JP4217195B2 - 等速ジョイント - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、自動車の駆動力伝達部において、一方の伝達軸と他方の伝達軸とを連結させる等速ジョイントに関する。
従来より、自動車の駆動力伝達部では、一方の伝達軸と他方の伝達軸とを連結し回転力を各車軸へと伝達する等速ジョイントが用いられている。
この種の従来技術に係る等速ジョイントとして、例えば、非特許文献1には、継手軸(駆動シャフト及び被駆動シャフト)上において、継手中心の両側に等距離だけオフセットして配置されたアウタレースのボール溝中心とインナレースのボール溝中心とを有するツェッパ型等速ジョイントが開示されている。
このツェッパ型等速ジョイントでは、前記アウタレースのボール溝と前記インナレースのボール溝との相対的動作によって、保持器に保持された6個のボールが等速面又は継手軸間の二等分角面上に位置することにより、駆動接点が常に等速面上に維持されて等速性が確保されるとしている。
この場合、非特許文献1には、アウタレースのボール溝(案内溝)とボールとの負荷側接触点の共通法線と、インナレースのボール溝(案内溝)とボールとの負荷側接触点の共通法線とのなす角度であるくさび角を約15度〜17度に設定することが記載されている。これは、ツェッパ型等速ジョイントがジョイント角0度前後で偏角動作をする場合、摩擦によるボールのロックを防止するためである。
また、非特許文献1では、一般的に使用されるボール溝の断面(継手軸と直交する方向の断面)が円弧形状又は楕円弧形状に形成され、楕円弧形状のボール溝におけるボールとの接触角度は30度〜45度に設定され、最も一般的に採用されている接触角度は45度であることが記載されている。
また、特許文献及び特許文献には、アウタレース、インナレース、8個のボール及び保持器によって構成され、アウタレースの案内溝(トラック溝)の溝底が曲線状になった部位の中心が内径面の中心に対して、インナレースの案内溝(トラック溝)の溝底が曲線状になった部位の中心が外径面の中心に対して、それぞれ、軸方向に等距離(F)だけ反対側にオフセットした固定型等速自在継手が開示されている。
前記特許文献では、オフセット量(F)と、アウタレースの案内溝の中心又はインナレースの案内溝の中心とボールの中心とを結ぶ線分の長さ(PCR)との比R1(=F/PCR)を、0.069≦R1≦0.121の範囲内に設定することが記載されている。
さらに、前記特許文献では、オフセット量(F)と、アウタレースの案内溝の中心又はインナレースの案内溝の中心とボールの中心とを結ぶ線分の長さ(PCR)との比R1(=F/PCR)を、0.069≦R1≦0.121の範囲で、且つ各案内溝とボールとの接触角を37度以下に設定することが記載されている。
特開平9−317784号公報 特開2003−4062号公報 チャールズ・イー・コーニー・ジュニア(Charles E. Cooney,Jr)編、「UNIVERSAL JOINT AND DRIVESHAFT DESIGN MANUAL ADVANCES IN ENGINEERING SERIES NO.7」、(米国)、第2版、THE SOCIETY OF AUTOMOTIVE ENGINEERS,INC. 1991年、p.145−149
ところで、アウタレースのボール溝とインナレースのボール溝とで形成されるボールトラックは、アウタレースの開口部の奥部側から開口部側に向かって軸方向に徐々に広がったくさび状に形成される。従って、アウタレース側及びインナレース側のそれぞれのボール溝が継手中心に対して等距離だけオフセットされた位置にあるため、両ボール溝の深さは軸方向において均一ではない。
前記非特許文献1に開示された構造では、アウタレース及びインナレースのそれぞれのボール溝の深さが浅くなるため、高作動角時や高負荷時に、ボールの接触楕円が前記ボール溝から外れて該ボール溝の肩部(端部)に乗り上げたり、あるいはボール溝の肩部の欠けや摩耗等が発生し、耐久性が劣化するというおそれがある。さらに、高負荷が付与されたときにボール溝とボールとの接触位置がインナリングの端部に近接し、接触楕円のはみ出しが発生して該ボール溝に対する接触面圧が大きくなることが想定される。
