JP4219671B2 - 薄板の接合方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属及び金属を主成分とした合金材料やプラスチック樹脂等の融点未満の高温で塑性流動を生じうる材料からなる薄板同士の接合方法に関する。詳しくは、従来の溶接法において、接合箇所にて必ず生じてきた結晶の肥大化による強度低下の現象を防止し、接合部分と非接合部分との強度の差異を少なくする接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、白金基合金同士の接合は、ほとんどの製品がTIG(tungsten inert gas)溶接機(例えば特許文献1を参照。)やガスバーナーを用いて溶接している。ここで、TIG溶接とはトーチから流す大気遮断ガス中で、溶接母材との間にアークのみを発生させる非消耗のタングステン電極を使用し、溶着金属はアーク側面から溶加材を送給して溶融形成させる方法である。
【0003】
TIG溶接やガスバーナーによる溶接の特徴は、比較的作業が容易であること、溶接機が比較的安価に購入できること等が挙げられる。
【0004】
一方、金属の接合方法として摩擦攪拌接合法の技術が開示されている(例えば特許文献2、3を参照。)。摩擦攪拌接合(Friction Stir Welding)は、鉄、アルミニウム合金などの金属相互の溶接は勿論異種金属の溶接すら可能な溶接法である。
【0005】
摩擦攪拌接合法は、プローブピンを材料の繋ぎ目である結合領域に挿入し、プローブピンの回転によりかき混ぜることによって、双方の材料について塑性流動を生じさせる。その結果、材料を溶かさずに接合することができ、偏析等による強度低下を抑制することができる接合方法である。
【0006】
また、摩擦攪拌接合については、融点が比較的低いアルミニウム及びアルミニウム合金を対象とした接合が多く検討されているが、白金又は白金基合金を被溶接物として摩擦攪拌接合を適用した報告例はない。
【0007】
【特許文献1】
特開平10-166145号公報
【特許文献2】
特表平7−505090号公報
【特許文献3】
特表平9−508073号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ガラス溶解用装置、酸化物単結晶育成用ルツボ、蛍光X線分析用ビート皿等に用いられる白金合金製品において、ほとんどの製品は溶接部位が存在する。溶接は主にTIG溶接機を用いて行っている。TIG溶接によれば、溶接部の結晶は肥大化し、結晶の肥大化によって強度は相当低下し、合金と溶接部の強度の差異が生じてしまう。
【0009】
特にガラス溶解用ルツボ等で使用している白金、特に酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化イットリウム(Y2O3)等を含む酸化物分散型強化白金については、その強度低下率は極めて大きい。母材と溶接部の強度差が大きいと、溶接部に応力が集中してその周辺から破断するケースが多い。特に薄板同士を接合する場合には強度低下は顕著であった。
【0010】
そこで従来は、図7に示すように溶接部に肉盛りすることや図8に示すように溶接部周辺に同素材のバンドを補強鍛接することによって強度低下の防止を図っていた。ここで、白金合金製品の肉厚については0.5〜5mmであり、補強バンドの肉厚については0.2〜0.5mmである。肉盛り溶接やバンドの補強鍛接については、わずかな強度アップしか得られなくても製品の寿命延長に大きく起因するために必要なことであった。
【0011】
一方、摩擦攪拌接合法ではTIG溶接法ほどの強度低下は起こらないが、プローブピンを挿入して接合する為に、双方の金属板に対して固定する力の他、接合する向きに力(固定するのみに留まらない)を加えなければならない。また、金属板への力に加えて摩擦力を発生させる為のプローブピンの力も考慮すると、接合を行なう状況としては、台上等の力を加えやすい状況でしか行なうことが出来ず、3次元構造の加工物を溶接することは困難である。すなわち、溶解用装置、酸化物単結晶育成用ルツボ、蛍光X線分析用ビート皿、各種パイプ等の白金又は白金基合金の接合に適用することは容易でない。また、白金製溶解装置等の設置現場での溶接も制限されてしまう。さらに摩擦を起こす為のプローブピンの接地面積も広くなりまた塑性流動の体積も大きくなることにより、周辺の合金の強度より弱くなる部分である溶接部分が大きくなってしまう。特に薄板同士を接合する際には薄板の側端部分の面積が小さいために、薄板同士を接合する向きに力を加えるとズレが生じやすい。したがって、薄板同士の接合する場合では接合部分の品質を一定に保持することが容易でない。
【0012】
貴金属及び貴金属を主成分とした合金を材料とした加工品は溶接技術が多く用いられている。貴金属加工品は、イニシャルコストに占める材料コストが大きく、極低温から高温域において使用でき、且つ電気的・化学的・物理的に安定であることから、薄板を加工した製品が多い。
【0013】
