JP4212158B2 - 塗布装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材ウエブの表面に塗膜を形成する塗布装置に関し、特に、所定速度で走行する基材ウエブを担持するバックアップロールと、バックアップロールから離間して配置され、走行する基材ウエブの表面に塗料を連続的に押出して所定厚みに塗布する塗布ヘッドとを備えた塗布装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂フィルム、樹脂シート、紙等の、連続長さを有する基材ウエブの表面に塗料を塗布する方法として、押出ダイのノズル部分を塗布ヘッドとし、走行する基材ウエブの表面に塗布ヘッドから高粘度の流体塗料を連続的に押出して所定厚みの塗膜を形成するいわゆるダイ塗布法が知られている。ダイ塗布法は、周知のロール塗布法やカーテン塗布法と異なり、塗料の押出供給量を調整することにより直接的に塗膜の厚みを制御できるので、基材ウエブの表面に長時間に渡って均一厚みの薄層塗膜を高精度に安定形成しようとする場合に有利である。しかも、ダイ塗布法を実施する塗布装置は一般に、基材ウエブに塗布されるまでの間に塗料が外気から実質的に遮断される構成を有するので、特に揮発性溶剤を含む塗料を用いる場合にも、供給中の塗料の部分乾燥に起因する色むらや塗膜内欠陥が生じ難い利点がある。
【0003】
従来、この種のダイ塗布法を実施する塗布装置は、走行する基材ウエブをバックアップロールによって担持し、塗布ヘッドのノズル端面を基材ウエブの表面から所定距離だけ離した状態で塗料を塗布するバックアップロール式塗布装置と、走行する基材ウエブを背面支持せずに、塗布ヘッドのノズル端面に沿って摺動させつつ塗料を塗布するいわゆる流体支持式塗布装置とが、適宜選択して採用されている。
【0004】
従来のバックアップロール式塗布装置では、塗布ヘッドのノズル端面とバックアップロールに担持された基材ウエブの表面との間に固定的に画成される微小な空隙を通して、塗布ヘッドから押出された塗料が流動しつつ加圧、計量され、その結果、走行する基材ウエブの表面に所定厚みの塗膜が連続的に形成される。一般に、塗布ヘッドのノズル端面は平坦面であり、ノズル端面の、基材ウエブ走行方向に関する下流端は、塗膜表面を平滑化するために真直度の高い極めて鋭利なエッジに形成されている。このような塗布装置においては、基材ウエブ上に形成される塗膜の厚みは、塗料の押出供給量を調整すると同時に、塗布ヘッドとバックアップロールとの間隔を調整することにより制御できる。
【0005】
他方、従来の流体支持式塗布装置では、曲面状に形成された塗布ヘッドのノズル端面を基材ウエブに押当て、塗布ヘッドから押出される塗料の圧力と基材ウエブがノズル端面に接触しようとする応力とが平衡した状態で基材ウエブとノズル端面との間に画成される微小な空隙により塗料を加圧、計量して、走行する基材ウエブの表面に所定厚みの塗膜を連続的に形成する。したがって、基材ウエブ上に形成される塗膜の厚みは、塗料の押出供給量を調整することにより直接的に制御できるが、このとき、基材ウエブに生じる応力(例えば基材ウエブに加わる張力)が塗膜の厚みに多大な影響を及ぼすことになる。
【0006】
これらいずれの塗布装置においても、塗布ヘッドには、ノズル端面に通ずる塗料供給路が設けられ、塗料供給路を介してノズル端面に外部から塗料が供給される。塗料供給路は、基材ウエブの走行方向に略直交する横断方向へ広がった形態でノズル端面に開口し、基材ウエブの表面に所定の横断方向寸法を有した帯状の塗膜を形成する。このとき、塗膜の厚みを基材ウエブの走行方向に均一化すると同時に、横断方向へも均一化することが要求される。その目的で従来、塗布ヘッドの塗料供給路の上流端に流路拡張部を設け、外部から塗料供給路に供給される塗料を最初に流路拡張部で基材ウエブの横断方向へ一様に行き渡らせた後に塗料供給路に流すようにしている。この構成によれば、塗料供給路を流れる塗料の圧力及び流量分布が塗料供給路全体に渡って均一化され、その結果、基材ウエブの表面に横断方向へ均一な厚みを有した塗膜が形成される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
