JP4222298B2 - パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、運転者によるハンドル操作を補助するパワーステアリング装置、より具体的には、ハンドルに加えられた操舵力に応じた補助操舵力を操舵力伝達系に付加するパワーステアリング装置に関する。
従来より、車両のロール剛性を調節する技術としてアクティブスタビライザと呼ばれる技術がある。一般的なスタビライザでは、車両の横方向に延びるスタビライザバーの一端を左車輪側に接続し、スタビライザバーの他端を右車輪側に接続することで、スタビライザバーのねじり剛性により車両のロール剛性を高めている。一般的なスタビライザと比べてアクティブスタビライザでは、スタビライザバーに、さらにモータや油圧などを利用してスタビライザバーのねじり剛性を調節する調節機構が設けられており、車両のロール剛性を能動的に調節可能となっている。アクティブスタビライザの一例が特開2003−226127号公報に示されている。この文献のアクティブスタビライザでは、車両の前輪側及び後輪側にスタビライザバーが設けられており、一方のアクティブスタビライザの異常時に、他方のアクティブスタビライザの制御規則が変更されている。
特開2003−226127号公報
車両がカーブ路を走行するときには、車両には遠心力が作用してロールが発生する。ここで、車両の走行速度が大きい場合やカーブ路の曲率半径が小さい場合には、車両に作用する遠心力が大きく車両には過剰なロールが発生し得る状況となる。このような状況下において、アクティブスタビライザは車両のロール剛性を高め、車両に過剰なロールが発生するのを防止している。しかし、アクティブスタビライザの調節機構に何らかの原因により動作異常が生じた場合には、アクティブスタビライザのねじり剛性は固定され、過剰なロールが発生するのを防止できなくなる。この結果、タイヤの接地状態が悪化してタイヤの接地力が小さくなる。このタイヤ接地力の変化は、運転者の操舵フィーリングにも影響を与える。即ち、タイヤの接地力が小さくなった分だけ、運転者がハンドルを操作するのに要するトルクが小さくなる。よって、アクティブスタビライザに動作異常が生じたときには、運転者は操舵フィーリングの変化により違和感を持ってしまう。
そこで、本発明は、アクティブスタビライザが動作異常となったときに、運転者の操舵フィーリングの悪化を防止することを目的としている。
すなわち、本発明に係るパワーステアリング装置は、ハンドルに加えられた操舵力に応じた補助操舵力を操舵力伝達系に付加するパワーステアリング装置において、アクティブスタビライザの動作異常が生じた場合に、前記操舵力に応じた補助操舵力を動作正常時に比べて変更させること、を特徴としている。
この発明によれば、アクティブスタビライザに動作異常が生じた場合に、操舵力に応じた補助操舵力を動作正常時に比べて変更させることで、アクティブスタビライザの動作異常に対応することができる。即ち、動作異常時の補助操舵力を動作正常時に比べて変更させることで、運転者がハンドルを操舵するのに要するトルクを調節することができ、運転者の操舵フィーリングの悪化を防止することができる。これによれば、アクティブスタビライザの動作異常が発生する前後において、運転者の操舵フィーリングの変化は小さく、運転者に生ずる違和感を十分に軽減することができる。また、操舵フィーリングの変化が小さいため、運転者は車両を安定して運転することができる。
また、本発明に係るパワーステアリング装置は、アクティブスタビライザの動作異常が生じた場合に、前記操舵力に応じた補助操舵力を動作正常時に比べて低減させること、が好ましい。
これによれば、アクティブスタビライザの動作異常が発生した場合に、操舵力に応じた補助操舵力を動作正常時に比べて低減させることで、運転者がハンドルを操舵するのに要するトルクを増加させることができる。アクティブスタビライザの動作異常が生じた場合には、車両の過剰なロールにより車輪の接地力が減少して、運転者がハンドルを操舵するのに要するトルクが小さくなる傾向にある。これに対して、上述したようにハンドルを操舵するのに要するトルクを増加させれば、アクティブスタビライザの動作異常が発生する前後において運転者の操舵フィーリングの変化が小さく、運転者に与える違和感を十分に軽減することができる。