また、前記特許文献では、オフセット量(F)と、アウタレースの案内溝の中心又はインナレースの案内溝の中心とボールの中心とを結ぶ線分の長さ(PCR)との比R1(=F/PCR)を所定値に設定することが開示されているが、この場合、ボールの直径を小さく設定したり、等速ジョイント自体をより小型化して強度的に最弱な部品である保持器の肉厚を確保しようとすると、必然的にアウタレース及びインナレースの案内溝の深さが十分に確保されず、前記のように案内溝の肩部の欠けや摩耗等が発生するおそれがある。
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、案内溝の肩部の欠けや摩耗等の発生を防止すると共に、ボールとの接触による案内溝に対する面圧を低減して耐久性を向上させることが可能な等速ジョイントを提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、相交わる2軸の一方に連結され、球面からなる内径面を有すると共に軸方向に延在する複数の第1案内溝が形成され、一端部が開口するアウタ部材と、
前記2軸の他方に連結され、軸方向に延在し前記第1案内溝と同数の第2案内溝が形成されたインナリングと、
前記第1案内溝と前記第2案内溝との間で転動可能に配設され、トルクを伝達するボールと、
前記ボールを収納する保持窓が形成されたリテーナと、
を備える等速ジョイントにおいて、
前記アウタ部材に形成され軸方向に沿った縦断面が曲線状からなる第1案内溝の曲率中心(H)と前記インナリングに形成され軸方向に沿った縦断面が曲線状からなる第2案内溝の曲率中心(R)とは、前記球面中心(K)からそれぞれ軸方向に沿って反対側に等距離(T)だけオフセットした位置に配置され、
前記ボールの直径(N)と前記第1及び第2案内溝のオフセット量(T)とは、その比(T/N)をVとして、0.12≦V≦0.14の関係式を充足するように設定されることを特徴とする。
本発明によれば、ボールの直径Nと第1及び第2案内溝の曲率中心(H、R)のオフセット量Tとの比V(T/N)を前記関係式(0.12≦V≦0.14)を充足するように設定することにより、前記第1及び第2案内溝の端部に形成された肩部の乗り上げ又は欠けや摩耗等の発生を好適に防止して、等速ジョイントの耐久性を向上させることができる。
この場合、前記ボールの直径Nとオフセット量Tとの比Vが0.12未満であると第1案内溝と第2案内溝とによって形成されるくさび角が極小状態となり、非回転動作時におけるボールのロック状態が発生し易くなり、組み付け時の作業性が悪化する。一方、前記ボールの直径Nとオフセット量Tとの比Vが0.14を超えると第1及び第2案内溝の深さが浅くなってしまうため、第1及び第2案内溝の端部に形成された肩部の乗り上げ又は欠けや摩耗等の発生を阻止することが困難となる。
さらに、前記アウタ部材に形成された第1案内溝を、軸方向と直交する横断面が単一の円弧形状からなり前記ボールと1点で接触するように形成し、前記インナリングに形成された第2案内溝を、軸方向と直交する横断面が楕円弧形状からなり前記ボールと2点で接触するように形成することにより、従来技術と比較して、ボールとの接触による第1及び第2案内溝に対する面圧を低減して耐久性をより一層向上させることができる。
この場合、前記第1案内溝の横断面における溝半径(M)及び第2案内溝の横断面における溝半径(P、Q)とボールの直径(N)との比を、それぞれ、0.51〜0.55の範囲に設定し、且つ第1案内溝とボールとの接触角度を、鉛直線(L)を基準として零度とし、さらに第2案内溝とボールとの接触角度(α)を、鉛直線(L)を基準として13度〜22度の範囲に設定するとよい。より好適には、前記第2案内溝とボールとの接触角度(α)が、鉛直線(L)を基準として15度〜20度の範囲に設定されるとよい。
