JP4216539B2 - ハムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、風味や保存性等の品質に優れるハムを製造する方法に関し、更に詳しくは、湿塩漬終了後の塩漬残液を再利用する、ハムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的なハムの製造方法においては、原料肉を、食塩を含む塩漬液に浸漬する、塩漬と呼ばれる工程を必ず含んでおり、この塩漬工程の後に、燻煙、乾燥、加熱、包装等の工程が適宜組み合わされて最終製品であるハムが製造される。
【0003】
この塩漬工程は、肉の熟成による風味の向上、発色による肉色の安定、保水力や粘弾力による肉質の向上等のために行われ、ハムの品質を決定する上で、重要な工程となっている。
【0004】
通常、上記の塩漬液には、食塩以外にも、みりんや砂糖等の調味料、香辛料等が適宜加えられる。また、いわゆる添加物として、硝酸塩や亜硝酸塩等の発色剤、アスコルビン酸等の発色助剤、リン酸塩等の結着剤、タンパク、カゼイン、デンプン等の結着助剤、ソルビン酸等の保存料、着色剤等を適宜添加することが通常行なわれている。
【0005】
これに対して、近年においては安全性や健康への配慮、特に、亜硝酸塩の添加によってニトロソアミンが生成することによる発ガン性の指摘等から、上記の添加物を含有しない塩漬液で塩漬工程を行う、いわゆる無添加ハムの製造も行われている。
【0006】
一方、塩漬工程における方法としては、塩漬液を原料肉に浸して低温で熟成させる通常の湿塩漬法と、塩漬液を注射針で原料肉中へ強制的に注入、浸透させる注入塩漬法が広く行われている。
【0007】
後者の注入塩漬法によれば、塩漬液の原料肉への浸透を短時間で行なうことができるとともに、原料肉中での塩漬液の濃度をほぼ均一にすることができる。また、注入塩漬法においては、注入後の原料肉に物理的な衝撃を与えて、保水性、結着性に関与するタンパク質系を溶解し、それらを細胞外へ抽出するために、タンブリングやマッサージングと呼ばれる工程が併せて行われている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の従来技術においては、湿塩漬終了後の塩漬残液は廃棄されており、資源が有効に利用されていないという問題があった。また、廃塩漬液を別途処理する必要があるので、環境への負荷が高まるとともに、処理費用によって製造コストも増加してしまうという問題も生じていた。
【0009】
また、湿塩漬法終了後の塩漬残液をそのまま再利用した場合には、塩漬残液の組成や微生物の増殖状況等が当初の新しい塩漬液とは大きく異なっている。このため、そのまま塩漬液として再利用しても、製造したハムの風味や保存性等の品質が大幅に低下してしまうという問題がある。
【0010】
特に、硝酸塩や亜硝酸塩等を含まない無添加ハムにおいては、味や保存性が更に低下しやすいため、塩漬残液の再利用を更に困難なものにしており、従来は、このような塩漬液の再利用は行なわれていなかった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、上記のような湿塩漬終了後の塩漬液を再利用可能であって、しかも、得られたハムの味や保存性にも優れる、ハムの製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のハムの製造方法は、原料肉に塩漬液を注入及び/又は接触させる工程と、該原料肉に物理的衝撃を施す工程とを少なくとも含むハムの製造方法において、
前記塩漬液として、湿塩漬法によるハムの製造に用いられた少なくとも食塩と乳酸菌ラクトバチルス・サケ−M32( Lactobacillus sakei-M32 、寄託番号FERM P−18912)とを含む塩漬残液をろ過し、乳酸菌ラクトバチルス・サケ−M32( Lactobacillus sakei-M32 、寄託番号FERM P−18912)を再添加して調整されたものであって、少なくとも食塩と前記乳酸菌とを含むものを用いることを特徴とする。
【0013】
