JP4213424B2 - 継手及び継手用の締付部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水道配管、温水配管、床暖房、ロードヒーティング等に使用されるパイプ用の継手及び継手用の締付部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の継手は、筒状をなし、内周から内筒部が突設された継手本体と、継手本体の先端部に螺合接続される筒状の押輪と、継手本体と押輪との間に配設されるCリング状をなす締付部材とより主に構成されている。当該継手は、継手本体の先端側に締付部材を配置し、手作業で押輪を継手本体の先端部に緩やかに螺合接続して組み立てられる。そして、組み立てられた継手は、継手本体の基端部を水道配管に接続し、次いで、パイプの端部を押輪内を介して継手本体内に挿入し、内筒部に外嵌させることによって組み付けが行われる。
【0003】
組み付けの後、スパナ等を使用して継手本体に押輪を螺合すると、同押輪を締め付けるに従って、締付部材が継手本体内に押し込まれる。すると、Cリング状をなす締付部材は縮径し、パイプの外周面を締め付ける。そして、継手本体に押輪が固く螺合接続された状態で締付部材が継手本体と押輪との間に位置決めされ、パイプの抜け出しが規制される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の継手においては、締付部材は金属製であり、同締付部材を全体的に曲げて縮径させるには押輪を非常に強い力で締め付けなければならないという問題がある。また、締付部材が縮径する際に生じる反力によって継手本体に対する押輪の締め付けが不十分になったり、締付部材が不均一に曲がって縮径したり等するおそれもある。この場合、締付部材によるパイプの締め付けも不十分となり、継手からパイプが抜け出したり、パイプの内周面と内筒部の外周面との間に隙間が形成され、同隙間から漏水したり等のような不具合が発生するという問題もあった。
【0005】
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、締付部材を軽い締付力で縮径させることができ、同締付部材の縮径が不十分であることに起因する不具合を解消することができる継手及び継手用の締付部材を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の継手の発明は、筒状をなす継手本体と、同継手本体の一端部に螺合される押輪と、当該継手本体と押輪との間に配設される筒状の締付部材とを備え、該継手本体内にパイプの端部が挿入された状態で継手本体に押輪を螺合するに伴い、該締付部材が縮径し、該パイプの外面を締め付けることによって同パイプを抜け止めするように構成した継手であって、前記締付部材は、その外周面が継手本体に押輪を螺合する方向に向かうに従い縮径するテーパ状に形成され、該テーパ状の面に複数の分割片と、各分割片をそれぞれの間に隙間が設けられた状態で互いに接続するための接続部とから形成されるとともに、継手本体に押輪を螺合して締付部材が縮径する際、前記接続部が破断可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載の継手の発明は、請求項1に記載の発明において、前記接続部は、継手本体に対するパイプの挿入方向の前進側となる各分割片の端部を接続するものであることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載の継手の発明は、請求項1に記載の発明において、前記接続部は、継手本体に対するパイプの挿入方向の後退側となる各分割片の端部を接続するものであることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に記載の継手用の締付部材の発明は、パイプを接続可能な継手を構成する筒状をなす継手本体と、同継手本体の一端部に螺合される押輪との間に配設され、該継手本体内にパイプの端部が挿入された状態で継手本体に押輪を螺合するに伴って縮径し、該パイプの外面を締め付けることによって同パイプを抜け止めするように構成した継手用の締付部材であって、該締付部材の外周面は継手本体に押輪を螺合する方向に向かうに従い縮径するテーパ状に形成され、該テーパ状の面に複数の分割片と、各分割片をそれぞれの間に隙間が設けられた状態で互いに接続するための接続部とから筒状に形成されるとともに、継手本体に押輪を螺合して縮径する際、前記接続部が破断可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1〜図3(a),(b)に示すように、パイプ11を接続可能に構成された継手12は、略円筒状の継手本体13と、締付部材としての円筒状の押圧リング15と、ナットよりなる押輪17とから主に構成されている。