JP4225133B2 - 樹脂表面改質用光触媒シート、積層体および樹脂表面改質方法 - Google Patents

樹脂表面改質用光触媒シート、積層体および樹脂表面改質方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、樹脂表面改質用光触媒シート、積層体および樹脂表面改質方法に関する。より詳しくは、樹脂基板表面を親水化しうる光触媒機能を有する光触媒微粒子がシート表面に固定された樹脂表面改質用光触媒シート、該シートと樹脂基板とが水を介して貼り合わされた樹脂表面改質用積層体、ならびに該シートを用いた樹脂表面改質方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
従来、プリント配線基板などに用いる樹脂基板にメッキを施す際に樹脂基板表面を親水化する技術として、クロム酸、過マンガン酸などの強力な酸化剤によるエッチング処理などが知られていた。この方法では、アンカー効果によりメッキ箔との密着強度が得られるという利点があったが、樹脂に対する浸食作用が強く、樹脂基板の厚みが薄い場合には対応できないという問題があった。
【0003】
さらに、近年、携帯機器の小型化、高性能化にともないプリント配線板においても高密度化、多層化が進み、樹脂層の薄膜化、メッキ箔との密着強度アップが求められる様になり、従来の方法では対応が難しくなってきている。
【0004】
本間らは、光触媒を用いた表面改質法を発表している(非特許文献1参照)。これによれば、光触媒機能を有する微粒子を水に分散させておき、これに樹脂基板を浸漬させながら紫外線光を照射することにより、樹脂基板表面を親水化することができる。
【0005】
しかしながら、この方法では、洗浄が不充分な場合、樹脂基板上に、光触媒機能を有する微粒子が残留してメッキ工程での密着低下、後工程での薬液汚染を起こすという問題があった。
【0006】
本発明者らは、このような実情に鑑みて鋭意研究した結果、シート表面に光触媒機能を有する微粒子を固定した光触媒シートを得て、このような光触媒シートによれば、上記問題点を解決し、樹脂基板表面を効率よく親水化できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0007】
【非特許文献1】
第16回エレクトロニクス実装学術講演大会(2002年3月)、予稿集 P.5
【0008】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、シート表面に光触媒機能を有する微粒子が固定されている樹脂表面改質用光触媒シート、該シートと樹脂基板とが水を介して貼り合わされた樹脂表面改質用積層体、該シートを使用した樹脂表面改質方法を提供することを目的としている。
【0009】
【発明の概要】
本発明に係る樹脂表面改質用光触媒シートは、水存在下で樹脂基板と貼り合わせて用いられるものであって、
該シート表面には光触媒機能を有する微粒子(a)が固定されており、
該微粒子(a)が固定されているシート表面と樹脂基板表面との間に樹脂基板表面を親水化するのに充分な量の水が存在するように、該光触媒シートと樹脂基板とを対向して貼り合わせ、該光触媒シートの表面あるいは裏面から放射線を照射することによって、樹脂基板表面を親水化する作用を有することを特徴としている。
【0010】
前記樹脂表面改質用光触媒シートは、前記光触媒機能を有する微粒子(a)と下記バインダー成分(b)〜(d)とを含んでなる光触媒コーティング用組成物を、シート基材表面に成膜することにより、光触媒機能を有する微粒子(a)を該シート表面に固定したものであることが好ましい;
(b)下記式(1)
1 mTi(OR2)4-m ・・・式(1)
(式中、R1およびR2は同じであっても異なってもよく、
1は炭素原子数1〜8個の1価の有機基を表し、複数個存在する場合には同じであっても異なってもよく、
2は炭素原子数1〜6個のアルキル基、炭素原子数1〜6個のアシル基およびフェニル基からなる群から選択される有機基を表し、複数個存在する場合には同じであっても異なってもよく、
mは0〜3の整数である。)
で表されるチタンアルコレートおよびその誘導体、ならびに上記式(1)で表されるチタンアシレートおよびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のチタン化合物、
(c)下記式(2)
3 nSi(OR4)4-n ・・・式(2)
(式中、R3およびR4は同じであっても異なっていてもよく、
3は炭素原子数1〜8個の1価の有機基を表し、複数個存在する場合には同じであっても異なってもよく、
4は炭素原子数1〜5個のアルキル基または炭素原子数1〜6個のアシル基を表し、複数個存在する場合には同じであっても異なってもよく、
nは0〜3の整数である。)
で表されるオルガノシランおよびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物、
(d)主鎖にシロキサン結合を有し、重量平均分子量が300〜100,000であり、かつ下記式(3)
−(R5O)p−(R6O)q−R7 ・・・式(3)
(式中、R5およびR6は同じであっても異なってもよく、炭素原子数1〜5個のアルキル基を表し、
7は水素原子または炭素原子数1〜5個のアルキル基を表し、
pおよびqは、同じであっても異なってもよく、p+qの値が2〜50となる整数である。)
で表される構造を含むオルガノシロキサンオリゴマー。
【0011】
さらに、本発明では、前記光触媒機能を有する微粒子(a)は、金属化合物および/または金属酸化物からなることが好ましく、また、前記シート基材は、樹脂フィルムからなることが好ましい。
【0012】
本発明に係る樹脂表面改質方法は、光触媒機能を有する微粒子(a)が表面に固定されている樹脂表面改質用光触媒シートと、樹脂基板とを、該光触媒シート表面と樹脂基板表面との間に樹脂基板表面を親水化するのに充分な量の水が存在するように、対向して貼り合わせ、
次いで、該光触媒シートの表面あるいは裏面から放射線を照射することによって、該樹脂基板表面を親水化することを特徴としている。
【0013】
前記樹脂表面改質方法では、前記樹脂表面改質用光触媒シートを、放射線照射後に樹脂基板表面から剥離することが好ましい。
【0014】
本発明に係る樹脂表面改質用積層体は、前記樹脂表面改質用光触媒シートと、樹脂基板とが、該光触媒シート表面と樹脂基板表面との間に樹脂基板表面を親水化するのに充分な量の水が存在するように、対向して貼り合わされていることを特徴としている。
【0015】
【発明の具体的説明】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0016】
本発明に係る樹脂表面改質用光触媒シートは、そのシート表面に光触媒機能を有する微粒子(a)が固定されていることを特徴としている。
【0017】
この微粒子(a)の固定は、該微粒子(a)を含む光触媒コーティング用組成物をシート基材表面に成膜することによって行われるため、まず、この光触媒コーティング用組成物を構成する各成分について説明し、その後、樹脂表面改質用光触媒シート、樹脂表面改質用積層体、樹脂表面改質方法について、順次説明する。
【0018】
<光触媒コーティング用組成物>
本発明に係る樹脂表面改質用光触媒シートは、以下に説明する各成分を含む光触媒コーティング用組成物を調製し、この光触媒コーティング用組成物をシート表面に成膜することによって得ることができる。
【0019】
(a)光触媒機能を有する微粒子
本発明に用いられる光触媒機能を有する微粒子(a)は、公知の金属化合物および/または金属酸化物、好ましくは、金属化合物および金属酸化物からなるか、あるいは金属酸化物からなる。
【0020】
前記金属化合物としては、具体的には、白金、パラジウム、ルテニウム、インジウム、およびこれらの塩化物などが挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0021】
