JP4214619B2 - シリコン溶融用ルツボの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、チョクラルスキ−法(CZ法)によってシリコン単結晶を製造する際に用いるシリコン溶融用ルツボとその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリコンやガリウムひ素等の半導体単結晶を成長する方法の一つとして、CZ法が知られている。このCZ法は、大口径、高純度の単結晶が無転位あるいは格子欠陥の極めて少ない状態で容易に得られること等の特徴を有することから、様々な半導体結晶の成長に用いられている方法である。
【0003】
このCZ法によってシリコン単結晶を製造する装置には、図4に示すようなものが知られている。
この図において、符号21は内部に不活性ガスが充填されたチャンバー、22はチャンバー内に配置されたルツボ、23はルツボ22のまわりに配置された発熱体、24はるつぼ22の上方に配置された回転昇降自在なシリコン単結晶引上装置である。
【0004】
ルツボ22は、内部に溶融シリコン32が収容される石英製の内ルツボ33と、この内ルツボ33の外面に嵌合されたカーボン製の外ルツボ34とからなるものである。このルツボ22は、その下面が軸30の上側に取り付けられている。
【0005】
シリコン単結晶引上装置24は、ルツボ22の上方に配置された回転昇降自在な軸を備え、この軸の下端にチャック39が取り付けられたものである。このチャック39には、シリコンの種結晶40が保持されている。
【0006】
このような構成のシリコン単結晶成長装置を用いてシリコン単結晶を製造する場合には、まず、ルツボ22内に固体シリコンを収容する。そして、不活性ガスをチャンバー上部からチャンバー21内のに流入し、このチャンバー21内のルツボ22を発熱体23により加熱する。このようにして、ルツボ22内の固体シリコンを溶融シリコン32とした後、シリコン単結晶引上装置24を下降させて、種結晶40を溶融シリコン32に浸す。そして、この状態で、シリコン単結晶引上装置24とルツボ23を互いに逆方向に回転させ、シリコン単結晶引上装置24をゆっくりと上昇させる。このようにすると、種結晶40が成長してこの種結晶40の下部に棒状の大きなシリコン単結晶41を成長させていく。
【0007】
このようなCZ法によるシリコン単結晶の製造方法において、原料の固体シリコンを溶融し、収容しておくためのルツボとしては、従来、最も好適なものとして石英ルツボが使用されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、石英ルツボは高温での強度が十分ではないので、通常、その形状を保持するためにカーボン製の外ルツボで嵌合しており、該カーボン製外ルツボと石英ルツボとが反応して一酸化炭素ガスが発生するという問題があった。この一酸化炭素ガスが溶融シリコン中に取り込まれることにより、シリコンインゴット中での炭素濃度を高くしてしまうのである。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、固体シリコンを溶融し、収容する際に、カーボン製外ルツボとの反応が抑えられ、一酸化炭素の発生が低減されるシリコン溶融用ルツボおよびその製造方法を提供する事を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係るシリコン溶融用ルツボの製造方法は、石英ルツボの外面に非晶質のシリカ粉末を混合したスラリーを付着した後、該スラリー層表面に非晶質のシリカ砂を散布してスタッコ層を形成する操作を任意回数繰り返して、前記スラリー層と前記スタッコ層とを交互に積層して外層部を形成後、そのルツボを、600〜1200℃で0.5〜12時間加熱保持して焼成し、前記外層部を結晶質のシリカ同士が焼結により拡散結合した成形体とすることを特徴とする。
【0011】
この場合、その外層部は、シリカ粉末を主成分とし、前記スラリー層から溶媒が揮発したバインダー層とシリカ砂からなるスタッコ層とが交互に任意回数積層された後焼成されており、安定な構造を有する結晶質のシリカ粒子同士が拡散結合している成形体である。すなわち、本発明によるシリコン溶融用ルツボは、従来用いられている石英ルツボの強度を補強したものになっているので、高温での軟化が抑制される。
【0012】
