JP4223266B2 - クロロホスファゼンオリゴマーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クロロホスファゼンオリゴマーの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、溶媒を用いることなく、触媒の存在下に塩素化リンと塩化アンモニウムを反応させることにより環状クロロホスファゼン3量体を高収率・高選択性で製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ホスファゼンオリゴマーは、一般に「無機ゴム」と称せられるホスファゼンポリマーの原料として知られている。ホスファゼンオリゴマー及びホスファゼンポリマーの各種誘導体は、プラスチック及びその添加剤、ゴム、肥料、医薬等としてその用途は極めて広範囲である。特に、近年、社会的な関心が高まっているノンハロゲン系難燃剤によるプラスチックの難燃化や不燃化という点で、ホスファゼンオリゴマー及びホスファゼンポリマーの誘導体は、その優れた難燃性能、従来のリン酸エステルに比べて低い加水分解性、高耐熱性等、極めて優れた特徴を有しており、難燃・不燃材料への用途が非常に有望である。さらに、これらを添加した樹脂組成物は極めて低い誘電率を示すことから、プリント基板用材料、半導体封子材用材料等、電子材料用途の難燃剤として、その工業化が強く望まれている。
【0003】
クロロホスファゼンオリゴマーは一般的に化学式(1)
【化1】
(式中、mは3以上の整数を表わす。)
で表わすことができ、1834年にリービッヒが窒化リンアミドNP(NH2)2を合成する目的で塩化アンモニウムと五塩化リンを反応させたときに副生成物として見出された化合物である。化学式(1)のm=3である環状クロロホスファゼン3量体は化学式(2)
【0004】
【化2】
で表わすことができ、これはホスファゼンオリゴマーの中でも特に用途が広く、需要が大きいものである。
【0005】
リービッヒによる発見後、ホスファゼンオリゴマーの製造に関して数多くの研究がなされてきたが、現在までに明らかになっているホスファゼンオリゴマーの代表的な合成方法は、リン源として(1)五塩化リンを用いる方法、(2)三塩化リンを用いる方法、(3)白リンを用いる方法、(4)窒化リンを用いる方法、等である。クロロホスファゼンオリゴマー、特に、3量体を高収率で得るための合成方法が精力的に行われているものの、これまでの研究では、その目的は達成できていない。
【0006】
さらに、これらの研究の大部分は、塩素化リンと塩化アンモニウムを、テトラクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系有機溶媒中で反応させることに主眼が置かれており、溶媒を用いない技術に関する検討は少ない。
有機溶媒を用いた反応では、塩素化に安定なハロゲン系溶媒を大量に使用するという問題があり、これに対して、無溶媒下での反応は、有機溶媒、特に、ハロゲン系有機溶媒を用いないため経済上及び環境上好ましく、工業化する上で極めて有利である。
【0007】
溶媒を用いる方法としては、ハロゲン系溶媒中、五塩化リンと塩化アンモニウムとを多価金属化合物触媒の存在下で反応させ、環状クロロホスファゼンオリゴマーを含む生成物を回収する方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。これらの公知の方法では、ハロゲン系溶媒が使用されており、3量体の収率は比較的高いものの、反応生成物中の3量体収率は未だ満足できるものではなかった。また、4量体の含有率も高く、反応時間が長い。
【0008】
これに対して、有機溶媒を用いることなく、五塩化リンと塩化アンモニウムを同時に固体状のまま反応容器に投入、加熱して反応させる方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。この方法では触媒を使用しないため、反応時間が長く、五塩化リンから換算したクロロホスファゼンオリゴマーの収率が極めて低いという問題がある。さらに、溶媒を用いず、触媒を使用した方法も知られている(例えば、特許文献3参照)。この方法によると、五塩化リンから換算したクロロホスファゼンの収率は高いものの、3量体の収率が低く、線状クロロホスファゼンオリゴマーの含有率が高い。
【0009】
【特許文献1】
特開昭57−3705号公報
【特許文献2】
特開昭57−77012号公報
【特許文献3】
特開昭55−7552号公報
【非特許文献1】
