JP4220810B2 - 液晶光変調膜の製造方法および液晶光変調膜ならびに液晶光変調器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶光変調膜の製造方法および液晶光変調膜ならびに液晶光変調器に関し、特に表示装置に用いる液晶光変調器に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶材料に電界を加えて液晶分子の配向状態を変化させるという、液晶の電気光学効果を応用すると、光の強度を主に変化させる光変調膜を実現することができる。この液晶を用いた光変調膜(以下、液晶光変調膜という。)は、他の電気光学効果を示す光学結晶に比べて低電圧で動作する。このため、液晶光変調膜を用いた変調器(以下、液晶光変調器という。)は、ディスプレイ用の電気光学素子として近年注目されている。
【0003】
上記の液晶光変調膜は、通常、ポリイミド樹脂膜を主とする配向膜および透明電極付きのガラス基板で挟まれており、液晶分子の初期配向は配向膜により決定される。
【0004】
そして、上記のように構成される液晶光変調器は、透明電極を介して液晶光変調膜に電圧が印加されると、液晶の分子配向状態が変化するため、偏光方向、位相、強度等の出射光の光学特性が変化する。これにより、液晶の電気光学効果が発現することになる。
【0005】
一方、液晶光変調膜として、液晶材料中に、樹脂を分散させたものも提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0006】
このような液晶光変調膜に用いられる液晶材料として、ネマティック液晶、コレステリック液晶、スメクティック液晶等、様々なものが現在使用されている。
【0007】
これらの液晶材料のなかで、自発分極をもちカイラルスメクティックC相を示す、表面安定強誘電性液晶は、数十〜数百μsの高速な光変調機能をもつため、動画対応表示装置への応用が期待されている。
【0008】
【非特許文献1】
Y. K Fung D. K. Yang, et. al., “Polymer networks formed in liquid crystal”Liq. Cryst., vol 19, no6, pp. 797-801 1995
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記液晶材料は、いずれも、液晶光変調器に用いたときに、環境温度が極度に高いと、液晶分子の配向が消失し、言いかえれば液晶性が失われ、光変調機能を発揮しなくなる。
【0010】
また、ネマティック液晶やコレステリック液晶を用いた場合、動作環境温度が変わると、液晶分子の配向秩序度、言いかえれば液晶分子の配向の度合いが変化するため、表示装置に用いたときに表示特性が変動する。特に、温度上昇は、液晶分子の配向秩序度を低下させるため、表示のコントラスト比が低下するという問題を生じる。
【0011】
また、自発分極をもちカイラルスメクティックC相を示す、表面安定強誘電性液晶を用いた場合、上記と同様の問題を抱えるとともに、特に、表示欠陥が発生し易いという問題がある。
【0012】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、温度変化による表示特性の変化の少ない液晶光変調膜の製造方法および液晶光変調膜ならびに液晶光変調器を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、動作温度領域の広い液晶光変調膜の製造方法および液晶光変調膜ならびに液晶光変調器を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る液晶光変調膜の製造方法は、強誘電性液晶材料中に樹脂構造物を分散し、該強誘電性液晶材料および該樹脂構造物をそれぞれ一定の方向に配向させるとともに、該樹脂構造物を網目形状とし、更に、該樹脂構造物の網目の開きの短軸側寸法が1μm以下の網目部分を含むことにより液晶配向の温度依存性を制御することを特徴とする。
