JP4213787B2 - 内燃機関の排気部品における仕切板構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関の排気部品における仕切板構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、内燃機関のエキゾーストマニホールドにおいて、排気ガスの干渉を防止しエンジン出力を向上させる手段として1本の排気管を仕切板によって2つの流路に分割したデュアルエキゾーストマニホールドが公知である。
【0003】
このような排気管における仕切板の両側部を排気管に固着するものにおいては、該仕切板がこれに繰り返し発生する熱応力により変形したり、固着部が疲労破断する等の問題がある。
【0004】
このような仕切板の変形を防止するために、例えば実開昭60−43115号公報に記載のように排気管内を1枚の仕切板で分割するとともにその仕切板にスリットを形成して仕切板の熱応力を吸収するもの(これを第1の従来の技術とする)や、特開平9−4451号公報に記載のように1枚の仕切板に応力吸収用リブを設けたり、仕切板を波状に形成したもの(これを第2の従来の技術とする)や、更には特開平9−209750号公報に記載のように、仕切板を組み合わされる排気管半体間に摺動可能に備えたり、2枚の仕切板を夫々片持ち構造で配置してその各他端を自由端として摺動可能に重合したもの(これを第3の従来の技術とする)が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記第1の従来の技術においては、1枚の仕切板を用い、これにスリットを形成するため、該スリット部において両側の流路が連通し、両側の流路を流通する排気ガス相互が干渉し、デュアルタイプによるエンジン出力の向上の効果を阻害する問題がある。
【0006】
また、上記第2の従来の技術においては、仕切板に形成した応力吸収リブや仕切板の波形状により排気ガス流の乱れを起こし、乱流による異音を発生させるおそれがある。
【0007】
更に、上記第3の従来の技術においては、仕切板が片持ち構造の場合に成り立つ型式であるため、仕切板を排気管の両側へ固着する型式には採用できない。
そこで本発明は、仕切板の両側を排気管に固着する型式のものにおいて、上記の各問題を解消する排気系部品の仕切板構造を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1記載の第1の発明は、排気ガスが流れる管体内を仕切板によって2つの流路に分割するものにおいて、上記仕切板を複数の板を重合して構成するとともに夫々の仕切板にスリットを、相互に交差しないように形成したことを特徴とするものである。
【0009】
上記のように複数の仕切板に形成されたスリットを交差させることにより、分割された2つの流路は上記スリット部では連通しない。したがって、2つの流路を流通する排気ガスが相互に干渉せず、排気ガスを分流してエンジン出力の向上を図る目的は達成される。
【0010】
また、上記仕切板が高温の排気ガスにより熱膨張したり、冷却により熱収縮した場合には、仕切板に形成されたスリットによりその熱応力を吸収し、仕切板や管体の変形やこれらの接着部の破損が防止される。特に、仕切板の両側が管体に固着されて拘束されたものにおいても、上記の変形等が防止される。
【0011】
更に、仕切板の熱応力吸収構造がスリットであるため、上記従来のように仕切板にリブを形成したり、仕切板を波形に形成したものにみられるような排気ガスの乱流を発生させない。
【0012】
請求項2記載の第2の発明は、上記第1の発明において、前記仕切板を管体とは別体に形成して仕切板の両側端を管体に固着したものである。
本発明においても上記第1の発明と同様の作用を発揮する。
【0013】
請求項3記載の第3の発明は、上記第1の発明において、前記仕切板が管体の一部を偏平化して形成され、この管体を一対、夫々の仕切板を重ね合わせて固着したものである。
本発明においては、上記第2の発明のように、仕切板を管体と別体に形成することなく管体と一体成形される。
【0014】
