JP4210075B2 - パイプ継手 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワンプッシュ型のパイプ継手に関するものであり、特に、構造を簡略化したパイプ継手に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
樹脂製パイプの連結に使用されるパイプ継手としては、図5に示すようなワンプッシュ式継手が広く用いられている。これは、金属製のソケット31の一端部の内面にコレット2とO−リング3を挿入し、キャップ4で抜け防止としたものであり、コレット2とO−リング3とで差し込みパイプ10を保持及びシールしている。
【0003】
一方、ソケット31の他端部には雄ネジ部31Aが形成されており、既設パイプ20に接着した接続部材32をネジ込むようになっている。即ち、例えば既設パイプ20が塩化ビニル樹脂からなる場合には、同じ塩化ビニル樹脂からなる接続部材32を既設パイプ20に接着し、その接続部材32をソケット31にネジ止めするのである。このように接続部材32を介在させるのは、塩化ビニル樹脂の既設パイプ20と金属製のソケット31とを十分な強度を持って接着させることが困難だからである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、接続部材32を使用することは、部品点数が増加するだけでなく、ネジ込み工程が必要になるといった問題があることから、その改善が望まれていた。
【0005】
そこで本発明は、構造の簡略化によって部品点数の削減とネジ込み工程の省略ができ、生産性、経済性、作業性に優れたパイプ継手を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであって、第1の発明の要旨は、管状のソケット(1)の一端部の内面にO−リング(3)が収容され、この一端部で差し込みパイプ(10)を保持し、他端部が既設パイプ(20)の挿入部(1A)となっているパイプ継手であって、ソケット(1)の挿入部(1A)よりも奥側で、かつ、O−リング(3)よりも手前側に、挿入部(1A)の外側に向かって開口する凹溝を挿入部(1A)の内面との間に構成する環状の堰(5)が設けられていることを特徴とするパイプ継手である。
また、第2の発明の要旨は、ソケット(1)と、ソケット(1)の一端部の内面に収納されたコレット(2)及びO−リング(3)と、コレット(2)及びO−リング(3)の抜け防止用のキャップ(4)とからなり、コレット(2)で差し込みパイプ(10)を保持するパイプ継手であって、ソケット(1)の他端部が既設パイプ(20)の挿入部(1A)となっており、かつ、ソケット(1)が既設パイプ(20)と同一材質であり、ソケット(1)の挿入部(1A)の内面が既設パイプ(20)の挿入口になっており、ソケット(1)の挿入部(1A)よりも奥側で、かつ、O−リング(3)よりも手前側に、挿入部(1A)の外側に向かって開口する凹溝を挿入部(1A)の内面との間に構成する環状の堰(5)が設けられていることを特徴とするパイプ継手に係るものであり、ソケットの材質は例えば塩化ビニル樹脂である。
【0007】
そして好ましくは、ソケットの挿入部の内面が既設パイプの挿入口になっており、ソケットの中央部の内面に縮径部が形成されていて、ソケットの縮径部の内径が既設パイプの内径と同一であるパイプ継手に係るものである。なお、ソケットの挿入部の内面が既設パイプの挿入口になっているパイプ継手にあっては、ソケットの挿入部よりも奥側で、かつ、O−リングよりも手前側に堰を設けることが好ましい。また、コレットとしては、複数の爪が埋設され、かつ、爪の間にスリットが形成されているものが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のパイプ継手は、給水・給湯用の樹脂管を接続する継手として好適なものであり、ソケットと、ソケットの一端部の内面に収納されたコレット及びO−リングと、コレット及びO−リングの抜け防止用のキャップとからなっている。
【0009】
ソケットは、一端部が差し込みパイプの保持部であり、他端部が既設パイプの挿入部となっている。パイプの保持部はコレット及びO−リングで構成されており、コレットでパイプを保持し、O−リングでシールする。
