JP4919910B2 - 摩擦撹拌接合装置および摩擦撹拌接合用ツール - Google Patents

摩擦撹拌接合装置および摩擦撹拌接合用ツール Download PDF

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Description

本発明は、摩擦撹拌接合装置およびこの装置のための接合ツールに関し、特に、一般構造用鋼材、建築用構造用鋼材および自動車用鋼板などの鉄鋼材料からなる被接合物を接合するために好適に実施することができる摩擦撹拌接合装置および摩擦撹拌接合用ツールに関するものである。
鉄系金属材料の摩擦撹拌接合に関する典型的な従来技術は、特許文献1に記載されている。この従来技術においては、耐熱性合金からなる基材の中心軸線上に、被接合物と接触するピン部が一体的に形成される接合ツールにおいて、前記ピン部を含む外周部分を、窒化ケイ素(Si)系のセラミックからなる皮膜によって覆うことによって、高温域における硬度の低下を抑制し、これにより鉄鋼材料である被接合物との摩擦に対する強度の低下を抑制することが提案されている。
このような従来技術では、被接合物として、JIS規格でSS400として規定される鉄鋼材料を対象とし、また接合ツールの基材は、Fe、Ni、CoおよびWの少なくとも1種を主成分とする耐熱性合金からなる。
他の従来技術は、特許文献2,3に記載されている。これらの従来技術では、被接合材の接合部近傍にN、He、Arなどの不活性ガスを吹き付けて、酸化物の生成を抑制し、接合不良を改善することが提案されている。
さらに他の従来技術は、特許文献4に記載されている。この従来技術では、接合ツールの基材の表面にダイヤモンドからなる皮膜を形成して、アルミニウム合金、マグネシウム合金および銅合金などからなる被接合材の成分が接合ツールに溶着し、あるいは合金化することを防止して、接合ツールの長寿命化を図ることが提案されている。
特開2004−82144号公報 特開2000−301363号公報 特開2002−248583号公報 特開2003−326372号公報
前記特許文献1に記載された方法においては、アルミニウム合金などに比べて融点の高い鉄鋼材料を対象として摩擦撹拌によって接合するため、窒化ケイ素などによって皮膜が形成された接合ツールが用いられている。このような接合ツールは、被接合物との摩擦による発熱によって、接合ツールを構成する材料の化学的な分解および構成元素の被接合物への拡散が生じ、接合ツールのショルダ部およびピン部などの被接合物に接触して撹拌駆動力を発生させる部位が著しく摩耗する。
また、前記接合ツールの基材として使用される、超硬合金であるたとえばタングステンカーバイトの1000℃における標準生成エネルギは、−10kcal/g・原子と比較的大きいため、高温環境下では分解が生じ易く、熱的に不安定である。さらに、鋼中へのタングステンの固溶を生じ易い。これらの現象によって生じる接合ツールの摩耗が摩擦撹拌領域の形成を損なうため、接合強度の低下を招き、僅かな回数の使用によって高価な接合ツールの寿命が尽きるため、経済性に劣るという問題がある。
さらに、鉄鋼材料の摩擦撹拌接合では、接合ツールの回転速度は250〜1500rpmに設定することが多く、1500rpm以上に高い回転速度にすると摩擦発熱量が不可避的に増加する。このため、被接合物が早期に加熱され、接合時間の短縮および接合強度の向上が図れる一方、接合ツールの摩耗も加速される。よって、高価な接合ツールの寿命を考慮すると、回転速度を大きくするには限界があり、したがって、接合時間の短縮および接合強度の向上が制限されるという問題がある。
また、前述の特許文献2および特許文献3において開示されている技術においては、接合不良を改善するために、被接合材の接合部近傍に不活性ガスを吹き付けて酸化物の生成を抑制することが提案されているが、被接合材が鉄鋼材料である場合にあっては、前述の特許文献1の場合と同様の問題がある。
さらに、特許文献4に記載の従来技術においては、接合ツールの基材の表面にダイヤモンドからなる皮膜を形成することによって、被接合材の成分の接合ツールへの溶着および合金化することを防止して、接合ツールの長寿命化を図ることが提案されている。しかしながら、この技術においても、被接合材が鉄鋼材料である場合は、皮膜の構成元素である炭素が鉄鋼材料と化学反応してしまい、上述した特許文献2および3の各従来技術と同様の問題がある。
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、特に鉄鋼材料の摩擦撹拌接合に用いる接合ツールの耐久性を飛躍的に向上させて、接合ツールの高速回転による被接合物の接合時間の短縮が図られると共に、被接合物の接合部の強度低下も防止することができる摩擦撹拌接合装置および摩擦撹拌接合用ツールを提供することを目的とするものである。
上述した技術的課題を解決するために、本発明に係る摩擦撹拌接合装置は、被接合物の接合部に、接合ツールを回転させながら押圧し、摩擦熱によって軟化した部分へ前記接合ツールの少なくとも一部を没入させて、この軟化した部分を撹拌しながら被接合物の接合部を固相接合するための摩擦撹拌接合装置であって、
前記接合ツールが、基材と、この基材の表面の少なくとも被接合物に接触する領域に形成された窒化アルミニウム皮膜とからなり、
前記接合ツールの前記基材が、
窒化ホウ素:0.3〜10重量%、
窒化クロムおよび/または炭化クロム:0.5〜8重量%、
窒化チタン:0.1〜2重量%、
残部:窒化ケイ素および不可避的成分、
を含んでなることを特徴とするものである。
