JP4220907B2 - 発電機出力電圧のpid制御方法 - Google Patents

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本発明は、発電機の出力電圧を予め定められた設定電圧に保持するためのPID制御方法の改良に関する。
発電機の出力電圧を自動的に設定電圧に保つために、PID制御を用いてスイッチング素子の制御を行い、前記発電機の励磁電流を制御することを可能にした自動電圧調整装置が存在している。この自動電圧調整装置では、発電機の検出電圧をA/D(アナログデジタル)コンバータでデジタル値に変換し、マイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)により、PID制御によりスイッチング素子をオン−オフするためのパルス幅信号(ゲート信号)を算出し、一連の制御を実行して発電機の出力を設定電圧に保っている(なお、PID制御方法に関しては、特許文献1を参照)。
特開平7−67395号公報([0002]―[0008],図13)
しかし、前記自動電圧調整装置は、A/Dコンバータの量子化誤差又は非直線性誤差から生じる検出誤差、マイコンの演算精度から生じる計算誤差、及び、検出電圧に含まれるノイズの各種要因に起因して、算出電圧に誤差が重畳される。このように、算出電圧に誤差が重畳されていると、発電機の出力電圧と設定電圧との間に偏差が生じてしまう。そして、PID制御を行っている自動電圧調整装置では、偏差の積算値が制御に反映されるため、微小な偏差であっても、その値が積算されることから制御が不安定となり、設定電圧への収束が遅れる原因となるという問題点を有していた。
一方、前記のような算出電圧に重畳される誤差を少なくするための簡易的な方法として、移動平均法による平均化処理を行うことが考えられる。しかし、移動平均法は平均幅(検出電圧のサンプリング周期×サンプル数)を大きくするほどその効果を高めることができるが、当該平均幅を大きくするほど時間遅れが増加することになってしまう。そのため、高速制御が必要な自動電圧調整装置では、平均幅を大きくすることができず、単に移動平均法を採用した場合には、充分に誤差を少なくすることができないという問題点を有していた。
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、発電機の検出電圧に各種の誤差が重畳されている場合であっても、当該誤差を短時間で少なくすることが可能となる発電機出力電圧のPID制御方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための本発明の発電機出力電圧のPID制御方法は、逐次検出される発電機の検出電圧と設定電圧との偏差に対して、予め定められている比例係数と前記偏差との積である比例項と、予め定められている微分係数と前記偏差の微分値との積である微分項と、予め定められている積分係数と前記偏差の積分値との積である積分項と、の総和を演算することにより、スイッチング素子をオン−オフする前記発電機の出力電圧を予め定められている設定電圧に保持するためのパルス幅信号を算出する発電機出力電圧のPID制御方法において、前記比例項を算出するための前記検出電圧には、当該検出電圧の最新値から所定の第1設定個数遡った一群の値に関して算出された移動平均値を使用し、前記微分項を算出するための前記検出電圧には、当該検出電圧の最新値から前記第1設定個数以下、又は、当該第1設定個数より多い所定の第2設定個数遡った一群の値に関して算出された移動平均値を使用し、前記積分項を算出するための前記検出電圧には、当該検出電圧の最新値から前記第1設定個数及び前記第2設定個数より多い所定の第3設定個数遡った一群の値に関して算出された移動平均値を使用するものであること、を特徴としている。
本発明では、比例項、微分項及び積分項を算出するための検出電圧には、各々当該検出電圧の最新値から所定の個数遡った一群の値に関して算出された移動平均値(以下、移動平均を求めた検出電圧を「移動平均検出電圧」という)を使用しているが、前記積分項を算出するための検出電圧には、前記比例項及び微分項を算出するためのサンプル数と比較して多くのサンプルを使用している。