流体支持式塗布装置では、基材ウエブを背面支持しないので、塗布作業中に基材ウエブの表面と塗布ヘッドのノズル端面との間の空隙寸法が変動し得る。したがって、塗料の供給圧力、塗料の粘度、基材ウエブのこしや厚み、基材ウエブに生じる応力(例えば基材ウエブに加わる張力)、ノズル端面の曲面形状等の諸因子が、塗膜の品質及び塗布作業の安定性に影響を及ぼす。特に、基材ウエブ上に形成される塗膜の厚みは、ノズル端面への塗料の供給圧力と基材ウエブに加わる張力との関係で容易に変化するので、上記した流路拡張部を設けたとしても、例えばμm オーダの精密な塗膜厚み制御を行うことは一般に困難である。
【0008】
これに対し、バックアップロール式塗布装置では、塗布作業中に基材ウエブの表面と塗布ヘッドのノズル端面との間の空隙寸法がバックアップロールにより固定的に維持されるので、基材ウエブ上の塗膜の厚みは、塗料の供給圧力や基材ウエブに加わる張力等の、塗布ヘッド及びバックアップロールの構造に無関係な諸因子の影響を実質的に受けない利点がある。その反面、塗布ヘッド及びバックアップロールの機械加工精度及び組立精度が、塗膜の厚み及び品質(厚みの均一性、表面の平滑性、欠陥の有無等)に直接的に影響を及ぼす。特に、基材ウエブ横断方向への塗膜厚みの均一性は、塗布ヘッドの塗料供給路の寸法精度、流路拡張部の形状、及び塗布作業中のノズル端面と基材ウエブとの間の空隙の形状の影響を受けることが判っている。
【0009】
しかし、塗料供給路の寸法精度を向上させることは、機械加工によるので限界があり、それにより例えばμm オーダの精密な塗膜厚み制御を行うことは一般に困難である。同様に、ノズル端面と基材ウエブとの間の空隙の形状は、ノズル端面及びバックアップロール表面の機械加工精度によって変化するものであり、それらの機械加工精度を超える範囲で、空隙形状つまり塗膜厚みを制御することは一般に困難である。また、塗布ヘッドの流路拡張部の形状を最適化することにより塗膜厚みを基材ウエブ横断方向へ均一化しようとすると、塗料の種類(特に粘性の相違)に対応した異形状の流路拡張部を有する多種類の塗布ヘッドを用意しなければならず、設備コストが高騰する危惧がある。
【0010】
したがって本発明の目的は、ダイ塗布法を実施するための塗布装置において、制約条件が比較的少ない従来のバックアップロール式塗布装置における上述した諸課題を解決し、構成要素の機械加工精度を超える水準の精密な塗膜厚み制御を実施でき、特に塗膜厚みを基材ウエブ横断方向へ確実に均一化できる高性能の塗布装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の本発明は、所定速度で走行する基材ウエブを外周面上に担持して回転するバックアップロールと、バックアップロールから離間して配置され、バックアップロールの外周面に対向するノズル端面及びノズル端面に通ずる塗料供給路を備えて、ノズル端面上に塗料を連続的に押出供給する塗布ヘッドと、塗布ヘッド自体の温度を制御する温度制御手段とを具備し、バックアップロールの外周面に担持された基材ウエブの表面と塗布ヘッドのノズル端面との間に形成される加圧空隙で塗料を計量しつつ、走行する基材ウエブの表面に所定厚みの塗膜を連続的に形成する塗布装置において、塗布ヘッドは、少なくともノズル端面を含む第1部分と、第1部分に隣接する第2部分とを一体に備え、第1部分と第2部分とが互いに異なる線膨張係数を有する材料からなり、温度制御手段は、塗布ヘッドの第2部分に設置される流水導管を具備し、流水導管が、基材ウエブの横断方向に見て第2部分の実質的全幅に渡り連続して延設され、温度制御手段は、流水導管を循環する媒体の温度に従い、第1部分と第2部分とのそれぞれに線膨張係数の差に起因した撓みを生じさせて、ノズル端面の表面形状を、基材ウエブの横断方向に関して凹面状及び凸面状のいずれかに変化させることで、加圧空隙の形状を調整するように、塗布ヘッド自体の温度を制御すること、を特徴とする塗布装置を提供する。
