JP4223820B2 - ポリエステル樹脂分散液の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機溶剤中に結晶性ポリエステル樹脂を分散してなるポリエステル樹脂分散液の製造方法に関するものであり、該製造方法により得られるポリエステル樹脂分散液を用いた被覆用樹脂組成物に関するものであり、該被覆用樹脂組成物を用いて得られる缶体及び缶体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術およびその課題】
従来、缶内面被覆用樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有するものが多く用いられてきた。しかしながら、近年、外因性内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)の一つとしてビスフェノールAが挙げられたことにより、塗膜からビスフェノールAが溶出しない塗料の開発が強く望まれるようになってきた。
【0003】
エポキシ樹脂に代わるものとしてポリエステル樹脂が検討されてきたが、缶内面用被膜に要求される、硬度、密着性、防食性、風味保持性などの厳しい塗膜性能を満足させることは容易ではなく、PET樹脂に代表されるような高結晶性ポリエステル樹脂を使いこなすことが重要になってきた。
【0004】
また、近年樹脂被覆缶体の製造コスト削減及び成形加工後のプレスオイルの処理の問題から、金属板を缶状に成形加工してから塗装を行うポストコート方式から、予め塗装が施された金属平板を缶状に成形加工するプレコート方式に替わってきており、硬度と加工性を兼ね備えた高結晶性ポリエステル樹脂の塗料への利用が要望されている。
【0005】
結晶性ポリエステル樹脂を利用する方法としては、ポリエステルフィルムを使用することが検討されており、例えば、2軸延伸した熱可塑性フィルムを直接、あるいは接着剤を介して、金属板に熱ラミネートする方法(例えば、特開特許文献1、特許文献2等参照。)、樹脂を熱溶融させ、金属板上に直接押出しラミネートする方法(例えば、特許文献3等参照。)などが開示されており一部実用化されている。
【0006】
しかしながら、フィルムラミネートを利用するためには新たな設備投資を必要とするだけでなく、フィルムラミネート法は塗装に比較して作業性が劣るため、このような結晶性ポリエステル樹脂を利用した塗料の開発が望まれているが、結晶性ポリエステル樹脂は一般に溶剤への溶解性が低く、また、貯蔵中に結晶が析出してくるなどの問題があり、結晶性ポリエステル樹脂をそのまま塗料に応用するには、多くの問題があった。このような問題を解決するための一方法として、有機溶剤に可溶な非結晶ポリエステル樹脂と融点90〜180℃の結晶性ポリエステル樹脂を加熱して溶融混合し、有機溶剤中に溶解または分散する方法が開示されている(例えば特許文献4等参照。)。しかしながら、該方法では限界があり、缶内面用塗料などに必要な融点が190℃を超えるような結晶性の高いポリエステル樹脂を用いた場合には製造時又は溶液貯蔵時に結晶が大きく成長してしまい、溶液が大きく増粘又は粒子が沈降して凝集するという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、結晶性ポリエステル樹脂を用いた製造安定性および貯蔵安定性の優れたポリエステル樹脂分散液の製造方法を提供することである。
【0008】
【特許文献1】
特開昭56−10451号公報
【特許文献2】
特開昭57−65463号公報
【特許文献3】
特開昭51−17988号公報
【特許文献4】
特開平4−164957号公報
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、ポリエステル樹脂溶液を冷却して結晶を析出させる工程において、結晶性ポリエステル樹脂の昇温結晶開始温度からガラス転移温度まで、樹脂溶液を急速に冷却させることにより、細かくて安定なポリエステル樹脂分散液が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして本発明は、結晶性ポリエステル樹脂(A)及び非結晶性ポリエステル樹脂(B)を有機溶剤(C)中に加熱、溶解させた後、該樹脂溶液を結晶性ポリエステル樹脂(A)の昇温結晶開始温度以上の温度から結晶性ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度以下の温度まで毎分2℃以上のスピードで急冷することを特徴とするポリエステル樹脂分散液の製造方法を提供するものである。
【0011】
本発明はまた、上記製造方法により得られるポリエステル樹脂分散液を用いた被覆用樹脂組成物を提供するものである。
【0012】
本発明はさらに、上記被覆用樹脂組成物を用いた缶体、及び缶体の製造方法を提供するものである。
【0013】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエステル樹脂分散液の製造方法は、有機溶剤中に結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂が溶解された高温の樹脂溶液を急冷して結晶性ポリエステル樹脂の結晶を析出させるものである。