その理由は、前記比例項及び微分項の演算に用いる移動平均検出電圧は、迅速に演算を行う必要から必要最小限の数の検出電圧を用いて算出する必要があるが、前記積分項の演算に用いる移動平均検出電圧は、比例項及び微分項と比較して迅速に演算を行う必要性が少ないことから、可能な限り多数の検出電圧を用いて算出することができるためである。
従って、本発明の発電機出力電圧のPID制御方法によれば、比例項、微分項及び積分項の特質に応じて、移動平均検出電圧のサンプル数を決定することにより、発電機の検出電圧に各種の誤差が重畳されている場合であっても、当該誤差を少なくすることで、瞬時電圧変動に対する応答性を改善することができる。
本発明を実施するための最良の一形態(以下「実施形態」という)について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、発電機の出力電圧を自動的に一定に保つための自動電圧調整装置や、整流された発電機の出力を規定周波数および規定電圧の交流電力に変換して出力するインバータ装置等に適用することができるが、以下の説明では、発電機の自動電圧調整装置におけるPID制御方法を例として説明する。
[本発明の考え方]
一般的に、PID制御によりスイッチング素子の制御を行う場合には、式(a)により、パルス幅信号Toを算出して、当該スイッチング素子を制御する。
To=Kp×Verr(t)+Kd×△Verr(t)+Ki×ΣnVerr(t) (a)
To:パルス幅信号
Kp:予め定められている比例係数
Kd:予め定められている微分係数
Ki:予め定められている積分係数
t:検出時点
Σn:n個の和をとる演算を示す
Verr(t):検出電圧の設定電圧からの偏差
=設定電圧(t)−検出電圧(t)
△Verr(t):偏差の微分値
=Verr(t−1)−Verr(t)
ΣnVerr(t):偏差の積算値
=ΣnVerr(t−1)+Verr(t)
ここで、式(a)の第1項である比例項と第2項である微分項は、検出電圧を即時的に制御するための制御量を算出するための項であり、第3項である積分項は、検出電圧の設定電圧に対する残留偏差を解消するための制御量を算出するための項である。
そこで、本発明では、以下の式(b)により、パルス幅信号を算出することによりPID制御方法の改良を図っている。
すなわち、比例項の演算に用いる検出電圧は、迅速に演算を行う必要から検出電圧の最新値から所定の第1設定個数遡った一群の値に関して、移動平均化処理を行った第1移動平均検出電圧を用いる。
微分項を算出するための検出電圧には、迅速に演算を行う必要から検出電圧の最新値から所定の第2設定個数遡った一群の値に関して、移動平均化処理を行った第2移動平均検出電圧を用いる。
積分項の演算に用いる検出電圧は、比例項及び微分項と比較して迅速に演算を行う必要性が少ないことから、当該検出電圧の最新値から前記第1設定個数及び第2設定個数より多い第3設定個数遡った一群の値に関して、移動平均化処理を行った第3移動平均検出電圧を用いる。
つまり、微分項を算出するための検出電圧のサンプル数は、比例項を算出するための検出電圧のサンプル数以下でも多くても良い。しかし、積分項を算出するための検出電圧のサンプル数は、比例項を算出するための検出電圧のサンプル数である第1設定個数及び微分項を算出するための検出電圧のサンプル数である第2設定個数より多い第3設定個数を用いていることが本発明の特徴である。
T=Kp×Verr1(t)+Kd×△Verr2(t)+Ki×ΣnVerr3(t) (b)
T:パルス幅信号(本願発明)
Kp:予め定められている比例係数
Kd:予め定められている微分係数
Ki:予め定められている積分係数
t:検出時点
Σn:n個の和をとる演算を示す

Verr1(t):第1移動平均検出電圧の設定電圧からの偏差
(以下「第1偏差」という)
=設定電圧(t)−第1移動平均検出電圧(t)
Verr2(t):第2移動平均検出電圧の設定電圧からの偏差
(以下「第2偏差」という)
=設定電圧(t)−第2移動平均検出電圧(t)
Verr3(t):第3移動平均検出電圧の設定電圧からの偏差
(以下「第3偏差」という)
=設定電圧(t)−第3移動平均検出電圧(t)
△Verr2(t):第2偏差の微分値
=Verr2(t−1)−Verr2(t)
