム。 - 前記トップコート層の膜厚が、1〜200μmであることを特徴とする請求項1に記載の自動車外装用フィルム。
- 前記基材のオレフィン系樹脂が、サーモプラスチックオレフィンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車外装用フィルム。
- 前記トップコート層及び前記基材の少なくとも一方に着色剤が含まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車外装用フィルム。
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