JP4224960B2 - インクジェット記録用インクセット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラーインクジェット記録方式に用いられるインクジェット記録用インクセットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェット記録方式としては、静電吸引方式、圧電素子等を用いてインクに機械的振動又は変位を与える方式、インクを加熱することにより気泡を発生させ、そのときの圧力を利用する方式等のインク吐出方式が知られている。これらのインク吐出方式によりインク小滴を形成し、インク小滴の一部又は全部を紙等の被記録材に付着させて記録を行う。このようなインクジェット記録方式に使用するインクジェット記録用インクとしては、各種の水溶性染料又は水分散性顔料を、水又は水と水溶性有機溶媒からなる液媒体に溶解又は分散させたものが使用されている。
【0003】
インクジェット記録用インクを用い長時間にわたって良好な記録を行うためには、使用するインクジェット記録用インクの粘度、表面張力、導電率、密度等の特性値が適当な値であること、記録画像が耐水性、耐光性等に優れていること、記録装置のノズル、オリフィスでの目詰まりを防ぐために熱等による析出物の生成及び物性値の変化がないこと等の条件を満たすことが必要となる。これらの条件を満足させるため、数多くの提案がなされており、例えば、ノズル、オリフィスでの目詰まり防止に対しては、水溶性有機溶剤を添加することが一般的となっている。
【0004】
良好な印字品質を得るためには、インクジェット専用紙が用いられることも少なくない。しかしながら近年は、コスト、環境への配慮からインクジェット専用紙に記録するよりも普通紙に記録することへの要求が高まってきている。しかし、従来のインクでは、普通紙に複数色を記録した場合、異なった色のインク同士が隣接する部分で混ざり合うことによって起こるカラーブリードが発生しやすく、結果として印字品質が悪化していた。特に、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン等の比較的色の明るいカラーインクを背景にして、比較的色の暗いブラックインク等で文字等を記録した場合にインク境界部のにじみが目立ちやすい。
【0005】
近年、はっきりと文字部を印字できるように顔料が用いられる等、ブラックインクの改良が進んでいるが、文字部の濃度が高く、コントラストが鮮明になったことによって、逆に、今まで以上に境界部のにじみが目立ちやすくなってきているという問題があった。
【0006】
上記の問題点を解決するために、カラーインク中に多価金属塩を添加し、これによりブラックインク中のアニオン性付加顔料を凝集させ、ブラックインクとカラーインクが隣接して記録されるときのカラーブリードを低減させる方法が特開平6−106841号公報に開示されている。
しかしながら、カラーブリードを低減させるために、カラーインクに多価金属塩を添加すると、場合によってはカラーインク中に添加されている染料が析出することから、染料の選択が制限されるという新たな問題が生じた。特に、この染料の析出は、アニオン染料を用いた場合に顕著であった。
また、インクの吐出機構を構成するヘッドでは、インクの流路部に金属部材が使用されることが多く、この金属部材が多価金属塩を含むインクと常に接触することによって腐食しやすくなるという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、普通紙に複数色が記録される場合においても、ブラックインクとカラーインクの隣接部分でのカラーブリードを低減し、かつ、カラーインク中の染料の析出等を引き起こすことのないインクジェット記録用インクセットを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数色のインクから構成されるインクジェット記録用インクセットであって、下記(A)の組成を有するインク及び下記(B)の組成を有するインクを少なくともそれぞれ1種ずつ含むインクジェット記録用インクセットである。
(A)アニオン性ポリマーで水分散性が付与された顔料、アニオン性界面活性剤で水分散性が付与された顔料、並びに、表面にカルボキシル化及び/又はスルホン化官能基からなるように化学処理が施されることで水分散性が付与された顔料からなる群より選択される少なくとも1種の顔料を含むインク。
(B)少なくとも1種のアニオン染料、並びに、モノエタノールアミン塩酸塩、ジエタノールアミン塩酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩、及び、チオエタノールアミン塩酸塩からなる群より選択される少なくとも1種のエタノールアミン塩酸塩を含むインク。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳述する。
本発明のインクジェット記録用インクセットは、複数色のインクから構成されるものであり、上記(A)の組成を有するインク及び上記(B)の組成を有するインクを少なくともそれぞれ1種ずつ含むものであり、必要に応じてそれぞれ複数種含むものであってもよい。
