JP4218139B2 - テーパ鋼材の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、土木、建築、橋梁、船舶等の鋼構造物の使途に好適な、長手方向に厚みが変化するテーパ鋼材に係り、とくに、引張強さ490MPa以上で、鋼材内の材質差が少ないテーパ鋼材の製造方法、さらに腐食環境で使用可能な、耐候性に優れたテーパ鋼材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
長手方向に厚みがテーパ状に変化するテーパ鋼材は、造船、土木、建築、橋梁等の分野で用いられ、素材重量の軽減、組立て時の部材数の削減、溶接線の削減などに多大な効果を有している。近年、構造物の死荷重低減の目的から、更なる素材重量軽減の要望があり、高強度テーパ鋼材の要望が高い。
【0003】
しかしながら、テーパ鋼材では、高強度化手段として、従来の厚鋼板におけるように、焼入れ−焼戻し処理あるいは制御冷却を採用すると、厚み差に起因する冷却速度差により組織変化が大きく、鋼材内の強度ばらつきが大きくなるという問題があった。とくに、引張強さを570MPa以上とする高強度化の場合には、厚み差に起因する冷却速度差により組織変化が助長され、強度ばらつきが顕著となる。
【0004】
テーパ鋼材では、寸法精度に加え、材質の均一性が満足されることが重要であり、とくに、鋼構造物に適用するテーパ鋼材では、鋼材内で材質が一定であるという前提のもとで、厚部と薄部のサイズを設計しているため、テーパ鋼材内で材質が変化することは設計上好ましくない。
また、主として橋梁用として使用される場合には、通常、鋼材の錆発生による肉厚減少を抑制するため、鋼材表面に塗装を施すことが行われている。しかし、塗装費用が高価であること、さらに塗膜劣化等により再塗装を必要とすることなど、塗装処理は経済的に不利となることから、P、Cu、Ni、Cr等を多量添加し、塗装処理を必要とせず裸使用が可能な耐候性鋼材の使用が増加している。
【0005】
しかしながら、P、Cu、Ni、Cr等合金元素の多量添加は、厚みが変化するテーパ鋼材においては、厚み差に起因する材質ばらつきをさらに増大することになり、問題を残していた。このようなことから、主として橋梁用として、耐候性に優れ、しかも材質ばらつきの少ないテーパ鋼材が強く要望されていた。
このような問題に対し、例えば、特開昭62-166013 号公報には、均一な材質を得るために、冷却前の長手方向の温度を実測し、この実測値に基づいて、各点の最適冷却条件を演算し、板厚に応じて冷却時の通板速度を修正するテーパプレートの冷却方法が示されている。また、特開平7-68309 号公報には、板厚が長手方向に連続してテーパ状に変化する鋼板を冷却装置内で冷却するに際し、冷却装置内で鋼板の先端部および尾端部の冷却時間を変化させる鋼板の制御冷却方法が提案されている。
【0006】
また、特開平8-92636号公報には、C含有量を0.03wt%以下の極低炭素域まで低減し、熱間圧延後に加速冷却と析出処理とを行い、組織をベイナイト単相とした500MPa以上の高強度と長手方向の材質ばらつきを低減した鋼板の製造方法が提案されている。
また、特開平9-310117 号公報には、C:0.001 〜0.025wt %を含み、さらにMn、Ni、Cu、Nb量に依存する特定式を満足する条件下でMn、Ti、Nb、B、Al等を含有する鋼素材を、Ar3 変態点〜1350℃の温度範囲に加熱後、あるいはさらに熱間圧延を施したのち、10℃/s以下で冷却する、材質ばらつきが少なく溶接性に優れた高強度高靱性厚鋼板の製造方法が記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、P、Cu、Cr、Ni等の合金元素が多量に添加され、材質の冷却速度依存性が大きい鋼をテーパ鋼材に適用するに際し、特開昭62-166013 号公報、特開平7-68309 号公報に記載された技術を適用しても、合金元素の添加量が多すぎて、鋼材内材質のばらつきを十分に減少することができないという問題があった。
【0008】
また、特開平8-92636号公報に記載された技術では、板厚差に起因する材質ばらつきを軽減することはできるが、析出処理のための等温保持、徐冷プロセスを必要とし、そのための特殊設備を必要とするうえ、圧延時間が通常より長くなり、生産性の低下が問題として残されていた。
また、特開平9-310117 号公報に記載された技術は、板内の圧延条件が一定である鋼板についてのものであり、厚み差による冷却速度の相違に起因する材質のばらつきに対してはある程度の効果が期待できるが、テーパ鋼材におけるように、圧延条件が鋼材内で相違するテーパ鋼材の場合には、鋼材内の材質ばらつきの低減には限界があるという問題があった。
【0009】
これとは別に、近年、建設省から耐候性鋼の適用指針(「耐候性鋼材の橋梁への適用に関する共同研究報告書(XX)、1993.3、建設省土木研究所、(社)鋼材倶楽部、(社)日本橋梁建設協会発行)が公表され、飛来塩分量が0.05mg/dm2/day以上の地域、すなわち海岸地帯では、従来の耐候性鋼(JIS G 3114:溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材)は無塗装で使用できないことになっている。耐候性鋼は、海岸地帯などの塩分の多い環境では、飛来する海塩粒子の作用により安定さびが形成されにくく、腐食の抑制が認められない。