【0012】
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の塗布装置において、流水導管が、塗布ヘッドの第2部分の側面に設置される塗布装置を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明をその実施形態に基づき詳細に説明する。各図面において、同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付す。
図1に概略で示すように、本発明の一実施形態による塗布装置は、円筒状の外周面10を有し、軸12の周りで回転するバックアップロール14と、バックアップロール14の外周面10に対向するノズル端面16を有し、バックアップロール14から離間して配置される塗布ヘッド18とを備える。バックアップロール14と塗布ヘッド18とは、前者の外周面10と後者のノズル端面16との間隔を調整できるよう相対移動可能に、図示しない機台上に設置される。ただしバックアップロール14の軸12は、少なくともバックアップロール14の回転中は静止した一点に保持される。
【0014】
樹脂フィルム、樹脂シート、紙等の、連続長さを有する基材ウエブ20は、図示しない貯蔵部からバックアップロール14に送給され、バックアップロール14の所定区画の外周面10を取り巻いて、図示しない送り機構により図示矢印A方向へ所定速度で連続的に走行する。同時にバックアップロール14は、基材ウエブ20を外周面10上に密着して担持し、軸12の周りで図示矢印B方向へ円滑に回転する。
【0015】
塗布ヘッド18は、押出ダイのノズル部分を構成するものであり、平坦なノズル端面16と、ノズル端面16に通ずる塗料供給路22とを備える。塗布ヘッド18には、外部のポンプ装置24によって高粘度の流体塗料が連続的に供給される。塗料は、ポンプ装置24の設定流量に従って、塗料供給路22を介してノズル端面16上に連続的に押出され、ノズル端面16とバックアップロール14の外周面10との間の空間に連続的に供給される。
【0016】
塗料供給路22は、基材ウエブ20の走行方向に略直交する横断方向へ広がった形態でノズル端面16に開口し、連続供給される塗料により、基材ウエブ20の表面に所定の横断方向寸法を有した帯状の塗膜を形成する。塗料供給路22の上流端には、上記横断方向へ延びる管状の流路拡張部26が設けられる。ポンプ装置24から塗料供給路22に供給される塗料は、最初に流路拡張部26で横断方向へ一様に行き渡った後に塗料供給路22に流れる。それにより、塗料供給路22を流れる塗料の圧力及び流量分布が塗料供給路22全体に渡って均一化され、基材ウエブ20の表面に横断方向へ均一な厚みを有した塗膜を形成できるようになっている。
【0017】
図2に拡大して示すように、塗布ヘッド18のノズル端面16は、塗料供給路22の開口部22aを基準に、基材ウエブ走行方向Aに関して上流側に位置する第1端面部分16aと、同下流側に位置する第2端面部分16bとに分割される。ノズル端面16上に押出された塗料は、後述するように主として第2端面部分16bとバックアップロール14に担持された基材ウエブ20の表面との間に画成される微小な空隙28(以下、加圧空隙28と称する)を通して流動しつつ加圧、計量され、その結果、走行する基材ウエブ20の表面に所定厚みの塗膜が連続的に形成される。ノズル端面16の第2端面部分16bの下流端30は、塗膜表面を高精度に平滑化するために、真直度の高い極めて鋭利なエッジに形成される。
【0018】
バックアップロール14と塗布ヘッド18とは、バックアップロール14の外周面10と塗布ヘッド18のノズル端面16とが、ノズル端面16の第2端面部分16bの下流端30において、互いに最も近接して配置されるような相対位置関係を有する。それにより、第2端面部分16bと基材ウエブ20の表面との間の加圧空隙28は、ノズル端面16の第2端面部分16bの下流端30において最小寸法G1を示し、かつ、塗料供給路22の開口部22aを画成する第2端面部分16bの上流端において最大寸法G2を示す。このような加圧空隙28の形状は、塗布ヘッド18のノズル端面16と走行中の基材ウエブ20の表面との間で流動する塗料の流体圧を、第2端面部分16bの下流端30に近づくに従って上昇させるように機能し、その結果、基材ウエブ20の表面に長時間安定して均一厚みの塗膜を連続形成できるようにするものである。