また、前記金属酸化物としては、具体的には、たとえば、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化鉄、酸化銅、チタン酸鉄、酸化ニッケル、酸化ビスマスおよび酸化ケイ素などが挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせて使用してもよい。これらのうちでは、酸化チタンが好ましく用いられる。
【0022】
前記光触媒機能を有する微粒子(a)が金属酸化物を含有する場合、すなわち、前記光触媒機能を有する微粒子(a)として、酸化スズ、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化鉄、酸化銅、チタン酸鉄、酸化ニッケル、酸化ビスマスおよび酸化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する光触媒物質を用いる場合には、この光触媒物質は該金属酸化物、各金属の水酸化物またはアルコキシド、あるいは金属塩などを用いて製造することができる。
【0023】
さらに、本発明に用いられる光触媒機能を有する微粒子(a)として、公知の可視光光触媒機能を有する光触媒物質を用いることもできる。たとえば、
(i)特開平10−146531号公報に記載の、貴金属超微粒子を担持した金属酸化物(白金の超微粒子を担持した酸化チタン粒子など)や、
(ii)再表01/01552号公報に記載の、金属酸化物の酸素サイトの一部を窒素原子で置換したもの、金属酸化物の結晶の格子間に窒素原子をドーピングしたもの、および金属酸化物の多結晶集合体の粒界に窒素原子を配したもの(酸化チタンの一部を窒素原子で置換した粒子など)などの光触媒物質を用いることができる。
【0024】
前記光触媒物質は、粉末であれば、そのまま光触媒機能を有する微粒子(a)として用いることができ好ましいが、光触媒物質を水に分散した水系のゾルもしくはコロイド、あるいはアルコールなどの極性溶媒やトルエンなどの非極性溶媒中に分散した有機溶媒系のゾルもしくはコロイドなどの形態であってもよく、この場合には、ゾルまたはコロイド中の分散質が、光触媒機能を有する微粒子(a)となる。
【0025】
なお、前記有機溶媒系のゾルもしくはコロイドである場合には、その分散質である光触媒物質、すなわち、光触媒機能を有する微粒子(a)の分散性に応じて、さらに水や有機溶媒を用いて希釈してもよく、分散性を向上させるために、光触媒機能を有する微粒子(a)の表面を処理して用いてもよい。
【0026】
前記光触媒機能を有する微粒子(a)の一次粒子径は200nm以下、好ましくは100nm以下であることが望ましい。一次粒子径が上記の数値を超えると、塗膜透明性が低下することがある。
【0027】
このような光触媒機能を有する微粒子(a)は、該微粒子(a)を、後述するバインダー成分(b)〜(d)、さらに必要に応じて他の成分(e)〜(h)と混合して光触媒コーティング用組成物を調製し、該光触媒コーティング用組成物をシート基材表面に成膜することにより、シート表面に固定される。
【0028】
光触媒機能を有する微粒子(a)は、前記光触媒コーティング用組成物中に、該組成物の全固形分に対して、1〜90重量%、好ましくは15〜85重量%、より好ましくは25〜80重量%の量で含有されることが望ましい。光触媒機能を有する微粒子(a)の量が、光触媒コーティング組成物の全固形分中に対して、上記下限未満であると光触媒作用を示しづらいことがあり、上記上限を超えるとシート上面に膜を形成する際にチョーキング等が発生し、成膜性に劣ることがある。
【0029】
(b)チタン化合物:
本発明に用いられるチタン化合物(b)は、下記式(1)
1 mTi(OR2)4-m ・・・式(1)
(式中、R1およびR2は同じであっても異なってもよく、R1は炭素原子数1〜8個の1価の有機基を表し、複数個存在する場合には同じであっても異なってもよく、R2は炭素原子数1〜6個のアルキル基、炭素原子数1〜6個のアシル基およびフェニル基からなる群から選択される有機基を表し、複数個存在する場合には同じであっても異なってもよく、mは0〜3の整数である。)で表されるチタンアルコレートおよびその誘導体、ならびに上記式(1)で表されるチタンアシレートおよびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のチタン化合物である。
【0030】
チタンアルコレートの誘導体としては、前記チタンアルコレートの加水分解物、前記チタンアルコレートの縮合物、前記チタンアルコレートのキレート化合物、前記チタンアルコレートのキレート化合物の加水分解物、および前記チタンアルコレートのキレート化合物の縮合物が挙げられる。
【0031】
また、チタンアシレートの誘導体としては、前記チタンアシレートの加水分解物、前記チタンアシレートの縮合物、前記チタンアシレートのキレート化合物、前記チタンアシレートのキレート化合物の加水分解物、および前記チタンアシレートのキレート化合物の縮合物が挙げられる。
【0032】
上記式(1)において、R1は炭素原子数1〜8個の1価の有機基であり、
具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などのアルキル基;
アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基、トリオイル基、カプロイル基などのアシル基;
ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、エポキシ基、グリシジル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アミド基、フルオロアセトアミド基、イソシアナート基などが挙げられる。
【0033】
さらに、R1として、上記有機基の置換誘導体などが挙げられる。該置換誘導体の置換基としては、たとえば、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアミノ基、水酸基、メルカプト基、イソシアナート基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アンモニウム塩基などが挙げられる。ただし、置換誘導体からなるR1の炭素原子数は、置換基中の炭素原子数を含めて、通常8個以下、好ましくは4個以下である。
【0034】
なお、式(1)中にR1が複数個存在する場合には、それぞれ同じであっても異なってもよい。
【0035】
式(1)中、R2は炭素原子数1〜6個のアルキル基、炭素原子数1〜6個のアシル基およびフェニル基からなる群から選択される有機基であり、炭素原子数が1〜6個のアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基などが挙げられる。
【0036】
また、炭素原子数が1〜6個のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、カプロイル基などが挙げられる。
【0037】
これらのうちでは、炭素原子数3〜6個のアルキル基が好ましい。
【0038】
なお、式(1)中にR2が複数個存在する場合には、それぞれ同じであっても異なってもよい。
【0039】
また、上記式(1)で表されるチタン化合物(b)が、チタンアルコレート誘導体であって、チタンアルコレートのキレート化合物である場合には、チタンアルコレートのキレート化合物は、チタンアルコレートと、β−ジケトン類、β−ケトエステル類、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸エステル、ケトアルコールおよびアミノアルコールからなる群から選択される少なくとも1種の化合物(以下、キレート化剤ともいう。)とを反応させることによって得ることができる。
