JP4219461B2 - ダイオキシン類による汚染物の改良剤およびその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、環境中で極めて安定で、生物に対する毒性の強いものが多く、人類にとって全く有用性に欠ける物質群であり、商業的な生産は行われていないダイオキシン類による汚染物、特に汚染土壌および埋め立てに供される汚染焼却灰などの改良剤およびその用途に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
廃棄物は、圧縮、破砕、焼却、脱水等の前処理を行って、再利用されるものを除き、廃棄物焼却炉により処理し最終的には埋め立てに回されているのが現状である。現在までに多くの都市部では、焼却炉の建設が付近住民の反対により見送られている。そのため、廃棄物焼却炉からの排出物といっしょに、これら廃棄物を前処理も再利用もすることなく、そのまま埋め立てによって処理してきた悪い期間が長く続いている。海面埋め立てでは、東京湾に浮かぶ「夢の島」はその代表的なものである。現在では、温室、運動場などの施設が整った美しい場所に変身しているが、廃棄物(排出物を含む)と覆土材〈残土〉をサンドイッチにして作られたこの人工島は、ガス(メタン、硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチルなど)の発生、悪臭およびネズミ、蝿、さらに寄生害虫などの発生に悩まされている。
【0003】
こうした問題のうち、発生ガスについては、廃棄物中にガス抜きトレンチを設置して処理している(なお、これにより新たに悪臭問題が生じている)。また、ネズミ、蝿などの対策としては、さらなる覆土等で表層部を完全に覆うことによってなんとか解決している。しかしながら、埋め立て地からしみだす汚水、重金属類、ポリ塩化ビフェニルなどの有害物質による埋め立て地とその周辺の汚染などについては全然処理プロセスが確立されていない。わずかに、ゴム製の防水シートを埋め立て地の底や周囲に敷設する解決策が試みられているが、その耐久性に問題があり、すぐにひび割れなどを起こし、雨水などと一緒に上記有害物質も外部にしみだしていることが報告されている。また、こうした一時しのぎの対応策は、半永久的にその安全性が保証されるものではないので、保証期限経過後にも、分解されずに残る有害物質に対しては、現状では、全くその解決策がなく、保証期限までに新たな解決策がでてくるのを待っているにすぎない。
【0004】
特に、猛毒であるダイオキシン類に対しては全然対策がないのが現状である。現行の場合は、焼却処理された焼却灰は、埋め立て処理されているが、現在まで埋め立て処理されている焼却灰にも高濃度のダイオキシンが含有されていることはいうまでもない。さらに、近年は、焼却施設の周辺(水田、畑地)からも該焼却施設からの煤塵などを含む飛灰による高濃度のダイオキシン類が見つかっており、埋め立て地および焼却施設の周辺は、ダイオキシン類で汚染されつづけており、放置するだけでは、日増しに高濃度化が進んでいく状況にある。なお、これら埋め立て地および焼却施設の周辺の土壌中のダイオキシン類の異性体パターンは、廃棄物焼却炉からの排出物中のパターンと類似しており、土壌中のダイオキシン類の大部分が燃焼生成物に起因すると考えられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、埋め立て地および焼却施設の周辺など、既にダイオキシン類で汚染されている土壌等の汚染物中のダイオキシン類の汚染度(濃度)、および埋め立て処理に供される高濃度のダイオキシン類を含有する焼却灰などの汚染物中のダイオキシン類の濃度を極めて低いレベルにまで低減し得る改良剤を提供するものである。
【0006】
本発明の目的は、ダイオキシン類で汚染されている土壌等の汚染物中のダイオキシン類の汚染度(濃度)を極めて簡便な手段を用いて著しく低いレベルにまで低減し得る汚染土壌の改良方法を提供するものである。
【0007】
本発明の目的は、埋め立て処理される焼却灰等の汚染物中のダイオキシン類の濃度を極めて簡便な手段を用いて著しく低いレベルにまで低減し得る土壌汚染の防止方法を提供するものである。
【0008】
本発明の目的は、埋め立て予定地や焼却施設の建設予定地周辺部など、その後にダイオキシン類による汚染が起こり得る場所に事前に、該ダイオキシン類の濃度を低減できる手段を施しておき、実際にダイオキシン類を含有する汚染物の排出がなされても十分にこれら汚染物中のダイオキシン類の濃度を短期間で低いレベルにまで低減し得る土壌汚染の防止方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく、ダイオキシン類で汚染されている土壌および埋め立て処理に供される高濃度のダイオキシン類を含有する焼却灰などの汚染物中から、極めて簡便な手段を用いてダイオキシン類の濃度を低減することのできる技術に関し、鋭意検討した結果、ドロマイトおよび焼成ドロマイトがダイオキシン類で汚染された土壌や焼却灰などの汚染物の浄化に有用であることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明の目的は、(1) ドロマイトおよび該ドロマイトを焼成してなる焼成ドロマイトよりなる群から選ばれてなる少なくとも1種を含むものであることを特徴とするダイオキシン類による汚染物の改良剤により達成されるものである。
【0011】
また、本発明の目的は、(2) 前記改良剤が、さらに酸化チタンを含有するものであることを特徴とする上記(1)に記載のダイオキシン類による汚染物の改良剤によっても達成されるものである。
【0012】