【0010】
したがって、海岸地帯などの塩分の多い環境下では、普通鋼材にフタル酸樹脂、塩化ゴム、タールエポキシ樹脂等の塗装を行って対処している。しかしながら、河口付近の海岸地帯に建設される橋梁では腐食が著しく、再塗装の要求が高いが、長大橋が多く、しかも再塗装作業が困難な場合が多い。このようなことから、海岸地帯で無塗装で使用できる鋼材への要望は高い。
【0011】
本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、加速冷却や析出処理を必要とせず、生産性が高く、引張強さ490MPa以上で、鋼材内の材質ばらつきの少ない高強度テーパ鋼材の製造方法を提案することを目的とする。また、本発明は、塗装、表面処理などを必要とせず腐食環境下で使用可能な、田園耐候性に優れかつ鋼材内の材質差が少ない高強度テーパ鋼材の製造方法を、さらには海岸地帯の塩分が多く雨掛かりのない環境下でも使用可能な、海岸耐候性に優れかつ鋼材内の材質差が少ない高強度テーパ鋼材の製造方法を提案することも目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成するために、テーパ鋼材内の材質ばらつきの低減について鋭意研究を行った。
その結果、テーパ鋼材を引張強さ490MPa以上と高強度化し、かつ鋼材内の材質ばらつきを抑制するためには、C含有量を0.025質量%以下と極低炭素域まで低減し、さらにMn、Nb、B等の合金元素量を最適範囲に調整することにより、板厚100mm 鋼板〜板厚10mm鋼板の空冷速度に相当する0.05〜1 ℃/sの広範な冷却速度範囲内で、鋼板の組織を同一のグラニュラ−ベイニティック−フェライト組織とすることができ、厚み差に起因した冷却速度差による材質ばらつきを低減できることを見いだした。
【0013】
つぎに、本発明者らが行った実験結果を説明する。
C:0.012 %、Si:0.2 %、Mn:1.55%、Nb:0.045 %、B:0.002 %を含む鋼板(鋼板A)に種々の冷却を施し、組織と引張特性を調査した。比較として、C:0.12%、Mn:1.3 %を含む鋼板(鋼板B)についても同様の調査を行った。その結果を図1に示す。
【0014】
図1から、極低炭素域にC含有量を低下し、合金元素量を調整した鋼材Aでは、板厚100mm 鋼板〜板厚10mm鋼板の空冷速度に相当する0.05〜1 ℃/sの冷却速度範囲でグラニュラ−ベイニティック−フェライト組織となり、引張強さも500MPa以上の高強度化が達成でき、しかも厚み起因の冷却速度による強度の変化もほどんど見られない。一方、C含有量の高い鋼材Bでは、板厚100mm 鋼板〜板厚10mm鋼板の空冷速度に相当する0.05〜1 ℃/sの冷却速度範囲で引張強さが490MPa以上を確保できないうえ、冷却速度による強度のばらつきが大きい。
【0015】
さらに、本発明者らは、熱間圧延条件のうち、950 ℃以下の温度域での累積圧下量と圧延終了温度とが、グラニュラ−ベイニティック−フェライト組織の強度に大きく影響することを見いだした。
本発明者らは、上記した鋼材Aと同種の極低炭素(C:0.02%)鋼素材を用い、950 ℃以下のオーステナイト未再結晶温度域での累積圧下量と圧延終了温度を変化する熱間圧延を行い、30mm厚の鋼材とし、圧延後空冷し、引張特性を調査した。その結果を、図2に、引張強さ、降伏強さと、950 ℃以下の温度域での累積圧下量との関係で示す。
【0016】
図2から、950 ℃以下の温度域での累積圧下量を50%以下とすることにより、累積圧下量が変化しても降伏強さ、引張強さの変化が少ないことがわかる。しかし、圧延終了温度を800 ℃と低温にすると、950 ℃以下の温度域での累積圧下量が50%以下でも降伏強さ、引張強さが変化する。一方、圧延終了温度を850 ℃とすれば、50%以下での累積圧下量の変化にかかわらず降伏強さ、引張強さの変化はない。950 ℃以下の温度域での累積圧下量を50%以下としたうえで、圧延終了温度を850 ℃以上とすることが材質ばらつきの防止に効果的であることがわかる。
【0017】
このことから、グラニュラ−ベイニティック−フェライト組織の転位密度増加による強化は、つぎのように考えられる。熱間圧延、とくに950 ℃以下のオーステナイト未再結晶温度域での累積圧下量に応じ、オーステナイト粒に導入された転位が蓄積され、その1部が変態後のグラニュラ−ベイニティック−フェライトに継承され、その結果、強度が増加するものと考えられる。さらに、圧延終了温度が低温となるにしたがい、累積圧下量が同じでも蓄積される転位量が増加するため、強度の増加は大きい。したがって、従来のテーパ鋼材においては、厚みが変化し、厚部と薄部の累積圧下量が異なり、薄部の累積圧下量が大きくなるとともに、薄部の圧延終了温度が低下するため、厚部と薄部の強度差が拡大することになる。
【0018】