【0040】
これらのキレート化剤のうちでは、β−ジケトン類またはβ−ケトエステル類が好ましく用いられる。より具体的には、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−tert−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチル−ヘキサン−ジオンなどが好ましく用いられる。
【0041】
また、本発明に用いられるチタン化合物(b)が、チタンアシレート誘導体であって、チタンアシレートのキレート化合物である場合には、該チタンアシレートのキレート化合物は、チタンアシレートと前記キレート化剤とを反応させることによって得ることができる。
【0042】
前記チタンアルコレートおよびチタンアルコレートのキレート化合物としては、具体的には、テトラ−i−プロポキシチタニウム、テトラ−n−ブトキシチタニウム、テトラ−tert−ブトキシチタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(ラクテタート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナート)チタニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタニウムなどが挙げられる。
【0043】
これらのうちでは、テトラ−i−プロポキシチタニウム、テトラ−n−ブトキシチタニウム、テトラ−tert−ブトキシチタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウムが好ましい。
【0044】
また、前記チタンアシレートおよびチタンアシレートのキレート化合物としては、具体的には、ジヒドロキシ・チタンジブチレート、ジ−i−プロポキシ・チタンジアセテート、ビス(アセチルアセトナート)・チタンジアセテート、ビス(アセチルアセトナート)・チタンジプロピオネート、ジ−i−プロポキシ・チタンジプロピオネート、ジ−i−プロポキシ・チタンジマロニエート、ジ−i−プロポキシ・チタンジベンゾイレート、ジ−n−ブトキシ・ジルコニウムジアセテート、ジ−i−プロピルアルミニウムモノマロニエートなどが挙げられる。
【0045】
これらのうちでは、ジヒドロキシ・チタンジブチレート、ジ−i−プロポキシ・チタンジアセテートが好ましい。
【0046】
また、上記式(1)で表されるチタン化合物(b)が、チタンアルコレートの加水分解物、チタンアルコレートのキレート化合物の加水分解物、チタンアシレートの加水分解物、またはチタンアシレートのキレート化合物の加水分解物である場合には、これらは、前記チタンアルコレートまたはチタンアシレートに含まれるOR2基の少なくとも1個が加水分解されていればよく、たとえば、1個のOR2基が加水分解されたもの、2個以上のOR2基が加水分解されたもの、あるいはこれらの混合物であってもよい。
【0047】
また、上記式(1)で表されるチタン化合物(b)が、チタンアルコレートの縮合物、チタンアルコレートのキレート化合物の縮合物、チタンアシレートの縮合物、およびチタンアシレートのキレート化合物の縮合物である場合には、それぞれ、チタンアルコレート、チタンアルコレートのキレート化合物、チタンアシレート、およびチタンアシレートのキレート化合物が加水分解して生成する加水分解物中のTi−OH基が縮合してTi−O−Ti結合を形成したものであればよい。本発明では、このTi−OH基がすべて縮合している必要はなく、前記縮合物は、Ti−OH基の一部が縮合したもの、大部分(全部を含む)のTi−OH基が縮合したもの、さらには、Ti−OR基とTi−OH基とが混在している縮合物の混合物なども包含する。
【0048】
本発明では、チタン化合物(b)としては、反応性をコントロールしてゲル化を抑制する点からは、前記縮合物を使用することがより好ましく、該縮合物の縮合度は2量体から10量体であることが特に好ましい。
【0049】
この縮合物は、チタンアルコレート、チタンアルコレートのキレート化合物、チタンアシレート、およびチタンアシレートのキレート化合物からなる群から選択される1種のチタン化合物もしくは2種以上のチタン化合物の混合物を、予め加水分解し縮合したものを使用してもよく、あるいは市販されている縮合物を使用してもよい。
【0050】
また、チタンアルコレートの縮合物またはチタンアシレートの縮合物は、そのまま使用してもよく、該縮合物中に含まれるOR2基の一部もしくは全部を加水分解したもの、または該縮合物を前記キレート化剤と反応させて得られる、チタンアルコレートのキレート化合物の縮合物、またはチタンアシレートのキレート化合物の縮合物として使用してもよい。
【0051】
具体的には、市販されているチタンアルコレートの縮合物(2量体から10量体)として、日本曹達(株)製のA−10、B−2、B−4、B−7、B−10などが挙げられる。このようなチタン化合物(b)は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
これらのチタン化合物(b)は、光触媒機能を有する微粒子(a)の表面に吸着、結合し、光触媒機能を有する微粒子(a)の分散粒子径を減少させる作用や分散性を高める作用があると考えられる。
【0053】
該チタン化合物(b)は、前記光触媒機能を有する微粒子(a)100重量部に対して、完全加水分解縮合物換算で0.1〜50重量部、好ましくは1〜45重量部、さらに好ましくは3〜40重量部の量で用いることが望ましい。ここで、完全加水分解縮合物とは、式(1)中のOR2基が100%加水分解してTi−OH基となり、さらにTi−OH基が完全に縮合してTi−O−Ti構造を形成したものをいう。
【0054】
前記チタン化合物が、このような量で含まれていると、光触媒機能を有する微粒子(a)の分散粒子径を減少させ、分散性を高める作用が効果的に発揮されるため好ましい。
【0055】
(c)シラン化合物:
本発明に用いられるシラン化合物(c)は、下記式(2)
3 nSi(OR4)4-n ・・・式(2)
(式中、R3およびR4は同じであっても異なっていてもよく、R3は炭素原子数1〜8個の1価の有機基を表し、複数個存在する場合には同じであっても異なっていてもよく、R4は炭素原子数1〜5個のアルキル基または炭素原子数1〜6個のアシル基を表し、複数個存在する場合には同じであっても異なっていてもよく、nは0〜3の整数である。)で表されるオルガノシランおよびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物である。
【0056】
前記オルガノシランの誘導体としては、前記オルガノシランの加水分解物および縮合物が挙げられる。
【0057】
本発明に用いられるシラン化合物(c)は、上記式(2)で表されるオルガノシラン、該オルガノシランの加水分解物および縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物であって、これら3種のシラン化合物うち、1種のシラン化合物だけを用いてもよく、任意の2種のシラン化合物を混合して用いてもよく、または3種すべてのシラン化合物を混合して用いてもよい。
【0058】
上記式(2)において、R3は炭素原子数1〜8個の1価の有機基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などのアルキル基;
アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基、トリオイル基、カプロイル基などのアシル基;
ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、エポキシ基、グリシジル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アミド基、フルオロアセトアミド基、イソシアナート基などが挙げられる。