本発明の他の目的は、(3) 上記(1)または(2)に記載の改良剤を、ダイオキシン類による汚染土壌に添加する、またはダイオキシン類による汚染水と接触させることを特徴とするダイオキシン類による汚染物の改良方法により達成されるものである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、(4) 上記(1)または(2)に記載の改良剤を、埋め立て処理に供されるダイオキシン類を含有する汚染物に添加することを特徴とするダイオキシン類による土壌汚染の防止方法により達成されるものである。
【0014】
また、本発明のさらに他の目的は、(5) 上記(1)または(2)に記載の改良剤を、ダイオキシン類を含有する汚染物の埋め立て予定地に添加することを特徴とするダイオキシン類による土壌汚染の防止方法によっても達成されるものである。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、(6) 上記(1)または(2)に記載の改良剤を、焼却施設およびその建設予定地の周辺部に添加することを特徴とするダイオキシン類による環境汚染の防止方法によっても達成されるものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のダイオキシン類による汚染物の改良剤は、ドロマイトおよび該ドロマイトを焼成してなる焼成ドロマイトよりなる群から選ばれてなる少なくとも1種を含むものであることを特徴とするものである。
【0017】
ここで、ドロマイトとは、別名、白雲石または苦灰石と呼ばれる、カルシウムとマグネシウムの複合炭酸塩CaMg(CO3 )2 またはこれを主成分とする岩石をいう。また、このドロマイトを加熱すると700〜800℃でMgCO3 分が分解してCO2 を放出し、炭酸カルシウム(CaCO3 )と酸化マグネシウム(MgO)の焼成物またはこれを主成分とするもの(以下、単に焼成ドロマイトAともいう)となり、さらに900〜950℃でCaCO3 が分解してCO2 を放出し、酸化カルシウム(CaO)と酸化マグネシウム(MgO)の焼成物またはこれを主成分とするもの(以下、単に焼成ドロマイトBともいう)となる特性を有している。よって、本発明の改良剤では、これらのドロマイト、焼成ドロマイトAおよびBのいずれか一種を単独で使用しても良いほか、これらを併用することもできる。これらを併用した場合の配合比率に関しては、特に制限されるものではなく、任意の配合比率のものを用いることができる。好ましくは、土壌中の水分により経時的に崩壊し細粒化されて表面積の増加作用を持ち、これにより土壌内での経時的な分散能を持つ焼成ドロマイト(単に焼成ドロマイトとした場合には、上記焼成ドロマイトAおよびBの双方を含むものとする)の配合比率を高めに設定することが、ダイオキシン類との接触(これにより、これらの間で触媒反応ないし化学反応が生ずると思われる)頻度が経時的に高まり、ダイオキシン類濃度の低減化にプラスに寄与することから特に望ましい。さらに、焼成ドロマイトBは、ダイオキシン類濃度の低減化効果以外に、ドロマイトや焼成ドロマイトAに比してより優れた抗菌、脱臭性能を有していることから、抗菌、脱臭効果の発現により汚染物、特に廃棄物の埋め立て地等の異臭問題などの改善も図れる。従って、これらを適当に併用する場合、ドロマイの配合量としては、改良剤の総重量を基準として0〜99重量%、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは20〜30重量%である。同様に、焼成ドロマイトAの配合量としては、改良剤の総重量を基準として0〜99重量%、好ましくは20〜85重量%、より好ましくは30〜80重量%である。さらに、焼成ドロマイトBの配合量としては、改良剤の総重量を基準として0〜99重量%、好ましくは20〜85重量%、より好ましくは30〜80重量%であることが望ましい。ただし、上記に示すドロマイ、焼成ドロマイトAおよび焼成ドロマイトBの配合量(配合比)は、これらを適当に併用する場合であるため、少なくとも2種以上を配合している必要があり(すなわち、単独使用でなければ良く、3種全てを使用しなくても適当な2種の組み合わせでも良いため、それぞれの配合量の下限値を0重量%とした。)、かつこれらの配合量(配合比)の総計は、如何なる組み合わせであっても決して改良剤の総重量を基準として100重量%を超えてはならない。
【0018】
また、本発明の改良剤には、活性剤がさらに含まれていてもよい。活性剤としては、上記ドロマイト等の主要構成成分によるダイオキシン類の吸着・分解(触媒反応ないし化学反応等)作用を十分に活性化し得るものであれば、特に制限されるものではないが、酸化チタン(例えば、ルチル、アナターゼ、イタチタン石などの鉱物などが簡単で安価に利用できる)および酸化亜鉛の少なくとも1種を含むものが望ましい。これらは、活性化作用に加えて、さらに抗菌、防かび、防臭作用を持つため、土壌の悪臭除去効果が得られるためである。
【0019】
上記活性剤の含有量は、改良剤の総重量を基準として好ましくは5〜15重量%、より好ましくは10〜15重量%である。活性剤の含有量が5重量%未満の場合には、本来の活性剤の機能を十分に発現させることができない場合もあり好ましくない。一方、活性剤の含有量が15重量%を超える場合には、必須成分のドロマイト等の含有量が相対的に低下し、所期の効果を十分に発現させる事ができない場合もあり好ましくない。
【0020】
また、本発明の改良剤には、必要に応じて、さらに他の添加剤が含まれていてもよい。これらの添加剤の配合量も、各添加剤が有する機能が十分に発現し得る範囲内で適宜決定すればよい。これらの添加剤としては、例えば、重金属類やポリ塩化ビフェニルなどの他の有害物質に対する吸着能、分解能または固定化能等を有する従来公知の重金属吸着剤や化学物質や樹脂の分解剤や固定化剤等、あるいはメタンや硫化水素等の埋め立て地より発生する各種ガスや悪臭成分の分解除去能、吸着能を有する脱臭剤、カビや細菌に対する抗菌(殺菌)・防かび剤、蝿やネズミ等に対する忌避剤等が挙げられるが、本発明に利用し得る添加剤としては、これらに制限されるものではなく、汚染土壌や埋め立て地周辺の環境汚染対策に用いられる従来公知の各種添加剤が幅広く利用できるものである。