【0010】
上記(A)の組成を有するインクは、少なくとも1種のアニオン性付加顔料を含むものである。上記アニオン性付加顔料としては、例えば、アニオン性ポリマー、アニオン性界面活性剤で水分散性が付与された顔料、又は、表面にカルボキシル化及び/又はスルホン化官能基からなるように化学処理が施されることで水分散性が付与された顔料を挙げることができる。
【0011】
本発明をブラックインクとカラーインクの隣接部分でのカラーブリードを低減する目的に用いる場合には、上記(A)の組成を有するインクは、ブラックインクであることが好ましい。ブラックインクに使用されるアニオン性付加顔料としては、例えば、カーボンブラックを挙げることができる。
【0012】
上記カーボンブラックとしては特に限定されず、従来公知のものを使用することができるが、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料等が好適に用いられる。これらのうち市販されているものとしては、例えば、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学社製);カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックス150T、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(SpecialBlack)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上、デグッサ社製);レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA−II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上、コロンビア社製);ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、ヴァルカン(Valcan)、キャボジェット(CAB−O−JET)300ブラック、キャボジェット200ブラック(以上、キャボット社製)等を挙げることができる。
また、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子やチタンブラック等をブラックインクのアニオン性付加顔料として用いてもよい。
これらのアニオン性付加顔料は通常ブラックインク中に、1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%添加される。
【0013】
上記(B)の組成を有するインクは、少なくとも1種のアニオン染料を含むものである。
上記アニオン染料としては、例えば、水溶性アニオン染料を挙げることができ、これには主に直接染料と酸性染料とがある。
【0014】
本発明をブラックインクとカラーインクの隣接部分でのカラーブリードを低減する目的に用いる場合には、上記(B)の組成を有するインクは、カラーインクであることが好ましい。上記カラーインクに対して着色剤として使用されるアニオン染料には、特にインクジェット記録方式のインクとして鮮明性、水溶性、安定性、耐光性等の性能が要求される。
【0015】
上記性能を満たすアニオン染料としては特に限定はされないが、市販されているものとしては、例えば、C.I.ダイレクトブルー6、22、25、71、86、90、106、199;C.I.ダイレクトレッド1、4、17、28、83、227;C.I.ダイレクトイエロー12、24、26、86、98、132、142;C.I.ダイレクトオレンジ34、39、44、46、60;C.I.ダイレクトバイオレット47、48;C.I.ダイレクトブラウン109;C.I.ダイレクトグリーン59;C.I.アシッドブルー9、22、40、59、93、102、104、113、117、120、167、229、234;C.I.アシッドレッド1、6、32、37、51、52、80、85、87、92、94、115、181、256、289、315、317;C.I.アシッドイエロー11、17、23、25、29、42、61、71;C.I.アシッドオレンジ7、19;C.I.アシッドバイオレット49等が好適である。上記アニオン染料は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0016】
上記アニオン染料は、(B)の組成を有するインクに対して0.1〜20重量%用いられることが好ましい。0.1重量%未満であると、普通紙に対して充分な発色をさせることができないことがあり、20重量%を超えると、(B)の組成を有するインク中に溶解しない、粘度が高くなる等の問題が起こることがある。より好ましくは0.3〜15重量%であり、更に好ましくは0.5〜10重量%である。
【0017】