【0059】
これらのうちでは、炭素原子数3〜6のアルキル基が好ましい。
【0060】
さらに、R3として、上記有機基の置換誘導体などが挙げられる。該置換誘導体の置換基としては、たとえば、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアミノ基、水酸基、メルカプト基、イソシアナート基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アンモニウム塩基などが挙げられる。なお、上記式(2)中にR3が複数個存在する場合には、それぞれ同じであっても異なってもよい。
【0061】
上記式(2)中、R4が炭素原子数1〜5個のアルキル基である場合、該アルキル基としては、具体的には、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基などを挙げることができる。
【0062】
また、上記式(2)中、R4が炭素原子数1〜6のアシル基である場合、該アシル基としては、具体的には、たとえば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、カプロイル基などが挙げられる。
【0063】
なお、式(2)中にR4が複数個存在する場合には、それぞれ同じであっても異なってもよい。
【0064】
前記オルガノシランとして、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン類;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのトリアルコキシシラン類;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン類;
トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシランなどのモノアルコキシシラン類;
メチルトリアセチルオキシシラン、ジメチルジアセチルオキシシランなどが挙げられる。
【0065】
これらのうち、トリアルコキシシラン類、ジアルコキシシラン類が好ましく、より好ましくは、トリアルコキシシラン類としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランが望ましく、ジアルコキシシラン類としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランが望ましい。
【0066】
なお、前記オルガノシランは、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよく、具体的には、トリアルコキシシラン類のみ、もしくはトリアルコキシシラン類40〜95モル%とジアルコキシシラン類60〜5モル%との混合物が好ましく用いられる。ジアルコキシシラン類とトリアルコキシシラン類とを併用した場合には、得られるコーティング膜が柔軟化し、耐アルカリ性を向上させることができるため望ましい。
【0067】
本発明では、シラン化合物(c)として、前記オルガノシランをそのまま使用してもよいが、前記オルガノシランの加水分解物および/または縮合物を使用することができる。
【0068】
前記オルガノシランの加水分解物としては、前記オルガノシランに含まれる1〜4個のOR4基のうち、少なくとも1個のOR4基が加水分解されていればよく、たとえば1個のOR4基が加水分解されたもの、2個以上のOR4基が加水分解されたもの、あるいはこれらの混合物であってもよい。
【0069】
また、前記オルガノシランの縮合物は、前記オルガノシランが加水分解して生成する加水分解物中のシラノール基が縮合してSi−O−Si結合を形成したものであり、シラノール基がすべて縮合している必要はなく、前記縮合物は、シラノール基の一部が縮合したもの、大部分(全部を含む)のシラノール基が縮合したもの、さらには、これらの混合物などをも包含する。
【0070】
このようなオルガノシランの加水分解物および/または縮合物は、前記オルガノシランを予め加水分解、縮合させて製造することができる。また、後述するように、光触媒コーティング用組成物を調製する際に、前記オルガノシランと水とを加水分解、縮合させて、オルガノシランの加水分解物および/または縮合物を調製することもできる。なお、この水は独立して添加してもよいし、前述した光触媒物質の水系または有機溶媒のゾルもしくはコロイドに含まれる水、あるいは後述する(e)の項の水または有機溶媒に含有される水を使用してもよい。前記水は、前記オルガノシラン1モルに対して、通常0.5〜3モル、好ましくは0.7〜2モルの量で用いられることが望ましい。
【0071】
なお、前記オルガノシランの縮合物としては、ポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「Mw」と表す。)が、好ましくは300〜100,000、より好ましくは500〜50,000の縮合物が用いられる。
【0072】
本発明に用いられるシラン化合物(c)は、公知の方法により調製してもよいし、市販されているシラン化合物をそのまま用いてもよい。
【0073】
市販されているシラン化合物としては、三菱化学(株)製のMKCシリケート、コルコート社製のエチルシリケート、東レ・ダウコーニング社製のシリコンレジン、東芝シリコーン(株)製のシリコンレジン、信越化学工業(株)製のシリコンレジン、ダウコーニング・アジア(株)製のヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサン、日本ユニカ(株)製のシリコンオリゴマーなどが挙げられる。これらの市販されているシラン化合物は、そのまま用いてもよく、さらに縮合させて使用してもよい。このようなシラン化合物(c)は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0074】
前記シラン化合物(c)は、光触媒コーティング用組成物から前記光触媒機能を有する微粒子(a)を除いた固形分を100重量%としたときに、完全加水分解縮合物換算で5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%〜70重量%の量で用いられることが望ましい。ここで、完全加水分解縮合物とは、式(2)中のOR4基が100%加水分解してSi−OH基となり、さらにSi−OH基が完全に縮合してシロキサン構造を形成したものをいう。
【0075】
前記シラン化合物(c)の含有率が上記下限未満であると、形成されたコーティング膜が脆く、チョーキング等が発生することがある。
【0076】
(d)オルガノシロキサンオリゴマー
本発明に用いられるオルガノシロキサンオリゴマー(d)は、主鎖にシロキサン結合(−Si−O−)を有し、重量平均分子量が300〜100,000であり、かつ、側鎖および/または主鎖末端に下記式(3)
−(R5O)p−(R6O)q−R7 ・・・式(3)
(式中、R5およびR6は、それぞれ独立に炭素原子数1〜5個のアルキル基を表し、R7は水素原子または炭素原子数1〜5個のアルキル基を表し、pおよびqは、それぞれ独立に、p+qの値が2〜50となる整数である。)で表される構造を含む。
【0077】
上記式(3)で表される官能基としては、たとえば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)基などのポリオキシアルキレン基が挙げられる。前記オルガノシロキサンオリゴマー(d)がこのような官能基をその構造中に含んでいると、官能基中のポリオキシアルキレン基部分が光触媒機能を有する微粒子(a)に吸着しやすく、該微粒子(a)の分散安定性が向上する。
【0078】
