JP4225471B2 - 多段式分離膜モジュールの運転方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スパイラル型膜エレメントに巻回された原水スペーサーに蓄積した濁質を効率よく除去する多段式分離膜モジュールの運転方法及び多段式分離膜装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、海水の淡水化や、超純水、各種製造プロセス用水を得る方法として、逆浸透膜(RO膜)やナノ濾過膜(NF膜)を透過膜とするスパイラル型膜エレメントを用い、原水中からイオン成分や低分子成分を分離する方法が知られている。また低分子ないし高分子成分を分離したり、低分子成分ないし高分子成分の内、高分子成分のみを分離したりする限外濾過法や、微粒子を分離したりする精密濾過法においてもスパイラル型膜エレメントが用いられている。図6に例示されるように、従来から使用されているスパイラル型膜エレメントの一例は、透過水スペーサー62の両面に逆浸透膜61を重ね合わせて3辺を接着することにより袋状膜63を形成し、該袋状膜63の開口部を透過水集水管64に取り付け、網状の原水スペーサー65と共に、透過水集水管64の外周面にスパイラル状に巻回することにより構成されている。そして、原水66はスパイラル型膜エレメント60の一方の端面側69aから供給され、原水スペーサー65に沿って流れ、スパイラル型膜エレメント60の他方の端面側69bから濃縮水68として排出される。原水66は原水スペーサー65に沿って流れる過程で、逆浸透膜61を透過して透過水67となり、この透過水67は透過水スペーサー62に沿って透過水集水管64の内部に流れ込み、透過水集水管64の端部から排出される。このように、巻回された袋状膜63間に配設される原水スペーサー65により原水経路が形成されることになる。
【0003】
また、従来より、前記スパイラル型膜エレメントを装着する分離膜モジュールを1段当たり1基又は2基以上並列に配置した分離膜装置群を、2段以上連ねた多段式分離膜装置が、水の回収率及び水の処理量の向上を目的に使用されている。例えば図7の多段式分離膜装置70において、ポンプ71より供給された原水は、原水供給主配管72、原水供給分岐配管73a及び73bを通り、並列に配置された1段目の分離膜モジュール74a及び74bで処理され、透過水流出配管76a及び76bより透過水を、濃縮水流出配管75a及び75bより濃縮水を得る。分離膜モジュール74a及び74bから流出する当該濃縮水は濃縮水集水配管77a及び77bで集水され、中間濃縮水供給主配管(後段の原水供給主配管)78から2段目の分離膜モジュール79に通水される。そして、透過水流出配管81から透過水を、濃縮水流出配管80から濃縮水を得る。このように、前段で得た中間濃縮水を後段の分離膜モジュールの供給水として処理することにより、水の回収率を向上させ、また1段当たり複数の分離膜モジュールを並列に配置することにより水の処理量を増やすことが行われている。
【0004】
前記逆浸透膜スパイラル型エレメントを用いて海水の淡水化や、超純水、各種製造プロセス用水を得る場合、通常、原水の濁質などを除去する目的で前処理が行われている。この前処理を行うのは、逆浸透膜スパイラル型エレメントの原水スペーサーの厚みは、原水流路を確保しつつできる限り原水と逆浸透膜との接触面積を大きくとるため通常1mm以下と薄く、濁質が原水流路にある原水スペーサーに蓄積され、原水流路を閉塞し易い構造となっており、従って、予め原水中の濁質を除去して濁質蓄積による通水差圧の上昇や透過水量、透過水質の低下を回避し、長期間に亘り安定な運転を行うためである。このような除濁目的で用いられる前処理装置は、例えば、凝集沈殿処理、濾過処理又は膜処理などの各装置を含むものであり、これらの設置は、設置コストや運転コストを上昇させると共に、大きな設置面積を必要とするなどの問題を有していた。
【0005】
ところで、スパイラル型膜エレメントを装着する分離膜モジュールに対する前処理装置が省略できれば、工業用水や水道水が前処理なしで逆浸透膜モジュールに供給でき、システムの簡略化、設置面積の低減、低コスト化が可能となり、産業上の利用価値は極めて高いものとなる。従って、濁質が蓄積し難い構造を有する原水スペーサーが開発されるか、あるいは原水スペーサーに濁質が蓄積したとしても、運転方法の変更やフラッシングなどで濁質が除去できれば、極めて有用な技術となる。特に運転方法の変更やフラッシング等で濁質を除去する方法は、従来のスパイラル型膜エレメントをそのまま使用可能な場合がある点で好ましいものである。
【0006】
特開平11―104636号公報には、加圧した気液二層流を通常の原水の流れに対して逆方向の流れで供給して逆浸透膜モジュールを逆洗フラッシングする方法が開示されている。しかし、この逆洗フラッシングは、中空糸型逆浸透膜モジュールの該中空糸膜面に付着した濁質の除去であり、スパイラル型逆浸透膜モジュールの原水スペーサーに付着した濁質の除去ではない。
【0007】