上記した実験結果から、本発明者らは、このようなテーパ鋼材における材質ばらつきを少なくするためには、熱間圧延条件のうち、950 ℃以下の温度域での累積圧下量を50%以下、圧延終了温度を板厚中心部で850 ℃以上とすることがよいという結論に到達した。
また、本発明者らは、田園耐候性を改善するために、合金元素の影響をさらに検討した。その結果、Cu、Ni、Crを次(1)式
0.05 ≦ Cu/16+Ni/7+Cr/23 ≦0.20 ……(1)
(ここで、Cu、Ni、Cr:各元素の含有量(量%))
を満足する条件下で含有することにより、大気暴露時の板厚減少量が低下することを見いだした。なお、本発明でいう田園耐候性とは、田園地帯の大気環境下で暴露されたときの耐食性を意味するものとする。
【0019】
本発明者らが行った田園耐候性に及ぼす合金元素の影響についての実験結果を説明する。
0.012質量%C−1.55質量%Mn−0.045質量%Nb−0.0015質量%Bを基本成分として、Cu、Ni、Crを変化した鋼塊を製造し、これら鋼塊に950 ℃以下の累積圧下量を50%以下、圧延終了温度を850 ℃とする熱間圧延を施し、厚鋼板とした。これら厚鋼板について、組織観察、大気暴露試験を実施し、ミクロ組織(グラニュラ−ベイニティック−フェライト量:GBF量)、大気暴露試験における板厚減少量(暴露期間:1年間)を調査した。それらの結果を、A値={Cu/16 +Ni/7+Cr/23 }との関係で整理し、図3に示す。
【0020】
図3から、A値を0.05〜0.20とすることにより、組織が90体積%以上のグラニュラ−ベイニティック−フェライトを有する冷却速度依存性の少ないミクロ組織となり、材質ばらつきの少ない鋼材とすることが可能であり、さらに大気暴露による板厚減少量も10μm 以下と少なく優れた田園耐候性を示すことがわかる。
一方、本発明者らは、海岸耐候性を改善するために、合金元素の影響をさらに検討した結果、塩分を多く含む環境下では、Crは耐候性を劣化させるという知見を得た。本発明でいう海岸耐候性とは、海岸地帯の大気環境下で暴露されたときの耐食性を意味する。
【0021】
また、本発明者らは、Bの含有量と、P、Cu、Ni、Moのうちの1種以上の含有量を、飛来塩分量に関連して次(2)式
(11P+4.0Cu +3.1Ni +2.6Mo )/(1−0.1(10000 B)0.35 )≧1+13X
……………(2)
(ここに、P、Cu、Ni、Mo、B:各元素の含有量(量%)、X:JIS Z 2381に規定されるガーゼ法により測定される飛来塩分量(mg/dm2/day))
を満足するように、調整することにより、海岸地帯など塩分が多く、かつ雨掛かりがない環境下でも耐候性に優れた鋼材が得られることを見いだした。
【0022】
本発明は、上記した知見に基づいて、さらに検討を加えて完成されたものである。
すなわち、本発明は、量%で、C:0.025 %以下、Si:0.60%以下、Mn:2.0 %以下、Al:0.10%以下、B:0.0002〜0.0050%、Nb:0.01〜0.10%、Ti:0.005 〜0.20%を含み、あるいはさらにCa:0.0100%以下、REM :0.0100%以下、Zr:0.0100%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および/またはV:0.02〜0.10%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を、1000〜1200℃の範囲に加熱したのち、該鋼素材に、厚みを長手方向にテーパ状に変化させる熱間圧延を施すにあたり、950 ℃以下の温度域での累積圧下量を50%以下、圧延終了温度を板厚中心温度で850 ℃以上とし、熱間圧延終了後、空冷または徐冷することを特徴とする材質ばらつきの少ないテーパ鋼材の製造方法である。
【0023】
また、本発明では、田園耐候性向上のために、前記鋼素材を、量%で、C:0.025 %以下、Si:0.60%以下、Mn:2.0 %以下、Al:0.10%以下、B:0.0002〜0.0050%、Nb:0.01〜0.10%、Ti:0.005 〜0.20%を含み、あるいはさらにV:0.02〜0.10%を含有し、さらに、Cu:0.05〜2.0 %、Ni:0.05〜1.0 %、Cr:0.05〜1.0 %のうちから選ばれた1種または2種以上を、次(1)式
0.05 ≦ Cu/16+Ni/7+Cr/23 ≦0.20 ……(1)
(ここで、Cu、Ni、Cr:各元素の含有量(量%))
を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とすることが好ましく、また、本発明では、前記組成に加えてさらに、量%で、Ca:0.0100%以下、REM :0.0100%以下、Zr:0.0100%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有してもよい。
【0024】
また、本発明では、海岸耐候性向上のために、前記鋼素材を、量%で、C:0.025 %以下、Si:0.60%以下、Mn:2.0 %以下、Al:0.10%以下、B:0.0002〜0.0050%、Nb:0.01〜0.10%、Ti:0.005 〜0.20%を含み、あるいはさらにV:0.02〜0.10%を含有し、さらに、P:0.005 〜0.15%、Cu:0.05〜2.0 %、Ni:0.05〜6.0 %、Mo:0.005 〜0.50%のうちから選ばれた1種または2種以上を、次(2)式