さらに、オルガノシロキサンオリゴマー(d)の主鎖には、水酸基、ハロゲン原子、または炭素原子数1〜15の有機基を含む官能基が置換していてもよい。
【0079】
前記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素などが挙げられる。
【0080】
また、炭素原子数1〜15の有機基としては、たとえば、アルキル基、アシル基、アルコキシル基、アルコキシシリル基、ビニル基、アリル基、アセトキシル基、アセトキシシリル基、シクロアルキル基、フェニル基、グリシジル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アミド基、フルオロアセトアミド基、イソシアナート基などが挙げられる。
【0081】
炭素原子数1〜15のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。
【0082】
炭素原子数1〜15のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基、トルオイル基などが挙げられる。
【0083】
炭素原子数1〜15のアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。
【0084】
炭素原子数1〜15のアルコキシシリル基としては、メトキシシリル基、エトキシシリル基、プロポキシシリル基、ブトキシシリル基などが挙げられる。
【0085】
これらのうちでは、炭素原子数1〜15のアルキル基が好ましい。
【0086】
これらの基は、部分的に加水分解、縮合したものであってもよく、さらにこれらの基が置換された置換誘導体であってもよい。該置換誘導体の置換基としては、たとえば、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアミノ基、水酸基、メルカプト基、イソシアナート基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アンモニウム塩基、ケトエステル基などが挙げられる。
【0087】
これらのうちでは、シリル基のケイ素原子が加水分解性基および/または水酸基と結合した構造を含有するオルガノシロキサンオリゴマー(d)が特に好ましく用いられ、たとえば、クロロシランの縮合物あるいはアルコキシシランの縮合物が用いられる。このようなオルガノシロキサンオリゴマー(d)は、本発明に用いられる光触媒コーティング用組成物が硬化する際に、チタン化合物(b)およびシラン化合物(c)と共縮合して固定化されるため、安定なコーティング膜を得ることができる。
【0088】
なお、前記オルガノシロキサンオリゴマー(d)のポリスチレン換算の重量平均分子量(以下「Mw」ともいう)は、300〜100,000、好ましくは600〜50,000である。重量平均分子量が、上記下限未満では得られるコーティング膜が充分な柔軟性を得られないことがあり、また、上記上限を超えると得られるコーティング組成物が充分な保存安定性を得られないことがある。
【0089】
なお、本発明において、オルガノシロキサンオリゴマー(d)は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合したオルガノシロキサンオリゴマー(d)としては、Mwが400〜2,800のオルガノシロキサンオリゴマーとMwが3,000〜50,000のオルガノシロキサンオリゴマーとの混合物、または異なる官能基を有する2種類のオルガノシロキサンオリゴマーの混合物が挙げられる。
【0090】
また、本発明では、オルガノシロキサンオリゴマー(d)として、市販されているオルガノシロキサンオリゴマーを用いることができ、たとえば、東レ・ダウコーニング社製の変性シリコーンオイル、東芝シリコーン(株)製の変性シリコーンオイル、信越化学工業(株)製の変性シリコーンオイル、日本ユニカ(株)製の変性シリコンオリゴマーなどが挙げられる。これらのオルガノシロキサンオリゴマーは、そのまま使用してもよく、さらに縮合させて使用してもよい。
【0091】
前記オルガノシロキサンオリゴマー(d)は、前記光触媒機能を有する微粒子(a)100重量部に対して、1〜200重量部、好ましくは5〜100重量部、さらに好ましくは10〜80重量部の量で用いることが望ましい。オルガノシロキサンオリゴマー(d)の量が、上記下限未満であると充分な分散安定性を得られないことがあり、上記上限を超えると形成されたコーティング膜が脆く、チョーキング等が発生することがある。
【0092】
(e)水および/または有機溶剤:
本発明に用いられる光触媒コーティング用組成物は、通常、上述した(a)〜(d)成分の他に、(e)水および/または有機溶剤を含有する。
【0093】
有機溶剤としては、公知の有機溶剤を使用することができ、たとえば、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類が挙げられる。
【0094】
これらの有機溶剤は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0095】
(f)触媒:
本発明に用いられる光触媒コーティング用組成物には、さらに(f)触媒を含有させることが好ましい。本発明に用いられる触媒(f)としては、酸性化合物、アルカリ性化合物、塩化合物、アミン化合物、有機金属化合物および/またはその部分加水分解物(以下、有機金属化合物および/またはその部分加水分解物をまとめて、「有機金属化合物類」という。)が挙げられる。
【0096】
このような触媒(f)は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよく、また、亜鉛化合物やその他の反応遅延剤と混合して使用することもできる。
【0097】
触媒(f)は、光触媒コーティング用組成物を調製する工程で配合してもよく、また、シート表面に膜を形成する工程で光触媒コーティング用組成物に配合してもよく、さらには、光触媒コーティング用組成物の調製工程と膜形成工程との両方で配合してもよい。
【0098】
前記触媒(f)は、シラン化合物(c)中に含まれるOR4基1モルに対して、通常10モル以下、好ましくは0.001〜7モル、より好ましくは0.001〜5モルの量で用いられることが望ましい。触媒(f)の量が上記上限を超えると、光触媒コーティング用組成物の保存安定性が低下したり、形成した膜にクラックが発生することがある。
【0099】
触媒(f)は、シラン化合物(c)、オルガノシロキサンオリゴマー(d)などの加水分解、縮合反応を促進する。したがって、触媒(f)を使用することにより、たとえば、オルガノシロキサンオリゴマー(d)の重縮合反応により生成するポリシロキサン樹脂の分子量が大きくなり、形成した膜の硬化速度を向上させるとともに、強度や耐久性などに優れた膜を得ることができ、かつ得られる膜の厚膜化を図ることができ、成膜作業も容易となる。
【0100】
(g)安定性向上剤:
本発明に用いられる光触媒コーティング用組成物には、さらに必要に応じて安定性向上剤(g)を含有させることができる。
【0101】
本発明に用いられる安定性向上剤(g)は、下記式(5)
11COCH2COR12 ・・・式(5)
(式中、R11は、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基などの炭素原子数1〜6個の1価の炭化水素基を表し、R12は、前記炭素数1〜6個の1価の炭化水素基、または、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ラウリルオキシ基、ステアリルオキシ基などの炭素数1〜16個のアルコキシル基を表す。)で表されるβ−ジケトン類、β−ケトエステル類、カルボン酸化合物、ジヒドロキシ化合物、アミン化合物およびオキシアルデヒド化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0102】