従って、本発明の目的は、多段式分離膜モジュールのスパイラル型膜エレメントに巻回された原水スペーサーに蓄積した濁質を、効率よく除去することができる多段式分離膜モジュールの運転方法及び多段式分離膜装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者は鋭意検討を行った結果、透過水集水管の外周面に袋状の分離膜を原水スペーサーと共に巻回してなるスパイラル型膜エレメントを装着する分離膜モジュールにおいて、原水中の濁質が蓄積するのは原水スペーサーの線材が交差する交点部分であること、分離膜モジュールの運転時に、原水の流れ方向を定期又は不定期に反対方向へ変更しながら運転することにより、原水スペーサーに蓄積した濁質の除去が容易に行なえること、原水の流れ方向変更時に、フラッシングを複数回行なうことで、濁質の除去効果が更に増大すること、分離膜モジュールの運転方法において、フラッシングを適宜行なうと共に、毎回行なうフラッシングの、最初に行なうフラッシングは、その直前まで流れていた原水の流れ方向と逆方向に行なうことで、濁質の除去が更に一層増大すること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、1基又は2基以上並列配置されたスパイラル型膜エレメントを装着する前段の分離膜モジュール又は分離膜モジュール群の中間濃縮水が、1基又は2基以上並列配置されたスパイラル型膜エレメントを装着する後段の分離膜モジュール又は分離膜モジュール群に順次供給される2段以上の多段式分離膜モジュールの運転方法であって、該分離膜モジュールの被処理水の流れ方向を、定期又は不定期に反対方向へ変更し、前記被処理水の流れ方向変更時に、両方向から交互に複数回フラッシングを行う多段式分離膜モジュールの運転方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、原水スペーサーの交点部分に蓄積した濁質は容易に剥がされ除去される。また、原水スペーサーの交点部分に蓄積した濁質を確実に除去できる。
【0011】
また、本発明は、毎回のフラッシングの最初に行なうフラッシングは、直前まで流れていた原水の流れ方向と逆方向に行なう前記多段式分離膜モジュールの運転方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、原水スペーサーの交点部分に蓄積した濁質を最初のフラッシングで効率よく剥がすことができ、除去が容易になる。
【0013】
また、本発明は、前記フラッシング時に、透過水側の弁を全閉とする前記多段式分離膜モジュールの運転方法を提供するものである。透過水側の弁が開いていると、高圧用分離膜モジュールの場合、フラッシング圧力程度ではフラッシング液である原水が透過することはないが、低圧又は超低圧用分離膜モジュールでは、透過してしまい、フラッシング流量が低減し、且つ水質の低下した水が透過するという問題がある。また、透過水側の弁を閉じた直後に発生する背圧により膜面に堆積した汚染物質を浮遊させる効果もあり、フラッシングの効果を一層高めることができる。
【0014】
また、本発明は、前記フラッシングを行なう前に、原水供給側の圧力を抜く前記多段式分離膜モジュールの運転方法を提供するものである。原水供給側の圧力を抜くことで、それまで膜面を押さえ付けていた圧力が抜けるため、膜が若干緩み、膜面及び原水スペーサーに蓄積する濁質の圧密を緩和させることができる。
【0015】
また、本発明は、前記フラッシングを各段の分離膜モジュール毎又は分離膜モジュール群毎に分けて行う前記多段式分離膜モジュールの運転方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、前段のスパイラル型膜エレメントから剥離した濁質が後段のスパイラル型膜エレメントに流れ込み、汚染するのを防ぐことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態における多段式分離膜モジュールの運転方法を図1を参照して説明する。なお、明細書中、第1の実施の形態及び第3の実施の形態は本発明の参考例となるものである。図1は本例の運転方法を実施する多段式分離膜装置のフロー図である。多段式分離膜装置8は、前段の分離膜装置群9aの各分離膜モジュール10a、10bから得られる中間濃縮水が、後段の分離膜装置群9bの分離膜モジュール28に供給される2段の多段式分離膜装置である。すなわち、分離膜モジュール10aを備える分離膜装置11a及び分離膜モジュール10bを備える分離膜装置11bを並列に配置して前段の分離膜装置群9aを構成し、分離膜装置群9bをその後段に配置して2段の分離膜装置を構成する。
【0018】
図1中、分離膜装置11aは、弁a1に接続する原水供給第1配管12aと、弁a1と分離膜モジュール10aを接続する原水供給第2配管13aと、分離膜モジュール10aと、分離膜モジュール10aの透過水側に接続される弁e1を有する透過水流出配管14aと、原水供給第1配管12aと分離膜モジュール10aの濃縮水流出側を接続し弁b1を有する流れ方向転換配管15aと、流れ方向転換配管15aと接続し弁c1が付設された濃縮水流出第1配管16aと、原水供給第2配管13aから分岐し、原水の流れ方向を逆方向とした場合の濃縮水が流出する弁d1を有する濃縮水流出第2配管17aと、を備える。また、分離膜装置11b、11cは分離膜装置11aと同様な構成を採る。そして、分離膜装置群9aは、原水流出第1配管弁fが途中に付設された原水流出第1配管19が接続する原水供給主配管18と、原水供給主配管18から分岐し分離膜装置11a、11bの原水供給第1配管12a、12bに接続する原水供給分岐配管20a、20bと、分離膜装置11a及び11bとを備える。また、後段の分離膜装置群9bは、原水流出第2配管弁(後段の原水流出配管弁)mが途中に付設された原水流出第2配管(原水流出配管)27が接続する後段の第1濃縮水供給主配管(原水供給主配管)21と、分離膜装置11cとを備える。そして、多段式分離膜装置8は、前段の分離膜装置群9a、9bの前段に更にポンプ30と、分離膜装置群9bの第1濃縮水供給主配管(原水供給主配管)21から分岐し分離膜装置群9aの濃縮水流出第1配管16a、16b、濃縮水流出第2配管17a、17bと接続する濃縮水集水配管31を備える。
【0019】
