JP2004089763A - スパイラル型膜エレメント、分離膜モジュール、分離膜装置及びこれを用いる水処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】工業用水などスパイラル型膜エレメントにとって濁度の高い原水を前処理なしで供給しても、特定のフラッシング工程を組合わせることで、長期間に亘り安定な通水処理が可能なスパイラル型膜エレメント、分離膜モジュール、分離膜装置及びこれを用いる水処理方法を提供すること。
【解決手段】透過水集水管の外周面に袋状の分離膜を網目状原水スペーサーと共に巻回してなるスパイラル型膜エレメントであって、該原水スペーサーは、原水スペーサーを構成する線材の交点数密度が、原水の流れ方向に沿って、漸次減少するか、または断続的に減少するものである。
【選択図】 図1
【解決手段】透過水集水管の外周面に袋状の分離膜を網目状原水スペーサーと共に巻回してなるスパイラル型膜エレメントであって、該原水スペーサーは、原水スペーサーを構成する線材の交点数密度が、原水の流れ方向に沿って、漸次減少するか、または断続的に減少するものである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、工業用水などスパイラル型膜エレメントにとって濁度の高い原水であっても、前処理することなく、特定のフラッシング工程を組合わせることで長期間に亘り安定な通水処理が可能なスパイラル型膜エレメント、分離膜モジュール、分離膜装置及びこれを用いる水処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、海水の淡水化や、超純水、各種製造プロセス用水を得る方法として、逆浸透膜(RO膜)やナノ濾過膜(NF膜)を透過膜とするスパイラル型膜エレメントを用い、原水中からイオン成分や低分子成分を分離する逆浸透法が知られている。また低分子ないし高分子成分を分離したり、低分子成分ないし高分子成分の内、高分子成分のみを分離したりする限外濾過法や、微粒子を分離したりする精密濾過法においてもスパイラル型膜エレメントが用いられている。図5に例示されるように、従来から使用されている逆浸透膜法におけるスパイラル型膜エレメントの一例は、透過水スペーサー52の両面に逆浸透膜51を重ね合わせて3辺を接着することにより袋状膜53を形成し、該袋状膜53の開口部を透過水集水管54に取り付け、網状の原水スペーサー55と共に、透過水集水管54の外周面にスパイラル状に巻回することにより構成されている。そして、原水56はスパイラル型膜エレメント50の一方の端面側5aから供給され、原水スペーサー55に沿って流れ、スパイラル型膜エレメント50の他方の端面側5bから濃縮水58として排出される。原水56は原水スペーサー55に沿って流れる過程で、逆浸透膜51を透過して透過水57となり、この透過水57は透過水スペーサー52に沿って透過水集水管54の内部に流れ込み、透過水集水管54の端部から排出される。このように、巻回された袋状膜53間に配設される原水スペーサー55により原水経路が形成されることになる。
【0003】
このような逆浸透膜スパイラル型エレメントを用いて海水の淡水化や、超純水、各種製造プロセス用水を得る場合、通常、原水の濁質などを除去する目的で前処理が行われている。この前処理を行うのは、逆浸透膜スパイラル型エレメントの原水スペーサーの厚みは、原水流路を確保しつつできる限り原水と逆浸透膜との接触面積を大きくとるため通常1mm以下と薄く、濁質が原水流路にある原水スペーサーに蓄積され、原水流路を閉塞し易い構造となっており、このため、予め原水中の濁質を除去して濁質蓄積による通水差圧の上昇や透過水量、透過水質の低下を回避し、長期間に亘り安定な運転を行うためである。このような除濁目的で用いられる前処理装置は、例えば、凝集沈殿処理、濾過処理及び膜処理などの各装置を含むものであり、これらの設置は、設置コストや運転コストを上昇させると共に、大きな設置面積を必要とするなどの問題を有していた。このため、従来例のような薄い原水スペーサーで原水流路を確保でき、従来と同等程度の脱塩率を維持できると共に、濁質が蓄積しない構造の原水スペーサーが開発されれば、工業用水や水道水が前処理なしで供給でき、システムの簡略化、設置面積の低減、低コスト化が可能となり、産業上の利用価値は極めて高いものとなる。
【0004】
一方、スパイラル型膜エレメントの濁質による原水流路の閉塞を防止するため、従来の格子の網目状原水スペーサーの構造を改善した種々の提案がなされている。特開昭64−47404号公報には、波板形であって該波形が蛇行する形状の原水スペーサーを用いるスパイラル型膜エレメントが開示されている。この蛇行波形形状の原水スペーサーは成型が困難であると共に、スパイラル状に巻回する際、流路が潰れる可能性が大であり、実用的ではない。
【0005】
特開平9−299770号公報には、第1の線材と第2の線材が互いに交差するように格子状に形成されてなり、第1の線材又は第2の線材が透過水集水管の長手方向と平行になるように原水スペーサーを配置する構造のものが開示されている。この構造の原水スペーサーによれば、原水が透過水集水管の長手方向と平行な方向にほぼ直線状に流れるため、圧力損失が低く、且つ原水の線速が大きくなり、原水中の濁質が蓄積し難くなる反面、集水管の長手方向に直角な方向に存在する線材が原水の流路を遮るため、当該線材や線材の交点部分に濁質が蓄積してしまい、やはり原水流路の閉塞を起こしてしまう。
【0006】
特開平9−299947号公報には、原水スペーサーとして、厚さ2mm以上、5mm以下の合成樹脂のネットを用いるスパイラル型膜エレメントが記載され、原水スペーサーを厚くすることで、濁質の蓄積を防止している。しかし、原水スペーサーを厚くするだけでは、濁質の蓄積防止という点では大きな効果が期待できず、他方でスパイラル状物とした場合、1エレメント当たりの膜面積が小さくなってしまうという問題がある。
【0007】
一方、特開2000−437号公報には、集水管の軸線に垂直な方向における2交点の間隔Xは2〜5mmの範囲にあり、集水管の軸線方向における2交点の間隔YはXの1.1〜1.8倍の格子状の原水スペーサーを用いるスパイラル型膜エレメントが記載されている。しかし、この発明の目的、すなわち、格子状の目開きを特定形状とした目的は、逆浸透膜上における原水の流れをエレメントの周方向に拡散させてその逆浸透膜上における濃度分極層の厚みを低減し、透過水量を確保することにあり、原水流路における濁質の蓄積を防止するものではない。
【0008】
特開平11―104636号公報には、加圧した気液二層流を通常の原水の流れに対して逆の流れ方向で供給して逆浸透膜モジュールを逆洗する方法が開示されている。しかし、この逆洗方法は、中空糸型逆浸透膜モジュールの該中空糸膜面に付着した濁質の除去であり、スパイラル型逆浸透膜モジュールの原水スペーサーに付着した濁質の除去ではない。また、従来のスパイラル型逆浸透膜モジュールにこのような逆洗を行なった場合、それなりの洗浄効果が期待できるものの、長期間に亘る運転においては、やはり原水スペーサーの交点部分に濁質が徐々に蓄積するという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来提案されている原水スペーサーのうち、例えば図6に示すように、網目状の原水スペーサー60においては、複数の第1の線材61と複数の第2の線材62とが交差する交点部分64で原水が淀み、当該交点部分64の原水流入側X面に濁質63の蓄積が観察される。このうち、エレメント内部や濃縮水流出側にある交点部分に付着した濁質は、例え原水の流れ方向とは逆方向のフラッシングを行なっても十分には除去できないという問題がある。このため、長期間の使用においては、通水差圧の上昇は避けられない。原水流路を確保しつつ、交点や屈曲点のない流路を形成し、濁度の蓄積を抑制するという観点から、原水の流入側Xから流出側Yに向かって直線状又は略直線状に延在する線材のみで形成される構造のものが最も好適なものであるが、線材同士を繋ぐ構造ではないため、工業的に製作することは困難である。なお、図6(B)は図6(A)中、符号Z部分を拡大して示した図である。
【0010】
従って、本発明の目的は、工業用水などスパイラル型膜エレメントにとって濁度の高い原水を前処理なしで供給しても、特定のフラッシング工程を組合わせることで、長期間に亘り安定な通水処理が可能なスパイラル型膜エレメント、分離膜モジュール、分離膜装置及びこれを用いる水処理方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者は鋭意検討を行った結果、透過水集水管の外周面に袋状の分離膜を網目状原水スペーサーと共に巻回してなるスパイラル型膜エレメントにおいて、原水中の濁質が蓄積するのは主に原水スペーサーの入口側であること、入口側の交点数密度を高くすることにより、すなわち、網目を構成する線材の交点数密度が原水の流れ方向に沿って、漸次減少するか、または断続的に減少するものであれば、入口側への濁質の蓄積がより促進され、逆に内部への濁質の蓄積が大幅に低減されること、直前まで流れていた原水の流れと逆方向へフラッシングすることで、入口側に蓄積した濁質が容易に剥がされ直ちにエレメント外へ除去されることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明(1)は、透過水集水管の外周面に袋状の分離膜を網目状原水スペーサーと共に巻回してなるスパイラル型膜エレメントであって、該原水スペーサーは、原水スペーサーを構成する線材の交点数密度が、原水の流れ方向に沿って、漸次減少するか、または断続的に減少するものであるスパイラル型膜エレメントを提供するものである。かかる構成を採ることにより、濁質の蓄積は原水スペーサーの入口近傍に集中する。従って、直前まで流れていた原水の流れ方向と逆方向へフラッシングする工程を有する水処理方法に適用すれば、原水スペーサーの入口側に蓄積した濁質を、当該フラッシングにより効率的に除去することができる。