このような安定性向上剤(g)は、前記触媒(f)として有機金属化合物類を使用する場合に特に好ましく用いられる。また、安定性向上剤(g)は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0103】
安定性向上剤(g)を用いることによって、安定性向上剤(g)が前記有機金属化合物類の金属原子に配位し、この配位が、シラン化合物(c)やオルガノシロキサンオリゴマー(d)の共縮合反応についての有機金属化合物類の促進作用を適度に調節し、得られる光触媒コーティング用組成物の保存安定性をさらに向上させることができると考えられる。
【0104】
(h)その他の添加剤:
本発明に用いられる光触媒コーティング用組成物には、さらに、必要に応じて、オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、テトラエトキシシランなどの公知の脱水剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤、ポリカルボン酸塩、ポリリン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリアミドエステル塩、ポリエチレングリコールなどの分散剤を配合することができる。
【0105】
また、前記光触媒コーティング用組成物のコーティング性(成膜性ともいう)をより向上させるために、レベリング剤を配合することができる。このようなレベリング剤としては、たとえば、ビーエムケミー(BM−CHEMIE)社のBM1000(商品名、以下同様)、BM1100、エフカケミカルズ社のエフカ772、エフカ777、共栄社化学(株)のフローレンシリーズ、住友スリーエム(株)のFCシリーズ、東邦化学(株)のフルオナールTFシリーズなどのフッ素系のレベリング剤;
ビックケミー社のBYKシリーズ、シュメグマン(Sshmegmann)社のSshmegoシリーズ、エフカケミカルズ社のエフカ30、エフカ31、エフカ34、エフカ35、エフカ36、エフカ39、エフカ83、エフカ86、エフカ88などのシリコーン系のレベリング剤;
日信化学工業(株)のカーフィノール、花王(株)のエマルゲン、ホモゲノールなどのエーテル系またはエステル系のレベリング剤が挙げられる。
【0106】
このようなレベリング剤を配合することにより、シート表面に形成した膜の仕上がり外観が改善されるとともに、均一な薄膜を調製することができる。
【0107】
本発明において、レベリング剤は、光触媒コーティング用組成物全量に対して、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.02〜3重量%の量で用いられる。
【0108】
レベリング剤を配合する方法は、本発明に係る光触媒コーティング用組成物を調製する工程で配合してもよく、また膜を形成する工程で光触媒コーティング用組成物に配合してもよく、さらには光触媒コーティング用組成物の調製工程と膜形成工程との両方で配合してもよい。
【0109】
光触媒コーティング用組成物の調製:
本発明に用いられる光触媒コーティング用組成物は、少なくとも前記光触媒機能を有する微粒子(a)、チタン化合物(b)およびオルガノシロキサンオリゴマー(d)の存在下、シラン化合物(c)を加水分解、縮合させることにより製造することが好ましい。具体的には、以下の方法が挙げられる。
【0110】
光触媒機能を有する微粒子(a)として粉末状の光触媒物質をそのまま用いる場合には、該光触媒物質、すなわち「光触媒機能を有する微粒子(a)」に、「水および/または有機溶剤(e)」、「チタン化合物(b)」、「オルガノシロキサンオリゴマー(d)」を添加し、たとえば、分散機により分散した後、
さらに、「シラン化合物(c)」と、必要に応じて、「水および/または有機溶剤(e)」、および/または「触媒(f)」とを添加し、加水分解、縮合させることにより、光触媒コーティング用組成物を得ることができる。
【0111】
また、光触媒機能を有する微粒子(a)が水あるいは有機溶媒中に分散しているスラリーを用いる場合には、該スラリーに、「チタン化合物(b)」および「オルガノシロキサンオリゴマー(d)」を添加し、攪拌した後、
さらに、「シラン化合物(c)」と、必要に応じて、「水および/または有機溶剤(e)」、および/または「触媒(f)」とを添加し、加水分解、縮合させることにより、光触媒コーティング用組成物を得ることができる。
【0112】
これらの方法において、上記成分(b)〜(f)は、それぞれを一括添加してもよく、逐次添加してもよい。特に、光触媒機能を有する微粒子(a)との相溶性が低い成分については、逐次添加することが好ましい。ここで、「一括添加」とは、ある1種の成分を一時に添加することをいい、「逐次添加」とは、ある1種の成分を任意の時間をかけて添加することをいう。さらに、成分(b)〜(f)は、それぞれを一括添加する場合、成分(b)〜(f)を一時に一括して添加してもよいが、光触媒機能を有する微粒子(a)との相溶性を考慮して、各成分を独立して添加してもよい。
【0113】
前記製造方法において用いられる分散機としては、超音波分散機、ボールミル、サンドミル(ビーズミル)、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ナノマイザー、プロペラミキサー、ハイシェアミキサーなどが挙げられる。
【0114】
本発明では光触媒コーティング用組成物中の全固形分濃度は、通常1〜50重量%、好ましくは3〜40重量%が望ましい。全固形分濃度が上記上限を超えると、保存安定性が低下することがある。
【0115】
<樹脂表面改質用光触媒シート>
本発明に係る樹脂表面改質用光触媒シートは、前記光触媒コーティング用組成物を、シート基材表面に成膜することによって、該シート表面に前記光触媒機能を有する微粒子(a)を固定することによって得ることができる。
【0116】
シート基材としては、たとえば下記のものが挙げられる。
【0117】
シート基材:
前記シート基材としては、放射線が透過する基材であれば用いることができ、特に限定されないが、たとえば、シリコンウエハー、石英ガラス、ガラスなどの無機材料;紙などの繊維質のシート;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)、熱可塑性ノルボルネン系樹脂などのプラスチック成型品;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアクリル、ポリ塩化ビニル、熱可塑性ノルボルネン系樹脂などの樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0118】
これらの中では、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂フィルムを好ましく用いることができる。
【0119】
これらのシート基材は、下地調整、密着性向上、多孔質基材の目止め、平滑化、模様付けなどを目的として、予め表面処理を施してから用いてもよい。
【0120】
前記表面処理としては、具体的には、樹脂系シート基材に対する表面処理として、ブラスト処理、薬品処理、脱脂、火炎処理、酸化処理、蒸気処理、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、イオン処理などが挙げられる。
【0121】
さらに、後述する成膜方法で形成する膜とシート基材との密着性を確保するために、前処理としてシート基材表面に各種プライマーを塗布してもよい。
【0122】
成膜方法:
前記シート基材表面に膜を形成する方法としては、たとえば、前記光触媒コーティング用組成物をシート基材表面に成膜した後、この膜を乾燥する方法が挙げられる。
【0123】