【0015】
ここで、液晶配向の温度依存性とは、液晶の配向性が温度によって変化する性質をいい、また、液晶配向の温度依存性を制御するとは、樹脂構造物の液晶配向規制作用により、液晶配向の温度による変化を軽減させることをいう。
【0016】
本発明の上記の構成により、液晶の動作温度領域を制御することができ、表示装置に用いたときに温度変化による表示特性の変化の少ない液晶光変調膜を得ることができる。また、動作温度領域の広い液晶光変調膜を得ることができる。
【0017】
この場合、液晶材料と樹脂構造物の前駆体としての液晶性モノマーとを混合して混合液を調合する工程と、該混合液を、液晶光変調膜を積層する被積層部材に塗布して塗布膜を形成する工程と、該塗布膜中の液晶性モノマーを硬化させ、または析出させて、樹脂構造物を形成する工程とを有すると、好適である。
【0018】
また、この場合、前記混合液を調合する工程または前記樹脂構造物を形成する工程において液晶相がネマティック相またはスメクティク相を示す温度に該混合液または前記塗布膜を加熱すると、好適である。
【0019】
また、本発明に係る液晶光変調膜は、強誘電性液晶材料中に樹脂構造物が分散され、該強誘電性液晶材料の液晶分子および該樹脂構造物がそれぞれ一定の方向に配向されてなり、該樹脂構造物が網目形状を有し、網目の開きの短軸側寸法が1μm以下の網目部分を含むことにより液晶配向の温度依存性が制御されていることを特徴とする。または、強誘電性液晶材料中に樹脂構造物が分散され、該強誘電性液晶材料の液晶分子および該樹脂構造物がそれぞれ一定の方向に配向されてなり、該樹脂構造物が繊維形状を有し、隣り合う繊維の離間間隔が1μm以下の繊維配列を含むと、上記本発明の効果を得ることができる。
【0020】
この場合、前記樹脂構造物の分散率が40質量%以下であると、好適である。ここで、分散率の下限は特に限定するものではないが、本発明の効果を好適に得る観点からは、例えば1質量%以上とする。
【0021】
また、この場合、前記樹脂構造物は、前駆体としての液晶性モノマーが硬化したものであると、好適である。
【0022】
また、本発明に係る液晶光変調器は、上記の液晶光変調膜が、1対の配向膜および1対の透明電極付きの透明基板で順次挟持されてなるものであると、上記液晶光変調膜の効果を好適に得ることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明に係る液晶光変調膜の製造方法および液晶光変調膜ならびに液晶光変調器の好適な実施の形態(以下、本実施の形態例という。)について、図を参照して、以下に説明する。
【0024】
まず、本実施の形態例に係る液晶光変調膜および液晶光変調器について、図1の液晶表示装置を参照して説明する。図1では、液晶光変調膜の構造を模式的に示している。
【0025】
液晶光変調膜10は、液晶材料12中に樹脂構造物14が分散された複合体である。液晶光変調膜10の液晶材料(液晶材料の液晶分子)12および樹脂構造物14は、同一方向に配向されている。但し、これに限らず、液晶材料12および樹脂構造物14は、相互に異なる方向に配向されたものであってもよい。
【0026】
液晶光変調膜10は、1対の配向膜16a、16bで挟持され、さらに、1対の配向膜16a、16bの外側に、それぞれ透明電極18a、18b付きの透明基板20a、20bが設けられ、これらの構成要素全体で液晶光変調器22を構成する。
【0027】
さらに、液晶光変調器22の1対の透明基板20a、20bを挟んで、直線偏光性を有する1対の偏光板24a、24bが設けられる。透明電極20a、20bは、それぞれリード線26a、26bを介して、交流電圧を供給する電源28に接続される。これらの構成要素全体で液晶表示装置30を構成する。
【0028】
液晶光変調膜10の樹脂構造物14は、配向した、すなわち、一方向に異方性化した繊維状や、とりわけ網目状の構造を有するものが好ましい。網目状の構造を有する樹脂構造物は、強誘電性液晶を用いたときの液晶の分子配向を安定に保持させるうえで有効である。
【0029】
