JP4210976B2 - 汚泥臭気抑制剤及び汚泥臭気抑制方法 - Google Patents

汚泥臭気抑制剤及び汚泥臭気抑制方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、汚泥臭気抑制剤及び汚泥臭気抑制方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、下水処理場、し尿処理場などの汚泥から発生する硫化水素、メチルメルカプタン、アンモニア、アミンなどに由来する臭気を効果的に抑制することができる汚泥臭気抑制剤及び汚泥臭気抑制方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
下水処理場、し尿処理場や、食品工場、紙パルプ工場などの有機性産業排水の処理工程などにおいては、各種の汚泥が発生する。例えば、下水を最初沈殿池で固液分離すると初沈生汚泥が発生し、最初沈殿池の上澄水を曝気槽などを用いて浮遊生物方式により処理すると、活性汚泥の量が増加する。曝気槽などで処理された水は最終沈殿池に導かれ、活性汚泥が分離され、その一部は返送汚泥として曝気槽などに返送され、残余は余剰汚泥とされる。初沈生汚泥と余剰汚泥は、汚泥濃縮槽に導かれ、その後、汚泥貯留槽にいったん貯留される。汚泥貯留槽内の汚泥は、次いで脱水機により脱水され、得られた汚泥脱水ケーキは埋め立てや、焼却のために搬出される。
汚泥貯留槽に貯留された汚泥は、腐敗により悪臭物質を発生する。下水処理場で発生する悪臭物質として頻繁に検出される物質は、硫化水素、メチルメルカプタンなどのイオウ化合物、アンモニア、トリメチルアミンなどの窒素化合物、吉草酸、イソ酪酸などの低級脂肪酸などである。これらの中で、含イオウ蛋白質の分解により生成する硫化水素とメチルメルカプタンの量が特に多い。
汚泥貯留槽で発生した臭気は、その後の汚泥の移動に伴って移動し、汚泥脱水工程、汚泥脱水ケーキの処理工程などにおいて、作業環境の悪化や、自然環境の汚染などの問題を引き起こす。汚泥脱水機は密閉系とすることもできるが、汚泥脱水ケーキは開放系で運搬、保管される場合が多いので、臭気対策は重要である。また、最終埋め立て地においても、発生する臭気が拡散し、付近の住民に不快感を与えるなど、環境に悪影響を及ぼす。このために、汚泥貯留槽にまでさかのぼって臭気防止対策を施す必要があり、従来よりさまざまな臭気抑制方法が提案されている。
例えば、特開昭57−187099号公報には、微生物に基づく硫化水素の発生を防止する方法として、微生物の生息環境に亜硝酸イオンを存在させる方法が提案されている。また、特開平6−99198号公報には、浄水場汚泥の脱臭剤として、ウンデシレン酸のアルキルエステル又はポリオキシアルキレンエステルを含む脱臭剤が提案されている。さらに、本発明者らは、特開2000−288592号公報において、汚泥脱水ケーキから発生する硫化水素やメチルメルカプタンなどの悪臭物質に由来する臭気を防止する方法として、汚泥スラリーに、酸化剤、亜硝酸塩を除く金属塩、有機系殺菌剤の中から選ばれる1種以上の物質と亜硝酸塩とを併用して添加する方法を提案した。しかし、環境保全に対する要求は年とともに厳しくなることから、より少量の薬剤を用いて、より効果的に汚泥の臭気発生を抑制し得る方法が求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、下水処理場、し尿処理場などの汚泥から発生する硫化水素、メチルメルカプタン、アンモニア、アミンなどに由来する臭気を効果的に抑制することができる汚泥臭気抑制剤及び汚泥臭気抑制方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩と、炭素数6〜12の脂肪族アルコールが汚泥の臭気抑制に優れた効果を有し、界面活性剤又は溶剤とともに汚泥に添加すると効果が長時間持続し、酸化剤系消臭剤と併用して汚泥に添加したとき、添加直後から長時間後に至るまで、安定して臭気抑制効果を発揮することを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)下水処理場、し尿処理場又は有機性産業排水の処理工程で発生する汚泥に、カプリル酸、カプリン酸又はウンデシレン酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールを有効成分として含有する汚泥臭気抑制剤を添加することを特徴とする汚泥臭気抑制方法
(2)汚泥臭気抑制剤が界面活性剤を含有する第1項記載の汚泥臭気抑制方法
(3)汚泥臭気抑制剤が溶剤を含有する第1項又は第2項記載の汚泥臭気抑制方法
(4)汚泥臭気抑制剤が界面活性剤及び溶剤を含有する第1項、第2項又は第3項記載の汚泥臭気抑制方法
汚泥臭気抑制剤が酸化剤系消臭剤を含有する第1項、第2項、第3項又は第項記載の汚泥臭気抑制方法、及び、
(6)第1項〜第5項のいずれか記載の汚泥臭気抑制方法に用いる汚泥臭気抑制剤
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の汚泥臭気抑制剤は、炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールを含有する。本発明の汚泥臭気抑制方法においては、汚泥に炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールを添加する。
本発明に用いる炭素数6〜12の脂肪酸に特に制限はなく、直鎖飽和脂肪酸、直鎖不飽和脂肪酸、分岐を有する飽和脂肪酸、分岐を有する不飽和脂肪酸のいずれをも用いることができる。直鎖飽和脂肪酸としては、カプロン酸、エナント酸(ヘプタン酸)、カプリル酸、ペラルゴン酸(ノナン酸)、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸を挙げることができる。直鎖不飽和脂肪酸としは、例えば、β−プロピルアクリル酸、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、3−オクテン酸、3−ノネン酸、カプロレイン酸、9−ウンデシレン酸、ウンデシレン酸(10−ウンデシレン酸)、リンデル酸、11−ラウロレイン酸、2−ヘキシン酸、6−ヘプチン酸、7−オクチン酸、2−ノニン酸、2−デシン酸、10−ウンデシン酸、7−ドデシン酸、ソルビン酸などを挙げることができる。分岐を有する飽和脂肪酸としては、例えば、4−イソカプロン酸、2−エチルヘキサン酸、4−プロピルペンタン酸、9−メチルデカン酸、6−プロピルノナン酸、2−ブチル−5−メチルペンタン酸、4,8−ジメチルノナン酸、2,2−ジメチル−4−エチルオクタン酸などを挙げることができる。分岐を有する不飽和脂肪酸としては、例えば、4−メチル−3−ペンテン酸、2−メチル−2−ヘキセン酸、2−メチル−2−ヘプテン酸、5−メチル−2−ノネン酸、5−メチル−2−ヘンデセン酸などを挙げることができる。これらの脂肪酸は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの脂肪酸の中では、炭素数8〜11の直鎖脂肪酸が好ましく、カプリル酸、カプリン酸、ウンデシレン酸などの直鎖脂肪酸を好適に用いることができ、ウンデシレン酸を特に好適に用いることができる。
【0006】
ウンデシレン酸(10−ウンデシレン酸)は、式[1]で示される構造を有する不飽和脂肪酸である。
CH2=CH(CH2)8COOH …[1]
ウンデシレン酸は、ヒマシ油を減圧下に蒸留し、ヒマシ油の主成分のリシノール酸を熱分解することにより、得ることができる。分留して得られる粗製品を、強冷して結晶化させ、圧搾して不純物を除去し、エステル化してふたたび分留したのちケン化することにより、精製品を得ることができる。本発明においては、ウンデシレン酸の粗製品、精製品のいずれをも用いることができる。ウンデシレン酸の精製品は、融点24.5℃である。
ウンデシレン酸は、人間の汗や涙にも含まれる成分であり、化粧品原料基準にも採録され、水虫、タムシなどの白癬菌、糸状菌による皮膚疾患の治療剤、化粧品、外用医薬品に配合されている。ウンデシレン酸のマウスに対する経口毒性はLD508,150mg/kgであり、従来より汚泥の消臭に用いられているナトリウムピリチオンのマウスに対する経口毒性がLD50870mg/kgであることを考えると、はるかに安全性が高い物質である。ウンデシレン酸若しくはその塩を有効成分とする汚泥臭気抑制剤は、従来品よりも遥かに毒性が低く、皮膚刺激性がなく、安全性の高い汚泥臭気抑制剤である。
