JP4210806B2 - ユビキチン特異的プロテアーゼ遺伝子 - Google Patents

ユビキチン特異的プロテアーゼ遺伝子 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はユビキチン特異的プロテアーゼ遺伝子に関する。
【0002】
【従来の技術】
多種の蛋白質の翻訳後の修飾の1つとしてユビキチンの結合(ユビキチン化)が知られている。この蛋白質のユビキチン化はDNA修復や蛋白質分解、エンドサイトーシス等の生物学的に重要なプロセスに関係している(Hershko, A., Ciechanover, A., Annu. Rev. Biochem., 61, 761-807 (1992): Hochstrasser, M.,Annu. Rev. Genet., 30, 405-439 (1996) )。その中でも最もよく研究されているのは、ポリユビキチン化である。そのような修飾を受けた蛋白質は、速やかにプロテアソームにより分解、排除される(Hochstrasser, M.,Annu. Rev. Genet., 30, 405-439 (1996): Coux, O., et al., Annu. Rev. Biochem., 65, 801-847 (1996))。
【0003】
最近、上記ユビキチン化が可逆的な過程であることが分かり、ユビキチン化された蛋白質からユビキチンを特異的に切断する酵素(DUBs)が酵母からほ乳類まで多くの生物種で発見された。例えば、脱ユビキチン化酵素をコードする17の遺伝子が、出芽酵母の染色体に存在することが判った(Wilkinson, K.D., FASEB J., 11, 1245-1256 (1997))。しかしながら、それらの特異的な生物学的役割については、殆ど知られていない。
【0004】
上記ユビキチン化と、脱ユビキチン化は、細胞内において、ターゲット蛋白質の機能を調節していると考えられ、かかる反応に関与するユビキチン特異的プロテアーゼのファミリーは、それに特徴的なシステイン−ドメインとヒスチジン−ドメインが非常によく保存されており、蛋白質分解のための活性部位を形成している。
【0005】
しかして、全ての真核生物は、構造的に相互に関連性のない2つの遺伝子ファミリーである、UCH(ユビキチンのC末端ヒドロラーゼ)ファミリー及びUBP(ユビキチン特異的プロセッシング・プロテアーゼ)ファミリーに属する遺伝子によってそれぞれコードされる脱ユビキチン化酵素(DUBs)を含んでいる。現在、60以上のかかる脱ユビキチン化酵素の存在が既に報告されているが、それらのヒト相同物については、僅かの同定がなされているのみである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、新規なユビキチン特異的プロテアーゼおよびその遺伝子を提供することにある。
【0007】
本発明者は、上記目的より鋭意研究を重ねた結果、ヒト胎児脳、ヒト成人動脈及びヒト成人胎盤のcDNAライブラリーからランダムに約3万クローンのEST(expression sequence tag)のデータを解析し、独自のデータベースを開発し、その中からコンピュータを用いたホモロジー検索により上記目的に合致する、活性部位が保存されている蛋白質をコードする遺伝子を単離するに成功し、ここに本発明を完成するに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明によれば、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードする塩基配列を含むユビキチン特異的プロテアーゼ遺伝子(ubiquitin-specific protease 1、以下「USP1遺伝子」という)が提供される。
【0009】
また本発明によれば、塩基配列が配列番号2で示されるものである上記USP1遺伝子が提供される。
【0010】
更に本発明によれば、以下の(a)及び(b)のいずれかのポリヌクレオチドからなるUSP1遺伝子、特にヒトUSP1遺伝子が提供される。
【0011】
(a)配列番号3で示される塩基配列の全部又は一部を含むポリヌクレオチド
(b)配列番号3で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
【0012】
加えて本発明によれば、USP1遺伝子検出用の特異プローブ又は特異プライマーとして使用されるDNA断片である上記遺伝子が提供される。
【0013】
また、本発明は上記遺伝子によってコードされるユビキチン特異的プロテアーゼ(以下「USP1」という)及びこれと結合性を有する抗体をも提供するものである。
【0014】
本発明により提供される新規なUSP1遺伝子の利用によれば、該遺伝子の各種組織での発現の検出や、ヒトUSP1の遺伝子工学的製造が可能となり、これらにより、前述したように多様で且つ細胞に基本的な活動に深く関与しているヒトUSP1システム乃至ヒトUSP1の機能の解析や、染色体の局在領域の異常と関係する各種疾患、例えば、神経芽腫、乳癌、膵癌、横紋筋肉腫等を含む各種癌や上記染色体領域の異常とは直接関係はないが、細胞周期、増殖、分化等に関わるネットワークの異常による各種疾患や、またパーキンソン氏病において別種の脱ユビキチン蛋白(UCHL1)の異常が見いだされた(Nature, 395, 451-452 (1998))ことから、中枢神経系の疾患等の診断等を行うことができる。また、前記各疾患の治療、特に遺伝子治療、及び予防薬のスクリーニングや評価等をも行うことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本明細書におけるアミノ酸、ペプチド、塩基配列、核酸等の略号による表示は、IUPAC−IUBの規定〔IUPAC-IUB Communication on Biological Nomenclature, Eur. J. Biochem., 138: 9 (1984)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(特許庁編)及び当該分野における慣用記号に従うものとする。
【0016】
本発明遺伝子の一具体例としては、後述する実施例に示される「GEN−421G05」と名付けられたDNA配列から演繹されるものを挙げることができる。その塩基配列は、配列番号3に示されるとおりである。