【0013】
また、本発明(2)は、前記交点数密度は、前記交点数密度が最も高くなる部分において、原水スペーサー1m2当たり50,000以上、300,000以下であり、交点数密度が最も低くなる部分において、原水スペーサー1m2当たり500以上、50,000未満である前記スパイラル型膜エレメントを提供するものである。かかる構成を採ることにより、用途あるいは使用条件に見合った好適な適宜の数値を選択して作製することができる。
【0014】
また、本発明(3)は、前記スパイラル型膜エレメントを1個備える分離膜モジュールを提供するものである。かかる構成を採ることにより、分離膜モジュールに装着されたスパイラル型膜エレメントの原水スペーサーは原水流入側から濃縮水流出側にかけて必ず漸次減少するか、または断続的に減少しており、前記効果を確実に奏することができる。また、水処理施設内に搬入し易く、且つそのままの形態で処理ラインに装着できる。
【0015】
また、本発明(4)は、透過水集水管の外周面に袋状の分離膜を網目状原水スペーサーと共に巻回してなるスパイラル型膜エレメントを原水の流れ方向に複数個連結してなる分離膜モジュールであって、該原水スペーサーは、原水スペーサーを構成する線材の交点数密度が、該分離膜モジュール基準として、原水の流れ方向に沿って漸次減少するか、または断続的に減少するものである分離膜モジュールを提供するものである。かかる構成を採ることにより、分離膜モジュールに装着された複数個のスパイラル型膜エレメントにおいて、原水スペーサーの交点数密度は該分離膜モジュール基準として、原水流入側から濃縮水流出側にかけて必ず漸次減少するか、または断続的に減少しており、前記効果を確実に奏することができる。
【0016】
また、本発明(5)は、前記交点数密度は、前記交点数密度が最も高くなる部分において、原水スペーサー1m2当たり50,000以上、300,000以下であり、交点数密度が最も低くなる部分において、原水スペーサー1m2当たり500以上、50,000未満である前記分離膜モジュールを提供するものである。複数のスパイラル型膜エレメントが装着された分離膜モジュールにおいても、前記発明(2)と同様の効果を奏する。
【0017】
また、本発明(6)は、原水供給ポンプと第1弁を接続する原水供給第1配管と、第1弁と前記分離膜モジュールを接続する原水供給第2配管と、前記分離膜モジュールと、該分離膜モジュールの透過水側に接続される透過水流出配管と、原水供給第1配管と該分離膜モジュールの濃縮水流出側を接続する濃縮水流出第1分岐配管と第2切替弁を有する流れ方向転換用配管と、原水供給第2配管から分岐し、原水の流れ方向を逆方向とした場合の濃縮水が流出する濃縮水流出第2分岐配管と、を備える分離膜装置を提供するものである。本発明の分離膜装置は原水スペーサーの交点部分に蓄積した濁質を容易に除去するフラッシング操作ができるため、海水の淡水化や、超純水、各種製造プロセス用水を得る場合、工業用水や水道水など逆浸透膜スパイラル型エレメントにとって濁度の高い原水を前処理なしで供給でき、システムの簡略化、設置面積の低減、低コスト化が可能となり、産業上の利用価値は極めて高い。
【0018】
また、本発明(7)は、前記分離膜モジュールを用いて原水を処理する水処理方法において、直前まで流れていた原水の流れ方向と逆方向に流すフラッシングを、定期又は不定期に行なう工程を含む水処理方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、原水スペーサー入口側の線材の交点部分における原水流入側に蓄積した濁質は、直前の原水の流れ方向とは逆に濃縮水流出側から供給されるフラッシングにより、濁質が容易に剥がされ直ちにエレメント外に除去される。従って、このフラッシング工程を例えば通水差圧が上昇する前に実施すれば、透過水量や透過水質の低下を確実に回避することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明のスパイラル型膜エレメントで用いられる網目状原水スペーサーとしては、原水スペーサーを構成する線材の交点数密度が、原水の流れ方向に沿って、漸次減少するか、または断続的に減少するものであれば、特に制限されない。本発明において、線材の交点数密度が漸次減少するとは、図1(A)に示すように、原水流入側Xから濃縮水流出側Yに向けて、複数の第1線材11と複数の第2線材12で形成される交点数が高密度から低密度に連続的に変化しているものを言い、線材の交点数密度が断続的に減少するとは、図1(B)に示すように、原水流入側Xから濃縮水流出側Yに向けて、線材の交点数密度が一定領域の部分が複数あり(図1(B)ではx領域、xy領域、y領域の3つ)、原水流入側Xの領域部分、例えばxy領域の交点数密度は、隣接する濃縮水流出側Yの領域部分、図1(B)ではy領域の交点数密度より必ず高い場合を言う。従って、x領域の交点数密度は、xy領域の交点数密度より高い。なお、図1(A)、(B)共に原水の流れ方向に対する直角方向においては、同じ交点数密度である。また、図1(A)、(B)共に、原水流入側直後の僅かな部分(原水スペーサーの全長Lの5ないし10%)は、同じ交点数である高密度領域とすることが好ましい。
【0020】
前記交点数密度は、前記交点数密度が最も高くなる部分において、原水スペーサー1m2当たり50,000以上、300,000以下、好ましくは1m2当たり50,000以上、200,000以下である。交点数密度が50,000未満では、原水中の濁質がエレメントの内部及び濃縮水流出側に入り込んでしまう量が多くなり、本発明の効果が低減してしまう。当該部分においてはできる限り高密度にするのがよいが、交点数が300,000を越えると、通水差圧が極端に上昇してしまうし、所定厚さのスペーサーを製作することが困難となる。交点数密度が最も高くなる部分とは、図1(A)に示すような交点数密度が漸次減少する場合、原水流入側の端部から原水スペーサーの全長L(原水の流れ方向)の5ないし10%相当の領域を言う。また、交点数密度が最も低くなる部分において、原水スペーサー1m2当たり500以上、50,000未満、好ましくは1m2当たり500以上、20,000未満である。当該部分はできる限り低密度にするのがよいが、500未満では、原水流路が十分に確保できない。一方、50,000以上ではエレメントの原水流入側が高密度になっていることと合わせて、通水差圧が極端に上昇すると共に、エレメントの中央部及び濃縮水流出側の交点部分へ濁質が蓄積する可能性を増大させることになる。交点数密度が最も低くなる部分とは、図1(A)に示すような交点数密度が漸次減少する場合、濃縮水流出側の端部から原水スペーサーの全長L(原水の流れ方向)の5ないし10%相当の領域を言う。
【0021】
本発明において用いられる原水スペーサーの網目の形状としては、特に制限されないが、ひし形、四角形、六角形、楕円形および波形などが挙げられ、その線材同士の交差形態としては、特に制限されず、線材同士を織らずに接合した形態、平織りによる交差形態およびあや織りによる交差形態などが挙げられる。本発明において、交点とは、第1線材11及び第2線材12とが交わる点を言うが、例えば第1線材11及び第2線材12が波形の場合における交点のように、第1線材と第2線材が少し重なる部分を有するものであってもよい。また、第1線材及び第2線材の断面形状としては、特に制限されないが、例えば円形、三角形、四角形などが挙げられる。第1線材及び第2線材は同一寸法、同一断面形状のものが使用される。
【0022】
原水スペーサーの厚さは、第1線材の径と第2線材の径を合わせたもの、若しくはそれよりも若干薄いものであり、0.4〜3.0mm、好ましくは0.5〜2mm未満の範囲である。厚さが0.4mm未満では、通水差圧の上昇を招くと共に、交点数に係らず濁質の蓄積が生じ易くなる。一方、厚さが3.0mmを越えると、スパイラル状にした場合、1エレメント当たりの膜面積が小さくなり過ぎる。また、原水スペーサーの材質としては、特に制限されないが、ポリプロピレンやポリエチレンが、成形性やコスト面から好ましい。また、原水スペーサーの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を適用できるが、押出成形法がコスト面及び精度面からも好ましい。
【0023】
本発明のスパイラル型膜エレメントは、透過水集水管の外周面に袋状の分離膜を前記網目状原水スペーサーと共に巻回してなる。巻回しは、1枚の袋状の分離膜を巻回したものであっても、複数の袋状の分離膜を巻回したもののいずれであってもよい。本発明のスパイラル型膜エレメントは精密濾過装置、限外濾過装置及び逆浸透膜分離装置などの膜分離装置に使用することができる。逆浸透膜としては、食塩水中の塩化ナトリウムに対する90%以上の高い除去率を有する通常の逆浸透膜、及び低脱塩率のナノ濾過膜やルーズ逆浸透膜が挙げられる。ナノ濾過膜やルーズ逆浸透膜は脱塩性能を有するものの、通常の逆浸透膜よりも脱塩性能が低いもので、特にCa、Mg等の硬度成分の分離性能を有するものである。なお、ナノ濾過膜とルーズ逆浸透膜はNF膜と称されることがある。
【0024】