上記(B)の組成を有するインクは、モノエタノールアミン塩酸塩、ジエタノールアミン塩酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩及びチオエタノールアミン塩酸塩からなる群より選択される少なくとも1種のエタノールアミン塩酸塩を含む。
【0018】
異なる色同士のインクが隣接して普通紙上に記録された場合、通常は双方のインクが隣接しているインク中に流れ込んでしまう。しかしながら、本発明者らは、モノエタノールアミン塩酸塩、ジエタノールアミン塩酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩及びチオエタノールアミン塩酸塩からなる群より選択されるエタノールアミン塩酸塩が、インク中でアニオン性付加顔料と逆極性を持つイオンを生成して、アニオン性付加顔料と結合し、その結果、アニオン性付加顔料の分散状態が不安定となって凝集を起こし、流動性が低下することを見出した。更に、本発明者らは、この現象に基づいて、ブラックインク顔料にアニオン性付加顔料を用い、カラーインクに上記のエタノールアミン塩酸塩の少なくとも1種を添加することにより、カラーインク中へのブラックインク顔料の流れ込みを抑えてカラーブリードを低減することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0019】
例えば、水分散性が付与されたカーボンブラックをアニオン性付加顔料として含むブラックインクと、トリエタノールアミン塩酸塩を含むカラーインクとが隣接して記録された場合、カラーインク中に溶解しているトリエタノールアミン塩酸塩からトリエタノールアミンイオンが生成し、トリエタノールアミンイオンが、カーボンブラックとイオン的に結合する。その結果、カラーインクとの隣接部において、凝集を起こして流動性が悪化したカーボンブラックは、カラーインク中への流れ込みを抑えられ、カラーブリードが低減される。
一方、カラーインクはブラックインク中へ流れ込むが、ブラック部分に比較的明るい色のカラーインクが流れ込んでも、判別が困難なため問題にはならない。
【0020】
上記モノエタノールアミン塩酸塩、ジエタノールアミン塩酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩、チオエタノールアミン塩酸塩は、(B)の組成を有するインク全体に対して0.1〜5重量%添加されることが好ましい。0.1重量%未満であると、充分な効果を発揮することができないことがあり、5重量%を超えると、インクの粘度が上昇したり、ノズル出口における固形分の析出が生じたり、ノズル詰まりが起こりやすくなることがある。より好ましくは0.5〜4重量%であり、更に好ましくは1〜3重量%である。またこれらのエタノールアミン塩酸塩は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよいが、2種以上が併用される場合であっても(B)の組成を有するインク全体に占める割合は1種類添加する場合と同じである。
【0021】
本発明で用いられるインクの溶媒としては、特に限定されないが、水が好ましく、水溶性有機溶媒を混合して用いることもできる。
上記水には、一般の水ではなく、イオン交換水、蒸留水等の純度の高いものを用いることが好ましい。
【0022】
上記水溶性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の炭素数1〜5のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6の炭素原子を含むアルキレングリコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;スルフォラン、ピロリドン、メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,5−ペンタンジオール等を挙げることができる。これらの水溶性有機溶媒の配合比はインクの組成又は所望されるインクの特性に依存して広い範囲で決定される。
【0023】
本発明で用いられるインクには、浸透性を制御する目的でポリオキシアルキレングリコール−n−アルキルエーテルを含有させることができる。上記ポリオキシアルキレングリコール−n−アルキルエーテルのアルキルの炭素数は5以下、オキシアルキレンの炭素数は12以下であることが好ましい。分子鎖の長いものは粘度の上昇が激しくインクジェット記録用インクの材料として適さない。
【0024】
上記ポリオキシアルキレングリコール−n−アルキルエーテルとしては、例えば、エチレングリコール系、プロピレングリコール系のアルキルエーテルに代表されるグリコールエーテル等を挙げることができる。
【0025】