【0017】
該遺伝子は、配列番号1に示される785アミノ酸配列の新規なUSP1をコードする2355塩基のオープンリーディングフレーム(ORF)を含むcDNAであり、全長3222塩基(ポリAを除く)からなっている。その分子量は88.2KDa、等電点は5.24と計算される。
【0018】
本発明遺伝子の発現産物であるUSP1は、ユビキチン特異的プロテアーゼの活性部位を形成するシステイン−ドメイン(アミノ酸配列番号の82番目から99番目まで)とヒスチジン−ドメイン(アミノ酸配列番号の576番目から784番目まで)を持っているばかりでなく、ユビキチン特異的プロテアーゼのファミリーでよく保存されている領域、即ちアスパラギン酸ドメイン(アミノ酸配列番号の197番目から213番目まで)とKRFドメイン(アミノ酸配列番号の524番目から535番目まで)も保持している。これらのことから、本発明USP1は、ユビキチン特異的プロテアーゼのファミリーの新たなメンバーと考えられる。
【0019】
更に 脱ユビキチン化活性試験により、本発明USP1が実際にユビキチン特異的な切断活性を有することが確認された。
【0020】
また、ラディエーション−ハイブリッドマッピング法(RH法,Hum. Mol. Genet., 5, 339-346 (1996))及びフルオレッセンス・インサイト・ハイブリダイゼーション分析(FISH法)により、蛍光標識したDNAプローブをスライド上の染色体標本にハイブリダイズさせたとき、本発明USP1遺伝子は1p31.3−p32.1にシグナルが検出された。これらのことから、染色体ローカスは1p31.3−p32.1と決定できた。
【0021】
かかる本発明USP1遺伝子の局在する染色体局在領域(1p31−p32領域)を含む領域は、神経芽腫や乳癌において、欠失、転座、LOH(ヘテロ接合性の喪失)などが共通にあると報告されている領域である(Ritke, M.K., et al., Cytogenet. Cell Genet., 50, 84-90 (1989): Takeda, O., et al., Genes Chrom. Cancer, 10, 30-39 (1994): Bieche, I., et al., Oncol. Rep. 5, 267-272
(1998) )。
【0022】
更に、上記1p31.3−p32.1領域は、その増幅などの染色体異常が膵癌と横紋筋肉腫で生じていると報告されている(Solinas-Toldo, S., et al., Cancer Res., 56, 3803-3807 (1996): Steilen-Gimbel, H., et al., Hum. Genet., 97, 87-90 (1996) )。
【0023】
これらの報告と、今まで言われてきたユビキチン蛋白質分解系の生理的機能(例えば、DNA修復、細胞周期調節、異常蛋白質の分解、エンドサイトーシス等、Wilkinson, K.D., FASEB J., 11, 1245-1256 (1997))を考え合わせると、本発明USP1遺伝子は、癌抑制遺伝子あるいは癌遺伝子の候補遺伝子であることが示唆される。
【0024】
また、ユビキチン系に関するこれまでの多くの研究成果では、ユビキチン化による蛋白質の修飾が生物学的に重要であると言われてきた(Hershko, A., Ciechanover, A., Annu. Rev. Biochem., 61, 761-807 (1992): Hochstrasser, M.,Annu. Rev. Genet., 30, 405-439 (1996): Coux, O., et al., Annu. Rev. Biochem., 65, 801-847 (1996))。
【0025】
しかしながら、細胞中に多くの異なるUBPが存在する理由は、未だに判明していない。ユビキチンは、ポリユビキチンやユビキチン融合遺伝子産物から機能的なユビキチンを作り出すこと、間違ったユビキチン蛋白質の見直し、異常なポリユビキチンの切り出し、あるいはプロテアソームによって作られた分解中間物の解離に関係していると考えられる。
【0026】
多くのヒトの疾患は脳においてユビキチンやあるいはユビキチン化蛋白質の異常な蓄積に関係していることが知られている(Wilkinson, K. D., FASEB J., 11,1245-1256 (1997))。そしてヒト疾患との関係において、細胞内のユビキチンプールを正常に調節するユビキチン代謝経路の機能喪失があると考えられる。
【0027】
本発明遺伝子は、具体的には配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードする塩基配列を含む遺伝子又は配列番号2で示される塩基配列を含む遺伝子として例示されるが、特にこれらに限定されることなく、例えば、上記特定のアミノ酸配列中に一定の改変を有する遺伝子や、上記特定の塩基配列と一定の相同性を有する遺伝子であることができる。
【0028】
即ち、本発明遺伝子には、配列番号1に示されるアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなる蛋白質をコードする塩基配列を含む遺伝子もまた包含される。ここで、「アミノ酸の欠失、置換又は付加」の程度及びそれらの位置等は、改変された蛋白質が、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質と同様の機能を有する同効物であれば特に制限されない。具体的には、ヒトUSP1の活性を保持するものが挙げられる。また、上記複数には、2以上、通常数個が含まれる。
【0029】
尚、これらアミノ酸配列の改変(変異)等は、天然において、例えば突然変異や翻訳後の修飾等により生じることもあるが、天然由来の遺伝子(例えば本発明の具体例遺伝子)に基づいて人為的に改変することもできる。本発明は、このような改変・変異の原因及び手段等を問わず、上記特性を有する全ての改変遺伝子を包含する。
【0030】
