JP4211136B2 - 透明複層樹脂積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、主として屋外用途に使用される、透視性に優れた透明複層樹脂積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、屋外で使用される例えば裏面印刷を要する看板用面板等は、その大きさに応じて、通常、厚さが1mm〜数mm程度のものが使用されており、穿孔、切削、熱成形等の二次加工性、使用時の耐衝撃性、耐燃焼性、および耐候性に優れることはもちろんのこと、展示見本を実際の有様通りに見ることができるような透視性に優れたものであることが要求される。
【0003】
従来、この種の用途には、二次加工性をはじめ、透明性や耐候性に優れた耐衝撃性アクリル樹脂からなる板状体が多用されているが、耐燃焼性が劣り燃えやすく、耐衝撃性はなお不充分で割れ易く、この種用途にとって必須の要件がなお充分に満されていないという問題がある。
【0004】
一方これに対し、最近では、透明のポリカーボネート樹脂からなる板状体が、その優れた耐熱性、耐燃焼性、耐衝撃性の点で、この種用途に一部採用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ポリカーボネート樹脂を用いる場合は、当該樹脂の熱成形の適性温度が高いことに起因して、成形サイクルが長くなるという問題があり、さらに通常板状体の表面に被覆されている傷防止用のマスキングフィルムをそのままにして熱成形をすると、前記フィルムが溶融して熱成形加工が困難になるので、止むを得ずこれを取り外した状態で熱成形し、以後その状態のまま取り扱う結果、面板の表面に傷が発生することが多かった。
【0006】
一般に、ポリカーボネート樹脂からなる材料は、耐熱性、耐衝撃性、耐燃焼性等に優れる反面、紫外線等に曝露されると黄色に着色変化を起こす性質があり、その解決策として採用されている公知手段には、第1に紫外線吸収剤を板状成形時に材料に混入する手段、第2に耐候性に優れたアクリル樹脂系フィルム等の薄層からなる表層を、板状体の厚さの大部分を占める基層の表面にラミネート方式により被覆する手段が採用されている。
【0007】
しかし、前記第1の手段では、材料に紫外線吸収剤が混入され板状体の層全体に分散されるから、紫外線吸収剤は実用表面から隔たるにしたがってその効果を発揮し得ず無駄な存在となってコスト高の原因となるばかりでなく、むしろ紫外線吸収剤による初期着色、ブリード現象、あるいはポリカーボネート樹脂自体の適性加工温度が高いことに起因する熱成形時の熱劣化により変色する問題があり、また第2の手段では、基層のポリカーボネート樹脂板と表層のアクリル樹脂系フィルムの積層界面に挟雑物が入ったり、基層と表層との屈折率等の光学特性の相違、積層界面の平坦度や平滑度の差等によって、積層界面で透視像の歪みや白濁による霞みを生じ、加えて製造工程も煩雑になるという問題があって、面板用途に簡単には適用し難く、依然として充分な問題解決に至っていないのが現状である。
【0008】
この発明者らは、先に、第1の手段による問題の解決策として、ポリカーボネート樹脂に、トリアジン化合物からなる紫外線吸収剤と、これに加えてクマリン化合物およびナフタルイミド化合物のうち1種または2種のものからなる蛍光増白剤を添加することを提案した(特開平10−176103号)。この手段によって、ポリカーボネート樹脂組成物としての耐候性は確かに向上するが、前記紫外線吸収剤等を、単一の層全体に均一に含有させるものであるから、従来の第1の手段による前記各種の問題点は依然として解決されていない。
【0009】