請求項4記載の第4の発明は、上記第1乃至第3のいずれかの発明において、上記仕切板が2枚の板で構成され、一方の仕切板のスリットが、他方の仕切板のスリットに対して管体の軸心を中心として軸対称に配置されているものである。
【0015】
本発明においては、スリットを同一位置に形成した2枚の仕切板或いは2本の管体を、相互に反転させて重合することにより、上記第1の発明のように、両スリットが交差しないような仕切板を構成できる。
【0016】
請求項5記載の第5の発明は、上記第1乃至第4のいずれかの発明において、管体を排気系に設置される触媒ケース用の流通管としたものである。
本発明においては、触媒担体へ2つの排気流路で排気ガスを流通させる場合に、上記のように排気ガスを干渉させることなく流通できる。更に、仕切板の熱変形によって仕切板と触媒担体との当接位置がずれることがないのでデュアル通路が確保できる。更には、触媒担体の変形破損を防止することができる。
【0017】
請求項6記載の第6の発明は、上記第1乃至第4のいずれかの発明において、管体を内燃機関の排気管としたものである。
本発明においては、例えば内燃機関のデュアルエキゾーストマニホールドに適用して上記の作用を発揮させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図に示す好ましい実施例に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図3は本発明を内燃機関の排気系に設けられる触媒容器のコーンに適用した第1実施例である。
【0019】
図1において、触媒担体1は金属製のケース2内に収納され、そのケース2の前端には管体である前部コーン3が溶接され、後端には管体である後部コーン4が溶接されている。上記前部コーン3は図2(b)に示すように、両端が開口する略裁頭円錐状の管で形成され、その大径側に形成した折返し片3aを上記ケース2の端部に嵌合するようになっている。
【0020】
上記後部コーン4も上記前部コーン3と同様に形成されている。
上記前部コーン3内には、その前部コーン3内をその中心を通って径方向に2分する2枚の仕切板5,6が配置され、該仕切板5,6によって1本の管体を2つの流路7,8に分割している。
【0021】
上記2枚の仕切板5,6は、相互に摺動可能に重合配置するとともに夫々の径方向に位置する両側端5a,5b,6a,6bは前部コーン3の内周面に溶接もしくはロー付けで固着されている。
【0022】
上記一方の仕切板5にはスリット9,10が、他方の仕切板6にはスリット11,12が、相互に交差しないように形成されており、図の実施例においては、一方の仕切板5に、前部コーン3の軸心X−Xより径方向の一方に偏位して第1のスリット9が軸方向に形成され、軸心X−Xより径方向の他方に、上記第1のスリット9の偏位置より大きく偏位して第2のスリット10が軸方向に形成されている。更に、第1のスリット9の一端9aは仕切板5の一端に開口し、他端9bは仕切板5の他端まで達せず閉口されている。また、第2のスリット10の一端10aは仕切板5の他端に開口し、他端10bは仕切板5の一端まで達せず閉口されている。
【0023】
上記他方の仕切板6の第1のスリット11は、前部コーン3の軸心X−Xを中心として上記一方の仕切板5の第1スリット9と軸対称に配置形成され、他方の仕切板6の第2スリット11は、前部コーン3の軸心X−Xを中心として上記一方の仕切板5の第2スリット10と軸対称に配置形成されている。このような配置により、一方の仕切板5のスリット9,10が他方の仕切板6のスリット11,12と交差、すなわち連通しないようになっている。更に、このようにスリット9,10と11,12を対称位置に形成することにより、2枚の仕切板5,6を同一形状のものとし、相互に反転配置すればよい。これにより、部品点数の低減を図ることができる。
【0024】
なお、上記スリット9,10と11,12の形状と配置は、これらが交差しないように設定するもので、上記の実施例に限定するものではない。また、夫々の仕切板5,6に各1本のスリットを形成するとともにこれらが交差しないように形成してもよい。
【0025】
また、上記後部コーン4内にも上記の仕切板5,6と同様の仕切板13,14が上記と同様に配置固着され、その仕切板13,14は、上記前部コーン3の仕切板5,6と同一位相で配置されている。