多段式分離膜装置8において、先ず、弁b1、b2、d1、d2、f、h、j及びmは閉とし、弁c1、c2及びiはモジュール内を所定の圧力となるように調整開口され、弁a1、a2、e1、e2、g及びkは開とする。原水は原水供給ポンプ30により分離膜モジュール10a及び10bに供給される。原水は分離膜モジュール10a及び10bで処理され、第1濃縮水を第1濃縮水流出第1配管16a及び16bから得ると共に透過水流出配管14a及び14bから透過水を得る。分離膜モジュール10a及び10bから得られた当該第1濃縮水(中間濃縮水、以下同様)は、濃縮水集水配管31で集められ、後段の分離膜モジュール28に供給される。そして、第2濃縮水を濃縮水流出第1配管25から得ると共に透過水流出配管23から透過水を得る。この場合、原水の濁度にもよるが、運転時間の経過と共に、エレメントに巻回された原水スペーサーに原水中の濁質等の浮遊物質が蓄積していく。
【0020】
原水スペーサーに原水中の濁質が蓄積すると、通水差圧が上昇する。このような場合、原水の流れ方向を逆方向に変更する。すなわち、弁a1、a2、c1、c2、g、及びiは閉とし、弁d1、d2及びjはモジュール内を所定の圧力となるように調整開口され、弁b1、b2及びhを開とする。これにより、原水は分離膜モジュール10a及び10bの濃縮水流出側より流入し、分離膜モジュール10a及び10bで処理され、第1濃縮水を濃縮水流出第2配管17a及び17bから得ると共に透過水流出配管14a及び14bから透過水を得る。各分離膜モジュールから得られた当該第1濃縮水は、濃縮水集水配管31で集められ、後段の分離膜モジュール28の濃縮水流出側より流入し処理される。そして、第2濃縮水を濃縮水流出第2配管26から得ると共に透過水流出配管23から透過水を得る。このような原水の流れ方向を逆方向に変更することにより、原水スペーサーの交点部分に蓄積した濁質が容易に剥がされ、除去される。そして、運転時間の経過と共に、再びエレメントに装着された原水スペーサーに原水中の濁質等の浮遊物質が蓄積していくため、更に原水の流れ方向を逆方向に変更する。以後、この操作を繰り返す。原水の流れ方向の変更時期は、定期又は不定期であり、原水の流れ方向を変更する間隔としては、1時間〜24時間、好ましくは1時間〜12時間が好ましい。1時間未満であると切替弁の切替回数が多くなり、切替弁の寿命を低下させる。また、24時間を越えると、蓄積した濁質が除去し難くなる。また、原水の流れ方向の変更時期は、上記の他、所定の通水差圧となった時点で変更してもよく、この場合、変更操作を頻繁に行なうことなく、蓄積した濁質の除去もできる点で好ましい。また、所定時間経過後に流れ方向を変更する方法、所定の通水差圧となった時点で変更する方法の両者を組合わせてもよい。
【0021】
本例の多段式分離膜装置8に直接供給される原水としては、工業用水、水道水及び回収水が挙げられる。原水の濁度としては、特に制限されないが、濁度2度程度のスパイラル型膜エレメントにとって高い濁度であっても定期又は不定期に原水の流れを逆方向とするため、長期間運転においても通水差圧が上昇することはない。また、原水は40〜60℃に加温してから供給することが、膜面に発生するスライムを防止、除去することが可能となる点で好ましい。原水の温度が40℃未満ではスライム除去効果がほとんどなく、60℃を越えるとスライム除去効果はあるものの、水処理装置の耐熱温度を超えてしまう。また、40〜60℃の原水の加温は、連続的加温でも、断続的加温でもよい。断続的加温としては、1時間以上1週間以内の間隔で30〜120分程度断続的に加温することが、膜面に発生するスライムを無駄なエネルギーを消費することなく効率的に除去できる点で好ましい。加温間隔が1時間未満では十分な加温効果が得られず不要な加温を行なうことになりエネルギーが無駄になる。一方、1週間を越えると間隔が長すぎることによりスライムの発生が起こり易くなり、効果が低減してしまう。また、原水はpHを2.0以上7.0未満の酸性状態にして供給することが、酸性水には大きな殺菌効果があり、スライムの発生を抑制すると共に膜面への濁質の蓄積を低減することができる点で好ましい。pHが2.0未満ではシステムの耐薬品性の問題が生じてしまい、7.0以上であるとスライム発生を抑制する効果が期待できない。また、原水には原水中に砂粒などの粗大粒子を含む場合、予め目の粗いフィルターを通した処理水やスケールやファウリングを防止するための分散剤を添加したものも含まれる。分散剤の添加により、原水スペーサーや膜面への濁質の蓄積を一層抑制することができる。分散剤としては、例えば市販品の「hypersperse MSI300」、「hypersperse MDC200」(共に、ARGO SCIENTIFIC社製)が挙げられる。
【0022】
本例の多段式分離膜装置8によれば、原水の流れを逆方向にして濁質の蓄積を抑制するため、従来、原水中の濁質を除去する目的で用いられていた凝集沈殿処理、濾過処理又は膜処理などの前処理装置の設置を省略することができる。このため、システムの簡略化、設置面積の低減、低コスト化が図れる点で画期的な効果を奏する。
【0023】
次に、本発明の第2の実施の形態における分離膜モジュールの運転方法を図1を参照して説明する。第2の実施の形態例は、第1の実施の形態における多段式分離膜モジュールの運転方法において、前記原水の流れ方向変更時に、両方向から交互に複数回のフラッシングを行うものであり、これにより、原水スペーサーの交点部分に蓄積した濁質を確実に除去できる。分離膜モジュールの両方向から交互にフラッシングを行なう方法としては、最初のフラッシングが直前まで流れていた原水の流れ方向と逆方向に行なう方法(以下、逆方向フラッシングとも言う。)及び直前まで流れていた原水の流れ方向と同方向に行なう方法が挙げられ、このうち、逆方向フラッシングが、最初のフラッシングで原水スペーサーの交点部分に蓄積した濁質を効果的に剥がすことができる点で好ましい。最初のフラッシングを直前まで流れていた方向と同じ方向にすると、一部の濁質は除去できるものの、原水スペーサーの滞留部分に蓄積した濁質を余計に押し付けることになり、経時的に濁質が蓄積してしまう。