そこで、上記のような問題を解決する手段として、基層と表層とをいずれも同一のポリカーボネート樹脂組成物から構成し、さらに表層に前記紫外線吸収剤を集中的に混入する周知の表面集中添加方式を採用して、しかも熱可塑性樹脂製の多層製品の製造に用いられる、従来公知の共押出成形法を採用して積層するという手段も考えられるが、実際には基層と表層では、各厚さに対応するダイス内の流路単位断面積当たりの溶融樹脂の流動状態に差が生じて押出条件の調整が難しく、基本となる両層の樹脂組成を互いに同一にした共押出成形法によるこの種積層体の押出成形は非常に困難である。しかも、このような手段では、上述の熱成形における問題点の内、透視像の歪みや白濁による霞み等を取り除き、ポリカーボネート樹脂の特性に起因するその他の問題点を解決し得ない。
このような状況に対し、この発明者らは、さらに改良を重ねつぎのような透明複層樹脂積層体を提案した(特願平11−41413号)。すなわち、基層部をポリカーボネート樹脂および/またはジカルボン酸系重縮合成分とグリコール系縮合成分とを重縮合させて得られるポリエステル樹脂を含有する樹脂組成とし、表層部を平均分子量が15000〜23000の範囲にあるポリカーボネート樹脂100重量部に対し、紫外線吸収剤を3重量部〜25重量部含有する樹脂組成として、両層部を共押出成形法により積層一体化してなるものである。
【0010】
上記の提案によれば、適度の熱成形性を有し、耐燃焼性、耐衝撃性を十分維持するとともに、耐候性に優れ、積層性が良好で透視像に歪みを生ぜず、白濁のない高い透視性を有する透明複層樹脂積層体を得られるのであるが、共押出成形法による押出操作中に、表層部に含まれる紫外線吸収剤のブルーミングにより、前記紫外線吸収剤が徐々にポリシングロールの表面に付着し、これが押出操作を開始してから概ね30分後には目視可能となり、さらに経時的に堆積して当該積層体の表面に転着し、その外観品質を損ねるという問題があることが判った。
【0011】
通常、押出成形中における樹脂組成物の添加物のブルーミングによるポリシングロールのこの種の付着物は、定期的に拭き取るか、またはポリシングロールの冷却温度を高めに設定することによって添加物の付着度合いを軽減することが行われているが、これらの手段を採用すると、前者では作業の間隔を多少長くできる程度に過ぎず、後者では溶融材料がポリシングロールの表面に密着し、製板操作ができなくなるという問題がある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明者らは、上記のような技術的背景の下に、さらに改良研究を重ね、基本的には、積層体の厚さの大部分を占める基層を構成する樹脂組成物をポリカーボネート樹脂および/または特定の成分から構成されたポリエステル樹脂からなる樹脂組成に置き換え、表層を構成する樹脂組成物を紫外線吸収剤を含有する特定範囲の平均分子量のポリカーボネート樹脂からなる樹脂組成とする先の提案を利用し、かつ表層を構成する樹脂組成物にさらに特定の滑剤を添加すれば、従来公知の共押出成形法を採用して前記基層と表層を容易に積層することができ、適度の二次加工性を有するとともに、耐候性に優れ、透視性の高い積層体が得られることはもちろんのこと、ブルーミングによる紫外線吸収剤の転着のない、外観品質が安定した透明複層樹脂積層体を得ることができることを見出しこの発明を完成した。
【0013】
而して、この発明は、基層部と表層部とが共押出成形法によって積層され、適度の熱成形性を有し、耐燃焼性、耐衝撃性を充分に維持するとともに、耐候性に優れ、積層性が良好で透視性が高く、全体の外観品質が安定した透明複合樹脂積層体を提供することを目的とする。
【0014】
すなわち、この発明は、基層部と表層部とが共押出成形法により積層一体化されてなる透明複層樹脂積層体であって、
前記基層部は、ポリカーボネート樹脂および/またはジカルボン酸系重縮合成分とグリコール系縮合成分とを重縮合させて得られるポリエステル樹脂とからなり、
前記表層部は、平均分子量が15000〜23000の範囲にあるポリカーボネート樹脂100重量部に対し、紫外線吸収剤を3重量部〜25重量部と、エステル系、脂肪酸系及びアルコール系の滑剤から選ばれた1種または2種以上の滑剤を0.05〜1重量部とを含有する樹脂組成物からなることを特徴とする透明複層樹脂積層体を要旨とする。
【0015】