J.of American Chemical Society,p2377(1942)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような現状を鑑み、有機溶媒を用いることなく、触媒の存在下に塩素化リンと塩化アンモニウムを反応させることにより、環状クロロホスファゼン3量体を高収率・高選択性で製造する方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
溶媒を用いない従来のクロロホスファゼンオリゴマーの製造方法によると、生成物中の環状クロロホスファゼン3量体の収率が低く、線状クロロホスファゼンオリゴマーの含有率が高い。これは反応容器に塩素化リンと塩化アンモニウムを同時に仕込むため、反応系内の塩素化リン濃度が高くなり、反応が制御できず、環状クロロホスファゼン3量体の選択性が低下し、環状多量体や線状体の生成量が増大するためと考えられる。
【0012】
そこで本発明者らは、溶媒を用いずに環状クロロホスファゼンオリゴマー3量体の収率を高め、線状体の生成量を下げる製造方法に関して鋭意研究を重ねた。その結果、意外なことに、クロロホスファゼンを、クロロホスファゼンオリゴマーの製造に使用されている触媒存在下に塩素化リンと塩化アンモニウムから製造するにあたり、気化した塩素化リンを特定の速度で反応系内に供給して反応させることにより、環状クロロホスファゼン3量体が高選択・高収率で得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、溶媒を用いることなく、クロロホスファゼンオリゴマーの製造に使用されている触媒の存在下に塩素化リンと塩化アンモニウムからクロロホスファゼンオリゴマーを製造する方法であって、予め、反応系内に仕込まれた塩化アンモニウムに、気化させた塩素化リンを、仕込みの塩化アンモニウム1モルに対して10−4〜10モル/hrの速度で供給して反応させることを特徴とするクロロホスファゼンオリゴマーの製造方法である。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明において、塩素化リンは反応系内に気化した状態で供給される。塩素化リンの系内への供給速度は、仕込みの塩化アンモニウム1モルに対して10-4〜10モル/hrであることが必要であり、10-3〜1モル/hrが好ましい。塩素化リンの供給速度が10-4モル/hr未満の場合には、反応完結に長時間を要し、10モル/hrを越える場合には、反応系内の塩素化リンの濃度が高くなりすぎ、環状3量体以外の環状多量体及び線状体オリゴマーの生成が多くなる。
【0015】
気化した塩素化リンの供給方法には制限はなく、例えば、塩素化リンの拡散による供給方法、加圧下での供給方法、減圧下での供給方法等が挙げられる。より具体的には、大気圧下で塩素化リンの沸点又は昇華点以上に加熱して気化、拡散させて供給する方法、減圧下で塩素化リンを沸点又は昇華温度以下で気化させて供給する方法、加熱下、反応に不活性な気体を流通させて塩素化リンを気化させて供給する方法等が挙げられる。これらの中で、加熱下、反応に不活性な気体を流通させて塩素化リンを供給する方法が好ましい。
【0016】
反応に不活性な気体には制限はなく、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素、空気等が挙げられる。これらの中でアルゴン及び窒素が好ましい。
不活性気体の流通量は、塩素化リンの供給速度を制御できる範囲内であれば制限はないが、25℃において、塩素化リン1モルに対して0.1〜104L/hrが好ましい。この流通量が0.1L/hr未満の場合には、塩素化リンの反応系内への供給速度が遅くなり、反応が終了するまでに長時間を要する場合があり、104L/hrを越えると、反応系内での塩素化リン濃度が高くなり、環状多量体や線状体の生成量が多くなる場合がある。
【0017】
塩素化リンを気化させる温度には制限はないが、好ましくは0〜200℃、より好ましくは30〜170℃である。この温度が0℃未満の場合には、塩素化リンの反応系内への供給速度が遅くなり、反応が終了するまでに長時間を要する場合があり、200℃を越えると、反応系内での塩素化リン濃度が高くなり、未反応の塩素化リン量が増大したり、環状多量体や線状体の生成量が多くなる場合がある。
【0018】
本発明で使用される塩素化リンは、五塩化リンをそのまま使用してもよいし、反応前又は反応系内で、三塩化リンと塩素、白リンと塩素、又は黄リンと塩素を作用させて得られる塩素化リンを用いてもよい。これらの中で、五塩化リン、又は三塩化リンと塩素を作用させて得られる塩素化リンを使用するのが好ましい。反応前又は反応系内で、三塩化リンと塩素、白リンと塩素、黄リンと塩素を作用させる場合には、塩素の供給量をリン成分の供給量と等モルとなるように制御することが好ましい。
【0019】