【0007】
本発明に用いる炭素数6〜12の脂肪酸の塩に特に制限はなく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、銅塩、亜鉛塩、アミン塩などを挙げることができる。これらの脂肪酸の塩は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの中で、炭素数6〜12の脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩などの水溶性塩は、水溶液として汚泥に添加することができるので、作業性、計量性が良好であり、容易に添加操作を自動化することができる。また、炭素数6〜12の脂肪酸は難水溶性であるために、汚泥に添加したときの分散性がよくないが、水溶性のアルカリ金属塩を添加することにより、より良好な臭気抑制効果を得ることができる。一方、脂肪酸の亜鉛塩は、亜鉛の硫化水素固定効果により、薬剤の添加直後より臭気抑制効果が発現する。
本発明において、炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩の添加量に特に制限はないが、汚泥1Lに対して50〜2,000mgであることが好ましく、100〜1,500mgであることがより好ましく、200〜1,000mgであることがさらに好ましい。炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩の添加量が汚泥1Lに対して50mg未満であると、臭気抑制効果が十分に発現しないおそれがある。炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩の添加量が汚泥1Lに対して2,000mgを超えると、臭気抑制効果が添加量の増加に見合って向上しないおそれがある。臭気成分の濃度が比較的低い汚泥濃縮槽などの処理段階で、汚泥に炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩を添加することにより、以降の臭気成分の発生量を低減することができる。
汚泥に炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩を添加すると、すでに発生している臭気成分の拡散に伴って、静菌効果による臭気発生防止効果が発現し、硫化水素とメチルメルカプタンに対する12時間以上の長時間にわたる臭気抑制が可能である。また、脂肪酸塩として脂肪酸亜鉛を用いるか、あるいは、酸化剤系消臭剤と脂肪酸若しくはその塩を併用すると、薬剤の添加直後より臭気抑制効果を発現することができる。
【0008】
本発明に用いる炭素数6〜12の脂肪族アルコールに特に制限はなく、直鎖飽和脂肪族アルコール、直鎖不飽和脂肪族アルコール、分岐を有する飽和脂肪族アルコール、分岐を有する不飽和脂肪族アルコールのいずれをも用いることができる。直鎖飽和脂肪族アルコールとしては、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノールを挙げることができる。直鎖不飽和脂肪族アルコールとしては、例えば、2−ヘキセン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、2−ヘプテン−1−オール、6−ヘプテン−1−オール、2−オクテン−1−オール、8−ノネン−1−オール、2−デセン−1−オール、2−ウンデセン−1−オール、10−ウンデセン−1−オール、11−ドデセン−1−オールなどを挙げることができる。分岐を有する飽和脂肪族アルコールとしては、例えば、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、2,2−ジメチル−1−ブタノール、2,3−ジメチル−1−ブタノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、2−ノナノール、2−デカノール、2−ウンデカノール、2−ドデカノールなどを挙げることができる。分岐を有する不飽和脂肪族アルコールとしては、例えば、1−ヘキセン−3−オール、3−メチルペンテン−1−オールなどを挙げることができる。これらの中では、炭素数8〜11の直鎖飽和アルコール、直鎖不飽和アルコールを好適に用いることができ、1−オクタノールと1−デカノールを特に好適に用いることができる。
【0009】
本発明において、炭素数6〜12の脂肪族アルコールの添加量に特に制限はないが、汚泥1Lに対して50〜2,500mgであることが好ましく、100〜2,000mgであることがより好ましく、200〜1,500mgであることがさらに好ましい。炭素数6〜12の脂肪族アルコールの添加量が汚泥1Lに対して50mg未満であると、臭気抑制効果が十分に発現しないおそれがある。炭素数6〜12の脂肪族アルコールの添加量が汚泥1Lに対して2,500mgを超えると、臭気抑制効果が添加量の増加に見合って向上しないおそれがある。臭気成分の濃度が比較的低い汚泥濃縮槽などの処理段階で、汚泥に炭素数6〜12の脂肪族アルコールを添加することにより、以降の臭気成分の発生量を低減することができる。
炭素数8の直鎖飽和脂肪酸であるカプリル酸の融点は16.7℃、炭素数11の直鎖不飽和脂肪酸であるウンデシレン酸の融点は24.5℃であり、炭素数10の1−アルカノールである1−デカノールの融点は6.9℃である。したがって、常温で固体の脂肪酸と常温で液体の脂肪族アルコールを混合して製剤化することにより、常温で液状を保ち、固形物が析出しない経時安定性の高い汚泥臭気抑制剤を得ることができる。また、界面活性剤と併用したとき分散性が向上するので、脂肪酸と脂肪族アルコールを混合して製剤化することにより、汚泥臭気抑制剤の水への分散性が向上し、臭気抑制効果を高めることができる。さらに、製剤中の界面活性剤と溶剤の含有量を減少した製剤とすることができるので、製剤中の臭気抑制に対する有効成分の含有量を増やすことができる。脂肪酸:脂肪族アルコールは、100:1〜100:10,000(重量比)であることが好ましく、100:20〜100:500(重量比)であることがより好ましく、100:40〜100:250(重量比)であることがさらに好ましい。
【0010】
本発明の汚泥臭気抑制剤は、炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールと、界面活性剤とを含有する汚泥臭気抑制剤とすることができる。炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールと界面活性剤を含有する汚泥臭気抑制剤を汚泥に添加することにより、界面活性剤によって炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールが乳化分散されて汚泥中に拡散し、臭気抑制効果が向上する。
本発明に用いる界面活性剤に特に制限はなく、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ソルビタン、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリドなどのノニオン界面活性剤、石けん、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウムなどのアニオン界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩などのカチオン界面活性剤、ベタイン、スルホベタインなどの両性界面活性剤などを挙げることができる。これらの中で、ノニオン界面活性剤を好適に用いることができ、ポリオキシエチレン鎖を有するノニオン界面活性剤を特に好適に用いることができる。本発明に用いる界面活性剤は、HLBが5〜25であることが好ましく、10〜20であることがより好ましい。