この発明の好ましい実施態様は、前記紫外線吸収剤が、トリアジン系化合物からなる請求項1に記載の透明複層樹脂積層体である。
【0016】
また、この発明の好ましい別の実施態様は、前記表層部の厚さが10μm〜300μmである請求項1または請求項2に記載の透明複層樹脂積層体である。
【0017】
この発明によれば、基層部をポリカーボネート樹脂および/またはテレフタール酸系成分とグリコール系縮合成分とを重縮合させて得られる特定のポリエステル樹脂を樹脂組成物としたから、用途に応じた好適な二次加工性と耐熱性を有し、透視性に優れた透明複層樹脂積層体を得ることができる。
【0018】
また、この発明の透明複層樹脂積層体は、表層部を特定の分子量範囲のポリカーボネート樹脂の単独樹脂成分に特定のトリアジン系化合物からなる紫外線吸収剤と特定の滑剤を添加した樹脂組成としたから、共押出成形時の流動性が増して基層部との流動性のバランスと相互の積層性が良好となり、積層界面の透視像の歪みや白濁による霞みが発生せず透視性が向上し、積層体の耐候性が向上することはもちろんのこと紫外線吸収剤による積層体全体の見かけの初期着色や熱劣化による変色を防止できるとともに、前記紫外線吸収剤のブルーミングが抑制されて当該積層体の外観品質が安定する。また同時に、製板工程におけるポリシングロールの付着物の拭き取り作業が軽減される。
【0019】
さらに、この発明の透明複層樹脂積層体は、表層部の厚さが10μm〜300μmと、基層部の厚さ1mm〜数mmに対して薄いものであるから、積層体全体の二次加工性が基層部に支配されることとなり、表層部によって阻害されることはない。
【0020】
従って、この発明による透明複合樹脂積層体は、使用される樹脂成分に起因して、優れた耐燃焼性および透明性を有することはもちろんのこと、適度の熱成形性を有し、耐候性に優れ、積層性が良好であって透視像に歪みを生ぜず白濁のない透視性の高いものとなり、全体の外観品質が安定した透明複合樹脂積層体となし得る。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、この発明による透明複合樹脂積層体の実施の形態を、実施例および比較例とともに説明する。なお、この発明における当該積層体は、表層部が基層部の片面のみならずその両面に積層一体化されたものを含むものとする。
【0022】
この発明において、透明複合樹脂積層体の基層部および表層部に用いられる樹脂は、実質的に互いに同一である場合と異質である場合の両方を含む。この場合の、表層部の樹脂と実質的に同一の樹脂とはポリカーボネート樹脂を指し、異質の樹脂とはテレフタール酸系成分とグリコール系縮合成分とを重縮合させて得られる、前記ポリカーボネート樹脂に対して相溶性の良好なポリエステル樹脂を指す。
【0023】
前記基層部は、ポリカーボネート樹脂またはポリエステル樹脂をそれぞれ単独で用いるか、あるいは両樹脂を一定の割合で混合して用いるものとするが、その選択の基準は、当該積層体が適用される前記面板等の用途製品に応じて、それに必要な二次加工性、耐熱性、耐衝撃性を目安として定められる。例えば、屋外使用の用途製品には、耐熱性の観点から概ね90℃以上の熱変形温度が要求され、二次加工性の中でも熱成形性の観点からは概ね120℃未満であることが望ましいが、必ずしもこれに限定されず、折曲げ成形、真空成形等の熱成形による二次加工を要しない用途製品では熱変形温度が120℃以上であってもよく、また屋外使用の用途製品でも使用環境温度の低い用途製品には、70℃以下の熱変形温度のものであっても差し支えない。
【0024】
前記基層部に用いるポリカーボネート樹脂としては、例えばビスフェノール化合物から周知の方法で製造されるものが使用可能であり、また種々のタイプのものを併用してもよく、一般に二次成形可能な板状製品に広く使用されるもので、平均分子量が20000〜30000の範囲のものを使用する。この範囲を超えると押出成形性が悪く、またこの範囲未満では耐衝撃性が低下するので、好ましくは平均分子量25000〜27000の範囲のものが適当である。そして、耐熱性を高く要求される用途製品では、当該樹脂は単独で用いられ、その熱変形温度は概ね135℃である。
