JP4218182B2 - 電子記憶機能付光ディスク及び盗難防止機能付光ディスク - Google Patents

電子記憶機能付光ディスク及び盗難防止機能付光ディスク Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体レーザを用いた高密度情報記録媒体である光ディスクに関する。更に詳しくは電子記憶機能又は盗難防止機能が付された光ディスクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光ディスクは、予め記録された音声や映像を専ら再生させることを目的とする再生専用型光ディスク、及び企業の研究開発におけるデータやシステム開発におけるプログラムを記憶させる追記型光ディスク及び書換え可能型光ディスクに類別される。従来このような光ディスクの盗難を防止するものとして、盗難防止用タグが知られている(特開平8−185584)。このタグは共振回路部を有し、盗難を防止する光ディスクのケースにこのタグを貼付する一方で、その光ディスク、例えば音声や映像が記録された光ディスクであるいわゆるコンパクトディスクを販売又は貸出す店の出入り口には送信アンテナと受信アンテナとが互いに所定の間隔をあけて立設され、これらのアンテナは制御部に電気的に接続される。制御部は共振回路部で共振する周波数の電波を送信アンテナから送信させるとともに、受信アンテナからの受信信号の信号レベルを常にチェックするように構成される。更に制御部の制御出力には警報を発するスピーカが接続される。
【0003】
このように構成された盗難防止用タグでは、そのコンパクトディスクがケースとともに未清算のまま送信アンテナ及び受信アンテナ間を通過しようとすると、送信アンテナから送信された電波がコンパクトディスクのケースに取付けられたタグの共振回路部で共振するため、受信アンテナには受信レベルの変調された受信信号が受信される。この結果、制御部はスピーカから警報を発し、未清算のコンパクトディスクの持ち出しを監視できるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の盗難防止用タグでは、ケースにタグを貼付するため、ケースから出したコンパクトディスク自体を持出す場合には警報が発せられない不具合があった。この点を解消するためにコンパクトディスクをケースから取出せないように鍵をそのケースに設けることも考えられるが、ケース自体は比較的薄い樹脂製品であるため、その鍵の構造が比較的複雑になるとともに、広告宣伝用に既にケースから取出して陳列してあるコンパクトディスクの無断持出しを防止できず、またコンパクトディスク自体を別のケースに入れて持ち出す場合には無断持ち出しを防止できない問題点がある。
【0005】
一方、企業において光ディスクに記録された研究開発におけるデータやプログラムはを貴重なものであるため、それが無断持出しされて複製されることの被害は甚大である。このため、そのようなデータ又はプログラムが記録された光ディスクの保管場所からの出し入れは厳重に管理されることが望まれ、比較的多くの光ディスクが同一の場所に保管されている場合には、個々の光ディスクに関する固有の情報をその光ディスクを再生装置に装着して回転させることなく迅速に得られれば便利である。
【0006】
本発明の目的は、光ディスクにおける固有の情報を迅速に得ることのできる電子記憶機能付光ディスクを提供することにある。
本発明の別の目的は、無断持出しを有効に防止し得る盗難防止機能付光ディスクを提供することにある。
本発明の更に別の目的は、光ディスクのデータとRFIDのデータを用いた多様な潜在的用途を開発し得る電子記憶機能付光ディスクを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、中心孔11aを有するディスク基板11のその中心孔11a周囲の表面に、中心孔11aの孔縁と所定の間隔をあけて情報をピットとして記憶する反射膜12が形成された光ディスク10の改良である。その特徴ある構成は、中心孔11aの孔縁と反射膜12の内縁との間のディスク基板11の内部又は表面にアンテナ16から送信された特定周波数の電波に共振する共振回路部14が設けられ、かつ反射膜12を覆うように導電膜が形成されたところにある。
