以下、本発明を図示する実施の形態により、具体的に説明する。なお、各実施の形態において、同一の部材には同一の符号を付して対応させてある。
[第1実施形態]
図1〜図14は、本発明の第1実施形態であり、図1(a)、(b)は製造されるピース金型を示す。ピース金型21,22は、いずれもタイヤ成形用金型の構成部材となるものであり、複数のピース金型21,22をバックモールド9(図69(a)参照)によってリング状に組み立てることによりタイヤ成形用金型となる。図1(a)のピース金型21は、タイヤ成形用金型を平面分割した場合の形状を、(b)のピース金型22は、タイヤ成形用金型を曲面分割した場合の形状をそれぞれ示す。
これらのピース金型21,22は、いずれも骨部等が突出するように形成された意匠面23と、意匠面23の両側の嵌合面24と、意匠面23と反対側の鎖線で示す背面25とを有している。嵌合面24はピース金型21,22を組み立てるときに、隣接するピース金型21,22と相互に嵌合する部分である。また、図1においては、背面25は、仕上げ代が付与された状態となっており、本来の背面25に対し仕上げ代付き平面26となっている。この仕上げ代としては、5〜20mm程度の寸法に設定される。
図2は、ピース金型21,22を反転した形状に成形されたピース鋳型であり、図2(a)で示すピース鋳型31が図1(a)の平面分割型のピース金型21に対応し、図2(b)で示すピース鋳型32が図1の曲面分割型のピース金型22に対応している。それぞれのピース鋳型31,32は、ピース金型21,22における意匠面23の形状を反転した意匠反転面33と、嵌合面24の形状を反転した意匠反転面33両側の嵌合反転面34とを有している。
図3及び図4は、ピース鋳型31,32を並べることによって作製される直方体鋳型35,36を示し、図3は平面分割型に対応し、図4は曲面分割型に対応している。ピース鋳型31,32は、並び方向の両端部分及び隣接するピース鋳型31,32との間に側面鋳型37が配置されるように並べられる。そして、ピース鋳型31,32及び側面鋳型37を接着剤等によって接合することにより、図3(b)及び図4(b)に示す直方体鋳型38を作製する。
それぞれの直方体鋳型38においては、その一つの平面39(2点鎖線)がピース鋳型31,32における破線で示す平面35と重なるように形成されるものである。ピース鋳型31,32における平面35は、図2に示すように、ピース金型21,22における意匠面23と反対側の背面25に対応するものであり、且つこの背面25に仕上げ加工代を付与した平面となっている。なお、直方体鋳型38におけるピース鋳型31,32の個数は、適宜変更できるものである。
図5は、以上の直方体鋳型38を鋳造定盤40上に組み立てた状態を示す。直方体鋳型38は、上述した一つの平面39が鋳造定盤40と直交し、且つ外側を向いた状態で組み立てられる。このような直方体鋳型38の組み立てにより、平面四角形状の直方体鋳型組立体41を作製する。なお、平面四角形状の直方体鋳型組立体41の内部は、バックアップ材42を充填することにより、その形状の内面からの支持を行う。また、平面四角形状の直方体鋳型組立体41の4隅部分には、ダミー鋳型43を配置する。なお、鋳造定盤40には、減圧を行うための減圧孔40aが開口されている。
図6は、以上の鋳造定盤40に対して鋳枠45を配置した状態を示す。鋳枠45は内面が四角形の四角筒状となっており、その内面が直方体鋳型組立体41を囲むように鋳造定盤40上に配置される。この場合、直方体鋳型組立体41の上面には、押え鋳枠45aが設置される。
鋳枠45は、直方体鋳型38の一つの平面39から所定距離L1離れるように配置されるものである。所定距離L1は、直方体鋳型38の一つの平面39から10〜100mmの範囲となるように設定される。L1<10mm では、ピース鋳型31,32、鋳枠45間の各ピース部分にスムーズに溶湯が流入しない可能性が高くなり、また、平面39と鋳枠45の内面間の溶湯は、ピース鋳型31,32への押湯補給路であることから、押湯効果が作用しにくくなり、ピース鋳型31,32に引け巣欠陥等の鋳造欠陥が発生し易くなるためである。一方、L1>100mmでは、上記溶湯流入、押湯補給路確保に対する改善効果増大が見込めなくなる上、溶湯の材料ロスが大きくなり過ぎるためである。
図7は、図6の工程の後の工程を示し、鋳枠45と直方体鋳型組立体41との間の空間内に溶湯46を鋳込んだ状態である。溶湯46の鋳込みに際しては、減圧孔40aから減圧を行うことにより、円滑な鋳込みを行うことができる。この鋳込みによって、ピース鋳型31,32に対応した数のピース金型21,22が作製される。
図8〜図11は、溶湯46の鋳込みの後における脱型手順を示す。直方体鋳型組立体41の内部からバックアップ材42及びダミー鋳型43を除去することにより、図8の状態から図9の状態となる。
図9の状態において、ピース鋳型31(以下、ピース鋳型31によりピース鋳型31,32を代表する)及び側面鋳型37がアルミニウム合金、鋼材等の非崩壊性材料の場合には、図9〜図11の手順で脱型する。すなわち、図9では側面鋳型37を個々に取り除き、その後、図10に示すようにピース鋳型31を順序良く脱型する。これにより、図11に示すように、ピース金型21(以下、ピース金型21によりピース金型21,22を代表する)が四角形鋳物48の内面に整列状に残された状態となる。