アウタ部材及びインナリングにそれぞれ形成された第1及び第2案内溝の肩部の欠けや摩耗等の発生を防止すると共に、ボールとの接触による案内溝に対する面圧を低減して耐久性を向上させることができる。
本発明に係る等速ジョイントについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。なお、本実施の形態において、縦断面とは、第1及び第2軸の軸方向に沿った断面をいい、横断面とは、前記軸方向と直交する断面をいう。
図1において参照符号10は、本発明の実施の形態に係る等速ジョイントを示し、この等速ジョイント10は、第1軸12の一端部に一体的に連結されて開口部14を有する有底円筒状のアウタカップ(アウタ部材)16と、第2軸18の一端部に固着されてアウタカップ16の孔部内に収納されるインナ部材22とから基本的に構成される。
図1及び図3に示されるように、前記アウタカップ16の内壁には球面からなる内径面24を有し、前記内径面24には、軸方向に沿って延在し、軸心の回りにそれぞれ60度の間隔をおいて6本の第1案内溝26a〜26fが形成される。
前記アウタカップ16に形成され軸方向に沿った縦断面が曲線状からなる第1案内溝26a(26b〜26f)は、図2に示されるように、点Hを曲率中心としている。この場合、前記点Hは、内径面24の球面中心K(ボール28の中心点Oを結ぶ仮想面(ボール中心面)と継手軸27とが直交する交点)から軸方向に沿ってアウタカップ16の開口部14側に距離T1だけオフセットした位置に配置される。
前記アウタカップ16に形成された第1案内溝26a〜26fの横断面は、それぞれ、図4に示されるように、ボール28の中心Oを通る鉛直線L上に曲率中心Aを有する単一の円弧形状からなり、前記第1案内溝26a〜26fは、後述するボール28の外面と、図面上、1点Bで接触するように形成される。
なお、実際上、回転トルクを伝達する際に負荷が付与された時には、ボール28の外面と第1案内溝26a〜26fとは点接触ではなく、面接触する。
前記横断面における第1案内溝26a〜26fの両側には前記内径面24が連続して形成され、前記第1案内溝26a〜26fと端部と内径面24との境界部分には面取りされた一組の第1肩部30a、30bが形成される。
前記アウタカップ16の第1案内溝26a〜26fに対するボール28の接触角度は、鉛直線Lを基準として零度に設定されている。また、前記第1案内溝26a〜26fの横断面における溝半径Mとボール28の直径Nとの比(M/N)は、0.51〜0.55に設定されるとよい(図4参照)。
インナ部材22は、外周面の周方向に沿って前記第1案内溝26a〜26fに対応する複数の第2案内溝32a〜32fが形成されたインナリング34と、前記アウタカップ16の内壁面に形成された第1案内溝26a〜26fと前記インナリング34の外径面35(図4参照)に形成された第2案内溝32a〜32fとの間で転動可能に配設され、回転トルク伝達機能を営む複数(本実施の形態では、6個)のボール28と、前記ボール28を保持する複数の保持窓36が周方向に沿って形成されアウタカップ16と前記インナリング34との間に介装されたリテーナ38とを有する。
前記インナリング34は、中心に形成された孔部を介して第2軸18の端部にスプライン嵌合され、あるいは第2軸18の環状溝に装着されるリング状の係止部材40を介して第2軸18の端部に一体的に固定される。該インナリング34の外径面35には、アウタカップ16の第1案内溝26a〜26fに対応して配置され、周方向に沿って等角度離間する複数の第2案内溝32a〜32fが形成される。
前記インナリング34に形成され軸方向に沿った縦断面が曲線状に形成された前記第2案内溝32a〜32fは、図2に示されるように、点Rを曲率中心としている。この場合、前記点Rは、内径面24の球面中心K(ボール28の中心点Oを結ぶ仮想面(ボール中心面)と継手軸27とが直交する交点)から軸方向に沿って距離T2だけオフセットした位置に配置される。