本発明の汚泥臭気抑制剤において、炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールと界面活性剤の比率に特に制限はないが、炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコール:界面活性剤が、100:1〜100:100(重量比)であることが好ましく、100:10〜100:40(重量比)であることがより好ましい。
【0011】
本発明の汚泥臭気抑制剤は、炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールと溶剤、又は、炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールと界面活性剤と溶剤を含有することが好ましい。炭素数6〜12の脂肪酸は、融点が0〜50℃であるために、室温の温度範囲において固体と液体との状態変化が起こり、取り扱いが困難になる化合物が含まれる。また、炭素数6〜12の脂肪酸は水に難溶ないし不溶であり、炭素数6〜12の脂肪酸を水に分散させた乳化製剤は、熱力学的に安定な状態ではなく、長期的には脂肪酸と水に分離するおそれがある。炭素数6〜12の脂肪族アルコールは、常温で液体ないし融点25℃であるために、室温の温度範囲において固体と液体との状態変化が起こり、取り扱いが困難になる化合物が含まれる。また、炭素数6〜12の脂肪族アルコールを水に溶解又は分散させた製剤には、熱力学的に安定な状態ではなく、長期的には脂肪族アルコールと水に分離するおそれがある製剤が含まれる。炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールに、溶剤又は界面活性剤と溶剤を添加することにより、安定で粘度の低い液状を保って取り扱いが容易になるとともに、経時的にも分離することがない安定性を与えることができる。さらに、溶剤又は界面活性剤と溶剤を含有する汚泥臭気抑制剤は、炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールを直接汚泥に添加した場合に比べて、汚泥への分散性が良好であり、臭気抑制効果が大きく、臭気抑制効果をより長時間持続することができる。
本発明に用いる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級一価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールなどの多価アルコール、2−エトキシエタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールなどのアルコキシアルコール、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノールなどのフェノキシアルコール、ジエチルエーテル、メチルイソプロピルエーテルなどのエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステルなどを挙げることができる。
本発明の汚泥臭気抑制剤において、炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールと溶剤の比率に特に制限はないが、炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコール:溶剤が、100:10〜100:125(重量比)であることが好ましく、100:15〜100:70(重量比)であることがより好ましい。
【0012】
本発明においては、下水処理場において、貯留槽や脱水機などですでに汚泥の腐敗が進行し、高濃度の硫化水素やメチルメルカプタンが発生している場合は、炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールに加えて、酸化剤系消臭剤を添加することが好ましい。炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールのみを添加すると、すでに発生している臭気成分が拡散しなければ、臭気抑制効果が発現しないが、酸化剤系消臭剤を添加することにより、薬剤添加直後から、すでに発生した臭気を消臭することができ、さらに48時間以上の長時間にわたって臭気抑制効果を持続することができる。
本発明において、酸化剤系消臭剤を含有する汚泥臭気抑制剤は、炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールと酸化剤系消臭剤を分けた2剤型製剤とすることができる。2剤型製剤の場合は、炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールと酸化剤系消臭剤を混合して汚泥に添加することができ、あるいは、炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールと酸化剤系消臭剤を別々に汚泥に添加することもできる。
本発明に用いる酸化剤系消臭剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、過酸化水素、二酸化塩素、オゾン、過マンガン酸カリウム、塩化第二鉄、塩化第二銅、塩化亜鉛などを挙げることができる。酸化剤系消臭剤の添加量に特に制限はないが、汚泥1Lに対して50〜300mgであることが好ましく、100〜200mgであることがより好ましい。酸化剤系消臭剤の添加量が汚泥1Lに対して50mg未満であると、臭気抑制効果が十分に発現しないおそれがある。酸化剤系消臭剤の添加量が汚泥1Lに対して300mgを超えると、臭気抑制効果が添加量の増加に見合って向上しないおそれがある。
【0013】
本発明の汚泥臭気抑制方法において、汚泥に、炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールと界面活性剤と溶剤とを添加する場合、炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコール、界面活性剤及び溶剤を含有する製剤を調製し、該製剤を水と混合して汚泥に添加することが好ましい。該製剤を水と混合して汚泥に添加することにより、臭気抑制効果をさらに高めることができる。汚泥に添加する前に、該製剤と適当量の水とをよく混合することにより、炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールがより微細な乳化粒子として水中に分散する。そのために、この混合液を汚泥に添加すると、該製剤を汚泥に直接添加した場合に比べて、臭気抑制に対する有効成分がより拡散しやすくなり、臭気抑制効果が一層向上する。
本発明の方法により、炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールを汚泥に添加し、脱水して得られた脱水ケーキは、炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールの静菌力にもとづく腐敗防止効果により、24時間程度の長時間にわたって脱水ケーキの臭気抑制効果が持続する。炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールを汚泥に添加し、脱水する際にさらに亜硝酸塩、亜塩素酸塩などの酸化剤系消臭剤を添加すると、脱水ケーキの臭気抑制効果はさらに長時間持続し、48時間以上の臭気抑制が可能となる。本発明の汚泥臭気抑制剤及び汚泥臭気抑制方法によれば、下水処理場、し尿処理場などの汚泥から発生する硫化水素、メチルメルカプタン、アンモニア、アミンなどに由来する臭気を効果的に抑制することができ、特に酸化剤系消臭剤を併用した場合には、臭気抑制剤を添加した直後から臭気抑制効果を発現させ、かつその効果を持続することができる。
【0014】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1
余剰遠心濃縮汚泥と最初沈殿重力濃縮汚泥が容量比1:1で混合された懸濁物質(SS)1.5重量%、有機物量(VSS、対SS比)83重量%、繊維分(Fb、対SS比)11重量%、pH5.0、電気伝導率210mS/mの下水混合生汚泥の処理を行った。