以上のことから、TIG溶接法や摩擦攪拌溶接法は、薄板に対して最適な接合方法とはいい難い。本発明は、金属及び金属を主成分とした合金材料やプラスチック樹脂等の融点未満の高温で塑性流動を生じうる材料からなる薄板に対して最適な接合方法、いうならば表面摩擦伝播接合法(Surface Friction Transmission Welding、SFTW)を提案するものである。
【0014】
本発明の目的は、薄板の接合、特に金属及び金属を主成分とした合金材料からなる薄板の接合を行なうに際して、ピンを結合領域に挿入せずに表面への摩擦動作により生じたせん断力で塑性流動を起こさせることで、接合箇所にて必ず生じてきた結晶の肥大化による強度低下を防止するとともに塑性流動範囲を小さなものにとどめることが可能な接合方法を提供することである。従来と比較して塑性流動面積を縮小することにより、結合領域に挿入するペンシル部分を持たない摩擦ツールにかける力を減少させることができ、薄板を固定する以外の必要な力、例えば薄板同士を押付け合う力や摩擦ツールが押付ける力を打ち消すために薄板の裏側から薄板を支持する力を不要とすることを目的とする。薄板に加える力を少なくすることで3次元構造の加工物について接合可能とすることを目的とする。また、白金製溶解装置等の工場で設置する加工物に対しても現地での接合を可能とすることを目的とする。さらに薄板同士を接合する向きに加える力をなくすことで、接合部分の品質を一定に保持することを目的とする。
【0015】
また、通常金属はその表面にガス吸着をしており、そのガス成分が金属と酸化反応等の化学反応を起こして表面に化合物層を形成していることが多い。摩擦攪拌接合法によれば、結合領域に吸着ガス分子や化合物層が存在しても結合領域に挿入するプローブピンが、その摩擦熱によって形成された塑性流動を起こしうる部分(以下「可塑性領域」という)を攪拌するため、可塑性領域全体に吸着ガス分子や化合物層が分散される。したがって、加工物の当接面に吸着ガス分子や化合物層を集中させたまま接合した場合と比較すると大きな接合強度が得られる。しかし、本発明者らは金属表面に吸着した吸着ガス分子や化合物層は金属を還元活性化させる程度に加熱すれば除去できることを見出した。このことは強度低下をさらに防止できることが期待できる。そこで、本発明は吸着分子と金属表面に形成された化合物層を除去する目的で予備加熱工程を意図的に設けることで可塑性領域への不純物の混入を防止して、結合領域に挿入するプローブピンによってかき混ぜなくても塑性流動を効率よく生じさせ、しかも可塑性領域全体に吸着ガス分子や化合物層を分散させることなく、強度低下を防止することを目的とする。
【0016】
さらに、白金又は白金基合金の加工では、接合箇所の強度低下が特に問題となるので、可塑性領域全体に吸着ガス分子や化合物層を分散させても、充分な接合強度が得られない。そこで本発明は、白金又は白金基合金からなる加工物を接合する場合において白金又は白金基合金を最適な温度条件で還元活性化させて、不純物混入の防止により塑性流動の発生を容易化するとともに破損の起点となり得る異物相の混入を排除して接合強度の低下防止を図ることを目的とする。白金又は白金基合金のうち、酸化物分散強化型の白金基合金では、分散させた酸化物が偏析すると強度低下が激しいので、酸化物分散強化型の白金基合金の接合に特に適した接合方法を提案するものである。
【0017】
また本発明の目的は、摩擦ツールの先端部分を複数の凹凸を有する粗面とすることで摩擦ツールの軸に塑性流動を起こしている材料を寄せ集め、塑性流動を促進させる接合方法を提案することであり、これにより片方の板材を固定することで接合を可能とすることを目的とする。
【0018】
本発明は、上記のように薄板の接合法を従来の溶接法から本接合法に換えることにより、接合部の強度を大幅に向上させ、従来の製品の寿命延長やコストダウンを行なうものである。
【0019】
また本発明は、新規加工品の接合のみならず、クラック箇所の修理等にも適用することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはピンを結合領域に挿入せずに表面の摩擦のみで塑性流動を行わせしめる方法により、上記の課題を解決することができることを見出した。すなわち本発明に係る薄板の接合方法は、白金又は白金基合金からなる薄板の加工物を相互に当接若しくはほぼ当接させて細長の結合領域を規定する工程、前記結合領域を530〜1600℃に加熱して、白金又は白金基合金を還元活性化させて、前記結合領域の表面に吸着した酸素分子、窒素分子又は水分子等の吸着気体分子及び前記結合領域の表面に形成された白金又は白金基合金と前記吸着気体分子との化合物層を除去する予備加熱工程、前記加工物の材料よりも硬い材料からなる棒状の摩擦ツールの先端部分を前記結合領域に押し当てながら前記摩擦ツールを回転又は/及び振動させることによって、前記摩擦ツールと前記結合領域との間で摩擦熱を発生させて前記結合領域に塑性流動を生じさせる工程、前記塑性流動を生じた結合領域を凝固させて前記加工物同士を接合する工程、とを備えることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る薄板の接合方法では、前記摩擦ツールの先端部分は、複数の凹凸を有する粗面であることが好ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施形態及び実施例を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。