請求項に係る発明は、図4に示すように、中心孔21aを有するディスク基板21の中心孔21a周囲の表面に、中心孔21aの孔縁と所定の間隔をあけて情報をピットとして記憶する反射膜22が形成された光ディスク20の改良である。その特徴ある構成は、中心孔21aの孔縁と反射膜22の内縁との間のディスク基板21の内部又は表面にRFID24が設けられ、かつ反射膜22を覆うように導電膜28が形成されたところにある。
【0008】
請求項1に記載された盗難防止機能付光ディスク及び請求項に記載された電子記憶機能付光ディスクでは、共振回路部14の共振により又はRFID(Radio Frequency Identification)24との情報交換により警報等を発する他の機器との関連においてその無断持出しを防止できる。また反射膜12,22は共振回路14又はRFID24に対して電気抵抗の小さい回路としての影響を及す。導電膜28には相互誘導により電流が流れるが、高周波の場合には導電膜28の抵抗が低くても導電膜28の自己インダクタンスの影響で流れる電流は増加しないので、抵抗が低ければ損失は少なくQ値は高くなる。このため、この請求項1に記載された盗難防止機能付光ディスク及び請求項5に記載された電子情報機能付光ディスクでは、導電膜28を設けることによりそのQ値を高くすることができる。
なお、ディスク基板11,21の表面に直接又は記録膜20aを介して反射膜12,22が形成された光ディスク10,20では、反射膜12,22の上に直接導電膜を形成しても良く、形成した導電膜28の上に保護膜13,23を更に形成しても良い。また、反射膜12,22の上に保護膜13,23を介して導電膜28を形成しても良い。
一方、図示しないが、2枚のディスク基板を積層して複数の反射膜を層状に形成する光ディスクでは、2枚のディスク基板のそれぞれの反射膜の上に保護膜をそれぞれ形成し、この保護膜を対向させて導電膜をこれらの保護膜で挟むように形成し、接着剤で2枚のディスク基板を積層することが好ましい。即ち、2枚のディスク基板11,21を積層した光ディスクの具体的な厚さ方向の配置は、基板・反射膜・保護膜・接着剤・導電膜・接着剤・保護膜・反射膜・基板からなるもの、又は、基板・半透明膜・樹脂膜・反射膜・保護膜・接着剤・導電膜・接着剤・保護膜・反射膜・樹脂膜・半透明膜・基板からなるものが好ましい。
なお、本発明の対象とする光ディスク10,20は、図1に示すようにディスク基板11の表面に直接反射膜12が形成されたもの、或いは図4に示すようにディスク基板21表面に記録膜20a及び反射膜22が形成されたものの双方を含み、更に、このように反射膜12又は記録膜20a及び反射膜22が形成された2枚のディスク基板11,21を接着剤を介して積層し、複数の反射膜を層状に形成した光ディスクをも含むものとする。ここで、2枚のディスク基板11,21を積層した光ディスクの厚さ方向の配置は、基板・反射膜・保護膜・接着剤・保護膜・反射膜・基板からなるものと、基板・半透明膜・樹脂膜・反射膜・保護膜・接着剤・保護膜・反射膜・樹脂膜・半透明膜・基板からなるものが挙げられる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、共振回路部14が中心孔11aの周囲を1又は2回以上巻回して形成されたコイル14aと、このコイル14aの両端に接続されたコンデンサ14bとにより構成された盗難防止機能付光ディスクである。
請求項に係る発明は、請求項に係る発明であって、図6に示すように、RFID24が中心孔21aの周囲を1又は2回以上巻回して形成されたコイル26とコイル26の両端に接続されたICチップ27とにより構成され、ICチップ27は光ディスク固有の情報が記憶されたメモリ27fを有する電子記憶機能付光ディスクである。
【0010】
請求項2に記載された盗難防止機能付光ディスクでは、共振回路部14を比較的容易にディスク基板11に設けることができる。
請求項に記載された電子記憶機能付光ディスクでは、その光ディスクに記録させたデータのタイトル、種別、内容、記憶時間、光記録開始の位置等をメモリ27fに記憶させることができるため、このメモリ27fの読みだし機器との関連において、無断持出しの事実の他に、その持出された光ディスクの情報をも管理することができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明であって、コイル14aの内縁と中心孔11aの孔縁との間隔が0.1mm以上であって、コイル14aの外縁と反射膜12の内縁との間隔が2.5mm以上である盗難防止機能付光ディスクである。
