JP4223098B2 - 熱溶融性フッ素樹脂中空糸およびその製造方法ならびにそれを用いた中空糸膜モジュール - Google Patents

熱溶融性フッ素樹脂中空糸およびその製造方法ならびにそれを用いた中空糸膜モジュール Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば脱気や除湿等の目的で利用される気体透過膜に好適な熱溶融性フッ素樹脂中空糸およびその製造方法ならびにそれを用いた中空糸膜モジュールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、脱気モジュール用の膜として、ポリウレタン、ポリアミド、ポリメチルペンテンなどからなる中空糸膜がよく知られているが、これらの樹脂からなる中空糸は耐熱性および耐薬品性が充分ではなく、さらに耐圧性に関して充分な性能を有していなかった。
【0003】
上記のような樹脂で作成された中空糸よりも優れた耐熱性および耐薬品性を有する中空糸として、フッ素樹脂を用いた中空糸が提案されている。このようなフッ素樹脂を用いた中空糸の一つとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いたものが知られているが、PVdFは他の熱溶融性フッ素樹脂、特にパーフルオロ系の熱溶融性フッ素樹脂と比較すると耐熱性および耐薬品性に欠けるため、PVdF製の中空糸は、例えば原液が高い腐食性を有する場合あるいは高温である場合等のさらに高い要求の用途には、充分な性能を有していないという問題点がある。また上記PVdF製の中空糸を作成する場合に用いられる相分離法は、PVdFの溶液を紡糸用ノズル等の専用の口金から凝固液中に吐出させ溶媒を除去して非対称膜を得る製造法であるが、PVdFの溶液の調整や吐出条件の調整の作業が煩雑であるという問題があった。
【0004】
そのようなPVdF製の中空糸の問題点を解消するために、耐熱性および耐薬品性がさらに優れた、代表的なフッ素樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の延伸等により、中空糸の長さ方向に延伸され多孔質化された中空糸膜も脱気モジュール用膜として検討されている。しかし延伸PTFEの中空糸においては液漏れなどの恐れがあった。また延伸PTFEの中空糸はその延伸方向にはある程度の機械的強度を有しているが、それ以外の方向の強度は弱く、更に加熱される場合には延伸方向に沿って収縮するという問題があった。
【0005】
また、熱溶融性フッ素樹脂である、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)等に、可溶性の無機塩類を混合して、溶融混練後中空糸状に押出成形した後に、無機塩類を抽出することによって多孔質化された熱溶融性フッ素樹脂の中空糸も知られている。しかしこの場合においても液漏れなどの恐れがあった。また、中空糸状に押出成形される際に樹脂が押出方向に剪段力を受けるため、抽出後の多孔質中空糸は繊維状になったものが融着した構造となっている。このため押出方向にはある程度の機械的強度を有しているが、それ以外の方向の強度は弱く、さらに加熱される場合には押出方向に沿って収縮するという問題があった。
【0006】
上記した耐熱性および耐薬品性の向上を図り、加熱時における中空糸の延伸または押出方向に沿う収縮の問題を解消し、さらに原液の液漏れの恐れを回避するために、非多孔質のPTFE製の中空糸も提案されている。この非多孔質のPTFE製の中空糸の場合には、原液が高い腐食性を有する場合あるいは高温である場合であっても液漏れの恐れなく脱気等に用いられ得る。一般にPTFEは、溶融粘度が極めて高く通常の溶融押出成形方法が適用できず、非孔質のPTFE製の中空糸を製造するにはペースト押出法と呼ばれている成形方法が適用される。しかし、ペースト押出による中空糸成形では薄くても中空糸の壁は0.1mm程度までしか成形できず、中空糸の分離性能は中空糸の材質とその壁の厚さによるので、従来の非多孔質のPTFE製中空糸では気体透過性能をこれ以上高くすることができないという問題があった。それと共に、その厚さの中空糸はその機械的強度あるいは耐圧性は充分とは言い難かった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は上記の問題を解決するためになされたもので、その目的は、耐薬品性、耐熱性に優れ、しかも良好な耐圧性、気体透過性を有すると共に、取扱性に優れた熱溶融性フッ素樹脂中空糸とその製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は熱溶融性フッ素樹脂中空糸を用いた中空糸膜モジュールを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、本発明に係わる熱溶融性フッ素樹脂中空糸とその製造方法によって達成される。