【0026】
図1を参照して本実施形態に係る薄板の接合方法のプロセスについて説明する。薄板の接合方法は、薄板の加工物1A,1Bを相互に当接若しくはほぼ当接させて細長の結合領域2を規定する工程、加工物1A,1Bの材料よりも硬い材料からなる棒状の摩擦ツール5の先端部分を結合領域2に押し当てながら摩擦ツール5を回転又は/及び振動させることによって、摩擦ツール5と結合領域2との間で摩擦熱を発生させて結合領域2に塑性流動を生じさせる工程、塑性流動を生じた結合領域6を凝固させて加工物同士を接合する工程、とを備えるものである。なお、図1の場合の摩擦ツール5はモータ7によって回転する。
【0027】
ここで、摩擦ツール5は棒状であり、その先端部分には摩擦攪拌溶接法で用いられるプローブピンのようにペンシル部分は備えていない。先端部分は図2(平坦形状)、図3(丸みを帯びた形状)に挙げた形状であってもよいが、複数の凹凸を有する粗面であることが好ましい。摩擦ツールの動作にもよるが、回転する場合は図4の渦状の切込みを入れた形状、振動する場合は図5の無数の凸部を有する櫛状形状の接地面が例として考えられる。このような形状とすることで、摩擦ツールの軸に塑性流動を起こしている材料を寄せ集め、塑性流動を促進させることができる。このことは摩擦ツールの押圧の低下にもつながる。
【0028】
摩擦ツールを押し当て、回転又は/及び振動等の動作により塑性流動を起こし、厚さの薄い金属及び金属を主成分とした合金材料の接合を行なう。ここで摩擦ツールは、摩耗によって塑性流動した金属及び金属を主成分とした合金材料に介在してはならない。厚さの薄い金属及び金属を主成分とした合金材料に介在すると、板材の強度の低下や破損等を招いてしまう。
【0029】
結合領域を規定する工程について説明する。加工物1A,1Bは相互に当接されているか、或いは摩擦熱や予備加熱により熱膨張した後の加工物がちょうど当接される程度に少し間が離れていても良い。固定方法は、板材が動かないような力を加えることや、端部を挟んで固定する(万力等の固定器具を用いる)、間隔をおいてスポット溶接(表面のみで、金属及び金属を主成分とした合金材料を全て溶かすものではない)等がある。また、連続した接合を行なうためには結合領域2は細長でなければならず、結合領域に大きな空間があると摩擦ツール5と加工物1A,1Bとの摩擦が行なわれない。さらに、摩擦ツールは摩擦熱に耐えなければならず、且つ回転又は/及び振動によるねじれの応力に耐え得る強度を有する必要がある。
【0030】
本実施形態では、摩擦攪拌溶接法のように加工物1A,1Bを相互に押付ける必要はないため、結合領域2が蛇行した加工物にも接合可能であるという特徴がある。
【0031】
本発明において薄板とは、0.5〜5mmの厚さのものをいうこととする。当該薄板としては金属及び金属を主成分とした合金材料やプラスチック樹脂等の融点未満の高温で塑性流動を生じうる材料からなる板である。
【0032】
結合領域に塑性流動を生じさせる工程について説明する。塑性流動は次に述べる作用により起こる。すなわち、加工物1A,1Bを突合せ、摩擦ツール5を回転又は/及び振動させ、摩擦ツールの先端部分をゆっくりと結合領域2である突合せラインに押し当てる。ここで、摩擦ツールを押付ける押圧は、金属及び金属を主成分とした合金材料の厚み等を都度、考慮しなければならないが、薄い板材を擦る程度に留まり、塑性流動が起こらない力や、厚さの薄い金属及び金属を主成分とした合金材料の形状を変形させてしまう程の力であってはならない。
【0033】
摩擦ツールのピン径と板厚との比は1:1〜8:1が好ましく、最適比は摩擦ツールの押圧で最適比が変わるので、摩擦ツールの押圧に応じてピン径と板厚との比を調節する。
【0034】
摩擦ツール5が回転又は/及び振動して、結合領域2に接触すると摩擦が接触点の材料を急速に加熱させ、その結果材料の機械的強度を低下させる。さらに力を加えると摩擦ツール5はその動き8に沿って材料をこね、押し出す。結合領域2では、摩擦ツール5の回転又は/及び振動する先端部分によって発生した摩擦熱が結合領域2の表面に高温の可塑性領域を作り、熱伝導により結合領域2の内部に可塑性領域が拡がる。同時に摩擦ツールの先端部分から与えられた回転力又は/及び振動力が可塑性領域において回転方向又は/及び振動方向のせん断力を与え、塑性流動が生じる。加工物が摩擦ツール5の動きと反対方向に動くかその逆に動くと、塑性化した金属は摩擦ツール5の進行方向の前端で潰れ、せん断力による攪拌と摩擦ツール5の押圧によって後端へ移動する。そして加工物に存在する酸化膜等の化合物層を破壊し、金属を攪拌していく。
【0035】
