JP4221536B2 - トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体中の残留有機溶媒の低減化方法 - Google Patents
トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体中の残留有機溶媒の低減化方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体中に残留する溶媒を粒子表面から揮発成分の蒸発下、特に気流中に機械粉砕等によって除去することにより該結晶体中の残留有機溶媒を低減化する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年のソルダーレジスト材料に対する要求特性、例えば密着性、電気絶縁性、はんだ耐熱性、耐溶剤性の高まりから現在、感光性のプレポリマーと熱硬化性樹脂を併用したソルダーレジストインキ組成物が使用されている。つまり、感光性プレポリマーによってソルダーレジストパターンを形成させた後、熱硬化によって上記要求特性を満たそうとしている。さらに昨今のエレクトロニクス機器の軽量小型化に伴うプリント配線基板の高密度化、部品の表面実装化に対するソルダーレジストパターン形成時の低にじみ化および回路間への埋め込み性の精密化などの要求性が高まっている。そのためソルダーレジストインキに併用される熱硬化樹脂は、耐溶剤性の高い、微粒状の固体エポキシが望まれる。
【0003】
以上のような要求特性を満たす固体エポキシとしてトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートが挙げられる。トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートには、不斉炭素が3つ存在し、その不斉炭素が3つとも揃った(2R,2’R,2”R)−トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートと(2S,2’S,2”S)−トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートの等モルの混合物である結晶は一般にβ型結晶と呼ばれ、150℃程度の高融点型結晶を与えることが知られている。これはこの2種の鏡像異性体同士が一対で強固な6個の水素結合を持つ分子格子となり、結晶格子を形成しているためである。一方、3つの不斉炭素のうち1つだけ光学異方性の異なる(2R,2R,2S)−トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートと(2S,2S,2R)−トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートの混合物からなる結晶は、一般にα型結晶と呼ばれ上記のような結晶構造ではないために100℃程度の低い融点しか与えない。β型のトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体は、融点が高いだけでなく、各種溶媒に対する溶解性がきわめて低い為に異種化合物や反応性高分子の架橋剤として一液型の反応性混合物として用いた際、強制的に硬化するまでの保存時の反応が進行しない。これまでに電気、電子材料用途、例えば光硬化・熱硬化併用型のソルダーレジストインキ組成物に使用されている。
【0004】
液状エポキシ組成物は溶媒にエポキシ化合物の一部が溶解するため保存中に増粘したり、感光性プレポリマーとからみつきを生じるため未露光部分を洗い流す時の溶出不良となる恐れがある。特公平7−17737号ではβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートを難溶性エポキシ化合物として使用している。高融点で難溶性であるβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート微粒子は、感光性プレポリマーに包まれた状態にあり、未露光部分の感光性プレポリマーの溶解性を低下させることもない。また、有機溶剤に難溶性であるため露光部は現像液に侵されにくく、感度低下を生じることはない。さらに、ソルダーレジストインキ組成物の保存安定性にも優れる。
【0005】
ところで従来、トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートからβ型のトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートとα型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートを分割製造する方法としては、α型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートを比較的良く溶解し、β型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートを溶解し難い溶媒、例えばメタノールなどのアルコール類を用いた分割方法があった。例えば、ジャーナル オブ サーマル アナリシス(Journal of Thermal Analysis)Vol.36(1990)第1819頁ではメタノール溶媒を使用して分割している。また、プラステ ウンド カウテスチュク(Plaste und Kautschuk)23Jahrgang Heft4/1975ではまず、メタノール溶媒を使用してβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートを分割した後、β型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートをクロロホルムで精製している。さらに高分子論文集47巻、No.3(1990)第169頁では合成して得られたトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートをメタノールに投入し、加熱、攪拌して未溶解分を濾別、得られた未溶解物をメチルエチルケトンで再結晶してβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートの結晶を得ている。
【0006】
このような分割方法で得られたβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートの多くは結晶成長し難く、粒子径が小さいため、濾過工程において濾過作業を著しく困難にする。そのため晶析で得られる結晶が細かすぎるのは好ましくない。