請求項に係る発明は、請求項に係る発明であって、コイル26の内縁と中心孔21aの孔縁との間隔が0.1mm以上であって、コイル26の外縁と反射膜22の内縁との間隔が2.5mm以上である電子記憶機能付光ディスクである。
光ディスクの反射膜12,22は相応の抵抗を持つ導電性を有する。この反射膜12,22にはそれぞれのコイル14a,26に流れる電流による相互誘導により電圧が印加され電流が流れ、エネルギーの損失がある。このエネルギーの損失は共振回路14又はRFID24のQ値の低下をもたらし、その共振の強さを弱める。この請求項3に記載された盗難防止機能付光ディスク及び請求項8に記載された電子情報機能付光ディスクでは、コイル14a,26の内縁と中心孔11a,21aの孔縁との間隔を保つことにより、その中心孔の果す機能を確保するとともに、コイル14a,26の外縁とQ値に影響を与える反射膜12,22の内縁との間隔を保ってそのQ値が低下することを防止する。
【0014】
請求項に係る発明は、請求項に係る発明であって、導電膜28の幅1cmで長さ1cmのときの電気抵抗値が0.25Ω以下である盗難防止機能付光ディスクである。
請求項に係る発明は、請求項に係る発明であって、導電膜28の幅1cmで長さ1cmのときの電気抵抗値が0.25Ω以下である電子記憶機能付光ディスクである。
この請求項に記載された盗難防止機能付光ディスク及び請求項に記載された電子情報機能付光ディスクでは、導電膜28の電気抵抗値が0.25Ω以下であるので、導電膜28による損失によるQ値の低下を少なくすることができる。なお、この導電膜28に流れる電流の影響により自己インダクタンスは小さくなるが、導電膜28の影響下で所定のインダクタンスになるようにコイルの巻数を増やすことにより、その自己インダクタンスを調整することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に本発明の盗難防止機能付光ディスクを図面に基づいて詳しく説明する。
図1及び図2に示すように、光ディスク10は、中心孔11aを有するディスク基板11と、この中心孔11aの孔縁と所定の間隔をあけて中心孔11a周囲のディスク基板11表面に直接形成されたアルミニウム蒸着膜からなる反射膜12と、この反射膜12表面に形成された紫外線硬化樹脂からなる保護膜13とを備える。この実施の形態におけるた光ディスク10は予め記録された音声や映像を専ら再生させることを目的とするいわゆる専用型のコンパクトディスクであって、販売又は貸出す店に陳列されるものである。音声や映像の情報はディスク基板11上に設けられた反射膜12の凹凸からなる位相ピット12aに記録され、この情報はディスク基板11の裏面側から照射されるレーザ光がピット12aのない部分では反射されて帰ってくるが、ピット12aのある部分では回析されて返ってこないことを利用して再生される。
【0016】
この光ディスク10には共振回路部14が設けられる。共振回路部14は、ディスク基板11の中心孔11aの周囲を1又は2回以上巻回して形成されたコイル14aと、このコイル14aの両端に接続されたコンデンサ14bとにより構成され、この共振回路部14は後述する送信アンテナ16から送信された特定周波数の電波に共振するように構成される。この実施形態におけるコイル14aとコンデンサ14bはディスク基板11の表面に設けられる。コイル14aは、ディスク基板11の表面に銅やアルミニウム等の導電性材料により渦巻き状に形成され、コンデンサ14bはチップ型のコンデンサであって、そのコイル14aと電気的に接続するようにディスク基板11上に設けられる。このコンデンサ14bは図示しないが、コイル14aを構成する銅やアルミニウム等の導電性材料で薄い樹脂シートを挟んだ構造のコンデンサであってもよい。コイル14aは、その内縁と中心孔11aの孔縁との間隔Aが0.1mm以上であって、コイル14aの外縁と反射膜12の内縁との間隔Bが2.5mm以上に形成される。
【0017】
図3に示すように、上記光ディスク10を販売する店の出入り口(図示せず)には上記送信アンテナ16と受信アンテナ17とが互いに所定の間隔をあけて立設される。受信アンテナ17は制御部18の制御入力に接続され、制御部18の制御出力に送信アンテナ16が接続される。また制御部18の制御出力には警報を発するスピーカ19が接続される。制御部18は共振回路部14で共振する周波数の電波を送信アンテナ16から送信させるとともに、受信アンテナ17からの受信信号の信号レベルを常にチェックするように構成される。即ち、送信アンテナ16から送信された電波を直接受信アンテナ17が受信した場合の信号レベルを基準値とし、送信アンテナ16から送信された電波が光ディスク10に設けられた共振回路部14で共振して受信アンテナ17が受信すると、この信号レベルは上記基準値より所定値だけ大きくなるが、このとき制御部18はスピーカ19を鳴動させるように構成される。