本実施形態においては、薄板が金属又は金属を主成分とした合金材料からなる場合において、予備加熱工程を設けることが好ましい。すなわち、塑性流動を生じさせる前に予め、結合領域2の表面に吸着した酸素分子、窒素分子又は水分子等の吸着気体分子及び結合領域2の表面に形成された酸素等の化合物層を除去することを目的として、吸着気体分子が脱離し化合物層が解離する温度以上で且つ加工物の融点未満に、結合領域2を予備加熱することが好ましい。この温度範囲まで予備加熱することで結合領域2の表面が還元活性化させて吸着気体分子及び化合物層が除去される。予熱温度は、金属及び金属を主成分とした合金材料の材質によって異なる。
【0036】
本実施形態では薄板が白金又は白金基合金の薄板である場合について、予備加熱工程を設けることが有意義であるので、この場合の接合方法について詳細に説明する。
【0037】
ここで、白金基合金は、白金を50wt%以上含有している多元合金であり、例えば白金−ジルコニウム合金、白金−イットリウム合金、白金−ロジウム合金、白金−イリジウム合金、白金−ジルコニウム−ロジウム合金、白金−ジルコニウム−金合金等がある。また、上記及びそれ以外の金属を酸化物等として含有した白金も白金基合金の一種である。
【0038】
通常、白金又は白金基合金の表面には、空気中の酸素分子、窒素分子及び水分子が吸着している。ここで多くの場合、水分子により表面には酸化層(PtO)等の化合物層が形成される。従来行なわれていた摩擦攪拌接合法では、摩擦熱によって形成された可塑性領域をプローブピンによって攪拌するので吸着ガス分子と酸化層は可塑性領域中に混ぜ込まれて分散する。白金又は白金基合金を加工物とする場合でも同様に吸着ガス分子と化合物層は可塑性領域中に分散混合される。
【0039】
本実施形態では、白金又は白金基合金の加工物はガラス溶解坩堝等をはじめとして高温で使用する用途が多い。大気中で接合を行なうとこのような厳しい使用条件下では可塑性領域中に分散混合された吸着ガス分子と化合物層に応力が集中して接合部分の破壊の起点になってしまい、或いは酸素や窒素等の膨張により、割れ等が発生してしまう。そこで、本実施形態では可塑性領域を発生させる工程に入る前に、吸着ガス分子や化合物層を予め除去する予備加熱工程を設けることとした。予熱条件は、結合領域の表面の吸着気体分子、化合物層の解離温度以上且つ加工物の融点未満に結合領域を加熱する。前記温度に加熱することで、結合領域の表面に吸着した吸着ガス分子を完全に解離させ、さらにその表面を還元活性化させて化合物層を解離させることができる。
【0040】
予備加熱工程における加熱が解離温度未満であればボイドが残存したり、化合物層に起因する不純物が残存する。そこで白金又は白金基合金の場合、530℃以上にすれば、酸素含有の雰囲気中においても還元活性化され、表面に形成された酸化層を消失させることが可能である。本実施形態では還元活性を高めるために、600℃以上とすることが好ましい。一方、白金の融点はほぼ1770℃であり、融点を超えると液化することから、結合領域において融着してしまうか、或いは加工物が融解により形状を維持できなくなってしまう。そこで加熱上限温度を融点未満とし、予備加熱工程の後で可塑性領域を形成し攪拌する工程を行なうために1600℃以下で予備加熱工程を行なうことが好ましい。したがって、予備加熱工程では、530℃以上1600℃以下に加熱することが好ましく、さらに好ましくは600℃以上1500℃以下に加熱する。ここで、600℃以上1500℃以下に加熱することにより、予備加熱工程において白金又は白金基合金を再結晶化させることができる。再結晶化させることで、結晶粒子は軟化し、次工程で可塑性領域を形成した際に攪拌効率を高めることができる。
【0041】
予備加熱工程において、結合領域表面にある吸着ガス分子を離脱させ且つ化合物層を完全に除去させるために、加熱は所定時間行なう。加熱温度によって必要な加熱保持時間は異なるが、例えば600℃に加熱する場合には5〜10分間加熱保持することが好ましい。5分以下では吸着ガス分子の離脱及び化合物層除去が不十分になると思われ内部欠陥も発生する。また、10分以上では、作業効率が低下する。なお、加熱温度が高いと還元活性を高めることができるため、吸着ガス分子の離脱と化合物層の除去が進み、加熱保持時間を短縮することができる。
【0042】
なお、必要以上に加熱保持時間が長いと再結晶粒子が二次成長して粒子の粗大化を招く。予備加熱工程後、摩擦ツールによって可塑性領域を攪拌するが、攪拌不充分で粗大化した再結晶粒子が残ると強度低下につながるため、加熱保持時間は再結晶粒子の粗大化が生じない程度の時間にする。
【0043】
本実施形態では、白金又は白金基合金からなる加工物同士の接合のみならず、白金又は白金基合金からなる加工物と、パラジウム、銅、銀若しくはステンレス或いはこれらの金属基合金からなる加工物との組み合わせのように異種金属間の接合を行なうこともできる。白金又は白金基合金の表面には酸素分子、窒素分子又は水分子等の吸着気体分子が吸着しており、白金とは異種金属であるパラジウム、銅、銀若しくはステンレス或いはこれらの金属基合金の表面にも同様の吸着ガス分子が存在する。本発明では接合部分においてこの吸着気体分子の影響による強度低下を防止するために予備加熱工程を設けることが好ましい。