また、本発明に係るシリコン溶融用ルツボは、溶融シリコンに直接接して収容する部分は、それに最も好適とされている従来用いられている石英ルツボでできているので、該石英ルツボが有する利点はそのまま活かされる。
【0013】
さらに、前記外層部の外側面はシリカ砂による凹凸を有するため、シリコン溶融用ルツボは、その外側面の凸部がカーボン製外ルツボあるいはカーボン製支持具の内側表面と点接触状態で支持される。この場合、その接触面積は小さいため、その間の反応が抑えられ、発生する一酸化炭素の量は低減される。
【0014】
本発明に係るシリコン溶融用ルツボと該ルツボの半径方向外方を開放状態としてその底面部を支持するカーボン製部材とを具備したシリコン単結晶引上装置の場合、シリコン溶融用ルツボの外側面とカーボン製部材とは点接触状態になることから、その間の反応が抑制されて一酸化炭素の発生を低減できるのはもちろんのこと、この場合、その一酸化炭素は、シリコン溶融用ルツボの外側下部から発生し、チャンバー上部から流れるアルゴンガス流によってそのまま下部に流されてチャンバー外に排気されるため、シリコン溶融用ルツボ内の溶融シリコンに取り込まれる量は少ない。また、カーボン製部材はシリコン溶融用ルツボの側面部に配置した発熱体に面しないので、該発熱体による加熱が抑制されることも、前記反応を抑え一酸化炭素の発生の低減につながる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るシリコン溶融用ルツボおよびその製造方法の好適な実施の形態を図を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係るシリコン溶融用ルツボの製造方法ののフローチャートである。まず、ステップS01において、従来型の石英ルツボを用意する。次に、ステップS02において、この石英ルツボを、シリカ粉末とコロイダルシリカとを混合してなるスラリー中に浸漬した後引き上げて、その外面にスラリー層を形成する。次に、該スラリー層の表面に、ステップS03において、該スラリー層の厚さより平均粒径が小さいシリカ砂を散布してスタッコ層を形成する。次に、このステップS02とステップS03の工程をさらに任意回数繰り返し、スラリー層とスタッコ層とを交互に積層した後、最後にスラリー層を形成して、外層部を形成する。
【0017】
次にステップS04において、この外層部が形成された石英ルツボを、600〜1200℃で0.5〜12時間加熱保持して焼成することにより、シリコン溶融用ルツボができあがる。
このようにして作製されたシリコン溶融用ルツボは、強度が高く、高温軟化が抑制される。
【0018】
図2は、シリコン溶融用ルツボ1の拡大した断面の模式図である。実際のシリコン溶融用ルツボでは通常外層部に多数層積層しているが、この模式図では、バインダー層2が三層でスタッコ層3が二層だけ描いている。
このようにして成形されたシリコン溶融用ルツボ1は、その外側面1b、すなわち、カーボン製外ルツボ10に実際に接触して支持される面は、シリカ砂7による凹凸が形成されている。この凹凸は、前記カーボン製外ルツボ10の内面10aの凹凸を無視できるほど大きいため、シリコン溶融用ルツボ1は、その外側面1bの凸部8がカーボン製外ルツボ10の内面10aに点接触して支持される。
一方、図示していないシリコン溶融用ルツボ1の石英ルツボ部4の内側面は、従来型の石英ルツボの場合と同様に平坦である。
【0019】
従来型の石英ルツボの場合、該石英ルツボは、図2でいうと、石英ルツボ部4の平坦面4aと、カーボン製外ルツボ10の平坦な内面10aとが、面接触して支持されていることになる。
【0020】
一酸化炭素の発生量は、シリコン溶融用ルツボとカーボン製外ルツボとの接触面積に依存するので、該接触面積はできるだけ小さい方がよい。従って、カーボン製外ルツボと面接触する従来型のシリコン溶融用ルツボに対して、点接触する本発明のシリコン溶融用ルツボの方が、一酸化炭素の発生を抑えられ、シリコンインゴット中の炭素濃度を低減できる。
【0021】
図3は、本発明に係るシリコン単結晶引上装置のシリコン溶融用ルツボおよびカーボン製部材の近傍の模式図である。
本発明のシリコン溶融用ルツボは、強度が強く高温での軟化が抑制されているため、シリコン溶融用ルツボを外側全体から嵌合するカーボン製外ルツボを必要としない。そのため、この例においては、シリコン溶融用ルツボはその底面部をカーボン製部材により支えられているだけである。