この製造方法によれば、湿塩漬法終了後の塩漬残液を、少なくとも食塩と乳酸菌とを含む塩漬液として再調整することによって、製造したハムの風味やテクスチャー等の品質を損わず、しかも、腐敗菌等の微生物の増殖を抑制して保存性を向上することができる。また、塩漬液の再利用によって製造コストを削減できる。
【0014】
更に、前段階の湿塩漬工程においても、塩漬残液を別途処理する必要がないので環境への負荷を低下でき、処理費用を削減して製造コストを低下できる。
【0015】
本発明においては、前記乳酸菌が、食塩濃度が2.5質量%以上で成育可能であり、塩漬工程における高食塩濃度下においても成育できるので、腐敗菌等の微生物の増殖を抑制してハムの保存性を向上することができる。
【0016】
また、本発明においては、前記乳酸菌が、温度が5℃以下で成育可能であり、塩漬工程における低温下においても成育できるので、腐敗菌等の微生物の増殖を抑制してハムの保存性を向上することができる。
【0018】
更に、本発明においては、前記塩漬液が、硝酸、亜硝酸、又はその塩を含まない塩漬液であることが好ましい。この態様によれば、本発明の方法を用いて、いわゆる無添加ハムの製造が可能であり、硝酸、亜硝酸、又はその塩を含まなくても、風味が良好であって、しかも、保存性に優れるハムを製造することができる。
【0019】
【発明の実施形態】
以下、本発明について図面を用いて更に詳細に説明する。
【0020】
図1には、本発明の注入塩漬によるハムの製造方法の一実施形態である概略工程図が示されている。
【0021】
図1の工程図に示すように、本実施形態の製造方法は、湿塩漬法によるハムの製造に用いられた塩漬残液から注入塩漬用の塩漬液を調整する工程である、注入塩漬液製造工程S1と、この注入塩漬液を原料肉に注入する注入塩漬法によってハムを製造する、注入塩漬ハム製造工程S2とからなっている。
【0022】
以下、上記各工程について例を挙げて詳細に説明する。
まず、塩漬液製造工程S1について説明すると、この工程では、まず湿塩漬液調整工程S10によって湿塩漬に用いる湿塩漬液が調整され、これに湿塩漬原料肉を浸漬して湿塩漬工程S11が行なわれ、ここから塩漬残液が得られる。次に、この塩漬残液をろ過工程S12でろ過したのち、調整工程S13で乳酸菌の添加や食塩濃度の調整が行なわれて、注入塩漬液が得られる。
【0023】
湿塩漬液調整工程S10は、湿塩漬に用いる湿塩漬液を調整する工程である。湿塩漬液としては、水、食塩、乳酸菌を少なくとも含み、上記の添加物を含有しない組成であることが好ましい。これにより、湿塩漬液を再利用する際にも、無添加の注入塩漬が可能となるので、いわゆる無添加ハムの製造が可能となる。
【0024】
しかも、スターターとして乳酸菌を添加することにより、湿塩漬工程を経て製造したハムの風味やテクスチャー等の品質を損わず、しかも、腐敗菌等の微生物の増殖を抑制して保存性を向上することができる。
【0025】
食塩は、塩漬液全量に対して食塩濃度が4〜15質量%となるように添加することが好ましく、5〜10質量%となるように添加することがより好ましい。食塩濃度4質量%未満では、塩漬後塩漬液中のグラム陰性棹菌など腐敗菌が増殖しやすくなるので好ましくなく、15質量%を超えると塩漬後、乳酸菌の増殖が抑制されるので好ましくない。
【0026】
また、食塩としては、塩化ナトリウム単独でもよいが、にがり成分としてマグネシウム等のミネラルを含有していることが好ましい。その含有量としては、にがり成分として3〜20質量%含有されていることが好ましい。
【0027】
添加する乳酸菌の種類としては、塩漬工程における高食塩濃度下においても乳酸菌が成育できる必要があることから、耐塩性がある乳酸菌であることが好ましい。具体的には、食塩濃度が2.5質量%以上、好ましくは6質量%以上で成育可能である乳酸菌を用いることが好ましい。ここで、成育可能とは、液体培養において10日以内に菌数の増加が認められることを意味する。
【0029】
更に、塩漬工程における低温下においても乳酸菌が成育できる必要があることから、低温耐性があることがより好ましく、具体的には、温度は5℃以下で成育可能である乳酸菌を用いることが好ましい。
【0030】