上記の人為的手段としては、例えばサイトスペシフィック・ミュータゲネシス〔Methods in Enzymology, 154: 350, 367-382 (1987);同 100: 468 (1983);Nucleic Acids Res., 12: 9441 (1984);続生化学実験講座1「遺伝子研究法II」、日本生化学会編, p105 (1986)〕等の遺伝子工学的手法、リン酸トリエステル法やリン酸アミダイト法等の化学合成手段〔J. Am. Chem. Soc., 89: 4801 (1967);同91: 3350 (1969);Science, 150: 178 (1968);Tetrahedron Lett., 22: 1859 (1981);同24: 245 (1983)〕及びそれらの組合せ方法等が例示できる。
【0031】
本発明遺伝子のひとつの態様としては、配列番号3で示される塩基配列の全部或は一部を含むポリヌクレオチドからなる遺伝子を例示できる。この塩基配列に含まれるオープンリーディングフレームは、上記アミノ酸配列(配列番号1)の各アミノ酸残基を示すコドンの一つの組合せ例でもあり、本発明遺伝子はこれに限らず、各アミノ酸残基に対して任意のコドンを組合せ選択した塩基配列を有することも勿論可能である。該コドンの選択は、常法に従うことができ、例えば利用する宿主のコドン使用頻度等を考慮することができる〔Ncleic Acids Res., 9: 43 (1981)〕。
【0032】
また、本発明遺伝子は、例えば配列番号3の具体例で示されるように、一本鎖DNAの塩基配列として表示されるが、本発明はかかる塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオオチドやこれらの両者を含むコンポーネントも当然に包含するものであり、また、cDNA等のDNAに限定されることもない。
【0033】
更に、本発明遺伝子は、前記のとおり、配列番号3に示される塩基配列の全部又は一部を含むポリヌクレオチドからなるものに限定されず、当該塩基配列と一定の相同性を有する塩基配列からなるものも包含するものである。かかる遺伝子としては、少なくとも、下記に掲げるようなストリンジェントな条件下で、配列番号2で示される塩基配列からなるDNAとハイブリダイズし、一定の条件下での洗浄においてもこれより脱離しないものが挙げられる。
【0034】
即ち、配列番号3の塩基配列を有するDNAと、6×SSC中65℃一夜の条件下或は50%ホルムアミドを含む4×SSC中37℃一夜の条件下においてハイブリダイズし、2×SSC中65℃での30分間の洗浄条件下においても該DNAから脱離しない塩基配列を有する遺伝子が例示される。ここで、SSCは、標準食塩−クエン酸緩衝液である(standard saline citrate; 1×SSC = 0.15M NaCl, 0.015M sodium citrate)。
【0035】
本発明の遺伝子は、その具体例についての配列情報に基づいて、一般的な遺伝子工学的手法により容易に製造・取得することができる〔Molecular Cloning 2d Ed, Cold Spring Harbor Lab. Press (1989);続生化学実験講座「遺伝子研究法I、II、III」、日本生化学会編(1986)等参照〕。
【0036】
具体的には、本発明遺伝子が発現される適当な起源より、常法に従ってcDNAライブラリーを調製し、該ライブラリーから、本発明遺伝子に特有の適当なプローブや抗体を用いて所望クローンを選択することにより実施できる〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 78: 6613 (1981);Science, 222: 778 (1983)等〕。
【0037】
上記において、cDNAの起源としては、本発明遺伝子を発現する各種の細胞、組織やこれらに由来する培養細胞等、特に脳組織が例示され、これらからの全RNAの分離、mRNAの分離や精製、cDNAの取得とそのクローニング等はいずれも常法に従い実施できる。尚、cDNAライブラリーは市販されてもおり、本発明においてはそれらcDNAライブラリー、例えばクローンテック社(Clontech Lab. Inc.)より市販の各種cDNAライブラリー等を用いることもできる。
【0038】
本発明遺伝子をcDNAライブラリーからスクリーニングする方法も、特に制限されず、通常の方法に従うことができる。具体的には、例えばcDNAにより産生される蛋白質の特異抗体を使用した免疫的スクリーニングにより対応するcDNAクローンを選択する方法、目的のDNA配列に選択的に結合するプローブを用いたプラークハイブリダイゼーション、コロニーハイブリダイゼーション等やこれらの組合せ等を例示できる。
【0039】
ここで用いられるプローブとしては、本発明遺伝子の塩基配列に関する情報をもとにして化学合成されたDNA等が一般的に例示できるが、勿論既に取得された本発明遺伝子そのものやその断片等も良好に利用できる。
【0040】
また、上記特異抗体に代えてUSP1を利用した、蛋白質相互作用クローニング法(protein interaction cloning procedure)によることもでき、更に、本発明遺伝子の塩基配列情報に基づき設定したセンス・プライマー、アンチセンス・プライマーをスクリーニング用プローブとして用いることもできる。
【0041】
本発明では、またディファレンシャルデイスプレイ法(differential display method, Liand P., et al., Science, 257, 967-971 (1992))によって、異なる条件下の細胞もしくは複数の異なる細胞群間のmRNAの発現を直接比較、検討することができる。
【0042】
本発明遺伝子の取得に際しては、PCR法〔Science, 230: 1350 (1985)〕によるDNA/RNA増幅法も好適に利用できる。殊に、ライブラリーから全長のcDNAが得られ難いような場合には、レース法(RACE:Rapid amplification of cDNA ends;実験医学、12(6): 35 (1994))、殊に5’−レース(5’−RACE)法〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 8: 8998 (1988)〕等の採用が好適である。かかるPCR法の採用に際して使用されるプライマーは、既に本発明によって明らかにされた本発明遺伝子の配列情報に基づいて適宜設定でき、これは常法に従い合成できる。
【0043】
尚、増幅させたDNA/RNA断片の単離精製は、前記の通り常法に従うことができ、例えばゲル電気泳動法等によればよい。
