JP4210231B2 - 皮膚のシワを改善する美容方法及びシワ改善具 - Google Patents

Description

この発明は、皮膚のシワを改善する方法及びシワ改善具に関する。

従来、皮膚の形態変化としてみられるシワは、皮膚老化が外観に現れる最も顕著な変化の一つであり、目の周囲、額、口の周囲などの顔面や首その他の身体各部に現れ、40代以降、急激に増加し、深くなっていく。シワには、筋肉の動きによって繰り返し皮膚に変形が加わり、徐々にシワとして固定されていく線状シワや図形シワの他に、加齢皮膚に共通する真皮表皮境界部の平坦化や結合力の低下に皮膚の萎縮が加わって皮膚が弛緩することによって生ずる縮緬シワが知られている。

人体の皮膚のシワを外観上目立たなくする方法として、最も一般的には化粧料の塗布が行われるが、効果の持続性が乏しく毎日の化粧料塗布行為が必要である。目尻や、額に刻まれる深いシワは、真皮の厚さや構造まで変形しているため、化粧料の塗布のような皮膚の表面からの処置ではシワを消し去ることは困難である。そこで、コラーゲンやヒアルロン酸、ボトックスの如き機能性物質を皮内に注入しシワを浅く若しくは消失させたり、或いは所定の波長のレーザー光を照射して真皮内部の代謝機能を活性化させて皮膚のハリや弾力性を回復しシワを解消する等の医療処置が利用されることもある。しかしながら、このような機能物質の注入やレーザー治療は、処置に痛みを伴うと共に、特に機能物質の注入ではその注入深度を約２mm以内の皮内に制御することに技術的な困難性があり、施術者の技能により仕上がりが左右される問題があった。

特開2003−52843号公報 特許第1915498号公報

この発明は、きわめて簡単且つ確実に所望の深さの皮内に、コラーゲン、ヒアルロン酸等のシワ改善物質を送達し、皮膚のシワを改善する方法及び器具を提供せんとするものである。

上記課題を解決するため、本発明が採った美容方法(医療行為を除く)は、体内で容易に溶解、消失する糖質と、水膨潤性物質とから構成されるパイル状物体を用いてシワを改善する美容法であって、該パイル状物体は、皮膚に刺通自在な一辺又は直径が０.１〜１００μｍの正方形又は円形の断面形状で、長さが１０〜３,０００μｍの正方柱状、円柱状又は錐状の構造を有し、該水膨潤性物質は、グリコサミノグリカン、グリコサミノグリカン架橋体、コラーゲン、コラーゲン架橋体、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ−Ｌ−乳酸、ヒアルロン酸架橋体から選択される１つ又は２つ以上の乾燥した水膨潤性物質からなり、該水膨潤性物質をパイル状物体中に５〜２０質量％の割合で配合して、前記パイル状物体をシワのある皮膚表面にあてがいながら皮内に刺通し、該パイル状物体を皮内に送達させ、皮内の水分で前記水膨潤性物質を膨潤させるようにしたことを特徴とする。

また、体内で容易に溶解、消失する糖質と、水膨潤性物質とから構成されるパイル状物体を基材に保持させてなる皮膚のシワ改善具であって、該パイル状物体は、皮膚に刺通自在な一辺又は直径が０.１〜１００μｍの正方形又は円形の断面形状で、長さが１０〜３,０００μｍの正方柱状、円柱状又は錐状の構造を有し、該水膨潤性物質は、グリコサミノグリカン、グリコサミノグリカン架橋体、コラーゲン、コラーゲン架橋体、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ−Ｌ−乳酸、ヒアルロン酸架橋体から選択される１つ又は２つ以上の乾燥した水膨潤性物質からなり、該水膨潤性物質をパイル状物体中に５〜２０質量％の割合で配合したことを特徴とする。

また、基材が、ポリメチルメタクリレートであることを特徴とする。

本発明の皮膚のシワを改善する方法及びシワ改善具によれば、水膨潤性の機能物質を乾燥した粉末の状態で皮内に送達し、皮内の水分を吸収して膨張し、シワを浅くし或いは消失させ、シワの改善を行うことが出来る。又、乾燥した粉末状態の水膨潤性機能物質の送達を痛みを伴うことなく、簡単にしかも確実に達成することが出来る器具を提供することが可能である。

この発明の好ましい実施の形態を、以下に詳細に説明する。この発明は、水膨潤性物質の乾燥した粉末を皮内に送達し、体内水分を吸収して膨潤させることにより、シワの部分を体内から持ち上げて実質的にシワを浅く或いは消失させるようにすることを特徴とするものである。水膨潤性物質の乾燥した粉末の膨潤率は、５〜１０,０００倍の範囲にあり、グリコサミノグリカン、グリコサミノグリカン架橋体、コラーゲン、コラーゲン架橋体、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ−Ｌ−乳酸から選択される一つ又は２つ以上からなる。好ましい水膨潤性物質の一つは、ヒアルロン酸架橋体であり、架橋率が、アルロン酸構成二糖単位である−Ｄ−グルクロン酸−β−１，３−Ｄ−Ｎ−アセチルグルコサミン−β−１，４−ユニット数に対して、モル比０.０１〜２００％の範囲である。又、好ましい水膨潤性物質の他の一つは、コラーゲンであり、コラーゲン架橋体である。