一方、ピース鋳型31及び側面鋳型37が石膏やセラミックス等の崩壊性材料の場合には、高圧水洗浄、アルカリ洗浄等によりピース鋳型31、側面鋳型37を除去し、必要に応じて押湯切断除去を行うことにより図11の状態とする。
図12は、図11の状態からピース金型21を切断分離する状態を示し、バンドソー等の切断具49によりピース金型21を四角形鋳物41から切り離す。切断具49による切り離しは、図14に示すように、四角形の各辺に対応した切断線49a、49b、49c、49dに沿って行う。これにより、図13に示すように、複数のピース金型21を同時に得ることができる。なお、ピース金型21の切り離しにおいては、コンターマシン、ワイヤ放電加工機等を用いることも可能である。
そして、ピース金型21の切り出しの後、ピース金型21の嵌合面24を機械加工によって切削し、リング状のタイヤ成形用金型に組み立ててタイヤの成形に用いる。
このような実施形態では、ピース鋳型21を並べて直方体鋳型38とし、この直方体鋳型38を平面四角形状の直方体鋳型組立体41となるように組み立てて鋳枠45で囲み、直方体鋳型組立体41と鋳枠45との間に溶湯46を鋳込んで鋳造するため、複数のピース金型を同時に作製することができる。これにより、ピース金型21を効率良く作製することができる。
この実施形態において、直方体鋳型38がピース鋳型31と側面鋳型37との組立体であるため、ピース鋳型31に鋳物からの抜き勾配が逆となるアンダーカット形状が存在しなければ、その材料として、鋼材等の非崩壊性材料を用いることができる。このことは、側面鋳型37についても同様である。
また、ピース鋳型31の材料としては、石膏やセラミックス等の崩壊性材料を用いても良い。さらに、ピース鋳型31を非崩壊性材料、側面鋳型37を崩壊性材料によって形成しても良く、その逆であっても良い。
この場合、ピース鋳型31、側面鋳型37のどちらかの鋳型材料に崩壊性材料を用いることがより望ましい。これは、鋳物を四角形のリング形態で鋳造する際に生じる溶湯(鋳物)の凝固,冷却収縮を鋳型の圧縮崩壊で吸収させることができ、これにより鋳物に割れ(クラック)が発生しにくくなるためである。
また、非崩壊性材料は、鋳込まれるアルミニウム合金や鉄系合金等の溶湯に対して、溶損,融着等を起さない特性を必須とすることから、実質的に金属材料であり、崩壊性材料よりも熱伝導特性が良い。このため、溶湯を意匠面側から積極的に凝固・冷却させることが可能となり、鋳造によって作製されるピース金型の強度特性,外観品質特性を向上させることができる。従って、ピース鋳型31、側面鋳型37のいづれか一方に非崩壊性材料を用いた方が鋳造欠陥対策上、良好となる。
ピース鋳型31及び側面鋳型37として、崩壊性材料を用いた場合には、脱型に代えて崩壊 除去を行えば良い。
このような実施形態では、直方体鋳型38を平面四角形に組立てることにより、平面四角形の直方体鋳型組立体41として鋳造を行う。これは、以下のメリットがある。
(1)平面鋳物で鋳造する場合に比べて、作製される鋳物にネジレ等の変形が生じにくい。図15は、平面形状の直方体鋳型に対して鋳造を行った場合を示し、この場合には、(a)で示すネジレ、(b)及び(c)で示す反りが発生し易いものとなる。そして、これらの変形に基づくピース金型の寸法特性が劣化する。これに対し、平面四角形の場合には、各辺の両端が連結されるため、同じ肉厚でも平面鋳物の場合よりも断面係数が増大して変形が起こりにくいものとすることができる。
(2)平面が他の多角形(三角形、五角形、六角形…)の場合に比べ、ピース鋳型21や側面鋳型37を作製された鋳物から脱型するためのダミー鋳型43の形状の設定が簡易となる。図16は三角形鋳型とした場合、図17は6角形鋳型とした場合を示し、いずれもダミー鋳型43として、ピース鋳型を脱型できるような複雑な形状とする必要がある。
(3)押湯切断やピース金型21切断の作業段取り(すなわち、切断位置決めや位置変え)を容易に行うことができる。
[第2実施形態]
図18〜図23は、本発明の第2実施形態を示す。この実施形態では、図18に示すピースゴム型50を用いてピース金型21を作製するものである。
ピースゴム型50は、ピース金型21(図1参照)における意匠面23に対応した意匠対応面51と、嵌合面24の形状に対応した嵌合対応面52と、意匠対応面51と反対側の背面53とを有している。ピースゴム型50における背面53は、第1実施形態と同様に、ピース金型21における意匠面23と反対側の背面25に対応するものであり、且つこの背面25に仕上げ加工代を付与した平面となっている。
このようなピースゴム型50は、図19に示すように、複数が定盤55上に間隔を有して並べられる。この場合、ピースゴム型50は、加工代を付与した背面53が定盤55と接触するように並べられる。その後、図20に示すように、定盤55に枠体56を載置することにより、定盤55上のピースゴム型50の周囲を囲む。枠体56としては、内面が四角形の四角筒状のものが用いられる。