【0044】
上記で得られる本発明遺伝子或は各種DNA断片は、常法、例えばジデオキシ法〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 74: 5463 (1977)〕やマキサム−ギルバート法〔Method in Enzymology, 65: 499 (1980)〕等に従って、また簡便には市販のシークエンスキット等を用いて、その塩基配列を決定することができる。
【0045】
本発明遺伝子の利用によれば、一般の遺伝子工学的手法を用いることにより、その遺伝子産物を容易に大量に安定して製造することができる。従って、本発明は、本発明にかかるUSP1遺伝子を含有するベクター(発現ベクター)及び該ベクターによって形質転換された宿主細胞並びに該宿主細胞を培養することによりUSP1を製造する方法をも提供するものである。
【0046】
該製造方法は、通常の遺伝子組換え技術〔Science, 224: 1431 (1984); Biochem. Biophys. Res. Comm., 130: 692 (1985); Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 80: 5990 (1983)及び前記引用文献等参照〕に従うことができる。
【0047】
上記宿主細胞としては、原核生物及び真核生物のいずれも用いることができ、例えば原核生物の宿主としては、大腸菌や枯草菌といった一般的に用いられるものが広く挙げられるが、好適には大腸菌、とりわけエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12株に含まれるものが例示できる。また、真核生物の宿主細胞には、脊椎動物、酵母等の細胞が含まれ、前者としては、例えばサルの細胞であるCOS細胞〔Cell, 23: 175 (1981)〕やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞及びそのジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損株〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 77: 4216 (1980)〕等が、後者としては、サッカロミセス属酵母細胞等が好適に用いられているが、これらに限定される訳ではない。
【0048】
原核生物細胞を宿主とする場合は、該宿主細胞中で複製可能なベクターを用いて、このベクター中に本発明遺伝子が発現できるように該遺伝子の上流にプロモーター及びSD(シャイン・アンド・ダルガーノ)塩基配列、更に蛋白合成開始に必要な開始コドン(例えばATG)を付与した発現プラスミドを好適に利用できる。上記ベクターとしては、一般に大腸菌由来のプラスミド、例えばpBR322、pBR325、pUC12、pUC13等がよく用いられるが、これらに限定されず既知の各種のベクターを利用することができる。大腸菌を利用した発現系に利用される上記ベクターの市販品としては、例えばpGEX−4T(Amersham Pharmacia Biotech)、pMAL−C2,pMAL−P2(New England Biolabs社)、pET21,pET21/lacq(Invitrogen社)、pBAD/His(Invitrogen社)等を例示できる。
【0049】
脊椎動物細胞を宿主とする場合の発現ベクターとしては、通常、発現しようとする本発明遺伝子の上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位及び転写終了配列等を保有するものが挙げられ、これは更に必要により複製起点を有していてもよい。該発現ベクターの例としては、具体的には、例えばSV40の初期プロモーターを保有するpSV2dhfr〔Mol. Cell. Biol., 1: 854 (1981)〕等が例示できる。上記以外にも既知の各種の市販ベクターを用いることができる。動物細胞を利用した発現系に利用されるかかるベクターの市販品としては、例えばpEGFP−N,pEGFP−C(Clontech社)、pIND(Invitrogen社)、pcDNA3.1/His(Invitrogen社)等の動物細胞用ベクターや、pFastBacHT(Gibco BRL社)、pAcGHLT(PharMingen社)、pAc5/V5−His,pMT/V5−His,pMT/Bip/V5−His(以上Invitrogen社)等の昆虫細胞用ベクター等が挙げられる。
【0050】
また、酵母細胞を宿主とする場合の発現ベクターの具体例としては、例えば酸性ホスフアターゼ遺伝子に対するプロモーターを有するpAM82〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 80: 1 (1983)〕等が例示できる。市販の酵母細胞用発現ベクターには、例えばpPICZ(Invitrogen社)、pPICZα(Invitrogen社)等が包含される。
【0051】
プロモーターとしても特に限定なく、エシェリヒア属菌を宿主とする場合には、例えばトリプトファン(trp)プロモーター、lpp プロモーター、lac プロモーター、recA プロモーター、PL/PR プロモーター等を好適に利用できる。宿主がバチルス属菌である場合は、例えばSP01 プロモーター、SP02 プロモーター、penP プロモーター等が好ましい。酵母を宿主とする場合のプロモーターとしては、例えばpH05プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター等を好適に利用できる。また動物細胞を宿主とする場合の好ましいプロモーターとしては、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオルインプロモーター、ヒートショックプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、SRαプロモーター等を例示できる。
【0052】
尚、本発明遺伝子の発現ベクターとしては、通常の融合蛋白発現ベクターも好ましく利用でき、該ベクターの具体例としては、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白として発現させるためのpGEX(Promega社)等を例示できる。