本発明の好ましい態様においては、上記基材が、さらに窒化アルミニウムを0.2〜30重量%含んでなる。
また、本発明に係る摩擦撹拌接合装置は、前記接合ツールが没入する接合部に向けて不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を含む。
さらに本発明は、上記摩擦撹拌接合装置の、フリクションスポット接合法への使用を包含する。
また、本発明に係る摩擦撹拌接合用ツールは、被接合物の接合部に、回転させながら押圧し、摩擦熱によって軟化した部分へ前記接合ツールの少なくとも一部を没入させて、この軟化した部分を撹拌しながら被接合物の接合部を固相接合するための摩擦撹拌接合用ツールであって、
前記接合ツールが、基材と、この基材の表面の少なくとも被接合物に接触する領域に形成された窒化アルミニウム皮膜とからなり、
前記接合ツールの前記基材が、
窒化ホウ素:0.3〜10重量%、
窒化クロムおよび/または炭化クロム:0.5〜8重量%、
窒化チタン:0.1〜2重量%、
残部:窒化ケイ素および不可避的成分、
を含んでなることを特徴とするものである。
また、上記本発明の接合ツールの好ましい態様においては、上記基材が、さらに窒化アルミニウムを0.2〜30重量%含んでなる。
さらに、本発明の接合ツールの好ましい態様においては、前記窒化アルミニウム皮膜が、化学的蒸着法、物理的蒸着法および溶射法のいずれか1つもしくはこれらの組み合わせによって形成されてなる。
本発明の接合ツールの他の好ましい態様においては、前記窒化アルミニウム皮膜の形成に際して、基材の表面が粗面化されてなり、さらに、窒化アルミニウム皮膜の形成に際して、HIP処理が施される態様も含む。
本発明は、鉄鋼材料の接合に特に好適である。この被接合物の接合部には、上述した本発明の接合ツールを回転させながら被接合物の接合部に押し付けて、摩擦熱によって軟化した部分へ没入させ、この軟化した部分を撹拌して、被接合物の接合部が固相接合される。
なお、本実施の形態において鉄鋼材料とは、鋼材とも呼ばれ、組成からは、鋳鉄、炭素鋼および合金鋼などに分類され、用途からは、鋳物用銑鉄、圧延鋼材、鋳鋼、鍛鋼などに分類される鉄鋼製品をいう。本発明は、このような鉄鋼材料に比べて融点の低いアルミニウム合金を被接合物2として排除するものではなく、本実施の形態の摩擦撹拌接合装置1によって摩擦撹拌接合が可能である。
本発明によれば、接合ツールの基材が耐熱衝撃性にすぐれ、さらにこの基材の所定の表面に窒化アルミニウムからなる皮膜が形成されているので、接合ツールの熱衝撃による劣化や摩耗を防止して耐久性を向上し、接合ツールの飛躍的長寿命化を図ることができるというすぐれた効果を奏する。
また接合ツールの皮膜の摩耗に対する耐性が向上されるので、接合ツールの回転速度を大きくして、接合作業の効率を向上することができる。さらに接合ツールの高速回転によって被接合物との摩擦発熱量を増加させることができるので、被接合物の撹拌領域を拡大し、被接合物の接合部の接合強度を向上することができる。さらにまた、接合ツールの表面に窒化アルミニウムからなる皮膜が形成されることによって、接合強度の低下を招く有害なツール構成元素の接合部への侵入を防止することができるので、接合品質を向上させることができる点においてもすぐれている。
また、接合ツールの皮膜は、少なくとも被接合物に接触する領域に形成され、被接合物との親和力の低い窒化アルミニウムからなるので、被接合物と接合ツールとの間の化学反応による摩耗を防止し、接合ツールの長寿命化を図ることができる。
さらに、本発明の接合ツールの基材は、基材自体が耐熱衝撃性にすぐれているので、上記窒化アルミニウム皮膜との組み合わせによって、過酷な使用条件下における接合ツールの耐久性を予想外に向上させることができる。
また、前記接合部は、好ましくは、不活性ガス供給手段から供給される不活性ガスによって大気と遮断され、これにより、皮膜の酸化による接合ツールの劣化、損傷および剥離を効果的に防止することができる。
さらに、接合ツールが耐熱衝撃性にすぐれるとともにその表面が窒化アルミニウムからなる皮膜によって覆われるので、前記接合ツールの被接合物に対する化学反応による熱衝撃による劣化や摩耗が防止される。このため、接合ツールの回転速度を大きくして被接合物の接合時間を短縮し、接合作業の効率を向上することができる。さらに、接合ツールの高速回転が可能となることによって、被接合物との接触による摩擦熱発生量が増加し、被接合物の撹拌領域が拡大されるので、被接合物間の接合強度が向上される。また皮膜が窒化アルミニウムからなることによって、接合ツールの摩耗が防止されるので、接合ツールを構成する元素の被接合物中への拡散による固溶を防止し、被接合物の接合部の強度低下を防止することができる。
また、本発明の好ましい態様においては、前記接合部を不活性ガスによって大気と遮断することによって、皮膜の酸化による接合ツールの劣化、損傷および剥離などを防ぐことができる。
摩擦撹拌接合装置
図1は本発明の実施の一形態の摩擦撹拌接合装置1を示す正面図であり、図2は接合ツール4のピン部48が被接合物2に没入した状態を示す一部の拡大断面図である。摩擦撹拌接合装置1は、鉄鋼材料からなる被接合物2の接合部3に、接合ツール4を回転させながら押し付けて、摩擦熱によって軟化した部分へ没入させ、この軟化した部分を撹拌して、被接合物2の接合部3を固相接合する装置本体5と、前記接合ツール4に向けて不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段6とを含む。