【0018】
このように構成された盗難防止機能付光ディスクを店から無断で持出そうとして送信アンテナ16及び受信アンテナ17間を通過すると、送信アンテナ16から送信された電波を光ディスク10の共振回路部14が受けて共振を起こす。この結果、コイル14aの自己インダクタンスとコンデンサ14bの静電容量により予め定められた周波数の電波が共振回路部14から再放射される。この再放射された電波を受信アンテナ17が受信すると、この受信信号に基づいて制御部18は料金を支払っていない光ディスク10が無断で持出されることを検出するので、スピーカ19を鳴動して警報を発する。
一方、正規に料金を支払った場合には、会計場所(図示せず)で光ディスク10の共振回路部14上に中心孔11をふさがずに、コイル14aを覆うように粘着層付きのアルミニウム等の導電性シールを添付するか、或いは光ディスク10に強い電波を放射して共振回路部14のコンデンサ14bを破壊する。この結果、送信アンテナ16及び受信アンテナ17間をその光ディスク10が通過しても、共振回路部14は共振しないので、制御部18はスピーカ19を鳴動させない。
【0019】
図4〜図6は本発明の電子記憶機能付光ディスクを示す。図4〜図6において図1〜図3と同一符号は同一部品を示す。
図4及び図5に示すように、この光ディスク20は企業の研究開発におけるデータやシステム開発におけるプログラムを記憶させる追記型及び書換え可能型光ディスク20であって、企業の開発室に収納されるものである。この光ディスク20はポリカーボネートからなるディスク基板21上に記録膜20aが形成され、この記録膜20aを介してアルミニウム又は金が蒸着されて反射膜22が形成される。この反射膜22の表面には合成樹脂からなる保護膜23が更に形成される。研究開発におけるデータやシステム開発におけるプログラムからなる情報は、ディスク基板21の裏面側から照射されるレーザ光によりその記録膜20aにピットとして形成される。
【0020】
ディスク基板21の中心孔21aの孔縁と記録膜20aの内縁との間にはRFID24が設けられる。このRFID24は、ディスク基板21の中心孔21aの周囲を1又は2回以上巻回して形成されたコイル26と、このコイル26の両端に接続されたICチップ27とにより構成される。この実施の形態におけるコイル26とICチップ27はディスク基板21の内部に設けられる。具体的には、コイル26は細い、例えば直径が0.2mmの銅線を渦巻き状に巻いていくことにより、又は絶縁性基材シート24aに積層したアルミニウム箔や銅箔等の導電性材料をエッチング法又は打抜き法等により不要部分を除去して渦巻き状に形成され、コイル26の内縁と中心孔21aの孔縁との間隔Aが0.1mm以上であって、コイル26の外縁と反射膜22の内縁との間隔Bが2.5mm以上に形成される。ICチップ27はコイル26の両端に接続された状態で絶縁性基材シート24aに搭載され、コイル26及びICチップ27を搭載した絶縁性基材シート24aを金型に装着した状態で成形することによりディスク基板21は形成され、共振回路部24はその中心孔21aの孔縁と反射膜22の内縁との間のディスク基板21の内部に設けられる。
【0021】
図6に示すように、ICチップ27は電源回路27aと無線周波数(RF)回路27bと変調回路27cと復調回路27dとCPU27eとこれに接続された光ディスク20固有の情報を記憶するメモリ27fを有する。電源回路27aはコンデンサ(図示せず)を内蔵し、このコンデンサはコイル26とともに共振回路を形成する。このコンデンサにはコイル26が特定の共振周波数の電波を受信したときにその電磁誘導で生じる電力が充電される。電源回路27aはこの電力を整流し安定化してCPU27eに供給し、ICチップ27を活性化する。メモリ27fはROM(read only memory)、RAM(ramdom-access memory)及びEEPROM(electrically erasable pogramable read only memory)を含み、CPU27eの制御の下で後述する無断持出し監視装置30,31からの電波のデータ通信による読出しコマンドに応じて記憶されたデータの読出しを行うとともに、無断持出し監視装置30,31からの書込みコマンドに応じてデータの書込みが行われる。