(11P+4.0Cu +3.1Ni +2.6Mo )/(1−0.1(10000 B)0.35 )≧1+13X
……………(2)
(ここに、P、Cu、Ni、Mo、B:各元素の含有量(量%)、X:JIS Z 2381に規定されるガーゼ法により測定される飛来塩分量(mg/dm2/day))
を満足するように含有し、かつCr:0.05%以下とし、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とするのが好ましく、また、本発明では、前記組成に加えてさらに、量%で、Ca:0.0100%以下、REM :0.0100%以下、Zr:0.0100%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有してもよい。
【0025】
【発明の実施の形態】
まず、鋼素材の化学成分の限定理由について説明する。
C:0.025 %以下
Cは、鋼の強度を増加する元素であり、所望の強度を得るためには0.001 %以上の含有が望ましいが、0.025 %を超えて多量に含有すると、パーライト相が生成し易くなりベイナイト単相とならず、また溶接性、靱性が劣化する。このためCは0.025 %以下に限定した。なお、安定さびの形成を促進するためにはCは0.015 %以下とするのが好ましい。より好ましくは0.005 〜0.012 %である。
【0026】
Si:0.60%以下
Siは、脱酸剤として作用し、さらに鋼の強度を増加させる元素であり、冷却速度によらず強度を増加させるためには、0.10%以上含有するのが望ましい。しかし、多量に含有すると靱性および溶接性を劣化させるため、0.60%以下に限定した。なお、好ましくは0.10〜0.35%である。
【0027】
Mn:2.0 %以下
Mnは、極低炭素鋼の連続冷却変態挙動に大きく影響し、強度および靱性の増加に寄与する元素である。グラニュラ−ベイニティック−フェライト組織とするためには、0.80%以上の含有が好ましい。一方、2.0 %を超えて多量に含有すると、M−A Constituentsを含むベイニティック−フェライト組織となり、靱性が低下する。このため、Mnは2.0 %以下に限定した。なお、好ましくは、0.80〜1.80%である。
【0028】
Al:0.10%以下
Alは、脱酸剤として0.005 %以上添加するのが望ましいが、0.10%を超えて含有すると、酸化物系介在物量が増加し靱性に悪影響を及ぼすため、0.10%を上限とした。
Nb:0.01〜0.10%
Nbは、Mnと同様に、極低炭素鋼の連続冷却変態挙動に大きく影響し、強度および靱性の増加に寄与する元素である。グラニュラ−ベイニティック−フェライト組織とし強度を増加させるためには、0.01%以上の含有を必要とするが、0.10%を超えて多量に含有すると、靱性が低下する。このため、Nbは0.01〜0.10%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.02〜0.06%である。
【0029】
Ti:0.005 〜0.20%
Tiは、鋼材の強度を増加させる元素であり、0.005 %以上の含有で効果が認められるが、0.20%を超えて含有しても効果が飽和する。このため、Tiは0.005 〜0.20%に限定した。
B:0.0002〜0.0050%
Bは、本発明で重要な元素であり、焼入性を増加させグラニュラ−ベイニティック−フェライト組織とし、さらに耐候性を向上させる元素である。このような効果は0.0002%以上の含有で認められるが、0.0050%を超えて含有しても含有量に見合う効果を期待できない。このため、Bは0.0002〜0.0050%の範囲に限定した。溶接部靱性を考慮すると、好ましくは、0.0020〜0.0030%の範囲である。
【0030】
なお、Bの耐候性向上の詳細な機構は明確でないが、次のように考えられる。錆層中に付着した塩分は、降雨、結露水(あるいは潮解)によってイオン化し、Clイオンとなり錆層中のpHを低下させる。このpHの低下は、鉄のアノード溶解を促進し、耐候性を劣化させる。Bはこの塩素によるpH低下を防ぐ作用を有していると考えられる。
【0031】
本発明では、田園耐候性を向上させるために、Cu:0.05〜2.0 %、Ni:0.05〜1.0 %、Cr:0.05〜1.0 %のうちから選ばれた1種または2種以上を(1)式を満足するように含有できる。
Cu、Ni、Crはいずれも、グラニュラ−ベイニティック−フェライトの変態時に生じる変態歪を増加させ、転位密度が増加する結果、鋼材の強度を増加させる効果を有し、また、複合して含有することにより、鋼の表面に生成する錆を安定化させる効果を有し、必要に応じ単独あるいは複合して含有できる。
【0032】
Cuは、0.05%以上の含有で上記した強度増加効果が顕著に認められが、2.0 %を超えて含有すると、熱間圧延後の冷却でCu析出物が生成し著しく強度が増加し、それに伴い靱性が劣化する。このため、Cuは0.05〜2.0 %に限定するのが好ましい。