すなわち、要約すれば、本発明は、熱溶融性フッ素樹脂からなる非多孔質の層と、該熱溶融性フッ素樹脂と該熱溶融性フッ素樹脂と親和性であって溶剤に可溶な樹脂とを混合して形成した固形物を、前記溶剤に可溶な樹脂の融点以上であって該熱溶融性フッ素樹脂の融点以下の温度において前記非多孔質の層に被覆した後、該熱溶融性フッ素樹脂の融点以上に加熱処理して該熱溶融性フッ素樹脂の粒子を凝集、結合させると共に、さらに前記溶剤に可溶な樹脂を溶剤によって抽出除去して形成した非繊維状の三次元網目構造を有する多孔質の層を備えることを特徴とする熱溶融性フッ素樹脂中空糸であり、また、特に、前記非多孔質の層および前記多孔質の層の熱溶融性フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPA)、テトラフルオロエチレンーエチレン共重合体(ETFE)、から選ばれる熱溶融性フッ素樹脂中空糸である。
【0009】
また、熱溶融性フッ素樹脂中空糸の製造方法において、心線上に、熱溶融性フッ素樹脂の非多孔質の層を被覆する工程と、該熱溶融性フッ素樹脂と該熱溶融性フッ素樹脂と親和性であって溶剤に可溶な樹脂とを混合して固形物を形成し、得られた固形物を前記溶剤に可溶な樹脂の融点以上であって該熱溶融性フッ素樹脂の融点以下の温度において前記非多孔質の層が形成された心線上に被覆する工程と、被覆された心線を該熱溶融性フッ素樹脂の融点以上に加熱処理した後に前記溶剤に可溶な樹脂を溶剤によって抽出除去し多孔質の層を形成する工程と、心線を延伸して除去する工程とからなる熱溶融性フッ素樹脂中空糸の製造方法である。
【0010】
また、前記非多孔質の層および前記多孔質の層の熱溶融性フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPA)、テトラフルオロエチレンーエチレン共重合体(ETFE)、から選ばれるフッ素樹脂であり、前記溶剤に可溶な樹脂がフッ素樹脂である熱溶融性フッ素樹脂中空糸の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
図面を参照して、本発明を説明する。
本発明の熱溶融性フッ素樹脂中空糸1は、例えば図1に示すように、層の厚さが非常に薄い熱溶融性フッ素樹脂からなる非多孔質の内層2と、この内層2の外周面上に設けられる比較的層の厚さが厚い多孔質の熱溶融性フッ素樹脂からなる外層3から構成されている。
【0012】
本発明の熱溶融性フッ素樹脂中空糸1の内層2は、熱溶融性フッ素樹脂からなる非多孔質の均質な層であり気体透過膜として作用する。この内層2は、厚さが5〜40μmであることが好ましく、10〜25μmであることがより好ましい。5μm未満では、機械的物性の低下が著しくなるため好ましくない。40μm以上では、気体透過性が低すぎるので好ましくない。
【0013】
本発明の熱溶融性フッ素樹脂中空糸1の外層3は、後述するような方法により、図1に示すように内層2の外周面上に設けられ、熱溶融性フッ素樹脂の粒子が凝集、結合して形成された非繊維状の三次元網目構造を有する多孔質の均質な層であり、外層3は内層2の機械的特性を補う支持層として機能する。外層3は、多孔質の空孔率が30〜80%であることが好ましく、50〜70%であることがより好ましい。厚さは50〜400μmであることが好ましく、100〜300μmであることがより好ましい。空孔率が80%以上、厚さが50μm未満では、機械的物性の低下が著しくなるため好ましくない。空孔率が30%以下では、気体透過性に影響を与えるので好ましくなく、厚さが400μm以上では、中空糸の外径が大きくなり、モジュールの総膜面積を高くできないので好ましくない。この外層3は、三次元網目構造の多孔質体であり、押出方向等の特定の方向に配向してはおらず、均質であり、いずれの方向にも機械的強度は均一である。また、外層用材料として利用されている熱溶融性フッ素樹脂に対応する高い連続使用温度においても寸法安定性に優れている。
【0014】
なお、本発明の熱溶融性フッ素樹脂中空糸1の内層2、外層3の材質としては、耐薬品性、耐熱性にすぐれた熱溶融性フッ素樹脂、具体的には、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)が挙げられる。内層2、外層3は、共に同じ種類の熱溶融性フッ素樹脂を利用することができ、また異なる種類の熱溶融性フッ素樹脂を利用することもできる。