【0053】
上記所望の組換えDNA(発現ベクター)の宿主細胞への導入方法・形質転換法にも特に制限はなく、一般的な各種方法を採用できる。また得られる形質転換体も、常法に従い培養することができ、該培養により本発明遺伝子によりコードされる目的のUSP1が発現・産生され、形質転換体の細胞内、細胞外もしくは細胞膜上に蓄積もしくは分泌される。
【0054】
上記培養に用いられる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種のものを適宜選択利用でき、その培養も宿主細胞の生育に適した条件下で実施できる。
【0055】
かくして得られる組換え蛋白質(USP1)は、所望により、その物理的性質、化学的性質等を利用した各種の分離操作従って分離、精製することができる〔「生化学データブックII」、1175-1259頁、第1版第1刷、1980年 6月23日株式会社東京化学同人発行;Biochemistry, 25(25): 8274 (1986); Eur. J. Biochem., 163: 313 (1987) 等参照〕。該方法としては、具体的には例えば通常の再構成処理、蛋白沈澱剤による処理(塩析法)、遠心分離、浸透圧ショック法、超音波破砕、限外濾過、分子篩クロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の各種液体クロマトグラフィー、透析法、これらの組合せ等が挙げられ、特に好ましい上記方法としては、本発明USP1の特異抗体を結合させたカラムを利用するアフィニティクロマトグラフィーを例示できる。
【0056】
しかして、本発明は、例えば上記の如くして得られる、新規なUSP1自体をも提供するものである。該蛋白質は、ユビキチン特異的切断活性を有することにより特徴付けられ、前記のとおり医薬分野において有用である。
【0057】
また、このUSP1は、該蛋白質の特異抗体を作成するための免疫抗原としても利用できる。ここで抗原として用いられるコンポーネントは、例えば上記遺伝子工学的手法に従って大量に産生された蛋白或はそのフラグメントであることができ、これら抗原を利用することにより、所望の抗血清(ポリクローナル抗体)及びモノクローナル抗体を収得することができる。
【0058】
該抗体の製造方法自体は、当業者によく理解されているところであり、本発明においてもこれら常法に従うことができる〔続生化学実験講座「免疫生化学研究法」、日本生化学会編(1986)等参照〕。
【0059】
例えば、抗血清の取得に際して利用される免疫動物としては、ウサギ、モルモット、ラット、マウスやニワトリ等の通常動物を任意に選択でき、上記抗原を使用する免疫方法や採血等もまた常法に従い実施できる。
【0060】
また、モノクローナル抗体の取得も、常法に従い、上記免疫抗原で免疫した動物の形質細胞(免疫細胞)と形質細胞腫細胞との融合細胞を作成し、これより所望抗体を産生するクローンを選択し、該クローンの培養により実施することができる。免疫動物は、一般に細胞融合に使用する形質細胞腫細胞との適合性を考慮して選択され、通常マウスやラット等が有利に用いられている。免疫は、上記抗血清の場合と同様であり、所望により通常のアジュバント等と併用して行なうこともできる。
【0061】
尚、融合に使用される形質細胞腫細胞としても、特に限定なく、例えばp3(p3/x63-Ag8)〔Nature, 256: 495-497 (1975)〕、p3−U1〔Current Topics in Microbiology and Immunology, 81: 1-7 (1978)〕、NS−1〔Eur. J. Immunol., 6: 511-519 (1976)〕、MPC−11〔Cell, 8: 405-415 (1976)〕、SP2/0〔Nature, 276: 269-271 (1978)〕等、ラットにおけるR210〔Nature, 277: 131-133 (1979)〕等及びそれらに由来する細胞等の各種の骨髄腫細胞をいずれも使用できる。
【0062】
上記免疫細胞と形質細胞腫細胞との融合は、通常の融合促進剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウイルス(HVJ)等の存在下に公知の方法に準じて行なうことができ、所望のハイブリドーマの分離もまた同様に行ない得る〔Meth. in Enzymol., 73: 3 (1981);上記続生化学実験講座等〕。
【0063】
また、目的とする抗体産生株の検索及び単一クローン化も常法により実施され、例えば抗体産生株の検索は、上記の本発明抗原を利用したELISA法〔Meth. in Enzymol., 70: 419-439 (1980)〕、プラーク法、スポット法、凝集反応法、オクテロニー(Ouchterlony)法、ラジオイムノアッセイ等の一般に抗体の検出に用いられている種々の方法に従い実施することができる。
【0064】
かくして得られるハイブリドーマからの本発明抗体の採取は、該ハイブリドーマを常法により培養してその培養上清として得る、また、ハイブリドーマをこれと適合性のある哺乳動物に投与して増殖させその腹水として得る方法等により実施される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。このようにして得られる抗体は、更に塩析、ゲル濾過、アフィニティクロマトグラフイー等の通常の手段により精製することができる。
【0065】
かくして得られる抗体は、本発明USP1に結合性を有することによって特徴付けられ、これは、前述したUSP1の精製及びその免疫学的手法による測定乃至識別等に有利に利用できる。本発明は、かかる新規な抗体をも提供するものである。
【0066】
また、本発明によって明らかにされた本発明遺伝子の配列情報を基にすれば、例えば該遺伝子の一部又は全部の塩基配列を利用することにより、個体もしくは各種組織における本発明遺伝子の発現の検出を行うことができる。
【0067】