ΣnVerr3(t):第3偏差の積算値
=ΣnVerr3(t−1)+Verr3(t)
なお、第1設定個数〜第3設定個数は予め定めた値であって、例えば、第1設定個数及び第2設定個数は数個、第3設定個数は10数個に定めている。
本発明によれば、比例項と微分項は、移動平均化処理を行うための検出電圧のサンプル数が積分項を算出する場合と比較して少なくわずかな時間で演算することができるため、電圧変動時における制御の即応性を確保することができる。また、積分項は、移動平均化処理を行うための検出電圧のサンプル数が比例項と微分項を算出する場合と比較して多く多数の検出電圧を使用して平均化処理を行うことができるため、定常時の安定性を良好にすることができる。
従って、発電機の出力電圧の制御をする場合に、安定性を向上させることができるとともに、設定電圧への収束を迅速に行わせることができる。
[本発明の適用方法]
本発明の発電機出力電圧のPID制御の適用方法について説明するが、その前に、簡単に発電機Gの自動電圧調整装置10に関する説明を行う。
図1に示すように、自動電圧調整装置10を備える発電機Gは、エンジンEにより駆動され、主発電機電機子巻線Mと主発電機界磁巻線Kを備える主発電機MGと、エキサイタ電機子巻線M’とエキサイタ界磁巻線K’を備えるエキサイタEXと、を有しており、前記主発電機電機子巻線U,V,W,Oからなる三相の発電機として構成されている。そして、前記エキサイタ電機子巻線M’は、エキサイタ界磁巻線K’の励磁電流により励磁され、整流器RECを介して主発電機界磁巻線Kに励磁電流を供給するようになっている。
自動電圧調整装置10は、電圧検出回路11と、マイコン20と、スイッチング素子12と、整流回路13と、を有している。また、前記自動電圧調整装置10は、発電機Gの設定電圧を調整するための設定電圧調整器31と接続されている。
電圧検出回路11は、主発電機MGの出力電圧を検出する回路であり、発電機電圧に比例した電圧が、マイコン20のA/D(アナログデジタル)コンバータ21に出力されている。
マイコン20は、A/Dコンバータ21と、検出電圧算出部22と、記憶部23と、移動平均検出電圧算出部24と、パルス幅信号算出部25と、を主要部としており、当該記憶部23に記憶されているプログラムを逐次読み出し実行することによって、スイッチング素子12をオン−オフ制御するためのパルス幅信号の算出及び送信に至る一連の制御を実行して、主発電機MGの出力電圧を予め定められた一定の設定電圧に維持する役割を果たしている。
A/Dコンバータ21は、電圧検出回路11からの出力電圧のアナログ信号をデジタル信号に変換して、検出電圧算出部22に出力するための手段であり、検出電圧算出部22は、出力電圧を演算することにより検出電圧を算出して、記憶部23に出力するための手段である。
記憶部23は、第3設定個数である一群の検出電圧の時系列データを格納するためのメモリ23aを備えている。このメモリ23aは、最新値から第3設定個数遡った一群の検出電圧の時系列データを常に記憶できるようになっている。すなわち、検出電圧算出部22により検出電圧が算出されるごとに、当該検出電圧のデータを逐次読みとり、既にメモリ23aに格納されている最も古い検出電圧のデータを最新値に置換(更新)することにより、常に当該最新値から第3設定個数遡った一群の検出電圧の時系列データが、メモリ23aに格納されるようになっている。
移動平均検出電圧算出部24は、検出電圧が算出されるごとに前記一群の検出電圧の時系列データを用いて、前記第1移動平均検出電圧〜第3移動平均検出電圧を算出して、パルス幅信号算出部25に出力するための手段である。なお、第1移動平均検出電圧を算出する際には、前記一群の検出電圧の時系列データの中から第1設定個数だけ遡った時系列データを用いて演算を行い、第2移動平均検出電圧を算出する際には、前記一群の検出電圧の時系列データの中から第2設定個数だけ遡った時系列データを用いて演算を行い、第3移動平均検出電圧を算出する場合には、メモリ23aに格納されている総ての時系列データを用いて演算を行う。
パルス幅信号算出部25は、算出された第1移動平均検出電圧〜第3移動平均検出電圧の各データを用いて、前記式(b)の演算をすることにより、PID制御によるパルス幅信号の算出を行い、パルス幅信号としてスイッチング素子12に出力する手段である。