【0022】
図4及び図5に戻って、保護膜23の表面には導電膜28が形成される。この実施の形態における導電膜28は図示しない接着剤層により保護膜23に貼付けられるが、導電膜28は図示しない接着剤層により保護膜又は反射膜に貼付けても良く、又は蒸着により付け、若しくは導電性のフレークを含む塗料を塗布しても良い。導電性のフレークを含む塗料を塗布する場合には保護膜に導電膜を兼ねさせることも可能になる。導電膜28がアルミ箔、銅箔又は銀膜等により形成される場合には、その厚さは5μm〜30μmの範囲にあることが好ましく、蒸着膜の場合の好ましい厚さは0.05μm〜0.50μmの範囲である。塗料の場合、その厚さは固有抵抗値により幅1cmで長さ1cmのときの電気抵抗値が0.25Ω以下になるように選定される。
【0023】
図6に示すように、ICチップ27からデータの読出しを行う無断持出し監視装置30,31は、送受信アンテナ30と識別監視装置31とを備える。この実施の形態における送受信アンテナ30は、光ディスク20が格納される企業の開発室の出入口付近に設けられかつ巻回された被覆電線である。この送受信アンテナ30は、その出入口を通り抜ける光ディスク20のコイル26に電波を送信しかつそのコイル26からの電波を受信可能に構成される。送受信アンテナ30は識別監視装置31に接続され、識別監視装置31は、バッテリを内蔵する電源回路32と無線周波数(RF)回路33と変調回路34と復調回路35を備える。更に識別監視装置31はCPU36とこれに接続されたメモリ37、ディスプレイ38、入力装置39及びタイマ40を有する。
【0024】
この識別監視装置31は、送受信アンテナ30を介して光ディスク20のコイル26に特定周波数の電波を送信してICチップ27を活性化し、かつそのチップ27のメモリ27fに対してデータの読出し・書込みを行い送受信アンテナ30を介して受信するコイル26からの応答信号により光ディスク20を識別してその光ディスク20の持出し又は入庫の日時をメモリ37に記録するとともに、開発室の出入り口近傍に配設されその出入り口を通過する人間を撮影可能に構成されたビデオカメラ41と、警報手段であるブザー42を所定時間駆動及び鼓動させるように構成される。
【0025】
このように構成された電子記憶機能付光ディスクでは、ICチップ27のメモリ27fにその光ディスク20固有の情報、例えば光ディスクに記録させたデータのタイトル、種別、内容、記憶時間、光記録開始の位置等を入力する。この場合、書き換え可能な光ディスクでは電子記憶装置のタイトル等も入力することができる。このように情報が入力された光ディスク20は、この状態で開発室に格納される。通常の開発業務における光ディスク20の識別は、識別監視装置31により行われ、個々の光ディスク20を再生装置に実際に装着して回転させることなく、迅速にその光ディスクにおける固有の情報を得て所望の光ディスク20を特定する。
【0026】
一方、光ディスク20を無断で持出そうとする者が、その光ディスク20を持った状態で出入口を通過すると、その光ディスク20は送受信アンテナ30の交信範囲を通過する。光ディスク20が送受信アンテナ30の交信範囲を通過する際に、識別監視装置31はその送受信アンテナ21を介して光ディスク20のコイル26に向けてその識別コード質問信号を特定周波数の電波により送信する。この実施の形態における質問信号は2値化されたデジタル信号である。識別監視装置31から発せられるデジタル信号は、図示しない信号発生器から発せられ変調回路34で変調を受ける。RF回路33ではこの変調した信号を増幅して送受信アンテナ30から送信する。この変調には例えばASK(振幅変調)、FSK(周波数変調)又はPSK(位相変調)が挙げられる。
【0027】
送信された質問信号の電波は光ディスク20のコイル26に受信され、この受信により、電源回路27aのコンデンサにはその電磁誘導で生じる電力が充電される。このとき保護膜23の表面に形成された導電膜28は、反射膜22とともに共振回路24に対して電気抵抗の小さい回路としての影響を及す。導電膜28には相互誘導により電流が流れるが、高周波の場合には導電膜28の抵抗が低くても導電膜28の自己インダクタンスの影響で流れる電流は増加しないので、抵抗が低ければ損失は少なくQ値は高くなる。このため、共振回路部24は導電膜28によりそのQ値が高められ、電源回路27aは電力を整流し安定化して、CPU27eに供給し、ICチップ27を活性化する。次いでICチップ27のRF回路27bでは復調に必要な信号のみを取込み、復調回路27dで元のデジタル信号の質問信号を再現させてメモリ27fから光ディスク20に関するデータを送信する。このデータの送信は2値化された識別コードをICチップ27の変調回路27cで変調し、RF回路27bで増幅してコイル26から送出することにより行われる。