かかる検出は常法に従って行うことができ、例えばRT−PCR〔Reverse transcribed-Polymerase chain reaction; E.S. Kawasaki, et al., Amplification of RNA. In PCR Protocol, A Guide to methods and applications, Academic Press, Inc., SanDiego, 21-27 (1991)〕によるRNA増幅やノーザンブロット解析〔Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Lab. (1989)〕、in situ RT−PCR〔Nucl. Acids Res., 21: 3159-3166 (1993)〕や in situ ハイブリダイゼーション等の細胞レベルでのそれら測定、NASBA法〔Nucleic acid sequence-based amplification, Nature, 350: 91-92 (1991)〕及びその他の各種方法によりいずれも良好に実施し得る。
【0068】
尚、RT−PCR法を採用する場合において、用いられるプライマーは、本発明遺伝子のみを特異的に増幅できる該遺伝子特有のものである限り何等限定されず、本発明の遺伝情報に基いてその配列を適宜設定することができる。通常、これは20〜30ヌクレオチド程度の部分配列を有するものとすることができる。
【0069】
このように、本発明は、本発明にかかるUSP1遺伝子の検出用の特異プライマー及び/又は特異プローブとして使用されるDNA断片をも提供するものである。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、新規なヒトUSP1遺伝子が提供され、該遺伝子を用いれば、該遺伝子の各種組織での発現の検出や、ヒトUSP1の遺伝子工学的製造が可能となり、これらにより、前述したように多様で且つ細胞に基本的な活動に深く関与しているヒトUSP1システム乃至ヒトUSP1の機能の解析や、染色体の局在領域の異常等と関係する各種疾患の診断や治療、特に遺伝子治療、及び予防薬のスクリーニングや評価等を行うことができる。
【0071】
【実施例】
以下、本発明を更に詳細に説明するため実施例を挙げる。
【0072】
実施例1:クローニング及びDNAシークエンシング
ヒト胎児脳、ヒト成人動脈及び胎盤より抽出したmRNAをクローンテック社より購入して出発材料とした。上記mRNAよりcDNAを合成し、ベクターλZAPII(ストラタジーン社製)に挿入し、cDNAライブラリーを構築した(大塚GENリサーチ・インスティチュート、大塚製薬株式会社)。インビボ・エキシジョン法(in vivo excision: Short, J. M., et al., Nucleic Acids Res., 16, 7583-7600 (1988))によって寒天培地上にヒト遺伝子を含む大腸菌コロニーを形成させ、ランダムにそのコロニーをピックアップし、96ウエルマイクロプレートにヒト遺伝子を含む大腸菌クローン約3万を登録した。登録されたクローンは、−80℃にて保存した。
【0073】
次に登録した各クローンを1.5mlのLB培地で一昼夜培養し、プラスミド自動抽出装置PI−100(クラボウ社製)を用いてDNAを抽出精製した。尚、コンタミした大腸菌のRNAは、RNase処理により分解除去した。最終的に30μlに溶解し、2μlはミニゲルによりおおまかにDNAのサイズ及び量をチェックした。その7μlをシークエンス反応用に用い、残りの21μlは、プラスミドDNAとして4℃に保存した。また、この方法は若干のプログラム変更によって後記に示されるFISH(fluoresence in situ hybridization)のプローブ用としても使用可能なコスミドを抽出することができる。
【0074】
続いてT3、T7、或は合成オリゴヌクレオチド・プライマーを用いるサンガーらのジデオキシターミネーター法(Sanger, F., et al., Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 74, 5463-5467 (1977))或はジデオキシターミネーター法にPCR法を加味した方法であるサイクルシークエンス法(Carothers, A.M., et al., Bio. Techniques, 7, 494-499 (1989))を実施した。之等の方法は少量のプラスミドDNA(およそ0.1−0.5μg)をテンプレート(鋳型)として4種の塩基を特異的に停止する伸長反応させる方法である。
【0075】
シークエンスプライマーとして、FITC(fluorescein isothiocyanate)蛍光標識したものを使用し、Taqポリメラーゼにより約25サイクル反応させた。蛍光標識したDNA断片につき、自動DNAシークエンサー、ALFTMDNAシークエンサー(ファルマシア社製)によりcDNAの5’末端側から約400塩基の配列を決定した。
【0076】
3’非翻訳領域は、各遺伝子の異質性(heterogeneity)が高く、個々の遺伝子を区別するのに適しているので、場合によっては、3’側のシークエンスも行なった。
【0077】
DNAシークエンサーで得られた膨大な塩基配列情報を、64ビットのコンピューターDEC3400に転送し、コンピュターによるホモロジー解析を行なった。該ホモロジー解析は、UWGCGのFASTAプログラム(Pearson, W.R. and Lipman, D. J., Proc.Natl.Acad.Sci., USA., 85, 2444-2448 (1988))によるデーターベース(GenBank, EMBL)検索により行なった。
【0078】
ヒト胎児脳cDNAライブラリーについての上記解析方法は、藤原ら〔Fujiwara, T., et al., DNA Res., 2, 107-111 (1991)〕に詳述されている。
【0079】
上記と同様な方法で、構築されたヒト胎児脳cDNAライブラリーから無作為に選択したESTs(expressed sequence tags:発現遺伝子断片の部分DNA配列)の配列決定を実施した。
【0080】
FASTAプログラムによるGene BankとEMBLの配列検索の結果、GEN−421G05と命名したクローンを、ヒトUSP1をコードする遺伝子として発見した。
【0081】
テンプレート(鋳型)としてベクター(pBluescript vector: ストラタジーン社製(Stratagene))内に挿入された二本鎖DNAと、プライマーとしての合成オリゴヌクレオチドとを使用して、サンガーらのジデオキシ・チェーン・ターミネェーション法によって、上記クローンの有する全コード領域を含むcDNAの塩基配列を決定した。