本発明のスパイラル型膜エレメントを用いた分離膜モジュールの例である逆浸透膜モジュールは、前記スパイラル型膜エレメントを1個備える第1の形態に係る逆浸透膜モジュール、及びスパイラル型膜エレメントを原水の流れ方向に複数個連結してなる第2の形態に係る逆浸透膜モジュールの2通りがある。第1の形態に係る逆浸透膜モジュールに用いる原水スペーサーは前述のものが使用される。一方、第2の形態における複数枚の原水スペーサーは、原水スペーサーを構成する線材の交点数密度が、該逆浸透膜モジュール基準として、原水の流れ方向に沿って漸次減少するか、または断続的に減少するものである。以下に、第2の形態に係る逆浸透膜モジュールの原水スペーサーにおいて、第1の形態に係る逆浸透膜モジュールの原水スペーサーと異なる点についてのみ主に説明する。この第2の形態における原水スペーサーの交点数密度の変化の状態を図2を参照して説明する。図2(A)は2個のスパイラル型膜エレメントを原水の流れ方向に連結してなる逆浸透膜モジュールの模式図、(B)及び(C)は該エレメントで用いられる原水スペーサーの模式図である。図2中、逆浸透膜モジュール20は原水流入側Xよりスパイラル型膜エレメント21a、21bを連結して装着したものであり、スパイラル型膜エレメント21aで用いられる原水スペーサーを(B)及び(C)では右側に、スパイラル型膜エレメント21bで用いられる原水スペーサーを(B)及び(C)では左側にそれぞれ示したものである。すなわち、図2(B)の形態は逆浸透膜モジュール基準として原水の流れ方向に沿って漸次減少するものの例示であり、図2(C)の形態は逆浸透膜モジュール基準として原水の流れ方向に沿って、断続的に減少するものの例示である。
【0025】
図2(B)において、スパイラル型膜エレメント21aの原水スペーサー1a及びスパイラル型膜エレメント21bの原水スペーサー1bは、この2枚があたかも連続する原水スペーサーの如く、原水流入側Xから濃縮水流出側Yに向けて、複数の第1線材11と複数の第2線材12で形成される交点数が高密度から低密度に連続的に変化するものである。交点数密度の他の変化形態を示す図2(C)において、スパイラル型膜エレメント21aの原水スペーサー1aは、線材の交点数密度が一定で且つ高密度であり、スパイラル型膜エレメント21bの原水スペーサー1bは、線材の交点数密度が一定で且つ低密度である。なお、図2(C)における原水スペーサー1a、1bにおいて、線材の交点数密度が一定領域の部分が複数存在するものであってもよい。この場合、原水流入側Xの領域部分の交点数密度は、隣接する濃縮水流出側Yの領域部分の交点数密度より必ず高くなるようにする。また、第2の形態に係る逆浸透膜モジュールの原水スペーサーにおいて、交点数密度が最も高くなる部分及び最も低くなる部分の具体的数値は前述の第1の形態に係る原水スペーサーの数値範囲と同様であるが、交点数密度が漸次減少する場合、交点数密度が最も高くなる部分は、原水流入側の端部から複数枚の原水スペーサーの合計長さ(原水の流れ方向)の5ないし10%相当の領域を言い、交点数密度が最も低くなる部分は、濃縮水流出側の端部から複数枚の原水スペーサーの合計長さ(原水の流れ方向)の5ないし10%相当の領域を言う。
【0026】
本発明の第2の形態に係る逆浸透膜モジュールとしては、例えば図3に示す構造を有する逆浸透膜モジュールが挙げられる。図3に示したように、透過水集水管30の外周面に袋状の逆浸透膜31を原水スペーサーと共にスパイラル状に巻きつけ、その上部を外装体32で被覆する。そしてスパイラル状に巻きつけた逆浸透膜31がせり出すのを防止するために、数本の放射状のリブ33を有するテレスコープ止め34が両端に取り付けられている。これらの透過水集水管30、逆浸透膜31、外装体32、テレスコープ止め34でひとつのスパイラル型膜エレメント35を形成し、夫々の透過水集水管30をコネクタ(図示せず)で連通して、ハウジング36内にスパイラル型膜エレメント35を複数個装填する。なお、スパイラル型膜エレメント35の外周とハンジング36の内周の間に隙間37が形成されるが、この隙間37をブラインシール38で閉塞してある。なおハウジング36の一端には原水をハウジング内部に流入するための原水流入管(図示せず)、また他端には透過水集水管30に連通する処理水管(図示せず)および非透過水管(図示せず)が付設され、ハウジング36、その内部部品および配管(ノズル)等で逆浸透膜モジュール39が構成される。
【0027】
このような構造の逆浸透膜モジュール39で原水を処理する場合は、ハウジング36の一端からポンプを用いて原水を圧入するが、図3において矢線で示したように原水はテレスコープ止め34の各放射状のリブ33の間を通って最初のスパイラル型膜エレメント35内に侵入し、一部の原水はスパイラル型膜エレメント35の膜間の原水スペーサーで区画される原水流路を通り抜けて次のスパイラル型膜エレメント35に達し、他部の原水は逆浸透膜31を透過して透過水となり当該透過水は透過水集水管30に集水される。このようにしてスパイラル型膜エレメント35に次々に原水が通り抜けて、逆浸透膜を透過しなかった原水は濁質及びイオン性不純物を高濃度で含む濃縮水としてハウジング36の他端から取り出され、また逆浸透膜を透過した透過水は透過水として透過水集水管30を介してハウジング36外に取り出される。
【0028】
本発明の実施の形態における逆浸透膜装置を図4を参照して説明する。図4は本例の逆浸透膜装置のフロー図である。図4中、逆浸透膜装置40は、原水供給ポンプ41と第1弁pを接続する原水供給第1配管42と、第1弁pと本発明の交点数密度が減少する逆浸透膜モジュール40Aを接続する原水供給第2配管43と、逆浸透膜モジュール40Aと、逆浸透膜モジュール40Aの透過水側に接続される弁sを有する透過水流出配管44と、原水供給第1配管42と逆浸透膜モジュール40Aの濃縮水流出側を接続する濃縮水流出第2分岐配管451と第2弁oを有する流れ方向転換用配管45と、原水供給第2配管43から分岐し、原水の流れ方向を逆方向とした場合の濃縮水が流出する弁qを有する濃縮水流出第2分岐配管421と、を備える。また更に濃縮水流出第2分岐配管451途中の弁rと、原水供給ポンプ41の吐出側の原水供給第1配管42から分岐する弁nを有するブロー配管422を備える。本例の逆浸透膜装置40に直接供給される原水としては、工業用水、水道水及び回収水が挙げられる。原水の濁度としては、特に制限されないが、濁度2度程度であっても長期間の連続運転においても通水差圧の上昇などを生じることがない。また、原水には原水中に砂粒などの粗大粒子を含む場合、予め目の粗いフィルターを通した処理水やスケールやファウリングを防止するための分散剤を添加したものも含まれる。分散剤の添加により、原水スペーサーや膜面への濁質の蓄積を一層抑制することができる。分散剤としては、例えば市販品の「hypersperse MSI300」、「hypersperse MDC200」(共に、ARGO SCIENTIFIC社製)が挙げられる。本発明の逆浸透膜装置によれば、従来、原水中の濁質を除去する目的で用いられていた凝集沈殿処理、濾過処理及び膜処理などの前処理装置の設置を省略することができる。このため、システムの簡略化、設置面積の低減、低コスト化が図れる点で画期的な効果を奏する。
【0029】
次に、本例の逆浸透膜装置40を用いて原水を処理する方法を説明する。先ず、第2弁o、弁q、nは閉、弁rはモジュール内を所定の圧力となるように調整され、第1弁p及び弁sは開とする。原水は原水供給ポンプ41により逆浸透膜モジュール40Aに供給される。原水は逆浸透膜モジュール40Aで処理され、濃縮水を濃縮水流出第1分岐配管451から得ると共に透過水流出配管44から透過水を得る。この原水処理において、エレメントに装着された原水スペーサーは前述の如く、入口側の交点数密度が高いものであるため、原水中の濁質等の浮遊物質の多くはエレメント入口近傍の原水スペーサーの交点部分に蓄積する。一部の浮遊物質は、エレメントの中央部及び濃縮水流出側にも流れるが、その大部分は原水スペーサーに蓄積しない微細な浮遊物質であり、また、蓄積する浮遊物質があったとしても、最も蓄積し易い部分である交点はその密度が低いため蓄積の確率は低くなる。また、蓄積したとしても、交点数密度が低いため、単位膜面積当たりの蓄積量は、エレメント入口近傍に比較して非常に少なくなる。従って、濁質の蓄積はエレメントの入口近傍がほとんどで、中央部及び濃縮水流出側にはほとんど蓄積しない。
【0030】
原水処理を所定時間行なった後、原水の処理運転を停止し、フラッシング工程を行なう。原水の処理運転の停止は、先ず始めに原水供給側の圧力を抜くことが好ましい。圧力を抜くには弁nの開放により行なう。この場合、透過水側の弁sは開としておく。原水供給側の圧力を抜くことで、それまで膜面を押さえ付けていた圧力が抜けるため、膜が若干浮くことになり、膜面及び原水スペーサーに蓄積している濁質を浮遊させることができる。圧力を抜く方法としては、特に制限されないが、瞬間的に、好ましくは1秒以内に弁が全開になるようにする。瞬間的に圧抜きをする方が、膜を浮かせ易く、また水撃作用による濁質排除効果も期待できる。また、圧力を抜く方法としては、濃縮水流出第2分岐配管421に付設した弁qを用いることができる。このように、圧力を弁qから抜く場合は、ブロー配管422と弁nとを省略することができる。また、透過水側の弁sを開とするのは、該弁sが閉では膜間差圧がなくなり、膜を押さえ付けている力がなくなるため、例え原水供給側の圧力を抜いたとしても、膜が浮くことがないからである。原水供給側の圧力を抜いた後、弁n、第1弁p、弁s及び弁rは閉、第2弁o及び弁qを開とする。そして、透過処理における原水供給流量の約3倍流量の原水を急速に逆浸透膜モジュール内に濃縮水流出側より供給する。このフラッシングにより、エレメント入口近傍に蓄積した濁質は剥がれ易く且つ剥がれた後は直ちにエレメント外へ排出される。直前まで流れていた原水の流れ方向と同じ方向にフラッシングすると、多くの濁質は除去されるものの、エレメント入口近傍に蓄積していた濁質は中央部及び濃縮水流出側へ流され汚染することになる。また、交点部分に蓄積していた濁質はより押し付けられ、交点部分に強固に付着することになる。そして強固に付着した状態が長時間続くと、もはや物理的手段では除去できなくなる。
【0031】
前記フラッシングは、両方向から交互に2回以上、5回以下のフラッシングを行なうことが好ましい。なお、最初に行なうフラッシングは必ず原水の流れ方向と逆方向に行なう。またフラッシング回数を複数回とすることで洗浄効果が高まる。また、5回を越えると排水する水が多くなり、回収率の低減につながる。また、フラッシングの1回当たりの時間は、特に制限されないが、30秒〜120秒が好ましい。30秒未満では洗浄効果が不十分であり、120秒を越えるとブロー時間が長く、回収率の大幅な低下となる。また、フラッシングの際、圧縮空気を原水中に供給してもよい。圧縮空気を原水に混入させることにより、洗浄効率が一層高まる。圧縮空気の供給量は、特に制限されないが、原水と空気との体積割合が2:1〜1:2とするのが好ましい。