このような乳酸菌としては、本発明においては、ラクトバチルス・サケ−M32( Lactobacillus sakei-M32 、寄託番号FERM P−18912)を用いる。
【0031】
ラクトバチルス・サケに属する乳酸菌は、糖を発酵して主に乳酸を生成するグラム陽性桿菌であるラクトバチルス(Lactobacillus)の一種であり、食肉製品や発酵食品などから分離される。
【0033】
ラクトバチルス・サケ−M32は、本発明者らにより、ハム製品製造用の塩漬液から分離されたものである。この菌株は、以下の表1に示すような菌学的諸性質を有し、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(FERM)に、寄託番号FERM P−18912として寄託されている。
【0034】
【表1】
【0035】
なお、上記乳酸菌の培養には、例えば、以下の表2、3に示すような培地組成である、ATP培地(商品名:DIFCO 265510)や、GYP培地を使用することができる。また、上記乳酸菌は通性嫌気性菌であり、培養方法としては、静置培養、又は炭酸ガス置換培養が好ましく、培養条件としては、25℃で15〜24時間が好ましい。
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
乳酸菌接種時の塩漬液中の乳酸菌数は、1×104個/ml以上、好ましくは1×105個/ml以上が好ましい。1×104個/ml未満では、腐敗菌などの抑制が不十分となるため好ましくない。
【0039】
また、このスターターとして用いる乳酸菌は1×107個/ml以上、好ましくは1×108個/ml以上となるようにあらかじめ培養し、これを上記濃度となるように添加することが好ましい。このとき、培養を2段階以上に分けて行い乳酸菌の活性を高めることが好ましい。具体的には、25℃×18時間前後培養の対数増殖期にある乳酸菌を、30℃×6時間再培養することによって乳酸菌の活性が増し、上記接種時の乳酸菌量で、塩漬終了時の乳酸菌量1×106個/ml以上を安定的に確保することが出来る。
【0040】
更に、塩漬液には、上記の食塩、乳酸菌以外にも、糖類、しょうゆ、みりん等の調味料や、香辛料等が添加されていてもよい。糖類としては、砂糖、グルコース、オリゴ糖が例示でき、糖類の添加量としては、塩漬液全体に対して、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜4質量%である。また、塩漬液のpHとしては7〜5.5の範囲であることが好ましい。
【0041】
なお、本発明においては、注入塩漬液は少なくとも食塩と乳酸菌とを含むものであればよく、上記の湿塩漬液調整工程S10において、亜硝酸等の添加物を更に含んでいてもよい。
【0042】
次に湿塩漬工程S11について説明する。湿塩漬工程S11は、上記の塩漬液に、湿塩漬用原料肉を浸漬して、ここから塩漬残液を得る工程である。
【0043】
湿塩漬の条件としては、従来の湿塩漬の条件で行なえばよく適宜選択可能であるが、浸漬温度は1〜5℃が好ましく、1.5〜3℃がより好ましい。また、塩漬時間は14〜30日間行なうことが好ましい。
【0044】
なお、上記の食塩と乳酸菌とを含む塩漬液を用いた場合、塩漬残液の乳酸菌数としては106個/ml以上で乳酸菌優勢で安定していることが好ましい。また、pHの低下が少ないほうがよく、好ましくはpH4.8以上、より好ましくはpH5.2以上である。
【0045】
そして、本発明においては、湿塩漬工程S11後の塩漬残液を、再度利用するためにろ過工程S12に続いて、調整工程S13が行なわれ、これによって、注入塩漬液が得られる。
【0046】
ろ過工程S12においては、湿塩漬工程S11における原料肉の脂肪や肉片等の夾雑物、及び、湿塩漬液調整工程S10において添加した乳酸菌や他の微生物の分離を行なう。
【0047】
ろ過手段としては、従来公知の膜ろ過手段が使用できる。この場合、孔径としては、0.22〜10μmのフィルターを用いることにより、上記の夾雑物や微生物を有効に除去できる。なお、分離手段としては、遠心分離法等を用いることもでき、ろ過工程S12と遠心分離法とを併用してもよい。
【0048】