【0010】
コレットは、ポリエチレンやポリサルホン等で形成することができるが、ポリエチレンは熱に対する耐久性及び寸法安定性に劣る(使用温度60℃以下)ことから、ポリサルホンが好ましい。ポリサルホンの耐熱性及び耐衝撃性は、これまでの一般的な水道に使用する上では問題がないことが確認されている(ノッチ付きアイゾット衝撃強度:69J/m)からである。なお、ノッチ付きアイゾット衝撃強度等がポリサルホンと同等以上の性能を有するポリエ−テルサルホン、ポリフェニレンサルファイドでもよい。
【0011】
但し、今後高圧給水が進められた場合を考慮すれば、ポリフェニルサルホンが特に好適である(ノッチ付きアイゾット衝撃強度:690J/m)。また、ポリフェニルサルホンはポリサルホンと違い、原料にビスフェノ−ルAを使用しないので安全性も高いという利点がある。
【0012】
コレットの形状は、円筒体のコレットに複数の爪を埋設し、爪の間にスリットを形成することが好ましい。爪は、差し込みパイプの外表面に食い込んで保持するものであり、例えば基部と爪部とで構成される。基部はコレットの樹脂中に埋設される部分であり、爪部はコレットの内面から突出する部分である。
【0013】
なお、爪は、基部と爪部とを一つづつ備えたものであっても、これを複数形成したものであっても、或いは無端状(環状)に形成したものであってもよい。また、材質的には金属製であってもプラスチック製であってもよいが、通常は金属板を基部と爪部とにプレス成形したものを使用すればよい。そして、基部側に形成したリップを支持することによって、コレットとなる樹脂を注入する型内の所定位置にセットし、ここに樹脂を充填するものであって、成形後にリップを切断してコレットが形成される。
【0014】
コレットについて更に言及すれば、円筒体のコレットの内面より突出する爪部にあっては、円筒体の径方向即ち円筒体の軸方向に直角な長尺体をなしているのがよく、かつ円筒体と同心円をなして突出しているのがよい。これによって、挿入されるパイプの外表面への食い込みはその半径方向にほぼ均一になる。また、この爪部の両側が鋭いエッジを構成しないように円筒体内周面より露呈していない方が好ましく、例えばこの爪部の両側に円筒体より突出する樹脂突起部を形成してエッジの構成を避けることができ、この樹脂突起部内に爪部の両側を埋設してしまうこともよい方法である。なお、樹脂突起部は、通常は爪部の突出量(高さ)と略同一とされる。
【0015】
このようにする理由は、爪部両側によってエッジが形成されている場合、挿入されるパイプの材質によっては外表面に傷を付けてしまうからである。従って、爪部の両端を円筒体内周面より露呈させずに円筒体側に向けて直線又は曲線をなして後退させてもよく、場合によっては両側を円筒体内に埋設してしまうものである。なお、爪部は円筒体内周面と同心状とせず、曲率半径をやや大きめとしたり、これを直線状としたりすることも可能である。この場合にも、爪部の両側は円筒体との関係を前記した関係、即ちエッジを構成しないようにするのが好ましい。
【0016】
一方、スリットは、ソケット内への差し込みパイプの挿入が不充分で、O−リングまで達していない場合に、内部の流体がスリットの間を通り抜けて外部に流出するようにしたものである。スリットにより、漏水を早期に発見できることとなり、差し込みパイプの挿入の完全性を簡単に確認することができる。なお、スリットは、爪を構成する爪部及び基部のいずれの位置よりも奥まで形成することができるが、場合によっては爪部の位置まで達するだけのものでもよい。
【0017】
次に、ソケットの他端部は既設パイプの挿入部となっているが、挿入部の内面を挿入口とすることが好ましい。即ち、挿入部で内径が小さくならないように、既設パイプを外挿するのではなく、内挿するのである。また、ソケットの中央部の内面に縮径部を形成しておけば、既設パイプを挿入する際にストッパーとなることから、挿入確認が簡単になる。なお、差し込みパイプの接続の場合にも同様の効果がある。但し、縮径部で内径が変化しないように、縮径部の内径を既設パイプの内径と同一にすることが好ましい。
【0018】