本発明の触媒としては、クロロホスファゼンオリゴマーの製造に従来から使用されている触媒が使用できる。このような触媒として、例えば、MgO、ZnO等の金属酸化物、ZnO2、MgO2等の金属過酸化物、MgCl2、ZnCl2等の金属塩化物、ZnS等の金属硫化物、Mg(OH)2、Al(OH)3等の金属水酸化物、Ba(CH3COO)2、Zn[CH3(CH2)16COO]2等の有機カルボン酸金属塩、スメクタイト、カオリン、マイカ、タルク、ウォラストナイト等の層状シリケート等が挙げられる。
【0020】
これらの中で、MgO、CrO、Fe2O3、CuO、ZnO、CdO、Al2O3、Ga2O3、In2O3、SiO2、La2O3、Ce2O3、Pr6O11、Nd2O3、Pm2O3、Sm2O3、Eu2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3、Tm2O3、Yb2O3、Lu2O3等の金属酸化物及びMgCl2、ZnCl2等の金属塩化物が好ましい。これらの触媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、複数を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
【0021】
触媒の添加量は、塩素化リン1モルに対して、好ましくは10-5〜10モル、より好ましくは10-3〜1モルである。触媒の添加量が10-5モル未満の場合には、本発明の効果が得られにくい又は反応に長時間を要する場合があり、10モルを越えると、収率の向上及び触媒の添加量を増やす効果が発揮されない場合がある。
本発明で使用される塩化アンモニウムは、市販の塩化アンモニウムをそのまま使用してもよいし、反応前又は反応系内で、アンモニアと塩化水素を作用させて得られる塩化アンモニウムを用いてもよい。
【0022】
本発明において、塩化アンモニウムの添加量は、塩素化リン1モルに対して、10-3〜102モルが好ましく、10-2〜10モルがより好ましい。過剰量又は未反応の塩化アンモニウムや塩素化リンを、反応中に循環させて再利用してもよいし、反応終了後に回収して再利用してもよい。
反応方法には限定はなく、種々の方法を採用できる。例えば、反応容器内に塩化アンモニウムと触媒を仕込み、不活性気体気流下で加熱、攪拌しながら、不活性気体により五塩化リンを気化させ供給して反応させる方法、反応容器内で塩化アンモニウムと触媒をガラスビーズ等反応に不活性な担体に固定化させ、不活性気体気流下で加熱下、不活性気体により五塩化リンを気化させ供給して反応させる方法、反応容器内に塩化アンモニウムと触媒を仕込み、不活性気体気流下で加熱、攪拌しながら、これに三塩化リンと塩素を不活性気体とともに供給する方法等が挙げられる。
【0023】
反応温度は限定されないが、好ましくは100〜200℃の範囲、より好ましくは120〜180℃である。反応温度が100℃未満の場合には、反応が進行しないか反応完結までに長時間を要する場合があり、200℃を越えると、3量体だけでなく、4量体以上の環状多量体やリニア体の生成が多くなる傾向がある。
本発明においては、塩素化リンを気化させること、及び発生した塩化水素ガスを反応系から除去することを目的として、真空ポンプやアスピレータで系内を減圧にしてもよい。
【0024】
反応の進行は塩素化リンと塩化アンモニウムの反応により生成する塩化水素ガスの発生量をモニターすることにより確認することができ、反応の終了は、塩化水素ガスが発生しなくなったときとしてもよく、さらに、反応を完結させるために加熱を継続し、熟成させてもよい。
環状クロロホスファゼンオリゴマーの回収方法には制限はないが、反応混合物にトルエン、石油エーテル、n−ヘキサン等の有機溶剤を添加し、未反応の塩化アンモニウム及び塩素化リン等をろ過により除き、溶媒を留去して環状クロロホスファゼンオリゴマーを得てもよいし、反応混合物を常圧又は減圧下加熱して、環状クロロホスファゼンオリゴマーを昇華させて回収してもよい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に、実施例及び比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらによって何ら限定されるものではない。
本発明における環状クロロホスファゼンオリゴマーの組成は、GPC測定により内部標準法により決定する。
<GPC測定条件>
装置:東ソー社製HLC−8220 GPC
カラム:東ソー社製TSKgel(登録商標) Super 1000x2
TSKgel(登録商標) Super 2000x
TSKgel(登録商標) Super 3000x1
TSKguard column SuperH−L