皮内に送達する水膨張性物質の乾燥した粉末は、好ましくは無針で皮内に注入可能な微粒子として提供される。その様な微粒子は、例えば特表2002−524411号公報に開示されている微粒子であり、粒子密度が前記固体薬剤の少なくとも80％であり、かつ形状関数が1〜5である微粒子であり、噴霧乾燥によって製造される。乾燥は、噴霧乾燥に続いて熱を用いて若しくは真空下で残っている水分又は溶媒を除去して更に促進させるのが望ましい。

注射や切開を伴う外科的な施術を用いずに水膨潤性物質の乾燥した粉末を皮内に送達する方法としては、体内で容易に溶解、消失する皮膚刺通可能なパイル状物体に、前記水膨潤性物質の乾燥した粉末を担持させて皮内に送達する方法、超音速ガス流又は衝撃波により皮内に送達する方法等が好適である。パイル状物体による水膨潤性物質の乾燥した粉末を皮内に送達する方法としては、特開2003−238347号公報に開示された「機能性マイクロパイル及びその製造方法」の方法が好適である。又、超音速ガス流又は衝撃波による送達方法としては、前記微粒子を開示した公報に教示される注入方法の他、特許第3260375号公報、特開2002−179557号公報、特表2002−526400号公報、特表2002−535293号公報等に開示されたガス流、衝撃波を利用する方法、手段を挙げることが出来る。

前記水膨潤性物質の乾燥した粉末を皮内に送達する方法は、パイル状物体による送達方法であり、体内で容易に溶解、消失する糖質と、水膨潤性物質とから構成されるパイル状物体を皮内に刺通して残置させ、糖質の溶解、消失によって、水膨潤性物質の乾燥した粉末のみを皮内に存在させ、かつその膨潤によって所望のシワ改善処置を達成せんとする方法である。パイル状物質は、水溶解型の針状物質であり、非金属性でソフトなイメージを持たせるためにパイルなる言葉が使用されているが、繊維質であることを意味してはいない。パイルは、糖質で形成されたミクロン若しくはナノ単位のサイズを有し、皮膚表面を容易に通過して皮内に刺通させ、そこに残置することが出来る。皮内に残置されたパイルは体内の水分を吸収して急速に溶解し、消失する。パイルの消失によりパイルに混合等の手段で担持された水膨潤性物質の乾燥した粉末が、水分を吸収して膨潤し、所望の膨張力を発現し、シワの改善機能を発揮する。

パイル状物体は、例えば一辺若しくは径が０.１〜１００μｍの正方形、円形、長方形、或いは楕円形の断面形状を有し、長さ１０〜３,０００μｍの柱状又は錐状の構造を有している。材質はマルトース等の糖質と水膨潤性物質とからなる。パイル状物体は、好ましくはポリメチルメタクリレート等のＸ線感光樹脂からなる基板に、例えば特開2002−151395号公報に開示される「Ｘ線を用いた材料の加工方法」を利用して形成することができる。すなわち、Ｘ線感光樹脂にシンクロトロン放射Ｘ線を照射してパイル状物体のパターンを形成し、該パターンの反転形状を電鋳加工してパイル用鋳型を作成し、該鋳型を基に水膨潤性物質の乾燥した粉末を混入した糖質を射出成型して、基板に植立したパイル状物体を得る。

使用に際しては、図１に示すように基板(１)と共に皮膚表面にあてがって押圧してパイル状物体(２)を皮内に刺通し、基板(１)を取り去ってパイル状物体(２)を残置させる。パイル状物体(２)は、前述したようにミクロン若しくはナノ単位のサイズであり、神経が存在しない皮内への刺通であるため、パイル状物体の皮内への送達を無痛で且容易に行うことが出来る。しかも、刺通後基板(１)を分離してパイル状物体(２)のみを皮内に残置させる。残置したパイルは糖質であるため、容易に溶解して消失し、生体に無害である。従って、パイルに担持された水膨潤性物質(３)が膨潤して所望のシワ改善機能を達成することが出来る。尚、図２に示すように、基板(１)上に直線状にパイル状物体(２)を配列したものは深いシワに有効であった。又、図３に示すように、基板(１)上に平面状にパイル状物体(２)を配列したものは、ちりめんジワと呼ばれる、主に目の周囲の浅いシワに有効であった。