【0021】
また、本発明の改良剤は、上記した各構成成分を含有するものであればよく、各構成成分を均一に混合してなるものであればよいが、更に必要に応じて、その一部ないし全部を加圧成形などにより一体化した成形物または該成形物を含むものであってもよいし、さらには、その一部ないし全部を加熱成形などにより焼結または溶融して一体化した成形物または該成形物を含むものであってもよい。また、こらら加圧成形と加熱成形を組み合わせたものであってもよい。
【0022】
上記加圧または加熱成形物とする場合には、上記構成成分に加えて、結合剤がさらに含まれていても良い。該結合剤としては、特に制限されるものではなく、従来公知のものを利用することができ、具体的にはシリカおよび/またはアルミナを主成分とする粘土鉱物を含むものが望ましい。
【0023】
上記結合剤の含有量は、改良剤の総重量を基準として好ましくは20〜65重量%、より好ましくは25〜30重量%である。結合剤の含有量が20重量%未満の場合には、本来の結合機能が十分に発現する事ができない場合があり、成形物としての強度を十分確保させることができない場合もあるなど好ましくない。一方、結合剤の含有量が65重量%を超える場合には、既に十分な結合機能が得られており、更なる添加に見合う新たな効果が得られない反面、該結合剤の含有量が過剰になることにより、本発明の特有の効果を発現させることのできるドロマイト等の含有量が制限されるため好ましくない。
【0024】
さらに、上記加熱成形物とする場合には、製造段階で上記構成成分に加えて、揮散成分を含有させておき、これらを加熱成形することで、多孔質体の成形物としてもよい。多孔質化を図る事により、土壌中の重金属類やポリ塩化ビフェニル等の有害物質をより多く吸着ないし分解でき、これらが、埋め立て地から流出するのを防止することができる。該揮散成分としては、多孔質体の成形物を得ることができるものであれば特に制限されるものではなく、加熱成形時に蒸発ないし熱分解により揮散する成分として分離されるものであれば適宜利用する事ができる。具体的には、加熱成形時に蒸発ないし熱分解により揮散される、置換基を有していても良い芳香族化合物などの低分子量の炭化水素化合物等を使用することができるが、好ましくは、常温で固体の昇華性を有するものであり、さらに好ましくは、不快臭がなく人体に無害なものが、設計上および取り扱い上、さらには環境上有利である。こうした揮散成分としては、例えば、ナフタリン、アントラセン、アントラキノン等が挙げられる。なお、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用しても良い。
【0025】
上記揮散成分の含有量は、改良剤に用いる原料の総重量を基準として0.1〜20重量%、好ましくは0.3〜20重量%、より好ましくは0.5〜10重量%である。揮散成分の含有量が0.1重量%未満の場合には、十分な多孔質化が困難となる場合がある。一方、揮散成分の含有量が20重量%を超える場合には、多孔質化が進みすぎ、成形物に必要な強度を保持することが困難である。
【0026】
なお、本発明の改良剤の構成成分ごとの配合量を示したが、これら構成成分の和は、如何なる組み合わせであれ、100重量%にならなければならないことはいうまでもない(ただし、揮散成分は、製造段階でのみ考慮されるものであり、改良剤の構成成分に含まれない場合もあり得る)。
【0027】
次に、本発明の改良剤の粒度はより小さい方が好ましく、具体的には、100μm以下、好ましくは50μm以下の粒状物とするのが適している。すなわち、微粉化することで該改良剤の表面積を大きくすることができ、ダイオキシン類との接触面積を効果的に増加させることができるとの理由による。また、既にダイオキシン類で汚染されている汚染土壌に対しては、上記理由に加えて、ダイオキシン類が時間経過に伴い徐々に地中に浸透していき地下水脈を汚染したり、海水中に漏れだして海洋や海底土壌を汚染したりする虞れがあることから、即効性(速効性)が求められるためである。また、焼却灰等の汚染物に対しては、上記理由に加えて、焼却灰と鉱物中心の改良剤とではかなりの比重差があるため、改良剤をより微粉化することで焼却灰ともより均一に分散、混合させることが容易になる。
【0028】
したがって、本発明の改良剤が、各構成成分を適当に(好ましくは均一に)混合してなるものである場合には、各構成成分を上記に規定する改良剤の粒度と同じ粒度に揃えることで、改良剤全体の粒度を調整するのがよい。
【0029】
また、本発明の改良剤が、各構成成分を適当に(好ましくは均一に)混合し、加圧ないし加熱成形してなる成形物の場合には、該成形物の粒度が上記に規定する改良剤の粒度になるように、該成形物を加圧ないし加熱成形加工時ないしは加工後に破砕処理して所望の粒度になるように調整すればよい。さらに、埋め立て地の底や周囲に改良剤を敷き詰めて使用するような場合には、プレートやより大きな粒状物としてもよく、こうした場合には、上記成形物がそのまま適用できるため便利である。成形加工する上での各構成成分の粒度に関しては、特に制限されるものではないが、成形加工する上で、所定の大きさのものを用いる事が望ましい。具体的には、ドロマイト、焼成ドロマイトA、Bのいずれの場合にも、平均粒度が5〜35μm、好ましくは5〜20μmのものが適している。