逆方向フラッシングを行なうには、先ず、弁a1、a2、c1、c2、f、g、i及びmを閉、弁b1、b2、d1、d2、h及びjを開とする。そして、透過処理における原水供給流量の約3倍流量の原水を急速に分離膜モジュール10a及び10b内に濃縮水流出側より供給し、原水流入側の原水供給第2配管13a及び13b、濃縮水流出第2配管17a及び17bより排出する。分離膜モジュール10a及び10bから排出された原水は、濃縮水集水配管31を通り更に後段の分離膜モジュール28内に濃縮水流出側から供給され、原水流入側の原水供給第2配管22、濃縮水流出第2配管26から排出される。逆方向フラッシング終了後、今度は逆方向フラッシング時におけるフラッシング方向とは逆方向にフラッシングを行なう。すなわち弁b1、b2、d1、d2、f、h、j及びmを閉、弁a1、a2、c1、c2、g及びiを開とする。そして、逆方向フラッシングと同様の流量の原水を急速に分離膜モジュール10a及び10b内に原水流入側より供給し、濃縮水流出側の濃縮水流出第1配管16a及び16bより排出する。更に分離膜モジュール10a及び10bから排出された原水は濃縮水集水配管31を通り、分離膜モジュール28内に原水流入側から供給され、濃縮水流出側の濃縮水流出第1配管25より排出される。次いでこのフラッシング時におけるフラッシング方向とは逆方向にフラッシングを行ない、以後、同様の操作が繰り返され、両方向から交互に複数回のフラッシングが行なわれる。
【0024】
前記フラッシングにおいて、各段の分離膜モジュール群毎に分けてフラッシングを行う運転方法が好ましい。例えば、前記逆方向のフラッシングにおいて、閉としていた弁mを開とし、開としていた弁h及びjを閉とし、先ず、前段の分離膜モジュール10a及び10bのフラッシングを行い、原水を原水流出第2配管27から流出させ、一定時間が経過した後、弁d1、d2及びmを閉じ、弁c1、c2、h及びjを開き、後段の分離膜モジュール28の逆方向フラッシングを行う。当該方法によれば、前段の分離膜モジュール10a及び10bの原水スペーサーから剥離した濁質が、後段の分離膜モジュール28に流入せず、後段の分離膜モジュール28が汚染されないので、フラッシングが速やかに行える。また、更に当該逆方向のフラッシングとは逆方向にフラッシングを行う場合は、例えば、弁a1、a2及びmを開とし、弁b1、b2、h及びjを閉とし、先ず、前段の分離膜モジュール10a及び10bのフラッシングを行い、原水を原水流出第2配管27から流出させ、一定時間が経過した後、弁c1、c2及びmを閉じ、弁d1、d2、g及びiを開き、後段の分離膜モジュール28のフラッシングを行うというように、各段の分離膜モジュール群毎に分けてフラッシングを行うことが好ましい。3段以上の分離膜モジュール群からなる多段式分離膜装置の場合も、各段の分離膜モジュール群毎に分けてフラッシングを行うことが好ましい。
【0025】
最初のフラッシングが直前まで流れていた原水の流れ方向と同方向の場合は、前述した逆方向フラッシングの場合の2番目の操作を先に行なうことになる。このように、両方向から交互に複数回のフラッシングにより、原水スペーサーに蓄積した濁質は剥がれエレメント外へ確実に排出される。このようなフラッシングを行なう場合、図1においては、濃縮水流出側の圧力調整用の弁c1、c2、d1、d2、i及びjにより圧の開放を行っているが、圧力の開放方法としては、これに限定されず、圧力開放用の弁を別途に設けてもよい。その場合には、濃縮水流出配管は排水量を多く採るために、圧力調整用の弁のある配管よりも大径とするのが好ましい。また、濃縮水流出第1配管16a、16b、25及び濃縮水流出第2配管17a、17b、26のいずれか1箇所又は複数箇所にエアーチャンバー(不図示)を設置し、運転によって溜まった水を用いてフラッシングを行なってもよい。ここで言うエアーチャンバーとは、濃縮水の圧力によって加圧された空気により、チャンバー中に溜まった水を流出させる装置を指す。
【0026】
前記原水の流れ方向変更時に、両方向から交互に複数回のフラッシングを行う場合、フラッシングを行なう前に、原水供給側の圧力を抜くことで、それまで膜面を押さえ付けていた圧力が抜け、膜が若干緩むことになるので、原水供給側の圧力を抜くことは膜面及び原水スペーサーに蓄積する濁質の圧密を緩和させることができる点で好ましい。原水供給側の圧力を抜く方法としては、原水供給ポンプ30の吐出側の原水供給主配管18に接続する原水流出第1配管19に付設した原水流出第1配管弁fを開ける方法、あるいは第1弁a1、a2、c1、c2、e1、e2、g、i及びkを開としている運転において、弁d1、d2及びmを開ける方法が挙げられる。弁の開放速度としては、特に制限されないが、瞬間的に、好ましくは1秒以内に弁が全開になることが好ましい。瞬間的に圧抜きをする方が、膜を緩ませ易く、また水撃作用による濁質排除効果も期待できる。また、この場合、透過水側の弁e1、e2及びkを開とすることが好ましい。弁e1、e2及びkが閉では膜間差圧がなくなり、膜を押さえ付けている力がなくなるため、例え原水供給側の圧力を抜いたとしても、膜が緩むことがないからである。
【0027】
また、フラッシング時には、透過水流出管14a、14b及び23に付設されている弁e1、e2及びkを全閉にすることが好ましい。透過水流出管14a、14b及び23に付設されている弁e1、e2及びkが開いていると、高圧用逆浸透膜モジュールの場合、フラッシング圧力程度ではフラッシング液である原水が透過することはないが、低圧又は超低圧用逆浸透膜モジュールでは透過してしまい、フラッシング流量が低減し、且つ水質の低下した水が透過するという問題がある。また、透過水流出管に付設されている弁を閉じた直後に発生する背圧により膜面に堆積した汚染物質の圧密を緩和させる効果もあり、フラッシングの効果を一層高めることができる。