図20の状態に対し、枠体56内に崩壊性の鋳型材料60を注型する。鋳型材料60は、硬化前のスラリー状となっており、注型の後、硬化することにより、連続構造体である一つの崩壊性の直方体鋳型57が作製される。この直方体鋳型57には、ピースゴム型50を反転した形状の成形部58が複数形成されている。
図21は、この実施形態における直方体鋳型57を示し、図3(b)で示すと同様に、その一つの平面59(2点鎖線)が各成形部58の平面58a(破線)と重なるように形成されている。
その後は、第1実施形態と同様に、崩壊性の直方体鋳型57を鋳造定盤(図示省略)上に組み立てる。直方体鋳型57は、上述した一つの平面59が鋳造定盤と直交し、且つ外側を向いた状態で組み立てられ、これにより、平面四角形状の直方体鋳型組立体61を作製する(図22参照)。そして、直方体鋳型組立体61の周囲を内面が四角形の鋳枠(図示省略)によって囲み、直方体鋳型組立体61と鋳枠との間の空間に対して溶湯を鋳込むことにより、複数のピース金型21を作製する。
図22は、鋳込みによって作製された四角形鋳物62を示し、4隅部分にダミー鋳型が不要となっている。図23は、ピース金型21の脱型を示し、崩壊性の直方体鋳型57に対してノズル63から高圧水64を噴き付けて直方体鋳型57を除去することができる。これにより、内面に複数のピース金型21が形成された四角形鋳物62が得られるため、第1実施形態と同様に、切断を行うことにより、複数のピース金型21を同時に得ることができる。
このような実施形態では、注型法によって鋳型を作製するため、鋳型材料は必然的に崩壊性材料となる。また、第1実施形態と異なり、一つの直方体鋳型57が連続構造体であることと、直方体鋳型57が崩壊性材料であることから、直方体鋳型57を四角形に組立てる際に、ダミー鋳型が不用となるメリットがある。
すなわち、第1実施形態では、直方体鋳型38が組立て品であるため、鋳造時に鋳型の背面からバックアップ材を介して減圧吸引するに際して、各直方体鋳型37の背面の少なくとも一部がバックアップ材42と接触していなければならないと共に、非崩壊性鋳型を用いた場合の脱型時に、四角形鋳物から全てのピース金型21を脱型可能な状態に保っておかなければならない。このため、直方体鋳型37を四角形に組立てる際の四隅部に、ダミー鋳型43を設置しなければならないと言う制約が生じる。これに対して、この実施形態では、直方体鋳型57が連続構造の一体となっているため、直方体鋳型57の少なくとも一部がバックアップ材42と接触していれば良く、しかも鋳型材料が崩壊性であるため、脱型の際にも四角形鋳物62からのピース金型21の脱型を考慮する必要がないためである。
従って、この実施形態では、ダミー鋳型を配置する必要がなくなった分だけ、四角形鋳物62の大きさを小さくすることができ、ピース金型21の生産性を向上させることが可能となる。
[第3実施形態]
図24〜図28は、本発明の第3実施形態を示す。この実施形態では、第1実施形態における直方体鋳型38及び第2実施形態の直方体鋳型57を鋳造定盤40に組み立てる配向性を示すものである。
図24及び図25は、第1実施形態に用いる直方体鋳型38を示し、ピース鋳型31と側面鋳型37と接合することにより直方体鋳型38が作製される。作製された直方体鋳型38を鋳造定盤40上に組み立てる際には、図24に示すように、ピース鋳型31の長手方向(すなわち、ピース金型21の長手方向)Mが鋳造定盤40から直立するように配置するものである。
図26は、第2実施形態に用いる直方体鋳型57を示し、図24及び図25と同様に、ピースゴム型50から反転されて形成された成形部58の長手方向(すなわち、作製されるピース金型21の長手方向)Mが鋳造定盤40から直立するように配置するものである。
図27及び図28は、このような配置の作用を示すものであり、図27はこの実施形態における配置であり、鋳造定盤40に対してピース鋳型31が直立するように配置されている。これに対し、図28はピース鋳型31を鋳造定盤40に対して平行に配置した場合を示す。これらの図において、矢印65は鋳込まれた溶湯46の凝固方向を示し、符号66は、該当断面での溶湯の内、同一時間で凝固完了する点を結ぶことにより定義される等凝固時間曲線を示す。
鋳型材料として、石膏等の熱伝導率の低い材質を用いた場合、溶湯46の凝固は、鋳枠45側から押湯67側にかけて進行していく。なお、重力鋳造では、下から上への凝固,低圧鋳造では押湯67に相当する部分が下に配置されるため、上から下への凝固形態となるが、図27及び図28は重力鋳造の場合を示すものである。
この実施形態の場合には、図27に示すように、一つの等凝固時間曲線66とピース鋳型31との間で閉塞空間が形成されにくいため、ピース鋳型31表面各部への押湯67側からの溶湯補給効果が十分発揮され易い。これに対し、図28の場合には、一つの等凝固時間曲線66とピース鋳型31との間で閉塞空間が形成される可能性が高くなり、この部位に引け巣68等の欠陥が発生しやすくなる欠点を有している。