【0007】
また、以上のような分割方法の1回の分割操作ではβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶中に晶析溶媒や含塩素不純物、その他の不純物を包含し易いため、さらに再結晶するか結晶を一度、溶融するなどして除去する必要がある。
【0008】
特公昭48−24039号では、シアヌール酸とエピクロルヒドリンとを反応させたイソシアヌール酸のクロルヒドリンエステルを、アルカリで脱塩酸して生じるアルカリ金属塩化物を分離し、得られたトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートのエピクロルヒドリン溶液を濃縮してトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート濃度50〜60%にした後、20〜25℃に冷却してシアヌール酸基準収率27%でトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートの結晶を得ている。しかし、エピクロルヒドリン溶液から晶析させているため、結晶内部にエピクロルヒドリンなどを多量に包含されるという問題がある。さらにエピクロルヒドリンは人体に有害であるだけでなく、電子材料用途に有害な加水分解性塩素で構成されているため極力少ない方が望ましい。この結晶中のエピクロルヒドリンを除去するには結晶を融点以上に加温し、一度溶融しない限り、残留エピクロルヒドリンを除去するのは不可能であった。このような方法では製造工程がより複雑になり、製造コストもかかり、工業的でない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明はトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体、特にβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体の残留有機溶媒、特にエピクロルヒドリンの残存量がきわめて低くする方法を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、シアヌール酸とエピクロルヒドリンとを触媒の存在下に反応させて得られるイソシアヌール酸のクロルヒドリンエステルを、アルカリで脱塩酸して生じるアルカリ金属塩化物を分離し、得られたトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートを含有する反応溶液から晶析させて得られたβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体粒子を該粒子表面から揮発成分の蒸発下に粉砕することによる、β型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体中の残留有機溶媒の低減化方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本願発明において、粒子表面から揮発成分が蒸発する粉砕とは、気流中で行われる粉砕や、減圧下で行われる粉砕が挙げられる。特に気流中で行われる粉砕は有効である。
【0012】
気流中での粉砕は、例えばALPINE製200AFG型カウンタージェットミル、クリモト製KJ−200型クロスジェットミルなどの粉砕機を用いて行われる。この種の粉砕機は高圧の空気あるいは不活性ガス(例えば窒素)を試料と共に粉砕機内に吹き付けることで試料粒子を衝突させ、粉砕するしくみである。この気体の圧力は1〜10kg/cm2である。この気流量により、粉砕されて新たに生じた粒子表面から揮発成分が蒸発し、結晶中に含まれる有機溶媒が低減される。結晶体粒子は、平均粒子径0.5〜20μmまで粉砕されるまで行われる。この時、粉砕された結晶体粒子の残留有機溶媒の濃度は300ppm以下、通常100〜200ppmで得られる。
【0013】
本願発明ではトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体粒子は、平均粒子径20〜500μmの如何なるトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体も本願発明に使用する事ができるが、特にβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体粒子を好ましく用いることができる。
【0014】
このβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体は、例えばシアヌール酸とエピクロルヒドリンとを触媒の存在下に反応させて得られるイソシアヌール酸のクロルヒドリンエステルを、アルカリで脱塩酸して生じるアルカリ金属塩化物を分離し、得られたトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートを含有する反応溶液から晶析させて得ることができる。
【0015】
上記の反応溶液から晶析させる方法では、残留有機溶媒はエピクロルヒドリンである。
【0016】
上記の反応溶液からのβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体は、(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)工程:
(A)工程:(a)シアヌール酸1モル、(b)エピクロルヒドリン5〜180モル、及び(c)触媒として第3級アミン、第4級アンモニウム塩、第4級アンモニウム塩基、トリ置換ホスフィン、及び第4級ホスフォニウム塩よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の化合物0.001〜0.1モルを反応して得られた反応溶液に、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属アルコラートを3〜6モル加えて脱塩酸後、アルカリ金属塩を除去してトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートを含有する反応溶液を得る工程、
(B)工程:(A)工程で得られたトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートを含有する反応溶液を、固形分濃度で10〜50重量%に調製する工程、
(C)工程:(B)工程で得られた液状物に、その液状物が飽和溶液を形成する温度より5〜20℃低い温度で種晶を加える工程、