【0015】
結晶性ポリエステル樹脂(A)
ポリエステル樹脂分散液の(A)成分である結晶性ポリエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とのエステル化物からなるものである。
【0016】
多塩基酸成分としては、例えば無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ヘキサンジカルボン酸などから選ばれる1種以上の二塩基酸及びこれらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられ、必要に応じて安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などが併用される。
【0017】
多価アルコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ブチルエチルプロパンジオールなどの二価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。両成分のエステル化又はエステル交換反応は、それ自体既知の方法によって行うことができる。
【0018】
結晶性ポリエステル樹脂は、上記原料の内、酸成分としてテレフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸を主に使用し、多価アルコール成分としてエチレングリコール及び1,4−ブタンジオールを主に使用することにより得ることができるが、特にテレフタル酸とエチレングリコールを主に用いたポリエチレンテレフタレート系樹脂が好適である。
【0019】
本発明で使用する結晶性ポリエステル樹脂は、融点が190℃〜260℃、好ましくは200℃〜255℃、昇温結晶開始温度が150℃以上、好ましくは155℃〜195℃の範囲内のものが適している。結晶性ポリエステル樹脂の昇温結晶開始温度が低いとレトルト殺菌時の熱で結晶化が進み膜が白化する傾向にあり、また、結晶性ポリエステル樹脂の融点が低いと皮膜の収着性及びバリア性が低下し、融点が高過ぎると造膜性が低下する。
【0020】
なお、結晶性ポリエステル樹脂の融点および昇温結晶開始温度の測定は示査走査型熱量計(島津製作所)を用いて行った。
【0021】
結晶性ポリエステル樹脂の市販品としては、例えばIFG8L、TG7N10、IP051(以上、カネボウ合繊社製)、KF−511(三菱レイヨン社製)などが挙げられる。
【0022】
非結晶性ポリエステル樹脂(B)
ポリエステル樹脂分散液の(B)成分である非結晶性ポリエステル樹脂は、示査走査型熱量計による測定において明確な融点がないものであり、常温で有機溶剤に溶解しやすい。
【0023】
非結晶性ポリエステル樹脂は結晶性ポリエステル樹脂と同様、多塩基酸成分と多価アルコール成分を反応させることにより得られ、原料となる多塩基酸成分及び多価アルコール成分は上記結晶性ポリエステル樹脂の成分として列挙したものと同様のものを使用することができる。
【0024】
ポリエステル樹脂の結晶性は、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂の場合、酸成分であるテレフタル酸をイソフタル酸など他の酸成分に一部置き換えていくことにより、また、多価アルコールであるエチレングリコールをジエチレングリコールなど他のアルコール成分に一部置き換えていくことにより低下させ、なくすことができる。
【0025】
非結晶性ポリエステル樹脂の市販品としては、例えばUE−3201、UE−3203、XA−0653(以上、ユニチカ社製)、GK−880、GK−640(以上、東洋紡績社製)などが挙げられる。
【0026】
結晶性ポリエステル樹脂(A)と非結晶性ポリエステル樹脂(B)との配合比率は、重量比で(A)/(B)=60/40〜5/95、特に40/60〜10/90の範囲内が、ポリエステル樹脂分散液から得られる皮膜の耐レトルト性、耐食性などの点から好ましい。
【0027】
有機溶剤(C)
本発明のポリエステル樹脂分散液の製造方法に用いられる有機溶剤(C)は上記非結晶性ポリエステル樹脂を溶解できるものであれば使用することができるが、有機溶剤(C)中の50重量%以上は、沸点が150℃〜220℃の水酸基を含有しない有機溶剤、特にN−メチル−2−ピロリドンであることがポリエステル樹脂分散液の製造安定性の面から好ましい。
【0028】
N−メチル−2−ピロリドン以外の沸点が150℃〜220℃の水酸基を含有しない有機溶剤としては、例えばイソホロン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、DBE(デュポン社製、アジピン酸ジメチル、グルタール酸ジメチル、コハク酸ジメチルの混合溶剤)等のエステル系溶剤などが挙げられる。
【0029】
ポリエステル樹脂分散液の製造方法