【0025】
また、前記基層部に用いるポリエステル樹脂としては、カルボン酸系重縮合成分とグリコール系縮合成分とを重縮合させて得られるもので、一般にポリカーボネート樹脂との相溶性が良好であることが知られているものであり、例えば特開昭53−94536号公報、特開昭53−94538号公報に示されている。
【0026】
この発明においては、前記ポリエステル樹脂として、例えばテレフタル酸およびテレフタル酸誘導体からなる群より選ばれる1種または2種以上のテレフタル酸系成分からなるジカルボン酸系重縮合成分と、1,4−シクロヘキサンジメタノールを40モル%〜60モル%含有するグリコール系重縮合成分とを重縮合して得られる下記一般式(I);
【化1】
で表される反復単位を構造中に有するポリエステル樹脂が好適であり、前記ポリカーボネート樹脂との相溶性が良好であるから、両樹脂を混合して用いる場合に基層部の耐熱性を任意に調整可能となり、しかも光屈折率が近似して透明性を高く維持できる。
【0027】
また、前記ポリエステル樹脂は、熱変形温度が概ね70℃で、熱成形性を考慮され耐熱性を低く要求される用途製品であって、用途上支障のない場合には、基層部の樹脂組成物としてこれを単独で用いる。
【0028】
従って、この発明の透明複合樹脂積層体は、前記ポリカーボネート樹脂を単独で用いる場合は最も高い耐熱性を示し、また前記ポリエステル樹脂を単独で用いる場合は最も低い耐熱性を示すこととなる。そして、前記両樹脂を混合して用いる場合は、70℃〜135℃の範囲内で、その混合比率に応じた熱変形温度を設定することができる。
【0029】
つぎに、前記表面層は、ポリカーボネート樹脂に限定されるものとし、例えばビスフェノール化合物から周知の方法で製造されるものが使用され、また種々のタイプのものを併用してもよいが、その平均分子量は15000〜23000の範囲にあるものとする。
【0030】
この場合、ポリカーボネート樹脂の平均分子量が15000未満であると、透明複層樹脂積層体の用途製品を屋外使用する際に表面の耐候性が低下して黄色変化を起こすおそれがあり、また23000を超えると共押出成形時の流動性が悪くなり、ダイス内における積層界面の平坦度や平滑性が失われ、積層界面で透視像の歪みや白濁による霞みが生じるおそれが生じ好ましくない。従って、ポリカーボネート樹脂の平均分子量は、好ましくは18000〜20000の範囲のものとする。
【0031】
また、表層部の厚さについては、前記基層部が通常1mm〜数mm程度の厚さであるのに対して、10μm〜300μmとする。表層部の厚さは、用途製品の使用環境に応じて設定し、炎天下に晒され紫外線吸収剤の絶対量を多く要する環境では厚く、その反対の環境では薄く設定するが、10μm未満では、共押出成形でのダイス内での流動性が低下して基層部との積層が難しくなり、また300μmを超えると、紫外線吸収剤の絶対量は増すが、表面から隔たった部分の紫外線吸収剤はその効果を有効に発揮し得ず無駄となるので、好ましくは15μm〜270μmの範囲とする。
【0032】
表層部に添加される前記紫外線吸収剤は、一般に公知のものが適用可能であるが、中でもトリアジン系化合物が好適である。また、その含有量はポリカーボネート樹脂100重量部に対し3重量部〜25重量部とし、上述の用途製品の使用環境に応じて前記範囲内で設定するものとする。この場合、上記の範囲未満では耐候性を充分に発揮できず、また上記の範囲を超えると、さらなる効果は期待できないばかりかかえって初期着色やブリード現象を招き好ましくない。従って、好ましくはポリカーボネート樹脂100重量部に対し、5重量部〜20重量部とする。
【0033】