前記装置本体5は、軸線L1に沿って接合ツール4を移動させて被接合物2の接合部3をスポット接合するため、たとえば多関節ロボット7のロボットアーム8の手首9に設けられる。前記被接合物2は、自動車の車体および鉄道車両の構体などであって、相互に接合されるべき2枚の鋼板2a,2bからなる。
このような被接合物2を本実施の形態の摩擦撹拌接合装置1によって摩擦撹拌接合(Friction Stir Welding :略称FSW)して、スポット接合する場合について説明する。
前記装置本体5は、前記多関節ロボット7の手首9が複数のボルトなどによって着脱可能に設けられる取付体11と、一側部に前記取付体11が固定される基体12と、基体12に収容される昇降駆動源13と、基体12に収容される回転駆動源14と、基体12に前記軸線L1に沿って昇降可能に設けられる昇降体15と、昇降体15の下端部に突出して設けられるツール保持体16と、ツール保持体16の下端部から突出する撹拌ロッド17と、撹拌ロッド17に着脱可能に設けられる前記接合ツール4と、基体12の前記一側部に固定される上端部から基体12の下方に配置される下端部にわたって略L字状に屈曲した屈曲アーム19と、屈曲アーム19の下端部に設けられる受け台20と、受け台20に設けられ、接合ツール4の下方で被接合物2を支持する棒状の支持具21と、前記多関節ロボット7、昇降駆動源13、回転駆動源14および不活性ガス供給手段6の動作を制御するロボットコントローラ22とを含む。
前記昇降駆動源13は、サーボモータと、このサーボモータの回転力を昇降体15に前記軸線L1の沿う上方および下方への直線移動力として伝達する昇降用動力伝達手段とによって構成される。前記昇降用動力伝達手段は、ボールねじ機構などによって実現される。また、前記回転駆動源14は、サーボモータと、このサーボモータの回転力を撹拌ロッド17の前記軸線L1まわりの回転として伝達する回転用動力伝達手段とによって構成される。前記回転用動力伝達手段は、タイミングベルトおよびこのタイミングベルトが巻き掛けられる複数のプーリなどによって実現される。
前記ロボットコントローラ22は、パーソナルコンピュータおよびティーチングペンダントなどの入力装置から入力された指令に応答して、予め設定された動作プログラムを実行し、前記多関節ロボット7、昇降駆動源13、回転駆動源14および不活性ガス供給手段6を所定の動作条件に従って制御し、支持具21上に供給された被接合物2をスポット接合するように構成される。
前記所定の動作条件は、たとえば接合ツール4の回転速度、接合部3への没入量、没入時間、押し付け力、ならびに不活性ガス供給手段6による不活性ガスの供給開始および供給停止などである。このようなロボットコントローラ22もまた、コンピュータによって実現され、前記動作プログラムが記憶された記憶装置、主制御装置および出力装置などを含む。
前記不活性ガス供給手段6は、不活性ガスであるたとえばArガスが充填された圧力容器および圧力・流量調整ユニットなどによって実現され、圧力容器の容器弁から吐出される前記不活性ガスを、前記ロボットコントローラ22からの制御信号によって所定の流量および二次圧力で流出することができる不活性ガス供給源27と、ツール保持体16の下端部に気密に装着され、撹拌ロッド17の前記ツール保持体16から下方へ突出する部分および接合ツール4を外囲する略円筒状のカバー体28と、このカバー体28に接続されるニップル29と、ニップル29に不活性ガス供給源27から吐出される不活性ガスを導くガス誘導管30と、ツール保持体16およびカバー体28間に介在される円筒状のシール部材31とを有する。
前記カバー体28は、直円筒状の胴部32と、胴部32の軸線方向一端部に連なり、胴部32から離反するにつれて直径が減少する円錐台状の案内部33とを有する。胴部32の軸線方向他端部は、ツール保持体16の下端部を外囲するように装着され、複数のボルトなどによって前記シール部材31とともに前記ツール保持体16の下端部に着脱可能に取り付けられる。
このようなカバー体28は、たとえば高温の溶融金属の飛沫の付着などによる損傷を防止するため、アルミニウム合金からなってもよく、また交換が容易で軽量なエンジニアリングプラスチックなどの汎用合成樹脂からなってもよく、さらに接合ツール4などの高速回転に伴なう振動に対する疲労による破損を防止するため、繊維強化プラスチック(略称FRP)からなってもよい。
前記案内部33の被接合物2に対向する端面34は、前記胴部32の軸線に垂直な仮想一平面に平行である。また被接合物2は、棒状の支持具21に支持された状態で、支持具21の軸線に垂直な仮想一平面に平行に配置される。この支持具21の軸線は前記接合ツール4の軸線L2に垂直である。
このような状態で、前記案内部33の端面34は、被接合物2の上面に対して僅かな間隔ΔLをあけて離間している。この間隔ΔLは、1〜3mmに選ばれる。前記胴部32の軸線は、前記接合ツール4の軸線L2と共通な一直線上に存在する。
前記ツール保持体16の下端面16aと被接合物2の上面2c(すなわち上方の鋼板2aの上面)との間には、前記カバー体28によって環状の空間Sが形成され、この空間Sには前記ニップル29から不活性ガスをたとえば25リットル/分で供給して、大気圧よりも僅かに高い圧力に保ち、大気の浸入が阻止された不活性ガス雰囲気とし、接合ツール4によって被接合物2の接合部3を摩擦撹拌接合が行なわれる。