また、本発明に係るパワーステアリング装置は、補助操舵力を発生させるモータと、当該モータを制御するモータ制御手段と、を備えており、前記モータ制御手段は、アクティブスタビライザの動作異常が生じた場合に、前記補助操舵力の設定値を、動作正常時用の設定値から動作異常時用の設定値に切り替えてモータ制御を行うこと、が好ましい。
これによれば、アクティブスタビライザの動作異常が生じた場合に、モータ制御手段が、補助操舵力の設定値を動作正常時用の設定値から動作異常時用の設定値に切り替えるだけであるので、アクティブスタビライザの動作異常に迅速に対応することができる。
また、本発明に係るパワーステアリング装置は、前記補助操舵力の設定値は、アシスト制御の設定値とダンピング制御の設定値を含み、前記モータ制御手段は、アクティブスタビライザの動作異常が生じた場合に、アシスト制御の設定値を、動作正常時用の設定値から動作異常時用の設定値に切り替えてモータ制御を行うこと、が好ましい。
これによれば、アクティブスタビライザの動作異常が生じた場合に、モータ制御手段は、アシスト制御の設定値を動作正常時用の設定値から動作異常時用の設定値に切り替える。アシスト制御の設定値は車両のロール感と相関度の高いパラメータ(車速及び操舵トルク)に対応して設定されているので、動作異常時用のアシスト制御の設定値を適度な値に設定することで、車両の過剰なロール感を適切に抑制することができる。
本発明によれば、アクティブスタビライザが動作異常となったときに、運転者の操舵フィーリングの悪化を防止することができる。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るパワーステアリング装置について説明する。図1は、実施形態に係るパワーステアリング装置が搭載された車両を示す概略構成図である。車両1は、左前輪2FL、右前輪2FR、左後輪2RL、右後輪2RRの四つの車輪(操舵輪)を備えている。各車輪2FL〜2RRは、それぞれに対応して設けられたサスペンション3FL,3FR,3RL,3RRに取り付けられている。なお、サスペンション3FL〜3RRには、ストラット式サスペンション、ダブルウィッシュボーン式サスペンションなど様々な形式のものがあるが、いずれの形式のものを採用してもよい。
車両1には、運転者によりハンドル4に加えられた操舵力を左右前輪2FL,2FRに伝達するための構成(以下、操舵力伝達系と呼ぶ)が設けられている。操舵力伝達系では、ハンドル4がステアリングシャフト5を介してステアリングギヤボックス6に接続されており、ハンドル4に加えられた操舵力がステアリングギヤボックス6に伝達される。ステアリングギヤボックス6は、ラック&ピニオン機構で構成されている。ピニオン7は、ステアリングシャフト5の先端に取り付けられ固定されている。運転者の操舵によるピニオン7の回動が、ラック8の横方向の動きに変換される。ラック8の左端にはタイロッド9の一端が連結されており、タイロッド9の他端は左前輪2FL側のサスペンション3FLの一部に連結されている。また、ラック8の右端にはタイロッド10の一端が連結されており、タイロッド10の他端は右前輪2FR側のサスペンション3FRの一部に連結されている。このようにラック8がタイロッド9,10を介してサスペンション3FL,3FRに連結されることにより、ラック8の横方向の動きが左右前輪2FL,2FRに伝達され、左右前輪2FL,2FRが転舵する。
上述した操舵力伝達系には、運転者による操舵を補助するための電動パワーステアリングシステムが設けられている。電動パワーステアリングシステムでは、ステアリングシャフト5に電動モータ、減速機などを含むアシスト機構20が配設されており、これから離れた位置に電動パワーステアリングシステム(EPS)用のコントローラ21が配設されている。EPS用コントローラ21は、電子コントロールユニット(Electrical Control Unit:ECU)と、制御電流を生成するためのモータ駆動回路などを含んで構成されている。EPS用コントローラ21は、車輪速センサ41、操舵トルクセンサ42及び操舵角センサ43の検出出力を取り込んで、これらの検出出力に基づき車両1の走行状況に適した操舵アシストトルク(補助操舵力)を演算し、これに応じた制御電流をアシスト機構20に出力する。アシスト機構20の減速機はステアリングシャフト5に取り付けられており、また、減速機は電動モータの出力軸に連結されている。電動モータに制御電流が供給されると、電動モータは操舵アシストトルクを発生させる。操舵アシストトルクは、減速機により増大されてからステアリングシャフト5に伝達される。このようにして、電動パワーステアリングシステムでは、ハンドル4に加えられた操舵力に応じた操舵アシストトルクを発生させ、ステアリングシャフト5に付加している。なお、本実施形態では、コラムアシスト方式の電動パワーステアリング装置を採用しているが、ピニオンアシスト方式又はラックアシスト方式の電動パワーステアリング装置を採用してもよい。