【0026】
上記前部コーン3の上流端には内燃機関からの図示しない上流側排気管が接続され、後部コーン4の後流端には図示しない下流側排気管が接続される。更に、上記上流側排気管と下流側排気管は、夫々の管内を仕切板で2分割した、いわゆるθ管で構成され、夫々の管の一方の流路が上記一方の流路7と連通し、他方の流路が上記他方の流路8と連通するようになっている。
【0027】
以上の構造において、前部コーン3内の分割された流路7,8に流入した排気ガスは、仕切板5,6に形成された両スリット9,10,11,12が相互に交差しないように配置されているため、仕切板5,6で分割された流路7,8は連通せず、該両流路7,8を流通する排気ガスは相互に干渉しない。したがって、流路を分割してエンジン出力の向上を図る目的は達成される。
【0028】
また、仕切板5,6が高温の排気ガスにより熱膨張したり、冷却により熱収縮した場合には、これがスリット9〜12により吸収され、仕切板5,6に作用する熱応力を逃がすことができる。そのため、仕切板5,6や前部コーン3、更には触媒担体1の変形破損を防止できる。
【0029】
更に、スリットであるため、前記従来の突条リブや波形のものに比べて排気ガスの流れを乱すことが極めて少なく、特に上記のようにスリット9〜12を前部コーン3の軸方向に形成することにより、排気ガスの流れの乱れを一層防止できる。
【0030】
また、後部コーン4においても上記と同様の作用を発揮する。
図4は本発明を1本の管体内を2分割した排気管、例えばデュアルエキゾーストマニホールドなどに適用した第2実施例を示す。
【0031】
すなわち、1本の管体である排気管15内に、2枚の仕切板16,17を上記実施例と同様に排気管15に固着配置し、夫々の仕切板16,17に各1本のスリット18,19を排気管15の軸心X−Xを中心として対称に、かつ交差しないように配置形成したものである。また、該第2実施例において、両仕切板16,17は、排気管15の軸方向全長に渡って設けてもよいが、図4(b)に示すように、一方の仕切板16は排気管15の軸方向全長に渡って設け、他方の仕切板17は図4(b)に示すように短尺にして必要な部分にのみ設けてもよい。
【0032】
また、本第2実施例においても、スリットを上記第1実施例と同様に各仕切板16,17毎に複数個設けてもよい。
なお、上記両実施例は、仕切板を2枚としたが、2枚以上、すなわち複数並列配置してもよい。この場合も各仕切板のスリットは相互に交差しないように配置形成する。更に、上記複数の仕切板を相互にスポット溶接してもよい。
【0033】
なお、上記各実施例は、1本の円管に仕切板を設けたものであるが、その他、断面半円状の樋状体を2個組み合わせた円管等に上記の本発明の仕切板を設けてもよい。
【0034】
図5は第3実施例を示す。
本第3実施例は、上記実施例における管体と仕切板を一体成形した例である。本第3実施例は、先ず図5(a)に示す円管20の一部を図5(b)に示すように偏平化して、流路21を有する断面半円状の一方の管体22に成形する。そして、その偏平化された部分を仕切板23とし、これに、管体22の軸心X−Xより一方に偏心してスリット24を軸方向に形成する。該スリット24は上記実施例のように、その一端24aが開口し、他端24bが閉口している。
【0035】
また、上記と同様に、円管の一部を偏平化して、図5(c)に示すように、流路25を有する断面半円状の他方の管体26を成形し、かつ、その偏平化された部分を仕切板27としてこれに上記と同様のスリット28を形成する。なお、該スリット28は上記一方の管体22のスリット24に対して反対側へ偏心させる。
【0036】
そして、上記両管体22,26を一対として、図5(d)に示すように、夫々の仕切板23,27を重ね合わせて接合し、その接合部29を溶接もしくはロー付けして、図5(d)に示すように、仕切板23,27で分割された2つの流路21,30を有する排気部品とする。
【0037】
本第3実施例においても上記実施例と同様の作用、効果を発揮できる上に、特に管体の一部を偏平化して仕切板を形成したので、上記実施例のような仕切板を管体の内面に溶接もしくはロー付けする作業がなく、製造が容易になり、更に、管体と仕切板が一体であるため、上記実施例のような管体と仕切板とを溶接するものに懸念される溶接部の破損はない。