次に、調整工程S13においては、乳酸菌の添加、及び、食塩濃度の調整が行なわれる。本発明においては、この調整工程S13によって、乳酸菌を再添加し、更に食塩濃度の調整を行なう点が特徴となっている。これによって、塩漬残液の再利用が可能になるとともに、得られる製品ハムの風味、保存性等の品質を維持することができる。
【0049】
添加する乳酸菌としては、上記の湿塩漬液調整工程S10で用いたのと同様の乳酸菌を用いることができる。すなわち、温度が5℃以下で、かつ、食塩濃度が2.5%以上で成育可能である乳酸菌を使用することが好ましく、このような乳酸菌として前述したようなラクトバチルス・サケ(Lactobacillus sakei)を用いることが好ましい。
【0050】
この調整工程S13における乳酸菌の添加量としては、1×106個/ml以上となるように添加することが好ましく、1×107個/ml以上となるように添加することが更に好ましい。1×106個/ml未満では、腐敗菌などの抑制が不十分なことがあり、得られたハムの保存性が低下する場合があるので好ましくない。
【0051】
また、食塩濃度の調整は、塩漬液全量に対して食塩濃度が4〜15質量%となるように添加することが好ましく、6〜14質量%となるように添加することがより好ましい。食塩濃度が4質量%未満では、グラム陰性棹菌など腐敗菌が増殖しやすくなるので好ましくなく、15質量%を超えると、塩漬後、乳酸菌の増殖が抑制されるので好ましくない。
【0052】
以上の注入塩漬液製造工程S1によって、以下の注入塩漬ハム製造工程S2に使用する注入塩漬液を調整することができる。
【0053】
次に、注入塩漬ハム製造工程S2について説明すると、この工程では、上記の注入塩漬液を原料肉に注入する、注入工程S20、タンブリング工程S21、熟成工程S22によって、注入塩漬が行なわれる。そして、この塩漬後の原料肉は食塩濃度調整工程S23によって過剰な食塩を取り除き、食塩濃度を均一化させ、乾燥工程S24で水分が調整された後、燻煙工程S25、加熱殺菌工程S26、包装工程S27を経て最終製品となる。
【0054】
注入工程S20は、従来公知の注入法が使用でき、インジェクターを用いたインジェクション法が好ましく用いられる。この場合、注入量としては、原料肉に対して5〜15質量%となるように注入することが好ましい。
【0055】
なお、本発明においては、この注入工程S20を行なわず、代わりに原料肉を上記の塩漬液に漬けて接触させる、塩漬工程(カバーピックル)としてもよい。
【0056】
タンブリング工程S21はマッサージング工程とも呼ばれ、注入後の原料肉に物理的な衝撃を与えて、保水性、結着性に関与するタンパク質系を溶解し、それらを細胞外へ抽出するために行なわれる。この工程によって肉を柔らかくし、保水力を向上することができる。タンブリング時間としては、30〜360分間行なうことが好ましい。また、装置としては従来公知のタンブラーやマッサージャーが使用できる。
【0057】
なお、このタンブリング工程S21において、上記の塩漬液に漬ける塩漬工程を併用することも好ましく行なわれる。この場合、更に原料肉に対して10〜80質量%、好ましくは10〜40質量%の塩漬液に漬けることが好ましい。これによって、原料肉内の食塩濃度は1.5〜2.5質量%となる。
【0058】
また、上記の注入工程S20の代わりに塩漬工程を行なう場合には、塩漬工程の後にタンブリング工程S21を行なってもよく、塩漬工程とタンブリング工程S21とを同時に行なってもよい。したがって、本発明の製造方法は、例えば通常のボンレスハム、ロースハム、プレスハム等の、食品衛生法によって分類される加熱食肉製品のみならず、ローストビーフ等の、食品衛生法によって分類される特定加熱食肉製品にも適用可能である。
【0059】
上記の注入工程S20、タンブリング工程S21の後、短期間の低温保存による浸透、熟成を行なう熟成工程S22を行なう。ここで、保存温度は1〜5℃が好ましい。また、保存期間は1〜14日であることが好ましい。
【0060】
上記の熟成工程S22の後、上記注入塩漬後の肉塊を水に浸して食塩濃度を調整する食塩濃度調整工程S23が行なわれる。これによって、過剰な食塩を取除き、食塩濃度を均一化させる。