Niは、0.05%以上の含有で上記した強度増加効果が顕著に認められが、1.0 %を超えて含有すると、強度増加が飽和し、含有量に見合う効果が期待できないため、経済的に高価となる。このため、Niは0.05〜1.0 %に限定するのが好ましい。
【0033】
Crは、0.05%以上の含有でオーステナイト未再結晶温度域が拡大し、累積圧下量の相違による材質ばらつきを生じることなく強度増加が図れるが、1.0 %を超えて含有すると、Cr炭化物の生成が顕著となり、とくに溶接HAZの靱性を劣化させる。このため、Crが0.05〜1.0 %に限定するのが好ましい。
Cu、Ni、Crは、各々上記した範囲内でかつ、次(1)式
0.05 ≦ Cu/16+Ni/7+Cr/23 ≦0.20 ……(1)
(ここで、Cu、Ni、Cr:各元素の含有量(量%))
を満足するように含有されるのが好ましい。A値={Cu/16 +Ni/7+Cr/23 }が、0.20を超えると、テーパ鋼材各部の組織を全てグラニュラ−ベイニティック−フェライト組織とすることができず、テーパ鋼材内の材質ばらつきが増加する。一方、A値が0.05未満では、耐食性が低下し、田園耐候性が劣化する。
【0034】
また、本発明では、海岸耐候性向上のために、P:0.005 〜0.15%、Cu:0.1 〜1.5 %、Ni:0.1 〜6.0 %、Mo:0.005 〜0.5 %のうちから選ばれた1種または2種以上を(2)式を満足するように含有できる。
P、Cu、Ni、Moはいずれも、錆粒子を緻密化し耐候性を向上させる作用を有し、本発明では必要に応じ1種または2種以上を含有できる。
【0035】
Pは、錆粒子を緻密化し耐候性を向上させる元素であるが、P含有量が0.005 %未満では、これら効果が認められない。しかし、0.15%を超えると耐候性向上効果も飽和しさらに溶接性が劣化する。このため、Pは0.005 〜0.15%の範囲とするのが好ましい。なお、より好ましくは0.020 〜0.120 %である。
Cu:0.1 〜1.5 %
Cuは、錆粒子を緻密化し耐候性を向上させる。しかし、Cu含有量が0.1 %未満ではその効果が少なく、一方、1.5 %を超えると熱間加工性を阻害するとともに、耐候性向上効果も飽和し経済的に不利となる。このため、Cu含有量は0.1 〜1.5 %の範囲に限定した。
【0036】
Ni:0.1 〜6.0 %
Niは、錆粒子を緻密化し耐候性を向上させるが、0.1 %未満の含有ではその効果が少ない。一方、6.0 %を超えて含有しても効果が飽和し含有量に見合う効果が認められず、経済的に不利となる。このため、Niは0.1 〜6.0 %の範囲とした。なお、耐候性の観点から、1.0 〜3.5 %の範囲が好ましい。
【0037】
Mo:0.005 〜0.5 %
Moは、耐候性を向上させ、さらに強度を増加させるが、0.005 %未満の含有ではその効果が少ない。一方、0.5 %を超えて含有しても効果が飽和し含有量に見合う効果が認められず、経済的に不利となる。このため、Moは0.005 〜0.5 %の範囲とした。なお、靱性の観点から、0.005 〜0.35%の範囲が好ましい。
【0038】
さらに、本発明では、Bの含有量と、P、Cu、Ni、Moのうちの1種以上の含有量を、飛来塩分量に関連して次(2)式を満足するように調整する。
(11P+4.0Cu +3.1Ni +2.6Mo )/(1−0.1(10000 B)0.35 )≧1+13X
……………(2)
ここに、P、Cu、Ni、Mo、B:各元素の含有量(量%)、X:JIS Z 2381に規定されるガーゼ法により測定される飛来塩分量(mg/dm2/day)である。(2)式を満足するように、Bの含有量と、P、Cu、Ni、Moのうちの1種以上の含有量を調整することにより、飛来塩分量Xの多い海岸地帯における海岸耐候性が顕著に向上する。飛来塩分量Xに応じ、B、P、Cu、Ni、Mo量を調整することにより、腐食環境に対応した鋼材となり、不必要な合金元素の添加を防止でき経済的に有利となる。
【0039】
(2)式の左辺
B=(11P+4.0Cu +3.1Ni +2.6Mo )/(1−0.1(10000 B)0.35
が、(2)式の右辺
C=1+13X
より小さい場合、すなわち、B<Cの場合には、合金元素による耐食性向上効果より飛来塩分による耐食性劣化効果の方が大きい。なお、本発明では、(2)式中の合金元素のうち添加されない元素がある場合には、当該元素の含有量は0として計算するものとする。
【0040】
上記した成分以外に、V:0.02〜0.10%、あるいはCa、REM 、Zrのうちから選ばれた1種または2種以上を必要に応じ含有できる。
V:0.02〜0.10%
Vは、グラニュラ−ベイニティック−フェライトの変態時に生じる変態歪を増加させ、転位密度の増加を介して鋼材の強度を増加させる効果を有する。このような効果は0.02%以上の含有で認められるが、0.10%を超える含有は、VNが多量に析出し、靱性を低下させる。このため、Vは0.02〜0.10%の範囲とするのが好ましい。
【0041】
Ca:0.0100%以下、REM :0.0100%以下、Zr:0.0100%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