【0044】
予熱条件は、吸着気体分子の解離温度以上前記加工物の融点未満に加熱する。吸着には化学吸着と物理吸着の2つがある。吸着される成分が固体表面と化学的な強い結合をする場合を化学吸着と呼び,金属上の酸素や水素等の吸着が例としてあげられる。これは表面での金属と気体との化学反応と考えることができ、吸着時の発熱が大きく、簡単に気体が金属から離れることはない。これに対して、吸着される成分の分子と固体表面の間の物理的な力、すなわちファン・デル・ワールス力などにより吸着が生じる場合を物理吸着といい、この場合の吸着時に発生する熱は、その吸着分子の凝縮熱より若干高い程度である。本発明では、金属表面に化学吸着している酸素や水の除去を行なう必要がある。金属種によって結合力が異なるため解離温度は異なるが、本発明では400℃以上に加熱する。予備加熱工程における加熱が解離温度未満であればボイドが残存したり、化合物層に起因する不純物が残存する。
【0045】
ここで、白金同士の接合の場合と同様に異種金属間の接合の場合においても530℃以上に加熱すれば、白金又は白金属合金からなる加工物の結合領域表面では、酸素含有の雰囲気中においても還元活性化され、表面に形成された酸化層を消失させることが可能であり、600℃以上とすれば還元活性を高めることができる。したがって、このような異種金属間の接合の場合では、予備加熱工程における加熱下限温度は400℃、好ましくは530℃さらに好ましくは600℃とする。600℃以上に加熱することにより、予備加熱工程において加工物の再結晶化をさせることができる。再結晶化させることで、結晶粒子は軟化し、次工程で可塑性領域を形成した際に攪拌効率を高めることができる。
【0046】
一方、加熱上限温度を融点未満とすることは融着防止若しくは加工物の形状維持のためであることは前述の通りである。加工物の融点は、加工物の融解を防止するために、組み合わせた加工物のうち融点の低い温度を選択する。通常は白金又は白金基合金の融点が高いため、異種金属の融点未満を加熱上限温度とする。パラジウムの融点は1554℃、銅の融点は1083℃、銀の融点は961℃、ステンレスの融点は種類によって異なるが例えばマルテンサイト系ステンレス鋼で1510℃である。ただし、融点を超えると液化することから、予備加熱工程の後で可塑性領域を形成し攪拌する工程を行なうために加熱上限温度は次の通りとすることが好ましい。異種金属がパラジウムの場合は1300℃以下、銅の場合は800℃以下、銀の場合は700℃以下、ステンレスの場合は、例えばマルテンサイト系ステンレス鋼で1250℃以下である。
【0047】
このような異種金属間の接合の場合においても、予備加熱工程において結合領域表面にある吸着ガス分子を離脱させるために加熱は所定時間行なう。加熱温度によって必要な加熱保持時間は異なるが、例えば600℃に加熱する場合には5〜10分間加熱保持することが好ましい。5分以下では吸着ガス分子の離脱不十分になると思われ内部欠陥も発生する。また、10分以上では、作業効率が好ましくなくなる。ただし、加熱保持時間は再結晶粒子の粗大化が生じない程度の時間にする。
【0048】
本実施形態では白金又は白金基合金が530℃以上にて還元活性化することを利用して結合領域表面に形成された化合物層を除去するが、この還元活性化は大気雰囲気下でも作用する。したがって、本発明では特別な雰囲気調整は不要であり、現場にて接合作業を行なうこともできるというメリットがある。
【0049】
予備加熱工程において、加工物の結合領域における加熱は通電加熱や白金ヒーターによる接合部周囲の加熱、ガスバーナー、プラズマトーチ等を用いて接合部周辺を局部加熱するが、結合領域をスポット的に加熱でき且つ表面に加熱以外の影響を与えないためにランプ集光器又はレーザーを照射して加熱することが好ましい。この場合のレーザーとしては、YAGレーザー、COレーザーである。
【0050】
さらに、予備加熱工程における加熱時に摩擦ツールの押圧方向に対して反対方向から結合領域に放熱防止のための断熱材を当てることにより、結合領域における温度分布の不均一を是正し、吸着ガス分子の解離、還元活性化をムラなく行なうことが好ましい。断熱材としては、アルミナ等の熱伝導の小さなセラミックスが好ましい。
【0051】
摩擦ツールの材質選定基準は、接合材より硬い材質で耐摩耗性に優れていること、加工中に割れたり欠けたりしないこと、酸化による消耗や劣化のないこと、接合材と容易に合金をつくらないこと等が挙げられる。また、摩擦ツールは変形が起こらないと同時に熱伝導率の悪い材料が好ましい。その理由としては、熱伝導率の良い材料を摩擦ツールとして用いると、塑性流動の促進や不純物の除去する予熱の熱を、摩擦ツールを通じて放出してしまい、予熱効率の悪化等が考えられる。従って、酸化アルミニウムや酸化ジルコニウム等のセラミックスについては、加工中での割れや欠けの問題があり、タングステン、タンタル、ニオブ、モリブデン、ルテニウム等の高融点金属については、酸化による消耗や劣化があり、摩擦ツールには適さない。そこで本発明では、イリジウム或いはロジウム又はそれらの合金で形成した摩擦ツールを使用する。イリジウムは融点が2457℃、ロジウムは融点が1963℃と白金よりも高融点材料である。合金としては、イリジウム基合金、ロジウム基合金、イリジウム−ロジウム合金がある。
