JP4216084B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Tires In General (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トレッド面にブロック及び/又はリブを備えた空気入りタイヤに関し、より詳しくは、ブロック及び/又はリブにサイプが刻まれた空気入りタイヤおけるサイプ間領域の偏摩耗の抑制及びアイス性能の向上に関する。
【0002】
【従来の技術】
タイヤトレッドにブロック及び/又はリブを備えた空気入りタイヤにおいては、ブロック及び/又はリブにサイプを刻んで、サイプのエッジ効果、除水効果、粘着効果を上げてきた。特に、スタッドレスタイヤにおいて、多数のサイプを配置して性能向上を図ってきた。例えば、アイス制動性能を向上させる場合、タイヤ幅方向に延びるサイプを多数配置し前後方向のエッジ効果を増大させ、アイス旋回性能を向上させる場合、タイヤ周方向に延びるサイプを多数配置し横方向のエッジ効果を増大させてきた。
【0003】
しかし、タイヤ幅方向又はタイヤ周方向のいずれかの方向に延びるサイプのみを配置すると、横方向のエッジ効果又は前後方向のエッジ効果のいずれかが低下してしまう。そのため、アイス制動性能及びアイス旋回性能を向上させるべく、異なる角度でタイヤ幅方向に延びるサイプをタイヤ周方向に隣接して配置し、横方向のエッジ効果を増大せしめ、アイス旋回性能を高めた空気入りタイヤが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特許第3204926号公報(第1〜3頁、第1〜3図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
かかる従来技術の空気入りタイヤにおいては、サイプが終端するブロック端部近傍においてサイプ間隔が狭くなり過ぎると、当該部分(最小離間領域)の剛性が大きく低下する。その結果、当該部分の倒れ込みが大きくなり接地面積が低下し、アイス性能の低下を招く。また、当該部分において偏摩耗が発生するおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、サイプ間隔が狭い部分の偏摩耗を抑制し、かつ、アイス制動性能及びアイス旋回性能を向上することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明は、トレッドに刻まれたタイヤ周方向に連なる主溝と前記主溝同士を連通する横溝とによって区画されたブロック、及び/又は、前記主溝により区画されたリブを備え、前記ブロック及び/又は前記リブにタイヤ幅方向に延びる1次サイプと前記1次サイプと異なる角度でタイヤ幅方向に延びる2次サイプが刻まれ、前記1次サイプと前記2次サイプがタイヤ周方向に隣接するように配置された空気入りタイヤにおいて、
隣接した前記1次サイプと前記2次サイプとの離間距離が狭い側において、少なくとも前記1次サイプ又は前記2次サイプの一方が折り曲げられ、前記離間距離が広げられた空気入りタイヤを採用した。
【0008】
隣接した1次サイプと2次サイプとの離間距離が狭い側において、少なくとも一方のサイプが折り曲げられているので、離間距離が広くなる。その結果、離間距離が狭い側(最小離間領域)の剛性が高くなるので、倒れこみにより接地面積の低下が抑えられ、また偏摩耗が抑制される。また、折り曲げられていない部分の横方向エッジ成分のほか、折り曲げられた部分の横方向エッジ成分により、アイス旋回性能が低下することがない。
【0009】
また、折り曲げられたサイプの部分が前記1次サイプ及び前記2次サイプのいずれにも平行でない空気入りタイヤとすることもできる。
【0010】
さらに、折り曲げられたサイプの折り曲げ位置が、離間距離が狭い側のサイプ端からサイプ長の10%〜50%にある空気入りタイヤとすることもできる。
【0011】
サイプの折り曲げ位置が離間距離が狭い側のサイプ端からサイプ長の10%未満であると、離間距離があまり広がらないので、当該サイプ間の剛性が高くならず偏摩耗抑制の効果が小さい。逆に、50%を越えると折り曲げた側にあるサイプに近づかないようにサイプの折り曲げ角度が制限されるので、横方向のエッジ効果が低下する。
【0012】
前記1次サイプ又は前記2次サイプの離間間隔Xに対して、広げられた前記離間距離が0.2X〜0.8Xである請求項1乃至3のいずれかに記載の空気入りタイヤとすることもできる。
【0013】
前記1次サイプ又は前記2次サイプのサイプ間隔Xとして、広げられた前記離間距離が0.2X未満であると、サイプを折り曲げても離間距離が狭く剛性が小さく偏摩耗のおそれがある。逆に、0.8Xを越えると、折り曲げた側にあるサイプとの離間距離が狭くなるので剛性が小さくなり偏摩耗のおそれがある。