以上の第1〜第3実施形態では、ピース金型をその辺部分で連結している四角形鋳物48,62には、以下の機能が存在する。
(1)複数のピース金型21を一回で鋳造でき、鋳造時に各ピース金型21へ溶湯充填できる湯道
(2)溶湯凝固時の各ピース金型21の凝固収縮分に押湯を供給する補給路
(3)溶湯凝固、冷却時のピース金型21の反りやネジレ等の変形の発生を極小化する拘束具
(4)複数個のピース金型21をまとめて切断加工できる連結具
これらの実施形態では、見かけ上、鋳物としての材料ロスが大きく、無駄が多い鋳造のように捉えられるが、上記4つのメリットのある機能の方が遥かに大きいものとなっている。従って、ピース金型として、ピース幅が小さく、ピース高さが高く、意匠面のデザイン が深い(すなわち、骨高さが高い)場合に極めて有用な発明である。
[第4実施形態]
図29〜図40は、本発明の第4実施形態を示す。
図29(a)及び(b)は、以上の第1〜第3実施形態によって作製されたピース金型21,22をそれぞれ示す。この実施形態では、各ピース金型21,22を円周方向の展開長が鋳放し状態で目的寸法よりも寸法Δだけ大きくなるように作製する。すなわち、図29におけるピース金型の必要形状70に対し、必要形状70よりも幾分大きくなるようにピース金型21,22(以下、ピース金型21)を作製するものである。
図30は、図29におけるX断面を示し、必要形状70に対し、外側に余肉71が形成されることにより必要形状70よりも大きくなっている。同図(a)は、嵌合面の全面に余肉71を形成し、(b)は部分的に余肉71を形成した場合であり、いずれも余肉71の寸法Δは、0.02〜0.15mm程度に設定されるものである。
余肉部71の寸法Δを0.02〜0.15mmの範囲とするのは、以下の理由によるものである。
(1)鋳造製法を用いても、この範囲内であれば、その寸法を確保することができる。また、ピース金型を細かくピース分割すればするほど形成し易くなる。
(2)0.02mm未満の場合、ピース金型21の間に隙間が発生し場合に、後述する熱間矯正を行っても、充分に隙間をなくすことができなくなる。
(3)0.15mmを超える場合、後述する熱間矯正によってピース金型間を噛み潰そうとしても、Δの全量分を噛み潰すことができなくなる。また、強引に噛み潰した場合、該当分の材料逃げによりピース金型21の意匠面に凹凸が発生して好ましくない。
ピース金型21の嵌合面への余肉Δの設定は、図30(a)のように嵌合面の全面に設定しておいても良いが、(b)で示すように、意匠面から1〜10mmの距離の範囲内に留めておく方がより望ましいものである。これは、後述する熱間矯正時のピース金型21の嵌合面の噛み潰しを促進できるためである。また、余肉71を意匠面から1〜10mmとするのは、1mm未満の場合、ピース金型21の嵌合面間の保持を充分に行うことができず、強度不足となり、10mmを超える場合、噛み潰しの促進効果が薄れるためである。
図31及び図32は、以上の条件で作製されたピース金型21をリング状となるように仮組み立てしてピース金型組立体73とした状態を示す。ピース金型21は所定のピッチ配列で、隣接ピース間で嵌合面24が相互に接触し、且つリングとして真円度状態が良くなるように、360°の全周に渡って仮組立てする。この仮組立では、ピース金型21の嵌合面に余肉(Δ/2)を付与してあるため、組立てが終わったリング状ピース金型21の内径は、製品として必要な寸法φDFよりも大きいなφDAとなる。すなわち、ピース金型21嵌合面の余肉の厚さをΔ/2(mm)、円周方向のピース金型21の接合数をN個とした 場合、{φDA−φDF}の理論数値は、{Δ×N÷π}で表わされる。
このようにして仮組立てしたリング状のピース金型組立体73の内部に対し、図33及び図34に示すように、ピース固定材74を充填して仮固定する。ピース固定材74としては、後述する加熱に耐えられ、且つ適度な強度と崩壊性を有した材料が良好であり、例えば、石膏材、水ガラス混練砂等を使用することができる。なお、このとき、ピース金型21の上下端部の基準径部(意匠面から外れた部位)に対し、直径φDFの外径を有し、ピース金型21よりもヤング率及び降伏強度の高い材質からなる内径収縮止めリング75を配置しておく事が望ましい。符号76は、ピース固定材74の内部に設置された固定材肉盗みリングである。また、ピース金型21と内径収縮止めリング75の間に対しては、ピース固定材74は充填しないことが好ましい。
図35〜図38は、仮組み立てしたリング状のピース金型組立体73を拘束リング77によって囲んだ状態を示す。拘束リング77としては、内面が円形となった円形筒状に成形されており、材料としては、ピース金型よりも熱膨脹率が小さく、降伏強度の高い材質が使用される。また、拘束リング77の内面とピース金型組立体73の背面との間が距離10〜100mmとなるように拘束リング77が配置される。距離が10mm未満では、後述する充填材を均一に充填しにくく、100mmを超える場合には、充填材のロスが多くなり過ぎる上、拘束リング77による拘束力が損なわれる可能性が高まるためである。