上記エチレングリコール系のグリコールエーテルの具体例としては、例えば、エチレングリコール−n−メチルエーテル、エチレングリコール−n−エチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコール−n−イソブチルエーテル、ジエチレングリコール−n−メチルエーテル、ジエチレングリコール−n−エチルエーテル、ジエチレングリコール−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−n−イソブチルエーテル、トリエチレングリコール−n−メチルエーテル、トリエチレングリコール−n−エチルエーテル、トリエチレングリコール−n−プロピルエーテル、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコール−n−イソブチルエーテル等を挙げることができる。
【0026】
上記プロピレングリコール系のグリコールエーテルの具体例としては、例えば、プロピレングリコール−n−メチルエーテル、プロピレングリコール−n−エチルエーテル、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル、プロピレングリコール−n−イソプロピルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−メチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−エチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール−n−イソプロピルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコール−n−メチルエーテル、トリプロピレングリコール−n−エチルエーテル、トリプロピレングリコール−n−プロピルエーテル、トリプロピレングリコール−n−イソプロピルエーテル等を挙げることができる。
【0027】
本発明のインクジェット記録用インクセットの基本構成は以上の通りであるが、その他従来公知の各種分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、pH調整剤、防腐防カビ剤等を必要に応じて添加することができる。
なお、本発明のインクジェット記録用インクセットを熱エネルギーの作用によってインクを吐出させるタイプのインクジェット方式に適用する場合には、例えば、比熱、熱膨張係数、熱電導率等の熱的な物性値が調整されることもある。
【0028】
以上のように、本発明のインクジェット記録用インクセットは、従来技術の問題点が充分に解決されており、染料の析出等を引き起こすことなく、インクジェット方式におけるカラーブリードを低減できることから、普通紙においても鮮明なカラー記録を与えることができる。
【0029】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
下記の組成のインクを調製した。なお、ブラックインク顔料については、あらかじめミルベースを作製し、このミルベースに対してグリセリンや純水の量を調整して設計したインク組成に調合した。
<ブラックインク組成>
顔料(三菱化学社製、MA100) 5重量%
アニオン分散剤
(BYK Chemie社製、Dysperbyk190) 0.7重量%
グリセリン 25重量%
トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル 2重量%
純水 67.3重量%
【0031】
<シアンインク組成>
トリエタノールアミン塩酸塩 3重量%
C.I.ダイレクトブルー199 2重量%
グリセリン 27重量%
トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル 2重量%
純水 66重量%
【0032】
<マゼンタインク組成>
トリエタノールアミン塩酸塩 3重量%
C.I.ダイレクトレッド227 2重量%
グリセリン 29重量%
トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル 2重量%
純水 64重量%
【0033】
<イエローインク組成>
トリエタノールアミン塩酸塩 3重量%
C.I.ダイレクトイエロー142 2重量%
グリセリン 25重量%
トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル 2重量%
純水 68重量%
【0034】
(実施例2)
実施例1と同様にミルベースを作製して、ブラックインクの材料とした。
<ブラックインク組成>
顔料(デグサ社製、Printex150T) 5重量%
アニオン分散剤
(BYK Chemie社製、Dysperbyk190) 0.7重量%
グリセリン 25重量%
トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル 2重量%
純水 67.3重量%
【0035】
<シアンインク組成>
実施例1のシアンインク組成と同じ組成とした。
<マゼンタインク組成>
実施例1のマゼンタインク組成と同じ組成とした。
<イエローインク組成>
実施例1のイエローインク組成と同じ組成とした。
【0036】
(実施例3)
実施例1と同様にミルベースを作製して、ブラックインクの材料とした。
<ブラックインク組成>
顔料(キャボット社製、Monarch880) 5重量%