【0019】
上記構成を有する塗布装置において、基材ウエブ20の横断方向への塗膜厚みの均一性は、塗布ヘッド18の塗料供給路22の寸法精度、流路拡張部26の形状、及び塗布作業中のノズル端面16の第2端面部分16bと基材ウエブ20の表面との間の加圧空隙28の形状の影響を受ける。しかし、塗料供給路22、ノズル端面16及びバックアップロール表面10の機械加工精度を向上させることは限界があり、それにより例えばμm オーダの精密な塗膜厚み制御を行うことは一般に困難である。また、流路拡張部26の形状を最適化することにより塗膜厚みを横断方向へ均一化しようとすると、塗料の種類(特に粘性の相違)に対応した異形状の流路拡張部26を有する多種類の塗布ヘッド18を用意しなければならず、設備コストが高騰する危惧がある。
【0020】
そこで図示実施形態による塗布装置では、塗布ヘッド18を、少なくともノズル端面16を含む第1部分32と、第1部分32に隣接する第2部分34とに構造的に分割した上で、それら第1部分32と第2部分34とを互いに一体的に結合して構成している。そして、第1部分32と第2部分34とを、互いに異なる線膨張係数を有する材料から作製することにより、塗布ヘッド18をバイメタル状の構造としている。
【0021】
このような構造によれば、塗布ヘッド18をその加工成形時の温度から所望温度に加熱又は冷却することにより、第1部分32と第2部分34とにそれらの膨張率の差に起因してそれぞれ所望の撓みを生じさせることができる。それにより、第1部分32に属するノズル端面16を変形させ、その結果として加圧空隙28の形状を変形させることができる。このような加圧空隙28の変形作用は、塗布ヘッド18の温度制御によるものであり、塗布ヘッド18の各構成要素の機械加工精度を超える水準の精密な塗膜厚み制御を、再現性良く極めて容易に実施できる。
【0022】
したがって、本実施形態に係る塗布装置によれば、例えば機械加工精度や組立精度の低さに起因して、加圧空隙28の形状が特に横断方向に関して理想形状から逸脱し、その結果、通常の塗布作業時に基材ウエブ20の横断方向へ塗膜の厚みがばらついている場合には、塗布ヘッド18の温度を緻密に調節して精密な塗膜厚み制御を行うことにより、塗膜厚みを横断方向へ確実に均一化することができる。さらに、本実施形態に係る塗布装置によれば、使用される塗料の性質(特に粘性)に対して塗布ヘッド18の流路拡張部26の形状が最適でない場合、また作業現場の温度と塗布装置の使用基準温度との差により塗布ヘッド18のノズル端面16が微妙に変形している場合等にも、塗布ヘッド18の緻密な温度制御により、塗膜厚みを横断方向へ確実に均一化することができる。
【0023】
一例として図3(a)及び(b)に示すように、バックアップロール14の外周面10の形状が、横断方向に関して凸面状及び凹面状に湾曲している場合、例えば塗布ヘッド18の第1部分32を第2部分34よりも線膨張係数の小さな材料から形成する。そして図3(a)の場合、塗布ヘッド18をその加工成形時の温度から所望温度に加熱して、第1部分32と第2部分34との膨張率の差によりノズル端面16を横断方向に関し凹面状に変形させる。同様に図3(b)の場合、塗布ヘッド18をその加工成形時の温度から所望温度に冷却して、ノズル端面16を横断方向に関し凸面状に変形させる。このような塗布ヘッド18の温度調節により、加圧空隙28の形状を精密に調整し、以て塗膜厚みを横断方向へ均一化することができる。
【0024】