【0061】
このように食塩濃度が調整された肉は、その後、乾燥工程S24、燻煙工程S25、加熱殺菌工程S26、包装工程S27を経て最終製品として製造される。
【0062】
乾燥工程S24は、微生物相を安定にしてpHを下げるとともに、水分活性を低下させて保存性を高めるために行なわれる。乾燥条件としては、温度45〜75℃が好ましく、また、時間は30〜120分であることが好ましい。乾燥装置としては公知の乾燥機が使用できる。
【0063】
燻煙工程S25は、塩漬後の肉色、肉質、風味等の向上のために行なわれるとともに、上記同様に水分活性を低下させて保存性を高めるるために行なわれる工程である。燻煙条件としては、温度45〜85℃が好ましく、また、時間は20〜120分であることが好ましい。燻煙装置としては公知の全自動燻煙機等が使用できる。
【0064】
加熱殺菌工程S26は、腐敗菌等を殺して保存性を高めると同時に、肉色、風味を向上させるために行なわれる工程である。加熱方法としては、ボイル、蒸気等の各種方法が使用できる。加熱条件としては、食品衛生法にしたがって製品の種類毎に適宜設定される。例えば上記の加熱食肉製品の場合には、肉の中心温度で63℃×30分間加熱する方法、又はこれと同等以上の効力を有する加熱条件とすればよい。
【0065】
最後に、包装工程S27を経て最終製品であるハムが製造される。この包装工程は公知の各種包装手段が選択でき特に限定されない。また、この実施形態においては、加熱殺菌工程S26の後に包装工程S27を行う、いわゆる加熱後包装であるが、先に包装工程S27を行なったあと、加熱殺菌工程を行なう、いわゆる包装後加熱としてもよい。
【0066】
なお、上記の工程のうち、食塩濃度調整工程S23、乾燥工程S24、燻煙工程S25は、ハム製品の種類に応じて適宜選択的に行なわれればよく、必ずしも行なわなくてもよい。
【0067】
本発明の製造方法が適用可能なハム製品としては、食品衛生法で加熱食肉製品に分類される通常のボンレスハム、ロースハム、プレスハム等以外にも、食品衛生法で特定加熱食肉製品に分類されるローストビーフ等が挙げられる。これらの製造後のハム製品の保存条件は、食品衛生法にしたがって製品の種類毎に適宜設定される。
【0068】
上記の実施形態の製造方法により製造されたハムは、塩漬残液を再利用して製造され、しかも、いわゆる無添加ハムであるにもかかわらず、従来の無添加ハムに比べて、風味等の品質が良好であるとともに、保存性にも優れる。
【0069】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0070】
実施例
図1に示した工程に沿って、以下の順で実施例のハムを製造した。
<湿塩漬液調整工程S10>
まず、表1に示すような配合割合で、湿塩漬に用いる塩漬液を調整し、これに、乳酸菌としてラクトバチルス・サケ−M32(Lactobacillus sakei-M32、寄託番号FERM P−18912)を100万(1×106)個/mlとなるように添加して、湿塩漬用の塩漬液を得た。
【0071】
【表4】
【0072】
<湿塩漬工程S11>
次に、上記の湿塩漬用の塩漬液に、湿塩漬用の原料肉30本、合計51kg(豚ロース肉、1本の重量が1.7kg、表面積1200cm2)を浸漬して、2℃×21日間の湿塩漬工程を行なった。なお、上記の塩漬液の量は原料肉に対して80質量%となるようにした。
【0073】
なお、上記の湿塩漬工程終了時の、塩漬残液のpHは5.31、乳酸菌数は7.87(logCFU/ml)であった。
【0074】
<ろ過工程S12>
上記の塩漬残液を0.45μmの中空糸フィルターでろ過してろ液を得た。
【0075】
<調整工程S13>
上記のろ液を食塩濃度が7%となるように調整し、更に、前記と同じ乳酸菌であるラクトバチルス・サケ(Lactobacillus sakei)を1000万(1×107)個/ml個となるように添加して調整し、実施例に用いる注入塩漬液を得た。
【0076】
<注入工程S20>
上記の注入塩漬液を、表2の条件にしたがって、インジェクターを用いて原料豚肉50kgに対して10質量%となるように注入した。
【0077】
【表5】