(D)工程:(C)工程で得られた液状物を、20℃/hr以内の冷却速度で徐冷して濾過し結晶体を得る工程、及び
(E)工程:(D)工程で得られた結晶体を洗浄する工程から製造する事ができる。
【0017】
上記のβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体の製造方法において、(A)工程では(a)シアヌール酸1モル、(b)エピクロルヒドリン5〜180モル、及び(c)触媒として第3級アミン、第4級アンモニウム塩、第4級アンモニウム塩基、トリ置換ホスフィン、及び第4級ホスフォニウム塩よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の化合物0.001〜0.1モルを反応する。
【0018】
(c)触媒の例として、第3級アミンとしては、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N’−ジメチルピペラジン等が挙げられる。また、第4級アンモニウム塩としてはテトラメチルアンモニウムハライド、テトラエチルアンモニウムハライド、テトラブチルアンモニウムハライド等が挙げられ、ハライドとしてはクロライド、ブロマイド、アイオダイド等が挙げられる。また第4級アンモニウム塩基としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドが挙げられる。またトリ置換ホスフィンとしては、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン等が挙げられ、第4級ホスフォニウム塩としてはテトラメチルホスフォニウムハライド、テトラブチルホスフォニウムハライド、メチルトリフェニルホスフォニウムハライド、エチルトリフェニルホスフォニウムハライド等が挙げられ、ハライドとしてはクロライド、ブロマイド、アイオダイド等が挙げられる。ここで挙げた化合物のうち、なかでも第4級アンモニウム塩、第4級ホスフォニウム塩は、より穏和な条件下で副反応が少なく効率的に反応が進行するので好ましい。特に好ましくは第4級アンモニウム塩であり、中でもテトラメチルアンモニウムハライド、テトラエチルアンモニウムハライド、テトラブチルアンモニウムハライドで、ハライドとしてはクロライド、ブロマイドを用いることによって副反応がより抑えられ、反応後の触媒の除去も水洗によって容易に取り除けることから好ましい。
【0019】
以上のようにして得られた反応溶液に、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属アルコラートを3〜6モル加えて脱塩酸後、水洗や濾過によってアルカリ金属塩を分離してトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートを含有する反応溶液が得られる。上記のアルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムが挙げられ、アルカリ金属アルコラートとしてはナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、カリウムエチラートが挙げられる。この様に生成したトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートにはβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートとα型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートを重量比1:3の割合で含んでいる。
【0020】
このようにして得られたトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートを含有する反応溶液は濃縮や希釈により、晶析に適した濃度に調整される。
なお、固形分濃度の測定はロータリーエバポレーターで120℃、5Torr以下で3時間の処理を行う事により乾固させ固形分重量を測定して固形分濃度を算出する事ができる。
【0021】
(B)工程で、トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートを含有する反応溶液の固形分濃度は10重量%〜50重量%、好ましくは25重量%〜40重量%に調製する。
【0022】
この濃度が低すぎると晶析に必要な冷却温度が低温まで冷却しなければならず、十分な得量が得られない。
【0023】
逆にこの濃度が高すぎても晶析に必要な冷却温度を高温に保持させなければならず、その結果として濾過温度も高温に保たなければならない。
【0024】
この晶析に必要な冷却温度範囲を保持する必要性は、晶析された結晶体中にα体よりむしろβ体を選択的に含有させるためである。
【0025】
表1に反応溶液中のトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート固形分濃度(%)と、飽和溶液を形成する温度(℃)及び晶析に必要な冷却温度(℃)の関係を示す。ここで飽和溶液を形成する温度とは、(B)工程で得られた反応溶液を120℃、2Torrで乾固して得られたトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートを粉砕して32メッシュ以下の粉末を得て、エピクロルヒドリンと所定固形分濃度で調整後、激しく攪拌しながら室温より1℃/分の昇温速度で加温し、完全に溶解した時点の温度とした。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
(C)工程では、(B)工程で得られた液状物に、その液状物が飽和溶液を形成する温度より5〜20℃低い温度で種晶を加える。
【0028】
種晶にはβ型又はα型のトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートが用いられる。種晶を加えないで晶析させると冷却中でも過飽和状態が続き、冷却の後半に一気に晶析が起きる。これはエピクロルヒドリンやα型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートなどの不純物の取り込みによる純度の低下を招くなど好ましくない。
【0029】
また、(C)工程では、種晶を加える前に飽和溶液を形成する温度以上に反応溶液を加熱して、反応溶液中のトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートを十分に溶解してから、飽和溶液を形成する温度より5〜20℃低い温度に徐冷して種晶を加えることができる。この方法では得られる結晶体の平均粒子径が均一となるので、濾過性等において好ましい。