カラム温度:40℃
溶離液:クロロホルム
溶離液流量:0.5ml/min
内標:トルエン
【0026】
【実施例1】
攪拌装置、冷却管及び温度計を備えた100mlの4つ口フラスコに、内容量20mlのガラス管を接続した。4つ口フラスコには、塩化アンモニウム1.93g(0.036mol)及び酸化亜鉛0.041g(0.5mmol)を投入し、ガラス管には、五塩化リン6.25g(0.03mol)を仕込んだ。1L/hrの流量で窒素をガラス管から4つ口フラスコへ流通させ、攪拌下、4つ口フラスコを140℃で加熱し、ガラス管を100℃で加熱した。
4時間後にガラス管内の五塩化リンは完全に昇華した。この時の五塩化リンの反応系内への供給速度は7.5x10-3モル/hr(塩化アンモニウム1モルに対して0.208モル/hr)であった。五塩化リンが完全に昇華してから、1時間、加熱を続けて反応を完結させた。反応終了後、反応混合物をトルエン50mlに溶解し、未反応塩化アンモニウムをろ別除去し、溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物3.44g(五塩化リンに対して収率98.8%)が得られた。GPC測定結果を表1に示す。
【0027】
【実施例2】
攪拌装置、冷却管及び温度計を備えた100mlの4つ口フラスコに、内容量20mlのガラス管を接続した。4つ口フラスコには、塩化アンモニウム 1.93g(0.036mol)及び酸化亜鉛0.041g(0.5mmol)を投入し、ガラス管には五塩化リン6.25g(0.03mol)を仕込んだ。2L/hrの流量で窒素をガラス管から4つ口フラスコへ流通させ、攪拌下、4つ口フラスコを140℃で加熱し、ガラス管を100℃で加熱した。
2.5時間後にガラス管内の五塩化リンは完全に昇華した。この時の五塩化リンの反応系内への供給速度は1.2x10-2モル/hr(塩化アンモニウム1モルに対して、0.333モル/hr)であった。五塩化リンが完全に昇華してから、1時間、加熱を続けて反応を完結させた。反応終了後、反応混合物をトルエン50mlに溶解し、未反応塩化アンモニウムをろ別除去し、溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物3.41g(五塩化リンに対して収率98.2%)が得られた。GPC測定結果を表1に示す。
【0028】
【実施例3】
攪拌装置、冷却管及び温度計を備えた100mlの4つ口フラスコに、内容量20mlの2つ口フラスコを接続した。4つ口フラスコには、塩化アンモニウム1.93g(0.036mol)及び酸化亜鉛0.041g(0.5mmol)を投入し、2つ口フラスコには、三塩化リン4.13g(0.03mol)を仕込んだ。三塩化リンの70℃での揮発速度が0.01モル/hr(塩化アンモニウム1モルに対して、0.278モル/hr)となるように1.3L/hrの流量に調整した窒素を、2つ口フラスコから4つ口フラスコへ流通させ、攪拌下、4つ口フラスコを140℃で加熱し、2つ口フラスコを70℃で加熱するとともに、塩素ガスを0.71g/hr(0.01モル/hr)の速度で反応系内に供給した。
3時間後にガラス管内の三塩化リンは完全に揮発消失した。三塩化リンが完全に消失してから、1時間、加熱を続けて反応を完結させた。反応終了後、反応混合物をトルエン50mlに溶解し、未反応塩化アンモニウムをろ別除去し、溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物3.42g(三塩化リンに対して収率98.5%)が得られた。GPC測定結果を表1に示す。
【0029】
【実施例4】
攪拌装置、冷却管及び温度計を備えた100mlの4つ口フラスコに、内容量20mlのガラス管を接続した。4つ口フラスコには、塩化アンモニウム1.93g(0.036mol)及び塩化マグネシウム0.048g(0.5mmol)を投入し、ガラス管には、五塩化リン6.25g(0.03mol)を仕込んだ。2L/hrの流量で窒素をガラス管から4つ口フラスコへ流通させ、攪拌下、4つ口フラスコを140℃で加熱し、ガラス管を100℃で加熱した。
3時間後にガラス管内の五塩化リンは完全に昇華し、この時の五塩化リンの反応系内への供給速度は1x10-2モル/hr(塩化アンモニウム1モルに対して、0.333モル/hr)であった。五塩化リンが完全に昇華してから、1時間、加熱を続けて反応を完結させた。反応終了後、反応混合物をトルエン50mlに溶解し、未反応塩化アンモニウムをろ別除去し、溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物3.41g(五塩化リンに対して収率98.1%)が得られた。GPC測定結果を表1に示す。