また、表層部に添加される前記滑剤は、脂肪酸系、エステル系及びアルコール系の滑剤から選ばれた1種または2種以上の滑剤である。具体的には、エステル系滑剤としてグリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリンモノリノレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノ12−ヒドロキシステアレート、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンジパルミテート、グリセリンジステアレート、グリセリンジオレート、グリセリンジリノレート、グリセリンジベヘネート、グリセリンジリシレート、グリセリンジ12−ヒドロキシステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリントリオレート、グリセリントリ12−ヒドロキシステアレート等、また脂肪酸系滑剤としてステアリルステアレート、ブチルステアレート、リグノセリン酸ミニシルアルコールエステル、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等、さらにアルコール系滑剤としてステアリルアルコール、セチルアルコール等が挙げられる。
【0034】
滑剤の添加量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し0.05〜1重量部とする。この場合、0.05重量部未満であると紫外線吸収剤のポリシングロールへの付着防止の効果がなく、また1重量部を超えると前記付着防止のさらなる効果は見られず、逆に押出吐出量の変動を招き、また得られる積層体の表層部に発泡現象を生じるのでよくない。従って、望ましくは0.1〜0.5重量部である。
【0035】
前記表層部を構成するポリカーボネート樹脂組成物には、さらに耐候性を向上させるために、前記紫外線吸収剤としてのトリアジン系化合物に加えて、例えばクマリン化合物やナフタルイミド化合物等からなる蛍光漂白剤を適宜添加することもできる。
【0036】
なお、この発明の前記基層部と前記表層部を構成する樹脂組成物には、前記紫外線吸収剤及び滑剤の他、酸化防止剤、可塑剤、改質剤、光安定剤、耐電防止剤等の各種添加剤を、この発明の目的を逸脱しない範囲で、適宜添加することができる。
【0037】
つぎに、この発明において、透明複合樹脂積層体の押出成形に適用される共押出成形法には、通常に熱可塑性樹脂製の多層積層体の製造に用いられる公知の共押出成形法が採用され、フラットなTダイと表面が鏡面仕上げされたポリシングロールを備えた装置によって板状の積層体に仕上げられる。
【0038】
この場合のTダイの方式は、加熱溶融状態の樹脂組成物がTダイ流入前に積層されるフィードブロック方式、あるいは樹脂材料がTダイ内部で積層されるマルチマニホールド方式が好適に採用できる。なお、Tダイ流出直後に積層されるデュアルスロット方式は、各層間の接合性が劣り、積層界面の透視性に障害があるのでこの発明からは除外するものとする。
【0039】
この発明は、上述のように、各樹脂組成物よりなる基層部と表層部とを公知の共押出成形法により、ダイス内において熱溶融状態で積層一体化して得られる透明複層樹脂積層体である。得られた当該積層体は、用途製品に適用される際に、平面状態で用いられるほか、熱成形加工等により例えば曲面状または球面状に加工され、自動販売機の面板等として利用される。
【0040】
この発明の透明複層樹脂積層体は、表面に特定の平均分子量範囲のポリカーボネート樹脂に、特定の紫外線吸収剤と特定の滑剤とを集中的に含有させた表面層を形成したものであるから、製板時にポリシングロール面に紫外線吸収剤のブルーミングによる付着が抑制される結果、当該積層体の表面が汚染されず安定した外観品質が保たれるものとなり、黄色度(初期透過色調)も少なく、面板等の用途製品として夏期の炎天下に晒される状態で用いられても、耐候性の劣化の伴う黄変度も少ないものとなる。
【0041】