また、車両1には、前輪側と後輪側のそれぞれにおいて、車両1のロール剛性を高めるためのスタビライザバー30,31が設けられている。スタビライザバー30,31は、概してコの字型を成した棒状の部材であり、左右方向に延びたトーションバー部30A,31Aの両端から右側ロッド部30B,31B及び左側ロッド部30C,31Cが前後方向に延びて一体的に形成されている。右側ロッド部30B,31Bの先端は、右車輪側のサスペンション3FR,3RRの一部に固定されている。また、左側ロッド部30C,31Cの先端は、左車輪側のサスペンション3FL,3RLの一部に固定されている。車両1がカーブ路を旋回して走行するときには、車両1に作用する遠心力により車両1にロールが生じる。このとき、左右サスペンション3FL〜3RRは逆相状態に変形し、右側ロッド部30B,31Bと左側ロッド部30C,31Bのサスペンション取付位置は相対的に上下方向に移動する。これにより、スタビライザバー30,31がねじられ、そのねじれ量に応じた弾性力が発生する。スタビライザバー30,31の弾性力により、車両1の旋回時の姿勢変化(ロール)が抑制される。
上述したスタビライザには、スタビライザバー30,31のねじり剛性を調節して車両1のロール剛性を調節するアクティブスタビライザシステムが設けられている。アクティブスタビライザシステムでは、各トーションバー部30A,31Aの中間部分に、モータを用いて各トーションバー部30A,31Aのねじれ量を調節可能とするロール剛性可変アクチュエータ32,33が配設されており、これから離れた位置にアクティブスタビライザシステム(ASS)用のコントローラ34が配設されている。ASS用コントローラ34は、電子コントロールユニット(Electrical Control Unit:ECU)と、制御電流を生成するためのモータ駆動回路などを含んで構成されている。ASS用コントローラ34は、横G(横方向加速度)センサ44の検出出力を取り込んで、横方向加速度の大きさ及び方向に応じて所望のロール剛性を得るためのモータ指令値を演算し、このモータ指令値をモータ駆動回路に与えて各ロール剛性可変アクチュエータ32,33を制御している。これにより、前輪側及び後輪側のスタビライザバー30,31のねじれ剛性が調節され、車両姿勢が好適に調節される。また、ASS用コントローラ34は、別の処理として、ヨーレートセンサ45及び操舵角センサ43の検出出力を取り込んで、これらの検出出力に応じて車両挙動を安定化する制御も行っている。なお、ロール剛性可変アクチュエータ32,33に動作異常が発生して、ロール剛性の調節機能が故障した場合には、ロール剛性可変アクチュエータ32,33の設定はロックされ、ロール剛性が固定される。ASS用コントローラ34は、ロール剛性可変アクチュエータ32,33に動作異常が発生したことを検出可能であり、動作異常を検出した場合には動作異常が発生したことを示す故障信号をEPS用コントローラ21に出力する。なお、本実施形態では、モータを利用したアクティブスタビライザシステムを採用しているが、特開2003−226127号公報に示されるアクティブスタビライザシステムのように油圧を利用したものを採用してもよい。
上述したように、車両1には、EPS用コントローラ21及びASS用コントローラ34による制御に利用する各種センサが設けられている。車輪速センサ41は、各車輪2FL〜2RRごとに設けられている。車輪速センサ41は、各車輪2FL〜2RRの回転速度を検出するためのセンサである。車輪速センサ41の検出値から車速が算出される。また、操舵トルクセンサ42及び操舵角センサ43は、ハンドル4の基部に設けられている。操舵トルクセンサ42は、運転者によりハンドル4に加えられた操舵トルクを検出するためのセンサである。操舵角センサ43は、ハンドル4の操舵角を検出するためのセンサである。操舵角センサ43の検出値から操舵角速度が算出される。また、横Gセンサ44は、車両1の左右方向に作用する加速度を検出するセンサである。また、ヨーレートセンサ45は、車両1のヨーレートを検出するセンサである。