水膨潤性物質の乾燥した粉末を皮内に送達する他の方法としては、超音速ガス流又は衝撃波による方法が好適である。超音速ガス流又は衝撃波による送達方法としては、前記微粒子を開示した特表2002−524411号公報に教示される注入方法、すなわちヘリウムのような高圧のガスに前記粉末を懸濁させてシリンジに充填し、該シリンジを皮膚にあてがってノズルを通ってガスを放出させ、それによって粉末を皮内に送達させるようにする。同様の技術が特許第3260375号公報、特開2002−179557号公報、特表2002−526400号公報、特表2002−535293号公報等に開示されており、これらの公報に開示されたガス流、衝撃波を利用する方法、手段を採用することも出来る。

水膨潤性物質は、多糖類をエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジビニルスルホン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン等で架橋することによって得られる多糖類から成るものが好適である。これを、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の水と混合可能な溶媒で収縮させ、乾燥、粉砕することにより、水膨潤性物質を乾燥させた粉末を得ることが出来る。次にその具体的な処方例と製法を述べる。

処方例１〜３の製法
ヒアルロン酸ナトリウム、架橋剤（エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルの内の一つ若しくは2つ以上)、イオン交換水をよく混合し、そこに水酸化ナトリウム水溶液を加え、更に混合する。その後１日乃至３日間室温にて放置し、得られたヒアルロン酸架橋ゲルをイオン交換水に浸漬し、未反応の架橋剤と水酸化ナトリウムを充分に除去した。得られたゲルをミルで破砕した後、水と混合しうる有機溶剤を加えて収縮させ、乾燥させた。乾燥後、ミルで粉砕し、微粒子化した。

処方例４の製法
アルギン酸、ジビニルスルホン、イオン交換水をよく混合し、そこに2M水酸化ナトリウム水溶液を加え、更に混合し、１時間室温にて放置した。得られたヒアルロン酸架橋ゲルをイオン交換水に浸漬し、未反応の架橋剤と水酸化ナトリウムを充分に除去した。得られたゲルをミルで破砕した後、水と混合しうる有機溶剤を加えて収縮させ、乾燥させた。乾燥後、ミルで粉砕し、微粒子化した。

次に、前記処方例１〜４による水膨潤性物質を配合したパイル状物体の実施例を説明する。表１〜３は該実施例を示し、パイル状物体を構成する多糖類と水膨潤性物質の配合割合が異なる実施例１〜２０を得た。

表１〜３の水膨潤性物質を配合したパイル状物体は、その成形性及び皮内への送達、シワ改善効果において良好な結果を得られた。これに対し、表４に示す比較例１〜６と表３の実施例１５〜２０とを対比すると、比較例１〜６では、水膨潤性物質の配合量が３０％を超えるとパイルの成形性が低下する欠点が見られた。又、水膨潤性物質の配合量が３％以下では、膨潤率によっては充分な効果を得られない欠点が見られた。

水膨潤性物質をパイル状物体に担持させて皮内に送達する方法を概念的に示す図 基板上に直線状にパイル状物体を配列した状態を示す図 基板上に平面状にパイル状物体を配列した状態を示す図

符号の説明

(１)基板
(２)パイル状物体
(３)水膨潤性物質の乾燥した粉末

Claims (3)

1. 体内で容易に溶解、消失する糖質と、水膨潤性物質とから構成されるパイル状物体を用いてシワを改善する美容法であって、該パイル状物体は、皮膚に刺通自在な一辺又は直径が０.１〜１００μｍの正方形又は円形の断面形状で、長さが１０〜３,０００μｍの正方柱状、円柱状又は錐状の構造を有し、該水膨潤性物質は、グリコサミノグリカン、グリコサミノグリカン架橋体、コラーゲン、コラーゲン架橋体、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ−Ｌ−乳酸、ヒアルロン酸架橋体から選択される１つ又は２つ以上の乾燥した水膨潤性物質からなり、該水膨潤性物質をパイル状物体中に５〜２０質量％の割合で配合して、前記パイル状物体をシワのある皮膚表面にあてがいながら皮内に刺通し、該パイル状物体を皮内に送達させ、皮内の水分で前記水膨潤性物質を膨潤させるようにしたことを特徴とする皮膚表面のシワを改善する美容方法(医療行為を除く)。
2. 体内で容易に溶解、消失する糖質と、水膨潤性物質とから構成されるパイル状物体を基材に保持させてなる皮膚のシワ改善具であって、該パイル状物体は、皮膚に刺通自在な一辺又は直径が０.１〜１００μｍの正方形又は円形の断面形状で、長さが１０〜３,０００μｍの正方柱状、円柱状又は錐状の構造を有し、該水膨潤性物質は、グリコサミノグリカン、グリコサミノグリカン架橋体、コラーゲン、コラーゲン架橋体、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ−Ｌ−乳酸、ヒアルロン酸架橋体から選択される１つ又は２つ以上の乾燥した水膨潤性物質からなり、該水膨潤性物質をパイル状物体中に５〜２０質量％の割合で配合したことを特徴とする皮膚のシワ改善具。
3. 基材が、ポリメチルメタクリレートであることを特徴とする請求項２記載のシワ改善具。

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