容量1Lのビーカーに汚泥1,000mLを採取し、30℃で融解したウンデシレン酸500mgを添加し、スパーテルで速やかに撹拌した。次いで、ビーカーをジャーテスターに取りつけ、50rpmで緩速撹拌した。ジャーテスターの撹拌を開始して、5分後、1時間後、2時間後、3時間後、18時間後に、ビーカーから汚泥50mLを取り出し、容量600mLの容器に入れ、2分間振盪したのち、気相中の硫化水素の濃度と、メチルメルカプタンの濃度を、ガス検知管[ガステック(株)]を用いて測定した。また、同じ時刻に、汚泥の酸化還元電位を測定した。
硫化水素の濃度は、5分後250ppm、1時間後120ppm、2時間後10ppm、3時間後3ppm、18時間後60ppmであった。メチルメルカプタンの濃度は、5分後22ppm、1時間後18ppm、2時間後14ppm、3時間後12ppm、18時間後8ppmであった。酸化還元電位は、5分後−113mV、1時間後−86mV、2時間後−70mV、3時間後−78mV、18時間後−60mVであった。
実施例2
ウンデシレン酸の添加量を1,000mgとした以外は、実施例1と同じ操作を行った。
実施例3
融解したウンデシレン酸の代わりに、ウンデシレン酸亜鉛の微粉末500mgを添加した以外は、実施例1と同じ操作を行った。
実施例4
ウンデシレン酸亜鉛の微粉末の添加量を1,000mgとした以外は、実施例3と同じ操作を行った。
比較例1
汚泥をビーカーに採取し、ウンデシレン酸を添加することなく、ビーカーをジャーテスターに取りつけた以外は、実施例1と同じ操作を行った。
実施例1〜4及び比較例1の結果を、第1表に示す。
【0015】
【表1】
Figure 0004210976
【0016】
【表2】
Figure 0004210976
【0017】
【表3】
Figure 0004210976
【0018】
第1表に見られるように、汚泥にウンデシレン酸を添加すると、汚泥からの硫化水素の発生量は徐々に減少し、この効果は数時間から十数時間持続する。しかし、汚泥中にすでに存在している硫化水素に対しては即効性がない。ウンデシレン酸亜鉛は、亜鉛が硫化水素を固定するために、添加直後から臭気抑制効果が発現する。
実施例5
余剰遠心濃縮汚泥と最初沈殿重力濃縮汚泥が容量比1:1で混合された懸濁物質(SS)3.7重量%、有機物量(VSS、対SS比)84重量%、繊維分(Fb、対SS比)21重量%、pH6.0、電気伝導率120mS/mの下水混合生汚泥の処理を行った。
容量1Lのビーカーに汚泥1,000mLを採取し、亜塩素酸ナトリウム150mg及び30℃で融解したウンデシレン酸100mgを添加し、スパーテルで速やかに撹拌した。次いで、ビーカーをジャーテスターに取りつけ、50rpmで緩速撹拌した。ジャーテスターの撹拌を開始して、5分後、1時間後、3時間後、6時間後、18時間後に、実施例1と同様にして、ビーカーから汚泥50mLを取り出し、硫化水素の濃度とメチルメルカプタンの濃度を測定し、汚泥について酸化還元電位を測定した。
硫化水素は、3時間後までは検知されず、6時間後12ppm、18時間後36ppmであった。メチルメルカプタンも、3時間後までは検知されず、6時間後6ppm、18時間後10ppmであった。酸化還元電位は、5分後78mV、1時間後68mV、3時間後20mV、6時間後18mV、18時間後−160mVであった。
実施例6
ウンデシレン酸の添加量を500mgとした以外は、実施例5と同じ操作を行った。
実施例7
ウンデシレン酸の添加量を1,000mgとした以外は、実施例5と同じ操作を行った。
実施例8
融解したウンデシレン酸の代わりに、ウンデシレン酸カルシウムの微粉末100mgを添加した以外は、実施例5と同じ操作を行った。
実施例9
ウンデシレン酸カルシウムの微粉末の添加量を500mgとした以外は、実施例8と同じ操作を行った。
実施例10
ウンデシレン酸カルシウムの微粉末の添加量を1,000mgとした以外は、実施例8と同じ操作を行った。
比較例2
汚泥をビーカーに採取し、亜塩素酸ナトリウムもウンデシレン酸も添加することなく、ビーカーをジャーテスターに取りつけた以外は、実施例5と同じ操作を行った。
比較例3
汚泥をビーカーに採取し、亜塩素酸ナトリウム150mgのみを添加し、ウンデシレン酸を添加しなかった以外は、実施例5と同じ操作を行った。
実施例5〜10及び比較例2〜3の結果を、第2表に示す。
【0019】
【表4】
Figure 0004210976
【0020】
【表5】
Figure 0004210976
【0021】
【表6】
Figure 0004210976
【0022】
第2表に見られるように、酸化剤系消臭剤である亜塩素酸ナトリウムを添加すると、硫化水素とメチルメルカプタンが酸化分解されて、添加直後から臭気抑制効果が発現し、ウンデシレン酸若しくはウンデシレン酸カルシウムの作用により、その効果が持続する。亜塩素酸ナトリウムのみを添加した比較例3では、最初は臭気抑制効果があるが、3時間を超えると臭気抑制効果が弱くなる。亜塩素酸ナトリウムとウンデシレン酸若しくはウンデシレン酸カルシウムを添加した実施例5〜10では、6時間後も酸化還元電位が負の値にならず、酸化力が維持されている。
実施例11
余剰遠心濃縮汚泥と最初沈殿重力濃縮汚泥が容量比1:1で混合された懸濁物質(SS)2.1重量%、有機物量(VSS、対SS比)85重量%、繊維分(Fb、対SS比)15重量%、pH5.5、電気伝導率180mS/mの下水混合生汚泥の処理を行った。
容量1Lのビーカーに汚泥1,000mLを採取し、亜塩素酸ナトリウム150mg及び30℃で融解したウンデシレン酸500mgを添加し、スパーテルで速やかに撹拌した。次いで、ビーカーをジャーテスターに取りつけ、50rpmで緩速撹拌した。ジャーテスターの撹拌を開始して、2時間後、6時間後、22時間後に、実施例1と同様にして、ビーカーから汚泥50mLを取り出し、硫化水素の濃度とメチルメルカプタンの濃度を測定し、汚泥について酸化還元電位を測定した。
硫化水素は、6時間後までは検知されず、22時間後30ppmであった。メチルメルカプタンは、2時間後は検知されず、6時間後1ppm、22時間後4ppmであった。酸化還元電位は、2時間後−108mV、6時間後−153mV、22時間後−196mVであった。
実施例12
融解したウンデシレン酸の代わりに、ウンデシレン酸10重量%とポリオキシエチレンラウリルエーテル0.5重量%を含む水懸濁液5,000mgを添加した以外は、実施例11と同じ操作を行った。
実施例13
融解したウンデシレン酸の代わりに、ウンデシレン酸カルシウムの微粉末500mgを添加した以外は、実施例11と同じ操作を行った。
実施例14
融解したウンデシレン酸の代わりに、ウンデシレン酸亜鉛の微粉末500mgを添加した以外は、実施例11と同じ操作を行った。
実施例15
融解したウンデシレン酸の代わりに、ウンデシレン酸カリウムの10重量%水溶液5,000mgを添加した以外は、実施例11と同じ操作を行った。
比較例4
汚泥をビーカーに採取し、亜塩素酸ナトリウムもウンデシレン酸も添加することなく、ビーカーをジャーテスターに取りつけた以外は、実施例11と同じ操作を行った。
比較例5
汚泥をビーカーに採取し、亜塩素酸ナトリウム150mgのみを添加し、ウンデシレン酸を添加しなかった以外は、実施例11と同じ操作を行った。
比較例6
融解したウンデシレン酸の代わりに、ウンデシレン酸ブチルエステル500mgを添加した以外は、実施例11と同じ操作を行った。
実施例11〜15及び比較例4〜6の結果を、第3表に示す。
【0023】
【表7】
Figure 0004210976
【0024】
【表8】
Figure 0004210976
【0025】
【表9】
Figure 0004210976
【0026】
第3表に見られるように、酸化剤系消臭剤である亜塩素酸ナトリウムを添加すると、硫化水素とメチルメルカプタンが酸化分解されて、添加直後から臭気抑制効果が発現し、ウンデシレン酸若しくはウンデシレン酸塩の作用により、その効果が持続する。亜塩素酸ナトリウムのみを添加した比較例5では、臭気抑制効果は弱く、効果の持続性がない。亜塩素酸ナトリウムとウンデシレン酸ブチルエステルを添加した比較例6では、亜塩素酸ナトリウムとウンデシレン酸若しくはウンデシレン酸塩を添加した実施例より臭気抑制効果が弱く、これは、ウンデシレン酸ブチルエステルが微細な液滴にならず、汚泥と接触する機会が多くないためであろうと推定される。