【0028】
送信されたデータは送受信アンテナ30を介して識別監視装置31が受信し、識別監視装置31は光ディスク20からのそのデータにより光ディスク20を識別してタイマ40からの時刻に関するデータとともにその光ディスク20が持出された事実をメモリ37に記憶する。これとともに、識別監視装置31はビデオカメラ41を駆動させてその持出した人物を撮影し、ブザー42を鼓動させてその事実を報知する。ブザー42の鼓動により駆けつけた警備員により、出入り口を通過した人間からその光ディスクを回収することができ、光ディスク20の無断持出しを防止することができる。
【0029】
また、この実施の形態ではその光ディスク20に関する情報とその持出された時間をディスプレイ38でに表示するするとともに、この持出しの事実を識別監視装置31から送受信アンテナ30を介して光ディスク20に送信され、ICチップ27のメモリ27fに書込むようになっている。従って、警備員が駆けつけたときに既に人間が出入り口から離れている場合には、その警備員はビデオカメラに撮影された人物により無断に持出した人物を特定し、光ディスク20を無事に回収できる。この際無断に持出されたものであるかの判断は、光ディスク20のメモリ27fに書込まれた事実を読出すことにより行うことができる。
なお、上述した実施の形態では合成樹脂からなる保護膜23の表面に導電膜28を形成したが、導電膜は反射膜と保護膜の間に形成しても良く、保護膜自体を導電膜で構成しても良い。
【0030】
【実施例】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1〜3>
図1に示すコイルとコンデンサからなる3種類の共振回路部を形成した。即ち、直径0.5mmの被覆導線を一平面上で渦巻き状に6回巻いて3種類のコイル14を作製した。これらのコイル14の内径はそれぞれ29.5mmであり、外径を40mm,36.5mm及び33mmとする3種類とした。これらのコイルの両端にチップ型のコンデンサをそれぞれ接続して共振周波数が8MHzとなる3種類の共振回路を得た。
一方、直径が15mmの中心孔11aを有するポリカーボネートからなる外径が120mmのディスク基板11と、この中心孔11a周囲のディスク基板11表面に形成された内径が46mmであって外径が116mmのアルミニウムからなる反射膜12と、この反射膜12表面に形成された樹脂からなる保護膜13とを備えるいわゆる専用型のコンパクトディスクを3枚用意した。これらのコンパクトディスクに上記3種類の共振回路部を中心孔の孔縁と反射膜の内縁との間のディスク基板の表面にそれぞれ設けた。これら3種類の光ディスクを実施例1,実施例2及び実施例3とした。
【0031】
<実施例4〜6>
実施例1〜3と同一の3種類の共振回路を、実施例1〜3と同一のコンパクトディスクの中心孔の孔縁と反射膜の内縁との間のディスク基板の表面にそれぞれ設けた。
一方、内径が45mmであって、外径が120mmの厚さ10μmの円盤状のアルミニウム箔を3枚用意した。これらのアルミニウム箔を導電膜として上述した3種類のコンパクトディスクの保護膜の表面にそれぞれ接着した。このアルミニウム箔からなる導電膜を有する3種類の光ディスクを実施例4,実施例5及び実施例6とした。
【0032】
<実施例7〜9>
実施例1〜3と同一の3種類の共振回路を用意した。
一方、直径が15mmに中心孔21aを有するポリカーボネートからなる外径が120mmの図4に示すディスク基板21と、この中心孔21a周囲のディスク基板12表面に形成された内径が46mmであって外径が116mmの記録膜20aと金からなる反射膜22と、この反射膜22表面に形成された樹脂からなる保護膜23とを備えるいわゆる追記型光ディスクを3枚用意した。これらの光ディスクに上記3種類の共振回路部を中心孔の孔縁と反射膜の内縁との間のディスク基板の表面にそれぞれ設けた。