また他の例として図4(a)及び(b)に示すように、流路拡張部26の形状に起因して基材ウエブ20上に横断方向に関し凸面状及び凹面状に湾曲した塗膜が形成され得る場合、例えば塗布ヘッド18の第1部分32を第2部分34よりも線膨張係数の小さな材料から形成する。そして図4(a)の場合、塗布ヘッド18をその加工成形時の温度から所望温度に加熱して、第1部分32と第2部分34との膨張率の差によりノズル端面16を横断方向に関し凹面状に変形させる。同様に図4(b)の場合、塗布ヘッド18をその加工成形時の温度から所望温度に冷却して、ノズル端面16を横断方向に関し凸面状に変形させる。このような塗布ヘッド18の温度調節により、加圧空隙28の形状を精密に調整し、以て塗膜厚みを横断方向へ均一化することができる。なおいずれの例においても、第1部分32を第2部分34よりも線膨張係数の大きな材料から形成することもできる。その場合、温度調節と加圧空隙28の形状変更との関係は、上記説明とは逆になる。
【0025】
塗布ヘッド18の第1部分32及び第2部分34の好適な材料の組合せとしては、例えばタングステンカーバイトとステンレス鋼とを挙げることができる。特に、ノズル端面16を含む第1部分32の材料としては、タングステンカーバイトの他に、第2部分34と異なる線膨張係数を有する異種ステンレス鋼、炭素鋼、セラミックス等の、高精度研磨が可能な種々の硬質材料を採用することができる。第1部分32と第2部分34とにそれぞれタングステンカーバイトとステンレス鋼とを採用する場合、両者の体積比率は、特に材料費を考慮すれば1:8〜10程度であることが好ましい。また、第1部分32と第2部分34とを互いに一体的に結合する手段としては、ボルト留め、ピンの打込み、ロウ付け、接着等、様々な手段を採用することができる。
【0026】
図5(a)及び(b)に示すように、塗布ヘッド18には、塗布ヘッド18自体の温度を制御する温度制御手段を設置することができる。図示の温度制御手段は、塗布ヘッド18の第2部分34の側面に固定的に設置された流水導管36から構成される。流水導管36は、塗布ヘッド18の側面上で横断方向へ延設され、外部の供給源(図示せず)から、所望温度に調節された水、油、エチレングリコール溶液等の媒体が流水導管36に供給されて循環する。或いは図6(a)及び(b)に示すように、塗布ヘッド18の第2部分34に流水導管38を埋設することもできる。
【0027】
なお、塗布ヘッド18の温度制御により加圧空隙28の形状を調節するという観点では、塗布ヘッド18のノズル端面16の第2端面部分16bを含む部分だけを上記した第1部分32とすることもできる。この場合は図5及び図6に示すように、第2端面部分16bを含む第1部分32に隣接する第2部分34にのみ、流水導管36を設置すればよい。また、このような流水構造以外の温度制御手段として、例えば電熱線等を採用することもできるが、絶縁構造の追加、局所加熱による塗布ヘッド18の歪み、可燃性溶剤の蒸気雰囲気での使用安全性等の問題を考慮すれば、上記した流水構造が好ましい。
【0028】
図7は、本発明に係るバイメタル状の構造を有した塗布ヘッドを適用可能な他の実施形態による塗布装置を概略で示す。この塗布装置は、基材ウエブ20の走行方向Aに関して塗布ヘッド18の上流側に配置される押えロール40と、同下流側に配置されるガイドロール42とを備える。押えロール40は、バックアップロール14の軸12に略平行な軸44を有し、その円筒状外周面46とバックアップロール14の外周面10との間に、走行する塗布前の基材ウエブ20を挟持して図示矢印C方向へ円滑に回転する。ガイドロール42は、バックアップロール14の軸12に略平行な軸48を有し、その円筒状外周面50をバックアップロール14の外周面10から十分に離して配置される。ガイドロール42は、走行する塗料塗布後の基材ウエブ20をその裏面(塗膜を有しない面)で外周面50上に担持して、軸48の周りで図示矢印D方向へ円滑に回転する。
【0029】
ガイドロール42は、バックアップロール14に担持された走行中の基材ウエブ20を、塗布ヘッド18のノズル端面16に対向するバックアップロール14の外周面10上の所定位置で外周面10から脱離するように作用する。図8に拡大して示すように、基材ウエブ20がバックアップロール14の外周面10から脱離される脱離位置Pは、塗布ヘッド18のノズル端面16の第2端面部分16bの下流端30よりも基材ウエブ走行方向Aに関して上流側で、かつ塗料供給路22の開口部22aを画成する第2端面部分16bの上流端よりも同下流側の領域に対向する外周面10上の区画内に設定される。
