JP4220917B2 - フレッチング摩耗評価装置 - Google Patents

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本発明はフレッチング摩耗評価装置、特に一対の試験体の一方に荷重を印加しつつ他方の試験体を水平面内で微小変位させてフレッチング摩耗を評価する技術に関する。
機械部品の摩擦面における摩耗の一態様としてフレッチング摩耗がある。このフレッチング摩耗は、機械の嵌めあい部のように微小振動や変動応力を受ける部分に接触面が存在する場合で当該接触面に何らかの相対運動が生じるときに起こる摩耗であり、例えばスプライン軸などに生じ得る。機械部品の耐フレッチング摩耗特性を向上させるためには、その前提として2つの部品間のフレッチング摩耗量を正確に評価する必要があり、特に潤滑油が存在する状況下において正確に評価できる技術が求められている。
従来より、一方の試験体を他方の試験体に当接させ、一方の試験体を水平面内で微小変動させることによりフレッチング摩耗を評価する装置が知られているが、水平方向のみに試験体を往復変動させるのみでは当接面への潤滑油の浸入がないため潤滑油のフレッチング摩耗特性を評価することができない問題がある。この問題を解決するためには、潤滑油を接触面に浸入させるべく、一対の試験体を互いに分離させる必要がある。
特開平6−308006号公報
一方、水平方向に試験体を微小変動させる、あるいはこれに加えて鉛直方向に試験体を微小変動させる場合にも、従来においては水平方向あるいは鉛直方向に微小変動するための専用のガイド(軸受)を用いており、ガイド(軸受)および駆動源自体にフレッチング摩耗が発生してしまい本来評価すべき一対の試験体のフレッチング摩耗量を正確に評価できない問題があった。
本発明の目的は、一対の試験体のフレッチング摩耗を正確に評価すること、および潤滑油存在下におけるフレッチング摩耗を正確に評価し、これにより耐フレッチング摩耗特性に優れた部材や潤滑油、グリースなどの開発に供することのできる評価装置を提供することにある。
本発明のフレッチング摩耗評価装置は、第1の部材および第2の部材を接触させつつ、鉛直方向に配置し、前記第1の部材を水平面内の一方向に微小振動させる水平方向駆動手段と、前記第2の部材を鉛直面内の一方向に微小変位させることで前記第1の部材に対する前記第2の部材の荷重を変動させる鉛直方向駆動手段とを有し、前記水平方向駆動手段は、水平方向に変位する第1のピエゾ素子と、その一端が前記第1のピエゾ素子に連結されるとともに他端が前記第1の部材に連結され、前記第1のピエゾ素子の変位を増減して前記第1の部材に伝達する第1の可撓ステージと、を有し、前記鉛直方向駆動手段は、鉛直方向に変位する第2のピエゾ素子と、その一端が前記第2のピエゾ素子に連結されるとともに他端が前記第2の部材に連結され、前記第2のピエゾ素子の変位を増減して前記第2の部材に伝達する第2の可撓ステージと、を有し、前記鉛直方向駆動手段は、前記第2の部材に対して所定の荷重を印加した状態が維持される期間と、前記荷重の印加が解除されることにより前記第1の部材および第2の部材の間への潤滑油の侵入が許容される期間と、が周期的に繰り返されるようなタイミングで微小変位し、前記水平方向駆動手段は、前記鉛直方向駆動手段の微小変位タイミングに同期して前記第1の部材を微小振動させるものであって、前記鉛直方向駆動手段が前記第2の部材に対して所定の荷重を印加した状態が維持される期間に前記第1の部材を1周期分微小振動させる
本発明においては、第1の部材を水平面内で微小変位させつつ、第2の部材を鉛直面内で微小変位させることで荷重を変動させ、これにより実機に生じるフレッチング摩耗現象を正確に再現するとともに、潤滑油を一対の試験体間に浸入させ、潤滑油存在下におけるフレッチング摩耗を評価する。
本発明では、一対の試験体をそれぞれ水平面内及び鉛直面内で微小変位させ、フレッチング摩耗を評価することができる。また、本発明では、試験体の間に潤滑油等を容易に浸入させることができるので、潤滑油存在下におけるフレッチング摩耗評価、あるいはフレッチング摩耗に対する潤滑油の性能評価を行うことができる。
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1には、本実施形態に係るフレッチング摩耗評価装置の概念図が示されている。鉛直方向に変位するZ方向ピエゾ(PZT)アクチュエータ10が設けられ、このZ方向ピエゾアクチュエータ10には可撓(フレクシャー)のZ方向ステージ12が連結される。Z方向ステージ12の一端には、一対の試験体18の一方の試験体であるボール18aが支持固定される。