【0032】
フラッシングを所定時間行なった後は、再度原水の処理を行なう。この場合、原水の流れ方向は、フラッシング工程の直前まで流れていた原水の流れ方向と同じ方向である。すなわち、第2弁o及び弁qは閉、弁rはモジュール内を所定の圧力となるように調整され、第1弁p及び弁sは開とし、原水は逆浸透膜モジュール40Aで処理される。このように、原水処理→フラッシング→原水処理→フラッシングを順次繰り返す。原水処理時間としては、1時間〜24時間、好ましくは1時間〜12時間である。原水処理時間が1時間未満であると切替弁の切替回数が多くなり、切替弁の寿命を極端に低下させると共に、回収率の低下につながる。また、24時間を越えると、蓄積した濁質の除去効果が低減してしまう。原水処理からフラッシングに切り替える形態としては、毎回同じ時間経過後に流れ方向を変更する方法、所定の通水差圧に達した時点で変更する方法及びこの両者を組合わせて変更する方法が挙げられる。
【0033】
また、本例の逆浸透膜装置においては、逆浸透膜モジュール40Aの後段に、逆浸透膜モジュール40Aの透過水を更に処理する後段逆浸透膜モジュールを配置してもよい(不図示)。この場合、後段逆浸透膜モジュールには濃縮水を原水供給ポンプの前に戻す戻り配管を備えることが好ましい。このような装置形態においては前段逆浸透膜モジュール40Aは本発明に係る逆浸透膜装置であり、後段逆浸透膜モジュールは従来の逆浸透膜装置である。このような逆浸透膜装置においては、前段逆浸透膜モジュール40Aで得られた一次透過水は後段逆浸透膜モジュールで処理され、透過水流出配管から二次透過水を得ると共に、二次濃縮水は戻り配管から原水供給ポンプの前に戻される。この二次濃縮水は既に前段逆浸透膜モジュール40Aで脱塩された透過水を後段逆浸透膜モジュールで濃縮されたものであり、原水に比べて導電率が低い。このため、二次濃縮水の全量を循環させることが可能となり、水回収率を向上させることができる。また、逆浸透膜装置は、従来型の装置で使用されている濁質除去のみを目的とした前処理装置の代わりに、本発明における濁質の除去が前記フラッシングで容易に行なえる逆浸透膜モジュールを前段に使用しているので、実質的に逆浸透膜を2段使用することになる。従来型の装置における前処理装置は当然脱塩機能がないので、逆浸透膜装置は従来型の逆浸透膜装置と比較して透過水の水質も格段に優れる。
【0034】
【実施例】
実施例1
濁度2度、導電率20mS/mの工業用水を下記仕様の逆浸透膜モジュールAに通水し、下記運転条件下において、2000時間の耐久運転を行った。逆浸透膜モジュールAの性能評価は運転初期及び2000時間における通水差圧(MPa)、透過水量(l/分/m2)及び透過水の導電率(mS/m)を測定することで行った。但し、透過水量はフラッシングを考慮しない数値である。また、2000時間後、逆浸透膜モジュールを解体して原水流路内の濁質の付着状況を観察した。測定値の結果を表1に、原水流路の目視観察結果を表2に示す。
【0035】
(逆浸透膜モジュールA)
図1(A)に示す交点数が原水の流れ方向に沿って漸次減少する網目状のもので、交点数密度は交点数密度が最も高くなる部分が原水スペーサー1m2当たり200,000、交点数密度が最も低くなる部分が原水スペーサー1m2当たり1,000、厚さが1.0mmの原水スペーサーAを作製した。次いで、この原水スペーサーAを用いてスパイラル型膜エレメントAを作製し、更に図3に示すような構造の逆浸透膜モジュールAを作製した。但し、該逆浸透膜モジュールAは1個のスパイラル型膜エレメントを収納した1個のモジュールとした。
(運転条件)
原水処理条件;図4に示す逆浸透膜装置を使用し、圧力が0.75MPa、濃縮水流量が2.7m3/時間、水温が25℃で、8時間毎に1回、下記に示すフラッシングを行う。
フラッシング条件;図4に示す逆浸透膜装置を用いた前述の原水の流れ方向とは逆方向にフラッシングを行なう方法に準拠する。但し、逆浸透膜モジュール内に供給される原水の流量は、透過処理における原水供給流量の約3倍とし、フラッシング工程60秒→停止30秒→フラッシング工程60秒で行なった。
【0036】
実施例2
逆浸透膜モジュールAの代わりに、下記に示す仕様の逆浸透膜モジュールBを用いた以外、実施例1と同様の運転方法で2000時間の耐久運転を行った。逆浸透膜モジュールBの性能評価結果を表1及び表2に示す。
(逆浸透膜モジュールB)
原水スペーサーAに代えて、図1(B)に示す交点数が断続的に減少する網目状のもので、交点数密度はx領域(交点数密度が最も高くなる部分)が原水スペーサー1m2当たり200,000、xy領域が原水スペーサー1m2当たり5,000、y領域(交点数密度が最も低くなる部分)が原水スペーサー1m2当たり1,000、厚さが1.5mmの原水スペーサーBを用いた以外、前記逆浸透膜モジュールAと同様の方法で作製した。なお、x領域、xy領域及びy領域の原水の流れ方向における長さ寸法は同一である。
【0037】
比較例1
膜処理からなる公知の前処理装置を前段に配置したこと、スパイラル型膜エレメントAの代わりに、8インチエレメントES−10(日東電工社製)を用いたこと以外、実施例1と同様の方法で行った。すなわち、濁度2度、導電率20mS/mの工業用水を、前処理装置で処理し、その処理水を従来の市販の逆浸透膜モジュールで更に処理した。その結果を表1及び表2に示す。なお、8インチエレメントES−10(日東電工社製)は格子の網目状であり、交点数密度は全体に亘り均一であり、交点数は原水スペーサー1m2当たり約140,000、厚さ0.8mmである。以下、比較例2も同様である。
【0038】
比較例2
スパイラル型膜エレメントAの代わりに、8インチエレメントES−10(日東電工社製)を用いた以外、実施例1と同様の方法で行った。すなわち、濁度2度、導電率20mS/mの工業用水を、前処理装置で処理することなく直接従来の市販の逆浸透膜モジュールで処理した。その結果を表1及び表2に示す。なお、この比較例2では800時間頃に、通水差圧が極端に上昇し、透過水が得られなくなったため、この時点で運転を停止した。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
実施例1及び2においては、交点数密度が入口側より減少する特定の原水スペーサーと原水の流れ方向と逆方向のフラッシングの組合わせにより、2000時間後、通水差圧の上昇はほとんどなく、透過水量の低下もなく、透過水の水質も高いものであった。比較例1は2000時間後の性能評価において、実施例と遜色ない結果を示しているが、これは前処理装置を設置しており、設置場所や設置コストなどが余分に必要となる。従って、実施例1及び2の比較対象は比較例2であるが、比較例2は約800時間で透過水量がゼロになるまで濁質の付着が激しいものであった。
【0042】
【発明の効果】
本発明のスパイラル型膜エレメントによれば、濁質の蓄積は原水スペーサーの入口近傍に集中する。従って、直前まで流れていた原水の流れ方向と逆方向へフラッシングする工程を有する水処理方法に適用すれば、原水スペーサーの入口側に蓄積した濁質を、当該フラッシングにより効率的に除去することができる。また、本発明の分離膜装置は原水スペーサーの交点部分に蓄積した濁質を容易に除去するフラッシング操作ができるため、海水の淡水化や、超純水、各種製造プロセス用水を得る場合、工業用水や水道水などスパイラル型膜エレメントにとって濁度の高い原水を前処理なしで供給でき、システムの簡略化、設置面積の低減、低コスト化が可能となり、産業上の利用価値は極めて高い。また、本発明の水処理方法によれば、原水スペーサー入口側の線材の交点部分における原水流入側に蓄積した濁質は、直前の原水の流れ方向とは逆に濃縮水流出側から供給されるフラッシングにより、濁質が容易に剥がされ直ちにエレメント外へ除去される。従って、このフラッシング工程を例えば通水差圧が上昇する前に実施すれば、透過水量や透過水質の低下を確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態例における原水スペーサーの一部を示す図である。
【図2】(A)は逆浸透膜モジュールの模式図、(B)及び(C)は他の実施の形態例における原水スペーサーの一部を示す図である。
【図3】本実施の形態例における逆浸透膜モジュールの構造の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における逆浸透膜装置の一例を示す図である。
【図5】従来の逆浸透膜モジュールの概略図である。
【図6】(A)は従来の網目状の原水スペーサーにおける濁質の蓄積状態を示す図であり、(B)は(A)の符号Z部分の拡大図である。
【符号の説明】
1、1a、1b、55、60 原水スペーサー
11 第1線材
12 第2線材
20、39、50 逆浸透膜モジュール
21a、21b、35 スパイラル型膜エレメント
30、54 透過水集水管
40 逆浸透膜装置
41 原水供給ポンプ
42 原水供給第1配管
43 原水供給第2配管
44 透過水流出配管
45 流れ方向転換用配管
51、66 分離膜
p 第1弁
o 第2弁
【発明の属する技術分野】