(A)結晶性ポリエステル樹脂及び(B)非結晶性ポリエステル樹脂を有機溶剤中に加熱、溶解させた後、得られる溶液を冷却していくとポリエステル樹脂が結晶化し、析出する。一般にタンクなどで製造される場合における冷却は毎分0.1〜1℃程度のゆっくりしたものであるが、融点が高く、結晶性の高いポリエステル樹脂を用いた場合、析出したポリエステル粒子の径が大きくなり、分散液の貯蔵性や分散液使用塗料から得られる塗膜の平滑性が著しく低下してしまう。
【0030】
本発明の製造方法は上記問題を解決したものであり、結晶性ポリエステル樹脂(A)の昇温結晶開始温度以上の温度から結晶性ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度以下の温度まで毎分2℃以上のスピードで急冷することが重要となる。
【0031】
製造装置としては、ポリエステル樹脂を加熱、溶解する装置と、溶液を急冷できる装置があればよい。
【0032】
ポリエステル樹脂分散液の製造は、まず、溶剤中に結晶性ポリエステル樹脂(A)と非結晶性ポリエステル樹脂(B)が溶解された高温の樹脂溶液を作成する。樹脂溶液の製造手順には特に制限はなく、例えば
▲1▼溶剤とペレット状の結晶性ポリエステル樹脂(A)を混合し、攪拌しながら加熱、溶解し、その後非結晶性ポリエステル樹脂(B)を添加する方法。
▲2▼溶剤、非結晶性ポリエステル樹脂(B)及び結晶性ポリエステル樹脂(A)を全て混合した後、加温、溶解する方法、
▲3▼加温した非結晶性ポリエステル樹脂(B)を溶解した溶液中に結晶性ポリエステル樹脂(A)を徐々に添加する方法、
などがある。結晶性ポリエステル樹脂(A)の溶解は、有機溶剤の中では必ずしも樹脂の融点温度まで上げる必要はなく、樹脂の昇温結晶開始温度より高い温度であれば作業性に問題のない範囲でできるだけ低い方が、熱によるポリエステル樹脂の分解を避けるためには好適である。同様に樹脂の分解を避けるため非結晶性ポリエステル樹脂(B)の添加は遅い方が好ましく、上記▲1▼の製造方法が特に好ましい。
【0033】
ポリエステル樹脂の溶解後はできるだけ速やかに本発明の冷却条件に従って冷却する。同一装置(例えばタンク)内で加熱、溶解及び冷却を全て行う場合には、冷却性能に非常に優れた装置を用いるか、仕込み量を減らして上記冷却条件に合うところを選択することが必要である。また、冷却工程を加熱、溶解装置とは別にして急冷させる方法を取ることもでき、例えば、あらかじめ冷却したタンクや冷却装置付き管内に加熱、溶解したポリエステル樹脂溶液を搬入する方法などを挙げることができる。
【0034】
さらに、有機溶剤(C)の一部を冷却に廻し、冷却時に添加することで冷却の補助的手段として利用することもできる。
【0035】
結晶性ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度以下の温度まで冷却したら、それ以後の冷却速度に特に制限はない。
【0036】
上記のようにして得られたポリエステル樹脂分散液は単独で、もしくは他の有機樹脂、架橋剤、添加剤(硬化触媒、潤滑性付与剤、消泡剤、レベリング剤、凝集防止剤など)、顔料(有機顔料、無機顔料、光輝性顔料、体質顔料、防錆顔料など)、有機溶剤など通常公知の被覆組成物用原料と組み合わせることにより、硬度、加工性、密着性、耐食性などに優れた被覆用組成物を得ることができ、中でも缶内面被覆用として特に優れた性能を発揮する。以下、本発明方法で得られたポリエステル樹脂分散液を使用した被覆用樹脂組成物について説明する。
【0037】
被覆用樹脂組成物
本発明方法で得られたポリエステル樹脂分散液は単独で用いることもできるが、レゾール型フェノール樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂などポリエステル樹脂以外の樹脂を組み合わせることにより耐レトルト性、密着性、フレーバー性などをさらに向上させることができ、組み合わせる樹脂としては中でもレゾール型フェノール樹脂及びエポキシ樹脂が好ましい。
【0038】
上記レゾール型フェノール樹脂はポリエステル樹脂の架橋剤として用いるものであり、該レゾール型フェノール樹脂を用いる場合には、ポリエステル樹脂分散液を構成する結晶性ポリエステル樹脂(A)及び非結晶性ポリエステル樹脂(B)の少なくとも一方、特に非結晶性ポリエステル樹脂(B)が水酸基価5〜100mgKOH/g、好ましくは10〜50mgKOH/g程度の水酸基を持っていることが好ましい。
【0039】
また、レゾール型フェノール樹脂は、特にフェノール成分とホルムアルデヒド類とを反応触媒の存在下で加熱して縮合反応させてメチロール基を導入して得られるメチロール化フェノール樹脂のメチロール基の一部をアルコールでアルキルエーテル化してなるものが好ましい。
【0040】
レゾール型フェノール樹脂架橋剤の製造においては、出発原料である上記フェノール成分として、2官能性フェノール化合物、3官能性フェノール化合物、4官能性以上のフェノール化合物などを使用することができる。
【0041】