また、継手本体13の内部には略円筒状の内筒部14が配設されている。押圧リング15と押輪17との間には、円環状をなす座金16が介在されている。前記継手本体13、内筒部14、押圧リング15、座金16及び押輪17は、それぞれ合金(真鍮、青銅等)等の金属材料により形成されている。前記パイプ11は、ポリエチレン、ポリブテン等の合成樹脂により円筒状に形成されている。
【0013】
まず、前記継手本体13について説明する。
継手本体13の基端部の外周面には、第1雄ねじ部18が螺刻され、水道配管等の管体(図示せず)と螺合可能になっている。継手本体13の先端部の外周面には、第2雄ねじ部27が螺刻されている。また、継手本体13の長手方向の中央部における内周面には、当接面19が継手本体13の軸線と直交するように円環状に設けられている。継手本体13内には前記当接面19を境界として、当接面19より基端側(図2(a)では右端側)には輸送液体が流通可能な導入路20が形成され、当接面19よりも先端側(図2では右端側)には、第1雌ねじ部21が螺刻されている。
【0014】
当該第1雌ねじ部21は、継手本体13と別体に形成された前記内筒部14の基端部に螺刻された第3雄ねじ部30と螺合可能に形成されている。そして、内筒部14の基端面が前記当接面19に当接するまで前記第3雄ねじ部30を第1雌ねじ部21に螺合することにより、内筒部14が継手本体13に螺合接続されている。なお、前記第1雌ねじ部21と第3雄ねじ部30とは嫌気性の接着剤により接着される。
【0015】
前記内筒部14の先端外周縁には、同内筒部14の先端に向かうに従い縮径する第2テーパ面31が形成され、その第2テーパ面31より基端側の外周面には、収容溝32が内筒部14の外周全体にわたって凹設されている。この収容溝32には、ゴム材料製の断面円形状をなすシール部材としてのシールリング33が4本嵌着されている。これらシールリング33の外径はそれぞれ内筒部14の外径と同じ長さに設定され、シールリング33の厚みが収容溝32の深さと同じになるように設定されている。
【0016】
当該内筒部14の外周面には同内筒部14の基端から収容溝32まで周方向に沿って螺旋状に延びてその収容溝32と連なり、さらに、収容溝32から第2テーパ面31にまで螺旋状に延びる凹溝14aが凹部として凹設されている。即ち、凹溝14aは収容溝32に嵌着されたシールリング33を跨いで内筒部14の先端から基端まで延びるように形成されている。
【0017】
前記継手本体13の先端側の内周面と内筒部14の外周面との間には、パイプ11を継手本体13内に挿入するための円環状の挿入空間37が形成されている。同挿入空間37の内奥部には、前記当接面19に向かうに従い縮径する傾斜壁38が形成され、その傾斜壁38より当接面19側には円環状の縮径部39が形成されている。この縮径部39にはゴム材料製の断面円形状をなすOリング40が嵌着されている。
【0018】
継手本体13の略中央部には、平面略円形状をなす貫通孔23が1箇所形成されている。この貫通孔23には、図1に示すように、ポリアセタール等の合成樹脂製の略円筒状をなすカラー24が嵌入されている。同カラー24内にはポリアセタール等の合成樹脂製の略円柱状をなすシャフト25が嵌挿されている。同シャフト25は、パイプ11の挿入状態に応じて貫通孔23内を継手本体13の軸線と直交する方向に移動可能に構成されている。つまり、パイプ11が挿入されていない状態ならば、シャフト25は、その外端部が貫通孔23内に没入し、かつ内端部が貫通孔23から継手本体13内に突出する位置となる。これとは逆に、パイプ11が挿入された状態ならば、シャフト25は、その外端部が貫通孔23から外方に突出し、かつ内端部が貫通孔23に没入する位置となる。
【0019】
次に、前記押輪17について説明する。
押輪17の基端部の内周面には、前記継手本体13の第2雄ねじ部27と螺合可能な第2雌ねじ部41が螺刻されている。この第2雌ねじ部41より先端側には、係止面44が押輪17の軸線と直交するように円環状に形成されている。押輪17の先端部の内周面には収容凹所45が全周にわたって凹設されている。この収容凹所45には、パイプ11の継手12からの抜け出しを防止するためのゴム材料製の断面円形状をなす抜け出し防止リング46が嵌着されている。