【0030】
【比較例1】
攪拌装置、冷却管、滴下ロート及び温度計を備えた100mlの4つ口フラスコに、塩化アンモニウム1.93g(0.036mol)、酸化亜鉛0.041g(0.5mmol)及びモノクロロベンゼン30gを仕込み、窒素気流下、油浴温度140℃で加熱還流させた。五塩化リン6.25g(0.03mol)をモノクロロベンゼン30gに溶解した溶液を、105℃に加熱した滴下ロートを用いて反応系内に約1時間かけて滴下した。滴下終了後4時間、反応を行い、反応終了後、未反応塩化アンモニウムをろ別除去し、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物3.23g(五塩化リンに対して収率92.9%)が得られた。GPC測定結果を表2に示す。
【0031】
【比較例2】
攪拌装置、冷却管、滴下ロート及び温度計を備えた100mlの4つ口フラスコに、塩化アンモニウム1.93g(0.036mol)、酸化亜鉛0.041g(0.5mmol)及びモノクロロベンゼン30gを仕込み、窒素気流下、油浴温度140℃で加熱還流させた。三塩化リン4.13g(0.03mol)を、滴下ロートを用いて1.38g/hr(0.01mol/hr)の速度で3時間掛けて滴下するとともに、同時に塩素ガスを0.71g/hr(0.01mol/hr)の速度で3時間供給した。
三塩化リン及び塩素ガスの供給後、1時間反応を行い、反応終了後未反応塩化アンモニウムをろ別除去し、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物3.34g(五塩化リンに対して収率96.2%)が得られた。GPC測定結果を表2に示す。
【0032】
【比較例3】
攪拌装置、冷却管、滴下ロート及び温度計を備えた100mlの4つ口フラスコに、窒素気流下、塩化アンモニウム12.84g(0.24mol)及び五塩化リン6.25g(0.03mol)を仕込み、攪拌下、油浴温度135℃で12時間反応させた。
反応終了後未、反応混合物をトルエン50mlに溶解し、未反応塩化アンモニウムをろ別除去し、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物2.23g(五塩化リンに対して収率64.2%)が得られた。GPC測定結果を表2に示す。
【0033】
【比較例4】
攪拌装置、冷却管、滴下ロート及び温度計を備えた100mlの4つ口フラスコに、窒素気流下、塩化アンモニウム12.84g(0.24mol)、酸化亜鉛0.041g(0.5mmol)及び五塩化リン6.25g(0.03mol)を仕込み、攪拌下、油浴温度135℃で4時間反応させた。
反応終了後未、反応混合物をトルエン50mlに溶解し、未反応塩化アンモニウムをろ別除去し、反応溶媒を減圧留去した。その結果、反応生成物3.01g(五塩化リンに対して収率86.6%)が得られた。GPC測定結果を表2に示す。
実施例(表1)と比較例(表2)との比較から明らかなように、本発明の、溶媒を使用しないクロロホスファゼンオリゴマーの製造方法の場合には、塩素化リンから換算した生成物収率が高く、生成物中の3量体含有率が高いことがわかる。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【発明の効果】
本発明によると、溶媒を用いることなく、気化した塩素化リンを特定の速度で供給して塩化アンモニウムと反応させることにより、環状クロロホスファゼン3量体を選択的に製造することが可能である。そして、本発明により、工業的に有用な環状クロロホスファゼン3量体を高収率・高選択性で製造することが可能である。
ホスファゼンオリゴマー及びホスファゼンポリマーの各種誘導体は、プラスチック及びその添加剤、ゴム、肥料、医薬等、より広範囲な用途へ使用されることが期待できる。
Claims (3)
- 溶媒を用いることなく、クロロホスファゼンオリゴマーの製造に使用されている触媒の存在下に塩素化リンと塩化アンモニウムからクロロホスファゼンオリゴマーを製造する方法であって、予め、反応系内に仕込まれた塩化アンモニウムに、気化させた塩素化リンを、仕込みの塩化アンモニウム1モルに対して10−4〜10モル/hrの速度で供給して反応させることを特徴とするクロロホスファゼンオリゴマーの製造方法。
- 塩素化リンの供給速度が、塩化アンモニウム1モルに対し10−3〜10モル/hrであることを特徴とする請求項1記載のクロロホスファゼンオリゴマーの製造方法。
- 触媒が、ZnOまたはMgCl 2 であることを特徴とする請求項1または2に記載のクロロホスファゼンオリゴマーの製造方法。
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