拘束リング77を配置した後、拘束リング77とピース金型組立体73との間に充填材を充填する。図35及び図36は、充填材として、金属粉78を充填した場合であり、金属粉78の後、図36に示すように、充填部分を金属板等の蓋79によって塞ぐ。これにより、後述する熱間矯正時に金属粉78が開放面に材料逃げを起こすことを防止する。
充填される金属粉78に材質上の制約は特にないが、後述する熱間矯正時の加熱でも溶融,焼結されることがない材質であることが望ましい。従って、ピース金型21がアルミニウム合金の場合には、各種鋼材の粉末や、銅合金,アルミニウム合金の粉末が使用可能となる。また、金属粉78の粒径は特に限定しない。充填率が高まるものであれば、いかなる条件でも良いためである。すなわち、特定の粒径のものを選択して用いるのではなく、広い粒度分布となっている金属粉を用いた方が良好であり、例えば、粒径で0.1〜10mm程度の金属粉を混合して使用することができる。
図37及び図38は、充填材として金属溶湯80を充填した場合である。充填材が金属溶湯80の場合、その融点がピース金型21の融点以下の低融点の必要がある。また、円周方向に連続しないように、耐熱ボード等の間仕切り板81で分断した形態となるように充填する。これは、金属溶湯80の凝固冷却時の収縮により、予測不可能なピース金型21の円周方向収縮力を発生させることを避けるためである。
充填材の充填の後、加熱による熱間矯正を行う。図39は、熱間矯正の状態を示し、ヒータ84を備えた加熱炉83内で加熱保持する。この加熱保持では、ピース金型21と拘束リング77の間の熱膨張率差を利用することにより、ピース金型21の嵌合面の余肉Δ/2を噛み潰しながら、所定のリング直径となるように矯正するものである。
この場合の加熱温度は、Δの値とピース金型21の円周方向の接合数Nにも依存するが、概ね100〜400℃である。100℃未満では、ピース金型21と拘束リング77の間の熱膨脹率差を用いても、充分な噛み潰し効果が得られない上、加熱により圧縮降伏強度が殆ど低下しないため、ピース金型21自体の圧縮降伏もさせにくいためである。400℃を超えると、熱間矯正後におけるピース金型21自体の強度特性が劣化する上、拘束リング77等の酸化損傷も大きくなるためである。
理論的に必要とされる加熱温度T(℃)は、以下の式で近似計算することができる。
T(℃)=25(室温:℃)+(φDA−φDF)/{(αP−αR)×φDA}
αP : ピース金型21の室温から加熱温度までの熱膨脹率(%)
αR : 拘束リング77の室温から加熱温度までの熱膨脹率(%)
φDA : 熱間矯正前のピース金型組立体73の内径の代表値
φDF : ピース金型組立体73の内径の代表値の目的寸法である。
なお、(φDA−φDF)=(Δ×N÷π)ともなる。
実際には、ピース金型21の圧縮降伏強度を超えた分だけが、熱間矯正される形となるため、上記式で求められる理論加熱温度だけでは充分な矯正ができない場合が多い。このため、この数値より高めの設定をすることが良好である。
加熱時間の設定は、ピース金型21、拘束リング77間の熱膨脹率差、代表直径の値等によって異なってくるため、一義的に設定できないが、概略2〜12時間の加熱で一回の熱間矯正が完了させることできる。
また、一回の熱間矯正で目的の直径まで矯正できなかった場合、例えば、ピース金型21、内径収縮止めリング75の間に許容公差を超える隙間が残っていた場合には、再度熱間矯正を行う。この再熱間矯正の前には、金属粉78や金属溶湯80の充填材を充填し直しても良い。
以上により、熱間矯正が完了した後、充填材78,80、ピース固定材74を除去し、矯正されたピース金型21を回収する。
図40(a)〜(d)は、熱間矯正される状態を示す。リング状に仮組立てられたピース金型21の間には、熱間矯正前の時点で、(a)で示すように、嵌合面に付与した余肉Δ/2と、ピース金型21の鋳造歪み等に起因して発生する隣接ピース金型21の間の形状不整合による隙間C1,C2,…(これは、各ピース間によって異なる)が存在するため、ピース金型21の間の円周方向展開寸法には、それぞれ余剰寸法Δ+C1,Δ+C2,…が存在している。この中で、隙間C1,C2を余肉Δ(隣接ピース金型間の余肉の和)を利用して補充するのが熱間矯正である。
熱間矯正後におけるピース金型21の嵌合面には、図40(b)で示すように、そのプロファイル面上に、余肉Δ/2を噛み潰したことに起因した材料逃げ分の突起85ができる場合が多い。この材料逃げ突起85に対しては、(c)で示すように、スクレイパー等の修正工具86を用いて削り取り、正規のプロファイル面形状に仕上げる。これにより、(d)で示すように、この実施形態の作業が完了する。
以上の一連の作業によって、円周方向のピース金型21相互の嵌め合わせに関する嵌合面を、機械加工を行うことなく、且つ、ピース金型21をリング状に組立てた際に、所定の直径許容公差内に納めた状態で隙間なく仕上げることが可能とある。
その後においては、再度、ピース金型21をリング状に組立てた状態で仮固定し、背面、上下面を旋盤等で機械加工し、バックモールド9(図69参照)に組み込んで固定することにより、タイヤ成形用金型が完成する。