Ca、REM 、Zrはいずれも、硫酸化物を形成し、溶接時の昇温過程でオーステナイト粒をピンニングして粒粗大化を抑制し、溶接部靱性を向上させる効果を有し、必要に応じ選択して含有することができる。
【0042】
Caは、粒粗大化抑制作用を通じ溶接部靱性を向上させる効果を有し、0.0005%以上含有させるのが望ましいが、0.0100%を超える含有はクラスター状の介在物を形成し靱性に悪影響をおよぼす。このため、Caは0.0100%以下に制限するのが好ましい。
REM は、溶接部靱性を向上させる効果を有し、0.0005%以上含有させるのが望ましいが、多量の含有は、効果が飽和するうえ鋼材の清浄度を劣化させる。このため、REM は0.0100%とするのが好ましい。
【0043】
Zrは、溶接部靱性を向上させる効果を有し、0.0005%以上含有させるのが望ましいが、0.0100%を超える含有はクラスター状の介在物を形成し靱性に悪影響をおよぼす。このため、Zrは0.0100%以下とするのが好ましい。
本発明では、上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。不可避的不純物として、S:0.01%以下、N:0.010 %以下、O:0.010 %以下が許容できる。なお、海岸地帯で耐候性が必要な場合にはCr:0.05%以下とするのが好ましい。
【0044】
上記した化学組成の溶鋼を、転炉、電気炉等通常公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法あるいは造塊法により鋼素材とする。また、溶製方法は、真空脱ガス精錬等を実施してもよい。
ついで、これら鋼素材は、加熱炉等で加熱され熱間圧延を施され、所定の寸法のテーパ厚鋼板とされる。
【0045】
加熱温度:1000〜1200℃
加熱温度が1000℃未満では添加したNbが十分に固溶しないため、Nbの連続冷却変態挙動におよぼす効果が十分に得られない。一方、1200℃を超えるとオーステナイト粒が粗大化してその後の圧延によっても細粒化が進まず靱性が劣化する。このため、鋼素材の加熱温度は1000〜1200℃の範囲に限定するのが好ましい。
【0046】
加熱後、熱間圧延を行う。
熱間圧延では、長手方向に板厚が変化するテーパを付与する。テーパ鋼材における長手方向の厚みの変化は、鋼材をかみ込んだのち、あらかじめ設定したパスごとにロール開度を変化させることにより達成できる。パスごとの圧下量については特に限定しない。
【0047】
950 ℃以下の温度域での累積圧下量:50%以下
グラニュラ−ベイニティック−フェライト組織では、未再結晶域の圧下量の増大により、伸展したオーステナイト組織から変態する際にパケットとよばれるラスの集積した組織単位が細かくなり、靱性が向上する。しかし、加工オーステナイトの転位の一部が受け継がれ、累積圧下量に応じて強度が増加する傾向を有する。したがって、テーパ鋼材の厚部と薄部では、厚みが異なり累積圧下量が異なるため、厚み比(最厚部厚みt max /最薄部厚みt min )が大きくなるほど強度の相違が大きくなる。図2に示すように、この傾向は、950 ℃以下の温度域での累積圧下量が50%を超える領域で顕著となり、累積圧下量に応じて強度が増加する。テーパ鋼材で、950 ℃以下の温度域での累積圧下量が50%を超える領域が存在すると、鋼材内で強度ばらつきが生じることになる。このため、本発明では、950 ℃以下の温度域での最薄部の累積圧下量、すなわち鋼材内最大累積圧下量を50%以下に限定するのが好ましい。
【0048】
圧延終了温度: 850℃以上
圧延終了温度が低温となるにしたがい、圧延加工によるオーステナイト粒への歪蓄積量が増大する。したがって、加工オーステナイトからグラニュラ−ベイニティック−フェライトへの転位の受け継ぎが著しくなり、強度が増大する。このため、本発明では、圧延終了温度は850 ℃以上に限定するのが好ましい。
【0049】
圧延終了後の冷却:空冷あるいは徐冷
圧延後の冷却は、空冷あるいは徐冷とする。本発明に用いる鋼素材の組成範囲では、空冷(厚み10mm相当の空冷では1.0 ℃/s)を超える冷却速度で圧延後冷却すると、硬質な組織(ベイニティック−フェライト)が低温で生成される場合があり、強度が上昇しテーパ鋼材の強度ばらつきの要因となる。このため、本発明では、圧延終了後の冷却速度を空冷または徐冷に限定するのが好ましい。
【0050】
【実施例】
(実施例1)
表1に示す組成の溶鋼を、転炉で溶製し、連続鋳造法でスラブに鋳造した。このスラブを表2に示す熱間圧延条件で、図4に示すような、長手方向に板厚が変化する3種のテーパ厚鋼板とした。テーパの付与は、各パスごとに、噛込み後ロール開度を変化させることにより達成した。
【0051】
これらテーパ厚鋼板について、最大板厚部(最厚部)および最小板厚部(最薄部)から試験片(圧延方向に直角方向:C方向)を採取し、引張特性、低温靱性を調査し、母材特性を評価した。
これらの結果を表3に示す。
【0052】
【表1】
Figure 0004218139
【0053】
【表2】
Figure 0004218139
【0054】
【表3】
Figure 0004218139
【0055】
【表4】