【0020】
次いで、前記押圧リング15について説明する。
前記継手本体13の先端側の内周面には、同継手本体13に押輪17を螺合する方向、つまり継手本体13の先端側から内部に向かう方向に向かうに従って縮径する第1テーパ面29が形成されている。押圧リング15の外周面は、この継手本体13の第1テーパ面29に対応して、継手本体13に押輪17を螺合する方向に向かうに従い縮径する第3テーパ面47となっている。そして、押圧リング15は、継手本体13と押輪17との間に配設されている。
【0021】
この状態で前記座金16は、押圧リング15と押輪17の係止面44との間に介在されている。また、押圧リング15の内周面には、パイプ11を継手本体13内に抜け止めするための凹凸面が全面にわたって形成されている。加えて、パイプ11の挿入方向の後退側、つまりパイプ11の入口側となる押圧リング15の先端部において、その内周縁には面取部15cが設けられている。
【0022】
当該押圧リング15は、4個の楔状をなす分割片15aと、各分割片15aをそれぞれ接続する接続部15bとから形成されている。また、同接続部15bは、パイプ11の挿入方向の前進側となる各分割片15aの基端部をそれぞれ接続している。そして、押圧リング15は、分割片15aと接続部15bとの境界部分、あるいは接続部15b自身が曲がったり、接続部15bが折れて各分割片15aが切離されたり等して、各分割片15aの間の切り欠き、つまり隙間が縮まることにより、縮径可能に構成されている。
【0023】
同押圧リング15は、金属筒の周壁に軸線方向へ延びる切り欠きを周方向へ等間隔おきに4箇所形成することによって製造されている。つまり、金属筒の周壁を切り欠く際、同金属筒の一端縁を切削することなく周壁の極僅かな一箇所を残すことにより、この残された一箇所が接続部15b、切り欠き間に挟まれた周壁部分が分割片15aとして構成されている。
【0024】
前記接続部15bの軸線方向の長さが短いほど、接続部15bでの曲がり、折れ等が発生しやすくなるため押圧リング15を縮径させやすくなる。しかし、過剰に短いと切削作業がしづらくなり、また強度不足で継手本体13への組み付け時等に各分割片15aが切離されてしまうおそれがある。なお、接続部15bの軸線方向の長さを過剰に長くすると、接続部15bが曲がったり、折れたり等せず、押圧リング15が縮径すらしなくなるおそれがある。従って、接続部15bの軸線方向の長さは、押圧リング15を容易に縮径させることができる程度に短く、かつ切削作業を行いやすく所望する強度を維持することができる程度に長くすることが好ましい。具体的に接続部15bの軸線方向の長さは、好ましくは0.05〜2.0mmであり、より好ましくは0.1〜1.0mmであり、さらに好ましくは0.2〜0.5mmである。
【0025】
また、各分割片15a間の隙間が幅広なほど、押圧リング15の縮径率が大きくなり、また切削作業がしやすくなる。しかし、隙間が過剰に幅広となると、縮径した押圧リング15でパイプ11の外周面を締め付ける際、各分割片15a間に大きな隙間が形成されてしまう。この状態では、外部から加わる衝撃又は振動、継手12に対するパイプ11の回転、移動等により各分割片15aがパイプ11に対して位置ずれするおそれがある。すると、各分割片15aでパイプ11の外周面を均一に締め付けることができなくなり、パイプ11の引き抜きに対する抗力の低減、水のシール性の低下等のような、締付部材の締付力が不十分となることに起因する不具合が発生するおそれがある。一方、各分割片15a間の隙間が過剰に幅狭となれば、押圧リング15は、パイプ11の外周面を十分に締め付けるまで縮径することができず、パイプ11の抜け出し等のような締付部材の締付力が不十分であることに起因する不具合が発生するおそれがある。従って、各分割片15a間の隙間は、パイプ11の外周面を十分に締め付けるまで縮径させることができる程度に幅狭で、かつ縮径した状態で各分割片15a間に隙間がない、又は若干の余裕がある程度に幅広とすることが好ましい。
【0026】
次に、上記のように構成された継手12の作用を説明する。
さて、継手12の組み付け作業は、次のようにして行われる。すなわち、図2(a),(b)に示したように、まず、継手本体13の先端側に押圧リング15と座金16が配置された状態で、継手本体13に押輪17が手作業で緩やかな締め付けで螺合される。次いで、継手本体13の第1雄ねじ部18が管体(図示せず)に接続される。そして、継手本体13内の挿入空間37にパイプ11の端部が押輪17内を介して挿入され、パイプ11の端部が内筒部14に外嵌される。