次に、上述したEPS用コントローラ21が有する機能について説明する。図2は、EPS用コントローラ21の機能ブロック図である。EPS用コントローラ21には、ECUにより実現される機能ブロックとして、正常時用の基本アシスト制御量設定部22、異常時用の基本アシスト制御量設定部23、アシスト制御量切り替え部24、ダンピング制御量設定部25及び加算器26が設けられている。また、EPS用コントローラ21には、アシスト機構20のモータを駆動するための電流を生成するモータ駆動回路27が設けられている。以下、各機能ブロックについて説明する。
アクティブスタビライザシステムの正常時用の基本アシスト制御量設定部22は、車両1の車速について所定間隔ごとに、アシスト制御量のマップを有している。各アシスト制御量のマップでは、操舵トルクの所定間隔ごとの値に対して好適なアシスト制御量が設定されている。アシスト制御量の設定値は、操舵トルクが大きくなるほど増大する傾向にあり、これにより、ハンドル4の操舵量に応じた操舵アシストトルクを発生させることを可能としている。正常時用の基本アシスト制御量設定部22は、このアシスト制御量のマップを利用して、車両1の走行状況に適したアシスト制御量KaC_Nを演算する。即ち、正常時用のアシスト制御量設定部22は、操舵トルクセンサ42及び車輪速センサ41の検出出力を取り込む。次に、車輪速センサ41の検出出力から車速を算出して、当該車速に応じたアシスト制御量のマップを選択する。そして、選択されたアシスト制御量のマップにおいて、操舵トルクセンサ42により検出された操舵トルクに対応するアシスト制御量KaC_Nを読み出す。
アクティブスタビライザシステムの異常時用の基本アシスト制御量設定部23は、正常時用の基本アシスト制御量設定部22と類似した機能を有しており、正常時用の基本アシスト制御量設定部22とはアシスト制御量のマップの設定値が異なる点で相違している。詳細には、異常時用の基本アシスト制御量設定部23は、車両1の車速について所定間隔ごとに、アシスト制御量のマップを有しており、各アシスト制御量のマップでは、操舵トルクの所定間隔ごとの値に対して好適なアシスト制御量が設定されている。アシスト制御量の設定値は、操舵トルクが大きくなるほど増大する傾向にあり、これにより、ハンドル4の操舵量に応じた操舵アシストトルクを発生させることを可能としている。ここで、同一の速度及び同一の操舵トルクにおけるアシスト制御量の設定値を、正常時用と異常時用で比較すると、異常時用のアシスト制御量は正常時用のアシスト制御量よりも小さな値が設定されている。これにより、アクティブスタビライザシステムが動作異常となったときの操舵アシストトルクを低減し、運転者がハンドル4を操舵するときに感じる手応えを大きくすることを可能としている。なお、異常時用の基本アシスト制御量設定部23によるアシスト制御量KaC_Hの演算方法は、正常時用の基本アシスト制御量設定部22の演算方法と同じである。
アシスト制御量切り替え部24は、正常時用のアシスト制御量KaC_N、又は異常時用のアシスト制御量KaC_Hを選択的に出力する。即ち、アシスト制御量切り替え部24は、ASS用コントローラ34から故障信号の入力がない場合には、正常時用の基本アシスト制御量設定部22により読み出されたアシスト制御量KaC_Nを加算器26に出力する。一方、アシスト制御量切り替え部24は、ASS用コントローラ34から故障信号の入力がある場合には、異常時用の基本アシスト制御量設定部23により読み出されたアシスト制御量KaC_Hを加算器26に出力する。
ダンピング制御量設定部25は、車両1の車速について所定間隔ごとに、ダンピング制御量のマップを有している。各ダンピング制御量のマップでは、操舵角速度の所定間隔ごとの値に対して好適なダンピング制御量が設定されている。ダンピング制御量の設定値は、操舵角速度のゼロ付近ではゼロであり減衰特性を示さない。一方、操舵角速度が大きくなり、操舵角速度が予め設定された第一閾値を超えると徐々にマイナス方向に大きくなり、さらに予め設定された第二閾値を超えると一定値となる。また、操舵角速度が小さくなり、操舵角速度が予め設定された第一閾値を下回ると徐々にプラス方向に大きくなり、さらに予め設定された第二閾値を下回ると一定値となる。ダンピング制御量設定部25は、このダンピング制御量のマップを利用して、好適なダンピング制御量DVCを演算する。即ち、ダンピング制御量設定部25は、車輪速センサ41及び操舵角センサ43の検出出力を取り込む。次に、車輪速センサ41の検出出力から車速を算出して、当該車速に応じたダンピング制御量のマップを選択する。そして、操舵角センサ43の検出出力を微分して操舵角速度を算出し、当該操舵角速度に対応するダンピング制御量DVCを、選択されたダンピング制御量のマップから読み出す。このようなダンピング制御量の設定により、運転者により急な操舵が行われる場合には、ハンドル4の操舵に必要なトルクを大きくし、運転者がハンドル4を操舵するときに感じる手応えを大きくして、操舵安定性及び操舵フィーリングを向上している。