アニオン分散剤
(BYK Chemie社製、Dysperbyk190) 0.7重量%
グリセリン 25重量%
トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル 2重量%
純水 67.3重量%
【0037】
<シアンインク組成>
実施例1のシアンインク組成と同じ組成とした。
<マゼンタインク組成>
実施例1のマゼンタインク組成と同じ組成とした。
<イエローインク組成>
実施例1のイエローインク組成と同じ組成とした。
【0038】
(実施例4)
<ブラックインク組成>
顔料(キャボット社製、CAB−O−JET300) 33重量%
グリセリン 25重量%
トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル 2重量%
純水 40重量%
【0039】
<シアンインク組成>
実施例1のシアンインク組成と同じ組成とした。
<マゼンタインク組成>
実施例1のマゼンタインク組成と同じ組成とした。
<イエローインク組成>
実施例1のイエローインク組成と同じ組成とした。
【0040】
(実施例5)
<ブラックインク組成>
顔料(キャボット社製、CAB−O−JET300) 33重量%
ポリエチレングリコール(平均分子量200) 22重量%
トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル 2重量%
純水 43重量%
【0041】
<シアンインク組成>
チオエタノールアミン塩酸塩 5重量%
C.I.アシッドブルー9 2重量%
ポリエチレングリコール(平均分子量200) 25重量%
トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル 2重量%
純水 66重量%
【0042】
<マゼンタインク組成>
チオエタノールアミン塩酸塩 5重量%
C.I.アシッドレッド52 2重量%
ポリエチレングリコール(平均分子量200) 27重量%
トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル 2重量%
純水 64重量%
【0043】
<イエローインク組成>
チオエタノールアミン塩酸塩 5重量%
C.I.アシッドイエロー23 2重量%
ポリエチレングリコール(平均分子量200) 23重量%
トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル 2重量%
純水 68重量%
【0044】
(実施例6)
<ブラックインク組成>
顔料(キャボット社製、CAB−O−JET200) 25重量%
ポリエチレングリコール(平均分子量200) 23重量%
トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル 2重量%
純水 50重量%
【0045】
<シアンインク組成>
モノエタノールアミン塩酸塩 1重量%
ジエタノールアミン塩酸塩 2重量%
C.I.ダイレクトブルー199 2重量%
グリセリン 28重量%
トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル 2重量%
純水 65重量%
【0046】
<マゼンタインク組成>
モノエタノールアミン塩酸塩 1重量%
ジエタノールアミン塩酸塩 2重量%
C.I.ダイレクトレッド227 2重量%
グリセリン 30重量%
トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル 2重量%
純水 63重量%
【0047】
<イエローインク組成>
モノエタノールアミン塩酸塩 1重量%
ジエタノールアミン塩酸塩 2重量%
C.I.ダイレクトイエロー142 2重量%
グリセリン 26重量%
トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル 2重量%
純水 67重量%
【0048】
(比較例1)
ブラックインクは実施例1と同じ組成とし、シアン、マゼンタ、イエローインクは、トリエタノールアミン塩酸塩を添加しないで、全体が100重量%になるように純水量を調整したこと以外は実施例1と同様にしてインクを作製した。
【0049】
(比較例2)
顔料(デグサ社製、Printex150T)、アニオン分散剤(BYK Chemie社製、Dysperbyk190)の代りに、C.I.ダイレクトブラック154を2重量%添加して、全体が100重量%になるように純水量を調整したこと以外は実施例2と同様にしてインクを作製した。
【0050】
(比較例3)
顔料(キャボット社製、Monarch880)、アニオン分散剤(BYK Chemie社製、Dysperbyk190)の代りに、C.I.ダイレクトブラック19を2重量%添加して、全体が100重量%になるように純水量を調整し、シアン、マゼンタ、イエローインクは、トリエタノールアミン塩酸塩を添加しないで、全体が100重量%になるように純水量を調整したこと以外は実施例3と同様にしてインクを作製した。