実施例16
余剰遠心濃縮汚泥と最初沈殿重力濃縮汚泥が容量比1:1で混合された懸濁物質(SS)3.7重量%、有機物量(VSS、対SS比)84重量%、繊維分(Fb、対SS比)21重量%、pH6.0、電気伝導率120mS/mの下水混合生汚泥の処理を行った。
容量1Lのビーカーに汚泥1,000mLを採取し、30℃で融解したウンデシレン酸100mgを添加し、スパーテルで速やかに撹拌した。次いで、ビーカーをジャーテスターに取りつけ、50rpmで緩速撹拌した。ジャーテスターの撹拌を開始して、24時間後と48時間後に、実施例1と同様にして、ビーカーから汚泥50mLを取り出し、硫化水素の濃度とメチルメルカプタンの濃度を測定した。
硫化水素は、24時間後は検知されず、48時間後400ppmであった。メチルメルカプタンは、24時間後25ppm、48時間後900ppmであった。
実施例17
ウンデシレン酸の添加量を500mgとした以外は、実施例16と同じ操作を行った。
実施例18
ウンデシレン酸の添加量を1,000mgとした以外は、実施例16と同じ操作を行った。
実施例19
容量1Lのビーカーに、実施例16と同じ汚泥1,000mLを採取し、亜塩素酸ナトリウム150mg及び30℃で融解したウンデシレン酸100mgを添加し、スパーテルで速やかに撹拌した。次いで、ビーカーをジャーテスターに取りつけ、50rpmで緩速撹拌した。ジャーテスターの撹拌を開始して、24時間後と48時間後に、実施例1と同様にして、ビーカーから汚泥50mLを取り出し、硫化水素の濃度とメチルメルカプタンの濃度を測定した。
硫化水素は、24時間後は検知されず、48時間後200ppmであった。メチルメルカプタンは、24時間後10ppm、48時間後400ppmであった。
実施例20
ウンデシレン酸の添加量を500mgとした以外は、実施例19と同じ操作を行った。
実施例21
ウンデシレン酸の添加量を1,000mgとした以外は、実施例19と同じ操作を行った。
比較例7
汚泥をビーカーに採取し、ウンデシレン酸を添加することなく、ビーカーをジャーテスターに取りつけた以外は、実施例16と同じ操作を行った。
比較例8
汚泥をビーカーに採取し、亜塩素酸ナトリウム150mgのみを添加し、ウンデシレン酸を添加しなかった以外は、実施例19と同じ操作を行った。
実施例16〜21及び比較例7〜8の結果を、第4表に示す。
【0027】
【表10】
Figure 0004210976
【0028】
第4表に見られるように、汚泥にウンデシレン酸若しくはウンデシレン酸と亜塩素酸ナトリウムを添加すると、良好な臭気抑制効果が発現し、かつ効果が持続する。亜塩素酸ナトリウムのみを添加した比較例8では、24時間後は弱いながらも臭気抑制効果が認められるが、48時間後には臭気抑制効果がなく、効果の持続性がない。
実施例22
ウンデシレン酸65重量部、ポリオキシエチレン(19モル)ラウリルエーテル15重量部及びメタノール20重量部を配合して、ウンデシレン酸製剤Aを調製した。ウンデシレン酸製剤Aの凝固点を、JIS K 0065にしたがって測定した。凝固点は、−1℃であった。製剤Aを7日間、40℃に保ったが、外観に変化はなく透明で、安定性は良好であった。
メタノールの代わりに、イソプロパノール、プロピレングリコール又はフェノキシエタノールを用いた以外は、同様にして、ウンデシレン酸製剤を調製し、凝固点の測定と安定性の評価を行った。また、ウンデシレン酸についても、凝固点の測定と安定性の評価を行った。
実施例22の結果を、第5表に示す。
【0029】
【表11】
Figure 0004210976
【0030】
第5表に見られるように、ウンデシレン酸にポリオキシエチレンラウリルエーテルとアルコール類を配合して調製したウンデシレン酸製剤は、凝固点が低下して室温の温度範囲ではほぼ液状を保ち、また、放置しても各成分に分離することがなく、安定性が良好である。
実施例23
余剰濃縮汚泥と重力濃縮汚泥が容量比4:6で混合された懸濁物質(SS)2.7重量%、有機物量(VSS、対SS比)83重量%、繊維分(Fb、対SS比)35重量%、pH5.5、電気伝導率120mS/mの下水混合生汚泥の処理を行った。
容量1Lのビーカーに汚泥1,000mLを採取し、亜硝酸ナトリウム130mgと30℃で融解したウンデシレン酸300mgを添加し、スパーテルで速やかに撹拌した。次いで、ビーカーをジャーテスターに取りつけ、50rpmで緩速撹拌した。ジャーテスターの撹拌開始前、撹拌開始1時間後、2時間後、4時間後、7時間後、16時間後、24時間後、30時間後に、ビーカーから汚泥50mLを取り出し、容量500mLのポリビンに入れ、2分間振盪したのち、気相中の硫化水素の濃度と、メチルメルカプタンの濃度を、ガス検知管[ガステック(株)]を用いて測定した。
硫化水素は、撹拌開始前290ppm、撹拌開始1時間後から4時間後までは検出されず、7時間後10ppm、16時間後150ppm、24時間後210ppm、30時間後250ppmであった。メチルメルカプタンは、撹拌開始前32ppm、撹拌開始1時間後から7時間後までは検出されず、16時間後5ppm、24時間後20ppm、30時間後25ppmであった。
実施例24
30℃で溶解したウンデシレン酸300mgの代わりに、実施例22で調製したウンデシレン酸製剤A462mg、すなわち含有されるウンデシレン酸として300mgを添加した以外は、実施例23と同様に処理して、硫化水素の濃度とメチルメルカプタンの濃度を測定した。
実施例25
ウンデシレン酸製剤A462mgを直接添加する代わりに、ウンデシレン酸製剤A462mgと水924mgとを混合して添加した以外は、実施例24と同様に処理して、硫化水素の濃度とメチルメルカプタンの濃度を測定した。
比較例9
ウンデシレン酸を添加することなく、亜硝酸ナトリウム1,000mgのみを添加した以外は、実施例23と同様に処理して、硫化水素の濃度とメチルメルカプタンの濃度を測定した。
比較例10
亜硝酸ナトリウムもウンデシレン酸も添加しなかった以外は、実施例23と同様に処理して、硫化水素の濃度とメチルメルカプタンの濃度を測定した。
実施例23〜25及び比較例9〜10の結果を、第6表に示す。
【0031】
【表12】
Figure 0004210976
【0032】
【表13】
Figure 0004210976
【0033】
第6表に見られるように、同じ量の亜硝酸ナトリウムとウンデシレン酸を汚泥に添加しても、ウンデシレン酸をそのまま添加した実施例23に比べて、ウンデシレン酸をポリオキシエチレンラウリルエーテル及びメタノールと混合した溶液状態の製剤Aとして添加した実施例24の方が、硫化水素とメチルメルカプタンの発生抑制効果に優れ、さらに、製剤Aを2倍量の水と混合して添加した実施例25の方が、硫化水素とメチルメルカプタンの発生抑制効果が一層優れている。
実施例26
余剰重力濃縮汚泥と初沈遠心濃縮汚泥が容量比1:1で混合された懸濁物質(SS)2.7重量%、有機物量(VSS、対SS比)83重量%、繊維分(Fb、対SS比)35重量%、pH5.47、電気伝導率197mS/mの下水混合生汚泥の処理を行った。
容量1Lのビーカーに汚泥1,000mLを採取し、カプリン酸とメタノールの1:1(重量比)混合物1,000mgを添加し、スパーテルで速やかに撹拌した。次いで、ビーカーをジャーテスターに取りつけ、50rpmで緩速撹拌した。ジャーテスターの撹拌を開始して、1時間後、3時間後、12時間後、24時間後に、ビーカーから汚泥50mLを取り出し、容量600mLの容器に入れ、2分間振盪したのち、気相中の硫化水素の濃度と、メチルメルカプタンの濃度を、ガス検知管[ガステック(株)]を用いて測定した。
硫化水素は、1時間後300ppm、3時間後250ppm、12時間後100ppm、24時間後60ppmであった。メチルメルカプタンは、1時間後25ppm、3時間後18ppm、12時間後7ppm、24時間後12ppmであった。
実施例27
カプリン酸とメタノールの1:1(重量比)混合物の添加量を2,000mgとした以外は、実施例26と同じ操作を行った。
実施例28〜29
カプリン酸の代わりに、カプリル酸を用いた以外は、実施例26〜27と同じ操作を行った。