このような実施形態では、単にピース金型21の鋳放し組立てを行った場合における鋳造製法に起因した各反転工程での寸法バラツキ、鋳造収縮バラツキが生じ、所定の内径にピース金型を組立てようとしたときに ピース金型21間に隙間が生じたり、ピース金型21が干渉し合って、リング状に組み立てたときに、所定の内径に納まらない不都合を解消することができる。また、加工が困難なピース金型21の嵌合面に対する機械加工の手間を不要とし、比較的対応が簡易なバックモールド9の嵌合面のみを機械加工するだけで良くなる。
[第5実施形態]
図41〜図50は、本発明の第5実施形態を示す。この実施形態では、第4実施形態におけるピース金型21と拘束リング77と間に充填材を充填する際に、仕切り板81(図37参照)を用いることなく、金属溶湯を鋳込むことにより、鋳込まれた金属溶湯の凝固・冷却収縮力を利用してピース金型21の嵌合面を噛み潰し矯正してピース金型21の間の隙間をなくすものである。
図41及び図42は、この実施形態による組み付け状態を示し、図37及び図38と異なり、金属溶湯80が円周方向で連続するようにピース金型組立体73と拘束リング77との間に充填されている。この状態で、第4実施形態と同様に、加熱保持することにより、熱間矯正を行うものである。
ピース金型21の直径収縮量をコントロールする方法は、金属溶湯80の材質変更による溶湯の凝固・冷却収縮特性変化の利用または金属溶湯80の肉厚変更により発生する凝固・冷却収縮力の変化の利用によって行うことができるが、一義的に定義することはできない。また、一回の鋳込み矯正で、所定の直径許容公差内に納める事ができなかった場合には、更に一回り大きな拘束リング(鋳枠)によって囲み変えて、再度鋳込み矯正を行って対応しても良い。
次に、図43〜図50により、この実施形態の工程を説明する。この実施形態では、拘束リング77として、ピース金型組立体73から離れるのにつれて(上方に向かって)、径が漸減するテーパ形状の内面を有する構造を使用するものである。
図43に示すように、拘束リング77とピース金型組立体73との間にピース金型21よりも低融点の金属を溶湯状態(金属溶湯80)で鋳込む。この鋳込んだ金属80の凝固収縮によってピース金型21の間を圧縮降伏させてピース金型組立体73を所定の直径に矯正すると共に、ピース金型21間の隙間を矯正する。
図44は、この鋳込み矯正を行っても、直径矯正が不充分であった場合を示し、拘束リング77とピース金型組立体73との間に隙間88が残存すると共に、ピース金型21と内径収縮止めリング75殿間に隙間89が残存する。この場合には、図45に示すように、嵩上げ台90を用いて、隙間88,89がなくなる状態までピース金型組立体73を上方にシフトさせる。
そして、図46に示すように、加熱炉83内で第4実施形態と同様な加熱保持を行って熱間矯正を行う。なお、図45及び図46の工程は、繰り返すことが可能である。
以上によって、所定の強制が終了した後は、図47に示すように、拘束リング77、定盤72、嵩上げ台90等を取り外し、その後、図48に示すように、鋳込み材(凝固冷却後の金属溶湯80)を取り外すための切り込みを外周部の4〜8等分位置に行う。この切り込みは、コンターマシン等の切断工具91を用いることにより簡単に行うことができる。このとき、ピース金型21の背面に切断工具91の刃が当たらないように行う。
その後、図49に示すように、切り込み部92を介して鋳込み材80を割って、ピース金型組立体72から分離し、図50に示すように、ピース金型21を回収する。ピース金型21の回収は、ピース固定材74を崩壊させることにより行うことができる。得られたピース金型21は、円周方向の嵌合面の隙間が矯正された状態となっている。
なお、以上の鋳込み矯正+熱間矯正を行う際に使用する拘束リング77の材質としては、ピース金型21と鋳込み材(あとから充填する金属溶湯80の凝固材)よりも熱膨脹率が小さく、かつ降伏強度の高い材質を選択することが良好である。
[第6実施形態]
この実施形態では、第4実施形態及び第5実施形態に対するさらなる改良を行うものである。
すなわち、第4及び第5実施形態では、ピース金型21の背面に直に充填材を接触させるか、充填材が附着しないための離型剤、離型シート等の殆ど強度を持たないものを介して接触させる形態となっている。このため、熱間矯正や鋳込み矯正時に、ピース金型21の背面に直接圧力(ほぼ等分布圧)が作用する。
この矯正中において、円周方向の嵌合面を圧縮塑性変形させながら、ピース金型組立体73が内径を小さくして行く課程で、内径が必要充分に縮小され、内径収縮止めリング75と接触した以降も、依然として、ピース金型21の背面に圧力が作用することがある。すなわち、熱間矯正では、加熱温度設定が高すぎた場合や、鋳込み矯正では、鋳込み材の収縮特性が大きすぎる、若しくは鋳込み材の肉厚が厚すぎた場合、図53に示すように、ピース金型21の内径収縮止めリング75が接触している部位では、内径収縮止めリング75の存在により内径収縮はほぼ止まるが、内径収縮止めリング75から外れた部位が、内径を更に縮小させ続けることが発生する。これにより、ピース金型21の意匠面の直径や、タイヤ幅方向の曲面形状の不具合に直結する。