本発明は、工業用水などスパイラル型膜エレメントにとって濁度の高い原水であっても、前処理することなく、特定のフラッシング工程を組合わせることで長期間に亘り安定な通水処理が可能なスパイラル型膜エレメント、分離膜モジュール、分離膜装置及びこれを用いる水処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、海水の淡水化や、超純水、各種製造プロセス用水を得る方法として、逆浸透膜(RO膜)やナノ濾過膜(NF膜)を透過膜とするスパイラル型膜エレメントを用い、原水中からイオン成分や低分子成分を分離する逆浸透法が知られている。また低分子ないし高分子成分を分離したり、低分子成分ないし高分子成分の内、高分子成分のみを分離したりする限外濾過法や、微粒子を分離したりする精密濾過法においてもスパイラル型膜エレメントが用いられている。図5に例示されるように、従来から使用されている逆浸透膜法におけるスパイラル型膜エレメントの一例は、透過水スペーサー52の両面に逆浸透膜51を重ね合わせて3辺を接着することにより袋状膜53を形成し、該袋状膜53の開口部を透過水集水管54に取り付け、網状の原水スペーサー55と共に、透過水集水管54の外周面にスパイラル状に巻回することにより構成されている。そして、原水56はスパイラル型膜エレメント50の一方の端面側5aから供給され、原水スペーサー55に沿って流れ、スパイラル型膜エレメント50の他方の端面側5bから濃縮水58として排出される。原水56は原水スペーサー55に沿って流れる過程で、逆浸透膜51を透過して透過水57となり、この透過水57は透過水スペーサー52に沿って透過水集水管54の内部に流れ込み、透過水集水管54の端部から排出される。このように、巻回された袋状膜53間に配設される原水スペーサー55により原水経路が形成されることになる。
【0003】
このような逆浸透膜スパイラル型エレメントを用いて海水の淡水化や、超純水、各種製造プロセス用水を得る場合、通常、原水の濁質などを除去する目的で前処理が行われている。この前処理を行うのは、逆浸透膜スパイラル型エレメントの原水スペーサーの厚みは、原水流路を確保しつつできる限り原水と逆浸透膜との接触面積を大きくとるため通常1mm以下と薄く、濁質が原水流路にある原水スペーサーに蓄積され、原水流路を閉塞し易い構造となっており、このため、予め原水中の濁質を除去して濁質蓄積による通水差圧の上昇や透過水量、透過水質の低下を回避し、長期間に亘り安定な運転を行うためである。このような除濁目的で用いられる前処理装置は、例えば、凝集沈殿処理、濾過処理及び膜処理などの各装置を含むものであり、これらの設置は、設置コストや運転コストを上昇させると共に、大きな設置面積を必要とするなどの問題を有していた。このため、従来例のような薄い原水スペーサーで原水流路を確保でき、従来と同等程度の脱塩率を維持できると共に、濁質が蓄積しない構造の原水スペーサーが開発されれば、工業用水や水道水が前処理なしで供給でき、システムの簡略化、設置面積の低減、低コスト化が可能となり、産業上の利用価値は極めて高いものとなる。
【0004】
一方、スパイラル型膜エレメントの濁質による原水流路の閉塞を防止するため、従来の格子の網目状原水スペーサーの構造を改善した種々の提案がなされている。特開昭64−47404号公報には、波板形であって該波形が蛇行する形状の原水スペーサーを用いるスパイラル型膜エレメントが開示されている。この蛇行波形形状の原水スペーサーは成型が困難であると共に、スパイラル状に巻回する際、流路が潰れる可能性が大であり、実用的ではない。
【0005】
特開平9−299770号公報には、第1の線材と第2の線材が互いに交差するように格子状に形成されてなり、第1の線材又は第2の線材が透過水集水管の長手方向と平行になるように原水スペーサーを配置する構造のものが開示されている。この構造の原水スペーサーによれば、原水が透過水集水管の長手方向と平行な方向にほぼ直線状に流れるため、圧力損失が低く、且つ原水の線速が大きくなり、原水中の濁質が蓄積し難くなる反面、集水管の長手方向に直角な方向に存在する線材が原水の流路を遮るため、当該線材や線材の交点部分に濁質が蓄積してしまい、やはり原水流路の閉塞を起こしてしまう。
【0006】
特開平9−299947号公報には、原水スペーサーとして、厚さ2mm以上、5mm以下の合成樹脂のネットを用いるスパイラル型膜エレメントが記載され、原水スペーサーを厚くすることで、濁質の蓄積を防止している。しかし、原水スペーサーを厚くするだけでは、濁質の蓄積防止という点では大きな効果が期待できず、他方でスパイラル状物とした場合、1エレメント当たりの膜面積が小さくなってしまうという問題がある。
【0007】
一方、特開2000−437号公報には、集水管の軸線に垂直な方向における2交点の間隔Xは2〜5mmの範囲にあり、集水管の軸線方向における2交点の間隔YはXの1.1〜1.8倍の格子状の原水スペーサーを用いるスパイラル型膜エレメントが記載されている。しかし、この発明の目的、すなわち、格子状の目開きを特定形状とした目的は、逆浸透膜上における原水の流れをエレメントの周方向に拡散させてその逆浸透膜上における濃度分極層の厚みを低減し、透過水量を確保することにあり、原水流路における濁質の蓄積を防止するものではない。
【0008】
特開平11―104636号公報には、加圧した気液二層流を通常の原水の流れに対して逆の流れ方向で供給して逆浸透膜モジュールを逆洗する方法が開示されている。しかし、この逆洗方法は、中空糸型逆浸透膜モジュールの該中空糸膜面に付着した濁質の除去であり、スパイラル型逆浸透膜モジュールの原水スペーサーに付着した濁質の除去ではない。また、従来のスパイラル型逆浸透膜モジュールにこのような逆洗を行なった場合、それなりの洗浄効果が期待できるものの、長期間に亘る運転においては、やはり原水スペーサーの交点部分に濁質が徐々に蓄積するという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来提案されている原水スペーサーのうち、例えば図6に示すように、網目状の原水スペーサー60においては、複数の第1の線材61と複数の第2の線材62とが交差する交点部分64で原水が淀み、当該交点部分64の原水流入側X面に濁質63の蓄積が観察される。このうち、エレメント内部や濃縮水流出側にある交点部分に付着した濁質は、例え原水の流れ方向とは逆方向のフラッシングを行なっても十分には除去できないという問題がある。このため、長期間の使用においては、通水差圧の上昇は避けられない。原水流路を確保しつつ、交点や屈曲点のない流路を形成し、濁度の蓄積を抑制するという観点から、原水の流入側Xから流出側Yに向かって直線状又は略直線状に延在する線材のみで形成される構造のものが最も好適なものであるが、線材同士を繋ぐ構造ではないため、工業的に製作することは困難である。なお、図6(B)は図6(A)中、符号Z部分を拡大して示した図である。
【0010】
従って、本発明の目的は、工業用水などスパイラル型膜エレメントにとって濁度の高い原水を前処理なしで供給しても、特定のフラッシング工程を組合わせることで、長期間に亘り安定な通水処理が可能なスパイラル型膜エレメント、分離膜モジュール、分離膜装置及びこれを用いる水処理方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者は鋭意検討を行った結果、透過水集水管の外周面に袋状の分離膜を網目状原水スペーサーと共に巻回してなるスパイラル型膜エレメントにおいて、原水中の濁質が蓄積するのは主に原水スペーサーの入口側であること、入口側の交点数密度を高くすることにより、すなわち、網目を構成する線材の交点数密度が原水の流れ方向に沿って、漸次減少するか、または断続的に減少するものであれば、入口側への濁質の蓄積がより促進され、逆に内部への濁質の蓄積が大幅に低減されること、直前まで流れていた原水の流れと逆方向へフラッシングすることで、入口側に蓄積した濁質が容易に剥がされ直ちにエレメント外へ除去されることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明(1)は、透過水集水管の外周面に袋状の分離膜を網目状原水スペーサーと共に巻回してなるスパイラル型膜エレメントであって、該原水スペーサーは、原水スペーサーを構成する線材の交点数密度が、原水の流れ方向に沿って、漸次減少するか、または断続的に減少するものであるスパイラル型膜エレメントを提供するものである。かかる構成を採ることにより、濁質の蓄積は原水スペーサーの入口近傍に集中する。従って、直前まで流れていた原水の流れ方向と逆方向へフラッシングする工程を有する水処理方法に適用すれば、原水スペーサーの入口側に蓄積した濁質を、当該フラッシングにより効率的に除去することができる。
【0013】
また、本発明(2)は、前記交点数密度は、前記交点数密度が最も高くなる部分において、原水スペーサー1m2当たり50,000以上、300,000以下であり、交点数密度が最も低くなる部分において、原水スペーサー1m2当たり500以上、50,000未満である前記スパイラル型膜エレメントを提供するものである。かかる構成を採ることにより、用途あるいは使用条件に見合った好適な適宜の数値を選択して作製することができる。
【0014】
また、本発明(3)は、前記スパイラル型膜エレメントを1個備える分離膜モジュールを提供するものである。かかる構成を採ることにより、分離膜モジュールに装着されたスパイラル型膜エレメントの原水スペーサーは原水流入側から濃縮水流出側にかけて必ず漸次減少するか、または断続的に減少しており、前記効果を確実に奏することができる。また、水処理施設内に搬入し易く、且つそのままの形態で処理ラインに装着できる。
【0015】
また、本発明(4)は、透過水集水管の外周面に袋状の分離膜を網目状原水スペーサーと共に巻回してなるスパイラル型膜エレメントを原水の流れ方向に複数個連結してなる分離膜モジュールであって、該原水スペーサーは、原水スペーサーを構成する線材の交点数密度が、該分離膜モジュール基準として、原水の流れ方向に沿って漸次減少するか、または断続的に減少するものである分離膜モジュールを提供するものである。かかる構成を採ることにより、分離膜モジュールに装着された複数個のスパイラル型膜エレメントにおいて、原水スペーサーの交点数密度は該分離膜モジュール基準として、原水流入側から濃縮水流出側にかけて必ず漸次減少するか、または断続的に減少しており、前記効果を確実に奏することができる。
【0016】