【0027】
図3(a),(b)に示したように、パイプ11の端部が挿入空間37に挿入されると、パイプ11の端部がシャフト25の内端部に押し当たって、シャフト25は継手本体13の外周面に向かって移動される。その結果、シャフト25の外端部は、貫通孔23内に没入した状態から外方へ突出した状態へと変位される。このため、パイプ11の端部の継手本体13の挿入空間37への挿入深さを視認することができる。
【0028】
その後、継手本体13に押輪17が手作業で固く締め付けられ、仮締め状態で螺合される。このとき、押圧リング15は、押輪17を締付けるに従って、第3テーパ面47を第1テーパ面29に摺接させながら継手本体13の内奥へ押し込まれる。すると、第1テーパ面29への第3テーパ面47の摺接により、各分割片15aが接続部15bを中心にそれぞれの間の隙間を押圧リング15の先端側から徐々に縮める方向へ回動され、押圧リング15が縮径され始める。そして、押圧リング15を縮径させる力が接続部15bの強度を上回ったとき、各接続部15bが破断し、各分割片15aが切離される。
【0029】
押輪17を仮締め状態としたときに切離された各分割片15aは、それぞれが継手本体13とパイプ11との間に打ち込まれた楔として機能する。つまり、当該押圧リング15は、切離された各分割片15aを継手本体13とパイプ11との間に押し込む力を主に必要とし、従来の締付部材のように締付部材全体を湾曲させて縮径変形させるための大きな力を必要としない。この各分割片15aを継手本体13とパイプ11との間に押し込む力は、手作業でも十分に足る力である。従って、押輪17の仮締め作業を軽い力で行うことが可能となる。
【0030】
その後、各分割片15aは、押輪17を締付けるに従って、座金16を介してそれぞれに均等な力が加えられ、継手本体13の内奥へ押し込まれる。そして、継手本体13との間に4つの分割片15aが押し込まれたパイプ11は、各分割片15aによって均等な力で外周面を締め付けられ、継手12に仮止めされる。この状態でパイプ11の屋内における位置調節、配置調節等が行われる。このパイプ11の位置調節、配置調節等が行われた後、継手本体13に押輪17がスパナ等の工具を使用して固く締め付けられ、本締め状態で螺合される。
【0031】
図3(a)に示したように、継手本体13に押輪17が本締め状態とされたとき、各分割片15aの基端が継手本体13の最内奥へ達し、各分割片15aはそれぞれが継手本体13と押輪17との間で位置決め固定される。この状態で、各分割片15aは、図3(b)に示したように、全体として略真円形状をなしており、それぞれの内面をパイプ11の外周面に均一に圧接させることにより、パイプ11を強固に締め付ける。また、この状態で各分割片15a間にはほとんど隙間がないため、各分割片15aは、互いの移動を規制しあい、かつそれぞれの内面をパイプ11の外周面に圧接させ、内面の凹凸をパイプ11の外周面に食い込ませることにより、継手12内からのパイプ11の抜け出しを規制する。その結果、継手本体13と押輪17との間に位置決めされた各分割片15aにより、パイプ11は継手本体13内に強固に抜け止めされる。また、各分割片15aは、それぞれが楔として機能しており、パイプ11の引き抜き力に対して強い抗力を発揮する。
【0032】
一方、各分割片15aによって締め付けられたパイプ11は、内筒部14の外周面に圧接され、収容溝32内及び凹溝14a内に入り込む。収容溝32内に入り込んだパイプ11は各シールリング33に圧接され、その結果、シールリング33は圧接に伴って弾性変形し、互いに面接触するとともに、収容溝32の内面及びパイプ11の内周面に対しても面接触される。そして、パイプ11の内周面と内筒部14の外周面との間における水に対するシール機能がシールリング33により発揮され、かつシールリング33の水圧に対する耐圧性が向上される。
【0033】
上記のようにして継手12の組み付け作業が行われた後、同継手12に所定の水圧を加えることで水圧試験が行われる。同水圧試験においては、各分割片15aによるパイプ11の締め付けが十分であるかが確認される。すなわち、パイプ11の締め付けが不十分であるとき、パイプ11の内周面は、内筒部14の外周面に配設された各シールリング33に対して軽く接触した状態となる。この状態で水圧試験を行うと、同シールリング33とパイプ11との間から漏出した水が凹溝14aを通り、挿入空間37を介して継手本体13と押輪17との接続部分等から流出する。この結果、各分割片15aによるパイプ11の締め付けが不十分であることが作業者により確認され、押輪17の増し締めが行われる。