図51及び図52は、これを解決するための本実施形態の構造を示し、ピース金型組立体73の背面に対して背面変形防止板94を配置するものである。背面変形防止板94は、ピース金型21よりもヤング率及び降伏強度特性の高い材質が使用されていると共に、ピース金型21の肉厚と同等程度の厚みを有している。この背面変形防止板94を配置することにより、背面変形防止板94を介して背面圧力がピース金型21に均一に作用するため、ピース金型21の部分的な径縮小を防止することができる。
[第7実施形態]
図54〜図58は、本発明の第7実施形態を示す。
この実施形態では、第4及び第5実施形態によるピース金型21の作製の際に、ピース金型21の間に空気抜きスリットを形成するものである。すなわち、第4及び第5実施形態では、ピース金型21の嵌合面を隙間なく矯正するものであるが、この方法によって、ノンスピュータイプのタイヤ成形用金型を製造する場合には、ピース金型21間の嵌合面の随所に、制御された幅寸法の隙間(空気抜きスリット)が存在しなければならない。この実施形態では、第4実施形態及び第5実施形態と共に、この隙間を機械加工を用いずに付与するものである。
この実施形態では、ピース金型組立体73を形成する際に、図54に示すように、薄板状のシム95を空気抜きスリットが必要とされる部位に挟み込む。シム95としては、ピース金型21よりも降伏強度が高い材質が使用される。また、シム95の板厚は、該当するスリット厚Tと同じ肉厚となっている。この場合、ピース金型21の嵌合面は、意匠面から1〜10mmの範囲内とし、この部分から背面側に対して、W≧T/2となる逃がし代Wを設定した上で、余肉Δ/2を設定しておく。このように設定することにより、後述する矯正によるシム95の噛み潰しにより空気抜きスリットを形成する際にシム95の材料排出を容易に行うことが可能となる。
次に、図55に示すようにシム95をピース金型21の間に挟持する。この挟持状態に対し、第4実施形態または第5実施形態によりピース金型21の矯正を行う。
ピース金型21の矯正の後、図56に示すように、ピース金型21を分離してシム95を取り出す。そして、図57に示すように、ピース金型21を再度リング状に組み立てる。このとき、ピース金型21の嵌合面にはシム95との押圧により材料逃げ突起96が形成されているため、図57に示すようにスクレイパー等の修正工具86を用いて材料逃げ突起96を削り取り、形状仕上げを行う。
図58は、材料逃げ突起96を削り取った後の状態を示し、隣接するピース金型21の間には、寸法Tの空気抜きスリット97が形成されている。
このような実施形態では、ピース金型21に対する矯正と同時にピース金型21に対して空気抜きスリット97を形成することができる。従って、ノンスピュータイプのタイヤ成形用金型に適したものとすることができる。また、この実施形態では、第4実施形態及び第5実施形態を行う際に、空気抜きスリット97を同時に形成することができるため、鋳出しでスリットを形成するのに比べて、鋳造収縮等による寸法バラツキの発生によるスリット寸法のバラツキがなくなるメリットがある。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。図59は、以下の全ての実施例に共通して用いたタイヤ成形用金型100を示す。
このタイヤ成形用金型100は、タイヤサイズ205/65R15用のセクショナルモールドタイプのタイヤ成形用金型であり、Sピッチが11個、Mピッチが13個、Lピッチが12個のピッチ数となっており、サイプブレードは取り付けられない構造となっている。また、ピース金型21を1リングにつき72ピース組み立てることにより構成される。図59の数値は、各部をmmで示すものである(以下、図61〜図65までの数値も同様である。)。
ピース金型21は、石膏鋳造法によって作製されるものであり、設定収縮率11〜15/1000となっており、石膏材料としては、商品名G−6(ノリタケジプサム(社)製)の非発泡石膏を60重量%の混水率で調合したものを使用した。また、ピース金型21の鋳造用合金としては、AC4C合金(7%Si、1%Cu、0.5%Fe、0.4%Mg、残Al)を用い、重力鋳造法により作製した。
(実施例1)
図60及び図61は、実施例1を示す。図60に示すように、一つの直方体鋳型38に対し、5ピース分のピース鋳型(石膏)31を嵌め込み、挟み込まれる側面鋳型32は鋼材(S50C)の切り出し品を用い、直方体鋳型38の両端部となる側面鋳型には石膏から切り出したものを用いた。この一つの直方体鋳型38の寸法は、W320×H260×D130mmである。
この直方体鋳型38を8個用い、4隅にダミー鋳型(石膏)43を配置して図61に示すように四角形に組立て、外形1000mm角の四角形鋳物として鋳造した。この方式で2リング鋳造することにより、80ピース分のピース金型21を作製した。また、ピース金型21は、その嵌合面に3mmの仕上げ加工代を付与したものとした。