樹脂構造物14は、配向規制力としてのアンカリング効果を液晶分子に良好に及ぼす観点からは、樹脂構造物が網目形状を有する場合、好ましくは、網目の開きの短軸側寸法を1μm以下とする。すなわち、短軸側寸法が1μm以下の網目を含む構造とする。この場合、網面の長軸側寸法には特に制限はない。また、樹脂構造物が繊維形状を有する場合、好ましくは、隣り合う繊維の離間間隔を1μm以下とする。すなわち、短軸側寸法が1μm以下の繊維配列を含む構造とする。これらの寸法は下限値を特に定めるものではないが、例えば、10nm程度を下回ると、液晶分子の寸法と同程度となり、樹脂構造物が液晶分子に追随して動いてしまい、上記アンカリング効果が損なわれるおそれがある。
【0030】
また、樹脂構造物14は、最大寸法が入射光の波長以下であることが好ましく、これを越えると、光散乱が生じて偏光や位相が乱れ、光変調のコントラスト特性が低下するおそれがある。
【0031】
樹脂構造物14は、液晶材料(液晶)12中での溶解性に優れる樹脂前駆体を材料として用いて硬化等して形成したものであることが好ましい。このような樹脂前駆体としては、自ら分子配向性を有する液晶モノマーが好適である。但し、液晶モノマーに替えて、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂や、またはそれらの樹脂の共重合体を用いることもできる。
【0032】
液晶材料12は、低粘度で高弾性のものが適しており、例えば、ビフェニル系、ターフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、フッ素系、トラン系またはエステル系のネマティック液晶材料を好適に用いることができる。
【0033】
また、液晶材料12として強誘電性液晶を用いるときは、屈折率異方性Δn(Δn=異常性光屈折率nθ−常光屈折率no)が大きい方が、入射光の偏光状態を大きく制御できるため、好ましい。さらに、自発分極が大きな材料を用いることにより、良好な高速応答性と低電圧駆動を得ることができる。このような特性をもつ強誘電性液晶材料として、シッフ塩基系強誘電性液晶、アゾ系強誘電性液晶、アゾキシ系強誘電性液晶、ビフェニル系強誘電性液晶、エステル系強誘電性液晶、フェニルピリミジン系強誘電性液晶等を挙げることができる。これらの材料の中から1つを選択して、あるいは、2つ以上を混合して用いることができる。なお、強誘電性液晶を用いた液晶光変調膜では液晶分子の初期配向方向と樹脂構造物の配向方向とが必ずしも同一とならないが、温度に対する配向安定性は十分に得ることができる。
【0034】
前記のように樹脂構造物14は液晶材料12中に分散された状態にあるが、この構造を有することで、温度変動が生じたときに液晶の配向方向が不連続となって発生しうる配向欠陥(ジグザグ欠陥)を抑制することができる。
【0035】
樹脂構造物14は40質量%以下の含有率(分散率)で液晶材料12中に分散させることが好ましい。含有率が40質量%を越えると、液晶光変調膜の液晶含有量が少なすぎて液晶の配向制御を有効に行うことができなくなり、良好な光変調動作を得ることができなくなるおそれがある。但し、樹脂構造物14の含有率が40質量%越えて、樹脂構造物14中に、液晶が小滴状に、分散して固定された場合でも、液晶光変調膜10の厚みを増せば、十分な光変調動作を得ることが可能である。一方、樹脂構造物14の含有率の下限値は特に定めるものではないが、本発明の効果を損なわないためには例えば1質量%以上程度とする。
【0036】
液晶光変調膜10の厚みは、1〜30μm程度であると、光利用率の高い変調を行ううえで好適である。なお、この場合、硬質樹脂や二酸化ケイ素等からなる粒径の揃ったスペーサ粒子を液晶光変調膜10中に分散しておくと、液晶光変調膜10の厚みをより精密に制御することができる。
【0037】
配向膜16a、16bは、ラビング処理または偏光紫外光の照射により光配向処理を施されたポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、斜方蒸着されたSiO、SiO2等を好適に用いることができる。なお、必要に応じて配向膜16a、16bを省略してもよい。