比較例11
汚泥をビーカーに採取し、カプリン酸とメタノールの混合物を添加することなく、ビーカーをジャーテスターに取りつけた以外は、実施例26と同じ操作を行った。
実施例26〜29及び比較例11の結果を、第7表に示す。
【0034】
【表14】
Figure 0004210976
【0035】
【表15】
Figure 0004210976
【0036】
第7表に見られるように、汚泥にカプリン酸又はカプリル酸を添加すると、硫化水素とメチルメルカプタンの発生量は徐々に減少し、この効果は24時間以上持続する。しかし、汚泥中にすでに存在している硫化水素とメチルメルカプタンに対する即効性は弱い。なお、カプリン酸の融点は31.4℃であるが、等量のメタノールと混合して溶液とすることにより、取り扱いが容易になり、汚泥とも容易に混合することができた。
実施例30
容量1Lのビーカーに、実施例26と同じ汚泥1,000mLを採取し、カプリン酸とメタノールの1:1(重量比)混合物800mgを添加し、スパーテルで速やかに撹拌したのち、亜硝酸ナトリウム130mgを添加し、スパーテルで速やかに撹拌した。次いで、ビーカーをジャーテスターに取りつけ、50rpmで緩速撹拌した。ジャーテスターの撹拌を開始して、1時間後、4時間後、12時間後、24時間後に、ビーカーから汚泥50mLを取り出し、実施例26と同様にして、硫化水素の濃度とメチルメルカプタンの濃度を測定した。
硫化水素は、1時間後から12時間後までは検出されず、24時間後10ppmであった。メチルメルカプタンも、1時間後から12時間後までは検出されず、24時間後4ppmであった。
実施例31
カプリン酸の代わりに、カプリル酸を用いた以外は、実施例30と同じ操作を行った。
比較例12
汚泥をビーカーに採取し、カプリン酸とメタノールの混合物を添加することなく、亜硝酸ナトリウムのみを添加して、ビーカーをジャーテスターに取りつけた以外は、実施例30と同じ操作を行った。
比較例13
汚泥をビーカーに採取し、カプリン酸とメタノールの混合物も、亜硝酸ナトリウムも添加することなく、ビーカーをジャーテスターに取りつけた以外は、実施例30と同じ操作を行った。
実施例30〜31及び比較例12〜13の結果を、第8表に示す。
【0037】
【表16】
Figure 0004210976
【0038】
【表17】
Figure 0004210976
【0039】
第8表に見られるように、カプリン酸又はカプリル酸と亜硝酸ナトリウムを併用すると、添加直後から臭気抑制効果が発現して硫化水素、メチルメルカプタンともに濃度0ppmとなり、この状態がほぼ12時間継続し、24時間後も硫化水素とメチルメルカプタンの濃度は低い。これにに対して、亜硝酸ナトリウムのみを添加すると、添加直後には臭気抑制効果が発現するが、12時間後にはその効果は弱くなっている。
実施例32
容量1Lのビーカーに、実施例26と同じ汚泥1,000mLを採取し、カプリン酸とメタノールの9:1(重量比)混合物333mgを添加し、スパーテルで速やかに撹拌したのち、亜硝酸ナトリウム130mgを添加し、スパーテルで速やかに撹拌した。次いで、ビーカーをジャーテスターに取りつけ、50rpmで緩速撹拌した。ジャーテスターの撹拌を開始して、1時間後、4時間後、8時間後、16時間後、24時間後に、ビーカーから汚泥50mLを取り出し、実施例26と同様にして、硫化水素の濃度とメチルメルカプタンの濃度を測定した。
硫化水素は、1時間後から8時間後までは検出されず、16時間後85ppm、24時間後200ppmであった。メチルメルカプタンも、1時間後から8時間後までは検出されず、16時間後10ppm、24時間後20ppmであった。
実施例33
カプリン酸とメタノールの9:1(重量比)混合物333mgの代わりに、カプリン酸とメタノールとポリオキシエチレレンラウリルエーテルの7:2:1(重量比)混合物429mgを添加した以外は、実施例32と同じ操作を行った。
実施例34
カプリン酸とメタノールの9:1(重量比)混合物333mgの代わりに、カプリン酸と水酸化カリウムと精製水の10:3.5:86.5(重量比)混合物3,000mgを添加した以外は、実施例32と同じ操作を行った。
比較例14
汚泥をビーカーに採取し、カプリン酸とメタノールの混合物を添加することなく、亜硝酸ナトリウムのみを添加して、ビーカーをジャーテスターに取りつけた以外は、実施例32と同じ操作を行った。
比較例15
汚泥をビーカーに採取し、カプリン酸とメタノールの混合物も、亜硝酸ナトリウムも添加することなく、ビーカーをジャーテスターに取りつけた以外は、実施例32同じ操作を行った。
実施例32〜34及び比較例14〜15の結果を、第9表に示す。
【0040】
【表18】
Figure 0004210976
【0041】
【表19】
Figure 0004210976
【0042】
第9表に見られるように、カプリン酸とメタノールの混合物、カプリン酸とメタノールとポリオキシエチレレンラウリルエーテルの混合物、又は、カプリン酸カリウムと、亜硝酸ナトリウムを汚泥に添加すると、添加直後から臭気抑制効果が発現し、かつ、カプリン酸とメタノールとポリオキシエチレレンラウリルエーテルの混合物と、カプリン酸カリウムは、その効果の持続時間が長い。
実施例35
余剰重力濃縮汚泥と初沈重力濃縮汚泥が容量比1:1で混合された懸濁物質(SS)1.9重量%、有機物量(VSS、対SS比)87重量%、繊維分(Fb、対SS比)46重量%、pH6.09、電気伝導率178mS/mの下水混合生汚泥の処理を行った。
カプリン酸50重量部、プロピレングリコール40重量部及びポリオキシエチレンラウリルエーテル10重量部を混合して、カプリン酸製剤を調製した。
容量1Lのビーカーに汚泥1,000mLを採取し、カプリン酸製剤300mgを添加してスパーテルで速やかに撹拌したのち、亜硝酸ナトリウム90mgを添加してスパーテルで速やかに撹拌した。次いで、ビーカーをジャーテスターに取りつけ、50rpmで緩速撹拌した。ジャーテスターの撹拌を開始して、1時間後、7時間後、14時間後、24時間後に、ビーカーから汚泥50mLを取り出し、実施例26と同様にして、硫化水素の濃度とメチルメルカプタンの濃度を測定した。
硫化水素は、1時間後から14時間後までは検出されず、24時間後13ppmであった。メチルメルカプタンも、1時間後から14時間後までは検出されず、24時間後7ppmであった。
実施例36
カプリン酸製剤の添加量を400mgとした以外は、実施例35と同じ操作を行った。
実施例37
カプリン酸製剤の添加量を500mgとした以外は、実施例35と同じ操作を行った。
実施例38
カプリン酸30重量部、プロピレングリコール15重量部、トリエタノールアミン15重量部及び精製水40重量部を混合して、カプリン酸TEA製剤を調製カプリン酸製剤300mgの代わりに、カプリン酸TEA製剤500mgを添加した以外は、実施例35と同じ操作を行った。
実施例39
カプリン酸TEA製剤の添加量を667mgとした以外は、実施例38と同じ操作を行った。
実施例40
カプリン酸TEA製剤の添加量を833mgとした以外は、実施例38と同じ操作を行った。
比較例16
汚泥をビーカーに採取し、カプリン酸製剤を添加することなく、亜硝酸ナトリウムのみを添加して、ビーカーをジャーテスターに取りつけた以外は、実施例35と同じ操作を行った。
比較例17
汚泥をビーカーに採取し、カプリン酸製剤も、亜硝酸ナトリウムも添加することなく、ビーカーをジャーテスターに取りつけた以外は、実施例35と同じ操作を行った。
実施例35〜40及び比較例16〜17の結果を、第10表に示す。
【0043】
【表20】
Figure 0004210976
【0044】
【表21】
Figure 0004210976
【0045】
第10表に見られるように、カプリン酸とプロピレングリコールとポリオキシエチレレンラウリルエーテルを含有するカプリン酸製剤、又は、カプリン酸とプロピレングリコールとトリエタノールアミンを含有するカプリン酸TEA製剤と、亜硝酸ナトリウムを汚泥に添加すると、添加直後から臭気抑制効果が発現し、かつ、その効果の持続時間が長い。
実施例41
カプリル酸50重量部、プロピレングリコール40重量部及びポリオキシエチレンラウリルエーテル10重量部を混合して、カプリル酸製剤を調製した。