アウタカップ16の第1案内溝26a〜26fの曲率中心である点Hと、インナリング34の第2案内溝32a〜32fの曲率中心である点Rは、内径面24の球面中心K(ボール中心面と継手軸27との交点)からそれぞれ反対側に向かい且つ軸方向に沿って等距離(T1=T2)だけオフセットした位置に配置される。前記点Hは、球面中心Kを基準としてアウタカップ16の開口部14側に位置し、前記点Rは、アウタカップ16の奥部46側に位置し、前記点Hの曲率半径及び点Rの曲率半径は、たすき掛け状に交差するように設定される(図2参照)。
この場合、ボール28の直径をNとし、アウタカップ16の第1案内溝26a〜26f及びインナリング34の第2案内溝32a〜32fの曲率中心(点H、点R)のオフセット量(球面中心Kから軸方向に沿った離間距離)をそれぞれTとし、前記直径Nと前記オフセット量Tとの比をVとしたとき、前記比V(=T/N)は、0.12≦V≦0.14の関係式を充足するように、前記ボール28の直径Nとオフセット量Tとが設定されると好適である。
前記第2案内溝32a〜32fの横断面は、図4に示されるように、水平方向に沿って所定距離だけ離間する一対の中心C、Dを有する楕円弧形状からなり、前記第2案内溝32a〜32fは、ボール28の外面と、図面上、2点E、Fで接触するように形成される。なお、実際上、回転トルクを伝達する際に負荷が付与された時には、ボール28の外面と第2案内溝32a〜32fとは点接触ではなく、面接触するように形成される。
前記横断面における第2案内溝32a〜32fの両側には前記外径面35が連続して形成され、前記第2案内溝32a〜32fと端部と外径面35との境界部分には面取りされた一組の第2肩部42a、42bが形成される。
第2案内溝32a〜32fに対するボール28の接触角度αは、鉛直線Lを基準として左右に等角度αだけ離間するように設定される。この場合、前記第2案内溝32a〜32fに対するボール28の接触角度αを、図7に示されるように、13度〜22度の範囲で設定すると耐久性が良好となり、さらに、前記第2案内溝32a〜32fに対するボール28の接触角度αを、15度〜20度の範囲で設定すると極めて良好な耐久性が得られる。また、前記第2案内溝32a〜32fの横断面における溝半径P、Qとボール28の直径Nとの比(P/N、Q/N)は、0.51〜0.55に設定されるとよい(図4参照)。
前記ボール28は、例えば、鋼球によって形成され、アウタカップ16の第1案内溝26a〜26fとインナリング34の第2案内溝32a〜32fとの間に周方向に沿ってそれぞれ1個ずつ転動可能に配設される。このボール28は、第2軸18の回転トルクを、インナリング34及びアウタカップ16を介して第1軸12に伝達するとともに、第1案内溝26a〜26f及び第2案内溝32a〜32fに沿って転動することにより、第2軸18(インナリング30)と第1軸12(アウタカップ16)との間の交差する角度方向の相対的変位を可能とするものである。なお、回転トルクは、第1軸12と第2軸18との間でいずれの方向からでも好適に伝達される。
本実施の形態に係る等速ジョイント10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その動作並びに作用効果について説明する。
第2軸18が回転すると、その回転トルクはインナリング34から各ボール28を介してアウタカップ16に伝達され、第1軸12が前記第2軸18と等速性を保持しながら所定方向に回転する。
その際、第1軸12と第2軸18との交差角度(作動角)が変化する場合には、第1案内溝26a〜26fと第2案内溝32a〜32fとの間で転動するボール28の作用下にリテーナ38が所定角度だけ傾動して前記角度変位が許容される。
この場合、リテーナ38の保持窓36に保持された6個のボール28が等速面又は第1軸、第2軸12、18間の二等分角面上に位置することにより、駆動接点が常に等速面上に維持されて等速性が確保される。このように、第1軸12及び第2軸18の等速性を保持しつつ、それらの角度変位が好適に許容される。