ドロマイト、焼成ドロマイトA、Bのいずれの場合にも、平均粒度が5μm未満の場合には、性能面及び技術的な問題は特にないが、比較的硬質の鉱物およびその焼成物であるため微粉化に要するコストがかかり、また取り扱い時に粉塵が発生するおそれがあるため好ましくない。一方、ドロマイト、焼成ドロマイトA、Bのいずれの場合にも、平均粒度が35μmを超える場合にも、性能面及び技術的な問題は特にないが、粒度調整コストがかさむほか、成形加工性が悪く、得られる改良剤に上記に規定する粒度を持たせることが困難である場合があり好ましくない。なお、上記に規定するような粒度のドロマイト、焼成ドロマイトA及びBを得る製法としては、特に制限されるものではなく、ドロマイトに関しては、例えば、鉱山より採鉱作業後、粉砕し、選別(ふるい分け)により所望の粒度のドロマイトを得ることができる。また、焼成ドロマイトAに関しては、例えば、鉱山より採鉱作業後、所定サイズ(50ミクロン以下)に粉砕したドロマイトを炉で700〜800℃に加熱して焼成した後、選別(ふるい分け)により所望の粒度の焼成ドロマイトAを得ることができる。さらに、焼成ドロマイトBに関しては、例えば、鉱山より採鉱作業後、所定サイズ(50ミクロン以下)に粉砕したドロマイトを炉で900〜950℃に加熱して焼成した後、選別(ふるい分け)により所望の粒度の焼成ドロマイトBを得ることができる。
【0030】
また、上記活性剤の粒度は、上記ドロマイト等との相互作用によりその機能をより活性化させ、ダイオキシン類の分解・吸着する働きを極めて活性化させることができるように、所定の大きさのものを用いる事が望ましい。具体的には、活性剤の平均粒度は5〜35μm、好ましくは5〜20μmのものが適している。活性剤の平均粒度が5μm未満の場合には、微粉化に要するコストがかかり、また取り扱い時に粉塵が発生しやすいなど好ましくない。一方、活性剤の平均粒度が35μmを超える場合には、相対的に表面積が低下し、十分な活性機能を発現させることが困難であるなど好ましくない。
【0031】
また、上記結合剤の粒度は、成形して十分な強度に仕上げる事ができるように他の成分同士を結合する機能を果たすことができるように、所定の大きさのものを用いる事が望ましい。具体的には、結合剤の平均粒度は5〜35μm、好ましくは5〜20μmのものが適している。結合剤の平均粒度が5μm未満の場合には、取り扱い時に粉塵が発生しやすいなど好ましくない。一方、結合剤の平均粒度が35μmを超える場合には、結合剤本来の機能を十分に発現する事ができ難くなるなど好ましくない。
【0032】
また、上記揮散成分の粒度は、改良剤の多孔質化に重要な影響を及ぼすることから、所定の大きさのものを用いる事が望ましい。具体的には、揮散成分の平均粒度は0.5〜100μm、好ましくは0.5〜5μmのものが適している。揮散成分の平均粒度が0.5μm未満の場合には、当該成分が加熱成型時に揮散することで十分に多孔質化することが困難となるなど好ましくない。一方、揮散成分の平均粒度が100μmを超える場合には、当該成分が加熱成型時に揮散することで形成される細孔により、十分な強度を発現させることが困難であるなど好ましくない。
【0033】
また、加熱成形する際の加熱条件としては、加熱成形加工により焼結ないし溶融体が得られればよく、さらに結合剤や揮散成分を用いる場合には、揮散成分が完全に取り除かれ、また結合剤が十分に融着可能な状態になる温度が必要である一方、ドロマイト中の炭酸基が分解されて焼成ドロマイトにか焼されることがない温度とするのが望ましい。具体的には、加熱温度は、好ましくは500〜750℃、より好ましくは500〜650℃の範囲であり、加熱時間は、好ましくは1〜3時間、より好ましくは1〜2時間である。加熱温度が500℃未満の場合または加熱時間が1時間未満の場合には、十分な強度(結合)が得られなかったり、多孔質化が図れないなど、結合剤や揮散成分の使用目的を充分に満足できない場合もあり好ましくない。一方、加熱温度が750℃を超える場合または加熱時間が3時間を超える場合には、十分な強度(結合)及び多孔質化は図れるが、活性剤やドロマイトの一部が酸化、分解されて、炭酸基が失われたり、活性剤粒子が溶融し、所望のダイオキシン類の濃度低減効果や活性効果が充分に発現できない場合もあり好ましくない。ただし、ドロマイトから焼成ドロマイトを作る工程と加熱成形する工程を一度に行うことも可能であり、こうした場合には、上記加熱温度に制限されることなく、所望の焼成ドロマイトを得るに必要な温度域まで加熱しながら成形加工を行えばよい。
【0034】
また、加圧成形する際の加圧条件も、上記加熱条件と同様に目的とする成形体を得る事ができればよく、具体的には、適当なプレス機を用いて、圧力が好ましくは2〜5Pa、より好ましくは2〜3Paで、好ましくは5〜10秒間プレスすればよいが、さらに加熱しながら加圧してもよい。こうして加圧成形された成形体を、そのままプレートや造粒体として利用する事もできるし、さらに必要に応じて適宜破砕機などにより所望の大きさ微粉砕してもよい。
【0035】
また、一般に環境汚染物質として注目されているダイオキシンとは、ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDDs)のことで、置換している塩素分子の数と場所によって75種類の同族体(異性体を含む)がある。また通常このPCDDs と一緒に生成し、同じ様な化学構造と性質を持つポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)も135種類の同族体を持つ化合物群である。最近はダイオキシン関連物質として、いろいろな塩素化合物が論議の対象となっているが、その評価は必ずしも確定したものではなく、環境中で検出されるダイオキシン関連物質も、一般に複雑な同族体の混合物であることから、本明細書では、環境汚染物質としてPCDDsとPCDFsの両者(同族体を含む)をあわせてダイオキシン類とした。