容量1Lのビーカーに、実施例36と同じ汚泥1,000mLを採取し、カプリル酸製剤300mgを添加してスパーテルで速やかに撹拌したのち、亜硝酸ナトリウム90mgを添加してスパーテルで速やかに撹拌した。次いで、ビーカーをジャーテスターに取りつけ、50rpmで緩速撹拌した。ジャーテスターの撹拌を開始して、1時間後、4時間後、12時間後、24時間後に、ビーカーから汚泥50mLを取り出し、実施例26と同様にして、硫化水素の濃度とメチルメルカプタンの濃度を測定した。
硫化水素は、1時間後から12時間後までは検出されず、24時間後15ppmであった。メチルメルカプタンも、1時間後から12時間後までは検出されず、24時間後10ppmであった。
実施例42
カプリル酸製剤の添加量を400mgとした以外は、実施例41と同じ操作を行った。
実施例43
カプリル酸製剤の添加量を500mgとした以外は、実施例41と同じ操作を行った。
実施例44
カプリル酸30重量部、プロピレングリコール15重量部、トリエタノールアミン15重量部及び精製水40重量部を混合して、カプリル酸TEA製剤を調製した。
カプリル酸製剤300mgの代わりに、カプリル酸TEA製剤500mgを添加した以外は、実施例41と同じ操作を行った。
実施例45
カプリル酸TEA製剤の添加量を667mgとした以外は、実施例44と同じ操作を行った。
実施例46
カプリル酸TEA製剤の添加量を833mgとした以外は、実施例44と同じ操作を行った。
比較例18
汚泥をビーカーに採取し、カプリル酸製剤を添加することなく、亜硝酸ナトリウムのみを添加して、ビーカーをジャーテスターに取りつけた以外は、実施例41と同じ操作を行った。
比較例19
汚泥をビーカーに採取し、カプリル酸製剤も、亜硝酸ナトリウムも添加することなく、ビーカーをジャーテスターに取りつけた以外は、実施例41と同じ操作を行った。
実施例41〜46及び比較例18〜19の結果を、第11表に示す。
【0046】
【表22】
Figure 0004210976
【0047】
【表23】
Figure 0004210976
【0048】
第11表に見られるように、カプリル酸とプロピレングリコールとポリオキシエチレレンラウリルエーテルを含有するカプリル酸製剤、又は、カプリル酸とプロピレングリコールとトリエタノールアミンを含有するカプリル酸TEA製剤と、亜硝酸ナトリウムを汚泥に添加すると、添加直後から臭気抑制効果が発現し、かつ、その効果の持続時間が長い。
実施例47
余剰重力濃縮汚泥と初沈重力濃縮汚泥が容量比1:1で混合された懸濁物質(SS)1.7重量%、有機物量(VSS、対SS比)88重量%、繊維分(Fb、対SS比)38重量%、pH5.44、電気伝導率145mS/mの下水混合生汚泥の処理を行った。
容量1Lのビーカーに汚泥1,000mLを採取し、1−デカノール600mgを添加し、スパーテルで速やかに撹拌した。次いで、ビーカーをジャーテスター に取りつけ、50rpmで緩速撹拌した。ジャーテスターの撹拌を開始して、1時間後、5時間後、10時間後、24時間後に、ビーカーから汚泥50mLを取り出し、容量600mLの容器に入れ、2分間振盪したのち、気相中の硫化水素の濃度と、メチルメルカプタンの濃度を、ガス検知管[ガステック(株)]を用いて測定した。
硫化水素は、1時間後230ppm、5時間後150ppm、10時間後120ppm、24時間後80ppmであった。メチルメルカプタンは、1時間後23ppm、5時間後15ppm、10時間後7ppm、24時間後7ppmであった。
実施例48
1−デカノールの添加量を1,200mgとした以外は、実施例47と同じ操作を行った。
実施例49
1−デカノールの代わりに、1−オクタノール600mgを添加した以外は、実施例47と同じ操作を行った。
実施例50
1−オクタノールの添加量を1,200mgとした以外は、実施例49と同じ操作を行った。
比較例20
汚泥をビーカーに採取し、1−デカノールを添加することなく、ビーカーをジャーテスターに取りつけた以外は、実施例47と同じ操作を行った。
実施例47〜50及び比較例20の結果を、第12表に示す。
【0049】
【表24】
Figure 0004210976
【0050】
【表25】
Figure 0004210976
【0051】
第12表に見られるように、汚泥に1−デカノール又は1−オクタノールを添加すると、硫化水素とメチルメルカプタンの発生量は徐々に減少し、この効果は24時間以上持続する。しかし、汚泥中にすでに存在している硫化水素とメチルメルカプタンに対する即効性はほとんどない。
実施例51
容量1Lのビーカーに、実施例47と同じ汚泥1,000mLを採取し、1−デカノール600mgを添加し、スパーテルで速やかに撹拌したのち、亜硝酸ナトリウム75mgを添加し、スパーテルで速やかに撹拌した。次いで、ビーカーをジャーテスターに取りつけ、20rpmで緩速撹拌した。ジャーテスターの撹拌を開始して、1時間後、6時間後、12時間後、24時間後に、ビーカーから汚泥50mLを取り出し、実施例47と同様にして、硫化水素の濃度とメチルメルカプタンの濃度を測定した。
硫化水素は、1時間後から12時間後までは検出されず、24時間後45ppmであった。メチルメルカプタンも、1時間後から12時間後までは検出されず、24時間後8ppmであった。
実施例52
1−デカノールの代わりに、1−オクタノールを用いた以外は、実施例51と同じ操作を行った。
比較例21
汚泥をビーカーに採取し、1−デカノールを添加することなく、亜硝酸ナトリウムのみを添加して、ビーカーをジャーテスターに取りつけた以外は、実施例51と同じ操作を行った。
比較例22
汚泥をビーカーに採取し、1−デカノールも、亜硝酸ナトリウムも添加することなく、ビーカーをジャーテスターに取りつけた以外は、実施例51と同じ操作を行った。
実施例51〜52及び比較例21〜22の結果を、第13表に示す。
【0052】
【表26】
Figure 0004210976
【0053】
【表27】
Figure 0004210976
【0054】
第13表に見られるように、1−デカノール又は1−オクタノールと亜硝酸ナトリウムを併用すると、添加直後から臭気抑制効果が発現して、硫化水素、メチルメルカプタンともに濃度0ppmとなり、この状態がほぼ12時間継続し、24時間後も硫化水素とメチルメルカプタンの濃度は低い。これに対して、亜硝酸ナトリウムのみを添加すると、添加直後には臭気抑制効果が発現するが、12時間後にはその効果は弱くなっている。
実施例53
余剰重力濃縮汚泥と初沈重力濃縮汚泥が容量比1:1で混合された懸濁物質(SS)1.9重量%、有機物量(VSS、対SS比)86重量%、繊維分(Fb、対SS比)31重量%、pH5.91、電気伝導率177mS/mの下水混合生汚泥の処理を行った。
容量1Lのビーカーに汚泥1,000mLを採取し、1−デカノール500mgを添加し、スパーテルで速やかに撹拌したのち、亜硝酸ナトリウム130mgを添加し、スパーテルで速やかに撹拌した。次いで、ビーカーをジャーテスターに取りつけ、20rpmで緩速撹拌した。ジャーテスターの撹拌を開始して、1時間後、4時間後、8時間後、25時間後に、ビーカーから汚泥50mLを取り出し、実施例47と同様にして、硫化水素の濃度とメチルメルカプタンの濃度を測定した。
硫化水素は、1時間後と4時間後には検出されず、8時間後3ppm、25時間後100ppmであった。メチルメルカプタンも、1時間後と4時間後には検出されず、8時間後3ppm、25時間後15ppmであった。
実施例54
1−デカノール65重量部、プロピレングリコール25重量部及びポリオキシエチレンラウリルエーテル10重量部を混合して、デカノール製剤を調製した。
容量1Lのビーカーに、実施例53と同じ汚泥1,000mLを採取し、デカノール製剤462mgを添加してスパーテルで速やかに撹拌したのち、亜硝酸ナトリウム130mgを添加してスパーテルで速やかに撹拌した。次いで、ビーカーをジャーテスターに取りつけ、20rpmで緩速撹拌した。ジャーテスターの撹拌を開始して、1時間後、4時間後、8時間後、25時間後に、ビーカーから汚泥50mLを取り出し、実施例47と同様にして、硫化水素の濃度とメチルメルカプタンの濃度を測定した。