また、本発明(5)は、前記交点数密度は、前記交点数密度が最も高くなる部分において、原水スペーサー1m2当たり50,000以上、300,000以下であり、交点数密度が最も低くなる部分において、原水スペーサー1m2当たり500以上、50,000未満である前記分離膜モジュールを提供するものである。複数のスパイラル型膜エレメントが装着された分離膜モジュールにおいても、前記発明(2)と同様の効果を奏する。
【0017】
また、本発明(6)は、原水供給ポンプと第1弁を接続する原水供給第1配管と、第1弁と前記分離膜モジュールを接続する原水供給第2配管と、前記分離膜モジュールと、該分離膜モジュールの透過水側に接続される透過水流出配管と、原水供給第1配管と該分離膜モジュールの濃縮水流出側を接続する濃縮水流出第1分岐配管と第2切替弁を有する流れ方向転換用配管と、原水供給第2配管から分岐し、原水の流れ方向を逆方向とした場合の濃縮水が流出する濃縮水流出第2分岐配管と、を備える分離膜装置を提供するものである。本発明の分離膜装置は原水スペーサーの交点部分に蓄積した濁質を容易に除去するフラッシング操作ができるため、海水の淡水化や、超純水、各種製造プロセス用水を得る場合、工業用水や水道水など逆浸透膜スパイラル型エレメントにとって濁度の高い原水を前処理なしで供給でき、システムの簡略化、設置面積の低減、低コスト化が可能となり、産業上の利用価値は極めて高い。
【0018】
また、本発明(7)は、前記分離膜モジュールを用いて原水を処理する水処理方法において、直前まで流れていた原水の流れ方向と逆方向に流すフラッシングを、定期又は不定期に行なう工程を含む水処理方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、原水スペーサー入口側の線材の交点部分における原水流入側に蓄積した濁質は、直前の原水の流れ方向とは逆に濃縮水流出側から供給されるフラッシングにより、濁質が容易に剥がされ直ちにエレメント外に除去される。従って、このフラッシング工程を例えば通水差圧が上昇する前に実施すれば、透過水量や透過水質の低下を確実に回避することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明のスパイラル型膜エレメントで用いられる網目状原水スペーサーとしては、原水スペーサーを構成する線材の交点数密度が、原水の流れ方向に沿って、漸次減少するか、または断続的に減少するものであれば、特に制限されない。本発明において、線材の交点数密度が漸次減少するとは、図1(A)に示すように、原水流入側Xから濃縮水流出側Yに向けて、複数の第1線材11と複数の第2線材12で形成される交点数が高密度から低密度に連続的に変化しているものを言い、線材の交点数密度が断続的に減少するとは、図1(B)に示すように、原水流入側Xから濃縮水流出側Yに向けて、線材の交点数密度が一定領域の部分が複数あり(図1(B)ではx領域、xy領域、y領域の3つ)、原水流入側Xの領域部分、例えばxy領域の交点数密度は、隣接する濃縮水流出側Yの領域部分、図1(B)ではy領域の交点数密度より必ず高い場合を言う。従って、x領域の交点数密度は、xy領域の交点数密度より高い。なお、図1(A)、(B)共に原水の流れ方向に対する直角方向においては、同じ交点数密度である。また、図1(A)、(B)共に、原水流入側直後の僅かな部分(原水スペーサーの全長Lの5ないし10%)は、同じ交点数である高密度領域とすることが好ましい。
【0020】
前記交点数密度は、前記交点数密度が最も高くなる部分において、原水スペーサー1m2当たり50,000以上、300,000以下、好ましくは1m2当たり50,000以上、200,000以下である。交点数密度が50,000未満では、原水中の濁質がエレメントの内部及び濃縮水流出側に入り込んでしまう量が多くなり、本発明の効果が低減してしまう。当該部分においてはできる限り高密度にするのがよいが、交点数が300,000を越えると、通水差圧が極端に上昇してしまうし、所定厚さのスペーサーを製作することが困難となる。交点数密度が最も高くなる部分とは、図1(A)に示すような交点数密度が漸次減少する場合、原水流入側の端部から原水スペーサーの全長L(原水の流れ方向)の5ないし10%相当の領域を言う。また、交点数密度が最も低くなる部分において、原水スペーサー1m2当たり500以上、50,000未満、好ましくは1m2当たり500以上、20,000未満である。当該部分はできる限り低密度にするのがよいが、500未満では、原水流路が十分に確保できない。一方、50,000以上ではエレメントの原水流入側が高密度になっていることと合わせて、通水差圧が極端に上昇すると共に、エレメントの中央部及び濃縮水流出側の交点部分へ濁質が蓄積する可能性を増大させることになる。交点数密度が最も低くなる部分とは、図1(A)に示すような交点数密度が漸次減少する場合、濃縮水流出側の端部から原水スペーサーの全長L(原水の流れ方向)の5ないし10%相当の領域を言う。
【0021】
本発明において用いられる原水スペーサーの網目の形状としては、特に制限されないが、ひし形、四角形、六角形、楕円形および波形などが挙げられ、その線材同士の交差形態としては、特に制限されず、線材同士を織らずに接合した形態、平織りによる交差形態およびあや織りによる交差形態などが挙げられる。本発明において、交点とは、第1線材11及び第2線材12とが交わる点を言うが、例えば第1線材11及び第2線材12が波形の場合における交点のように、第1線材と第2線材が少し重なる部分を有するものであってもよい。また、第1線材及び第2線材の断面形状としては、特に制限されないが、例えば円形、三角形、四角形などが挙げられる。第1線材及び第2線材は同一寸法、同一断面形状のものが使用される。
【0022】
原水スペーサーの厚さは、第1線材の径と第2線材の径を合わせたもの、若しくはそれよりも若干薄いものであり、0.4〜3.0mm、好ましくは0.5〜2mm未満の範囲である。厚さが0.4mm未満では、通水差圧の上昇を招くと共に、交点数に係らず濁質の蓄積が生じ易くなる。一方、厚さが3.0mmを越えると、スパイラル状にした場合、1エレメント当たりの膜面積が小さくなり過ぎる。また、原水スペーサーの材質としては、特に制限されないが、ポリプロピレンやポリエチレンが、成形性やコスト面から好ましい。また、原水スペーサーの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を適用できるが、押出成形法がコスト面及び精度面からも好ましい。
【0023】
本発明のスパイラル型膜エレメントは、透過水集水管の外周面に袋状の分離膜を前記網目状原水スペーサーと共に巻回してなる。巻回しは、1枚の袋状の分離膜を巻回したものであっても、複数の袋状の分離膜を巻回したもののいずれであってもよい。本発明のスパイラル型膜エレメントは精密濾過装置、限外濾過装置及び逆浸透膜分離装置などの膜分離装置に使用することができる。逆浸透膜としては、食塩水中の塩化ナトリウムに対する90%以上の高い除去率を有する通常の逆浸透膜、及び低脱塩率のナノ濾過膜やルーズ逆浸透膜が挙げられる。ナノ濾過膜やルーズ逆浸透膜は脱塩性能を有するものの、通常の逆浸透膜よりも脱塩性能が低いもので、特にCa、Mg等の硬度成分の分離性能を有するものである。なお、ナノ濾過膜とルーズ逆浸透膜はNF膜と称されることがある。
【0024】
本発明のスパイラル型膜エレメントを用いた分離膜モジュールの例である逆浸透膜モジュールは、前記スパイラル型膜エレメントを1個備える第1の形態に係る逆浸透膜モジュール、及びスパイラル型膜エレメントを原水の流れ方向に複数個連結してなる第2の形態に係る逆浸透膜モジュールの2通りがある。第1の形態に係る逆浸透膜モジュールに用いる原水スペーサーは前述のものが使用される。一方、第2の形態における複数枚の原水スペーサーは、原水スペーサーを構成する線材の交点数密度が、該逆浸透膜モジュール基準として、原水の流れ方向に沿って漸次減少するか、または断続的に減少するものである。以下に、第2の形態に係る逆浸透膜モジュールの原水スペーサーにおいて、第1の形態に係る逆浸透膜モジュールの原水スペーサーと異なる点についてのみ主に説明する。この第2の形態における原水スペーサーの交点数密度の変化の状態を図2を参照して説明する。図2(A)は2個のスパイラル型膜エレメントを原水の流れ方向に連結してなる逆浸透膜モジュールの模式図、(B)及び(C)は該エレメントで用いられる原水スペーサーの模式図である。図2中、逆浸透膜モジュール20は原水流入側Xよりスパイラル型膜エレメント21a、21bを連結して装着したものであり、スパイラル型膜エレメント21aで用いられる原水スペーサーを(B)及び(C)では右側に、スパイラル型膜エレメント21bで用いられる原水スペーサーを(B)及び(C)では左側にそれぞれ示したものである。すなわち、図2(B)の形態は逆浸透膜モジュール基準として原水の流れ方向に沿って漸次減少するものの例示であり、図2(C)の形態は逆浸透膜モジュール基準として原水の流れ方向に沿って、断続的に減少するものの例示である。
【0025】
図2(B)において、スパイラル型膜エレメント21aの原水スペーサー1a及びスパイラル型膜エレメント21bの原水スペーサー1bは、この2枚があたかも連続する原水スペーサーの如く、原水流入側Xから濃縮水流出側Yに向けて、複数の第1線材11と複数の第2線材12で形成される交点数が高密度から低密度に連続的に変化するものである。交点数密度の他の変化形態を示す図2(C)において、スパイラル型膜エレメント21aの原水スペーサー1aは、線材の交点数密度が一定で且つ高密度であり、スパイラル型膜エレメント21bの原水スペーサー1bは、線材の交点数密度が一定で且つ低密度である。なお、図2(C)における原水スペーサー1a、1bにおいて、線材の交点数密度が一定領域の部分が複数存在するものであってもよい。この場合、原水流入側Xの領域部分の交点数密度は、隣接する濃縮水流出側Yの領域部分の交点数密度より必ず高くなるようにする。また、第2の形態に係る逆浸透膜モジュールの原水スペーサーにおいて、交点数密度が最も高くなる部分及び最も低くなる部分の具体的数値は前述の第1の形態に係る原水スペーサーの数値範囲と同様であるが、交点数密度が漸次減少する場合、交点数密度が最も高くなる部分は、原水流入側の端部から複数枚の原水スペーサーの合計長さ(原水の流れ方向)の5ないし10%相当の領域を言い、交点数密度が最も低くなる部分は、濃縮水流出側の端部から複数枚の原水スペーサーの合計長さ(原水の流れ方向)の5ないし10%相当の領域を言う。