【0034】
以上詳述した第1実施形態によれば次のような効果が発揮される。
・ パイプ11を締め付け、かつ抜け止めするための押圧リング15は、4個の楔状をなす分割片15aと、各分割片15aをそれぞれ接続する接続部15bとから形成されている。そして、継手本体13に押輪17を螺合し、締め付けて押圧リング15を縮径させるときには、接続部15bが破断することにより、各分割片15aが切離される。このため、各分割片15aを継手本体13の内奥へ押し込む力を主に必要とし、押圧リング15全体を湾曲させて縮径変形させるための力を加える必要はない。従って、押輪17の締付力を軽くすることができ、その軽い締付力で押圧リング15を容易に縮径させることができる。
【0035】
・ また、押圧リング15の接続部15bが破断して切離された各分割片15aは、それぞれが継手本体13の内周面とパイプ11の外周面との間に打ち込まれた楔として機能する。そして、各分割片15aは、全体として略真円形状を維持しながら、それぞれの内面をパイプ11の外周面に均一に圧接させる。このため、パイプ11が強固に締め付けられ、抜け出しが規制されつつ引き抜きに対しては強い抗力が発揮され、またパイプ11の内周面と内筒部14の外周面との間における水に対するシール機能が向上される。従って、押圧リング15の縮径が不十分であることに起因する不具合の発生を解消することができる。
【0036】
・ また、接続部15bは、パイプ11の挿入方向の前進側となる押圧リング15の基端部に配置されている。このため、パイプ11の挿入時には、同パイプ11が押圧リング15に接触しても、接続部15bを中心に分割片15aが若干移動し、開口径を拡げることにより、パイプ11の挿入時の引っ掛かりを抑制することができる。
【0037】
・ また、接続部15bが押圧リング15の基端部に配置されていることから、押輪17の仮締め時には、押圧リング15を縮径させようとする力が接続部15bにいち早く加わり、同接続部15bが迅速に破断される。このため、各分割片15aがそれぞれの内周面をパイプ11の外周面に均等に接触させ、これを締め付けることができる。従って、継手本体13に対して押輪17を仮締めした状態で、パイプ11を継手12に確実に仮止めすることができる。
【0038】
・ また、押圧リング15の先端内周縁には面取部15cが設けられている。同面取部15cは、パイプ11の挿入時に同パイプ11の端面を押圧リング15に接触させにくくするとともに、接触時にはその力を受け流すことができ、パイプ11の挿入を容易に行うことができる。
【0039】
・ また、図3(b)に示したように、パイプ11を締め付けた状態で、各分割片15aは、全体として略真円形状をなし、それぞれの間には隙間がほとんど形成されないように構成されている。従って、例えば過剰な水圧が加わる等して継手12内から水が漏出しようとする場合にも、同水を押圧リング15でシールすることができる。
【0040】
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この第2実施形態では第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0041】
図4に示すように、押圧リング15は、4個の楔状をなす分割片15aと、各分割片15aをそれぞれ接続する接続部15bとから形成されている。そして、同接続部15bは、パイプ11の挿入方向の後退側となる各分割片15aの先端部をそれぞれ接続している。従って、各接続部15bは、第1実施形態のものと比較してその厚みが厚くなっており、予想外の力が加わったりしたとき等に接続部15bが破断してしまうことを防止することができる。
【0042】
さて、第2実施形態の継手12の組み付け作業は、継手本体13内の挿入空間37へのパイプ11の端部の挿入まで、第1実施形態と同様に行われ、その後、継手本体13に押輪17が手作業で固く締め付けられ、仮締め状態で螺合される。押輪17を仮締めするとき、押圧リング15は、押輪17を締付けるに従って、第3テーパ面47を第1テーパ面29に摺接させながら継手本体13の内奥へ押し込まれる。すると、第1テーパ面29への第3テーパ面47の摺接により、各分割片15aが接続部15bを中心にそれぞれの間の隙間を押圧リング15の基端側から徐々に縮める方向へ回動される。さらに、押圧リング15の先端部を縮径させようとする力が各接続部15bに加わり、各接続部15bがそれぞれ湾曲したり、折れ曲がったり等して押圧リング15が縮径され始める。そして、パイプ11は、その外周面に各分割片15aの内周面の基端部が接触されることにより、軽い力で継手12に仮止めされる。