【0028】
前記フラッシングは、両方向から交互に2回以上、5回以下のフラッシングを行なうことが好ましい。フラッシング回数が1回では一方向のみのフラッシングとなり洗浄効果が十分ではなく、経時的に濁質が蓄積してしまう。一方、5回を越えると排水する水が多くなり、回収率の低減につながる。また、フラッシングの1回当たりの時間は、特に制限されないが、30秒〜120秒が好ましい。30秒未満では洗浄効果が不十分であり、120秒を越えるとブロー時間が長く、回収率の大幅な低下となる。また、フラッシングの際、圧縮空気を原水中に供給してもよい。圧縮空気を原水に混入させることにより、洗浄効率が一層高まる。圧縮空気の供給量は、特に制限されないが、原水と空気との体積割合が2:1〜1:2とするのが好ましい。
【0029】
フラッシングを所定時間行なった後は、再度原水の処理を行なう。この場合、原水の流れ方向は、最初のフラッシングの直前まで流れていた原水の流れ方向と逆方向である。すなわち、弁a1、a2、c1、c2、f、g、i及びmは閉、弁d1、d2及びjはモジュール内を所定の圧力となるように調整開口され、弁b1、b2、e1、e2及びkは開とし、原水は分離膜モジュール10a、10b及び28で処理される。このように、原水処理→フラッシング→原水処理→フラッシングを順次繰り返す。原水処理時間としては、1時間〜24時間、好ましくは1時間〜12時間である。原水処理時間が1時間未満であると切替弁の切替回数が多くなり、切替弁の寿命を低下させると共に、回収率の低下につながる。また、24時間を越えると、蓄積した濁質の除去効果が低減してしまう。原水処理からフラッシングに切り替える形態としては、毎回同じ時間経過後に流れ方向を変更する方法、所定の通水差圧に達した時点で変更する方法及びこの両者を組合わせて変更する方法が挙げられる。
【0030】
次に、本発明の第3の実施の形態における多段式分離膜モジュールの運転方法を図1を参照して説明する。本例の多段式分離膜モジュールの運転方法は、スパイラル型膜エレメントを装着する多段式分離膜モジュールの運転方法であって、該運転方法は途中にフラッシングを含み、該フラッシングの最初に行なうフラッシングは、直前まで流れていた原水の流れ方向と逆方向に行なう方法である。すなわち、第3の実施の形態は、フラッシング後、原水の流れ方向は直前の原水の流れ方向と同方向であっても、逆方向であってもよいのであり、この点を除いて第2の実施の形態例と同じである。従って、原水処理時の原水の好ましい形態、フラッシング時における弁類の操作形態、フラッシング方法の好ましい形態等は全て第2の実施の形態例と同じである。第3の実施の形態例においては、フラッシング時に逆方向に流すことで濁質は十分に除去されるため、第2の実施の形態例と同様の効果を奏する。
【0031】
本発明で用いる分離膜モジュールに装着されるスパイラル型膜エレメントとしては、透過水集水管の外周面に袋状の分離膜を原水スペーサーと共に巻回してなるものであれば特に制限されず、当該原水スペーサーは、(i)原水の流入側から流出側に向かって緩やかな曲線で蛇行する形状で延在する第1線材及び第2線材からなるものであって、該第1線材は分離膜のうちの対向する一方の膜面に沿って延在すると共に、隣接する第1線材同士間で一方の原水流路を形成し、該第2線材は分離膜のうち対向する他方の膜面に沿って延在すると共に、隣接する第2線材同士間で他方の原水流路を形成し、該第1線材と該第2線材とは一部が重なり、該重なり箇所で結合されてなるもの、(ii)分離膜の原水流入側端部、又は原水流入側端部と濃縮水流出側端部に固設されてなるもの、(iii)前記(ii)において、分離膜の原水流入側端部、又は原水流入側端部と濃縮水流出側端部への原水スペーサーの固設方法が、二つ折りされた原水スペーサーを当該端部に対して両側から挟持するようにして固定したもの、(iv)原水スペーサーを構成する線材の平均交点数が、スペーサー1m2当たり500以上、10,000未満であるもの、(v)原水スペーサーを構成する線材の交点数密度が、原水の流れ方向に沿って、漸次減少するか、または断続的に減少するもの、(vi)原水スペーサーを構成する線材の交点数密度が、原水の流れ方向に沿って、漸次増加するか、または断続的に増加するもの等が使用できる。上記(i)においては、更に前記緩やかな曲線で蛇行する形状が、屈曲点のない規則性を有する形状であって、振幅Hと波長Lの比(H/L)が0.02〜2であり、且つ1本の線材1m当たり1〜100波長のものが、交点数が好適な範囲であると共に、原水は原水流路内を穏やかに蛇行しながらほぼ直線状に流入側から流出側に向かって流れ、原水流路内への濁質の蓄積が一層防止される点で好ましい。上記(ii)及び(iii)において、該分離膜の原水流入側端部、又は濃縮水流出側端部の前記透過水集水管に対する長手方向における長さは、それぞれ該分離膜の原水流入側端、又は濃縮水流出側端から内側へ、該分離膜の透過水集水管に対する長手方向長さの1〜10%であるものが好ましい。
【0032】
本発明の分離膜モジュールの運転方法において、前記(i)、(ii)、(iii)及び(iv)の原水スペーサーを備えるスパイラル型膜エレメントを装着した分離膜モジュールは、前記第1の実施の形態例〜第3の実施の形態例のいずれも適用できる。前記(v)、(vi)の原水スペーサーを備えるスパイラル型膜エレメントを装着した分離膜モジュールは、原水スペーサーの交点数密度が原水の流れ方向で限定されるため、原水の流れ方向を反対方向へ変更する前記第1の実施の形態例及び第2の実施の形態例は適用できない。前記(v)の原水スペーサーを備えるスパイラル型膜エレメントを装着した分離膜モジュールは、第3の実施の形態例の逆方向フラッシングを用いることが、原水スペーサーの入口近傍に敢えて濁質を蓄積させる構造を採る点で必須である。また、前記(vi)の原水スペーサーを備えるスパイラル型膜エレメントを装着した分離膜モジュールは、第3の実施の形態例を適用することができる。