【0015】
次に本発明の熱溶融性フッ素樹脂中空糸1の製造方法について説明する。
図2に示すように、まず、内層2の材質として挙げられた熱溶融性フッ素樹脂から選ばれた熱溶融性フッ素樹脂を、心線4上に押出機により例えば、5〜40μmの厚さで電線被覆等に用いられている一軸押出機等を利用して押出被覆し内層2を設ける。押出成形は熱溶融性フッ素樹脂の種類に従った押出成形条件を設定して行うことができる。
【0016】
次いで、外層3の材質として挙げられた熱溶融性フッ素樹脂から選ばれた熱溶融性フッ素樹脂と、この熱溶融性フッ素樹脂と親和性であって溶剤に可溶な樹脂とを混合して、後に詳述する固形物を形成する。得られた固形物を、溶剤に可溶な樹脂の融点以上であって熱溶融性フッ素樹脂の融点以下の温度において、内層2が形成された心線4上に、例えば50〜400μmの厚さで、電線被覆等に用いられている一軸押出機等を利用して、押出被覆し被覆層5を設ける。これにより被覆層5においては、溶剤に可溶な樹脂中に熱溶融性フッ素樹脂の粒子が分散した状態となっている。次いで、内層2と被覆層5が形成された心線4を、熱溶融性フッ素樹脂の融点以上に加熱処理する。加熱処理は、被覆層5を設けた被覆された心線4を、熱溶融性フッ素樹脂の融点より20℃以上高い温度で、20〜30秒間電気炉等に通すことにより行うことができる。加熱状態において、被覆層5の溶剤に可溶な樹脂と熱溶融性フッ素樹脂は親和性があるが互いに相溶することはないので、溶融している溶媒に可溶な樹脂の中で、分散している熱溶融性フッ素樹脂の溶融した粒子どうしが凝集して三次元的に結合する。加熱処理後被覆された心線4を室温まで冷却すると、被覆層5において加熱時に形成された熱溶融性フッ素樹脂の三次元的結合が固定される。次いで、被覆心線4を溶剤中に浸漬して、溶剤に可溶な樹脂を溶出除去することにより被覆層5を多孔質化する。溶剤に可溶な樹脂の溶出除去は、被覆心線4を室温から60℃の範囲の温度にした溶剤に可溶な樹脂の種類に応じて選ばれる溶剤中に浸漬して行うことができる。浸漬後は溶剤の種類に応じて被覆心線4を乾燥することが好ましい。これにより、熱溶融性フッ素樹脂の粒子が凝集、結合して形成された非繊維状の三次元網目構造を有する多孔質の外層3を、前述したように内層2の外周面上に設けることができる。さらに、心線4のみを延伸して径を減少させ心線4を除去し、熱溶融性フッ素樹脂中空糸1を得ることができる。
【0017】
本発明に用いることができる溶剤に可溶な樹脂としては、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンが利用できる。また、これに対応する抽出除去用の溶剤としては、ポリフッ化ビニリデンには、N−メチルピロリドン(NMP)、その他の樹脂については、アセトン、NMPを挙げることができる。好ましくは、熱溶融性フッ素樹脂との融点の差が100℃以上あるものを利用することが望ましい。
【0018】
本発明において、被覆層5に用いられる前述した固形物を形成するには、熱溶融性フッ素樹脂の水性ディスパージョンと溶剤に可溶な樹脂の有機溶液とを混合し、ゲル化させたのち、固形分を取り出し乾燥させたものを利用することができる。また、熱溶融性フッ素樹脂の粉末と溶剤に可溶な樹脂の粉末を混合したものも利用することができる。熱溶融性フッ素樹脂と親和性であって溶剤に可溶な樹脂とを混合した固形物を、溶剤に可溶な樹脂の融点以上であって熱溶融性フッ素樹脂の融点以下の温度において、二軸押出機等の溶融混練装置により混練しペレット状にすることが、内層2の外周面に固形物を押出被覆するうえで好ましい。また、それぞれの樹脂の混合の割合を調節することにより、外層3の空孔率を変化させることができる。熱溶融性フッ素樹脂と溶剤に可溶な樹脂との割合は、固形物においてこれらの樹脂の体積比が20:80〜70:30、特に40:60となるようにすることが好ましい。
【0019】
本発明を利用して、上述した実施例とは逆の中空糸の外表面から気体を透過させる別のタイプの脱気モジュール用中空糸を提供することができる。この場合は、前記の製造工程を入れ換えることで容易に中空糸を製造することができる。