また、水平面内のX方向(図中、紙面に対して垂直方向)に変位するX方向ピエゾ(PZT)アクチュエータ14が設けられる。X方向ピエゾアクチュエータ14には可撓のX方向ステージ16が連結される。X方向ステージ16の一端には一対の試験体18の他方の試験体であるプレート18bが支持固定される。一対の試験体であるボール18aおよびプレート18bは、図示のごとく互いに当接するように配置される。
Z方向ピエゾアクチュエータ10の鉛直方向の微小振動はZ方向ステージ12を介してボール18aに伝達され、ボール18aは鉛直方向に微小振動する。この鉛直方向の振動により、ボール18aの荷重が変動する。また、X方向ピエゾアクチュエータ14のX方向の微小振動はX方向ステージ16を介してプレート18bに伝達され、プレート18bは水平面内で微小振動する。ボール18aおよびプレート18bは、当接状態で互いに直交する2軸方向に相対的に微小振動することとなり、例えばスラスト力を受けつつ回転するスプライン軸の摩擦面に生じるフレッチング摩耗現象を再現あるいはシュミレートできる。特に、ボール18aをZ方向に微小振動させることで、ボール18aとプレート18bとの間のクリアランスが確保され、潤滑油の浸入を許すこととなるため、潤滑油存在下におけるフレッチング摩耗を評価することができる。
なお、図ではZ方向ピエゾアクチュエータ10及びZ方向ステージ12はともにZ方向に変位しているが、Z方向ピエゾアクチュエータ10は必ずしもZ方向に変位する必要はなく、Z方向ステージ12の形状を工夫することで、結果的にZ方向ピエゾアクチュエータの変位方向をZ方向の変位方向に変換すればよい。X方向ピエゾアクチュエータ14についても同様であり、X方向ピエゾアクチュエータ14自体は水平面内のY方向に変位し、X方向ステージ16により試験体の変位方向をX方向に変換すればよい。
図2には、図1に示されたフレッチング摩耗評価装置の制御ブロック図が示されている。信号発生器50からアナログ信号はコントローラ52に供給される。コントローラ52は、アナログ信号に基づきピエゾ(PZT)ドライバ54にアナログ制御信号を供給する。ピエゾドライバ54は、このアナログ制御信号に基づきZ方向ステージ12、X方向ステージ16及び試験体18を含むステージユニット56を駆動する。ステージユニット56にはX方向の変位(ストローク)やZ方向の変位(荷重)を検出するセンサが設けられており、これらセンサからの検出信号はコントローラ52に帰還される。コントローラ52は、センサからの検出信号に基づきピエゾドライバ54を帰還制御し、ボール18aおよびプレート18bが所望の変位となるように駆動する。具体的には、ボール18aが鉛直方向に1周期振動する間に、プレート18bを水平方向に1周期振動させる等である。振動の振幅は、フレッチング摩耗が生じる数ミクロン程度とする。
図3には、コントローラ52で制御するステージユニット56のZ方向変位(荷重)およびX方向変位(ストローク)の時間変化を示すタイミングチャートが示されている。コントローラ52は、周期的に荷重が増減するようにZ方向ピエゾアクチュエータ10を駆動する。具体的には、荷重0の状態からリニアにL0まで増大し、その後所定期間だけ荷重L0を維持し、その後荷重L0から荷重0までリニアに減少する変動パターンを周期的に繰り返す。時間軸上では荷重変化は台形状のパターンとなる。
また、コントローラ52は、荷重がL0で一定となる所定期間においてプレート18bがX方向に1周期分だけ微小振動するようにX方向ピエゾアクチュエータ14を駆動する。図において、荷重L0となる期間t1〜t2においてX方向に1周期分だけ微小振動させる様子が示されている。このような制御を実行することで、荷重印加状態におけるフレッチング摩耗を評価できるとともに、荷重0の期間において潤滑油がボール18aとプレート18b間に浸入し、次の荷重印加期間における微小振動により潤滑油存在下におけるフレッチング摩耗を評価できる。
なお、Z方向ステージ12およびX方向ステージ16は、それぞれピエゾアクチュエータと試験体18a、18bとの間に連結され、ピエゾアクチュエータの変位をその内部構造により適当な比率に増減させて試験体18a、18bに伝達する機能を有する。すなわち、一般にピエゾ素子(圧電素子)は出力荷重は比較的大きいものの、出力変位は小さく、単体ではフレッチング摩耗を評価するために必要な振動振幅(ミクロンオーダの振幅)を得ることが困難であり、可撓ステージを介在させることでピエゾ素子の変位を所望量の変位まで増減させて試験体18a、18bを微小振動させている。