【0036】
また、これらダイオキシン類による汚染物としては、特に制限されるものではなく、通常の都市ゴミなどの一般廃棄物や産業廃棄物などの焼却施設の周辺部およびこれらの焼却灰の埋め立て地およびその周辺部など、ダイオキシン類が検出される汚染土壌および汚染水すべてがその対象となるほか、埋め立て処理に供される該焼却灰や煤塵等の飛灰自身もここでいう汚染物に含まれるものである。すなわち、既にダイオキシン類が検出されている汚染土壌や汚染水に対しても本発明の改良剤は極めて効果的に作用するが、ダイオキシン類に汚染されていない埋め立て予定地に焼却灰やその他の廃棄物を覆土材と共に埋め立てる場合には、この埋め立て土壌に本発明の改良剤を適用するよりも、埋め立て前に改良剤を施工させておいたり、ダイオキシン類により汚染されている焼却灰に直接作用させる方がより効率的であるためである。
【0037】
次に、本発明のダイオキシン類による汚染物の改良方法は、上述した本発明の改良剤を、ダイオキシン類による汚染土壌ないし汚染水に添加することを特徴とするものである。本発明の汚染物の改良方法では、自然環境下で(よって、土壌を加熱等する必要はない)本発明の改良剤を汚染土壌に添加するだけでよい(その後は、特に手を加えることなく放置しておけばよい)か、汚染水と接触させるだけでよく、これにより、経時的にダイオキシン類の汚染度を低減することができるものである。すなわち、本発明の改良剤は、自然環境下で、土壌及び水中のダイオキシン類を低減し得る能力を有するものであり、自然環境下では、降雨により改良剤とダイオキシン類との双方が土壌内部に拡散されていき、自然の力で、お互いが接触頻度を高めることができるし、湖や河川等でも、自然にあるいは人工的に水が流れる部分に改良剤を置くだけで有効に接触させることができるため、後述する実施例の結果にもあるように、経時的に土壌および水中のダイオキシン類の汚染度が減少するものであるといえる。
【0038】
ここで、汚染土壌に改良剤を添加する方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、▲1▼汚染土壌をショベルカーや掘削機などで掘り出し、この土壌を適当な撹拌装置等で撹拌する際に改良剤を添加、混合し、もとに戻すなどの方法により汚染土壌に添加してもよいし、▲2▼汚染されていない土壌が表れるまで汚染土壌を掘り下げ、この汚染されていない土壌の上に改良剤ないし改良剤を土壌微生物により生分解される樹脂材料等によりシート状に加工したシート状物を敷き詰め、この上に掘り下げた土壌を戻すか、掘り下げた土壌にさらに改良剤を混ぜて戻すなどの方法により土壌に改良剤を添加してもよし、▲3▼既に表土に比較的厚い覆土材の層が形成され整備が完了してしまっている埋め立て地では、掘り起こす事で生ずる悪臭の問題や有毒ガスや可燃性ガスによる危険性の問題があり、掘り起こすことが困難な場合には、水溶液ないし毒性のない揮発性溶液に改良剤を分散させて(必要があれば、適当な分散剤やコロイド化剤等を添加してもよい)溶液化し、これを覆土材で覆われた地中の汚染土壌層(他の廃棄物等を含む)内に圧入するなどの方法により汚染土壌に改良剤を添加してもよし、▲4▼焼却施設の周辺部で、焼却炉の煙突からの飛灰により比較的浅い表土部分のみが汚染されているような場所では、改良剤ないし溶液化した改良剤を汚染土壌表面なしは浅く掘り起こした土地に、定期的に散布(噴霧)等する方法により汚染土壌に改良剤を添加してもよし、▲5▼湖底や河川の底の土壌(ヘドロなどもここでいう土壌に含める)が汚染されている場合には、これらの湖や河川に改良剤を添加、沈降させて湖底や河川の底の土壌に改良剤を堆積させたり、湖底や河川の底の土壌に直接ホース等を差し込み、溶液化した改良剤を注入するなどの方法により汚染土壌に改良剤を添加してもよし、▲6▼森林地帯のように人や機材を持ち込みにくい場所では、ヘリコプター等により上空から改良剤ないし溶液化した改良剤を散布するなどの方法により汚染土壌に改良剤を添加してもよい(この場合、改良剤は後述するようにアルカリ性であるため、酸性雨対策にもなり得る)など、従来既知の添加方法が幅広く利用することができるものであり、本発明が上記に例示したものに限定されるものでないことは言うまでもない。
【0039】
同様に、汚染水に改良剤を添加する方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、自然にあるいは人工的に湖水や河川などの汚染水が流れる部分に改良剤もしくは改良剤を入れた充填カラム等の装置を置くなどの方法により汚染水に改良剤を接触させてもよいなど、従来既知の接触方法が幅広く利用することができるものであり、本発明が上記に例示したものに限定されるものでないことは言うまでもない。なお、本発明の改良剤では、ダイオキシンによる汚染水からのダイオキシン除去能以外にも、微生物によって汚染された用水(飲料水)に対して抗菌作用を有するため、井戸水や上水などに用いることで、水を浄化することができる。
【0040】