すなわち、心線上に、熱溶融性フッ素樹脂とこの熱溶融性フッ素樹脂と親和性であって溶剤に可溶な樹脂とを混合して固形物を形成し、得られた固形物を溶剤に可溶な樹脂の融点以上であって熱溶融性フッ素樹脂の融点以下の温度において被覆する工程と、被覆された心線を熱溶融性フッ素樹脂の融点以上に加熱処理した後に溶剤に可溶な樹脂を溶剤によって溶出除去し多孔質化する工程と、被覆された層が多孔質化された心線に熱溶融性フッ素樹脂の非多孔質の外層を被覆する工程と、心線を延伸して除去する工程とからなる製造方法により、内層が多孔質層、外層が非多孔層の二層の熱溶融性フッ素樹脂中空糸を得ることができる。
【0020】
次いで、本発明の熱溶融性フッ素樹脂中空糸を用いた中空糸膜モジュールについて説明する。
これまで、ペースト押出のPTFE製の中空糸を用いた膜モジュールにおいては、PTFEのもつ非粘着性のために、親水化処理などの表面処理を行わなければ、エポキシ樹脂等の通常の封止用材料を利用して端部を封止することはできなかった。また、そのような封止用材料を利用する場合は、原液が腐食性の高いあるいは高温の用途にはPTFE製の中空糸を用いた膜モジュールを利用できなかった。また、これまでの延伸PTFEの中空糸を用いた膜モジュールにおいては、多孔質部分を封止して集束させることが、封止材の選択や完全な封止の点で困難であった。
しかし本発明の熱溶融性フッ素樹脂中空糸を用いた中空糸膜モジュールにおいては、中空糸が熱溶融性フッ素樹脂からなり多孔質の外層を有しているので、封止材として中空糸と同じ材料である熱溶融性フッ素樹脂を利用でき、その結果中空糸の多孔質外層を熱溶融によって非多孔質化し、端部封止用材料、例えば熱収縮チューブ等と溶融一体化させ、端部をハニカム構造とすることができ、完全な封止が実現する。さらに、このような中空糸膜モジュールを用いた場合には、原液が接する面はすべて熱溶融性フッ素樹脂であるので、原液が腐食性の高いあるいは高温の場合でも耐熱性および耐薬品性に優れた膜モジュールとすることができる。
【0021】
【実施例】
以下に実施例をあげて、この発明を説明する。
実施例1
心線として外径0.5mm(ミリメートル)の銅線に、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)(ダイキン工業、ネオフロンAP−210)のペレットを用いて20μm(マイクロメートル)の厚さに押出被覆した。
PFAの水性ディスパージョン(ダイニオン、PFAX6910N、固形分23重量%)5657gとテトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体(ダイキン工業,ネオフロンVDF)の25重量%アセトン溶液6292gとを室温で混合しゲル化させ、固形分を取り出し乾燥させた。固形分を二軸押出機で、ダイ温度160℃でペレットにした。このペレットをPFA被覆心線に、一軸押出機で、ダイ温度190℃で200μmの厚さに押出被覆した。この被覆心線を、320℃に設定された電気炉に20秒間加熱されるように通した。得られた被覆心線を、アセトン中に12時間浸漬して、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体を溶出除去した。心線を延伸、除去し、PFA中空糸を得た。
このPFA中空糸の内径は0.5mm、外径は0.94mmであった。
【0022】
得られたPFAの中空糸の耐圧性を、次に示す測定方法で測定した。すなわち、中空糸の片端を接着剤で封止し、もう一方の片端を評価用コネクタにエポキシ系の接着剤で固定し、コネクタに装着した側から水を通しておき、徐々に水圧を上げ中空糸が破壊したときの水圧を破壊圧力として測定した。得られたPFAの中空糸の破壊圧力は2.8MPa(メガパスカル)であった。
【0023】
得られたPFAの中空糸の脱気性能を次に示す測定方法で測定した。すなわち、得られたPFAの中空糸を用いて両端をエポキシ系の接着剤で固定し、中空糸膜モジュール11を作成した。図3に示すように、モジュール11の片端から25℃の溶存酸素濃度が8.1ppm(ピーピーエム)の水をポンプ12で流量計13を見ながら200ml(ミリリットル)/分で圧送し、中空糸膜内部に流した。同時に中空糸膜モジュール11の容器に接続されている真空ポンプ14を作動させ、モジュール内の中空糸外部空間を減圧し、圧力計15の表示に従い100torr(トル)に保った。そして中空糸膜モジュール11の流入後の水を溶存酸素濃度測定器16に通し、脱気後の溶存酸素濃度を測定した。総膜面積が0.33m2 (平方メートル)であるこのPFA中空糸膜モジュールを通過した後の水の溶存酸素濃度は5.4ppmであった。
【0024】
比較例1
心線として外径0.5mmの銅線に、PFA(ダイキン工業、ネオフロンAP−210)のペレットを用いて20μmの厚さに押出被覆した。心線を延伸し、除去し、支持層のないPFA中空糸を得た。