【0022】
カーボン製部材16は、シリコン溶融用ルツボの底面部15aのみに面して該シリコン溶融用ルツボ15を支持するため、シリコン溶融用ルツボ15の底面部15aでカーボン製部材16と反応して発生した一酸化炭素ガス(図中矢印A)は、シリコン単結晶引上装置の上部から流れているアルゴンガス(図中矢印B)により下部に流されるため、シリコン溶融用ルツボ15内で溶融したシリコン32に取り込まれる量は抑制される。また、カーボン製部材16はシリコン溶融用ルツボ15の側面部15bに配置した発熱体17に面しないので、該発熱体17による加熱が抑制され、シリコン溶融用ルツボ15との反応が低減される。
【0023】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係るシリコン溶融用ルツボの製造方法によれば、以下に記載されるような効果を奏する。
【0024】
本発明に係るシリコン溶融用ルツボの外層部は、シリカ粉末を主成分とし、前記スラリー層から溶媒が揮発したバインダー層とシリカ砂からなるスタッコ層とが交互に任意回数積層された後焼成されており、安定な構造を有する結晶質のシリカ粒子同士が拡散結合している成形体である。そのため、従来用いられている石英ルツボの強度を補強したものになっている。よって、高温での軟化が抑制されるという利点がある。
【0025】
また、本発明に係るシリコン溶融用ルツボは、溶融シリコンに直接接して収容する部分がそれに最も好適とされている石英ルツボでできているため、石英ルツボが有する利点はそのまま活かされる。
【0026】
さらに、本発明に係るシリコン溶融用ルツボは、その外層部の外側の面に有するシリカ粒子による凹凸がカーボン製外ルツボの内側の面に点接触状態で接して支持されるので、その間の反応が抑制され、一酸化炭素の発生を低減することができる。
【0027】
本発明に係るシリコン溶融用ルツボを具備したシリコン単結晶引上装置の場合、シリコン溶融用ルツボとカーボン製外ルツボとの反応による一酸化炭素の発生は低減されているので、炭素濃度が低いシリコンインゴットを製造することができる。
【0028】
本発明に係るシリコン溶融用ルツボと該ルツボの半径方向外方を開放状態としてその底面部を支持するカーボン製部材とを具備したシリコン単結晶引上装置の場合、一酸化炭素は、発生するにしてもシリコン溶融用ルツボの外側下部からなので、チャンバー上部から流れるアルゴンガス流によってそのまま下部に流されてチャンバー外に排気されるため、シリコン溶融用ルツボ内の溶融シリコンに取り込まれる量は少ない。また、カーボン製部材はシリコン溶融用ルツボの側面部に配置した発熱体に面しないので、該発熱体による加熱が抑制されることも、前記反応を抑え一酸化炭素の発生の低減につながる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製造方法に係る一実施形態を示すフローチャートである。
【図2】 本発明のシリコン溶融用ルツボの一部の拡大断面の模式図である。
【図3】 本発明のシリコン溶融用ルツボとカーボン製部材の一実施形態を示す図である。
【図4】 従来のシリコン単結晶製造装置の一実施形態を示す図である。
【符号の説明】
1 シリコン溶融用ルツボ
1b 外側面
2 バインダー層
3 スタッコ層
4 石英ルツボ部
4a 平坦面
7 シリカ砂
8 凸部
10 カーボン製外ルツボ
10a 内面
15 シリコン溶融用ルツボ
15a 底面部
15b 側面部
16 カーボン製部材
17 発熱体
21 チャンバー
22 ルツボ
23 発熱体
24 シリコン単結晶引上装置
30 軸
32 溶融シリコン
40 種結晶
41 シリコン単結晶
A 一酸化炭素ガスの流れ
B アルゴンガスの流れ
Claims (1)
- シリコン溶融用ルツボの製造方法において、石英ルツボの外面に非晶質のシリカ粉末を混合したスラリーを付着した後、該スラリー層表面に非晶質のシリカ砂を散布してスタッコ層を形成する操作を任意回数繰り返して、前記スラリー層と前記スタッコ層とを交互に積層して外層部を形成後、そのルツボを、600〜1200℃で0.5〜12時間加熱保持して焼成し、前記外層部を結晶質のシリカ同士が焼結により拡散結合した成形体とすることを特徴とするシリコン溶融用ルツボの製造方法。
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