このとき、空間S内にニップル29から供給された不活性ガスは、胴部32よりも流路断面積が減少する案内部33に導かれて、カバー体28と被接合物2と間の前記間隔ΔLの隙間から微小な流量で漏洩し、これによってカバー体28内の空間S、特に接合ツール4の周囲は不活性ガスによって常に充たされた状態に保たれるので、図4に関連して後述するように、基材51の表面が皮膜50によって覆われた接合ツール4を回転させながら被接合物2に押し付け、接合ツール4と被接合物2との間で発生した摩擦熱によって接合部3が軟化し、この軟化した部分を撹拌して接合部3が固相接合されるが、接合部3は不活性ガスによって大気と遮断されているので、前記皮膜50の酸化接合ツール4の劣化、損傷および剥離などを防ぐことができる。
本実施の形態では、前記ニップル29をカバー体28の胴部32の軸線方向のほぼ中央部の1個所に軸線L1に向けて設ける構成を例示したが、本発明の実施の他の形態では、前記ニップル29を胴部32に軸線L2に向けて周方向に等間隔をあけて複数箇所、たとえば2〜3箇所に設けるようにしてもよく、1〜3箇所に撹拌ロッド17と胴部32との間に向けて傾斜して設けるようにしてもよく、さらに1〜3箇所に直接、接合部3または接合ツール4に向けて不活性ガスが噴射されるように設けるようにしてもよい。
また、本発明の実施のさらに他の形態では、前記ニップル29に代えてノズルを用いるようにしてもよい。前記ノズルを用いることによって、不活性ガスの供給方向に指向性を持たせ、摩擦撹拌が開始される直前にノズルから接合部3に向けて噴射し、短時間で接合ツール4の周囲の空間を不活性ガス雰囲気とし、高温部と大気との接触を阻止するようにしてもよい。
図3は接合ツール4の撹拌ロッド17への取り付け構造を示す斜視図であり、図3(1)は接合ツール4を撹拌ロッド17から分離した状態を示し、図3(2)は接合ツール4が撹拌ロッド17に取り付けられた状態を示す。撹拌ロッド17は、円柱状に形成され、その下端部40には外ねじ41が刻設された嵌合部42が形成される。嵌合部42には、接合ツール4が部分的に嵌合する嵌合凹所43が形成される。また嵌合部42には、前記外ねじ41に螺合する内ねじ44が刻設された固定具45が螺着される。
前記外ねじ41および内ねじ44は、撹拌ロッド17の回転方向とは逆方向に固定具45が回転することによって締め付けられるように形成され、接合ツール4が被接合物2から回転方向とは逆方向の反力を受けて、この反力によって固定具45が接合中に緩むことがないように構成されている。また、嵌合凹所43は、撹拌ロッド17の軸線L2に同軸に形成され、この軸線L2に垂直な断面形状が正方形とされ、嵌合凹所43に嵌合した接合ツール4のとも回りを防止している。
接合ツール4は、装着部46と、ショルダ部47と、ピン部48とを有する。ショルダ部47は、装着部46に連なり、ピン部48はショルダ部47に連なって一体的に形成される。ショルダ部47とピン部48とは、円柱状または円錐状に形成され、ショルダ部47よりもピン部48の直径が小さく形成される。これらのショルダ部47およびピン部48は、本実施の形態では同軸に形成されるが、本発明の実施の他の形態ではピン部48がショルダ部47に対して偏心した軸線上に形成されてもよい。
装着部46は、撹拌ロッド17の嵌合凹所43に緩やかに嵌合可能に形成される。装着部46の形状は、嵌合凹所43が略直方体状の空間に対応させて略直方体形状に形成され、軸線L2に垂直な断面形状が正方形とされる。これらのショルダ部47およびピン部48の直径および軸線方向の寸法は、被接合材の材質、接合条件、接合強度および接合跡の形状などを考慮して、最適な値に予め決定される。たとえばショルダ部47の直径は10mmに設定され、ピン部48の直径は4mmに設定される。
装着部46が嵌合凹所43に緩やかに嵌合した状態では、図3(2)に示されるように、ショルダ部47は、部分的に撹拌ロッド17から突出し、またピン部48はショルダ部47から突出している。
固定具45は、撹拌ロッド17の先端部40に着脱可能に形成される。固定具45には、貫通孔49が形成され、この貫通孔49から接合ツール4のショルダ部47の一部とピン部48とが突出し、装着部46の前記ショルダ部47の周囲の四隅が固定具45によって押えられ、接合ツール4が撹拌ロッド17の下端部40に装着される。
接合ツール4を撹拌ロッド17に装着した状態では、装着部46および嵌合凹所43が直方体形状に形成されるので、接合ツール4が接合時に被接合物2から回転方向とは逆方向に大きな反力を受けても、接合ツール4が撹拌ロッド17の軸線L2まわりに角変位することが阻止される。また、接合ツール4は固定具45によって撹拌ロッド17の下端部40に保持されるので、撹拌ロッド17から固定具45を螺退させて分離することによって、接合ツール4が損耗した場合に、新しい接合ツール4に交換することができる。
このような接合ツール4は、後述する窒化ケイ素(Si)を主成分とする材料からなり、焼結することによって装着部46、ショルダ部47およびピン部48が一体に形成され、これらの表面には後述するように皮膜50が形成される。前記撹拌ロッド17および固定具45は、たとえばSKD−61などの工具鋼によって形成される。
摩擦撹拌接合用ツール
図4は接合ツール4の一部の拡大断面図である。前記接合ツール4の少なくとも被接合物2に接触する領域であるショルダ部47およびピン部48を含む全表面には、被接合物2に対して耐摩耗性の高い材料である窒化アルミニウム(AlN)からなる皮膜50が形成される。このような皮膜50が形成される基材51は、後述する窒化ケイ素を主成分とする硬質材料からなり、その表面に前記皮膜50が化学的蒸着法(Chemical Vapor Deposition、略称CVD)、物理的蒸着法(Physical Vapor Deposition、略称PVD)および溶射法を用いて形成することができる。前記皮膜50の厚さΔTは、たとえば、通常、30μm〜100μmの範囲が好ましい。