【0078】
<タンブリング工程S21>
上記の注入塩漬後の原料肉について、表2に示すように、タンブラー(真空マッサージワゴンTN−V7型、株式会社トーニチ製)を用いて40分間のタンブリング工程を行なった。このとき、カバーピックルとして、更に原料肉に対して30質量%の塩漬液をタンブラー中に追加した。
【0079】
<熟成工程S22>
上記タンブリング工程S21後の原料肉を、2℃×72時間の条件で熟成を行なった。
【0080】
<乾燥工程S24、燻煙工程S25、加熱殺菌工程S26>
表3に示すような条件で、乾燥、燻煙、加熱殺菌工程を順次行ない、本発明の実施例のハムを製造した。燻煙装置としては、Schroter社製全自動燻煙器を使用した。
【0081】
【表6】
【0082】
比較例
注入塩漬液として、実施例と同様に、表1に示すような配合割合で塩漬液を調整し、乳酸菌の添加は行なわなかった。
【0083】
この注入塩漬液を直接原料肉に注入して注入工程S20から開始し、注入塩漬液製造工程S1を行なわない以外は実施例と同条件の製造工程で、以下、タンブリング工程S21、熟成工程S22、乾燥工程S24、燻煙工程S25、加熱殺菌工程S26を行ない、比較例のハムを製造した。
【0084】
試験例
実施例及び比較例のハムについて、以下の項目について評価を行なった。
【0085】
イ)製品歩留まりの比較
投入した原料肉に対する最終製品の重量を製品歩留まり(%)として評価した。その結果を図2に示す。
【0086】
図2によれば、実施例では平均歩留まり87.3%、比較例では平均歩留まり86.3%であり、本発明の製造方法においても、従来と同等以上の製品歩留まりが得られることがわかる。
【0087】
ロ)一般生菌数
7℃×20日間の保存試験を行ない、一般生菌数(logCFU/g)について評価した。その結果を図3、4に示す。図3は、7℃×20日後の一般生菌数を示す図表であり、図4は、製造直後、保存10日目、14日目、20日目の一般生菌数を示す図表である。
【0088】
図3によれば、7℃保存20日目の生菌数(logCFU/g)の平均−標準偏差は、実施例で4.36−0.81、比較例で6.07−0.62となっており、分散分析の結果も高度に有意であった。また、実施例の母平均の推定では下限−上限、3.70-5.02となっており、実施例においては7℃×20日後においても一般生菌数が100万個/g以下であることがわかる。
【0089】
また、図4によれば、保存期間中のいずれにおいても、実施例のほうが一般生菌数の増加が抑制されていることがわかる。
【0090】
ハ)外観、異臭調査
実施例及び比較例のハムについて、製造7℃×20日間の保存試験を行ない、製造直後、保存10日目、15日目、20日目に官能による外観、異臭検査を実施した。その結果を図5に示す。
【0091】
図5によれば、実施例においては調査期間中、各項目ともに異常は認められなかった。しかし、比較例においては、15日目以降で袋の膨張3件、遊離水の濁り2件、ネトの発生1件、表面の黄変化2件が認められた。
【0092】
ニ)官能検査
実施例及び比較例のハムについて、厚さ1mmにスライスして、色、食感、味付け、総合の4項目について72名のパネラーによる官能検査を2点嗜好法(実施例が好ましい、比較例が好ましい、どちらとも言えない)により実施し、解析をχ二乗検定により行なった結果を図6に示す。図6の棒グラフ中の数値は実施例、比較例を好ましいと判定した人数を示している。
【0093】
図6によれば、いずれの評価項目においても、実施例のほうが優れている評価となっており、特に、食感、味付け、総合では実施例のハムの評価が優れていることがわかる。
【0094】
ホ)安全性試験
変異原性試験
実施例のハムについて、製造直後、及び、7℃×16日保存した後のハムを被験物質とし、各々50gを細切し、スピードカッターでさらに細切した。これに蒸留水25mlを加え、ストマッカーで抽出した。この抽出液について、Rec-accay(胞子寒天法)で変異原性を検討した。その結果、被験物質の何れにおいても枯草菌株(M45、H17)に阻止帯は認められなかった。
【0095】
アレルギー試験