また、内径が45mmであって、外径が120mmの厚さ10μmの円盤状のアルミニウム箔を3枚用意した。これらのアルミニウム箔を導電膜として上述した3種類の追記型光ディスクの保護膜の表面にそれぞれ接着した。このアルミニウム箔からなる導電膜を有する3種類の光ディスクを実施例7,実施例8及び実施例9とした。
【0033】
<実施例10及び11>
直径0.5mmの被覆導線を一平面上で渦巻き状に6回巻いて、内径が29.5mmであり、外径が36.5mmのコイルを2個作り、それらのコイルの両端にチップ型のコンデンサをそれぞれ接続して共振周波数が8MHzとなる2個の共振回路を用意した。
一方、実施例7〜9と同一の追記型光ディスクを2枚用意し、これらの光ディスクに上記の共振回路部を中心孔の孔縁と反射膜の内縁との間のディスク基板の表面にそれぞれ設けた。
また、内径が45mm、外径が120mmであって、厚さが300μm及び7μmである2種類の円盤状のアルミニウム箔を用意した。これらのアルミニウム箔を導電膜として上述した光ディスクの保護膜の表面にそれぞれ接着した。この厚さが異なる導電膜を有する2種類の光ディスクを実施例10及び実施例11とした。
【0034】
<比較例1>
コイルの外径が42mmであることを除いて実施例1と同一の光ディスクを比較例1とした。
<比較例2>
コイルの外径が42mmであることを除いて実施例4と同一の光ディスクを比較例2とした。
<比較例3>
コイルの外径が42mmでありかつ導電膜としてのアルミニウム泊を接着しない点を除いて実施例7と同一の光ディスクを比較例3とした。
<比較例4>
コイルの外径が42mmである点を除いて実施例7と同一の光ディスクを比較例4とした。
【0035】
<比較例5>
導電膜としてのアルミニウム泊を接着しない点を除いて実施例9と同一の光ディスクを比較例5とした。
<比較例6>
導電膜としてのアルミニウム箔の厚さが0.1μmであることを除いて実施例11と同一の光ディスクを比較例6とした。
なお、実施例1〜11及び比較例1〜6のコイルの外径、そのコイルの外縁と反射膜の内縁との距離、反射膜の種類及び導電膜の有無、並びに導電膜を有する場合のその厚さと幅1cmで長さ1cmのときの電気抵抗値の関係を表1に示す。
【0036】
<比較試験1及び評価>
実施例1〜11及び比較例1〜6の光ディスクの共振回路部におけるコイルの自己インダクタンスLとQ値をそれぞれ測定した後、共振回路部14が共振する電波を送信する送信アンテナ16とこの送信アンテナ16と所定の間隔をあけて立設された受信アンテナ17の間にそれぞれの光ディスクを通過させて、図3に示す制御部18の制御出力に接続されたスピーカ19が警報を発するか否か確認した。この結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
Figure 0004218182
【0038】
実施例1〜11の結果から、光ディスクのディスク基板に共振回路部を設けても警報が発せられることが確認できた。また、実施例1〜9及び比較例1〜4の結果から、コイルの外縁と反射膜の内縁との間隔が警報の有無について影響していることが判る。これはその距離が短いとQ値が低下することに起因するものと考えられ、その距離が2.5mm以上であれば警報が有効に発せられることが判る。
一方、実施例3と比較例5の結果から、その警報の有無は情報をビットとして記録する反射膜の種類によっても異なることが判る。これは抵抗値の低い反射膜(金)が使用された場合のQ値は、抵抗値の高い反射膜(アルミニウム)が使用された場合より低下することに起因するものと考えられる。しかし、実施例9と比較例5の結果から、抵抗値の低い反射膜(金)が使用された光ディスクであっても、導電膜を設けることによりそのQ値を上昇させることができ、警報が発せられることが判る。
但し、実施例8、実施例10及び実施例11並びに比較例6の結果から、導電膜の厚さ、即ち単位面積当りの抵抗値によりQ値を上昇させる機能が異なり、その抵抗値が0.25以下であればQ値は上昇して警報が発せられることが判る。