以上のようにして作製したピース金型21は健全なもので、機械加工によって寸法精度良く、セクショナルモールドとすることができた。
(実施例2)
図62及び図63は、実施例2を示す。この実施例では、図62に示すように、一つの直方体鋳型57に6ピース分の成形部58を合い込めした状態の石膏鋳型を注型法により製作した。直方体鋳型57の寸法は、W320×H260×D130mmとなっている。
この直方体鋳型57を8個用いて図63のように四角形に組立て、外形950角の四角形鋳物として鋳造した。この方式で2リング鋳造することにより、96ピース分のピース金型を作製した。この場合、図61に示すように、ピース金型21の嵌合面における意匠面側から約5mmの範囲まで余肉をΔ/2=0.5mm付与し、それよりも背面側は、W=0.5mmの逃がし形状となるように作製した。
この実施例では、実施例1のようにダミー鋳型を配置する必要がなく、その分、実施例1よりも小さな外形の四角形鋳物とすることができたと共に、1リング当りのピース合い込め数も8ピース増量することが可能となった。
以上のようにして作製したピース金型21は健全なもので、後述の実施例3の熱間矯正によって寸法精度良く、セクショナルモールドとすることができた。
(比較例1)
この比較例では、実施例2において、直方体鋳型を図28のように、ピース金型21の長手方向(タイヤ幅方向)が鋳造定盤40と平行(四角形の一辺と平行)となるように組立て、外形750角の四角形鋳物として1リング分鋳造した。その結果、全48ピース中、18ピースの嵌合面に引け巣欠陥が発生した。
(実施例3)
図64及び図65は、実施例3を示す。この実施例では、実施例2で作製したピース鋳物21の背面部を、仕上げ加工代が残る状態でフライス盤により平面加工し、その後、幅10mm、長さ30mm、厚さ0.04mmのSK−3材(工具鋼)からなるシム95を、嵌合面24の随所に一つの嵌合面24当りに5枚配置し、瞬間接着剤で仮固定した。
そして、1セット分(72ピース)のピース金型21を所定のピッチ配列で、真円度が最も良くなる様に外径φ1000mm、厚さ40mmの鋼材(S50C)からなる定盤72上で、リング状に仮組立てしたところ、ピース金型組立体73は上下基準径の部位でφ590.7mmとなった。すなわち、目的の直径より3.7mm大きい状態となった。なお、ピース金型21をリング状に組立てる前に、ピース金型21の嵌合面24には、白灯油により適度な粘性に希釈したワセリンを薄く塗布し、リング状に組立て後に、ピース金型間に隙間がない状態とした。
このリング状のピース金型組立体73の上下基準径部に、外径φ587mm、内径500mm、高さ30mmのS50Cからなる内径収縮止めリング75を配し、ピース金型組立体73の内部に外径φ450mm、内径φ420mm、高さ260mmの固定材肉盗みリング76を配置した状態で、ピース固定材74としてUSG製ハイドロパーム発泡石膏(混水率100重量%,発泡率80容積%)を充填・硬化させることにより、ピース金型21を仮固定した。
また、ハイドロパーム発泡石膏を充填する前には、ピース金型21と内径収縮止めリング75との間には、予めワセリンを充填しておき、石膏材が侵入しないようにした。
さらに、リング状に組立てたピース金型組立体73の背面に、高さ260mm、厚さ20mmで、幅寸法は各ピース金型21の背面を90%程度覆い隠すことが可能な寸法(概略25〜45mm)の鋼材(S50C)製の背面変形防止板94を設置し、水ガラス系の接着剤で仮固定した。
そして、その外周を上側内径φ820mm、下側内径φ880mm、肉厚60mmの上下開放型のテ−パ形状の球状黒鉛鋳鉄(FCD600)製の拘束リング77で囲み、隙間にアルミニウム合金(AC4C)からなる溶湯80溶湯を充填、凝固させた。これにより、鋳込み矯正法を実施した。
後から鋳込んだ溶湯が凝固し、室温まで冷却した後、ピース金型21の上側基準径部と内径収縮止めリング75間の隙間を計測した所、約0.5mmの隙間が残っていた。そこで、拘束リング77を取り外し、リング状ピース金型組立体73と定盤72の間に、外径φ780mm、厚さ30mmの嵩上げ台を設置し、再度拘束リング77で囲み、後から鋳込んだAC4C鋳物部と接触する状態で定盤72及び拘束リング77の間を鋼材製ボルトで固定し、全体を加熱炉内で300℃×5時間保持することにより熱間矯正し直した。この再矯正により、リング状のピース金型組立体73を室温まで冷却した後、ピース金型21の上側基準径部と内径収縮止めリング間の隙間は殆どなくなっていた。
その後、後鋳込みのAC4C鋳物部にコンタ-マシンで切り込みを8箇所入れ、ハンマーで割り取り、ピース金型21を取り出し、シム95も取り外した。
このようにして得られたピース金型21を再度リング状に組立てたところ、シム95を挟み込んだ部位にだけ0.04mm程度の隙間が形成されており、その他の部位は密着した状態で、且つ各部の内径も、目的の寸法に対し、直径で−0.1〜−0.2mm程度の範囲内(許容公差内)に納まっていた。これにより、ピース金型21の直径、嵌合面合わせ、空気抜きスリット形成を機械加工なしで行うことができた。