【0030】
さらにガイドロール42は、バックアップロール14の外周面10から脱離した基材ウエブ20を、脱離位置Pからノズル端面16の第2端面部分16bの下流端30に至る範囲で第2端面部分16bに漸近的に近づけるように作用する。図示実施形態では、第2端面部分16bの下流端30において、第2端面部分16bと基材ウエブ20との間の加圧空隙28が最小寸法G1を示す。他方、塗料供給路22の開口部22aを画成する第2端面部分16bの上流端において、加圧空隙28は最大寸法G2を示す。
【0031】
バックアップロール14と塗布ヘッド18とは、バックアップロール14の外周面10と塗布ヘッド18のノズル端面16とが、ノズル端面16の第2端面部分16bの上流端と下流端30との間の所定位置で、互いに最も近接して配置されるように位置決めされる。バックアップロール14の外周面10上での基材ウエブ20の脱離位置Pは、最小間隔部52を画成するバックアップロール14の外周面10上の位置Qよりも、基材ウエブ走行方向Aに関して上流に配置される。このような位置関係により、バックアップロール14に担持された基材ウエブ20の表面と、塗布ヘッド18のノズル端面16の第1端面部分16aとの間の空隙は、第1端面部分16aの基材ウエブ走行方向Aに関して下流端で最小寸法G3を、また同上流端で最大寸法G4を示す。したがって図示実施形態では、基材ウエブ20の表面と塗布ヘッド18のノズル端面16との間の空隙は、G1<G2<G3<G4の関係を有して画成される。
【0032】
さらにこの塗布装置は、塗布ヘッド18のノズル端面16の第1端面部分16aの、基材ウエブ走行方向Aに関する上流側に設けられた減圧室54を備える。減圧室54は、ノズル端面16とバックアップロール14の外周面10との間の空間に連通して形成され、塗布作業中に、外部の減圧装置56の作動により減圧される。塗布作業中、バックアップロール14に担持された基材ウエブ20の表面と塗布ヘッド18のノズル端面16の第1端面部分16aとの間には、塗料供給路22から加圧空隙28に供給される塗料が一時的に滞留してビード状の溜まり部分を形成する。減圧室54を減圧することにより、基材ウエブ20の走行中にこの塗料の溜まり部分に巻き込まれる空気を効果的に低減又は排除して、溜まり部分を理想のビード形状に安定的に保持することができ、その結果、基材ウエブ20の表面に高品質の塗膜を安定的に形成することができる。
【0033】
上記構成を有する塗布装置においても、図1の実施形態と同様に、互いに異なる線膨張係数の材料からなる第1部分32と第2部分34とを一体に備えた塗布ヘッド18を、その加工成形時の温度から所望温度に加熱又は冷却することにより、第1部分32に属するノズル端面16を変形させ、その結果として加圧空隙28の形状を変形させることができる。このような加圧空隙28の変形作用は、塗布ヘッド18の温度制御によるものであり、塗布ヘッド18の各構成要素の機械加工精度を超える水準の精密な塗膜厚み制御を、再現性良く極めて容易に実施できる。その結果、前述したように、基材ウエブ20上の塗膜厚みを横断方向へ確実に均一化することができる。
【0034】
【実施例】
図7及び図8に示す塗布装置を、第1端面部分16aの長さL1=5mm、第2端面部分16bの長さL2=8mm、空隙寸法G1=5μm 、塗料供給路22の基材ウエブ走行方向の内寸=250μm 、バックアップロール外周面10に対する基材ウエブ20の脱離角β=1度、及び減圧室44の内圧=−0.98kPa (−100mmH2O )で構成した。この塗布装置により、50m/分で走行する厚み50μm のPET(ポリエチレンテレフタレート)からなる基材ウエブに、5cps の粘度を有する有機顔料分散塗料を塗布し、乾燥後膜厚1.4μm の塗膜を連続形成した。
【0035】