【0039】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、アンテナから送信された特定周波数の電波に共振する共振回路部又はRFIDが中心孔の孔縁と反射膜の内縁との間のディスク基板の内部又は表面に設けられたので、共振回路部の共振により又はRFIDとの情報交換により警報等を発する他の機器との関連において光ディスクの無断持出しを防止できる。この場合、共振回路部が中心孔の周囲を1又は2回以上巻回して形成されたコイルと、このコイルの両端に接続されたコンデンサとにより構成すれば、共振回路部を比較的容易にディスク基板に設けることができ、RFIDが中心孔の周囲を1又は2回以上巻回して形成されたコイルとコイルの両端に接続されたICチップとにより構成し、ICチップに光ディスク固有の情報を記憶すれば、ICチップのメモリの読みだし機器との関連において、光ディスクにおける固有の情報を迅速に得られるとともに、無断持出しの事実及びその持出された光ディスクの情報をも管理することができる。
また、コイルの外縁と反射膜の内縁との間隔を2.5mm以上にし、導電膜を保護膜の表面又は反射膜と保護膜の間に形成し、若しくは保護膜自体を導電膜で構成すれば、その導電膜により共振回路部のQ値を高めることができる。この場合、導電膜の幅1cmで長さ1cmのときの電気抵抗値を0.25Ω以下にすることにより、そのQ値を有効に高めて光ディスクの無断持出しを有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の盗難防止機能付光ディスクを示す図2のC−C線断面図。
【図2】その光ディスクの平面図。
【図3】その光ディスクを送信アンテナ及び受信アンテナ間を通過させている状態を示す図。
【図4】本発明の電子記憶機能付光ディスクを示す図5のD−D線断面図。
【図5】その光ディスクの平面図。
【図6】その共振回路の構成を示す概念図。
【符号の説明】
10,20 光ディスク
11,21 ディスク基板
11a、21a 中心孔
12,22 反射膜
13,23 保護膜
14,24 共振回路部
14a コイル
14b コンデンサ
26 コイル
27 ICチップ
27f メモリ
28 導電膜
A コイルの内縁と中心孔の孔縁との間隔
B コイルの外縁と反射膜の内縁との間隔

Claims (8)

  1. 中心孔(11a)を有するディスク基板(11)の前記中心孔(11a)周囲の表面に、前記中心孔(11a)の孔縁と所定の間隔をあけて情報をピットとして記憶する反射膜(12)が形成された光ディスク(10)において、
    前記中心孔(11a)の孔縁と前記反射膜(12)の内縁との間の前記ディスク基板(11)の内部又は表面にアンテナ(16)から送信された特定周波数の電波に共振する共振回路部(14)が設けられ、かつ前記反射膜 (12) を覆うように導電膜が形成された
    ことを特徴とする盗難防止機能付光ディスク。
  2. 共振回路部(14)が中心孔(11a)の周囲を1又は2回以上巻回して形成されたコイル(14a)と前記コイル(14a)の両端に接続されたコンデンサ(14b)とにより構成された請求項1記載の盗難防止機能付光ディスク。
  3. コイル(14a)の内縁と中心孔(11a)の孔縁との間隔(A)が0.1mm以上であって、前記コイル(14a)の外縁と反射膜(12)の内縁との間隔(B)が2.5mm以上である請求項2記載の盗難防止機能付光ディスク。
  4. 導電膜の幅1cmで長さ1cmのときの電気抵抗値が0.25Ω以下である請求項記載の盗難防止機能付光ディスク。
  5. 中心孔(21a)を有するディスク基板(21)の前記中心孔(21a)周囲の表面に、前記中心孔(21a)の孔縁と所定の間隔をあけて情報をピットとして記憶する反射膜(22)が形成された光ディスク(20)において、
    前記中心孔(21a)の孔縁と前記反射膜(22)の内縁との間の前記ディスク基板(21)の内部又は表面にRFID(24)が設けられ、かつ前記反射膜 (22) を覆うように導電膜 (28) が形成された
    ことを特徴とする電子記憶機能付光ディスク。
  6. RFID(24)が中心孔(21a)の周囲を1又は2回以上巻回して形成されたコイル(26)と前記コイル(26)の両端に接続されたICチップ(27)とにより構成され、前記ICチップ(27)は光ディスク固有の情報が記憶されたメモリ(27f)を有する請求項6記載の電子記憶機能付光ディスク。
  7. コイル(26)の内縁と中心孔(21a)の孔縁との間隔(A)が0.1mm以上であって、前記コイル(26)の外縁と反射膜(22)の内縁との間隔(B)が2.5mm以上である請求項7記載の電子記憶機能付光ディスク。
  8. 導電膜(28)の幅1cmで長さ1cmのときの電気抵抗値が0.25Ω以下である請求項記載の電子記憶機能付光ディスク。
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