【0051】
(性能評価)
実施例1〜6及び比較例1〜3のインクジェット記録用インクセットそれぞれについて各材料を充分に混合攪拌した後、0.8μmのメンブランフィルタで濾過して記録評価に使用した。
【0052】
これらのインクジェット記録用インクセットを用いて、記録ヘッド内のインクに熱エネルギーを与えて液滴を吐出させることで記録を行うオンデマンドタイプのマルチヘッド(吐出オリフィス径35μm、発熱抵抗体抵抗値150Ω、駆動電圧30V、周波数2kHz)を有するインクジェットプリンタにより記録した。記録サンプルはブラックインクとカラーインクとをそれぞれ文字色と背景色になるように組み合わせて記録した。色の混ざり合う境界面のカラーブリードと記号の判別を評価対象とし、各色背景なしで記号○及び記号□を記録し、これを評価の基準となる記録サンプルとした。記録した記号の大きさはMicrosoftWord97を用いてサイズを11ポイントに設定し、普通紙(Xerox4200)に記録した。
【0053】
記録サンプルの評価方法を以下に示す。背景なしで記録した記録サンプルと比較して、背景有りにしたとき、記録サンプルにおいてどの程度のカラーブリードが発生しているかを目視評価した。評価基準は以下の通りである。
【0054】
◎:カラーブリードがほとんどなく、背景なしの記号と比較して同程度の鮮明さがある。
○:背景なしの記号と比較して僅かなカラーブリードが発生しているが、記号は充分に判断できる。
△:背景なしの記号と比較して明らかにカラーブリードが発生しているが、記号は判読できる。
×:背景なしの記号と比較して明らかにカラーブリードが発生し、記号の判読も困難である。
−:印字実験中止。
表1に結果を示した。
【0055】
【表1】
Figure 0004224960
【0056】
表1に示した通り、各比較例で作製したインクジェット記録用インクセットを用いた記録が不鮮明な印字結果であるのに対し、各実施例で作製したインクジェット記録用インクセットを用いた記録はカラーブリードが抑えられ、良好な印字結果であった。
【0057】
比較例1で作製したインクジェット記録用インクセットを用いた記録では、カラーインクにモノエタノールアミン塩酸塩、ジエタノールアミン塩酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩、チオエタノールアミン塩酸塩の何れも含まないため、ブラックインクとカラーインクが隣接して記録された場合において顔料凝集が起こらず、結果としてカラーブリードを低減できなかった。
【0058】
比較例2で作製したインクジェット記録用インクセットを用いた記録では、ブラックインク中にアニオン性付加顔料でない着色剤が使用されている為、ブラックインクとカラーインクが隣接して記録された場合において顔料凝集が起こらず、結果としてカラーブリードを低減できなかった。
【0059】
比較例3で作製したインクジェット記録用インクセットを用いた記録では、ブラックインク中にアニオン付加性顔料でない着色剤が使用されており、カラーインクにモノエタノールアミン塩酸塩、ジエタノールアミン塩酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩、チオエタノールアミン塩酸塩の何れも含まない為、ブラックインクとカラーインクが隣接して記録された場合において顔料凝集が起こらず、結果としてカラーブリードを低減できなかった。
【0060】
【発明の効果】
本発明は、上述の構成よりなるので、カラーインク中の染料の析出等を引き起こすことなく、ブラックインクとカラーインクの隣接部分でのカラーブリードを低減し、鮮明なカラー記録ができるインクジェット記録用インクセットを提供することができる。

Claims (2)

  1. 複数色のインクから構成されるインクジェット記録用インクセットであって、下記(A)の組成を有するインク及び下記(B)の組成を有するインクを少なくともそれぞれ1種ずつ含むことを特徴とするインクジェット記録用インクセット。
    (A)アニオン性ポリマーで水分散性が付与された顔料、アニオン性界面活性剤で水分散性が付与された顔料、並びに、表面にカルボキシル化及び/又はスルホン化官能基からなるように化学処理が施されることで水分散性が付与された顔料からなる群より選択される少なくとも1種の顔料を含むインク。
    (B)少なくとも1種のアニオン染料、並びに、モノエタノールアミン塩酸塩、ジエタノールアミン塩酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩、及び、チオエタノールアミン塩酸塩からなる群より選択される少なくとも1種のエタノールアミン塩酸塩を含むインク。
  2. (A)の組成を有するインクはブラックインクであり、(B)の組成を有するインクはカラーインクであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用インクセット。
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