加算器26は、アシスト制御量切り替え部24から出力されたアシスト制御量KaCとダンピング制御量設定部25から出力されたダンピング制御量DVCを加算して、この加算値をモータ電流指令値MAとしてモータ駆動回路27に出力する。モータ駆動回路27は、モータ電流指令値MAを取り込むと、このモータ電流指令値MAに応じた電流を生成して、アシスト機構20の電動モータに供給する。このようにして、アシスト機構20の電動モータが駆動される結果、操舵力伝達系に操舵アシストトルクが付加され、運転者の操舵が補助される。なお、電動モータではロータの回転位置が検出されており、検出出力がEPS用コントローラ21に入力されてフィードバック制御が行われている。
次に、EPS用コントローラ21内のECUによるアシスト機構の制御処理について説明する。図3は、車両1の走行中にECUにより行われる制御処理を示すフローチャートである。ECUは、図3に示す一連の制御処理を、車両走行中に繰り返し行っている。この制御処理では、先ず、各車輪速センサ41及び操舵トルクセンサ42の検出出力を取り込む(ステップ301)。ここで、車輪速センサ41の検出出力から車速を算出する。そして、検出された操舵トルクと車速に基づいて、正常時用のアシスト制御量のマップを参照して、正常時用のアシスト制御量KaC_Nを演算する(ステップ302)。また、同様に、検出された操舵トルクと車速に基づいて、異常時用のアシスト制御量のマップを参照して、異常時用のアシスト制御量KaC_Hを演算する(ステップ303)。次に、各車輪速センサ41及び操舵角センサ43の検出出力を取り込む(ステップ304)。ここで、操舵角センサ43の検出出力を微分して操舵角速度を算出する。また、車輪速センサ41の検出出力から車速を算出する。そして、算出された操舵角速度と車速に基づいて、ダンピング制御量のマップを参照して、ダンピング制御量DVCを演算する(ステップ305)。
次に、ASS用コントローラ34から故障信号が入力されているか否かを判定する(ステップ306)。故障信号が入力されていないと判定された場合には、正常時に対応したアシスト制御を行うためにステップ307に進む。ステップ307では、以降の処理で利用する基本アシスト制御量KaCに、ステップ302で求めた正常時用の基本アシスト制御量KaC_Nを設定し、ステップ309に進む。一方、ステップ306において、故障信号が入力されていると判定された場合には、異常時に対応したアシスト制御を行うためにステップ308に進む。ステップ308では、以降の処理で利用する基本アシスト制御量KaCに、ステップ303で求めた異常時用の基本アシスト制御量KaC_Hを設定し、ステップ309に進む。
ステップ309では、基本アシスト制御量KaCとダンピング制御量DVCを加算して、モータ電流指令値MAを演算する。EPS用コントローラ21は、モータ電流指令値MAをモータ駆動回路27に出力する。モータ駆動回路27は、モータ電流指令値MAに応じた電流を生成して、アシスト機構20のモータに供給する。これにより、所望の操舵アシストトルクがステアリングシャフト5に付加される。最後に、イグニッションキーがオフであるか否かを判定する(ステップ310)。これにより、車両が停止しているか否か、言い換えれば、操舵アシストトルクを付加し続ける必要があるか否かが判定される。当該判定が肯定される場合には、車両1は停止状態であるため処理を終了する。一方、当該判定が否定される場合には、ステップ201からステップ209までの処理を繰り返し、操舵アシストトルクをステアリングシャフト5に付加し続ける。