レゾール型フェノール樹脂架橋剤の製造に用いられる2官能性フェノール化合物としては、o−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−エチルフェノール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノールなどの2官能性フェノールなどを挙げることができ、3官能性フェノール化合物としては、フェノール、m−クレゾール、m−エチルフェノール、3,5−キシレノール、m−メトキシフェノールなどが挙げられ、4官能性フェノール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどを挙げることができる。これらのフェノール化合物は1種で、又は2種以上混合して使用することができる。
【0042】
レゾール型フェノール樹脂の製造に用いられるホルムアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド又はトリオキサンなどが挙げられ、1種で、又は2種以上混合して使用することができる。
【0043】
メチロール化フェノール樹脂のメチロール基の一部をアルキルエーテル化するのに用いられるアルコールとしては、炭素原子数1〜8個、好ましくは1〜4個の1価アルコールを好適に使用することができる。好適な1価アルコールとしてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどを挙げることができる。
【0044】
レゾール型フェノール樹脂の配合量は、結晶性ポリエステル樹脂(A)と非結晶性ポリエステル樹脂(B)との合計固形分量100重量部に基いて0.5〜20重量部、好ましくは5〜15重量部の範囲内が硬化性と加工性とのバランスの観点から適している。
【0045】
上記被覆用組成物には硬化反応を促進するため酸触媒を必要に応じて添加することができる。例えば、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、燐酸などの酸触媒又はこれらの酸のアミン中和物などを具体例として挙げることができる。なかでも上記スルホン酸化合物又はスルホン酸化合物のアミン中和物が好適である。
【0046】
酸触媒の配合量は、得られる塗膜の物性などの点から、酸量(例えば、スルホン酸化合物のアミン中和物の場合は、この中和物からアミンを除去した残りのスルホン酸化合物量)として結晶性ポリエステル樹脂(A)と非結晶性ポリエステル樹脂(B)との合計固形分量100重量部に基いて0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜2重量部の範囲内が適している。
【0047】
上記エポキシ樹脂は、ポリエステル樹脂がカルボキシル基を含有している場合にはその架橋剤として有効に作用するが、ポリエステル樹脂がカルボキシル基を持っていない場合にもポリエステル樹脂の補強材又は上記レゾール型フェノール樹脂と架橋することによる造膜成分として有効に作用する。
【0048】
エポキシ樹脂を添加することで硬度、密着性、耐レトルト性などが向上するが、中でもノボラック型エポキシ樹脂が環境ホルモンの疑いをもたれているビスフェノールAを含有していないため好ましい。ノボラック型エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、分子内に多数のエポキシ基を有するフェノールグリオキザール型エポキシ樹脂などの各種のノボラック型エポキシ樹脂を挙げることができる。なかでも塗膜性能のバランスを取り易いフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好適である。
【0049】
エポキシ樹脂をポリエステル樹脂の架橋剤として使用する場合には、ポリエステル樹脂分散液を構成する結晶性ポリエステル樹脂(A)及び非結晶性ポリエステル樹脂(B)の少なくとも一方、特に非結晶性ポリエステル樹脂(B)が酸価5〜30mgKOH/g、好ましくは10〜20mgKOH/gとなる程度のカルボキシル基を持っていることが好ましい。エポキシ樹脂の配合量は、結晶性ポリエステル樹脂(A)と非結晶性ポリエステル樹脂(B)との合計固形分量100重量部に基いて0.5〜20重量部、好ましくは2〜10重量部の範囲内が硬化性と加工性とのバランスの観点から適している。
【0050】
また、エポキシ樹脂をポリエステル樹脂の架橋剤として使用する場合には、硬化反応を促進するため塩基性触媒を必要に応じて添加することができる。例えば塩化コリン、ニコチン酸アミド、酒石酸コリン、コリン水溶液、ジメチルエタノールアミンなどの3級アミンなどを具体例として挙げることができる。なかでも塩化コリン及びニコチン酸アミドが好適である。
【0051】
塩基性触媒の配合量は、得られる塗膜の物性などの点から、結晶性ポリエステル樹脂(A)と非結晶性ポリエステル樹脂(B)との合計固形分量100重量部に基いて0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜1重量部の範囲内が適している。
【0052】
本発明の被覆用樹脂組成物は、缶状に成形された缶体の内面にスプレー等を用いて塗装してもよいが、平面状の金属板にロールコーター、カーテンフローコーター等の公知の塗装方法を用いて塗装、乾燥させた後、該塗装金属板を切断し、缶状に成形加工して缶体を作成してもよい。後者の製造方法を用いる場合、搬送や成形加工時の傷の発生を抑えるため被覆用樹脂組成物にワックスを添加してもよい。
【0053】