【0033】
上記(ii)〜(vi)の原水スペーサーは、例えば複数の第1線材および複数の第2線材から構成される網目状のスペーサーが挙げられる。この場合、網目の形状としては、特に制限されないが、ひし形、四角形および波形などが挙げられ、その線材同士の交差形態としては、特に制限されず、線材同士を織らずに接合した形態、平織りによる交差形態およびあや織りによる交差形態などが挙げられる。また、交点とは、第1線材及び第2線材とが交わる点を言うが、例えば第1線材及び第2線材が波形の場合における交点のように、第1線材と第2線材が少し重なる部分を有するものであってもよい。また、第1線材及び第2線材の断面形状としては、特に制限されないが、例えば円形、三角形、四角形などが挙げられる。また、第1線材及び第2線材は同一寸法、同一断面形状のものが使用される。原水スペーサーの厚さは、第1線材の径と第2線材の径を合わせたもの、若しくはそれよりも若干薄いものであり、0.4〜3.0mmの範囲である。また、原水スペーサーの材質としては、特に制限されないが、ポリプロピレンやポリエチレンが、成形性やコスト面から好ましい。また、原水スペーサーの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を適用できるが、押出成形法が、コスト面及び精度面からも好ましい。
【0034】
当該スパイラル型膜エレメントは、透過水集水管の外周面に袋状の分離膜を前記原水スペーサーと共に、1枚の袋状の分離膜を巻回したものであるか、又は複数の袋状の分離膜を巻回したものである。分離膜としては、精密濾過膜、限外濾過膜及び逆浸透膜などが挙げられる。このうち、逆浸透膜が、原水中からイオン成分や低分子成分を分離する目的で使用され、従来から前処理が必須のものとなっているという点でその効果をより発揮する。逆浸透膜としては、食塩水中の塩化ナトリウムに対する90%以上の高い除去率を有する通常の逆浸透膜、及び低脱塩率のナノ濾過膜やルーズ逆浸透膜が挙げられる。ナノ濾過膜やルーズ逆浸透膜は脱塩性能を有するものの、通常の逆浸透膜よりも脱塩性能が低いもので、特にCa、Mg等の硬度成分の分離性能を有するものである。なお、ナノ濾過膜とルーズ逆浸透膜はNF膜と称されることがある。
【0035】
本例で用いる逆浸透膜モジュールは、前記スパイラル型膜エレメントを備えるものであれば特に制限されず、例えば図2に示す構造を有する逆浸透膜モジュールが挙げられる。図2に示したように、透過水集水管311の外周面に袋状の逆浸透膜312を原水スペーサーと共にスパイラル状に巻きつけ、その上部を外装体32で被覆する。そしてスパイラル状に巻きつけた逆浸透膜312がせり出すのを防止するために、数本の放射状のリブ33を有するテレスコープ止め34が両端に取り付けられている。これらの透過水集水管311、逆浸透膜312、外装体32、テレスコープ止め34でひとつのスパイラル型膜エレメント35を形成し、夫々の透過水集水管311をコネクタ(図示せず)で連通して、ハウジング36内にスパイラル型膜エレメント35を複数個装填する。なお、スパイラル型膜エレメント35の外周とハンジング36の内周の間に隙間37が形成されるが、この隙間37をブラインシール38で閉塞してある。なおハウジング36の一端には原水をハウジング内部に流入するための原水流入管(図示せず)、また他端には透過水集水管311に連通する処理水管(図示せず)および非透過水管(図示せず)が付設され、ハウジング36、その内部部品および配管(ノズル)等で逆浸透膜モジュール39が構成される。
【0036】
このような構造の逆浸透膜モジュール39で原水を処理する場合は、ハウジング36の一端からポンプを用いて原水を圧入するが、図2において矢線で示したように原水はテレスコープ止め34の各放射状のリブ33の間を通って最初のスパイラル型膜エレメント35内に侵入し、一部の原水はスパイラル型膜エレメント35の膜間の原水スペーサーで区画される原水流路を通り抜けて次のスパイラル型膜エレメント35に達し、他部の原水は逆浸透膜312を透過して透過水となり当該透過水は透過水集水管311に集水される。このようにしてスパイラル型膜エレメント35に次々に原水が通り抜けて、逆浸透膜を透過しなかった原水は濁質及びイオン性不純物を高濃度で含む濃縮水としてハウジング36の他端から取り出され、また逆浸透膜を透過した透過水は透過水として透過水集水管31を介してハウジング36外に取り出される。なお、本発明で用いる逆浸透膜モジュールは図2のように複数のスパイラル型膜エレメントを装着するものの他、例えばスパイラル型膜エレメント1個装着するものであってもよい。
【0037】
本発明の多段式分離膜装置は、前段の分離膜装置又は分離膜装置群の分離膜モジュールから得られる中間濃縮水が、後段の分離膜装置又は分離膜装置群の分離膜モジュールに順次供給される2段以上の分離膜装置であり、例えば4基の分離膜モジュール41a〜41dを並列配置した前段の分離膜装置群42a、2基の分離膜モジュール41e、41fを並列配置した中段の分離膜装置群42b及び1基の分離膜モジュール41gを配置した後段の分離膜装置42cからなる4→2→1型の3段式分離膜装置(図3)、3基の分離膜モジュール44a〜44cを並列配置した前段の分離膜装置群43a、2基の分離膜モジュール44d、44eを並列配置した後段の分離膜装置群43bからなる3→2型の2段式分離膜装置(図4(A))、2基の分離膜モジュール46a、46bを並列配置した前段の分離膜装置群45a、1基の分離膜モジュール46cを配置した後段の分離膜装置45bからなる2→1型の2段式分離膜装置(図4(B))及び1基の分離膜モジュール48aを配置した前段の分離膜装置47a、1基の分離膜モジュール48bを配置した後段の分離膜装置47bからなる1→1型の2段式分離膜装置(図4(C))が挙げられる。なお、図4(B)は、図1と同じ配置形態である。また、図3及び図4は模式図であり、分離膜モジュールからの2つの流出ラインは、濃縮水流出第1配管及び濃縮水第2配管を示したものであるが、実際の配置位置とは異なっている。これらの多段式分離膜装置は、要求される水の回収率及び水の処理量により、適宜の形態とすることができる。本発明に係る多段式分離膜装置は、本発明に係る多段式分離膜モジュールの運転方法を簡易な装置で確実に実施できる。