【0052】
また摩擦ツールとして、耐熱衝撃性を有する、窒化物系化合物、炭化物系化合物、高融点酸化物又はこれらの混合焼結体を主成分とする材料で形成しても良い。窒化物系化合物としては、窒化アルミニウム、窒化タンタル、窒化硼素、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウムが例示でき、炭化物系化合物としては炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化タンタル、タングステンカーバイト、炭化硼素、炭化ハフニウムが例示でき、高融点酸化物としては酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化クロムが例示できる。これはいずれも白金よりも高融点で耐熱衝撃性を有する。
【0053】
さらに摩擦ツールとして、摩擦ツールの基体を1500℃以上の高融点金属で形成し、基体の表面に窒化チタン等の高硬度セラミックスを被膜した摩擦ツールを使用してもよい。高融点金属としては、タングステン、タンタル、モリブデン、イリジウム等が例示できる。
【0054】
本実施形態においては、予備加熱工程において上記説明したような加熱温度及び加熱時間を遵守することで、吸着ガス分子と結合領域表面の化合物層を除去し且つ再結晶粒子の粗大化を防止しつつ接合を行なうため、酸化物分散強化型の白金基合金からなる加工物の接合構造は、可塑性領域の凝固部において、金属粒子の粗大化が抑制され且つ強化のために分散させた酸化物粒子の偏析が抑制された構造となる。このとき、本実施形態における可塑性領域は、摩擦攪拌溶接を行なったときの可塑性領域よりも幅狭い構造であり、強度低下の可能性がある領域が少なくなるという点で好ましい。また、摩擦ツールの先端部を接触させるだけであるので、接合部分の境界が平坦に仕上がり、判別しがたいというメリットがある。TIG溶接機やガスバーナーを用いて溶接した接合構造は、白金の結晶粒子が粗大化し、且つ粒界に強化のために分散させた酸化物粒子が偏析してしまう構造となり、溶接部分以外と比較すると極端に強度低下している。これに対して本発明の接合構造は、粒子の粗大化防止と酸化物粒子の偏析防止を実現し、接合部での強度低下を防止し、且つ境界を判別し難くできた。
【0055】
摩擦ツールは、直径8〜12mm、摩擦ツールの回転速度は500〜5000rpm、或いは摩擦ツールの振動速度は500〜5000Hz、振幅幅0.1〜10mm、摩擦ツールの移動速度は、20〜50mm/minが例示できる。また、可塑性領域を作り出すために摩擦ツールの摩擦熱による加熱は、白金又は白金基合金同士の接合の場合は1200〜1500℃とし、異種金属と白金又は白金基合金同士の接合の場合は500〜1400℃とし、異なる加工物を接合する場合には低い方の融点未満までとする。
【0056】
結合領域を凝固させて加工物同士を接合する工程について説明する。摩擦ツール5の後端で可塑性領域6は冷却されて固体状の溶着を形成するに至る。この現象はすべて被溶接物の融点よりも低い温度で生じる。
【0057】
摩擦ツールは一方向に進めて接合を終了してもよいが、摩擦ツールを一方向に進めて接合した後、回転方向を逆方向にした後、それまで来た進路を戻るように進めてもよい。往復させることで、結合領域を対称線として左右をムラなく均一にすることができる。
【0058】
本接合方法では、亀裂発生がなくなり、溶着金属の蒸発による合金要素のロスが無く、合金成分をそのまま保持でき、さらに攪拌及び鍛造作用によって微細な粒状組織が溶着金属に形成されるというメリットがある。また、摩擦攪拌接合法のようにピンを挿入しないので、接合面が平坦に形成できるというメリットもある。
【0059】
本実施形態によれば、図6に示したプロセスにより、異物と反応して穴の空いた白金坩堝を修理することができ、図8に示した補強バンドは不要である。このとき摩擦攪拌溶接法のように薄板同士を寄せ合う必要はない。すなわち、結合領域を含む周辺部分を加熱することで熱膨張が起こり、熱膨張が薄板同士を寄せ合う力を自然と生じさせるからである。このことは摩擦攪拌溶接法では難しかった3次元形状の加工物の接合を容易とするものであり、白金製溶解装置のような工場設置型の炉を移動させずに現場にて簡易に接合作業を行なうことができる。
【0060】
【実施例】
以下、実施例を示す。
(実施例1)