【0043】
この後、パイプ11の屋内における位置調節、配置調節等が行われた後、継手本体13に押輪17がスパナ等の工具を使用して固く締め付けられ、本締め状態とされる。この押輪17を本締め状態とするとき、押圧リング15を縮径させる力が接続部15bの強度を上回り、各接続部15bが破断して各分割片15aがそれぞれ切離される。切離された各分割片15aは、それぞれがパイプ11の外周面を均一に締付けながらその基端が継手本体13の最内奥へ達したとき、継手本体13と押輪17との間で位置決め固定される。そして、全体で略真円形状をなす各分割片15aにより、均一に圧接されたパイプ11は、強固に締め付けられ、継手12内からの抜け出しが規制される。
【0044】
以上詳述した第2実施形態によれば次のような効果が発揮される。
・ 第2実施形態の継手12の押圧リング15は、その接続部15bがパイプ11の挿入方向の後退側となる押圧リング15の先端部に配置されている。同接続部15bは、押輪17を仮締めするときには破断せず、押輪17を本締めするときに破断される。つまり、継手本体13に押輪17を手作業で螺合するとき、押圧リング15を縮径させるために主に必要となる力は、各接続部15bを中心に分割片15aをそれぞれ回動させる力である。このため、第1実施形態と比較して、接続部15bを破断させるための力は必要なく、その分、手作業時に加える力を低減することができる。従って、継手本体13に押輪17を仮締めするときに必要とする力を軽減することができる。
【0045】
・ また、接続部15bが押圧リング15の先端部に配置されていることから、パイプ11の挿入時、パイプ11が押圧リング15に引っ掛かっても、押圧リング15の先端部の開口径を維持することができる。従って、パイプ11の挿入時に開口径が狭まる等の不具合の発生を抑えることができる。
【0046】
・ また、接続部15bを押圧リング15の先端部に配置した場合、その厚みは、押圧リング15の基端部に配置した場合と比較して厚くなる。従って、押圧リング15の接続部15bにおける強度の向上を図ることができる。
【0047】
・ また、継手本体13に押輪17を仮締めした状態で各分割片15aが切離されておらず、またパイプ11は軽い力で仮止めされている。このため、パイプ11の挿入不足、接続違い等の場合、パイプ11の引き抜き及び再挿入を行いやすく、パイプ11の挿脱作業を簡易なものとすることができる。
【0048】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ 実施形態では、分割片15a及び接続部15bをそれぞれ4個としたが、これに限らず、それぞれ2又は3個、あるいは5個以上としてもよい。この分割片の個数は、少ないほど分割片間の隙間が広くなるため、同隙間が狭まりやすく、締付力を軽減することが可能となるが、隙間が過剰に広いと水に対するシール性は低下してしまう。一方、分割片の個数が多いほど分割片間の隙間は狭くなり、水に対するシール性は向上するが、切削作業がしづらくなるとともに、締付力が増加する。従って、分割片の個数は、水に対するシール性を維持しつつ、締付力を軽減させることができ、かつ切削作業をしやすい程度の個数とすることが好ましい。具体的に分割片の個数は、好ましくは3〜10個であり、より好ましくは4〜6個である。また、この場合、各分割片は等間隔おきに配置することが好ましい。このように各分割片を等間隔おきに配置することによって、押圧リング15は略真円状を維持しながら均等に縮径することができ、パイプの外周面を均一に締め付けることができる。
【0049】
・ 実施形態では、接続部15bを押圧リング15の基端部に設けたが、これに限らず、例えば押圧リング15の先端部又は中間部に設けてもよい。また、接続部15bは、各分割片15aの間に1つのみ設けることに限らず、2つ以上設けてもよい。
【0050】