【0038】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
実施例1
濁度2度、導電率20mS/mの工業用水を図5に示すフローの多段式分離膜装置で処理し、下記運転条件下において、2000時間の耐久運転を行った。多段式分離膜装置には、網目状の原水スペーサーを巻回した8インチエレメントES-10(日東電工社製)1個を装着した分離膜モジュールを用いた。分離膜モジュールの性能評価は1段目の分離膜モジュールの運転初期及び2000時間における通水差圧(MPa)、透過水量(l/分)及び透過水の導電率(mS/m)を測定することで行った。また、2000時間後、1段目の分離膜モジュールを解体して原水流路内の濁質の付着状況を観察した。また、1段目の分離膜モジュールにおける各測定値の結果を表6に、1段目の分離膜モジュールにおける原水流路(分離膜エレメント内の原水スペーサーが存在する部分)の目視観察結果を表7に示す。なお、表6及び表7における実施例2〜6及び比較例1〜3の結果も同様である。
【0039】
(運転条件)
表1に示す工程表に従って各弁の開閉を行い、表1のNo.1〜No.16までを1サイクルとして、これを繰り返し行なう。透過処理条件(採水A及びB)は操作圧力0.75MPa、濃縮水流量(最終段)2.7m3/時間、水温25℃、原水pH7.0である。また、フラッシング条件(ブラッシングA1、A2、B1及びB2)はフラッシング水流量8.0m3/時間、水温25℃である。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例2
実施例1の毎回のフラッシングA1、A2、B1及びB2時に、原水と空気の体積比が1:1となるように空気を混入させた以外、実施例1と同様の運転方法で2000時間の耐久運転を行った。分離膜モジュールの性能評価結果を表6及び表7に示す。
【0042】
実施例3
原水処理における温度25℃の原水の連続的供給に代えて、25℃の原水の供給を23時間行った後に、50℃の原水を1時間供給することを繰り返して、断続的供給した以外、実施例1と同様の運転方法で2000時間の耐久運転を行った。50℃の原水は25℃の原水を加熱器で加熱することで得た。分離膜モジュールの性能評価結果を表6及び表7に示す。
【0043】
実施例4
原水処理におけるpH7.0の原水に代えて、pH4.0の原水を使用した以外、実施例1と同様の運転方法で2000時間の耐久運転を行った。pH4.0の原水は、pH7.0の原水に塩酸を添加することで調製した。分離膜モジュールの性能評価結果を表6及び表7に示す。
【0044】
実施例5
濁度2度、導電率20mS/mの工業用水に分散剤「hypersperse MSI300」(ARGO SCIENTIFIC社製)を50mg/l添加した以外は、実施例1と同様の運転方法で2000時間の耐久運転を行った。分離膜モジュールの性能評価結果を表6及び表7に示す。
【0045】
比較例1
前処理を目的とした公知の限外ろ過膜装置を前段に配置し、表2の採水工程のみを行う以外、実施例1と同様の方法で行った。すなわち、濁度2度、導電率20mS/mの工業用水を、前処理装置で処理し、その処理水を従来の市販の分離膜モジュールを2段連ねた多段式膜分離装置で更に通常の処理を行なった。その結果を表6及び表7に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
比較例2
下記の運転条件に変更した以外、実施例1と同様の方法で行った。すなわち、濁度2度、導電率20mS/mの工業用水を、前処理装置で処理することなく直接従来の市販の分離膜モジュールを2段連ねた多段式分離膜装置で通常の処理を行なった。その結果を表6及び表7に示す。なお、この比較例2では800時間頃までに、通水差圧が極端に上昇し、透過水が得られなくなったため、この時点で運転を停止した。
【0048】
(運転条件)
操作圧力が0.75MPa、濃縮水流量が2.7m3/時間、水温が25℃、原水pH7.0で行なった。また、表3の工程に従って各弁の開閉を行い、No.1及び2を1サイクルとして、これを繰り返した。
【0049】
【表3】
【0050】
実施例6
濁度2度、導電率20mS/mの工業用水を図1に示すフローの多段式分離膜装置で処理し、下記運転条件下において、2000時間の耐久運転を行った。分離膜モジュールの性能評価は1段目の分離膜モジュール11aの運転初期及び2000時間における通水差圧(MPa)、透過水量(l/分)及び透過水の導電率(mS/m)を測定することで行った。また、2000時間後、1段目の分離膜モジュール11aを解体して原水流路内の濁質の付着状況を観察した。測定値の結果を表6に、原水流路の目視観察結果を表7に示す。
【0051】
(運転条件)
表4に示す工程表に従って各弁の開閉を行い、表4の工程No.1〜No.16までを1サイクルとして、これを繰り返し行なう。透過処理条件(採水A及びB)は操作圧力0.75MPa、濃縮水流量(最終段)4.4m3/時間、水温25℃、原水pH7.0であり、フラッシング条件(ブラッシングA1、A2、B1及びB2)はフラッシング水流量が8.0m3/時間、水温が25℃である。