Figure 0004218139
【0056】
【表5】
Figure 0004218139
【0057】
【表6】
Figure 0004218139
【0058】
本発明例は、いずれも引張強さ490MPa以上の高強度と、最厚部の強度と最薄部の強度差ΔTSが3MPa 以下、最厚部の破面遷移温度(vTrs)と最薄部の破面遷移温度(vTrs)の差ΔvTrsが3℃以下と、強度および靱性ともに板内ばらつきの極めて少ないテーパ厚鋼板となっている。 一方、本発明範囲を外れる比較例では、最厚部の強度と最薄部の強度差ΔTSが8〜28MPa 、ΔvTrsが7〜16℃と強度・靱性の材質ばらつきが大きい。
【0059】
熱間圧延における950 ℃以下の温度域での累積圧下量が本発明の範囲を外れる鋼板No.5(比較例)では、板内強度ばらつきΔTSが28MPa 、板内靱性ばらつきΔTrsが16℃と大きく、また、圧延終了温度が本発明の範囲を外れる鋼板No.6(比較例)では、板内強度ばらつきが8MPa 、板内靱性ばらつきΔTrsが7℃と大きくなっている。また、熱間圧延の加熱温度が本発明範囲を外れる鋼板No.16 (比較例)では、母材のvTrsが−1〜+5℃と低靱性となっている。また、熱間圧延後の冷却が本発明範囲を外れる鋼板No.17 (比較例)では、板内強度ばらつきが20MPa と大きくなっている。
【0060】
成分範囲が本発明の範囲を外れる鋼板No.22 〜No.27 では、強度あるいは靱性が低下している。
(実施例2)
表4に示す組成の溶鋼を、転炉で溶製し、連続鋳造法でスラブに鋳造した。このスラブを表5に示す熱間圧延条件で、実施例1と同様に、図4に示すような、長手方向に板厚が変化する3種のテーパ厚鋼板とした。テーパの付与は、実施例1と同様に、各パスごとに、噛込み後ロール開度を変化させることにより達成した。
【0061】
これらテーパ厚鋼板について、実施例1と同様に、最厚部および最薄部の引張特性、低温靱性を調査し、母材特性を評価した。
さらに、これらテーパ厚鋼板の表面部から、5mm×50mm×100mm の腐食試験片を採取し、圧延時に生成したスケールをショットブラストにより除去したのち、大気暴露試験により耐候性を評価した。大気暴露試験は、飛来塩分量0.02mg/dm2/dayの田園地帯を選定し、それぞれ試験片の地鉄面を南面に向け地面から30°の角度で設置し1年間暴露した。暴露試験後、地鉄表面に形成されたさび層を除去し、試験片の重量減少量を測定し、板厚減少量に換算し、田園耐候性を評価した。
【0062】
これらの結果を表6に示す。
【0063】
【表7】
Figure 0004218139
【0064】
【表8】
Figure 0004218139
【0065】
【表9】
Figure 0004218139
【0066】
本発明例は、いずれも引張強さ520 〜690MPaの高強度と、最厚部の強度と最薄部の強度差ΔTSが2MPa 以下、最厚部の破面遷移温度(vTrs)と最薄部の破面遷移温度(vTrs)の差ΔvTrsが7℃以下と、強度および靱性ともに板内ばらつきの極めて少ないテーパ厚鋼板となっている。 一方、本発明範囲を外れる比較例(鋼材No.2-2)では、最厚部の強度と最薄部の強度差ΔTSが29MPa 、ΔvTrsが16℃と強度・靱性の材質ばらつきが大きい。
【0067】
また、本発明例(鋼材No.2-1、No.2-3〜No.2-6)は、いずれも田園地帯での 大気暴露試験の板厚減少量が7μm 以下と少なく、田園耐候性に優れている。なお、A値が本発明の好適範囲を外れる鋼材No.2-6は、大気暴露試験での板厚減少量が17μm と田園耐候性が若干劣化している。
(実施例3)
表7に示す組成の溶鋼を、転炉で溶製し、連続鋳造法でスラブに鋳造した。このスラブを表8に示す熱間圧延条件で、実施例1と同様に、図4に示すような、長手方向に板厚が変化する3種のテーパ厚鋼板とした。テーパの付与は、実施例1と同様に、各パスごとに、噛込み後ロール開度を変化させることにより達成した。
【0068】
これらテーパ厚鋼板について、実施例1と同様に、最厚部および最薄部の引張特性、低温靱性を調査し、母材特性を評価した。さらに、これらテーパ厚鋼板の表面部から、5mm×50mm×100mm の腐食試験片を採取し、圧延時に生成したスケールをショットブラストにより除去したのち、大気暴露試験により耐候性を評価した。大気暴露試験は、飛来塩分量0.8mg/dm2/day の海岸地帯を選定し、雨掛かりのない条件で、それぞれ試験片の地鉄面を南面に向け地面から30°の角度で設置し1年間暴露した。暴露試験後、地鉄表面に形成されたさび層を除去し、試験片の重量減少量を測定し、板厚減少量に換算し、海岸耐候性を評価した。
【0069】
これらの結果を表9に示す。
【0070】
【表10】
Figure 0004218139
【0071】
【表11】
Figure 0004218139
【0072】
【表12】
Figure 0004218139
【0073】
【表13】
Figure 0004218139
【0074】
【表14】
Figure 0004218139
【0075】
【表15】
Figure 0004218139
【0076】