本発明の接合ツールは、基材が、窒化ホウ素:0.3〜10重量%、窒化クロムおよび/または炭化クロム:0.5〜8重量%、窒化チタン:0.1〜2重量%、残部:窒化ケイ素および不可避的成分によって構成される。
さらに、本発明においては、上記基材がさらに窒化アルミニウムを0.2〜30重量%含んでいてもよい。
窒化ホウ素(BN)は、耐熱衝撃性を向上させる成分として存在し、その含有量が0.3重量%未満ではその効果が乏しく、一方、10重量%を超えると、逆に基材の強度が低下する傾向が生じ、耐熱衝撃性の向上に寄与しなくなる。窒化ホウ素のさらに好ましい含有量は0.4〜7.0重量%であり、最も好ましくは、0.5〜4.0重量%である。
窒化クロム(CrN)および/または炭化クロム(CrC)も耐熱衝撃性を向上させるために有効な成分であり、
0.5〜8重量%の範囲で存在し、好ましくは0.7〜6.0重量%であり、最も好ましくは、1.0〜4.0重量%である。含有量が0.5重量%未満では、その効果が乏しく、一方、8重量%を超えると、焼結性に悪影響が生じ、熱衝撃に対する割れの発生をもたらすため、この範囲に限定することが肝要である。窒化クロム(CrN)と炭化クロム(CrC)はそれぞれ単独で含有することもでき、併用的に含有することもできる。
これらの成分の存在によって、耐熱衝撃性が飛躍的に向上する理由は必ずしも明かではないが、窒化クロム(CrN)および/または炭化クロム(CrC)の含有によって焼結後の組織中に微孔(20〜40μm程度)が形成され、この微孔の存在によって熱衝撃に対する抵抗性が増大すると考えられる。また、表面にも微孔が形成されるため、窒化アルミニウム皮膜層との密着性が向上する効果も生じていると推測される。
窒化チタン(TiN)は、焼結性を促進する効果がある。特に、本発明者の知見によれば、上記の窒化ホウ素、窒化クロムおよび/または炭化クロムが含有されていると基材の強度が低下する傾向が見られるが、窒化チタンが存在することによって、このような強度低下を防止することができる。窒化チタンの含有量の範囲は、0.1〜2重量%であり、好ましくは0.2〜1.8重量%であり、最も好ましくは、0.3〜1.5重量%である。含有量が0.1重量%未満では、その効果が乏しく、一方、2重量%を超えると、その効果は飽和するため、経済性の観点からこの範囲に制限されることが好ましい。
本発明の好ましい態様においては、窒化アルミニウム(AlN)を0.2〜30重量%の範囲で含有させることができる。窒化アルミニウムの存在は、基材に被覆する窒化アルミニウム皮膜層との密着性を向上させる上で好ましい。また、焼結性を促進し、熱伝導性を向上させる上でも好ましい。含有量の範囲は、0.2〜30重量%であり、好ましくは0.3〜20重量%であり、最も好ましくは、0.5〜15重量%である。含有量が0.2重量%未満では、その効果が乏しく、一方、30重量%を超えてもその効果は飽和するため、経済性の観点からこの範囲に制限されることが好ましい。
本発明の接合ツールを構成する基材において、残部は、窒化ケイ素(Si)および不可避的成分によって構成される。この場合の不可避的成分としては、イットリア、アルミナなどであり、これらの成分は、通常、不可避的に窒化ケイ素原料に含まれていることが多い。
なお、本発明においては、上記各成分の含有量は、成形ならびに焼結後の基材の構成成分として認められる化学種の含有量を意味する。
本発明の接合ツールの基材は、粉末成形や樹脂を用いる射出成形などの公知の方法によって所望形状に成形して製造することができる。
具体的には、次のような成形工程に従って、製造することができる。
例えば、ペレット状にした窒化ケイ素(Si)原料を射出成型機で加熱溶融し、圧力を加えて金型に注入する。次いで一定時間冷却した後、金型から取り出す。なお、窒化ケイ素(Si)原料とは、窒化ケイ素(Si)粉末と熱可塑性高分子材料、油脂類等とを加熱混合し、ペレット状にしたものである。
上記基材の表面に被覆する窒化アルミニウムは、熱伝導率170〜180W/m・k、熱膨張係数5×10−6/℃、モース硬さ9の材料であり、被接合物2として用いる鉄鋼材料に対して高温度であっても化学反応がなく、あるいは極めて少ない材料として採用することができる。
次に、接合ツール4の表面に前記皮膜50を形成するための手法について述べる。
図5は皮膜50を有する接合ツール4を形成する方法を説明するためのフローチャートである。
図6は表面に皮膜50が一体的に形成された接合ツール4を作製するまでの各工程を模式的に示す図であり、図6(1)は皮膜50を形成する基材51を示し、図6(2)は基材51に予備皮膜50aを形成した状態を示し、図6(3)は予備皮膜50aを基材51に加熱処理によって一体化した状態を示し、図6(4)は予備皮膜50aを基材51に一体化して接合ツール4が完成した状態を示す。
まず、ステップs1で、図6(1)に示されるように、窒化ケイ素からなる接合ツール4の基材51を準備し、ステップs2で、この基材51のピン部48およびショルダ部47の表面に、図6(2)に示されるように、アルミニウム系材料からなる予備皮膜50aを形成する。アルミニウム系材料としては、純アルミニウム、アルミニウム合金を用いるようにしてもよい。
予備皮膜50aを形成する方法としては、前記アルミニウム系材料の粉末を接合ツール4に塗布してもよく、あるいはアルミニウム箔を被せてもよく、さらにアルミニウム系材料に対して接合ツール4を回転させながら圧入することによって接合ツール4の表面に予備皮膜を形成するようにしてもよい。