図4および図5には、ステージ12,16の構造が例示されている。図4において、ステージ12,16は幅が不均一な長尺形状をなし、幅広部分の一端Oで基台に片持ち支持され、長さ方向にa:bの比率点となる点Pにてピエゾアクチュエータ10,14に連結される。また、ステージ12、16の点Oとは反対側で幅狭部分の他端Qにおいて試験体18a,18bが連結される。長さの比率であるa:bに応じて力点Pに生じるピエゾ素子の変位x1が増減されて作用点Qにx3として出現する。作用点Qの下方にボール18aを連結する場合、変位x3に応じてボールの荷重F3が増減する。ステージ12,16の厚さ(紙面の垂直方向)を適切に確保することで、その方向の剛性を確保できる。図4の構成では、ガイド軸受は不要となる。
また、図5においては、ステージ12,16は屈曲形状をなし、互いに所定距離だけ離間した3つのヒンジ部を有する。3つのヒンジ部の2つは同一直線上にあり、残りの一つはこれらと距離hだけずれて配置される。残り一つのヒンジ部でステージ12,16を基台に支持される。屈曲形状のステージ12,16の一端はX方向に延在し、他端はY方向に延在しており、X方向に延在する部位の一端をピエゾアクチュエータ10,14に連結し、Y方向に延在する部位の一端に試験体を連結する。ピエゾアクチュエータ10、14の変位によりX方向に延在する部位がY方向にx1だけ変位し、これにより基台に支持されたヒンジ部が撓み、Y方向に延在する部位がX方向にx3だけ変位する。Y方向に延在する部位の長さを調整することで、x3を増減調整できる。
もちろん、これらの構成は例示に過ぎず、当業者であれば他の形状を採用することができる。
図6には、本実施形態におけるフレッチング摩耗評価装置の詳細構成図が示されている。Z方向ピエゾアクチュエータ10にはZ方向ステージ12が設けられ、Z方向ステージ12にはダイヤフラムを介して荷重を検出するロードセル20が連結されている。ロードセル20には治具を介して一対の試験体18のうちのボール18aが設けられる。
一方、試験体18を構成する他方のプレート18bはベース22に支持される。ベース22はその内部に加熱用ヒータが組み込まれており、熱負荷状態において試験体18を微小振動できるように構成されている。すなわち、熱負荷を種々に変化させて試験体18の温度や潤滑油の温度(粘度)を変化させた状態での評価が可能である。ベース22はステージ16に連結され、ステージ16は一対の板バネ24により挟持されつつX方向ピエゾアクチュエータ14に連結される。一方の板バネ24は、ステージ16のX方向振動を可能とするとともに、鉛直方向の剛性を確保する機能を有する。図6のステージ12,16は、図4に示された基本構造、すなわちピエゾアクチュエータの変位方向とステージの変位方向が同一となる構造を採用しているが、図5に示された構造、すなわちピエゾアクチュエータの変位方向とステージの変位方向が90度異なる構造を用いてもよい。
図7には、図6に示されたフレッチング摩耗評価装置の制御ブロック図が示されている。図2に対応するものである。AC100Vで動作する信号発生器50からX方向のアナログ信号およびZ方向のアナログ信号がコントローラ52に供給される。コントローラ52は、Zステージ12用のロードセルアンプおよびXステージ16用のセンサアンプを備える。コントローラ52は、ピエゾドライバ54に対してZステージ12用アナログ制御信号およびXステージ16用アナログ制御信号を出力する。ピエゾドライバ54は、これらの信号に基づきZステージ12およびXステージ16を駆動し、試験体18a、18bをそれぞれZ方向およびX方向に微小変動させる。Zステージの微小変動は荷重の変化となり、Zステージ12の荷重変化はロードセル22で検出される。ロードセル22にて検出された荷重検出信号はコントローラ52のロードセルアンプに帰還される。一方、Xステージ16にもその変位を検出するセンサ16aが設けられており、検出された変位信号はコントローラ52のXステージセンサアンプに帰還される。コントローラ52は、これらの検出信号に基づきピエゾドライバ54の動作を帰還制御する。Z方向変位制御とX方向変位制御は同期制御され、図3に示されるように所定の荷重L0印加時にX方向ステージ16及びプレート18bがX方向に1周期だけ振動するように同期制御する。
また、Xステージ16の下部にはXステージ16のZ方向の力、すなわち試験体18に作用するスラスト力を検出するセンサ16bが設けられ、検出信号はセンサアンプ19に供給される。センサ16bは、例えば水晶圧電型荷重変換器を用いることができる。センサアンプ19は、DC電源17からの電圧で作動し、検出スラスト力を出力する。この信号を用いてスラスト力をモニタすることができる。なお、上述したように、ベース22には試験体18を加熱するためのヒータが組み込まれており、このヒータからの熱的影響を排除するために、水晶圧電型荷重変換器の上下に別のヒータを組み込んで温度制御することも好適である。