【0026】
本発明の第2の形態に係る逆浸透膜モジュールとしては、例えば図3に示す構造を有する逆浸透膜モジュールが挙げられる。図3に示したように、透過水集水管30の外周面に袋状の逆浸透膜31を原水スペーサーと共にスパイラル状に巻きつけ、その上部を外装体32で被覆する。そしてスパイラル状に巻きつけた逆浸透膜31がせり出すのを防止するために、数本の放射状のリブ33を有するテレスコープ止め34が両端に取り付けられている。これらの透過水集水管30、逆浸透膜31、外装体32、テレスコープ止め34でひとつのスパイラル型膜エレメント35を形成し、夫々の透過水集水管30をコネクタ(図示せず)で連通して、ハウジング36内にスパイラル型膜エレメント35を複数個装填する。なお、スパイラル型膜エレメント35の外周とハンジング36の内周の間に隙間37が形成されるが、この隙間37をブラインシール38で閉塞してある。なおハウジング36の一端には原水をハウジング内部に流入するための原水流入管(図示せず)、また他端には透過水集水管30に連通する処理水管(図示せず)および非透過水管(図示せず)が付設され、ハウジング36、その内部部品および配管(ノズル)等で逆浸透膜モジュール39が構成される。
【0027】
このような構造の逆浸透膜モジュール39で原水を処理する場合は、ハウジング36の一端からポンプを用いて原水を圧入するが、図3において矢線で示したように原水はテレスコープ止め34の各放射状のリブ33の間を通って最初のスパイラル型膜エレメント35内に侵入し、一部の原水はスパイラル型膜エレメント35の膜間の原水スペーサーで区画される原水流路を通り抜けて次のスパイラル型膜エレメント35に達し、他部の原水は逆浸透膜31を透過して透過水となり当該透過水は透過水集水管30に集水される。このようにしてスパイラル型膜エレメント35に次々に原水が通り抜けて、逆浸透膜を透過しなかった原水は濁質及びイオン性不純物を高濃度で含む濃縮水としてハウジング36の他端から取り出され、また逆浸透膜を透過した透過水は透過水として透過水集水管30を介してハウジング36外に取り出される。
【0028】
本発明の実施の形態における逆浸透膜装置を図4を参照して説明する。図4は本例の逆浸透膜装置のフロー図である。図4中、逆浸透膜装置40は、原水供給ポンプ41と第1弁pを接続する原水供給第1配管42と、第1弁pと本発明の交点数密度が減少する逆浸透膜モジュール40Aを接続する原水供給第2配管43と、逆浸透膜モジュール40Aと、逆浸透膜モジュール40Aの透過水側に接続される弁sを有する透過水流出配管44と、原水供給第1配管42と逆浸透膜モジュール40Aの濃縮水流出側を接続する濃縮水流出第2分岐配管451と第2弁oを有する流れ方向転換用配管45と、原水供給第2配管43から分岐し、原水の流れ方向を逆方向とした場合の濃縮水が流出する弁qを有する濃縮水流出第2分岐配管421と、を備える。また更に濃縮水流出第2分岐配管451途中の弁rと、原水供給ポンプ41の吐出側の原水供給第1配管42から分岐する弁nを有するブロー配管422を備える。本例の逆浸透膜装置40に直接供給される原水としては、工業用水、水道水及び回収水が挙げられる。原水の濁度としては、特に制限されないが、濁度2度程度であっても長期間の連続運転においても通水差圧の上昇などを生じることがない。また、原水には原水中に砂粒などの粗大粒子を含む場合、予め目の粗いフィルターを通した処理水やスケールやファウリングを防止するための分散剤を添加したものも含まれる。分散剤の添加により、原水スペーサーや膜面への濁質の蓄積を一層抑制することができる。分散剤としては、例えば市販品の「hypersperse MSI300」、「hypersperse MDC200」(共に、ARGO SCIENTIFIC社製)が挙げられる。本発明の逆浸透膜装置によれば、従来、原水中の濁質を除去する目的で用いられていた凝集沈殿処理、濾過処理及び膜処理などの前処理装置の設置を省略することができる。このため、システムの簡略化、設置面積の低減、低コスト化が図れる点で画期的な効果を奏する。
【0029】
次に、本例の逆浸透膜装置40を用いて原水を処理する方法を説明する。先ず、第2弁o、弁q、nは閉、弁rはモジュール内を所定の圧力となるように調整され、第1弁p及び弁sは開とする。原水は原水供給ポンプ41により逆浸透膜モジュール40Aに供給される。原水は逆浸透膜モジュール40Aで処理され、濃縮水を濃縮水流出第1分岐配管451から得ると共に透過水流出配管44から透過水を得る。この原水処理において、エレメントに装着された原水スペーサーは前述の如く、入口側の交点数密度が高いものであるため、原水中の濁質等の浮遊物質の多くはエレメント入口近傍の原水スペーサーの交点部分に蓄積する。一部の浮遊物質は、エレメントの中央部及び濃縮水流出側にも流れるが、その大部分は原水スペーサーに蓄積しない微細な浮遊物質であり、また、蓄積する浮遊物質があったとしても、最も蓄積し易い部分である交点はその密度が低いため蓄積の確率は低くなる。また、蓄積したとしても、交点数密度が低いため、単位膜面積当たりの蓄積量は、エレメント入口近傍に比較して非常に少なくなる。従って、濁質の蓄積はエレメントの入口近傍がほとんどで、中央部及び濃縮水流出側にはほとんど蓄積しない。
【0030】
原水処理を所定時間行なった後、原水の処理運転を停止し、フラッシング工程を行なう。原水の処理運転の停止は、先ず始めに原水供給側の圧力を抜くことが好ましい。圧力を抜くには弁nの開放により行なう。この場合、透過水側の弁sは開としておく。原水供給側の圧力を抜くことで、それまで膜面を押さえ付けていた圧力が抜けるため、膜が若干浮くことになり、膜面及び原水スペーサーに蓄積している濁質を浮遊させることができる。圧力を抜く方法としては、特に制限されないが、瞬間的に、好ましくは1秒以内に弁が全開になるようにする。瞬間的に圧抜きをする方が、膜を浮かせ易く、また水撃作用による濁質排除効果も期待できる。また、圧力を抜く方法としては、濃縮水流出第2分岐配管421に付設した弁qを用いることができる。このように、圧力を弁qから抜く場合は、ブロー配管422と弁nとを省略することができる。また、透過水側の弁sを開とするのは、該弁sが閉では膜間差圧がなくなり、膜を押さえ付けている力がなくなるため、例え原水供給側の圧力を抜いたとしても、膜が浮くことがないからである。原水供給側の圧力を抜いた後、弁n、第1弁p、弁s及び弁rは閉、第2弁o及び弁qを開とする。そして、透過処理における原水供給流量の約3倍流量の原水を急速に逆浸透膜モジュール内に濃縮水流出側より供給する。このフラッシングにより、エレメント入口近傍に蓄積した濁質は剥がれ易く且つ剥がれた後は直ちにエレメント外へ排出される。直前まで流れていた原水の流れ方向と同じ方向にフラッシングすると、多くの濁質は除去されるものの、エレメント入口近傍に蓄積していた濁質は中央部及び濃縮水流出側へ流され汚染することになる。また、交点部分に蓄積していた濁質はより押し付けられ、交点部分に強固に付着することになる。そして強固に付着した状態が長時間続くと、もはや物理的手段では除去できなくなる。
【0031】
前記フラッシングは、両方向から交互に2回以上、5回以下のフラッシングを行なうことが好ましい。なお、最初に行なうフラッシングは必ず原水の流れ方向と逆方向に行なう。またフラッシング回数を複数回とすることで洗浄効果が高まる。また、5回を越えると排水する水が多くなり、回収率の低減につながる。また、フラッシングの1回当たりの時間は、特に制限されないが、30秒〜120秒が好ましい。30秒未満では洗浄効果が不十分であり、120秒を越えるとブロー時間が長く、回収率の大幅な低下となる。また、フラッシングの際、圧縮空気を原水中に供給してもよい。圧縮空気を原水に混入させることにより、洗浄効率が一層高まる。圧縮空気の供給量は、特に制限されないが、原水と空気との体積割合が2:1〜1:2とするのが好ましい。
【0032】
フラッシングを所定時間行なった後は、再度原水の処理を行なう。この場合、原水の流れ方向は、フラッシング工程の直前まで流れていた原水の流れ方向と同じ方向である。すなわち、第2弁o及び弁qは閉、弁rはモジュール内を所定の圧力となるように調整され、第1弁p及び弁sは開とし、原水は逆浸透膜モジュール40Aで処理される。このように、原水処理→フラッシング→原水処理→フラッシングを順次繰り返す。原水処理時間としては、1時間〜24時間、好ましくは1時間〜12時間である。原水処理時間が1時間未満であると切替弁の切替回数が多くなり、切替弁の寿命を極端に低下させると共に、回収率の低下につながる。また、24時間を越えると、蓄積した濁質の除去効果が低減してしまう。原水処理からフラッシングに切り替える形態としては、毎回同じ時間経過後に流れ方向を変更する方法、所定の通水差圧に達した時点で変更する方法及びこの両者を組合わせて変更する方法が挙げられる。
【0033】