【0030】
本願発明では添加した種晶を核として結晶成長が始まる。
【0031】
(C)工程が飽和溶液を形成する温度以上に加熱せずに飽和溶液を形成する温度より5〜20℃低い温度で維持した場合は、この温度では反応溶液中に微小な結晶体が生成し、後から加える種晶と共にこの結晶体も種晶として働き、種晶の個数がコントロールし難い。従って、一度飽和溶液を形成する温度以上に加熱してから、その後飽和溶液が形成される温度より5〜20℃低い温度に冷却して種晶を添加する方が望ましい。
【0032】
(C)工程で種晶を添加した後、好ましくは添加した温度で0.5〜1時間の攪拌を行う。
【0033】
その後(D)工程として徐冷するが、この冷却速度は20℃/hr以内、好ましくは10℃/hr以内である。急冷させた場合は急激な結晶析出が起こり不純物の取り込みによる純度の低下を生ずる為に好ましくない。
【0034】
上記β型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体の製造方法において、(C)工程で種晶を加えない方法で製造する事もできるが、その場合は(D)工程で長時間かけてゆっくりと晶析させる必要がある。その場合は例えば5℃/hr以内の冷却速度で徐冷する必要がある。
【0035】
晶析したβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体は、吸引濾過、フィルタープレス法、遠心濾過法などにより濾別される。
【0036】
(E)工程として、濾別されたβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートは、不純物やα型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートやエピクロルヒドリンが含まれるため各種有機溶媒で洗浄する事ができる。有機溶媒としては例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、エピクロルヒドリンなどがある。
【0037】
洗浄温度は5〜50℃で行うことが出来るが、5〜30℃が好ましい。高温例えば、30〜50℃では溶解度が高まるため溶媒の使用量を節約できるが、引火点や沸点に近い温度での操業となる。遠心濾過機は静電気の引火による事故の恐れが有り、また安全性の高い加圧濾過機では洗浄溶媒へ溶解したα型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートが、加圧ガスの通気により濾材中又はケーキ中で再析出し濾過性が低下する恐れがある。更に溶媒の予熱設備、回収溶媒からα型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートが再析出しないための保温設備が必要となるなど制約がある。更に50℃以上では特別な熱的濾過システムが必要となる。また5℃より低温では多量の溶媒を必要とする。
【0038】
(E)工程を経て得られたβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体は、平均粒子径が10〜500μmである。これらの粒径の中で本願発明には平均粒子径が20μmを越え500μm以下の範囲のものを使用する事ができる。
【0039】
このようにして(E)工程で得られたβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体を、常圧又は減圧下に気流中で100〜140℃、好ましくは120〜140℃の温度で乾燥を行うことにより、残留エピクロルヒドリンを1000ppm以下、特に好ましくは300ppm以下に低減する事が出来る。上記の100〜140℃、好ましくは120〜140℃の温度は、α型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートの融点以上の温度であり、かつβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートの融点以下の温度である。この温度で気流中で乾燥する事により、α型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートを結晶体内部に包含するβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体は、α型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートの部分が溶融し液体化する。この液体部分を通じて、結晶体から不純物のエピクロルヒドリンが結晶体の外に排出される。
【0040】
しかし本願発明では、(E)工程で得られたβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体を100〜140℃、好ましくは120〜140℃の乾燥工程を経ずに、気流中での粉砕工程を行う事のみで該結晶体中の残留有機溶媒を低減する事ができる。
【0041】
粉砕は、β型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体を、平均粒子径0.5〜20μmまで粉砕することにより行われる。この粉砕により残留有機溶媒を300ppm以下に低減する事ができる。
【0042】
粉砕物の平均粒径や粒度分布は粉砕条件や分級ローターによって制御されるが、β型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体を平均粒子径0.5〜20μmに粉砕した方が効率よく結晶内部の有機溶媒を除去できる。粉砕された結晶の平均粒径は小さいほど溶媒の除去率は高いが、この範囲より小さすぎると粉砕効率が低下してしまう。また、平均粒径が20μm以上では溶媒除去率が低い。
【0043】
〈結晶体中に残留するエピクロルヒドリンの定量方法〉
結晶体中に残留するエピクロルヒドリンは、サンプル(結晶体)に20倍量のジメチルホルムアミドを添加し、80℃で加温する事により溶解させ、ガスクロマトグラフィーによって定量する事ができる。
【0044】
【実施例】
(β型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体の製造例)