前記光触媒コーティング用組成物をシート基材表面に成膜する方法としては、たとえば、刷毛、ロールコーター、バーコーター、フローコーター、遠心コーター、超音波コーター、(マイクロ)グラビアコーターなどを用いた塗布;ディップコート;流し塗り;スプレー;スクリーンプロセス;電着;蒸着などの方法が挙げられる。
【0124】
これらの方法により光触媒コーティング用組成物をシート基材表面に成膜した後、常温で乾燥することにより、または30〜200℃程度の温度で通常1〜60分間加熱して乾燥することにより、安定な膜を形成することができる。
【0125】
光触媒コーティング用組成物を塗布によりシート基材表面に成膜する場合、1回塗りの場合には乾燥膜厚0.05〜20μm程度、2回塗りの場合には乾燥膜厚0.1〜40μm程度のコーティング膜を形成することができる。
【0126】
<樹脂表面改質用積層体および樹脂表面改質方法>
本発明に係る樹脂表面改質用積層体を図1に基づいて説明すると、該積層体1は、上記のようにして得られた本発明の樹脂表面改質用光触媒シート7と、樹脂基板9とが、水存在下で、該光触媒シート7表面と樹脂基板9表面との間に樹脂基板9表面を親水化するのに充分な量の水11が存在するように、対向して貼り合わされた構造をしている。
【0127】
ここで、樹脂表面改質用光触媒シート7は、シート基材5の表面に、光触媒機能を有する微粒子(a)を含む膜3を形成することにより、光触媒シート7の表面に該微粒子(a)を固定したものである。
【0128】
本発明の樹脂表面改質方法では、上記のようにして、前記光触媒シート7と樹脂基板9とを、該光触媒シート7表面と樹脂基板9表面との間に樹脂基板9表面を親水化するのに充分な量の水11が存在するように、対向して貼り合わせた後、
該光触媒シート7の裏面、すなわち、前記積層体1の上面から(図1参照)、あるいは前記樹脂基板9が透明な場合(放射線を透過する場合)には該光触媒シート7の表面、すなわち、前記積層体1の下面から(図示せず)、放射線を照射することにより、樹脂基板9の表面を親水化することができる。
【0129】
これは、光触媒シート7の表面に固定された光触媒機能を有する微粒子(a)が、放射線照射によって、水分子を酸化し、活性(水酸基)ラジカルを発生し、これが水中を拡散し、樹脂基板9表面に到達して該樹脂表面に付加して水酸基やカルボキシル基になり、樹脂基板9の表面を親水化するものと考えられる。
【0130】
前記光触媒シート7表面と前記樹脂基板9表面との間に、樹脂基板9表面を親水化するのに充分な量の水が存在するように、水を含ませる方法としては公知の方法を用いることができ、たとえば、光触媒シート7表面あるいは樹脂基板9表面の一方または両方に霧状の水を吹き付け、あるいは塗布してから両者を圧着することにより行うことができる。
【0131】
また、前記放射線としては、紫外線光、可視光を用いることができる。
【0132】
前記放射線の光源としては、太陽光、蛍光灯、水銀ランプ、ブラックライト
などを用いることができる。放射線の照射量は、光触媒シート7のコーティング膜3の厚さおよび表面改質したい樹脂基板9の表面状態などによって異なるが、たとえば、蛍光ランプを使用する場合には、0.1〜5mW/cm2である。
【0133】
前記放射線を照射する時間としては、通常1分〜120分間であり、樹脂基板の表面状態によって、上記範囲内で照射時間を適宜変えることが望ましい。
【0134】
親水化の対象となる樹脂基板9については、特に制限はなく、公知のポリマーや、ポリマーに金属、金属酸化物、金属窒化物などからなる無機微粒子を配合したもの、ポリマーに繊維を配合したもの、あるいは、ポリマーを不織布またはメッシュに含浸させた基板であってもかまわない。
【0135】
なお、本発明の樹脂表面改質用光触媒シート7は、上述のようにして放射線を照射した後、樹脂基板9から剥離される。
【0136】
このようにして、親水化された樹脂基板9は、その後、用途に応じて必要な工程、たとえば、メッキなどに付されるが、その際にメッキ箔との密着性が良好であるため、プリント配線基板などの用途に特に好適に用いることができる。
【0137】
【発明の効果】
本発明によれば、紫外線および/または可視光を含む放射線環境下において、充分な光触媒作用を示し樹脂基板表面の親水化を図ることができる。
【0138】
また、本発明の樹脂表面改質用光触媒シートでは、光触媒機能を有する微粒子がシート表面に固定されていることから、樹脂基板表面への無機微粒子(光触媒機能を有する微粒子)による汚染がなく、樹脂基板の表面改質を簡便に行うことができる。
【0139】
さらに、本発明によって親水化された樹脂基板表面にメッキを施すことにより、樹脂基板とメッキ箔との密着性を向上させることができる。
【0140】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の部および%は、特に限定しない限り、重量基準とする。
【0141】
また、光触媒コーティング用組成物および樹脂表面改質用光触媒シートを下記の方法により評価した。
(1)透明性評価:
各光触媒コーティング用組成物を、i−プロピルアルコールで固形分濃度5%に希釈し、石英ガラス上に、ROD.NO.3のバーコーター(日本シーダースサービス製)で乾燥膜厚が0.2μmになるように塗布したのち、150℃で1時間乾燥した。
【0142】
次いで、GARDNER社製のヘイズ試験器(haze−gard plus illuminant CIE−C)を用いてコーティング膜の全光線透過率を測定し、下記の基準にしたがってコーティング膜の透明性を評価した。
【0143】
◎:全光線透過率が80%を超えるもの
〇:全光線透過率が60〜80%のもの
×:全光線透過率が60%未満のもの
(2)樹脂表面親水化性能評価:
各樹脂表面改質用光触媒シートの表面(コーティング膜側)に水を塗布して、銅基板上に形成された電着ポリイミド樹脂(JSR製)上に貼り合わせ、樹脂表面改質用積層体を形成し、この積層体の上面(光触媒シートの裏面側)から、蛍光ランプ(FL10N、松下電器産業)を用い、20分間放射線を照射(1.8mW/cm2)した後、該光触媒シートを剥離した。
【0144】
放射線照射の前後において、前記電着ポリイミド樹脂と水との接触角を測定して、電着ポリイミド樹脂表面の親水性の度合いを調べた。
【0145】
【実施例1】
<光触媒コーティング用組成物の調製および評価>
光触媒機能を有する微粒子(a)として、一次粒径7nmの酸化チタン粉末(ST01、石原産業製)320部、
チタン化合物(b)として、テトラ−n−ブトキシチタンの10量体(日本曹達(株)製、商品名:B−10)32部、
シラン化合物(c)として、メチルトリメトキシシラン77部、
オルガノシロキサンオリゴマー(d)として、エポキシ・ポリオキシアルキレン・アルコキシ変性ジメチルポリシロキサン(日本ユニカー(株)製:MAC−2101)41部、
有機溶媒(e)としてイソプロピルアルコール440部
を容器に入れ、粒子径0.3mmのジルコニアビーズ1800部を加え、ビーズミルを用いて1500rpmで1時間攪拌、分散処理した。
【0146】
その後、さらに、有機溶剤(e)として、i−プロピルアルコール940部を添加し、ジルコニアビーズを除去した後、触媒(f)として、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム1部、水(e)50部を添加し、60℃で4時間加熱攪拌して、固形分濃度約20%の光触媒コーティング用組成物1を得た。得られた組成物1の透明性評価は◎であった。
【0147】
<樹脂表面改質用光触媒シートの調製および評価>
この光触媒コーティング用組成物1をPETフィルム(50μm厚)表面にコーティングして成膜し、樹脂表面改質用光触媒シート1を得て、前述の樹脂表面親水化性能評価を行った。
【0148】
その結果を表1に示す。表1より、放射線照射後では照射前と比較して水との接触角が低下しており、樹脂表面の親水化が確認された。