本発明例は、いずれも引張強さ490MPa以上の高強度と、最厚部の強度と最薄部の強度差ΔTSが3MPa 以下、最大板厚部の破面遷移温度(vTrs)と最小板厚部の破面遷移温度(vTrs)の差ΔvTrsが4℃以下と、強度および靱性ともに板内ばらつきの極めて少ないテーパ厚鋼板となっている。
また、本発明例は、板厚減少量が15〜27μm と、市販耐候性鋼成分のテーパ鋼板(鋼板No.3-27 )の板厚減少量145 μm に比べ著しく少ない腐食量を示し、優れた海岸耐候性を示している。
【0077】
一方、本発明範囲を外れる比較例では、強度・靱性の材質ばらつきが大きいか、あるいは海岸耐候性が低下している。
熱間圧延における950 ℃以下の温度域での累積圧下量が本発明の範囲を外れる鋼板No.3-5、No.3-18 (比較例)では、板内強度ばらつきΔTSが27MPa 、13MPa 、板内靱性ばらつきΔTrsが16℃、15℃と大きく、また、圧延終了温度が本発明の範囲を外れる鋼板No.3-6、No.3-19 (比較例)では、板内強度ばらつきが23MPa 、17MPa 、板内靱性ばらつきΔTrsが12℃、13℃と大きくなっている。また、熱間圧延の加熱温度が本発明範囲を外れる鋼板No.3-16 (比較例)では、母材のvTrsが+5〜+10℃と低靱性となっている。また、熱間圧延後の冷却が本発明範囲を外れる鋼板No.3-17 (比較例)では、板内強度ばらつきが33MPa と大きくなっている。
【0078】
C含有量が本発明の範囲を外れる鋼板No.3-23 は、強度・靱性ばらつきが大きくなっている。B値がC値より小さく本発明の範囲から外れる比較例(鋼板No.3-23 〜No.3-26 )は、大気暴露試験における板厚減少量が37〜67μm と大きく、海岸耐候性が劣化している。
このように、本発明例は、加速冷却等の強制冷却を施すことなく圧延のままで、引張強さ490MPa以上の高強度を有し、しかも板内材質ばらつきが少なく、海岸耐候性に優れたテーパ厚鋼板となっている。
【0079】
【発明の効果】
本発明によれば、圧延のままで、引張強さ490MPa以上を有し、かつ鋼材内の材質均一性に優れた高張力テーパ鋼材、さらには田園地帯、海岸地帯などの環境下での優れた耐候性を具備する高張力テーパ鋼材を安価に安定して製造でき、産業上格別の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】引張特性と熱間圧延後冷却速度(板厚)の関係を示すグラフである。
【図2】 950 ℃以下の累積圧下量と引張特性の関係を示すグラフである。
【図3】グラニュラ−ベイニティック−フェライト量(G.B.下量)、大気暴露試験における板厚減少量とA値の関係を示すグラフである。
【図4】テーパ厚鋼板のテーパ形状の例を示す説明図である。

Claims (4)

  1. 量%で、
    C:0.025 %以下、 Si:0.60%以下、
    Mn:2.0 %以下、 Al:0.10%以下、
    B:0.0002〜0.0050%、 Nb:0.01〜0.10%、
    Ti:0.005〜0.20%
    を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を、1000〜1200℃の範囲に加熱したのち、該鋼素材に、厚みを長手方向にテーパ状に変化させる熱間圧延を施すにあたり、950 ℃以下の温度域での累積圧下量を50%以下、圧延終了温度を板厚中心温度で850 ℃以上とし、熱間圧延終了後、空冷または徐冷することを特徴とするテーパ鋼材の製造方法。
  2. 前記鋼素材が、前記組成に加えてさらに、量%で、Cu:0.05〜2.0 %、Ni:0.05〜1.0 %、Cr:0.05〜1.0 %のうちから選ばれた1種または2種以上を、下記(1)式を満足するように含有することを特徴とする請求項1に記載のテーパ鋼材の製造方法。

    0.05 ≦ Cu/16+Ni/7+Cr/23 ≦0.20 ……(1)
    ここで、Cu、Ni、Cr:各元素の含有量(量%)
  3. 前記鋼素材が、前記組成に加えてさらに、量%で、P:0.005 〜0.15%、Cu:0.05〜2.0 %、Ni:0.05〜6.0 %、Mo:0.005 〜0.50%のうちから選ばれた1種または2種以上を、下記(2)式を満足するように含有し、かつCr:0.05%以下であることを特徴とする請求項1に記載のテーパ鋼材の製造方法。

    (11P+4.0Cu +3.1Ni +2.6Mo )/(1−0.1(10000 B)0.35 )≧1+13X
    ……………(2)
    ここに、P、Cu、Ni、Mo、B:各元素の含有量(量%)
    X:JIS Z 2381に規定されるガーゼ法により測定される飛来塩分量(mg/dm2/day)
  4. 前記鋼素材が、前記組成に加えてさらに、量%で、Ca:0.0100%以下、REM :0.0100%以下、Zr:0.0100%以下、V: 0.02 0.10 のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のテーパ鋼材の製造方法。
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