また、汚染土壌に対する改良剤の使用量としては、対象となる汚染土壌中のダイオキシン類の種類及びその濃度、改良剤中のダイオキシン類に対する有効成分であるドロマイト、焼成ドロマイトAおよびBの含有量や粒度、土壌自身の性質(pH,水はけ度、構成成分など)により異なるため、一義的に規定することは適切ではなく、それぞれの汚染土壌に対してあらかじめ小規模の予備実験を行って最適な使用量を決定する事が望ましいが、最もダイオキシン類による土壌汚染が深刻な問題となるのは、これがさらに地下水脈や海洋の汚染へと発展するケースであり、こうした問題が生ずるのは、海面埋め立て地や山間地などに建設されている焼却施設の周辺の土壌である。こうした場所では、汚染土壌中に含有されるダイオキシン類全体の濃度を比較的短時間(約3〜4.5カ月)で初期濃度に対して90%以上減少させることができるレベルまで下げるのに必要な改良剤の量は、汚染土壌100重量部に対して30重量部以上、好ましくは30〜100重量部、より好ましくは45〜75重量部、特に好ましくは50〜65重量部である。改良剤が30重量部未満の場合でも(例えば、10重量部程度でも)、速効性が徐々に低下する点を除けばダイオキシン類の除去効果は十分であるが、改良剤のダイオキシン類の汚染度の減少効果が速効性に欠け、汚染度が十分に低減されるまでに長期間を要するため、この間にダイオキシン類の一部が地下水脈や海洋へと拡散されることがある地域においては、あまり好ましくない。一方、改良剤が100重量部を超える場合には、既に短期間で十分なダイオキシン類の汚染度の低減効果が得られており(後述する実施例において、75重量部と100重量部とでその作用効果に大差がないことからも明らかである)、更なる添加に見合う効果が得られず不経済であるほか、国土の狭いわが国では、現状の埋め立て地は決して余裕があるとは言えず、かといって新たに埋め立て地を確保することも難しいことを勘案すれば、改良剤といえども必要最小限に抑えることが望ましいからである。
【0041】
また、汚染水に対する改良剤の使用量としては、対象となる汚染水中のダイオキシン類の種類及びその濃度、改良剤中のダイオキシン類に対する有効成分であるドロマイト、焼成ドロマイトAおよびBの含有量や粒度、汚染水の性質等により異なるため、一義的に規定することは適切ではなく、それぞれの汚染水に対してあらかじめ小規模の予備実験を行って最適な使用量を決定する事が望ましいが、最もダイオキシン類による汚染が深刻な問題となるのは、湖のようにダイオキシン類が蓄積されやすく、生態系に影響を及ぼし易い場合である。こうした場所では、汚染水中に含有されるダイオキシン類全体の濃度を初期濃度に対して90%以上減少させることができるレベルまで下げるのに必要な改良剤の量は、汚染水100重量部に対して10〜25重量部、好ましくは10〜20重量部、より好ましくは10〜15重量部である。改良剤が10重量部未満の場合でも、速効性が徐々に低下する点を除けばダイオキシン類の除去効果は十分であるため湖水では特に問題ないが、汚染水中に含有されるダイオキシン類の汚染度が十分に低減されるまでに長期間を要するため、河川や海洋など一カ所に留まっていない場合など好ましくない。一方、改良剤が25重量部を超える場合には、更なる添加に見合う効果が得られず不経済であるなど好ましくない。
【0042】
次に、本発明のダイオキシン類による土壌(および水)汚染の防止方法としては、(1)上述した本発明の改良剤を、埋め立て処理に供されるダイオキシン類を含有する焼却灰等の汚染物に添加する、(2)焼却炉の設置予定地あるいは焼却施設の建設予定地の周辺部(土地や湖水等)に添加する、(3)ダイオキシン類を含有する焼却灰等の汚染物を埋め立て予定地(特に予定地の底部や周囲部に防水シートを設け、その上部)に施工するなどの方法が挙げられる。
【0043】
本発明の土壌(および水)汚染の防止方法では、ダイオキシン類を含有する焼却灰や飛灰に汚染されるであろう土壌や水に対して、予防的に対処するものであり、そのために汚染源となる焼却灰に直接的に改良剤を添加し、あるいは焼却灰が埋め立てられる予定地や焼却炉を置くことで飛灰が及ぶであろうその周辺部に対して事前に改良剤を施工、準備しておき、ダイオキシン類による汚染を有効かつ効果的に防止(予防)するものである。上記(1)の場合、改良剤の混合対象物である焼却灰などの汚染物は、汚染土壌に比して、極めて少量で比重も小さく、混合操作も容易であるため簡便な作業により極めて均一かつ高濃度に添加するこが可能である。そのため、覆土材を用いて埋め立てた後に改良剤を添加する場合に比して、有効かつ効果的に作用させることができ、かつその作業コストも極めて少なくてよい。これにより、埋め立て後の土壌への汚染を極めて有効に防止することができ、ダイオキシン類が蓄積されることもなく、高濃度化することもない。上記(2)及び(3)の場合にも、事前の敷き詰め作業や散布作業により改良剤を投入しておくだけで、上記(1)と同様の汚染防止効果が得られる。
【0044】
ここで、上記(1)〜(3)の防止方法において、その対象物に改良剤を添加する方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、上記(1)の場合、焼却灰に直接添加して、撹拌装置などにより均一に混合するなどの方法により改良剤を添加すればよいなど、従来既知の添加方法が幅広く利用することができるものであり、本発明が上記に例示したものに限定されるものでないことは言うまでもない。同様に、上記(2)の場合、最近では他の重金属類や有害物質を閉じこめる目的で、埋め立て予定地には防水シートが敷設されることが多く、こうしたシート上部に改良剤を敷き詰めるなどの方法により改良剤を添加してもよいなど、従来既知の添加方法が幅広く利用することができるものであり、本発明が上記に例示したものに限定されるものでないことは言うまでもない。さらに、上記(3)の場合、ヘリコプター等により上空から改良剤ないし溶液化した改良剤を焼却施設からの飛灰がおよぶであろう極めて広範な範囲に対して散布するなどの方法により改良剤を添加してもよいなど、従来既知の添加方法が幅広く利用することができるものであり、本発明が上記に例示したものに限定されるものでないことは言うまでもない。
【0045】