ワックスは得られる皮膜の動摩擦係数を調整するために添加されるものであり、高温時の動摩擦係数を調整するためワックスの軟化点としては30℃以上、好ましくは33〜150℃の範囲内にあるものが適しており、例えば、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリオレフィンワックス、動物系ワックス、植物系ワックスなどのワックス類を挙げることができる。
【0054】
上記脂肪酸エステルワックスの原料となるポリオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3−又は1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、ジ又はそれ以上のポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどを挙げることができる。これらのうち、1分子中に3個以上の水酸基を有するポリオール化合物が好ましく、中でもポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好適である。
【0055】
上記脂肪酸エステルワックスのもう一方の原料となる脂肪酸としては、飽和又は不飽和の脂肪酸を挙げることができ、炭素原子数6〜32の脂肪酸であることが好ましい。好適な脂肪酸の具体例としては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などの飽和脂肪酸;カプロレイン酸、ウンデシレン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、セトレイン酸、エルカ酸、リカン酸、リシノール酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸を挙げることができる。脂肪酸エステルワックスとしては、上記ポリオール化合物の水酸基の数の少なくとも1/3が脂肪酸でエステル化されたものが好ましい。
【0056】
シリコン系ワックスとしては、例えば、BYK−300、BYK−320、BYK−330[以上、BYKChemie(ビックケミー)社製]、シルウェットL−77、同L−720、同L−7602[以上、日本コニカー(株)製]、ペインタッド29、同32、同M[以上、ダウコーニング社製]、信越シリコーンKF−96[信越化学社製]等が挙げられ、また、フッ素系ワックスとしては、例えば、シャムロックワックスSST−1MG、同SST−3、同フルオロスリップ231[以上、シャムロックケミカルズ社製]、POLYFLUO(ポリフルオ)120、同150、同400[マイクロパウダーズ社]等が挙げられる。
【0057】
ポリオレフインワックスとしては、例えば、シャムロックワックスS−394、同S−395[以上、シャムロックケミカルズ社製]、ヘキストワックスPE−520、同PE−521[以上、ヘキスト社製]、三井ハイワックス[三井石油化学工業社製]等が挙げられ、さらに、動物系ワックスとしては、例えば、ラノリン、蜜ろう等が挙げられ、植物系ワックスとしては、例えば、カルナウバワックス、水ろう等が挙げられる。
【0058】
ワックスは1種で又は2種以上組み合わせて用いることができ、その添加量は、被覆用樹脂組成物中の樹脂成分の固形分合計量100重量部に基いて0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜2重量部の範囲内が適している。
【0059】
被覆用組成物を缶内面用に使用する場合の塗布量としては、乾燥塗布量で50〜180mg/100cm2、好ましくは85〜150mg/100cm2の範囲であることが好ましい。塗膜の焼付け条件は、通常、金属板の最高到達温度が、約190〜300℃の温度となる条件で約15秒〜約30分間程度である。
【0060】
上記缶の素材としては、例えば無処理鋼板、錫メッキ鋼板、亜鉛メッキ鋼板、クロムメッキ鋼板、リン酸塩処理鋼板、クロム酸塩処理鋼板、無処理アルミニウム板、クロム酸塩処理アルミニウム板などの金属素材を挙げることができる。
【0061】
本発明の被覆用組成物を金属平板に塗装、乾燥させた後、切断、缶状に成形加工する缶体の製造方法においては、成形された缶体の内面にさらにスプレー等で缶内面用塗料を塗装してもよい。該缶内面用塗料としては、従来公知のものを用いることができ、また、本発明の被覆用組成物を用いてもさしつかえない。このように缶状に成型後に缶内面用塗料をさらに塗装することにより、成形時等にできた傷等を保護することができ、耐レトルト性等を大幅に向上させることができる。また、成型後に缶内面用塗料をさらに塗装する場合には、本発明の被覆用樹脂組成物の金属平板への塗装膜厚を低く抑えることが経済性の面から好ましく、経済性と塗膜の潤滑性の観点から乾燥塗布量で10〜85mg/100cm2、特に15〜60mg/100cm2程度が適している。
【0062】
上記、成型後に塗装する缶内面用塗料は溶剤型塗料、水性塗料等特に制限なく用いることができ、その膜厚は傷部を補修できる程度の薄いものでよい。
【0063】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも重量基準によるものとする。