また、この発明の透明複層樹脂積層体は、二次加工性とりわけ熱成形性について支配的である基層部に、ポリカーボネート樹脂および/または特定のポリエステル樹脂からなる樹脂組成物としたから、優れた熱成形性と使用環境に適応した耐熱性を付与することができ、高い透明性を維持できる。また、両樹脂の相溶性が良好であるから優れた積層性と耐衝撃性を確保することができるとともに、基層部と表層部の積層界面の平坦性や平滑性が均一化され、透視性が極めて良好となる。
【0042】
【実施例】
以下、この発明の実施例を比較例とともに説明する。
【0043】
まず、実施例について、基層部および表層部に用いられる各成分とその量を以下に示す。
【0044】
−基層部−
・ポリカーボネート樹脂 40重量部
(平均分子量27000)
・ポリエステル樹脂 60重量部
(テレフタル酸の割合が99モル%以上であるジカルボン酸系成分と1,4−シクロヘキサンジメタノールの割合が50モル%であるグリコール系成分との重縮合物/イーストマンケミカル社製「PCTG 5445」)
−表層部−
・ポリカーボネート樹脂 100重量部
(平均分子量19000)
・紫外線吸収剤 表1に示す量
(トリアジン系化合物/チバガイギー社製「チヌビン1577」)
・滑剤 表1に示す成分と量
(グリセリンモノステアレート/理研ビタミン社製「S−100A」、グリセリンモノステアレート・ジステアレート混合物/理研ビタミン社製「S−200」、ステアリルステアレート/理研ビタミン社製「SL−900」、ステアリン酸/川研ファインケミカル社製「VLZ−200」、ステアリルアルコール/川研ファインケミカル社製「VLTN−6」)
実施例1〜9
各実施例について、上記で用意した基層部と表層部の各樹脂組成物の成分を用い、紫外線吸収剤と滑剤の量については表1に示すように変化させ、各実施例別の混合物を配合した。
【0045】
【表1】
【0046】
ついで、前記各々の混合物を用いて、内径90mmのベント式押出機により基層部を、また内径40mmのベント式押出機により表層部を、各々溶融混練したのち、フィードブロック方式のTダイを介して両層を押出成形し、ダイス内で厚さ3.0mmの基層部とその片面に厚さ30μmの表層部が積層された透明複層樹脂積層体を得た。
【0047】
上記実施例1〜9で得られた各透明複層樹脂積層体について、まず押出成形時におけるポリシングロールへの紫外線吸収剤の付着状態を目視観察し、押出操作開始から3時間後の付着状態により紫外線吸収剤の付着防止性能を評価した。
【0048】
また、JISK7103に準拠し、初期着色度(黄色度)、サンシャインウエザオメータによる耐候性促進テストにより、3000時間曝露後の黄色度(黄変度[ΔYI])測定し、さらに得られた透明複層樹脂積層体について透視観察により積層界面の透視像の歪み、白濁状の霞み等の有無を観察して、透視性を評価した。さらにまた、当該積層体について、落錘テストにより耐衝撃強度の測定と、熱変形温度の測定(JISK7207/18.5MPa)を行った。
【0049】
前記各評価の基準については、まず紫外線吸収剤の付着防止性能は、ポリシングロールへの紫外線吸収剤の付着状態が認められないものを無しとし、認められるものを有りとした。また、黄色度および黄変度については、いずれも3.0未満を良とし、3.0を超えるものを不良とした。また、透視性の評価については、透視像の歪み、または白濁状の霞みの認められないものを良とし、認められるものを不良とした。これらの評価結果を、耐衝撃強度の測定結果を加えて表1に示す。
【0050】
比較例1〜4
比較例1と比較例2は、この発明に用いられる滑剤に属さない滑剤であるステアリン酸アマイド(川研ファインケミカル社製/「アマイド−6S」)またはエチレングリコール(一般市販品)を表1に併記した量添加し、また比較例3と比較例4は、この発明に用いた前記滑剤のうちグリセリンモノステアレートを表1に併記した量添加したほかは、実施例1〜9と全く同様の各成分からなる配合物を用いて、また同様の方法により積層体を得て、同様の評価を行い、その結果を表1に併記した。
【0051】