ソケットの材質は既設パイプと同一とし、例えば既設の塩化ビニル樹脂製水道管の接続に使用する場合には、ソケットの材質も塩化ビニル樹脂とする。このように同一材質とすることにより、十分な強度を確保しつつソケットと既設パイプとの接着が可能になり、従来必要であった接続部材が省略でき、ネジ込み工程も不要になる。
【0019】
なお、ソケットと既設パイプとの接着に際しては、接着剤の液垂れが問題となることがある。即ち、ソケットの挿入部の内面が既設パイプの挿入口になっている場合、既設パイプの挿入に伴って接着剤がソケットの奥側に集まって液垂れを起こし、O−リングにまで達してしまうと、接着剤が乾いたときに異物となって漏水につながってしまうのである。
【0020】
そこで、ソケットの挿入部よりも奥側で、かつ、O−リングよりも手前側に堰を設け、接着剤の液垂れを堰で止めることによって漏水を予防できるようにしておくことが好ましい。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の好ましい実施の形態の具体例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明のパイプ継手の一例を示す一部断面図である。図1に示すパイプ継手において、符号1はソケットであり、これには雄ネジ1Cと共に拡径部1Dが形成されている。かかる拡径部1D内にO−リング3とパイプ保持用のコレット2を順次深部側より嵌入するものであり、コレット2のスリット2B側を浅部側に向けて嵌入する。このため爪2Aは深部側に向って斜めに突出することとなる。また、符号4は、前記雄ネジ1Cに螺合する樹脂製のキャップであって、キャップ4の先端がコレット2のスリット2B側先端に対向するものであり、キャップ4の内周面には傾斜面4Aが形成されている。
【0022】
ソケット1の他端部は、塩化ビニル樹脂製の既設パイプの挿入部1Aとなっており、その内面が既設パイプの挿入口である。そして、ソケット1の中央部の内面に縮径部1Bが形成されており、縮径部1Bの内径は既設パイプの内径と同一となっている。また、ソケット1の材質は、既設パイプに合わせて塩化ビニル樹脂となっている。
【0023】
図2は、図1に示したパイプ継手において、ソケット1に既設パイプ20を接着すると共に、差し込みパイプ10を接続した状態を示す一部断面図である。即ち、既設パイプ20がソケット1の挿入部1Aに内挿されており、両者は強固に接着されている。このように、本発明のパイプ継手は、既設パイプ20をソケット1の挿入部1Aに挿入し接着するだけで両者の接続が完了するのである。
【0024】
一方、差し込みパイプ10の接続であるが、差し込みパイプ10の先端には金属製のカラ−11が嵌め込まれており、ソケット1の縮径部1Bに突き当たるまで挿入すると、差し込みパイプ10の外表面にコレット2の爪2Aが食い込む。また、O−リング3によってシールされ内部流体の漏れが防止される。
【0025】
そして、内部に流体が流れて差し込みパイプ10に圧力がかかった場合には、その圧力によって差し込みパイプ10がやや後退する傾向になるが、コレット2も爪2Aが食い込んだままやや移動することになる。この際、コレット2の傾斜面がキャップ4の傾斜面4Aと接触し、スリット2Bの存在によって爪2Aが形成された部位が更に内側に曲げられて食い込みが大きくなる。従って、差し込みパイプ10の抜けが防止され、内部流体の漏水も完全に阻止されることとなる。
【0026】
なお、差し込みパイプ10の挿入が不十分な場合、即ち差し込みパイプ10がコレット2の爪2Aには到達したがO−リング3には達していない場合にも、爪2Aが一応食い込むことによって接続が完了したように感ずることがあるが、この状態で完了したものとするとやがて漏水が起きてしまう。しかしながら、図1に示す実施例にあっては、爪部2Aの位置よりも奥側にまでスリット2Bが存在しているため、このスリット2Bを通って内部流体が容易に漏れることとなり、水圧試験をすれば挿入不足を容易に発見できるようになっている。
【0027】
図3及び図4は、本発明のパイプ継手の他の例(既設パイプ20の固定状態)を示す一部断面図である。図3及び図4に示すパイプ継手は、図1のパイプ継手におけるソケット1の挿入部1Aよりも奥側で、かつ、O−リング3よりも手前側に堰5を設けたものであり、図3は挿入部1Aの内面にかえしを設けて堰5としたもの、図4は突起を設けて堰5としたものである。但し、堰5の形状がこれらに限定されないことは当然である。