・ 実施形態では、金属筒に切削加工を施すことによって分割片15a及び接続部15bを一体形成したが、これに限らず、分割片15aと接続部15bとをそれぞれ別体として形成し、後に組み合わせて押圧リング15としてもよい。例えば、複数の分割片15aをそれぞれ形成し、これら分割片15aをそれぞれ接着樹脂、接着剤、粘着テープ、ハンダ等の接合手段により接続して押圧リング15を形成してもよい。この場合、当該接合手段によって形成された箇所が接続部15bとなる。
【0051】
・ 実施形態では、継手本体13に第1テーパ面29を設け、これと対応して押圧リング15に第3テーパ面47を設けて押圧リング15を縮径させるように構成した。しかし、これに限らず、例えば押輪17の内周面にテーパ面を設け、これと対応するテーパ面を押圧リング15の外周面に設けてもよい。すなわち、継手本体13の内周面に内ねじとして雌ねじを螺刻し、押輪17の外周面に前記内ねじと螺合可能な外ねじとして雄ねじを螺刻する。そして、押輪17の内周面には、押輪17の螺合方向へ向かうに従って拡径するテーパ面を形成し、これと対応して押圧リング15の外周面を押輪17の螺合方向へ向かうに従って拡径するテーパ状としてもよい。この場合も、押輪17の螺合に伴い、押圧リング15を縮径させることができる。
【0052】
・ 実施形態では、シールリング33を4本設けたが、1〜3本のいずれか又は5本以上のシールリング33を収容溝32に嵌着してもよい。なお、このとき、使用されるシールリング33の本数に対応させて収容溝32の大きさを変更してもよい。又は、厚みが収容溝32の深さと同じ又は若干異なるように設定されているゴム材料製の断面長方形状をなすシールリングに変えてもよい。
【0053】
・ 実施形態では、内筒部14と継手本体13とを螺合関係により取付可能に形成したが、継手本体13の第1雌ねじ部21及び内筒部14の第3雄ねじ部30を省略し、内筒部14の基端部と継手本体13とを嵌合関係により取付可能に構成してもよい。
【0054】
・ 実施形態では、内筒部14と継手本体13とを別体に構成したが、継手本体13に内筒部14を一体形成してもよい。
・ 実施形態では、凹溝14aを内筒部14の周方向に沿って螺旋状に延びるように形成したが、収容溝32と連通するように、凹溝14aを内筒部14の長さ方向に沿って直線状、波形状に延びるように形成してもよい。
【0055】
・ 実施形態では、内筒部14に凹溝14aを凹設したが、内筒部14の外面に凸部を形成し、その凸部により押輪17の螺合状態を判別する手段としてもよい。このように構成した場合、押輪17が継手本体13の所定位置にまで螺合されていないと、凸部によりパイプ11の内周面と内筒部14との間に、内筒部14の先端から基端まで隙間が形成され、シールリング33が弾性変形せず耐圧性の低い状態となる。その結果、水圧試験を行ったとき、隙間からシールリング33に水圧が作用してシールリング33が弾性変形し、継手12の漏水の原因となる。
【0056】
・ 実施形態では、シールリング33の外径をそれぞれ内筒部14の外径と同じ長さになるように設定したが、シールリング33の外径は、内筒部14の外径と全く同じに設定されなくてもよい。即ち、押輪17が継手本体13の所定位置にまで螺合されず、水圧等の液体による圧力が凹溝14aからシールリング33に直接的に作用したとき、その圧力により弾性変形可能とするならば内筒部14の外径と若干異なるように設定されてもよい。具体的には、シールリング33の外径は内筒部14の外径より最大0.30mmまで大きく形成されてもよく、この場合はシールリング33の外周部は内筒部14の外径より0.15mm突出している。一方、シールリング33の外径は内筒部14の外径より最大0.50mmまで小さく形成されてもよく、この場合はシールリング33の外周部は内筒部14の外径より0.25mm後退している。
【0057】
・ 実施形態では、継手12と水道配管の管体とを接続して液体として水を流通させたが、継手12を温水配管の管体と接続して湯を流通させたり、床暖房、ロードヒーティング用に油、エチレングリコール等を流通させてもよい。
【0058】
・ パイプ11は、合成樹脂製のものに限らず、例えば黄銅、銅等の金属製のものであってもよい。
・ 押圧リング15は、金属製のものに限らず、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリスチレン系等の合成樹脂製のものであってもよい。
【0059】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記締付部材は、パイプの挿入方向の後退側となる端部の内周縁に面取部が設けられていることを特徴とする継手。このように構成した場合、パイプの挿入時にその端面が押圧リングに引っ掛かることを抑制することができる。