本実施の形態では、ボール28の直径Nと、アウタカップ16の第1案内溝26a〜26f及びインナリング34の第2案内溝32a〜32fの曲率中心(点H、点R)のオフセット量(球面中心Kから軸方向に沿った離間距離)Tとの比V(=T/N)が、0.12≦V≦0.14の関係式を充足するように設定される。
この場合、前記ボール28の直径Nとオフセット量Tとの比Vが0.12未満であると第1案内溝26a〜26fと第2案内溝32a〜32fとによって形成されるくさび角が極小状態となり、非回転動作時におけるボール28のロック状態が発生し易くなり、組み付け時の作業性が悪化するという不具合がある。
一方、前記ボール28の直径Nとオフセット量Tとの比Vが0.14を超えると第1及び第2案内溝26a〜26f、32a〜32fの深さが浅くなってしまうため、第1及び第2案内溝26a〜26f、32a〜32fの端部に形成された第1及び第2肩部30a、30b、42a、42bの乗り上げ又は欠けや摩耗等の発生を阻止することが困難となる。
このように、ボール28の直径Nと第1及び第2案内溝26a〜26f、32a〜32fの曲率中心(点H、点R)のオフセット量Tとを前記関係式(0.12≦V≦0.14)を充足するように設定することにより、第1及び第2案内溝26a〜26f、32a〜32fの端部に形成された第1及び第2肩部30a、30b、42a、42bの乗り上げ又は欠けや摩耗等の発生を好適に防止して等速ジョイント10の耐久性をより一層向上させることができる。
図5は、本実施の形態に係る等速ジョイント10の縦断面における部分拡大を示し、ボール28の直径Nと第1及び第2案内溝26a〜26f、32a〜32fの曲率中心(点H、点R)のオフセット量Tとの関係について前記関係式を充足させることにより、オフセット量T1が小さく設定されている。一方、図6は、比較例に係る等速ジョイント100の縦断面における部分拡大を示し、オフセット量T2が本実施の形態と比較して大きく設定されている(T1<T2)。
この場合、継手軸27に直交しボール28の中心を通る直線Sに対して約15度だけ傾斜した部位におけるアウタカップ16の第1案内溝26a〜26fの深さを比較した場合、本実施の形態の第1案内溝26a〜26fの深さDP1は、比較例の第1案内溝の深さDP2よりも大きく形成することができるため(DP1>DP2)、第1案内溝26a〜26fの端部に形成された第1及び第2肩部30a、30b、42a、42bの乗り上げ又は欠けや摩耗等の発生を好適に防止することができる。
さらに、本実施の形態では、アウタカップ16の第1案内溝26a〜26fの横断面を円弧形状に形成してボール28に対して1点接触とし、且つインナリング34の第2案内溝32a〜32fの横断面を楕円弧形状に形成してボール28に対して2点接触とすることにより、従来技術と比較して、ボール28との接触による第1案内溝26a〜26f及び第2案内溝32a〜32fに対する面圧を低減して耐久性を向上させることができる。
この場合、本実施の形態では、第1案内溝26a〜26f及び第2案内溝32a〜32fの横断面における溝半径(M、P、Q)とボール28の直径Nとの比(M/N、P/N、Q/N)を、それぞれ、0.51〜0.55の範囲において設定し、且つ第1案内溝26a〜26fのボール28との接触角度を鉛直線Lを基準として零度とし、さらに第2案内溝32a〜32fとボール28との接触角度αを鉛直線Lを基準として13度〜22度の範囲に設定することにより、面圧を低減させてより一層耐久性を向上させることができる。
前記第1案内溝26a〜26f及び第2案内溝32a〜32fの横断面における溝半径(M、P、Q)とボール28との直径Nの比を、0.51〜0.55とした理由は、0.51未満であると溝半径(M、P、Q)とボール28の直径Nとが近接すぎるためにベタ当たり(全面接触)に近似した状態となりボール28の転がりが悪くなるために耐久性が劣化する、一方、0.55を超えると逆にボール28の接触楕円が小さくなるために接触面圧が高くなり耐久性が劣化するからである。