【0149】
また、親水化された樹脂表面をSEM観察したが、酸化チタン微粒子による汚染は見られなかった。
【0150】
【実施例2】
光触媒機能を有する微粒子(a)として、一次粒子径80nmの可視光応答光触媒粉末(大研工業製)320部を用いた以外は、実施例1と同様にして固形分濃度約20%の光触媒コーティング用組成物2を得た。得られた組成物2の透明性評価は◎であった。
【0151】
実施例1と同様にして、この光触媒コーティング用組成物2をPPフィルム(50μm厚)表面にコーティングして成膜し、樹脂表面改質用光触媒シート2を得た。
【0152】
この光触媒シート2を用いて、410nm以下の紫外線をフィルタ(SC42、富士写真フィルム)によってカットして可視光のみを照射した以外は、前述のようにして樹脂表面親水化性能評価を行った。
【0153】
その結果を表1に示す。表1より、可視光の照射後では照射前と比較して、水との接触角が低下しており、樹脂表面の親水化が確認された。また、親水化された樹脂表面をSEM観察したが、酸化チタン微粒子による汚染は見られなかった。
【0154】
【実施例3】
光触媒機能を有する微粒子(a)として、酸化チタンに白金塩化物を担持した一次粒子径10nmの可視光応答光触媒粉末(石原産業製、MPT−621)320部を用いた以外は、実施例1と同様にして固形分濃度約20%の光触媒コーティング用組成物3を得た。得られた組成物3の透明性評価は◎であった。
【0155】
実施例1と同様にして、この光触媒コーティング用組成物3をPETフィルム(50μm厚)表面にコーティングして成膜し、樹脂表面改質用光触媒シート3を得た。
【0156】
この光触媒シート3を用いて、410nm以下の紫外線をフィルタ(SC42、富士写真フィルム)によってカットして可視光のみを照射した以外は、前述のようにして樹脂表面親水化性能評価を行った。
【0157】
その結果を表1に示す。表1より、可視光の照射後では照射前と比較して、水との接触角が低下しており、樹脂表面の親水化が確認された。また、親水化された樹脂表面をSEM観察したが、酸化チタン微粒子による汚染は見られなかった。
【0158】
【比較例1】
実施例1において、光触媒コーティング用組成物1を塗布しないPETフィルムを用いる以外は全く同様にして樹脂表面親水化性能評価を行った。
【0159】
結果を表1に示す。表1より、放射線照射の前後で水との接触角の変化はなく樹脂表面の親水化は認められなかった。
【0160】
【実施例4】
実施例2において、親水化処理を行った後の電着ポリイミド樹脂の表面に無電解ニッケルメッキ層を形成し(膜厚0.3μm)、さらに、電解銅メッキ層を形成して(15μm厚)、100℃で1時間のアニールを行った。
【0161】
その後、該樹脂表面とメッキ層との密着性を90度ピール試験(JIS−C6481)により測定した。
【0162】
ピール強度は1kN/mであった。
【0163】
【比較例2】
比較例1の樹脂基板表面に無電解ニッケルメッキ処理を行ったが、表面にフクレが発生してメッキ層を形成することができなかった。
【0164】
【表1】
Figure 0004225133

【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る樹脂表面改質用光触媒シートおよび樹脂表面改質用積層体の概略図である。
【符号の説明】
1 樹脂表面改質用積層体
3 光触媒機能を有する微粒子(a)を含む膜
5 シート基材
7 樹脂表面改質用光触媒シート
9 樹脂基板
11 水

Claims (7)

  1. 水存在下で樹脂基板と貼り合わせて用いられる樹脂表面改質用光触媒シートであって、
    該シート表面には光触媒機能を有する微粒子(a)が固定されており、
    該微粒子(a)が固定されているシート表面と樹脂基板表面との間に樹脂基板表面を親水化するのに充分な量の水が存在するように、該光触媒シートと樹脂基板とを対向して貼り合わせ、該光触媒シートの表面あるいは裏面から放射線を照射することによって、樹脂基板表面を親水化する作用を有することを特徴とする樹脂表面改質用光触媒シート。
  2. 前記光触媒機能を有する微粒子(a)と下記バインダー成分(b)〜(d)とを含んでなる光触媒コーティング用組成物を、シート基材表面に成膜することにより、光触媒機能を有する微粒子(a)を該シート表面に固定したことを特徴とする請求項1に記載の樹脂表面改質用光触媒シート;
    (b)下記式(1)
    1 mTi(OR2)4-m ・・・式(1)
    (式中、R1およびR2は同じであっても異なってもよく、
    1は炭素原子数1〜8個の1価の有機基を表し、複数個存在する場合には同じであっても異なってもよく、
    2は炭素原子数1〜6個のアルキル基、炭素原子数1〜6個のアシル基およびフェニル基からなる群から選択される有機基を表し、複数個存在する場合には同じであっても異なってもよく、
    mは0〜3の整数である。)
    で表されるチタンアルコレートおよびその誘導体、ならびに上記式(1)で表されるチタンアシレートおよびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のチタン化合物、
    (c)下記式(2)
    3 nSi(OR4)4-n ・・・式(2)
    (式中、R3およびR4は同じであっても異なっていてもよく、
    3は炭素原子数1〜8個の1価の有機基を表し、複数個存在する場合には同じであっても異なってもよく、
    4は炭素原子数1〜5個のアルキル基または炭素原子数1〜6個のアシル基を表し、複数個存在する場合には同じであっても異なってもよく、
    nは0〜3の整数である。)
    で表されるオルガノシランおよびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物、
    (d)主鎖にシロキサン結合を有し、重量平均分子量が300〜100,000であり、かつ下記式(3)
    −(R5O)p−(R6O)q−R7 ・・・式(3)
    (式中、R5およびR6は同じであっても異なってもよく、炭素原子数1〜5個のアルキル基を表し、
    7は水素原子または炭素原子数1〜5個のアルキル基を表し、
    pおよびqは、同じであっても異なってもよく、p+qの値が2〜50となる整数である。)
    で表される構造を含むオルガノシロキサンオリゴマー。
  3. 前記光触媒機能を有する微粒子(a)が、金属化合物および/または金属酸化物からなることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂表面改質用光触媒シート。
  4. 前記シート基材が樹脂フィルムからなることを特徴とする請求項2または3に記載の樹脂表面改質用光触媒シート。
  5. 光触媒機能を有する微粒子(a)が表面に固定されている樹脂表面改質用光触媒シートと、樹脂基板とを、該光触媒シート表面と樹脂基板表面との間に樹脂基板表面を親水化するのに充分な量の水が存在するように、対向して貼り合わせ、
    次いで、該光触媒シートの表面あるいは裏面から放射線を照射することによって、該樹脂基板表面を親水化することを特徴とする樹脂表面改質方法。
  6. 前記樹脂表面改質用光触媒シートを、放射線照射後に樹脂基板表面から剥離することを特徴とする請求項5に記載の樹脂表面改質方法。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂表面改質用光触媒シートと、樹脂基板とが、該光触媒シート表面と樹脂基板表面との間に樹脂基板表面を親水化するのに充分な量の水が存在するように、対向して貼り合わされていることを特徴とする樹脂表面改質用積層体。
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