【0014】
さらに、前記1次サイプ又は前記2次サイプの少なくとも一方が片側オープンサイプ又は両側クローズドサイプである空気入りタイヤすることもできる。
【0015】
前記1次サイプ又は前記2次サイプの少なくとも一方が片側オープンサイプ又は両側クローズドサイプとすること、すなわち、少なくとも1つのサイプ端部をクローズドにすると、該サイプ端部を含む領域の剛性が大きくなるので、接地面積の低下を防ぎ、アイス性能向上に寄与し、偏摩耗を抑制することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて、本発明に係る空気入りタイヤの一実施形態を説明する。図1は本発明に係る空気入りタイヤの一実施形態におけるブロックを示す概略図である。なお、サイプは直線サイプとして説明するが、波型サイプやジグザグ状サイプであっても構わない。
【0017】
図1(a)は従来技術のサイプを示す図である。図において、トレッド面にタイヤ周方向連なる主溝(図示せず)と、主溝同士を連通する横溝(図示せず)が刻まれて、主溝及び横溝によってブロック1が形成されている。ブロック1には、異なる角度でタイヤ幅方向Aに延びる1次サイプ2及び2次サイプ3が刻まれタイヤ周方向Rに隣接するように配置されている。そして、1次サイプ2及び2次サイプ3との離間距離が狭い側に最小離間領域4が出現している。なお、ブロック端での離間距離はdである。
【0018】
図1(b)は本発明にかかるサイプを示す図である。図において、ブロック1左側の最小離間領域4aでは、1次サイプ2が折り曲げられ、折り曲げられた部分が2aとなっている。同様に、ブロック1右側の最小離間領域4bにおいても、2次サイプ3が折り曲げられ、折り曲げられた部分が3aとなっている。サイプが折り曲げられたため、ブロック端での離間距離dが大きくなっている。その結果、最小離間領域4a、4bの剛性が高くなるので、サイプの倒れこみが減少し、接地面積が増加しアイス性能が向上し、また偏摩耗が抑制される。
【0019】
また、折り曲げられていない部分2b、3bの横方向エッジ成分のほか、折り曲げられた部分2a、3aの横方向エッジ成分により、アイス旋回性能が低下することがない。
【0020】
また、図1(c)に示すように、2次サイプ3のみ(或いは、1次サイプ2のみ)の両端を折り曲げて、離間距離dを広げてもよい。図1(d)に示すように、1次サイプ2及び2次サイプ3のいずれの両端も折り曲げて、離間距離dを広げてもよい。
【0021】
なお、1次サイプ2、又は2次サイプ3の離間間隔をXとして、広げられた離間距離dは、0.2X〜0.8Xであることが好ましい。広げられた離間距離dが0.2X未満であると、サイプを折り曲げても離間距離dが狭くサイプ間領域の剛性が小さく偏摩耗のおそれがある。逆に、0.8Xを越えると、折り曲げた側にあるサイプとの離間距離(X−d)が狭くなるので剛性が小さくなり偏摩耗のおそれがある。
【0022】
折り曲げられたサイプの折り曲げ位置が、離間距離dが狭い側のサイプ端からサイプ長の10%〜50%であることが好ましい。サイプの折り曲げ位置が離間距離dが狭い側のサイプ端からサイプ長の10%未満、すなわち折り曲げられた部分2a、3bの長さが元のサイプ2、3の長さの10%未満であると、離間距離dがあまり広がらないので、当該サイプ間の剛性が高くならず偏摩耗抑制の効果が小さい。逆に、50%を越えると折り曲げた側にあるサイプとの離間距離が短くならないようにサイプの折り曲げ角度が制限されるので、横方向のエッジ効果が低下する。
【0023】
以上、ブロックを備えた空気入りタイヤについて説明したが、リブを備えた空気入りタイヤにおいて、リブに1次サイプ及び2次サイプを刻んで、上述の構成とすることにより、同様の効果を得ることができる。また、特定のブロックのみ、もしくは特定のブロック列にのみを、上述のサイプの構成としてもよい。
【0024】
【実施例】
本発明に係る空気入りタイヤを試作して性能評価を行った。実施例、比較例1、2のいずれにおいても、図2に示すようには主溝10と横溝11に区画されたブロック1を備えたトレッドパターンを有する。なお、図においてサイプ2、3は実施例のサイプを示す。
【0025】
また、実施例のサイプは、図3(a)示すサイプ形状で、1次サイプ2の離間間隔Xに対して広げられた離間距離X1は0.5Xとしている。また、離間距離が狭い側のサイプ端から、サイプ長さYに対してY1=0.3Yとなる位置で1次サイプ2及び2次サイプ3が折り曲げられている。比較例1のサイプは、図3(b)示すようにタイヤ幅方向Aに平行に延びるサイプ12である。比較例2のサイプは、図3(c)示すサイプ形状で、1次サイプ2及び2次サイプ3はいずれも折り曲げられていない。なお、いずれのタイヤサイズも205/65R15であり、排気量2000ccの国産前輪駆動車に装着して、アイス路面上で性能評価を行った。