板の厚さが1mmの白金板の突合せ接合を行った。先ず接合面の整合性のために接合部に液体コンパウンド(日本磨料工業製「ピカール」)を挟み込み相互にすりあわせた。5分間ほどすりあわせた後、水洗浄を行ない次いで中性洗剤で洗浄し水洗、脱イオン水洗浄を行った。更に接合面に紫外光ランプで紫外線を当てながら正確に接合面を合わせて固定した。固定は定盤上に平滑なαアルミナ板を敷きその上で行った。また接合面がずれないように瞬間接着剤で板相互を固定し、αアルミナ板にも仮固定した。この結合領域表面に対して鉛直方向から先端部が平坦形状で、直径5mmの摩擦ツールを当てた。板に対する摩擦ツールの圧力は10kg/cmとした。この圧力を加えながら摩擦ツールを結合領域の接合線を中心として3000rpmで回転力を加えながら、2cm/minの速度で沿わして移動した。
【0061】
(比較例1)
実施例1と同様にして準備した白金薄板に対して、ピンの付いたプローブピンを結合領域に挿入していわゆる摩擦攪拌溶接法と同じ方法での接合を試みた。ピンの深さを0.8mmとして白金板を貫通しない様にした。また摩擦ツールの直径は7mmとした。他の条件は実施例1と同じである。
【0062】
(実施例2)
板厚さ4mmの酸化ジルコニウムを粒界に分散したいわゆる強化白金板の接合を行った。先ず実施例1と同様に接合面の処理を行った被接合体である強化型白金板の結合領域端面を相互にすりあわせた後、隙間の無いようにつき合わせて定盤上に固定した。加工中に薄板が移動しないようにつき合わせた板の両端をTIG溶接で点付けを行った。このものについて被接合部となる部分を熱風ヒーターで600℃に加温しながら、実施例1と同様にして結合領域面の表面に摩擦ツールを当てて回転させた。摩擦ツールの強化型白金板に対する圧力は20kg/cmとし、回転数3500rpmで被接合面を1cm/minの速度で移動させた。
【0063】
(比較例2)
実施例2と同じ試料を使い、プローブピンの挿入部分のピン深さが2.5mm、その太さが2mm(直径)であり、非挿入部分の直径が10mmの工具鋼製のプローブピンを使って摩擦攪拌接合法により接合を試みた。この作業に先立って、ピンが入るように接合部に直径2.5mmの穴をあけ、そこにプローブピンを挿入して、回転数3500rpmで被接合面を1cm/minの速度の条件で接合を行った。但し、この場合は塑性流動の起こりやすいことが考えられたので熱風ヒーターでの予熱は400℃とした。
【0064】
(実施例3)
厚さ2mmの三次元構造を有するアルミニウム合金製の薄板の接合を行った。この場合は接合面の固定が困難であったので以下の方法によった。つまり、被接合面は中性洗剤で清浄化すると共に、紫外線ランプをあてて、表面を清浄化しながら接合部を見かけ上全く隙間の内容にあわせて両端を熱硬化型のセラミックス接着剤(東亞合成製(アロンセラミック))で加熱して固定した。被接合面の裏側には気鋭上に沿って作製した石膏型をおいて力による変形が起こらないようにした。また、摩擦ツールの先端部分の表面には回転方向に沿って、被接合体が互いに密着する方向に力の加わるように図4のような渦巻き状の溝を予め作っておいた。なお凹凸の溝深さは0.5mm程度であった。被接合面にこの摩擦ツールを当て、回転数を2500rpmにして被接合面に回転子の先端を圧力2kg/cm2であて、被接合面に沿わして移動させた。
【0065】
(実施例4)
厚さ2mmの実施例3と同様な形状を有するアルミニウム―マグネシウム合金の接合を行った。実施例3と同じようにして被接合部を固定し、赤外線ランプによる予熱によって300℃まで温度を上昇しておき、実施例3と同じ摩擦ツールを用い、回転数を3000rpmの速度で回転させて接合を行った。
【0066】
実施例1で接合した薄板を、接合終了後300℃の炉に入れて、瞬間接着剤を剥したが、二枚の白金板は接合部で強固に接合していることがわかった。また摩擦ツールが当たった部分は0.1mm程度のへこみが認められた。この試料を切断して断面の観察を行ったところ、接合部は一体となっており、ほとんど粒成長は起こっていないことが認められた。
【0067】
比較例1で接合した薄板は、接合は出来たものの接合部背面にわずかに攪拌跡とくぼみが見られ、白金内の塑性流動が過剰に起こっていることがわかった。また断面の観察では接合部分の幅が4mm程度あり、十分な接合をしているが、白金内の塑性流動が過剰に働いていることがわかった。
【0068】
実施例2で接合した薄板では、摩擦ツールをあてた部分の表面はあてていない部分から0.5mm程度くぼんでいた。また被接合面は接合されていることが見られた。更に摩擦ツールをあてた面の裏面は平坦で突合せ部分が認められなくなり、突き合わせ面全面に渡り接合していることがわかった。また断面を切断して観察したところ、粒成長もほとんど認められず、接合面が一体化していることがわかった。
【0069】
比較例2で接合した薄板では、接合は出来たものの接合部の幅が4mm程度あり、攪拌効果が過剰に起こっていたことが認められた。
【0070】
実施例3で接合した薄板では、摩擦ツールの当たっていた表面を含めてほとんど表面のくぼみが無く、また背面にも非接合部は見あたらない状態で接合が出来た。なお被接合部にピンが入っていないので余分な塑性流動がなかったためか、表面をわずかに研磨するだけで、見かけ上接合面は見えなくすることが出来た。
【0071】