【0038】
透明電極18a、18bの材料としては、スズをドープした酸化インジウム(ITO)等の透明金属酸化物材料が好適である。これらの透明金属酸化物材料を真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の方法を用いて成膜することにより透明電極18a、18bを得ることができる。また、透明金属酸化物材料に変えてポリチオフェン系樹脂等の有機系の高分子導電材料を、スピンコート法や、印刷法により塗布して透明電極18a、18bを形成してもよい。
【0039】
透明基板20a、20bの材料としては、ガラス板やプラスティックフィルムを用いることができる。プラスティックフィルムに用いられる樹脂としては、ポリカーボネート、ポルエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート等の柔軟なプラスティックフィルムを挙げることができる。
【0040】
以上のように構成される本実施の形態例に係る液晶表示装置30は、入射光が偏光板24aにより直線偏光されて透明基板20aに入射され、液晶光変調膜10で旋光能や複屈折率効果を受けて偏光状態が制御され、偏光板24bの光吸収により強度が変調されて(光変調されて)出射光となる。
【0041】
すなわち、印加電圧の強弱に応じて、液晶光変調膜10中の液晶分子の配向状態が変化することにより、光の偏光状態が変化して光強度が変調される。このため、液晶表示装置30は有用な光変調機能を得ることができる。
【0042】
上記液晶光変調膜10の製造方法について説明する。なお、液晶変調器22の液晶光変調膜10以外の構成要素については、通常の製造方法により製造することができるため、説明を省略する。
【0043】
液晶光変調膜10は、簡便な塗布工程により透明電極上に所望の膜厚に形成することができる。
【0044】
すなわち、まず、液晶材料12と樹脂構造物14の前駆体材料との混合液を調合する。ついで、この混合液を2枚の透明基板のいずれか一方の基板の透明電極上に塗布して塗布膜を形成する。さらに、塗布膜中の前駆体材料を硬化させ、または析出させる。これにより、相分離して、液晶材料12中に樹脂構造物14が分散され、液晶配向の温度依存性が制御された液晶光変調膜10が得られる。
【0045】
上記した液晶光変調膜10の製造方法において、塗布法は、ロールコーティング、ディッピング、スピンコーティング、キャスティング、スプレー、ドクターブレードコーティング、ワイヤーバーコーティング等の方法を用いることができ、これにより、大面積で均一な塗布膜を簡易に得ることができる。
【0046】
また、塗布膜中の前駆体材料を硬化させる方法は、紫外線照射による光重合、加熱による熱重合、反応重合等の適宜の重合方法を用いることができる。また、塗布膜中の前駆体材料を硬化、析出させる方法としては、例えば溶媒蒸発法も用いることができる。
【0047】
また、塗布膜中の前駆体材料を硬化させ、あるいは析出させて、相分離した樹脂構造物を形成する工程において、塗布膜を、液晶分子の配向状態にあるネマティック相またはスメクティク相を示す温度に制御することが望ましい。そのため、相分離した樹脂構造物を形成する工程に先立ち、混合液を予め上記の温度に加熱してもよい。
【0048】
液晶(液晶材料12)の分子配向秩序は、液晶材料のバルク特性とともに、樹脂構造物14の配向の影響を受ける。これは、樹脂構造物14に近接する液晶には、分子間相互作用により、配向規制力としてのアンカリング効果が働くためである。前記のように樹脂構造物14の短軸側寸法を1μm以下と小さくすることにより、樹脂構造物14表面と液晶との接触面積が大きくなり、より良好なアンカリング効果を得ることができる。
【0049】
これにより、それぞれ配向性を有する、液晶材料12と樹脂構造物14とは例えば同一方向に配向するとともに、液晶の配向が規制されて液晶の温度依存性が制御される。
【0050】