【0028】
図3及び図4に示すパイプ継手によれば、既設パイプ20の挿入に伴う接着剤の液垂れが堰5で止められる結果、接着剤がO−リングまで達することはなく、O−リングが効果的に保護される。従って、接着剤が乾いても異物にならず、漏水を確実に予防することができる。
【0029】
【発明の効果】
本発明のパイプ継手は、特徴的に、ソケットの他端部が既設パイプの挿入部となっており、かつ、ソケットが既設パイプと同一材質であるので、既設パイプに直に接着固定することが可能となり、構造が簡略化され、部品点数の削減とネジ込み工程の省略ができ、生産性、経済性、作業性に優れたものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のパイプ継手の一例を示す一部断面図である。
【図2】図2は、既設パイプに図1に示した本発明のパイプ継手を固定し、差し込みパイプを接続した状態を示す一部断面図である。
【図3】図3は、本発明のパイプ継手の他の例(既設パイプの固定状態)を示す一部断面図である。
【図4】図4は、本発明のパイプ継手の更に他の例(既設パイプの固定状態)を示す一部断面図である。
【図5】図5は、従来のパイプ継手の一例を示す一部断面図である。
【符号の説明】
1‥ソケット
1A‥挿入部
1B‥縮径部
1C‥雄ネジ
1D‥拡径部
2‥コレット
2A‥爪
2B‥スリット
3‥O−リング
4‥キャップ
4A‥傾斜面
5‥堰
10‥差し込みパイプ
11‥カラー
20‥既設パイプ
31‥ソケット
31A‥雄ネジ部
32‥接続部材

Claims (8)

  1. 管状のソケット(1)の一端部の内面にO−リング(3)が収容され、この一端部で差し込みパイプ(10)を保持し、他端部が既設パイプ(20)の挿入部(1A)となっているパイプ継手であって、ソケット(1)の挿入部(1A)よりも奥側で、かつ、O−リング(3)よりも手前側に、挿入部(1A)の外側に向かって開口する凹溝を挿入部(1A)の内面との間に構成する環状の堰(5)が設けられていることを特徴とするパイプ継手。
  2. ソケット(1)と、ソケット(1)の一端部の内面に収納されたコレット(2)及びO−リング(3)と、コレット(2)及びO−リング(3)の抜け防止用のキャップ(4)とからなり、コレット(2)で差し込みパイプ(10)を保持するパイプ継手であって、ソケット(1)の他端部が既設パイプ(20)の挿入部(1A)となっており、かつ、ソケット(1)が既設パイプ(20)と同一材質であり、ソケット(1)の挿入部(1A)の内面が既設パイプ(20)の挿入口になっており、ソケット(1)の挿入部(1A)よりも奥側で、かつ、O−リング(3)よりも手前側に、挿入部(1A)の外側に向かって開口する凹溝を挿入部(1A)の内面との間に構成する環状の堰(5)が設けられていることを特徴とするパイプ継手。
  3. ソケット(1)の材質が塩化ビニル樹脂であることを特徴とする請求項2に記載のパイプ継手。
  4. 堰(5)の内径が既設パイプ(20)の外径よりも小径であることを特徴とする請求項2又は3に記載のパイプ継手。
  5. ソケット(1)の中央部の内面に縮径部(1B)が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のパイプ継手。
  6. ソケット(1)の縮径部(1B)の内径が既設パイプ(20)の内径と同一であることを特徴とする請求項5に記載のパイプ継手。
  7. 堰(5)は、挿入部(1A)の内面に設けられた、挿入部(1A)の外側に向かうかえし、または、断面L状の突起で構成されていることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載のパイプ継手。
  8. コレット(2)に複数の爪(2A)が埋設されており、かつ、爪(2A)の間にスリット(2B)が形成されていることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載のパイプ継手。
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