【0082】
上記で得られたクローンのcDNA配列は、ABI PRISMTM377自動DNAシークエンサーによる配列決定の結果、2355塩基の推定アミノ酸翻訳領域を含んでおり、これによってコードされるアミノ酸配列は、785アミノ酸残基を有し、全長cDNAクローンの核酸配列は、3222塩基からなっていた。その全配列は、配列番号3に示す通りであり、オープン・リーディング・フレームk核酸配列は配列番号2に、該酸配列でコードされるアミノ酸の推定アミノ酸配列は配列番号1に示す通りであった。
【0083】
また、USP1遺伝子の分子量は88.2KDa、等電点は5.24と計算された。
【0084】
本発明遺伝子の発現産物であるUSP1は、ユビキチン特異的プロテアーゼの活性部位を形成するシステイン−ドメイン(アミノ酸配列番号の82番目から99番目まで)とヒスチジン−ドメイン(アミノ酸配列番号の576番目から784番目まで)を持っているばかりでなく、ユビキチン特異的プロテアーゼのファミリーでよく保存されている領域、即ちアスパラギン酸ドメイン(アミノ酸配列番号の197番目から213番目まで)とKRFドメイン(アミノ酸配列番号の524番目から535番目まで)も保持している。
【0085】
実施例2:脱ユビキチン化活性試験
(1)USP1発現ベクターの構築
次に、USP1が実際にユビキチン特異的な切断活性を有するかどうかの検討を以下のとおり行った。
【0086】
Bakerらの方法(Baker,R.T., Tobias,J.W., and Varshavsky,A. (1992), Ubiquitin-dependent processes by deubiquitinating enzymes. J. Biol. Chem. 267:23364-23375)を用いて、大腸菌内でユビキチン−β−ガラクトシダーゼの融合タンパク質(ユビキチンとレポータータンパク質のβ−ガラクトシダーゼの融合タンパク質;以下Ub-galと略する)を発現させ、同時にUSP1遺伝子を導入して発現させることにより、該発現物が上記融合タンパク質を切断するかどうかを調べた。
【0087】
実施例1で得られたUSP1遺伝子のコード領域を含む発現プラスミドを構築するために、配列番号3に示される塩基配列の開始コドン(110−113)部位に、Nde Iサイト(CATATG)を導入した。
【0088】
元のpBluescriptに挿入されたUSP1cDNAを、BamHI(切断位置=pBluescriptのマルチクローニングサイト内)と、Pst I (切断位置=CTGCAG,294−299)とで切断し、N末端を除去した。
【0089】
Nde IサイトがATGの直前につくように設計したプライマー(BamHIとNde Iサイトを含む、配列番号4)と、Pst Iの3’側に設定したアンチセンスプライマー(配列番号5)とを用いて、PCRを行った。PCR産物をBamHIとPst Iとを用いて切断し、上記Bluescriptにつないだ。Nde Iサイトと3’のベクター側のXho Iサイトとで切断し、発現ベクターpET16b(ノバゲン社製)をNde IとXho Iとを用いて切断し、脱リン酸したものに挿入した。
【0090】
(2)活性測定
pET発現プラスミドが使用できる宿主としての大腸菌NovaBlueをノバゲン社より購入し、pAC−Ub−R−bgal又はpAC−Ub−M−bgal(Baek, S.H.らから供与; Baek, S.H., et al., (1997), J. Biol. Chem., 272, 25560-25565; Tobias, J.W., and Varshavsky,A., (1991), J.Biol.Chem., 266, 12021-12028)と上記(1)で調製した発現プラスミドとを同時にトランスフォームした。5mlのLB培養液(アンピシリンとクロラムフェニコールを添加)で濁度OD600=0.2まで培養した。そして、1mMのIPTGを添加し、0、1、2及び3時間後にそれぞれ500μlずつ菌を回収し、400μlのSDSサンプルバッファーを加えて可溶化し、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。PVDF膜に転写し、抗β−gal抗体(プロメガ社製、Z378A)の5000倍希釈液でインキュベートし、洗浄後、抗マウスIgG−HRP−コンジュゲート(プロメガ社製、W402B)の3000倍希釈液でインキュベートし、洗浄した。検出のためにアマシャム社製のECLウエスタンブロッティング検出キットを用いた。
【0091】
USP1をコードする領域を含むpET16bの50ngと、Ub-Met-gal融合ベクターの50ng或いは同pET16bの50ngと、Ub-Arg-gal融合ベクター50ngのそれぞれを、大腸菌(NovaBlue(DE3))に同時にコトランスフェクト(co-transfect)した。その後各ベクターを含む大腸菌を、アンピシリン及びクロラムフェニコールを含むLuria broth培地で37℃で14時間培養後、同培地で10倍に希釈し、37℃で約3時間(OD600=0.2になるまで)培養し、これに1mMになるようにIPTGを添加して、更に37℃で1、2及び3時間培養し、タンパク質の発現誘導を行った。また、コントロールとしてUSP1を挿入していないpET16bベクターのみも同様に培養した。尚、宿主細胞が発現した内因性のβ−ガラクトシダーゼ断片をlacZΔM15産物と名づけた。
【0092】
上記で得られた培養液から500mlを分取して、菌体を回収し、400μlのSDSローディング緩衝液(150mM Tris-HCl(pH6.8), 1.5%(w/v) SDS, 2%(v/v) 2−メルカプトエタノール, 0.002%(w/v) ブロモフェノールブルー, 7% グリセロール)に懸濁させた後、100℃で2分間加熱し、SDS−PAGE(1%ポリアクリルアミドゲル, 0.1% SDS)を行った後、クマシーブルーR−250染色或いは抗β−ガラクトシダーゼ抗体(ザイメット社製)によるウエスタンブロッティングを行って、目的タンパク質の発現状況を調べた。
【0093】
その結果を、図1に示す。
【0094】