こうして、ステップs3で窒化ケイ素(Si)からなる基材51の表面に予備皮膜50aを形成してプレコート処理が完了すると、ステップs4で前記プレコートした基材51を、常圧または加圧された窒素雰囲気中で加熱処理し、図6(3)に示されるように、窒化アルミニウム(AlN)から成る皮膜50を形成するとともに、皮膜50と基材51とを拡散によって一体化させ、ステップs4で図6(4)に示されるように、基材51に皮膜50が一体化した接合ツール4が完成する。
なお、上記工程においては、基材と皮膜の密着性を向上させるために、窒化アルミニウム皮膜の形成に際して、基材の表面を粗面化したり、窒化アルミニウム皮膜の形成に際してHIP処理を施すこともできる。
実施例
酸化イットリウム(Y)、Al等の成分を配合してある市販の窒化ケイ素(Si)粉末に、窒化ホウ素(BN)を2.0重量%、窒化クロム(CrN)を1.5重量%、窒化アルミニウム(AlN)を0.5重量%、窒化チタン(TiN)を0.3重量%混合し、窒化ケイ素粉末と同様の水を加えて、窒化ケイ素製のボールミルで混合、分散した後、脱水して乾燥させた。
次いで、この混合物に、熱可塑性高分子材料および油脂類を加えて、押し出し成型機にて加熱混練してペレットを得た。
得られたペレット状の混合材料を射出成型機にて成形し、形成品中に含まれる熱可塑性高分子材料等を加熱分解した後、窒素雰囲気下で加圧焼成した。
図7における分析部位は皮膜が形成されていない接合ツールによって2枚の鋼板を摩擦撹拌によってスポット接合したときの接合部の接合状態を示す光学顕微鏡写真であり、図中のマッピング結果の写真は、ツールのピンによって形成された上記分析部位のマッピング結果を示す。
図8は本発明の接合ツールによって2枚の鋼板を摩擦撹拌によってスポット接合したときの接合部の接合状態を示す光学顕微鏡写真であり、下方のマッピング結果は、図7と同様、分析部位について接合ツールの元素を電子線マイクロアナライザー(Electron Probe Micro Analyzer、略称EPMA)によって分析した結果であり、上記領域についてのEPMA分析によるケイ素のマッピング結果を示す。これらの結果から、スケールの違いはあるものの、皮膜のないツールではSiの混入が認められるが、本発明によるツールによれば、接合部にSiの混入が実質的に認められないことが分かる。
図9は熱処理後の接合ツール4の基材51と皮膜50との界面付近の断面の測定範囲の態様を示す図であり、図10は基材51と皮膜50との界面のアルミニウム(Al)に関するEPMAによる線分析結果を示すグラフであり、図11は接合ツール4の基材51と皮膜50との界面近傍におけるAlとSiのEPMAによる線分析の結果である。図10および図11において、縦軸は測定強度を示し、横軸は試料の測定範囲Wの距離Dを示す。
図10および図11から明らかなように、界面近傍のアルミニウム(Al)およびケイ素(Si)の組成が傾斜しており、アルミニウム(Al)と窒素(Si)とが相互に原子拡散し、界面を挟んで基材51と皮膜50とが一体化されていることが確認された。
図12は皮膜50のX線回折結果を示すグラフである。同図において、縦軸はX線回折強度(任意単位)であり、横軸は回折角(2θ)であり、窒化アルミニウム(AlN)の回折強度が強く現われた複数のピークによって、皮膜50の主成分が窒化アルミニウム(AlN)によって構成されていることが確認された。
図13は被接合物2に皮膜50を形成した接合ツール4を用いて摩擦撹拌接合したときの接合時間と引張せん断強度との関係を示すグラフである。
接合ツール4の回転速度を2500rpmおよび3500rpmの高速回転で接合時間を1.0秒〜2.5秒に変化させて摩擦撹拌スポット接合した被接合物2を試験片として作製した。回転速度2500rpmで接合して試験片は、約4500N〜約4700Nの引張せん断荷重を、また回転速度3500rpmで接合した試験片は、約4700N〜約5150Nの引張せん断荷重を付与したとき、破断した。
接合ツール4には窒化アルミニウム(AlN)の皮膜50が形成されるので、接合ツール4の回転速度を2500rpm〜3500rpmの高速にすることができ、このような接合ツール4の高速化によって、被接合物2の引張せん断強度も向上されることが確認された。
図14は摩擦撹拌接合の打点数とピン部48の直径の減少量と関係を示すグラフである。同図において、皮膜50を形成しない接合ツール4の直径の減少量を符合「◆」で示し、窒化チタン製皮膜50を形成した接合ツール4の直径の減少量を符号「黒四角」で示し、アルミナ製皮膜50を形成した接合ツール4の直径の減少量を符合「△」で示し、窒化アルミニウム製皮膜50を形成した接合ツール4の直径の減少量を符合「○」で示す。
同図から明らかなように、窒化アルミニウム(AlN)からなる皮膜50を形成した接合ツール4は、皮膜50を形成しないもの、窒化チタン(TiN)からなる皮膜50を形成したもの、およびアルミナからなる皮膜50を形成したものに比べて、ピン部48の摩耗は少なくとも打点数0〜3500まではピン部48の急激な摩耗は生じないことが確認された。
このように接合ツール4に窒化アルミニウム(AlN)からなる皮膜50を形成することによって、耐摩耗性が向上し、接合ツール4の回転の高速化を図り、接合ツール4の構成元素の接合部への侵入を防止するとともに高い接合強度を得ることができる。また、スポット接合を繰返す場合には、接合ツール4は、接合時に高温となり、次の接合部3へ移動するときに低温となる状態を繰り返し、接合ツール4の温度変化が大きい。上述したように本実施の形態の接合ツール4は、耐熱衝撃性を有するので、急激な温度変化に耐えることができ、複数の接合部3へのスポット接合を繰返しても、接合ツール4として必要な強度を維持することができる。