上述した実施形態では、アクティブスタビライザシステムの動作異常が発生した場合に、アシスト制御量のマップを正常時用のマップから異常時用のマップに切り替えている。これにより、アクティブスタビライザシステムの動作異常が発生したときに操舵アシストトルクを正常時よりも低減させている。従来技術では、アクティブスタビライザシステムの動作異常が発生して車両1のロール剛性が調節不能となった場合に、車両1の過剰なロールにより各車輪2FL〜2RRの接地力が低減して、運転者がハンドル4から受ける手応えが小さくなってしまっていた。これに対して、本実施形態では、アクティブスタビライザシステムの動作異常が発生したときの操舵アシストトルクを正常時よりも低減させることで、運転者がハンドル4から受ける手応えを大きくして、運転者がハンドル4を操舵するのに要するトルクが変化しないようにしている。これによれば、アクティブスタビライザシステムの故障時において、運転者がハンドル4を操舵するのに違和感を覚えることがなく、運転者の操舵フィーリングを維持することができる。さらには、アクティブスタビライザシステムの故障前後で操舵フィーリングが変化しないので、安定した車両1の運転が可能となっている。
また、本実施形態では、アクティブスタビライザの動作異常が発生した場合に、正常時用のマップから異常時用のマップに切り替えるだけで、運転者がハンドル4から受ける手応えの変化に対応しているので、アクティブスタビライザの動作異常に迅速に対応することができる。また、特に本実施形態では、操舵トルク及び車速に応じてアシスト制御量が設定された基本アシスト制御のマップを切り替えるため、各車輪2FL〜2RRの接地力の低減に対応して好適に操舵アシストトルクを低減させることができる。即ち、操舵トルク及び車速は車両1のロール感と相関度が高い。言い換えれば、操舵トルク及び車速は、車両1の過剰なロールによる各車輪2FL〜2RRの接地力の低減と相関度が高い。よって、基本アシスト制御のマップにおいて、操舵トルク及び車速に応じて操舵アシストトルクの低減量を適度に設定することで、ハンドル4を操舵するのに要するトルクを好適に調節することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、電動モータにより操舵アシストトルクを付加する電動パワーステアリング装置が採用されているが、油圧により操舵アシストトルクを付加する油圧式パワーステアリング装置が採用されてもよい。これによれば、アクティブスタビライザの動作異常が生じた際に制御油圧を低下させることで、操舵アシストトルクを低減させてから操舵力伝達系に付加する。
実施形態に係るパワーステアリング装置が搭載された車両の構成を示す概略図である。 電動パワーステアリングシステム用コントローラの機能ブロック図である。 電動パワーステアリングシステム用コントローラの処理を示すフローチャートである。
符号の説明
1…車両、2FL〜2RR…車輪、3FL〜3RR…サスペンション、4…ハンドル、5…ステアリングシャフト、6…ステアリングギヤボックス、7…ピニオン、8…ラック、9,10…タイロッド、20…アシスト機構、21…EPS用コントローラ、22…正常時用のアシスト制御量設定部、23…異常時用のアシスト制御量設定部、24…アシスト制御量切り替え部、25…ダンピング制御量設定部、26…加算器、27…モータ駆動回路、30,31…スタビライザバー、32,33…ロール剛性可変アクチュエータ、34…ASS用コントローラ、41…車輪速センサ、42…操舵トルクセンサ、43… 操舵角センサ、44…横Gセンサ、45…ヨーレートセンサ。

Claims (3)

  1. ハンドルに加えられた操舵力に応じた補助操舵力を操舵力伝達系に付加するパワーステアリング装置において、
    アクティブスタビライザの動作異常が生じた場合に、前記操舵力に応じた補助操舵力を動作正常時に比べて低減させること、
    を特徴とするパワーステアリング装置。
  2. 補助操舵力を発生させるモータと、当該モータを制御するモータ制御手段と、を備えており、
    前記モータ制御手段は、アクティブスタビライザの動作異常が生じた場合に、前記補助操舵力の設定値を、動作正常時用の設定値から動作異常時用の設定値に切り替えてモータ制御を行うこと、
    を特徴とする請求項に記載のパワーステアリング装置。
  3. 前記補助操舵力の設定値は、アシスト制御の設定値とダンピング制御の設定値を含み、
    前記モータ制御手段は、アクティブスタビライザの動作異常が生じた場合に、アシスト制御の設定値を、動作正常時用の設定値から動作異常時用の設定値に切り替えてモータ制御を行うこと、
    を特徴とする請求項に記載のパワーステアリング装置。

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