実施例4で接合した薄板では、良好な接合面を有する接合がみとめられた。なお回転数を4000rpmとしたところ接合は問題なく出来たが、被接合面の裏側の接合部模様が広くなっており、やや過剰に反応の起こっていることが認められた。
【0072】
【発明の効果】
本発明により、金属及び金属を主成分とした合金材料やプラスチック樹脂等の融点未満の高温で塑性流動を生じうる材料からなる薄板に対して最適な接合方法をなしえた。すなわち、本発明の接合方法では表面への摩擦動作により生じたせん断力で塑性流動を起こさせるので、接合箇所にて必ず生じてきた結晶の肥大化による強度低下を防止するとともに塑性流動を起こす範囲(可塑性領域)を縮小することができた。塑性流動面積の縮小により摩擦ツールにかける力を減少させることができ、薄板の裏側から薄板を支持する力をかける必要はない。本発明に係る結合方法では、薄板に加える力を少なくすることができるため、3次元構造の加工物において接合可能である。また、白金製溶解装置等、工場で設置する加工物に対しても現地での接合ができる。さらに薄板同士を接合する向きに加える力をなくすことで、接合部分の品質を一定に保持することができる。また、結合領域は直線のみならず蛇行していても対応可能である。
【0073】
本発明の接合方法では、吸着分子と金属表面に形成された化合物層を除去する目的で予備加熱工程を意図的に設けたので、可塑性領域への不純物の混入防止して、結合領域に挿入するプローブピンによってかき混ぜなくても塑性流動を効率よく生じさせ、しかも可塑性領域全体に吸着ガス分子や化合物層を分散させることなく、強度低下を防止することができた。
【0074】
本発明の接合方法は、白金又は白金基合金、特に酸化物分散強化型白金基合金の材料の接合に特に適し、分散させた酸化物の偏析防止、強度低下防止を実現できる。
【0075】
本発明の接合方法では、摩擦ツールの先端部分を複数の凹凸を有する粗面とすることで塑性流動を起こしている材料を寄せ集め、塑性流動を促進させることができる。
【0076】
また本発明は、新規加工品の接合のみならず、クラック箇所の修理等にも適用することができる。さらに、本発明の方法を実現する接合装置は、加工物の抑えの力が少ないので台に強固に固定する必要もなく、摩擦ツールの回転機構を備えればよいので、ハンデイ化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る薄板の接合方法の接合機構の一形態を示す概念図である。
【図2】本実施形態に係る摩擦ツールの形状を示す概略図であり、(a)は側面図、(b)は先端部分(平坦形状)を摩擦ツールの軸方向から見た図である。
【図3】本実施形態に係る摩擦ツールの形状を示す概略図であり、(a)は側面図、(b)は先端部分(先端側部に角がない丸い形状)を摩擦ツールの軸方向から見た図である。
【図4】本実施形態に係る摩擦ツールの形状を示す概略図であり、(a)は側面図、(b)は先端部分(平坦面に渦状の切込みを入れた形状)を摩擦ツールの軸方向から見た図である。
【図5】本実施形態に係る摩擦ツールの形状を示す概略図であり、(a)は側面図、(b)は先端部分(平坦面に無数の凸部を設けた櫛状形状)を摩擦ツールの軸方向から見た図である。
【図6】本実施形態における白金坩堝の修理方法を示す概念図であって、(a)は異物によりピンホールができた白金坩堝、(b)はピンホールをその周りごと切取った白金坩堝、(c)はピンホールの切取り跡と同じ大きさの補修用白金板を切取り跡にはめ込んで固定した白金坩堝、(d)は本接合により切取り跡に補修用白金板を接合した白金坩堝、を示す。
【図7】TIG溶接で肉盛りをした場合おいて、溶接方向を横切る方向にカットした場合の断面形態を示す概念図である。
【図8】TIG溶接後、バンド補強鍛接をした場合おいて、溶接方向を横切る方向にカットした場合の断面形態を示す概念図である。
【符号の説明】
1A,1B,薄板の加工物
2,結合領域
5,摩擦ツール
6,塑性流動が生じた凝固部分(可塑性領域形成後の凝固部分)
7,モータ

Claims (2)

  1. 白金又は白金基合金からなる薄板の加工物を相互に当接若しくはほぼ当接させて細長の結合領域を規定する工程、
    前記結合領域を530〜1600℃に加熱して、白金又は白金基合金を還元活性化させて、前記結合領域の表面に吸着した酸素分子、窒素分子又は水分子等の吸着気体分子及び前記結合領域の表面に形成された白金又は白金基合金と前記吸着気体分子との化合物層を除去する予備加熱工程、
    前記加工物の材料よりも硬い材料からなる棒状の摩擦ツールの先端部分を前記結合領域に押し当てながら前記摩擦ツールを回転又は/及び振動させることによって、前記摩擦ツールと前記結合領域との間で摩擦熱を発生させて前記結合領域に塑性流動を生じさせる工程、
    前記塑性流動を生じた結合領域を凝固させて前記加工物同士を接合する工程、とを備えることを特徴とする薄板の接合方法。
  2. 前記摩擦ツールの先端部分は、複数の凹凸を有する粗面であることを特徴とする請求項1に記載の薄板の接合方法。
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