図1は、USP1によるUb-β-galactosidase融合蛋白の切断試験における、抗−β−galactosidase抗体を用いた免疫染色による測定結果(下図:Ub-M-β-galレベル及び上図:Ub-R-β-galレベル)を示す図である。
【0095】
図1の下図に示すように、USP1とUb-Arg-galを同時に発現させることによってArg-galは検出されなかった。しかしながら、USP1とUb-Met-galを同時に発現させた場合(図1の上図)はMet-galは検出された。このことはN末端がメチオニンの場合はその蛋白質は安定であるが、アルギニンの場合は非常に不安定になるというN-末端ルール(Varshavsky, A., The N-end Rule. Cell, 69, 725-735(1992))により、ユビキチンとメチオニン或いはアルギニンの間で本発明のUSP1が切断したことを示している。このように本発明のUSP1はユビキチン特異的プロセッシング活性を保有していることが分かる。
【0096】
実施例3:USP1遺伝子の染色体の局在
(1)ラディエーション−ハイブリッドマッピング法
次に、ラディエーション−ハイブリッドマッピング法(RH法:Walter, M.A., et al., Nat. Genet., 7, 22-28 (1994))によってUSP1遺伝子の染色体の局在を調べた。
【0097】
リサーチ・ジエネティクス社(Research Genetics社)から購入したGeneBridge 4パネルを用いてRH法による位置決定を行った。この方法はヒトの細胞株に3000ラドの放射線を照射し、ヒトの染色体DNAをランダムに切断し、レシピエントのハムスター細胞に導入し、ハイブリッド細胞を作製した。このようにしてハイブリッド細胞にはいろいろな部位のヒト染色体DNA断片を含むものができる。93種類のハイブリッド細胞中に目的の遺伝子があるかどうかをUSP1特異的プライマーを用いてPCRで調べ、そのパターンから統計的処理により位置を推定した。ここで用いたプライマー1及び2の塩基配列は、配列番号6及び7に示すとおりである。
【0098】
増幅されたPCR産物は、1.5%アガロースゲル上に電気泳動によるサイズに従って分離された。各ハイブリッドクローンは、それぞれ267塩基のバンドのあるなしによって陽性(1)又は陰性(0)としてスコア化された。
【0099】
GeneBridge 4パネルから得られたデータは、two-point maximum-likelihood analysis softwareによって分析された。
【0100】
その結果、USP1遺伝子は、DNAマーカーD1S203の近傍、即ち、1p31.3−p32.1にあることが分かった。
【0101】
(2)フルオレッセンス・インサイト・ハイブリダイゼーション(FISH)分析
上記の局在を確認するためにさらにFISH分析を行った。
【0102】
即ち、上記で使用したプライマー1及びプライマー2を使用するPCRスクリーニングによってヒト染色体ライブラリー(リサーチ・ジェネティクス社製)から単離されたUSP1cDNAを含んでいる一つのBAC(bacterial artifical chromosome)クローンをプローブとして使用した。
【0103】
BACクローンに含まれる反復配列を抑制するために、リヒター(Lichter, P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, 6634-6638 (1990))らの記載の方法を少し改良した方法(Takahashi, E., et al., Hum. Genet., 88, 119-121 (1991))を用いて、2倍過剰のヒトCot−1DNA(ギブコBRL社製)を使用した。標識、ハイブリダイゼーション、洗浄及び検出は通常の方法で行った。
【0104】
その結果、100の典型的な複製プロメタフェーズRバンドを試験して、染色体1のp31.3−p32.1のバンドでシグナルを観察した。そして他の染色体上に疑わしいシグナルは観察されなかった。
【0105】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】USP1とUb-β-galとを同時にトランスフェクトさせた大腸菌において、IPTGを加えて0、1、2及び3時間後のUb-M-β-gal及びUb-R-β-galのレベルを調べた結果を示す図である。

Claims (8)

  1. 以下の (a) または (b) 蛋白質をコードする塩基配列からなるユビキチン特異的プロテアーゼ遺伝子
    (a) 配列番号: 1 で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質
    (b) 配列番号: 1 で示されるアミノ酸配列において、 1 または複数のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつユビキチン特異的切断活性を有する蛋白質
  2. 以下の(a)または(b)のポリヌクレオチドからなるユビキチン特異的プロテアーゼ遺伝子:
    (a)配列番号 2で示される塩基配列からなるDNAまたはその相補鎖であるポリヌクレオチド
    (b)配列番号 2 示される塩基配列からなるDNAまたはその相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつユビキチン特異的切断活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
  3. 配列番号: 1 で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードする塩基配列からなる請求項 1 に記載の遺伝子。
  4. 配列番号: 2 で示される塩基配列からなるものである請求項 2 に記載の遺伝子。
  5. 配列番号: 3 で示される塩基配列からなるものである請求項 2 に記載の遺伝子。
  6. 請求項1または 3に記載の遺伝子によってコードされる蛋白質であるユビキチン特異的切断活性を有する組換え体ポリペプチド
  7. 請求項 2 または 4 に記載の遺伝子を含むベクター。
  8. 請求項 1 に記載の蛋白質または請求項6に記載の組換え体ポリペプチドに結合する抗体。
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