実施例のハムについて、製造直後、及び、7℃×16日保存した後のハムを被験物質とし、被験物質抽出液の原液0.5ml/匹をマウスに強制経口投与し、14日後に更に経口投与した。その間、0日目、7日目、14日目、21日目、28日目に採血を行い、血清を分離した。これらの血清についてPCA法(Passive Cutaneous Anaphylaxis)でIgE抗体を測定した。その結果、各被験物質に対するIgE抗体は何れも検出限界以下であった。
【0096】
急性毒性試験
実施例のハムについて、製造直後、及び、7℃×16日保存した後のハムを被験物質とし、各々をマウスに経口投与した。その結果、試験期間中の一般的性状、体重変化及び試験終了時の各臓器の肉眼的所見に異常は認められなかった。
【0097】
LD50試験
実施例のハムについて、製造直後、及び、7℃×16日保存した後のハムを被験物質とし、各々を24ml/kg(最大投与可能な量)、12ml/kgの2段階量を1群10匹のマウスに経口投与し、LD50を求めた。その結果、一般状態の変化、斃死例は見られなかった。また試験終了後の解剖による各臓器の肉眼的観察では何ら変化は見られなかった。
【0098】
微生物検査
実施例のハムについて、製造直後(1日後)、及び、7℃×10、14、20日保存した後の各試験区検体について大腸菌/大腸菌群定性試験、黄色ブドウ球菌数、サルモネラ族菌定性試験を設計の微生物検査方法に従い検査を行った。その結果を図7に示す。図7によれば、全ての試験区、検体について上記の微生物は確認されなかったことがわかる。
【0099】
以上の各種安全性試験の結果より、本発明の製造方法により製造された実施例のハムは安全性が充分に高いことがわかる。
【0100】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ハムの風味やテクスチャー等の品質を損わず、しかも、腐敗菌等の微生物の増殖を抑制して保存性を向上することが可能なハムの製造方法を提供できる。また、塩漬液の再利用によって製造コストを削減できる。更に、前段階の湿塩漬工程における塩漬残液を別途処理する必要がないので環境への負荷を低下でき、処理費用を削減して前段階の湿塩漬工程の製造コストも低下できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による注入塩漬によるハムの製造方法の一実施形態である概略工程図である。
【図2】 本発明の実施例における製品歩留まりの評価を行なった図表である。
【図3】 本発明の実施例における7℃×20日保存後の一般生菌数を示す図表である。
【図4】 本発明の実施例における一般生菌数の経時変化を示す図表である。
【図5】 本発明の実施例における外観、異臭調査の結果を示す図表である。
【図6】 本発明の実施例における官能検査の結果を示す図表である。
【図7】 本発明の実施例における微生物検査の結果を示す図表である。
【符号の説明】
S1:塩漬液製造工程
S10:湿塩漬液調整工程
S11:湿塩漬工程
S12:ろ過工程
S13:調整工程
S2:注入塩漬ハム製造工程
S20:注入工程
S21:タンブリング工程
S22:熟成工程
S23:食塩濃度調整工程
S24:乾燥工程
S25:燻煙工程
S26:加熱殺菌工程
S27:包装工程
Claims (2)
- 原料肉に塩漬液を注入及び/又は接触させる工程と、該原料肉に物理的衝撃を施す工程とを少なくとも含むハムの製造方法において、
前記塩漬液として、湿塩漬法によるハムの製造に用いられた少なくとも食塩と乳酸菌ラクトバチルス・サケ−M32( Lactobacillus sakei-M32 、寄託番号FERM P−18912)とを含む塩漬残液をろ過し、乳酸菌ラクトバチルス・サケ−M32( Lactobacillus sakei-M32 、寄託番号FERM P−18912)を再添加して調整されたものであって、少なくとも食塩と前記乳酸菌とを含むものを用いることを特徴とするハムの製造方法。 - 前記塩漬液が、硝酸、亜硝酸、又はその塩を含まない塩漬液である請求項1記載のハムの製造方法。
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