【0064】
ポリエステル樹脂分散液の製造
実施例1
結晶性ポリエステル樹脂KF511(三菱レイヨン社製、結晶性ポリエステル樹脂、Tg60℃、Tc[昇温結晶開始温度]156℃、Tm[融点]214℃)6部及びN−メチル−2−ピロリドン24部を冷却管をつけた窒素ガス置換した4つ口フラスコに仕込み、攪拌翼により攪拌しながらマントルヒーターで約200℃まで加温しKF511を完全に溶解した。次に加熱を止め、DBE(デュポン社製、アジピン酸ジメチル、グルタール酸ジメチル、コハク酸ジメチルの混合溶剤)46部を滴下した後、非結晶性ポリエステル樹脂GK880(東洋紡績社製、非結晶性ポリエステル樹脂、Tg84℃)24部を仕込み完全に溶解するまで攪拌し160℃まで冷却した。この溶液を冷却開始温度160℃から冷却終了温度55℃まで5℃/分の速度で冷却し、固形分30%、粒子径約5μmのポリエステル樹脂分散液R1を得た。ポリエステル樹脂分散液は20℃で1ヶ月貯蔵しても沈殿や増粘はみられず安定であった。
【0065】
実施例2
実施例1において冷却開始温度160℃から冷却終了温度55℃までを3℃/分の速度で冷却する以外は実施例1と同様にして、固形分30%、粒子径約5μmのポリエステル樹脂分散液R2を得た。ポリエステル樹脂分散液は20℃で1ヶ月貯蔵しても沈殿や増粘はみられず安定であった。
【0066】
実施例3
実施例1において冷却開始温度を180℃にする以外は実施例1と同様にして、固形分30%、粒子径約5μmのポリエステル樹脂分散液R3を得た。ポリエステル樹脂分散液は20℃で1ヶ月貯蔵しても沈殿や増粘はみられず安定であった。
【0067】
実施例4
実施例1においてDBEの替わりにイソホロンを使用する以外は実施例1と同様にして、固形分30%、粒子径約5μmのポリエステル樹脂分散液R4を得た。ポリエステル樹脂分散液は20℃で1ヶ月貯蔵しても沈殿や増粘はみられず安定であった。
【0068】
実施例5
実施例1においてDBE46部の替わりにDBE23部及びソルベッソ100(エクソンモービル社製、芳香族系炭化水素溶剤)23部を使用する以外は実施例1と同様にして、固形分30%、粒子径約5μmのポリエステル樹脂分散液R5を得た。ポリエステル樹脂分散液は20℃で1ヶ月貯蔵しても沈殿や増粘はみられず安定であった。
【0069】
実施例6
実施例1においてDBE46部の替わりにDBE11部及びメチルエチルケトン35部を使用する以外は実施例1と同様にして、固形分30%、粒子径約5μmのポリエステル樹脂分散液R6を得た。ポリエステル樹脂分散液は20℃で1ヶ月貯蔵しても沈殿や増粘はみられず安定であった。
【0070】
実施例7
実施例1においてN−メチル−2−ピロリドン24部の替わりにイソホロン24部を使用する以外は実施例1と同様にして、固形分30%、粒子径約5μmのポリエステル樹脂分散液R7を得た。ポリエステル樹脂分散液は20℃で1ヶ月貯蔵しても沈殿や増粘はみられず安定であった。
【0071】
実施例8
結晶性ポリエステル樹脂TG7N10(カネボウ合繊社製、結晶性ポリエステル樹脂、Tg79℃、Tc190℃、Tm230℃)6部及びN−メチル−2−ピロリドン24部を冷却管をつけた窒素ガス置換した4つ口フラスコに仕込み、攪拌翼により攪拌しながらマントルヒーターで約220℃まで加温しTG7N10を完全に溶解した。次に加熱を止め、DBE46部を滴下した後、非結晶性ポリエステル樹脂UE3201(ユニチカ社製、非結晶性ポリエステル樹脂、Tg65℃)24部を仕込み完全に溶解するまで攪拌し195℃まで冷却した。この溶液を冷却開始温度195℃から冷却終了温度75℃まで5℃/分の速度で冷却し、固形分30%、粒子径約5μmのポリエステル樹脂分散液R8を得た。ポリエステル樹脂分散液は20℃で1ヶ月貯蔵しても沈殿や増粘はみられず安定であった。
【0072】
実施例9
結晶性ポリエステル樹脂KF511を17部、非結晶性ポリエステル樹脂UE3203(ユニチカ社製、非結晶性ポリエステル樹脂、Tg60℃)13部、N−メチル−2−ピロリドン24部及びDBE46部を冷却管をつけた窒素ガス置換した4つ口フラスコに仕込み、攪拌翼により攪拌しながらマントルヒーターで190℃まで加温し樹脂が溶解するまで攪拌した。この溶液を冷却開始温度190℃から冷却終了温度55℃まで4℃/分の速度で冷却し、固形分30%、粒子径約5μmのポリエステル樹脂分散液R9を得た。ポリエステル樹脂分散液は20℃で1ヶ月貯蔵しても沈殿や増粘はみられず安定であった。
【0073】
実施例10
実施例1において非結晶性ポリエステル樹脂GK880の替わりにXA−0653(ユニチカ社製、非結晶性ポリエステル樹脂、Tg58℃、酸価20mgKOH/g)を使用する以外は実施例1と同様にして、固形分30%、粒子径約5μmのポリエステル樹脂分散液R13を得た。ポリエステル樹脂分散液は20℃で1ヶ月貯蔵しても沈殿や増粘はみられず安定であった。
【0074】
比較例1
実施例1において冷却開始温度160℃から冷却終了温度55℃までを1℃/分の速度で冷却する以外は実施例1と同様にして、固形分30%、粒子径約20μmのポリエステル樹脂分散液R10を得た。ポリエステル樹脂分散液は20℃で1ヶ月貯蔵すると沈殿物がみられた。