また、上記(1)〜(3)の防止方法において、汚染焼却灰等の汚染物あるいは埋め立て地や焼却施設の周辺地等の対象物に対する改良剤の使用量としては、汚染焼却灰や飛灰等の汚染物中のダイオキシン類の種類及びその濃度(使用する焼却炉や燃焼した廃棄物の種類等によって変動する)、改良剤中のダイオキシン類に対する有効成分であるドロマイト、焼成ドロマイトAおよびBの含有量や粒度、汚染焼却灰等の性質(pH,水はけ度、構成成分等)などにより異なるため、一義的に規定することは適切ではなく、適当にサンプリングした汚染焼却灰や飛灰等の汚染物に対してあらかじめ小規模の予備実験を行って最適な使用量を決定する事が望ましい。汚染物中に含有されるダイオキシン類全体の濃度を初期濃度に対して90%以上減少させることができるレベルまで下げるのに必要な改良剤の量は、汚染物100重量部に対して30〜50重量部、好ましくは35〜45重量部である。改良剤が30重量部未満の場合でも、速効性が徐々に低下する点を除けばダイオキシン類の除去効果は十分であるが、汚染物中のダイオキシン類の濃度が十分に低減されるまでに長期間を要するため好ましくない。一方、改良剤が50重量部を超える場合には、既に汚染物中のダイオキシン類の濃度が規定値以下に低減されており、更なる添加に見合う効果が得られず不経済である。
【0046】
【実施例】
以下、本発明の内容につき、実施例により具体的に説明する。
【0047】
実施例1
汚染土壌のダイオキシン類を分解等により低減する効果を有する本発明の改良剤によるその作用を以下に示す実験により確認した。
【0048】
本実施例では、汚染土壌のダイオキシン類を分解等により低減する効果を有する有効成分がドロマイトおよびその焼成物であることから、改良剤の主要構成成分として、採掘されたドロマイトおよび該ドロマイトを焼成温度1000〜1100℃で焼成したもの(焼成ドロマイトB)を所定の比率で混合したものを用いた。本実施例の改良剤に用いた主要構成成分を下記表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
ただし、上記表1において、改良剤(イ)〜(ハ)の主要構成成分組成に幅があるのは、実験ロットごとに使用した改良剤のバラツキがあるためである(以後、改良剤(イ)〜(ロ)ごとの実験結果は、それぞれの実験ロットの平均値を用いたものである)。なお、各実験ロット毎に、採掘したドロマイトと焼成ドロマイトBとの和を100重量部として、各主要構成成分組成の値を算定した。
【0051】
また、本実施例では、改良剤(イ)〜(ハ)の上記主要構成成分に、さらに活性剤としてルチル(酸化チタンの1種)を、主要構成成分100重量部に対して10重量部づつ添加し、得られた混合物を本実施例の改良剤とした。
【0052】
得られた改良剤(イ)〜(ハ)について、その諸特性を測定した。得られた結果を下記表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
上記表2中の表面積(m2 /g)は、BET法により測定した。
【0055】
上記表2中の放射率(%)は、赤外法(分光器;日本分光工業株式会社製)により仮想黒体と試料(20×30×2mmの板状に加工したもの)の放射率を比較することにより求めた。より詳しくは、試料の表面温度を所定の温度(100℃)にし、仮想黒体との比較放射率を計測し求めた。
【0056】
上記表2中の脱臭率は(%)は、テドラーバッグ内試料1g及び臭いガス600mlを投入し3時間経過後のガス濃度の変化を測定し、下記式により脱臭率を求めた。なお、ガス種には、アンモニア(アルカリ)、硫化水素(酸性)を使用した。尚、ガス濃度は、アンモニアは、吸光光度法ないし電位差計を用い、硫化水素は、ガスクロマトグラフ分析計ないし炎光光度検出器を用いて行った。表2中の値は、アンモニアと硫化水素のそれぞれの脱臭率の平均値である。
【0057】
脱臭率(%)=(ブランクガス濃度−試料ガス濃度)/ブランクガス濃度×100
上記表2中の抗菌率(%)は、大腸菌と黄色ブドウ球菌に対する抗菌率の平均値とした。このうち、大腸菌に関しては、寒天培地法を用いて行った。詳しくは、寒天培地上において37℃、16時間培養した大腸菌を1エーゼ50mlの減菌生理的食塩水に加えた。37℃で8時間振とう培養後3本の試験管に菌液を10mlづつ、分注した。1つの試験管に1つの改良剤試料(0.5g)をいれ、さらにもう1つの試験管は、対照として37℃で8時間振とう培養を続行し3時間経過後に試験管内の大腸菌の菌数を測定した。また、ブドウ上球菌に関しては、加圧密着法により測定した。試料フィルム(各改良剤添加品(3つ)及び無添加品(ブランク)の4つ)上に、当初、黄色ブドウ球菌数150000/mlとして、24時間経過後に試料フィルム上の黄色ブドウ球菌の菌数を測定した。
【0058】
上記表2に示すような諸特性を有する改良剤(イ)〜(ハ)を、下記表3に示すように多くのダイオキシン類で高濃度に汚染されている土壌(本実施例では、現在、ダイオキシン類による汚染が問題となっている大阪府豊能郡能勢町の水田土壌にて実施した。各実験区画は、縦5m、横10m、深さ約20cmを1区画とした。)に対して下記表4に示すような所定の比率(汚染土壌100重量部に対して改良剤(イ)〜(ハ)を上記表4に示す混合量)で、汚染土壌と簡易な混合作業(具体的には、スコップで土壌と改良剤(イ)〜(ハ)を各区画ごとに混ぜあわせた)で混合土壌を作った。混合作業後、所定期間(1.5カ月、3.0カ月、4.5カ月)経過後のダイオキシン類の濃度を確認した。得られた結果を下記表5〜10に示す。なお、ダイオキシン類の濃度(毒性等量(ng/g))測定は、財団法人鳥取県保険事業団および財団法人広島県環境保険協会にそれぞれのサンプルの土壌100gを採取したものを持ち込み、各財団にて分析した結果である(以下同様)。また、表5〜10の減少率は、サンプルの土壌の分析値の平均値であって、減少率(%)=(水田土壌の毒性等量−経時的な混合土壌の毒性等量)/水田土壌の毒性等量×100として算出した。また、表5〜10の3カ月後と4.5カ月後の混合土壌の毒性等量は上記減少率の計算式より逆算可能であるため省略した。