また、両管体22,26における仕切板23,27のスリット24,28を軸芯X−Xより偏心させたことにより、同一形状の管体を使用して一方の管体に対して他方の管体を反転させて重合すれば、両スリット24,28を交差しないように配置できる。したがって、この実施例においても上記と同様に部品点数の低減を図ることができる。
【0038】
【発明の効果】
以上のようであるから、請求項1及び2記載の発明によれば、分割された2つの流路が連通しないようにスリットを形成したので、2つの流路を流通する排気ガスが相互に干渉せず、排気ガスを分流してエンジン出力の向上を図る目的が達成される。
【0039】
更に、仕切板の熱応力吸収をスリットで行なうようにしたので、仕切板の両側を管体に固着又は一体化することができる。そのため、特に仕切板の両側を管体に固着又は一体化して拘束するものにおいても仕切板の熱応力の発生を防止し、仕切板や管体更にはこれらの接着部の変形、破損を防止することができる。
【0040】
更に、スリットであるため、従来のリブや波形のものに見られるような排気ガスの乱流による異音の発生がない。
請求項3記載の発明によれば、仕切板と管体を別体で形成するものにおける管体の内面での溶接やロー付け作業が不要になり、製造が容易になる。更に、仕切板が管体と一体であるため、上記の溶接等の破損のおそれがない上に、部品管理も容易になる。
請求項4記載の発明によれば、2枚の仕切板或いは2本の管体に同一のものを使用できるので、部品点数の削減、製造コストの低減が可能である。
【0041】
請求項5記載の発明によれば、触媒担体への管体(コーン)においてデュアル通路が確保でき、かつ上記と同様に、管体(コーン)と仕切板、更には触媒担体の変形、破損を防止できるため、触媒容器として有効である。
【0042】
そして、請求項6記載の発明によれば、内燃機関の排気管において上記の効果を発揮でき、例えばデュアルエキゾーストマニホールド等に適用して有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を触媒容器に適用した第1実施例を示す側断面図で、図2(a)におけるA−A線断面図。
【図2】(a)は図1における管体(コーン)の端面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図。
【図3】図2(b)に示す仕切板の斜視図。
【図4】本発明を排気管に適用した第2実施例を示すもので、(a)は端面図、(b)は側断面図。
【図5】(a)〜(d)は本発明の第3実施例を示す製造工程図。
【符号の説明】
1…触媒担体 2…ケース
3,4…管体であるコーン 5,6,13,14…仕切板
7,8…流路 9〜12…スリット
15…管体である排気管 16,17…仕切板
18,19…スリット 22,26…管体
23,27…仕切板 24,28…スリット
Claims (6)
- 排気ガスが流れる管体内を仕切板によって2つの流路に分割するものにおいて、上記仕切板を複数の板を重合して構成するとともに夫々の仕切板にスリットを、相互に交差しないように形成したことを特徴とする内燃機関の排気部品における仕切板構造。
- 前記仕切板を管体とは別体に形成して仕切板の両側端を管体に固着した請求項1記載の内燃機関の排気部品における仕切板構造。
- 前記仕切板が管体の一部を偏平化して形成され、この管体を一対、夫々の仕切板を重ね合わせて固着した請求項1記載の内燃機関の排気部品における仕切板構造。
- 上記仕切板が2枚の板で構成され、一方の仕切板のスリットが、他方の仕切板のスリットに対して管体の軸心を中心として軸対称に配置されている請求項1乃至3のいずれかに記載の内燃機関の排気部品における仕切板構造。
- 管体が排気系に設置される触媒ケース用の流通管である請求項1乃至4のいずれかに記載の内燃機関の排気部品における仕切板構造。
- 管体が内燃機関の排気管である請求項1乃至4のいずれかに記載の内燃機関の排気部品における仕切板構造。
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