スイッチング素子12はエキサイタ界磁巻線K’に接続されているとともに、整流回路13を介して主発電機Gの出力端子W−Oと接続されており、パルス幅信号算出部25からのパルス幅信号によって、前記出力端子W−Oから取り込まれる励磁電流をエキサイタ界磁巻線K’に供給するようになっている。
これにより、エキサイタEXが発電し、その出力が主発電機界磁巻線Kに励磁電流として供給されることにより、主発電機MGの電圧が出力されるとともに、マイコン20によってスイッチング素子12のゲートが制御されることで、当該主発電機MGの出力電圧が設定電圧に維持されるようになっている。
続いて、図2を参照して、本発明の発電機出力電圧のPID制御の適用方法について説明する。
まず、電圧検出回路11により、発電機Gの出力電圧が逐次(例えば、数百μsec毎)検出され(S1)、A/Dコンバータ21によりデジタル値に変換されて、マイコン20の検出電圧算出部22により出力電圧が演算されることにより検出電圧が算出される(S2)。
そして、検出電圧が算出される毎に、当該検出電圧のデータが逐次読みとられ、記憶部23のメモリ23aに格納されている最も古い検出電圧のデータが最新値に置換されることにより、当該最新値から第3設定個数遡った一群の検出電圧の時系列データが、メモリ23aに格納される(S3)。
その後、メモリ23aから抽出された一群の検出電圧の時系列データが、移動平均検出電圧算出部24に入力され、第1移動平均検出電圧〜第3移動平均検出電圧が算出される(S4)。また、設定電圧と第1移動平均検出電圧〜第3移動平均検出電圧から、第1偏差〜第3偏差が算出される(S5)。そして、前記各々の偏差は、パルス幅信号算出部25に入力されて、式(b)の演算が行われることによりパルス幅信号が算出され(S6)、スイッチング素子12に出力される。このパルス幅信号により、スイッチング素子12がオン−オフ制御されることで、当該主発電機MGの出力電圧が設定電圧に維持されることになる。
以上、本発明について、好適な実施形態についての一例を説明したが、本発明は当該実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。特に、本発明の自動電圧調整装置は、エンジン駆動発電機に限らず、種々の発電機に適用可能であることは言うまでもない。
また、前記実施形態では、三相の発電機を使用しているが、単相の発電機を使用してもよい。さらに、スイッチング素子の電源は、自励方式でも他励方式でもよい。さらにまた、検出電圧は、平均値又は実効値のいずれを用いてもよい。
自動電圧調整装置の構成図である。 本発明の発電機出力電圧のPID制御の適用方法を示すフローチャートである。
符号の説明
10 自動電圧調整装置
11 電圧検出回路
12 スイッチング素子
20 マイクロコンピュータ
E エンジン
EX エキサイタ
G 発電機
MG 主発電機

Claims (1)

  1. 逐次検出される発電機の検出電圧と設定電圧との偏差に対して、
    予め定められている比例係数と前記偏差との積である比例項と、
    予め定められている微分係数と前記偏差の微分値との積である微分項と、
    予め定められている積分係数と前記偏差の積分値との積である積分項と、の総和を演算することにより、スイッチング素子をオン−オフする前記発電機の出力電圧を予め定められている設定電圧に保持するためのパルス幅信号を算出する発電機出力電圧のPID制御方法において、
    前記比例項を算出するための前記検出電圧には、当該検出電圧の最新値から所定の第1設定個数遡った一群の値に関して算出された移動平均値を使用し、
    前記微分項を算出するための前記検出電圧には、当該検出電圧の最新値から所定の第2設定個数遡った一群の値に関して算出された移動平均値を使用し、
    前記積分項を算出するための前記検出電圧には、当該検出電圧の最新値から前記第1設定個数及び前記第2設定個数より多い所定の第3設定個数遡った一群の値に関して算出された移動平均値を使用するものであること、を特徴とする発電機出力電圧のPID制御方法。

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