このため、本実施の形態例に係る液晶光変調膜10は、環境温度が変化した場合であっても、通常温度変化に起因して生じ得る液晶の配向変化を軽減することができ、また、液晶配向が不連続となる配向欠陥の発生を抑制することができる。また、環境温度が本来の液晶相から等方性相に通常転移するような、液状材料の種類によっては比較的高温の領域においても、液晶の配向が維持される。
【0051】
したがって、本実施の形態例に係る液晶光変調膜10を用いた液晶光変調器28は、表示特性の温度変動が少なく、また、広い動作温度範囲において、安定した光変調動作を得ることができる。
【0052】
また、本実施の形態例に係る液晶光変調器28は、樹脂構造物14の分子配向の秩序度、寸法、分散密度(分散率)等を変えることにより、動作温度領域を所望の条件に容易に制御できる。
【0053】
なお、本実施の形態例に係る液晶光変調器28において、バックライトをさらに設けると、コントラスト比の良好な表示装置を構成することができる。一方、バックライトに変えて反射板や拡散板を設けてもよく、これにより消費電力の低い反射型液晶表示装置を得ることもできる。また、反射板または拡散板をバックライトと組み合わせて用いてもよい。これらの場合において、一方の透明基板や透明電極を透明でない基板や金属電極にしてもよい。
【0054】
【実施例】
実施例を挙げて、本発明をさらに説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0055】
屈折率異方性(Δn)が0.15の強誘電性液晶と紫外線硬化性のアクリル系液晶モノマー(大日本インキ社製 UCL−001)を材料として用いて以下の手順で液晶光変調膜を作製した。
【0056】
まず、2枚の透明ガラス基板に、スパッタリング法でそれぞれIn2O3:Snを成膜して、厚みが72nmの透明電極を形成した。ついで、2枚のうちの1枚の透明ガラス基板の透明電極に、スピンコート法でポリイミド樹脂(JSR社製 AL−1254)を塗布して、厚みが50nmの配向膜を形成した。そして、配向膜をナイロンブラシで一方向にラビングした。
【0057】
つぎに、配向膜上に、上記の強誘電性液晶およびアクリル系液晶モノマーの混合液を塗布した。このとき、混合液は、液晶モノマーの含有量を20質量%に調整するとともに、さらに、2μmの球状スペーサを分散させたものを用いた。ついで、他方の配向膜付きの透明ガラス基板を、配向膜の側を向けて塗布した混合液に密着するように重ねた。このとき、塗布した混合液を挟んで対向して配置される2枚の配向膜は、ラビング方向が逆平行(相互に逆向きで平行)となるようにした。
【0058】
さらに、塗布した混合液を75℃に加熱しながら、中心波長が365nmの紫外線を30mW/cm2の強度で照射した。
【0059】
偏光顕微鏡により観察したところ、得られた液晶光変調膜は、ラビング方向に著しく伸長した網目状の樹脂構造物が形成され、この網目状の樹脂構造物が無数、ラビング方向に配向した液晶材料中に分散していることが確認できた。この場合の樹脂構造物の短径は100nmであった。また、樹脂構造物の網目の開きの短軸側寸法、言いかえれば、目開きの幅の狭い方の寸法が1μmを下回る液晶領域が生じることが確認できた。なお、この寸法については、別途、紫外線の照射強度を変えた実験を行った結果、照射強度の増加に伴い小さくなることが分かった。
【0060】
つぎに、上記実施例の液晶光変調膜を一様に加熱して、液晶材料がネマティック相から等方相になる相転移現象を偏光顕微鏡により観察したところ、液晶分子が樹脂構造物の近傍に位置するほど、また、樹脂構造物の分散密度が高いほど、相転移しにくく、また、相転移温度が高くなっていることが確認できた。
【0061】
また、参考例として、実施例と同じ強誘電性液晶材料を用い、樹脂構造物を含まない液晶光変調膜を作製し、100℃に加熱した後、急冷して室温に戻して液晶光変調膜の特性を評価する過熱衝撃試験や、−15℃に急冷した後、加熱して室温に戻して液晶光変調膜の特性を評価する冷却衝撃試験を行った。この結果、液晶の配向欠陥が増加し、また、表示のコントラスト比が大幅に低下することが確認できた。
【0062】