なお、前記ボール28の直径Nと縦断面における第1及び第2案内溝26a〜26f、32a〜32fの曲率中心(点H、点R)のオフセット量Tとの比V(T/N)、第2案内溝32a〜32fとボール28との接触角度α、及び、前記第1案内溝26a〜26f及び第2案内溝32a〜32fの横断面における溝半径(M、P、Q)とボール28との直径の比は、それぞれ、シミュレーションと実験とを何度も繰り返した結果、最適なものが求められたものである。
さらに、第2案内溝32a〜32fに対するボール28の接触角度αを13度〜22度の範囲に設定した理由は、前記接触角度αが13度未満であるとボール28に対する荷重が増大することにより面圧が高くなり耐久性が劣化する、一方、前記接触角度αが22度を超えると第2案内溝32a〜32fの端部(第2肩部42a、42b)とボール28の接触位置が近接することとなり、接触楕円のはみ出しが起こり面圧が高くなって耐久性が劣化するからである。
本発明の実施の形態に係る等速ジョイントの軸方向に沿った縦断面図である。 図1に示す等速ジョイントの部分拡大縦断面図である。 図1に示す等速ジョイントの軸方向(矢印X方向)からみた一部断面側面図である。 図1に示す等速ジョイントの軸方向と直交する部分拡大横断面図である。 本実施の形態における等速ジョイントの第1案内溝の深さを示す部分拡大縦断面図である。 比較例に係る等速ジョイントの第1案内溝の深さを示す部分拡大縦断面図である。 第2案内溝とボールとの接触角度と耐久性との関係を示す説明図である。
符号の説明
10…等速ジョイント 12…第1軸
16…アウタカップ 18…第2軸
24…内径面 26a〜26f…第1案内溝
28…ボール 30a、30b…第1肩部
32a〜32f…第2案内溝 34…インナリング
36…保持窓 38…リテーナ
42a、42b…第2肩部

Claims (3)

  1. 相交わる2軸の一方に連結され、球面からなる内径面を有すると共に軸方向に延在する6個の第1案内溝が形成され、一端部が開口するアウタ部材と、
    前記2軸の他方に連結され、軸方向に延在し前記第1案内溝と同数の第2案内溝が形成されたインナリングと、
    前記第1案内溝と前記第2案内溝との間で転動可能に配設され、トルクを伝達する6個のボールと、
    前記ボールを収納する保持窓が形成されたリテーナと、
    を備える等速ジョイントにおいて、
    前記アウタ部材に形成され軸方向に沿った縦断面が曲線状からなる第1案内溝の曲率中心(H)と前記インナリングに形成され軸方向に沿った縦断面が曲線状からなる第2案内溝の曲率中心(R)とは、前記アウタ部材の内径面の球面中心(K)からそれぞれ軸方向に沿って反対側に等距離(T)だけオフセットした位置に配置され、
    前記ボールの直径(N)と前記第1及び第2案内溝のオフセット量(T)とは、その比(T/N)をVとして、0.12≦V≦0.14の関係式を充足するように設定され
    前記第2案内溝とボールとの接触角度(α)は、鉛直線(L)を基準として15度〜20度の範囲に設定されることを特徴とする等速ジョイント。
  2. 請求項1記載の等速ジョイントにおいて、
    前記アウタ部材に形成された第1案内溝は、軸方向と直交する横断面が単一の円弧形状からなり、前記ボールと1点で接触するように形成され、
    前記インナリングに形成された第2案内溝は、軸方向と直交する横断面が楕円弧形状からなり、前記ボールと2点で接触するように形成されることを特徴とする等速ジョイント。
  3. 請求項2記載の等速ジョイントにおいて、
    前記第1案内溝の横断面における溝半径(M)及び第2案内溝の横断面における溝半径(P、Q)とボールの直径(N)との比は、それぞれ、0.51〜0.55の範囲に設定され、且つ第1案内溝とボールとの接触角度は鉛直線(L)を基準として零度とし、さらに第2案内溝とボールとの接触角度(α)は鉛直線(L)を基準として13度〜22度の範囲に設定されることを特徴とする等速ジョイント。
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