また、摩擦撹拌接合に当たって、ピン部48を接合部3に充分に没入させて高速で回転させることが可能であるので、接合部3の摩擦撹拌領域を大きくし接合強度を高めることができる。
図15は、本発明の実施の他の形態である接合ツール104を示す斜視図である。接合ツール104は、前述の実施形態の接合ツール4と同様のショルダ部47およびピン部48を有し、装着部46の形状が異なる。したがってショルダ部47およびピン部48については、重複を避けて説明は省略し、同一の参照符号を付す。
本実施の形態の接合ツール104において、装着部46は、板状に形成され、軸線L2に垂直な断面形状が略小判状に形成される。このような装着部46が嵌合する嵌合凹所43は、装着部46に緩やかに嵌合させることができるように、断面形状が装着部46の形状に相似の略小判状の空間に形成される。これによって装着部46が嵌合凹所32に嵌合された状態で、接合ツール104が撹拌ロッド17に対して軸線L2まわりに角変位することを阻止することができる。また固定具45が装着部46の軸線方向一方側端面に当接させて、装着部46の軸線方向両端面が固定具45と撹拌ロッド17とによって挟持されることによって、接合ツール104の軸線方向の変位を阻止し、図1に示す第1の実施形態の接合ツール4と同様の効果を得ることができる。装着部46は、断面形状がショルダ部47の断面形状より大きく、固定具45による撹拌ロッド17への接合ツール104の押付け力が充分に大きければ、その断面形状は、円形形状に形成されてもよい。押付け力が充分に大きいことによって、接合ツール104が被接合物2に接触したときに生じる回転反力に抗することでき、軸線L2まわりの滑りを防いで接合ツール104を撹拌ロッド17とともに一体に回転させることができる。
また固定具45による撹拌ロッド17への接合ツール104の押付け力が小さい場合であっても、装着部46の軸線L2に垂直な断面形状を、たとえば多角形および楕円形などの軸線L2が通る中心から外周部までの距離が周方向に変化するような形状に形成すればよい。また後述する図17〜図21に示すように、固定具45に凹凸を形成してもよい。このようにすることによって、接合ツール104が被接合物2に接触したときに生じる回転反力に抗することでき、撹拌ロッド17に対する接合ツール104の滑りを防いで、接合ツール104を撹拌ロッド17とともに一体に回転させることができる。
図16は、本発明の実施のさらに他の形態である接合ツール204を示す斜視図である。接合ツール204は、装着部46の両側に軸線L2と同軸に各複数のショルダ部47A,47B;48A,48Bが連なって一体的に形成される。詳述すると、接合ツール204は、装着部46の軸線方向一側面から第1ショルダ部47Aが突出し、軸線方向他側面から第2ショルダ部47Bが突出する。また第1ショルダ部47Aの端面から第1ピン部48Aが突出し、第2ショルダ部47Bの端面から第2ピン部48Bが突出する。各ショルダ部47A,47Bおよび各ピン部48A,48Bの形状については、前述の接合ツール4と同様であるので、説明は省略する。
第3実施形態の撹拌ロッド17の嵌合凹所32は、装着部46が緩やかに嵌合する形状に形成される。装着部46が嵌合凹所32に嵌合し、第1ショルダ部47Aおよび第1ピン部48Aが撹拌ロッド17から突出した状態で、第2ショルダ部47Bおよび第2ピン部48Bが嵌合凹所32に収容されるように形成される。すなわち嵌合凹所32は、装着部46が嵌合する嵌合領域と、2つのうち一方のショルダ部47およびピン部48を収容する収容領域とを含んで形成される。
収容領域は、嵌合領域よりも、断面形状が小さく形成されることによって、嵌合凹所32に接合ツール204が嵌合された状態で、嵌合した部分が装着部46の端面に当接する。この状態で、装着部46の両端面が、固定具45と撹拌ロッド17とによって挟持される。これによって接合ツール204は、撹拌ロッド17に対して固定され、前述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに第1ショルダ部47Aおよび第1ピン部48Aのいずれかが磨耗すると、接合ツール204を反転して撹拌ロッド17に再装着して用いることができる。再装着した状態では、装着部46が嵌合凹所32に嵌合し、第2ショルダ部47Bおよび第2ピン部48Bが撹拌ロッド17から突出し、第1ショルダ部47Aおよび第1ピン部48Aが嵌合凹所32に収容される。このように、本実施の形態では1つの接合ツール204によって、片側にのみピン部およびショルダ部を有する接合ツールに比べて、摩耗時のツール交換作業を簡素化し、メンテナンス性を向上することができる。
前述した実施の各形態の接合ツールは、難接合部材である鉄鋼材料のスポット接合に好適に用いることができるが、難接合部材以外、たとえばアルミニウム材料およびアルミニウム合金材料などの接合にも適用することができる。またスポット接合以外にも用いてもよい。
また嵌合部32と装着部24との形状は発明の例示にすぎず、撹拌ロッド17または固定具45に接合ツールが装着可能な構造が、撹拌ロッド17または固定具45のいずれかと、接合ツール22とに形成されていればよい。たとえば接合ツール4に嵌合凹所が形成され、撹拌ロッド17または固定具45に嵌合凹所に嵌合する嵌合部が形成されてもよい。また本実施の形態では、固定具45を用いて接合ツールを撹拌ロッド17に固定する構成について説明したが、固定具45を用いずに、撹拌ロッド17に接合ツールが直接固定されてもよい。たとえば接合ツールにねじ山が形成されてもよい。また接合装置51の構成は、適宜変更可能であり、多関節ロボットによって搬送されなくてもよい。また接合装置51に撹拌ロッド17が固定される構成であってもよい。