硫化水素は、1時間後から8時間後までは検出されず、25時間後90ppmであった。メチルメルカプタンは、1時間後と4時間後は検出されず、8時間後3ppm、25時間後12ppmであった。
実施例55
デカノール製剤の添加量を769mgとした以外は、実施例54と同じ操作を行った。
比較例23
汚泥をビーカーに採取し、デカノール製剤を添加することなく、亜硝酸ナトリウムのみを添加して、ビーカーをジャーテスターに取りつけた以外は、実施例54と同じ操作を行った。
比較例24
汚泥をビーカーに採取し、デカノール製剤も、亜硝酸ナトリウムも添加することなく、ビーカーをジャーテスターに取りつけた以外は、実施例54と同じ操作を行った。
実施例53〜55及び比較例23〜24の結果を、第14表に示す。
【0055】
【表28】
Figure 0004210976
【0056】
【表29】
Figure 0004210976
【0057】
第14表に見られるように、1−デカノール又は1−デカノールとプロピレングリコールとポリオキシエチレレンラウリルエーテルを含有するデカノール製剤と、亜硝酸ナトリウムを汚泥に添加すると、添加直後から臭気抑制効果が発現し、かつ、その効果の持続時間が長い。また、1−デカノールの添加量が同じ場合、デカノール製剤として添加する方が、効果の持続時間が長い。
実施例56
1−オクタノール70重量部、プロピレングリコール20重量部及びポリオキシエチレンラウリルエーテル10重量部を混合して、オクタノール製剤を調製した。
容量1Lのビーカーに、実施例53と同じ汚泥1,000mLを採取し、オクタノール製剤571mgを添加してスパーテルで速やかに撹拌したのち、亜硝酸ナトリウム130mgを添加してスパーテルで速やかに撹拌した。次いで、ビーカーをジャーテスターに取りつけ、20rpmで緩速撹拌した。ジャーテスターの撹拌を開始して、1時間後、10時間後、24時間後に、ビーカーから汚泥50mLを取り出し、実施例47と同様にして、硫化水素の濃度とメチルメルカプタンの濃度を測定した。
硫化水素は、1時間後は検出されず、10時間後3ppm、24時間後20ppmであった。メチルメルカプタンは、1時間後と10時間後は検出されず、24時間後10ppmであった。
実施例57
オクタノール製剤の添加量を857mgとした以外は、実施例56と同じ操作を行った。
比較例25
汚泥をビーカーに採取し、オクタノール製剤を添加することなく、亜硝酸ナトリウムのみを添加して、ビーカーをジャーテスターに取りつけた以外は、実施例56と同じ操作を行った。
比較例26
汚泥をビーカーに採取し、オクタノール製剤も、亜硝酸ナトリウムも添加することなく、ビーカーをジャーテスターに取りつけた以外は、実施例56と同じ操作を行った。
実施例56〜57及び比較例25〜26の結果を、第15表に示す。
【0058】
【表30】
Figure 0004210976
【0059】
【表31】
Figure 0004210976
【0060】
第15表に見られるように、1−オクタノールとプロピレングリコールとポリオキシエチレレンラウリルエーテルを含有するオクタノール製剤と、亜硝酸ナトリウムを汚泥に添加すると、添加直後から臭気抑制効果が発現し、かつ、その効果の持続時間が長い。
実施例58〜63
第16表に示す配合組成により、ウンデシレン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、メタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール又は3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールを配合して、汚泥臭気抑制剤を調製した。
得られた汚泥臭気抑制剤について、JIS K 0065にしたがって、融点を測定した。また、精製水1Lに汚泥臭気抑制剤600mgを添加し、スパーテルで10回かき回し、製剤の広がりのよさと製剤の分離浮上の有無に着目して、水分散性を ◎、○、△、× の4段階で評価した。
実施例64〜66
ウンデシレン酸の代わりに1−デカノールを用い、第16表に示す配合組成により汚泥臭気抑制剤を調製し、評価を行った。
実施例58〜66の結果を、第16表に示す。
【0061】
【表32】
Figure 0004210976
【0062】
第16表に見られるように、ウンデシレン酸を含有し、1−デカノールを含有しない製剤は、凝固点を0℃以下に下げるためには、ウンデシレン酸含有量が50〜60重量%程度になり、水への分散性もあまりよくない。1−デカノールを含有し、ウンデシレン酸を含有しない製剤は、凝固点が容易に0℃以下になり、水への分散性も極めて良好である。
実施例67〜72
第17表に示す配合組成により、ウンデシレン酸、1−デカノール、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールを配合して、汚泥臭気抑制剤を調製し、評価を行った。結果を、第17表に示す。
【0063】
【表33】
Figure 0004210976
【0064】
第17表に見られるように、ウンデシレン酸と1−デカノールを併用すると、凝固点が低下し、水分散性が向上し、臭気抑制に対する有効成分含有量を80重量%まで増やすことができる。
実施例73〜76
第18表に示す配合により、カプリン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、プロピレングリコール又は3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールを混合して、汚泥臭気抑制剤を調製し、評価を行った。結果を、第18表に示す。
【0065】
【表34】
Figure 0004210976
【0066】
第18表に見られるように、カプリン酸を含有し、脂肪族アルコールを含有しない製剤は、凝固点が高い。
実施例77〜82
第19表に示す配合組成により、カプリン酸、1−デカノール、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールを配合して、汚泥臭気抑制剤を調製し、評価を行った。結果を、第19表に示す。
【0067】
【表35】
Figure 0004210976
【0068】
第19表に見られるように、カプリン酸と1−デカノールを併用すると、凝固点が低下し、水分散性が向上し、臭気抑制に対する有効成分含有量を80重量%まで増やすことができる。
【0069】
【発明の効果】
本発明の汚泥臭気抑制剤及び汚泥臭気抑制方法によれば、下水処理場、し尿処理場などの汚泥から発生する硫化水素、メチルメルカプタン、アンモニア、アミンなどに由来する臭気を効果的に抑制することができる。また、炭素数6〜12の脂肪酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールを界面活性剤又は溶剤と混合して一剤化すると、安定な液状製剤として取り扱いが容易になり、しかも汚泥に添加すると臭気抑制効果が長時間持続する。さらに、酸化剤系消臭剤を併用した場合には、臭気抑制剤の添加直後から消臭効果が発現し、かつその効果を持続することができる。

Claims (6)

  1. 下水処理場、し尿処理場又は有機性産業排水の処理工程で発生する汚泥に、カプリル酸、カプリン酸又はウンデシレン酸若しくはその塩及び/又は炭素数6〜12の脂肪族アルコールを有効成分として含有する汚泥臭気抑制剤を添加することを特徴とする汚泥臭気抑制方法
  2. 汚泥臭気抑制剤が界面活性剤を含有する請求項1記載の汚泥臭気抑制方法
  3. 汚泥臭気抑制剤が溶剤を含有する請求項1又は請求項2記載の汚泥臭気抑制方法
  4. 汚泥臭気抑制剤が界面活性剤及び溶剤を含有する請求項1、請求項2又は請求項3記載の汚泥臭気抑制方法。
  5. 汚泥臭気抑制剤が酸化剤系消臭剤を含有する請求項1、請求項2、請求項3又は請求項記載の汚泥臭気抑制方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか記載の汚泥臭気抑制方法に用いる汚泥臭気抑制剤。
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