【0026】
性能評価の結果を表1に示す。表1において、アイス制動性能はアイス路面上40km/hからのフルロック制動距離の逆数を示す。アイス旋回性能はレムニスケート曲線(8の字)のアイス路面上でのラップタイムの逆数を示す。耐摩耗性能は、乾燥舗装路を8000km走行後のサイプ間の段差摩耗量の逆数を示す。いずれも比較例1を100とした指数で表示している。したがって、指数が大きいほど性能が良いことを表す。
【0027】
【表1】
Figure 0004216084
【0028】
表1によれば、実施例では耐摩耗性能が維持され、しかもアイス性能が向上している。これに対して、比較例2ではアイス性能が向上しているが耐摩耗性が劣化している。したがって、本発明のタイヤは、アイス性能及び耐摩耗性能においいて優れていることがわかる。
【0029】
【発明の効果】
以上の通り、本発明の空気入りタイヤでは、ブロック及び/又はリブに、異なる角度でタイヤ幅方向に延びるサイプを刻み、該サイプの一端を折り曲げ、サイプ間の離間距離を広げることにより、偏摩耗を抑制し、かつ、アイス性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ブロックに刻まれたサイプを示す概略図である。(a)は従来技術のサイプ、(b)〜(d)は本発明に係るサイプをそれぞれ示す。
【図2】実施例及び比較例に係る空気入りタイヤのパターン概略展開図である。
【図3】それぞれ、(a)は実施例、(b)は比較例1、(c)は比較例2に係るサイプの概略図である。
【符号の説明】
1 ブロック
2 1次サイプ
3 2次サイプ
4 最小離間領域
10 主溝
11 横溝

Claims (6)

  1. トレッドに刻まれたタイヤ周方向に連なる主溝と前記主溝同士を連通する横溝とによって区画されたブロック、及び/又は、前記主溝により区画されたリブを備え、前記ブロック及び/又は前記リブにタイヤ幅方向に延びる1次サイプと前記1次サイプと異なる角度でタイヤ幅方向に延びる2次サイプが刻まれ、前記1次サイプと前記2次サイプがタイヤ周方向に隣接するように配置され、隣接した前記1次サイプと前記2次サイプとは非平行であって、隣接した前記1次サイプと前記2次サイプとの離間距離が狭い最小離間領域が形成された空気入りタイヤにおいて、
    前記最小離間領域において前記1次サイプ又は前記2次サイプのいずれか一方の両端が折り曲げられ、前記離間距離が広げられた空気入りタイヤ。
  2. 折り曲げられたサイプの部分が前記1次サイプ及び前記2次サイプのいずれにも平行でない請求項に記載の空気入りタイヤ。
  3. 折り曲げられたサイプの折り曲げ位置が、離間距離が狭い側のサイプ端からサイプ長の10%〜50%にある請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記1次サイプ又は前記2次サイプの離間間隔Xに対して、広げられた前記離間距離が0.2X〜0.8Xである請求項1乃至3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記1次サイプ又は前記2次サイプの少なくとも一方が片側オープンサイプ又は両側クローズドサイプである請求項1乃至4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  6. トレッドに刻まれたタイヤ周方向に連なる主溝と前記主溝同士を連通する横溝とによって区画されたブロック、及び/又は、前記主溝により区画されたリブを備え、前記ブロック及び/又は前記リブにタイヤ幅方向に延びる1次サイプと前記1次サイプと異なる角度でタイヤ幅方向に延びる2次サイプが刻まれ、前記1次サイプと前記2次サイプがタイヤ周方向に隣接するように配置され、隣接した前記1次サイプと前記2次サイプとは非平行であって、隣接した前記1次サイプと前記2次サイプとの離間距離が狭い最小離間領域が形成された空気入りタイヤにおいて、
    タイヤ幅方向の一方の側の前記最小離間領域において前記1次サイプが折り曲げられ、タイヤ幅方向の他方の側の前記最小離間領域において前記2次サイプが折り曲げられ、前記離間距離が広げられ、
    折り曲げられたサイプの部分が前記1次サイプ及び前記2次サイプのいずれにも平行でなく、
    折り曲げられたサイプの折り曲げ位置が、離間距離が狭い側のサイプ端からサイプ長の10%〜50%にあって、
    前記1次サイプ又は前記2次サイプの離間間隔Xに対して、広げられた前記離間距離が0.2X〜0.8Xであり、
    前記1次サイプ又は前記2次サイプの少なくとも一方が片側オープンサイプ又は両側クローズドサイプである空気入りタイヤ。
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