【0060】
・ 前記締付部材は、3〜10個の分割片を等間隔おきに配置した状態で接続部で接続して形成されることを特徴とする継手。このように構成した場合、押圧リングを均等に縮径させることができ、パイプを均一に締め付けることができる。
【0061】
・ 前記継手本体のパイプの挿入される端部の内周面には、継手本体に押輪を螺合する方向に向かうに従い縮径するテーパ面を形成し、前記締付部材の外周面を継手本体のテーパ面に接触させた状態で押輪を継手本体に螺合するに従って締付部材が縮径するように構成したことを特徴とする継手。このように構成した場合、押輪の継手本体に対する螺合に伴い、締付部材を確実に縮径させることができる。
【0062】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明によれば、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明によれば、締付部材を軽い締付力で縮径させることができ、同締付部材の縮径が不十分であることに起因する不具合を解消することができる。
【0063】
さらに、押輪の継手本体に対する螺合に伴い、締付部材を確実に縮径させることができる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、継手本体に押輪を仮締めした状態で、パイプを継手に確実に仮止めすることができる。
【0064】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、継手本体に押輪を仮締めするときに必要とする力を軽減することができる。
【0065】
請求項4に記載の発明によれば、軽い締付力で縮径させることができ、縮径が不十分であることに起因する不具合を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態の継手を示す分解斜視図。
【図2】 (a)は押輪と継手本体とを螺合した状態を示す半縦断面図、(b)は継手本体に押圧リングが装着された状態を示す側面図。
【図3】 (a)は押圧リングでパイプを締め付けた状態を示す半縦断面図、(b)は押圧リングでパイプを締め付けた状態を示す側面図。
【図4】 第2実施形態の継手を示す分解斜視図。
【符号の説明】
11…パイプ、12…継手、13…継手本体、15…締付部材としての押圧リング、15a…分割片、15b…接続部、17…押輪、47…締付部材に形成された第3テーパ面。
Claims (4)
- 筒状をなす継手本体と、同継手本体の一端部に螺合される押輪と、当該継手本体と押輪との間に配設される筒状の締付部材とを備え、該継手本体内にパイプの端部が挿入された状態で継手本体に押輪を螺合するに伴い、該締付部材が縮径し、該パイプの外面を締め付けることによって同パイプを抜け止めするように構成した継手であって、
前記締付部材は、その外周面が継手本体に押輪を螺合する方向に向かうに従い縮径するテーパ状に形成され、該テーパ状の面に複数の分割片と、各分割片をそれぞれの間に隙間が設けられた状態で互いに接続するための接続部とから形成されるとともに、継手本体に押輪を螺合して締付部材が縮径する際、前記接続部が破断可能に構成されていることを特徴とする継手。 - 前記接続部は、継手本体に対するパイプの挿入方向の前進側となる各分割片の端部を接続するものであることを特徴とする請求項1に記載の継手。
- 前記接続部は、継手本体に対するパイプの挿入方向の後退側となる各分割片の端部を接続するものであることを特徴とする請求項1に記載の継手。
- パイプを接続可能な継手を構成する筒状をなす継手本体と、同継手本体の一端部に螺合される押輪との間に配設され、該継手本体内にパイプの端部が挿入された状態で継手本体に押輪を螺合するに伴って縮径し、該パイプの外面を締め付けることによって同パイプを抜け止めするように構成した継手用の締付部材であって、
該締付部材の外周面は継手本体に押輪を螺合する方向に向かうに従い縮径するテーパ状に形成され、該テーパ状の面に複数の分割片と、各分割片をそれぞれの間に隙間が設けられた状態で互いに接続するための接続部とから筒状に形成されるとともに、継手本体に押輪を螺合して縮径する際、前記接続部が破断可能に構成されていることを特徴とする継手用の締付部材。
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