表1の評価結果から明らかなように、この発明の透明複層樹脂積層体は、その製板時にポリシングロールへの紫外線吸収剤の付着が認められず、その結果として表面が紫外線吸収剤の付着によって汚染されていない外観品質の安定したものであった。また、初期の黄色度が少なく、経時的な黄変度も少ない耐候性の高い積層体であり、積層界面の透視像の歪みもなく、白濁による霞みもない、優れた透視性を有するものであった。さらに、熱変形温度も90℃と実用に供し得る範囲に確保され、落錘テストによっても割れず耐衝撃強度も充分実用に供し得るものであった。
【0052】
これに対し、比較例1乃至比較例3では、ポリシングロールへ紫外線吸収剤が付着し、これが積層体表面に転着し、紫外線吸収剤の付着防止効果は認められず、さらに比較例1では表層部の着色により黄色度、黄変度も不良となり、表層部に発泡現象が認められ透視性が不良であった。また、比較例4では、実施例と同様にその製板時にポリシングロールへの紫外線吸収剤の付着が認められなかったが、表層部に発泡現象が認められ透視性が不良であった。
【0053】
【発明の効果】
以上のように、この発明の透明複層樹脂積層体は、ポリカーボネート樹脂および/またはジカルボン酸系重縮合成分とグリコール系縮合成分とを重縮合させて得られるポリエステル樹脂を含有する樹脂組成からなる基層部と、平均分子量が15000〜23000の範囲にあるポリカーボネート樹脂100重量部に対し、紫外線吸収剤を3重量部〜25重量部と、エステル系、脂肪酸系及びアルコール系の滑剤から選ばれた1種または2種以上の滑剤を0.05〜1重量部とを含有する樹脂組成からなる表層部とを共押出成形法により、ダイス内において熱溶融状態で積層一体化されてなる透明複層樹脂積層体であるから、優れた耐燃焼性および透明性を有し、耐候性に優れ、積層性が良好で透視像に歪みを生ぜず白濁のない高い透視性を有するものとなることはもちろんのこと、押出操作中に、表層部に含まれる紫外線吸収剤がポリシングロールの表面に付着するのを抑制することができ、当該積層体がポリシングロールの表面に経時的に堆積した紫外線吸収剤の転着で汚染されることがないので、その透視性の高い外観品質は損なわれることなく安定して確保されるという効果があり、さらに基層部の樹脂組成を用途に応じて変化させることができるので、二次加工性の調整、とりわけ適度の熱成形性を適宜調整することができるという効果がある。
【0054】
また、表層部を平均分子量が15000〜23000の範囲にあるポリカーボネート樹脂100重量部に対してトリアジン系化合物からなる紫外線吸収剤を3重量部〜25重量部を含有する樹脂組成として、紫外線吸収剤を表層部に集中的に添加したから、紫外線吸収剤に起因する初期着色による黄変も少なく、かつ紫外線吸収剤が無駄なく有効に作用して耐候性劣化に伴う黄変も少なくなるという効果があり、コストも低廉となるという利点がある。
【0055】
さらに、表層部の厚さを、基層部に対し、10μm〜300μmと極めて薄くして積層したから、透明複層樹脂積層体の透明性、透視性および耐候性を全く損なうことなく、耐熱性、熱成形性あるいは耐衝撃性等の特性を用途に応じて適宜設定することができるという利点がある。
Claims (3)
- 基層部と表層部とが共押出成形法により積層一体化されてなる透明複層樹脂積層体であって、
前記基層部は、ポリカーボネート樹脂および/またはジカルボン酸系重縮合成分とグリコール系縮合成分とを重縮合させて得られるポリエステル樹脂を含有する樹脂組成からなり、
前記表層部は、平均分子量が15000〜23000の範囲にあるポリカーボネート樹脂100重量部に対し、紫外線吸収剤を3重量部〜25重量部と、エステル系、脂肪酸系及びアルコール系の滑剤から選ばれた1種または2種以上の滑剤を0.05〜1重量部とを含有する樹脂組成からなることを特徴とする透明複層樹脂積層体。 - 前記紫外線吸収剤が、トリアジン系化合物からなる請求項1に記載の透明複層樹脂積層体。
- 前記表層部の厚さが10μm〜300μmである請求項1または請求項2に記載の透明複層樹脂積層体。
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