【0052】
【表4】
【0053】
比較例3
下記の運転条件に変更した以外、実施例6と同様の方法で行った。すなわち、濁度2度、導電率20mS/mの工業用水を、前処理装置で処理することなく直接従来の市販の分離膜モジュールを前段に2個、後段に1個連ねた多段式分離膜装置で通常の処理を行なった。その結果を表6及び表7に示す。なお、この比較例2では800時間頃までに、通水差圧が極端に上昇し、透過水が得られなくなったため、この時点で運転を停止した。
【0054】
(運転条件)
操作圧力が0.75MPa、濃縮水流量が4.4m3/時間、水温が25℃、原水pH7.0で行なった。また、表5の工程に従って各弁の開閉を行い、工程No.1及び2を1サイクルとして、これを繰り返した。
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
【表7】
【0058】
実施例1〜6において、2000時間後、通水差圧の上昇はほとんどなく、透過水量の低下もなく、透過水の水質も高いものであった。比較例1は2000時間後の性能評価において、実施例と遜色ない結果を示しているが、これは前処理装置を設置しており、設置場所や設置コストなどが余分に必要となる。従って、実施例1〜5の比較対象は比較例2であるが、比較例2は約800時間で透過水量がゼロになるまで濁質の付着が激しいものであった。実施例6の比較対象は比較例3であるが、比較例3は約800時間で透過水量がゼロになるまで濁質の付着が激しいものであった。
【0059】
【発明の効果】
本発明の多段式分離膜モジュールの運転方法によれば、多段式分離膜装置で用いる分離膜モジュールのスパイラル型膜エレメントに巻回された原水スペーサーに蓄積した濁質を効率よく除去することができる。また、低圧又は超低圧用逆浸透膜モジュールで起こり得るフラッシング流量が低減するという問題もないと共に、透過水側の弁を閉じた直後に発生する背圧により膜面に堆積した汚染物質の圧密を緩和させる効果もあり、フラッシングの効果を一層高めることができる。また、原水供給側の圧力を抜くことで、それまで膜面を押さえ付けていた圧力が抜けるため、膜が若干緩むことになり、膜面及び原水スペーサーに蓄積する濁質の圧密を緩和させることができる。また、本発明の多段式分離膜装置によれば、簡易な装置で前記運転方法を確実に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本例の運転方法を実施する多段式分離膜装置の一例のフローを示す図である。
【図2】本実施の形態例における分離膜モジュールの構造の一例を示す図である。
【図3】本実施の形態例の多段式分離膜装置のフローを示す図である。
【図4】本実施の形態例の多段式分離膜装置の他のフローを示す図である。
【図5】実施例1〜5を実施するための多段式分離膜装置のフローを示す図である
【図6】従来の逆浸透膜モジュールの概略図である。
【図7】従来の多段式の分離膜装置の一例のフロー図である。
【符号の説明】
8、50、50a〜50c 多段式分離膜装置
9a、9b、42a〜42c、43a、43b、45a、45b、47a、47b 分離膜装置群
10a、10b、28 分離膜モジュール
11a〜11c、41a〜41g、44a〜44e、46a〜46c、48a、48b 分離膜装置
12a、12b 原水供給第1配管
13a、13b 原水供給第2配管
14a、14b、23 透過水流出配管
15a、15b、24 流れ方向転換配管
16a、16b、25 濃縮水流出第1配管
17a、17b、26 濃縮水流出第2配管
18 原水供給主配管
19 原水流出第1配管
20a、20b 原水供給分岐配管
21 第1濃縮水供給主配管(後段の原水供給主配管)
22 第1濃縮水供給第2配管(後段の原水供給第2配管)
27 原水流出第2配管(後段の原水流出配管)
30 ポンプ
31 濃縮水集水配管
a1、a2、g 第1弁
b1、b2、h 第2弁
c1、c2、i 第3弁
d1、d2、j 第4弁
e1、e2、k 透過水流出配管弁
f、m 原水流出配管弁
311 透過水集水管
312 逆浸透膜
32 外装体
33 リブ
34 テレスコープ止め
35 スパイラル型膜エレメント
36 ハウジング
37 隙間
38 ブラインシール
39 逆浸透膜モジュール
Claims (5)
- 1基又は2基以上並列配置されたスパイラル型膜エレメントを装着する前段の分離膜モジュール又は分離膜モジュール群の中間濃縮水が、1基又は2基以上並列配置されたスパイラル型膜エレメントを装着する後段の分離膜モジュール又は分離膜モジュール群に順次供給される2段以上の多段式分離膜モジュールの運転方法であって、該分離膜モジュールの被処理水の流れ方向を、定期又は不定期に反対方向へ変更し、前記被処理水の流れ方向変更時に、両方向から交互に複数回フラッシングを行うことを特徴とする多段式分離膜モジュールの運転方法。
- 毎回のフラッシングの最初に行うフラッシングは、直前まで流れていた被処理水の流れ方向と逆方向に行うことを特徴とする請求項1記載の多段式分離膜モジュールの運転方法。
- 前記フラッシング時に、透過水側の弁を全閉とすることを特徴とする請求項1又は2記載の多段式分離膜モジュールの運転方法。
- 前記フラッシングを行う前に、原水供給側の圧抜きを行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の多段式分離膜モジュールの運転方法。
- 前記フラッシングを各段の分離膜モジュール毎又は分離膜モジュール群毎に分けて行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の多段式分離膜モジュールの運転方法。
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