図9(a)及び(b)は、このようにして形成された塗膜の厚みを、基材ウエブの横断方向に沿って示す。横軸は、基材ウエブ上の塗膜の横断方向距離であり、縦軸は塗膜の厚みである。図9(a)の曲線iは塗布ヘッド18の温度制御を行わない常温状態での塗膜の厚みを、曲線iiは塗布ヘッド18を冷却したときの塗膜の厚みを、曲線iii は塗布ヘッド18を加熱したときの塗膜の厚みをそれぞれ示す。また図9(b)は、塗布ヘッド18を最適温度に調節したときの塗膜の厚みを示す。各図から判るように、塗布ヘッド18の緻密な温度調節により、基材ウエブの塗膜厚みを横断方向へμm オーダで高精度に均一化できることが確認された。
【0036】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ダイ塗布法を実施するための塗布装置において、バックアップロール式塗布装置の各構成要素の機械加工精度を超える水準での精密な塗膜厚み制御を実施でき、特に塗膜厚みを基材ウエブ横断方向へ確実に均一化できる高性能の塗布装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による塗布装置の構成を、塗布対象の基材ウエブと共に概略で示す正面図である。
【図2】図1の塗布装置の主要部を拡大して示す図である。
【図3】図1の塗布装置の作用効果を説明する部分拡大側面図で、異なる温度制御によるノズル端面の変形形態をそれぞれ(a)、(b)に示す。
【図4】図1の塗布装置の他の作用効果を説明する部分拡大側面図で、異なる温度制御によるノズル端面の変形形態をそれぞれ(a)、(b)に示す。
【図5】図1の塗布装置で使用できる温度制御手段の一実施形態の図で、(a)側面図、及び(b)正面図である。
【図6】図1の塗布装置で使用できる温度制御手段の他の実施形態の図で、(a)側面図、及び(b)正面図である。
【図7】本発明の他の実施形態による塗布装置の構成を、塗布対象の基材ウエブと共に概略で示す正面図である。
【図8】図7の塗布装置の主要部を拡大して示す図である。
【図9】図7の塗布装置における塗膜の平滑性を示す図で、(a)常温、低温、高温の各状態での塗膜面、及び(b)最適温度状態での塗膜面を示す。
【符号の説明】
10…外周面
12…軸
14…バックアップロール
16…ノズル端面
16a…第1端面部分
16b…第2端面部分
18…塗布ヘッド
20…基材ウエブ
22…塗料供給路
28…加圧空隙
30…下流端
32…第1部分
34…第2部分
36、38…流水導管
Claims (2)
- 所定速度で走行する基材ウエブを外周面上に担持して回転するバックアップロールと、該バックアップロールから離間して配置され、該バックアップロールの該外周面に対向するノズル端面及び該ノズル端面に通ずる塗料供給路を備えて、該ノズル端面上に塗料を連続的に押出供給する塗布ヘッドと、該塗布ヘッド自体の温度を制御する温度制御手段とを具備し、該バックアップロールの該外周面に担持された基材ウエブの表面と該塗布ヘッドの該ノズル端面との間に形成される加圧空隙で塗料を計量しつつ、走行する基材ウエブの表面に所定厚みの塗膜を連続的に形成する塗布装置において、
前記塗布ヘッドは、少なくとも前記ノズル端面を含む第1部分と、該第1部分に隣接する第2部分とを一体に備え、該第1部分と該第2部分とが互いに異なる線膨張係数を有する材料からなり、
前記温度制御手段は、前記塗布ヘッドの前記第2部分に設置される流水導管を具備し、該流水導管が、基材ウエブの横断方向に見て該第2部分の実質的全幅に渡り連続して延設され、
前記温度制御手段は、前記流水導管を循環する媒体の温度に従い、前記第1部分と前記第2部分とのそれぞれに前記線膨張係数の差に起因した撓みを生じさせて、前記ノズル端面の表面形状を、基材ウエブの前記横断方向に関して凹面状及び凸面状のいずれかに変化させることで、前記加圧空隙の形状を調整するように、前記塗布ヘッド自体の温度を制御すること、
を特徴とする塗布装置。 - 前記流水導管が、前記塗布ヘッドの前記第2部分の側面に設置される請求項1に記載の塗布装置。
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