【0075】
比較例2
実施例1において冷却開始温度160℃から冷却終了温度55℃までを、160℃から80℃まで5℃/分、80℃から55℃までを1℃/分の速度で冷却する以外は実施例1と同様にして、固形分30%、粒子径約10μmのポリエステル樹脂分散液R11を得た。ポリエステル樹脂分散液は20℃で1ヶ月貯蔵すると沈殿物がみられた。
【0076】
比較例3
実施例1において冷却開始温度160℃から冷却終了温度55℃までを、160℃から120℃まで1℃/分、120℃から55℃までを5℃/分の速度で冷却する以外は実施例1と同様にして、固形分30%、粒子径約15μmのポリエステル樹脂分散液R12を得た。ポリエステル樹脂分散液は20℃で1ヶ月貯蔵すると沈殿物がみられた。
【0077】
比較例4
実施例1において結晶性ポリエステル樹脂KF511の配合量を6部から21部へ、また、非結晶性ポリエステル樹脂GK880の配合量を24部から9部に変更する以外は実施例1と同様にして製造したところ、ペースト状となり、分散液は得られなかった。
【0078】
被覆用樹脂組成物(缶内面用)
実施例11〜22及び比較例5〜9
攪拌機を有する容器に後記表1に示す配合表に従って各原料を配合し、各缶内面被覆用樹脂組成物を作成した。
【0079】
塗装板の作成方法
上記各缶内面被覆用樹脂組成物を、No.5052アルミ板に乾燥塗膜重量が100cm2当たり120mgとなるようにバーコータ塗装し、アルミ板が20秒で270℃に達する条件で焼き付け乾燥させ各塗装板を作成した。
【0080】
上記塗装板の作成方法で得た各塗装板について、塗面状態、付着性、加工性、香料収着性、耐レトルト性、耐腐食性について下記試験方法に従って評価した。
【0081】
試験方法
塗面状態;塗装板の塗面を目視観察し、下記の基準によって評価した。
○:塗面全面が滑らか。
△:塗面全面に僅かに凹凸がみられる。
×:塗面全面に大きな凹凸がみられる。
【0082】
付着性;塗装板の塗膜にナイフを使用して約1.5mmの幅で縦、横それぞれ11本の切り目をゴバン目に入れ、24mm幅のセロハン粘着テープを密着させ、強く剥離した時のゴバン目部の塗膜を観察し、以下の基準により評価した。
◎:全く剥離が認められない。
○:僅かな剥離が認められる。
△:かなりの剥離が認められる。
×:著しい剥離が認められる。
【0083】
加工性;塗装板の下部に塗膜面を外側にして180度折曲げ部を設け、特殊ハゼ折り型デュポン衝撃試験機を用いて、この折曲げ部に接触面が平らな重さ1kgの鉄の錘を高さ50cmから落下させた時に生ずる折曲げ部分の塗膜の亀裂の長さを測定し、以下の基準で評価した。
○:5mm未満。
△:5mm以上で10mm未満。
×:10mm以上。
【0084】
香料収着性;脱イオン水中に、d−リモネン溶液30mg/lをS−1170(三菱化学社製ショ糖脂肪酸エステル)1g/lで分散した液に塗装板を浸漬し、35℃で1ヶ月貯蔵した。貯蔵後、塗膜に収着したd−リモネンを、20℃−1週間かけてジエチルエーテルで抽出し、ガスクロマトグラフィーにより収着量を測定して、以下の基準で評価した。
○:塗膜重量120mg当たり0.6mg未満。
△:塗膜重量120mg当たり0.6mg以上1.6mg未満。
×:塗膜重量120mg当たり1.6mg以上。
【0085】
耐レトルト性:塗装板をオートクレーブ中、125℃の脱イオン水に35分間浸漬し引上げた後、塗膜の白化状態を観察し以下の基準により評価した。
○:塗膜に僅かな白化が認められる。
△:塗膜にかなりの白化が認められる。
×:塗膜に著しい白化が認められる。
【0086】
耐腐食性:密栓できる容器に入れた10%パインジュース中に、裏面が腐食しないようにテープ等で被覆した塗装板を浸漬し、密栓して35℃で1ケ月間保存後、塗面の腐食の状態を観察し、以下の基準により評価した。
○:腐食が認められない。
△:腐食がかなり認められる。
×:腐食が著しい。
【0087】
【表1】
【0088】
表1における各注(*1)〜(*5)の原料は各々下記の内容のものである。(*1)30%GK−880:非結晶性ポリエステル樹脂GK−880 30部をN−メチル−2−ピロリドン24部とDBE46部との混合溶剤に加熱、溶解したもの。
(*2)30%エピコート1009:エピコート1009(ジャパンエポキシレジン社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量3,500、数平均分子量約3,750)30部をメチルエチルケトン45部及びブチルセロソルブ25部の混合溶剤に加温溶解したもの。
(*3)バルカム29−101:BTL SPECIALTY RESINS社製、キシレノール/ホルムアルデヒド型フェノール樹脂、固形分100%。
(*4)サイメル303:三井サイテック社製、メチル化メラミン樹脂、固形分100%。
(*5)ECN1273:旭化成エポキシ社製、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量220。
【0089】
被覆用樹脂組成物(潤滑金属板用)
実施例23及び24並びに比較例10
攪拌機を有する容器に後記表3に示す配合表に従って各原料を配合し、各被覆用樹脂組成物を作成した。