このように、本実施形態においてはX方向のみならずZ方向についても試験体を微小変動させ、これにより種々の荷重印加状況下における微小変動を実現できる。また、一対の試験体間に生じるクリアランスに潤滑油あるいはグリースを侵入させ、潤滑油存在下におけるフレッチング摩耗量を正確に評価することができる。これにより、耐フレッチング摩耗特性に優れた材料の開発や、耐フレッチング摩耗特性に優れた潤滑油の開発に必要な基礎的データを得ることができる。
フレッチング摩耗評価装置の概念構成図である。 図1に示されたフレッチング摩耗評価装置の制御ブロック図である。 Z方向変位とX方向変位の駆動タイミングチャートである。 可撓ステージの構成図である。 可撓ステージの他の構成図である。 実施形態に係るフレッチング摩耗評価装置の斜視図である。 図6に示されたフレッチング摩耗評価装置の制御ブロック図である。
符号の説明
10 Z方向ピエゾアクチュエータ、12 Z方向ステージ、14 X方向ピエゾアクチュエータ、16 X方向ステージ、18 試験体、18a ボール、18b プレート。

Claims (3)

  1. 第1の部材及び第2の部材間の相対的微小運動により生じるフレッチング摩耗を評価する装置であって、
    前記第1の部材及び前記第2の部材を接触させつつ鉛直方向に配置し、
    前記第1の部材を水平面内の一方向に微小振動させる水平方向駆動手段と、
    前記第2の部材を鉛直面内の一方向に微小変位させることで前記第1の部材に対する前記第2の部材の荷重を変動させる鉛直方向駆動手段と、
    を有し、
    前記水平方向駆動手段は、
    水平方向に変位する第1のピエゾ素子と、
    その一端が前記第1のピエゾ素子に連結されるとともに他端が前記第1の部材に連結され、前記第1のピエゾ素子の変位を増減して前記第1の部材に伝達する第1の可撓ステージと、
    を有し、
    前記鉛直方向駆動手段は、
    鉛直方向に変位する第2のピエゾ素子と、
    その一端が前記第2のピエゾ素子に連結されるとともに他端が前記第2の部材に連結され、前記第2のピエゾ素子の変位を増減して前記第2の部材に伝達する第2の可撓ステージと、
    を有し、
    前記鉛直方向駆動手段は、前記第2の部材に対して所定の荷重を印加した状態が維持される期間と、前記荷重の印加が解除されることにより前記第1の部材および第2の部材の間への潤滑油の侵入が許容される期間と、が周期的に繰り返されるようなタイミングで微小変位し、
    前記水平方向駆動手段は、前記鉛直方向駆動手段の微小変位タイミングに同期して前記第1の部材を微小振動させるものであって、前記鉛直方向駆動手段が前記第2の部材に対して所定の荷重を印加した状態が維持される期間に前記第1の部材を1周期分微小振動させる、
    ことを特徴とするフレッチング摩耗評価装置。
  2. 請求項1に記載の装置において、さらに、
    前記第1の部材及び第2の部材を加熱するためのヒータ手段
    を有することを特徴とするフレッチング摩耗評価装置。
  3. 第1の試験体と第2の試験体との間の相対的微小運動により生じるフレッチング摩耗を評価する装置であって、
    前記第1の試験体を水平面内のX方向に微小振動させるX方向ステージと、
    前記X方向ステージを駆動するX方向ピエゾ素子と、
    前記X方向ステージの変位量を検出する変位センサと、
    前記第2の試験体を前記第1の試験体に対して鉛直上方に支持するとともに前記第2の試験体を鉛直面内のZ方向に微小変位させて荷重を変化させるZ方向ステージと、
    前記Z方向ステージを駆動するZ方向ピエゾ素子と、
    前記Z方向ステージの荷重量を検出するロードセルと、
    前記第1の試験体及び前記第2の試験体を加熱するヒータと、
    前記X方向ピエゾ素子及び前記Z方向ピエゾ素子を同期駆動制御するコントローラであって、前記変位センサ及び前記ロードセルからの検出信号に基づき変位量及び荷重印加量をフィードバック制御するコントローラと、
    を有し、
    前記コントローラは、前記第2の試験体に対して所定の荷重を印加した状態が維持される期間と前記荷重の印加が解除されることにより前記第1の試験体および第2の試験体の間への潤滑油の侵入が許容される期間とが周期的に繰り返されるようにZ方向ピエゾ素子の駆動を制御するとともに、前記第2の試験体に対して所定の荷重を印加した状態が維持される期間に前記第1の試験体を1周期分微小振動させるようにX方向ピエゾ素子の駆動を制御する、
    ことを特徴とするフレッチング摩耗評価装置。
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