(A)工程:攪拌装置、温度計、連続滴下装置、及び減圧下にエピクロルヒドリンと水の共沸蒸気を濃縮しエピクロルヒドリンだけを反応系に戻す装置のついたフラスコに、シアヌール酸774g(6モル)、エピクロルヒドリン8328g(90モル)、15.5重量%濃度のテトラメチルアンモニウムクロライド水溶液213g加えて89〜120℃で5時間攪拌しながら還流する事により反応を行った。次に反応系の温度を50℃に冷却させ、攪拌しながら50重量%の水酸化ナトリウム水溶液1536gを50℃に保ちながら100〜60Torrの減圧下、6時間反応して脱塩酸を行った。その後、生成した塩化ナトリウムを水3600gを加えて溶解させる事で洗浄してから分液し、さらに5重量%リン酸2水素ナトリウム水溶液1200gを加えて洗浄する事により、過剰量使用した水酸化ナトリウムを中和し、次いで4800gの水で洗浄した。
(B)工程:反応溶液中の固形分濃度が40重量%になるまで温度70℃、減圧にしてエピクロルヒドリンの一部を留去し、4000gの調整液を得た。
(C)工程:60℃に冷却し、種晶としてβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートを11.2g加えた後、
(D)工程:25℃まで4時間で冷却してβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体を析出させ、濾別した。。
(E)工程:得られた結晶体を1200gのメタノールで洗浄し濾過を行った。得られたケーキは、80℃で5Torrの減圧下、4時間乾燥して280gの収量でβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体が得られた。得られた結晶体は、残留するエピクロルヒドリン量が700ppm、エポキシ当量101g/eq.、融点は148〜158℃であり、平均粒子径75μmの白色結晶であった。
【0045】
実施例1
製造例で得られたβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体をALPINE製200AFG型カウンタージェットミルにて粉砕した。粉砕は窒素圧6.0kg/cm2、窒素量400Nm3/h、サンプル供給量40kg/h、分級ローターを5000rpmで行った。粉砕、分級によって平均粒径75μmあった結晶は平均粒径3.0μmに微粉砕され、残留するエピクロルヒドリンは700ppmから180ppmに低減した。
【0046】
実施例2
製造例で得られたβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体をALPINE製200AFG型カウンタージェットミルにて粉砕した。粉砕は窒素圧6.0kg/cm2、窒素量800Nm3/h、サンプル供給量30kg/hで行い、分級ローターを12000rpmにして粉砕した。粉砕によって平均粒径75μmあった結晶は平均粒径1.5μmに微粉砕され、残留するエピクロルヒドリンは90ppmに低減された。
【0047】
参考例1
製造例で得られた結晶を更に、120゜C、5Torrの減圧下、4時間乾燥させた。残留するエピクロルヒドリンは200ppmであった。
【0048】
【発明の効果】
本願発明は、トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体粒子を該粒子表面から揮発成分の蒸発下に平均粒子径0.5〜20μmまで粉砕することによる、トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体中の残留有機溶媒を除去することができる。
【0049】
従来の再結晶法で得られるトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体では、結晶体内部に取り込まれた残留有機溶媒の除去はトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートの融点以上の温度に加熱して有機溶媒を除去していた。β型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体では150℃以上の高温での加熱が必要であった。
【0050】
また、トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートを含有する反応溶液から、α型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートを含有するβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体を析出させる方法でも100〜140℃、好ましくは120〜140℃の温度に加熱して、該結晶体中のα型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートを溶融して結晶体中にできた溶融部分を通じて有機溶媒(エピクロルヒドリン)を除去することも可能であるが、本願発明ではトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体を気流中で粉砕する事のみで有機溶媒を除去することができた。特にβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体からの残留有機溶媒の除去に有効である。
Claims (5)
- シアヌール酸とエピクロルヒドリンとを触媒の存在下に反応させて得られるイソシアヌール酸のクロルヒドリンエステルを、アルカリで脱塩酸して生じるアルカリ金属塩化物を分離し、得られたトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートを含有する反応溶液から晶析させて得られたβ型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体粒子を該粒子表面から揮発成分の蒸発下に粉砕することによる、β型トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート結晶体中の残留有機溶媒の低減化方法。
- 粒子表面から揮発成分が蒸発する粉砕が、気流中で行われる粉砕である請求項1に記載の残留有機溶媒の低減化方法。
- 結晶体粒子を平均粒子径0.5〜20μmまで粉砕する請求項1又は請求項2に記載の残留有機溶媒の低減化方法。
- 残留有機溶媒の濃度が300ppm以下である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の残留有機溶媒の低減化方法。
- 残留有機溶媒がエピクロルヒドリンである請求項1乃至請求項4のいずれか 1 項に記載の残留有機溶媒の低減化方法。
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