得られたPFAの中空糸の耐圧性を、実施例1と同様の測定方法で測定しところ、破壊圧力は1.6MPaであった。
【0025】
比較例2
PTFE製中空糸を用いた膜モジュールを作成した。PTFE製中空糸は内径0.9mm、厚さが125μmのものを用いた。実施例1と同様脱気性能を測定した。総膜面積が1.25m2 であるこのPTFE製中空糸膜モジュールを通過した後の水の溶存酸素濃度は4.6ppmであった。
【0026】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明の熱溶融性フッ素樹脂中空糸はすべての材料がフッ素樹脂からなるので、耐薬品性および耐熱性に優れている。また内層の熱溶融性フッ素樹脂の厚さが薄いので良好な気体透過性を有し、しかも機械的強度が均一で熱に対しても寸法安定性の高い多孔質の外層を支持層としているので耐圧性が高く、さらに多孔質の外層は内層の気体透過性に何ら影響を及ぼさない。また、従来の中空糸と同様な外径に仕上げることができるので、モジュール化の際作業性を低下させることがない。本発明の熱溶融性フッ素樹脂中空糸の製造方法によれば、溶融押出成形方法を利用しているので、効率良く成形加工できる。さらに本発明の熱溶融性フッ素樹脂中空糸を用いた中空糸膜モジュールは原液が接する面はすべて熱溶融性フッ素樹脂からなるので、耐薬品性および耐熱性に優れている。
【0027】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による熱溶融性フッ素樹脂中空糸の断面説明図である。
【図2】本発明による熱溶融性フッ素樹脂中空糸の製造方法の説明図である。
【図3】本発明に係る脱気性能測定方法の概略図である。
【符号の説明】
1:熱溶融性フッ素樹脂中空糸
2:内層
3:外層
4:心線
5:被覆層
11:中空糸膜モジュール
12:ポンプ
13:流量計
14:真空ポンプ
15:圧力計
16:溶存酸素濃度測定器

Claims (5)

  1. 熱溶融性フッ素樹脂からなる非多孔質の層と、該熱溶融性フッ素樹脂と該熱溶融性フッ素樹脂と親和性であって溶剤に可溶な樹脂とを混合して形成した固形物を、前記溶剤に可溶な樹脂の融点以上であって該熱溶融性フッ素樹脂の融点以下の温度において前記非多孔質の層に被覆した後、該熱溶融性フッ素樹脂の融点以上に加熱処理して該熱溶融性フッ素樹脂の粒子を凝集、結合させると共に、さらに前記溶剤に可溶な樹脂を溶剤によって抽出除去して形成した非繊維状の三次元網目構造を有する多孔質の層を備えることを特徴とする熱溶融性フッ素樹脂中空糸。
  2. 前記非多孔質の層および前記多孔質の層の熱溶融性フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPA)、テトラフルオロエチレンーエチレン共重合体(ETFE)、から選ばれる請求項1に記載の熱溶融性フッ素樹脂中空糸。
  3. 熱溶融性フッ素樹脂中空糸の製造方法において、心線上に、熱溶融性フッ素樹脂の非多孔質の層を被覆する工程と、該熱溶融性フッ素樹脂と該熱溶融性フッ素樹脂と親和性であって溶剤に可溶な樹脂とを混合して固形物を形成し、得られた固形物を前記溶剤に可溶な樹脂の融点以上であって該熱溶融性フッ素樹脂の融点以下の温度において前記非多孔質の層が形成された心線上に被覆する工程と、被覆された心線を該熱溶融性フッ素樹脂の融点以上に加熱処理した後に前記溶剤に可溶な樹脂を溶剤によって抽出除去し多孔質の層を形成する工程と、心線を延伸して除去する工程とからなる熱溶融性フッ素樹脂中空糸の製造方法。
  4. 前記非多孔質の層および前記多孔質の層の熱溶融性フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPA)、テトラフルオロエチレンーエチレン共重合体(ETFE)、から選ばれるフッ素樹脂であり、前記溶剤に可溶な樹脂がフッ素樹脂である請求項3に記載の熱溶融性フッ素樹脂中空糸の製造方法。
  5. 複数本の集束された中空糸の少なくとも片方の端部を封止材を用いてハウジングに封止してなる中空糸膜モジュールにおいて、請求項1に記載の熱溶融性フッ素樹脂中空糸を複数本用い、前記ハウジング内において、これらの中空糸の多孔質外層を、熱溶融性フッ素樹脂中空糸の端部封止用材料と溶融一体化させると共に、熱溶融によって非多孔質化させ、端部をハニカム構造としたことを特徴とする中空糸膜モジュール。
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