【0090】
試験用塗板の作成
アルミニウム板(板厚0.30mmのアルミニウム合金3004)の両面に、後記表3に示す各被覆用樹脂組成物を乾燥膜厚が50mg/100cm2となるように塗装した後、アルミニウム板温度が270℃に25秒で達する条件で加熱し各塗装板を得た。
【0091】
得られた塗装板について以下に示す試験方法により絞りしごき加工性及び耐腐食性を評価した。得られた結果を後記表3に示す。
【0092】
試験方法
絞りしごき加工性:上記で得られた各塗装板を筒状に成形後、エリクセン社製金属薄板深絞り試験機142型を使用し、ブランク径82mmから下記表2に示す加工条件で1段〜5段に順を追って処理し、最終的に絞り率約37%、しごき率約60%の絞りしごき加工を施した。
【0093】
【表2】
【0094】
その際の絞りしごき加工性を以下の基準で評価した。
○:成形加工できる。
×:素材の破壊などが生じ、最後まで、成形加工できない。
【0095】
耐腐食性:各塗装板について、ブランク打ち抜き、カッピング、D&Iマシンによる絞りしごき(アイロニング)加工及びトリミングを順次施し、缶高さ125mm、外径65mmの缶を成形した。この缶の内面側に、エアレススプレー装置を用い、SJ−6839−009(関西ペイント社製、缶内面用塩化ビニル系塗料)を、乾燥膜厚が約1〜2μmになるように塗装し、200℃に60秒間保持の条件で焼き付けた。さらに、フランジングマシンにより、アルミ蓋を巻き締められるようにフランジ加工を行い最終的に、2ピース缶を作成した。この2ピース缶に10%のパインジュースを98℃でホットパック充填した後アルミ蓋の巻締めを行い、35℃で1ヶ月間保存した後開缶し、内面の腐食状態を観察し、以下の基準により評価した。
○:腐食が認められない。
△:腐食が僅かに認められる。
×:腐食が著しい。
【0096】
【表3】
【0097】
表3における各注(*6)及び(*7)の原料は各々下記の内容のものである。
(*6)CRODALAN SWL:クローダージャパン社製、精製ラノリンワックス、固形分100%、軟化点30〜38℃
(*7)HI−DISPER F−10PC:岐阜セラック製造所社製、カルナバワックス、固形分10%、軟化点81〜86℃
【0098】
【発明の効果】
本発明のポリエステル樹脂分散液の製造方法を用いることにより、溶剤に溶解しない結晶性ポリエステル樹脂を溶剤に均一に分散させることができ、得られたポリエステル樹脂分散液の貯蔵安定性も極めて優れている。また、該ポリエステル樹脂分散液を用いた被覆用組成物を金属素材に塗装することにより、付着性、加工性、香味収着性、レトルト白化性、耐腐食性などに優れた性能を示し、特に缶内面被覆用樹脂組成物として適したものである。
Claims (10)
- 結晶性ポリエステル樹脂(A)及び非結晶性ポリエステル樹脂(B)を結晶性ポリエステル樹脂(A)と非結晶性ポリエステル樹脂(B)との重量比率が(A)/(B)=60/40〜5/95の範囲内で有機溶剤(C)中に加熱、溶解させた後、該樹脂溶液を結晶性ポリエステル樹脂(A)の昇温結晶開始温度以上の温度から結晶性ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度以下の温度まで毎分2℃以上のスピードで急冷することを特徴とするポリエステル樹脂分散液の製造方法。
- 結晶性ポリエステル樹脂(A)の融点が190℃〜260℃の範囲内である請求項1に記載のポリエステル樹脂分散液の製造方法。
- 結晶性ポリエステル樹脂(A)の昇温結晶開始温度が150℃以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂分散液の製造方法。
- 有機溶剤(C)中の50重量%以上が、沸点150℃〜220℃の水酸基を含有しない有機溶剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂分散液の製造方法。
- 沸点150℃〜220℃の水酸基を含有しない有機溶剤がN−メチル−2−ピロリドンである請求項4に記載のポリエステル樹脂分散液の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法により得られるポリエステル樹脂分散液を含有することを特徴とする被覆用樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法により得られるポリエステル樹脂分散液とレゾール型フェノール樹脂及び/又はエポキシ樹脂とを含有してなる被覆用樹脂組成物。
- 被覆用樹脂組成物が、さらに軟化点30℃以上のワックスを含有するものである請求項6又は7に記載の被覆用樹脂組成物。
- 請求項6〜8のいずれか一項に記載の被覆用樹脂組成物を缶の内面側に被覆してなることを特徴とする缶体。
- 金属平板の少なくとも一方の面に、請求項6〜8のいずれか一項に記載の被覆用樹脂組成物よりなる皮膜を形成し、該樹脂被覆金属平板を切断して缶状に成形加工した後、必要に応じて缶の内面にさらに缶内面用塗料を塗布、乾燥してなる缶体の製造方法。
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