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
【表6】
【0063】
【表7】
【0064】
【表8】
【0065】
【表9】
【0066】
【表10】
【0067】
上記実施結果から、汚染土壌100重量部に対する改良剤の配合量が75重量部以上である場合、本発明の作用効果が極めて顕著にあらわれる(すなわち、比較的短時間(約3月)でダイオキシン類の初期濃度に対して90%以上減少させることができる)ことが確認された。ただし、本実施例での設定目標は従来全く対策のない土壌汚染に対して極めて高いレベルを目標としているため、汚染土壌100重量部に対する改良剤の配合量が50重量部の実施例では、これらを満足しないというだけであり、決して本発明の技術範囲がここに規定する極めて高い水準に限定されるものでないことはいうまでもなく、汚染土壌100重量部に対する改良剤の配合量が50重量部(若しくはこれ以下)を加えることによっても汚染土壌中のダイオキシン類の濃度(汚染度)の低減効果(すなわち、本発明の特有の効果)は発現されており、本発明の技術範囲に含まれるものである。同様に、改良に要する期間は3カ月以上であれば汚染土壌を完全に生きた土壌に回復させることができるが、この場合も、必ず3カ月以上でなければならないものではなく、より短時間であっても汚染土壌中のダイオキシン類の濃度の低減効果(すなわち、本発明の特有の効果)は発現されており、本発明の技術範囲に含まれるものである。
【0068】
ルチルを汚染土壌に添加しただけではダイオキシン類の濃度の低減効果は認められない。この点と上記実験結果から、本発明の特有の効果の発現は、改良剤のドロマイト及び焼成ドロマイトに起因することがわかった。さらにドロマイト及び焼成ドロマイト中の炭酸基が有効かつ効果的に働いていると考える。
【0069】
【発明の効果】
本発明のダイオキシン類による汚染物の改良剤では、ドロマイトおよび該ドロマイトを焼成してなる焼成ドロマイトよりなる群から選ばれてなる少なくとも1種を含むものであればよいため、優れたダイオキシン類の濃度の低減効果を奏することはもとより、国内外の鉱山より極めて安価に安定して大量に入手できるものであって、特別な加工を加えることなく簡単に製品化できるため、極めて経済性に優れている。また、汚染土壌、特に埋め立て地などで問題となっている悪臭や重金属類、ポリ塩化ビフェニル等の有害物質に対して優れた脱臭効果や吸着・分解効果も発揮することができ、周辺環境に与える悪臭などの悪影響を抑えることができる。さらにルチル(酸化チタンの1種)など他の添加剤を含有することで、こうした効果がより顕著に得られる。
【0070】
本発明のダイオキシン類による汚染物の改良方法では、本発明の改良剤を、ダイオキシン類による汚染土壌に添加する、またはダイオキシン類による汚染水と接触させるだけでよいため、極めて簡便な手法により必要な処理が全て完了するので、施工処理コストが極めて少なく、その後の維持管理コストもかからず、極めて経済性に優れている。従って、現在、わが国にある2千カ所以上の都市廃棄物焼却炉(大型焼却施設及び中小型焼却炉)をはじめ、他の産業廃棄物焼却炉などから年間数千万万トンにもおよぶ廃棄物の焼却灰や飛灰(煤煙を含む)により、2千カ所以上の焼却炉の周辺部や全国各地にある埋め立て地は、長年にわたりダイオキシン類で汚染されているので、こうした汚染地域に本発明の改良方法を適用することで、いかなる環境下においても十分にその作用を発現し、極めて高い効果が得られるため、日本各地で発生しているダイオキシン類による環境汚染問題(ひいては環境汚染により引き起こされる自体暴露や人体汚染の進行)を一気に解決することのできる画期的なものである。
【0071】
さらに、本発明のダイオキシン類による環境汚染の防止方法では、本発明の改良剤を、▲1▼埋め立て処理に供されるダイオキシン類を含有する汚染物に添加するか、▲2▼ダイオキシン類を含有する汚染物の埋め立て予定地に添加するか、▲3▼焼却施設およびその建設予定地の周辺部に添加すればよいだけなので、今後、何時如何なる埋め立て処理や焼却処理に際しても、ダイオキシン類の高濃度化を防止でき、常にダイオキシン類の汚染に対して十分な安全性を保証することができる。
Claims (6)
- ドロマイトおよび該ドロマイトを焼成してなる焼成ドロマイトよりなる群から選ばれてなる少なくとも1種を含むものであることを特徴とするダイオキシン類を含有する汚染物中のダイオキシン類の濃度を低減し得る改良剤。
- 前記改良剤が、さらに酸化チタンを含有するものであって、
該酸化チタンの含有量が、改良剤の総重量を基準として5〜15重量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のダイオキシン類を含有する汚染物中のダイオキシン類の濃度を低減し得る改良剤。 - 請求項1または2に記載の改良剤を、ダイオキシン類による汚染土壌に添加する、またはダイオキシン類による汚染水と接触させることを特徴とするダイオキシン類を含有する汚染物中のダイオキシン類の濃度を低減し得る改良方法。
- 請求項1または2に記載の改良剤を、埋め立て処理に供されるダイオキシン類を含有する汚染物に添加することを特徴とするダイオキシン類による土壌汚染の防止方法。
- 請求項1または2に記載の改良剤を、ダイオキシン類を含有する汚染物の埋め立て予定地に添加することを特徴とするダイオキシン類による土壌汚染の防止方法。
- 請求項1または2に記載の改良剤を、焼却施設およびその建設予定地の周辺部に添加することを特徴とするダイオキシン類による環境汚染の防止方法。
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