これに対して、実施例の液晶光変調膜について、上記と同様に過熱衝撃試験や、冷却衝撃試験を行った結果、配向欠陥の増加が認められず、また、安定した表示特性が得られることが確認できた。
【0063】
【発明の効果】
本発明に係る液晶光変調膜の製造方法によれば、液晶材料中に樹脂構造物を分散し、液晶材料および樹脂構造物をそれぞれ一定の方向に配向させるとともに、樹脂構造物の形状、分散状態および配向状態のうちの少なくともいずれか1つを制御することにより液晶配向の温度依存性を制御できるため、表示装置に用いたときに温度変化による表示特性の変化の少ない液晶光変調膜を得ることができる。また、動作温度領域の広い液晶光変調膜を得ることができる。
【0064】
また、本発明に係る液晶光変調膜によれば、液晶材料中に樹脂構造物が分散され、液晶材料の液晶分子および樹脂構造物がそれぞれ一定の方向に配向されてなり、樹脂構造物が網目形状を有し、網目の開きの短軸側寸法が1μm以下であり、または、樹脂構造物が繊維形状を有し、隣り合う繊維の離間間隔が1μm以下であるため、上記本発明の効果を得ることができる。
【0065】
また、本発明に係る液晶光変調器によれば、上記の液晶光変調膜が、1対の配向膜および1対の透明電極付きの透明基板で順次挟持されてなるものであるため、上記液晶光変調膜の効果を好適に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施の形態例に係る、液晶変調膜、液晶変調器および液晶表示装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
10 液晶光変調膜
12 液晶材料
14 樹脂構造物
16a、16b 配向膜
18a、18b 透明電極
20a、20b 透明基板
22 液晶光変調器
24a、24b 偏光板
26a、26b リード線
28 電源
30 液晶表示装置
Claims (8)
- 強誘電性液晶材料中に樹脂構造物を分散し、該強誘電性液晶材料および該樹脂構造物をそれぞれ一定の方向に配向させるとともに、該樹脂構造物を網目形状とし、更に、該樹脂構造物の網目の開きの短軸側寸法が1μm以下の網目部分を含むことにより液晶配向の温度依存性を制御することを特徴とする液晶光変調膜の製造方法。
- 液晶材料と樹脂構造物の前駆体としての液晶性モノマーとを混合して混合液を調合する工程と、
該混合液を、液晶光変調膜を積層する被積層部材に塗布して塗布膜を形成する工程と、
該塗布膜中の液晶性モノマーを硬化させ、または析出させて、樹脂構造物を形成する工程とを有することを特徴とする請求項1記載の液晶光変調膜の製造方法。 - 前記混合液を調合する工程または前記樹脂構造物を形成する工程において液晶相がネマティック相またはスメクティク相を示す温度に該混合液または前記塗布膜を制御することを特徴とする請求項2記載の液晶光変調膜の製造方法。
- 強誘電性液晶材料中に樹脂構造物が分散され、該強誘電性液晶材料の液晶分子および該樹脂構造物がそれぞれ一定の方向に配向されてなり、
該樹脂構造物が網目形状を有し、網目の開きの短軸側寸法が1μm以下の網目部分を含むことにより液晶配向の温度依存性が制御されていることを特徴とする液晶光変調膜。 - 強誘電性液晶材料中に樹脂構造物が分散され、該強誘電性液晶材料の液晶分子および該樹脂構造物がそれぞれ一定の方向に配向されてなり、
該樹脂構造物が繊維形状を有し、隣り合う繊維の離間間隔が1μm以下の繊維配列を含むことを特徴とする液晶光変調膜。 - 前記樹脂構造物の分散率が40質量%以下であることを特徴とする請求項4または5記載の液晶光変調膜。
- 前記樹脂構造物は、前駆体としての液晶性モノマーが硬化したものであることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の液晶光変調膜。
- 請求項4〜7のいずれか1項に記載の液晶光変調膜が、1対の配向膜および1対の透明電極付きの透明基板で順次挟持されてなることを特徴とする液晶光変調器。
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