また、本例の逆浸透膜装置においては、逆浸透膜モジュール40Aの後段に、逆浸透膜モジュール40Aの透過水を更に処理する後段逆浸透膜モジュールを配置してもよい(不図示)。この場合、後段逆浸透膜モジュールには濃縮水を原水供給ポンプの前に戻す戻り配管を備えることが好ましい。このような装置形態においては前段逆浸透膜モジュール40Aは本発明に係る逆浸透膜装置であり、後段逆浸透膜モジュールは従来の逆浸透膜装置である。このような逆浸透膜装置においては、前段逆浸透膜モジュール40Aで得られた一次透過水は後段逆浸透膜モジュールで処理され、透過水流出配管から二次透過水を得ると共に、二次濃縮水は戻り配管から原水供給ポンプの前に戻される。この二次濃縮水は既に前段逆浸透膜モジュール40Aで脱塩された透過水を後段逆浸透膜モジュールで濃縮されたものであり、原水に比べて導電率が低い。このため、二次濃縮水の全量を循環させることが可能となり、水回収率を向上させることができる。また、逆浸透膜装置は、従来型の装置で使用されている濁質除去のみを目的とした前処理装置の代わりに、本発明における濁質の除去が前記フラッシングで容易に行なえる逆浸透膜モジュールを前段に使用しているので、実質的に逆浸透膜を2段使用することになる。従来型の装置における前処理装置は当然脱塩機能がないので、逆浸透膜装置は従来型の逆浸透膜装置と比較して透過水の水質も格段に優れる。
【0034】
【実施例】
実施例1
濁度2度、導電率20mS/mの工業用水を下記仕様の逆浸透膜モジュールAに通水し、下記運転条件下において、2000時間の耐久運転を行った。逆浸透膜モジュールAの性能評価は運転初期及び2000時間における通水差圧(MPa)、透過水量(l/分/m2)及び透過水の導電率(mS/m)を測定することで行った。但し、透過水量はフラッシングを考慮しない数値である。また、2000時間後、逆浸透膜モジュールを解体して原水流路内の濁質の付着状況を観察した。測定値の結果を表1に、原水流路の目視観察結果を表2に示す。
【0035】
(逆浸透膜モジュールA)
図1(A)に示す交点数が原水の流れ方向に沿って漸次減少する網目状のもので、交点数密度は交点数密度が最も高くなる部分が原水スペーサー1m2当たり200,000、交点数密度が最も低くなる部分が原水スペーサー1m2当たり1,000、厚さが1.0mmの原水スペーサーAを作製した。次いで、この原水スペーサーAを用いてスパイラル型膜エレメントAを作製し、更に図3に示すような構造の逆浸透膜モジュールAを作製した。但し、該逆浸透膜モジュールAは1個のスパイラル型膜エレメントを収納した1個のモジュールとした。
(運転条件)
原水処理条件;図4に示す逆浸透膜装置を使用し、圧力が0.75MPa、濃縮水流量が2.7m3/時間、水温が25℃で、8時間毎に1回、下記に示すフラッシングを行う。
フラッシング条件;図4に示す逆浸透膜装置を用いた前述の原水の流れ方向とは逆方向にフラッシングを行なう方法に準拠する。但し、逆浸透膜モジュール内に供給される原水の流量は、透過処理における原水供給流量の約3倍とし、フラッシング工程60秒→停止30秒→フラッシング工程60秒で行なった。
【0036】
実施例2
逆浸透膜モジュールAの代わりに、下記に示す仕様の逆浸透膜モジュールBを用いた以外、実施例1と同様の運転方法で2000時間の耐久運転を行った。逆浸透膜モジュールBの性能評価結果を表1及び表2に示す。
(逆浸透膜モジュールB)
原水スペーサーAに代えて、図1(B)に示す交点数が断続的に減少する網目状のもので、交点数密度はx領域(交点数密度が最も高くなる部分)が原水スペーサー1m2当たり200,000、xy領域が原水スペーサー1m2当たり5,000、y領域(交点数密度が最も低くなる部分)が原水スペーサー1m2当たり1,000、厚さが1.5mmの原水スペーサーBを用いた以外、前記逆浸透膜モジュールAと同様の方法で作製した。なお、x領域、xy領域及びy領域の原水の流れ方向における長さ寸法は同一である。
【0037】
比較例1
膜処理からなる公知の前処理装置を前段に配置したこと、スパイラル型膜エレメントAの代わりに、8インチエレメントES−10(日東電工社製)を用いたこと以外、実施例1と同様の方法で行った。すなわち、濁度2度、導電率20mS/mの工業用水を、前処理装置で処理し、その処理水を従来の市販の逆浸透膜モジュールで更に処理した。その結果を表1及び表2に示す。なお、8インチエレメントES−10(日東電工社製)は格子の網目状であり、交点数密度は全体に亘り均一であり、交点数は原水スペーサー1m2当たり約140,000、厚さ0.8mmである。以下、比較例2も同様である。
【0038】
比較例2
スパイラル型膜エレメントAの代わりに、8インチエレメントES−10(日東電工社製)を用いた以外、実施例1と同様の方法で行った。すなわち、濁度2度、導電率20mS/mの工業用水を、前処理装置で処理することなく直接従来の市販の逆浸透膜モジュールで処理した。その結果を表1及び表2に示す。なお、この比較例2では800時間頃に、通水差圧が極端に上昇し、透過水が得られなくなったため、この時点で運転を停止した。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
実施例1及び2においては、交点数密度が入口側より減少する特定の原水スペーサーと原水の流れ方向と逆方向のフラッシングの組合わせにより、2000時間後、通水差圧の上昇はほとんどなく、透過水量の低下もなく、透過水の水質も高いものであった。比較例1は2000時間後の性能評価において、実施例と遜色ない結果を示しているが、これは前処理装置を設置しており、設置場所や設置コストなどが余分に必要となる。従って、実施例1及び2の比較対象は比較例2であるが、比較例2は約800時間で透過水量がゼロになるまで濁質の付着が激しいものであった。
【0042】
【発明の効果】
本発明のスパイラル型膜エレメントによれば、濁質の蓄積は原水スペーサーの入口近傍に集中する。従って、直前まで流れていた原水の流れ方向と逆方向へフラッシングする工程を有する水処理方法に適用すれば、原水スペーサーの入口側に蓄積した濁質を、当該フラッシングにより効率的に除去することができる。また、本発明の分離膜装置は原水スペーサーの交点部分に蓄積した濁質を容易に除去するフラッシング操作ができるため、海水の淡水化や、超純水、各種製造プロセス用水を得る場合、工業用水や水道水などスパイラル型膜エレメントにとって濁度の高い原水を前処理なしで供給でき、システムの簡略化、設置面積の低減、低コスト化が可能となり、産業上の利用価値は極めて高い。また、本発明の水処理方法によれば、原水スペーサー入口側の線材の交点部分における原水流入側に蓄積した濁質は、直前の原水の流れ方向とは逆に濃縮水流出側から供給されるフラッシングにより、濁質が容易に剥がされ直ちにエレメント外へ除去される。従って、このフラッシング工程を例えば通水差圧が上昇する前に実施すれば、透過水量や透過水質の低下を確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態例における原水スペーサーの一部を示す図である。
【図2】(A)は逆浸透膜モジュールの模式図、(B)及び(C)は他の実施の形態例における原水スペーサーの一部を示す図である。
【図3】本実施の形態例における逆浸透膜モジュールの構造の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における逆浸透膜装置の一例を示す図である。
【図5】従来の逆浸透膜モジュールの概略図である。
【図6】(A)は従来の網目状の原水スペーサーにおける濁質の蓄積状態を示す図であり、(B)は(A)の符号Z部分の拡大図である。
【符号の説明】
1、1a、1b、55、60 原水スペーサー
11 第1線材
12 第2線材
20、39、50 逆浸透膜モジュール
21a、21b、35 スパイラル型膜エレメント
30、54 透過水集水管
40 逆浸透膜装置
41 原水供給ポンプ
42 原水供給第1配管
43 原水供給第2配管
44 透過水流出配管
45 流れ方向転換用配管
51、66 分離膜
p 第1弁
o 第2弁
Claims (7)
- 透過水集水管の外周面に袋状の分離膜を網目状原水スペーサーと共に巻回してなるスパイラル型膜エレメントであって、該原水スペーサーは、原水スペーサーを構成する線材の交点数密度が、原水の流れ方向に沿って、漸次減少するか、または断続的に減少するものであることを特徴とするスパイラル型膜エレメント。
- 前記交点数密度は、該交点数密度が最も高くなる部分において、原水スペーサー1m2当たり50,000以上、300,000以下であり、交点数密度が最も低くなる部分において、原水スペーサー1m2当たり500以上、50,000未満であることを特徴とする請求項1記載のスパイラル型膜エレメント。
- 請求項1又は2項記載のスパイラル型膜エレメントを1個備えることを特徴とする分離膜モジュール。
- 透過水集水管の外周面に袋状の分離膜を網目状原水スペーサーと共に巻回してなるスパイラル型膜エレメントを原水の流れ方向に複数個連結してなる分離膜モジュールであって、該原水スペーサーは、原水スペーサーを構成する線材の交点数密度が、該分離膜モジュール基準として、原水の流れ方向に沿って漸次減少するか、または断続的に減少するものであることを特徴とする分離膜モジュール。
- 前記交点数密度は、前記交点数密度が最も高くなる部分において、原水スペーサー1m2当たり50,000以上、300,000以下であり、交点数密度が最も低くなる部分において、原水スペーサー1m2当たり500以上、50,000未満であることを特徴とする請求項4記載の分離膜モジュール。
- 原水供給ポンプと第1弁を接続する原水供給第1配管と、第1弁と請求項3〜5のいずれか1項記載の分離膜モジュールを接続する原水供給第2配管と、前記分離膜モジュールと、該分離膜モジュールの透過水側に接続される透過水流出配管と、原水供給第1配管と該分離膜モジュールの濃縮水流出側を接続する濃縮水流出第1分岐配管と第2切替弁を有する流れ方向転換用配管と、原水供給第2配管から分岐し、原水の流れ方向を逆方向とした場合の濃縮水が流出する濃縮水流出第2分岐配管と、を備えることを特徴とする分離膜装置。
- 請求項3〜5のいずれか1項記載の分離膜モジュールを用いて原水を処理する水処理方法において、直前まで流れていた原水の流れ方向と逆方向に流すフラッシングを、定期又は不定期に行なう工程を含むことを特徴とする水処理方法。
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