本発明の実施の一形態の摩擦撹拌接合装置1を示す正面図である。 接合ツール4のピン部48が被接合物2に没入した状態を示す一部の拡大断面図である。 接合ツール4の撹拌ロッド17への取り付け構造を示す斜視図であり、図3(1)は接合ツール4を撹拌ロッド17から分離した状態を示し、図3(2)は接合ツール4が撹拌ロッド17に取り付けられた状態を示す。 接合ツール4の一部の拡大断面図である。 皮膜50を有する接合ツール4を形成する方法を説明するためのフローチャートである。 表面に皮膜50が一体的に形成された接合ツール4を作製するまでの各工程を模式的に示す図であり、図6(1)は皮膜50を形成する基材51を示し、図6(2)は基材51に予備皮膜50aを形成した状態を示し、図6(3)は予備皮膜50aを基材51に加熱処理によって一体化した状態を示し、図6(4)は予備皮膜50aを基材51に一体化して接合ツール4が完成した状態を示す。 皮膜が形成されていない接合ツールによって2枚の鋼板を摩擦撹拌によってスポット接合したときの接合部の接合状態を示す光学顕微鏡写真およびマッピング結果を示す図である。 本発明による接合ツールによって2枚の鋼板を摩擦撹拌によってスポット接合したときの接合部の接合状態を示す光学顕微鏡写真およびマッピング結果を示す図である。 熱処理後の接合ツールの基材と皮膜との界面付近の断面像を示す拡大写真である。 基材51と皮膜50との界面のアルミニウム(Al)に関するEPMAによる線分析結果を示すグラフである。 接合ツール4の基材51と皮膜50との界面の窒素(N)に関するEPMAによる線分析結果を示すグラフである。 皮膜50のX線回折結果を示すグラフである。 被接合物2に皮膜50を形成した接合ツール4を用いて摩擦撹拌接合したときの接合時間と引張せん断強度との関係を示すグラフである。 摩擦撹拌接合の打点数とピン部48の直径と関係を示すグラフである。 本発明の実施の他の形態の接合ツール104を示す斜視図である。 本発明の実施のさらに他の形態の接合ツール204を示す斜視図である。
符号の説明
1 摩擦撹拌接合装置
2 被接合物
2a,2b 鋼板
3 接合部
4 接合ツール
5 装置本体
6 不活性ガス供給手段
7 多関節ロボット
8 ロボットアーム
11 取付体
12 基体
13 昇降駆動源
14 回転駆動源
15 昇降体
16 ツール保持体
17,621,821 撹拌ロッド
19 屈曲アーム
20 受け台
21 支持具
22 ロボットコントローラ
27 不活性ガス供給源
28 カバー体
29 ニップル
30 ガス誘導管
L1,L2 軸線

Claims (9)

  1. 被接合物の接合部に、接合ツールを回転させながら押圧し、摩擦熱によって軟化した部分へ前記接合ツールの少なくとも一部を没入させて、この軟化した部分を撹拌しながら被接合物の接合部を固相接合するための摩擦撹拌接合装置であって、
    前記接合ツールが、基材と、この基材の表面の少なくとも被接合物に接触する領域に形成された窒化アルミニウム皮膜とからなり、
    前記接合ツールの前記基材が、
    窒化ホウ素:0.3〜10重量%、
    窒化クロムおよび/または炭化クロム:0.5〜8重量%、
    窒化チタン:0.1〜2重量%、
    残部:窒化ケイ素および不可避的成分、
    を含んでなることを特徴とする、摩擦撹拌接合装置。
  2. 前記基材が、さらに窒化アルミニウムを0.2〜30重量%含む、請求項1に記載の摩擦撹拌接合装置。
  3. 前記接合ツールが没入する被接合部に向けて不活性ガスを供給するための不活性ガス供給手段を含む、請求項1記載の摩擦撹拌接合装置。
  4. 被接合物の接合部に、回転させながら押圧し、摩擦熱によって軟化した部分へ接合ツールの少なくとも一部を没入させて、この軟化した部分を撹拌しながら被接合物の接合部を固相接合するための摩擦撹拌接合用ツールであって、
    前記接合ツールが、基材と、この基材の表面の少なくとも被接合物に接触する領域に形成された窒化アルミニウム皮膜とからなり、
    前記接合ツールの前記基材が、
    窒化ホウ素:0.3〜10重量%、
    窒化クロムおよび/または炭化クロム:0.5〜8重量%、
    窒化チタン:0.1〜2重量%、
    残部:窒化ケイ素および不可避的成分、
    を含んでなることを特徴とする、摩擦撹拌接合用ツール。
  5. 前記基材が、さらに窒化アルミニウムを0.2〜30重量%含む、請求項4に記載の摩擦撹拌接合用ツール。
  6. 前記窒化アルミニウム皮膜が、化学的蒸着法、物理的蒸着法および溶射法のいずれか1つもしくはこれらの組み合わせによって形成される、請求項4または5に記載の摩擦撹拌接合用ツール。
  7. 前記窒化アルミニウム皮膜の形成に際して、基材の表面が粗面化されてなる、請求項4〜6のいずれか1項に記載の摩擦撹拌接合用ツール。
  8. 前記窒化アルミニウム皮膜の形成に際して、HIP処理が施される、請求項4〜7のいずれか1項に記載の摩擦撹拌接合用ツール。
  9. 請求項4〜8のいすれか一項に記載の摩擦撹拌接合用ツールを利用した、摩擦撹拌接合方法。
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