JP4209704B2 - 画像形成装置、画像形成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電複写機、レーザープリンター等の電子写真プロセスを用いる画像形成装置関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の画像形成装置について、露光手段および画像処理を中心に図1に基づいて説明する。図1は電子写真プロセスを用いる従来の画像形成装置の概略図である。感光体ドラム1は導体の表面に感光体を塗布することによって形成され、矢印方向に回転する。画像形成装置では次のような手順で画像の形成を行う。
【0003】
(1)帯電手段2では、感光体ドラム1の表面を所望の電位に帯電する。
(2)露光手段3では、感光体ドラム1を露光して、所望の画像に対応する静電潜像を感光体上に形成する。
(3)現像手段4では、露光手段3によって作られた静電潜像を、トナーによって現像し感光体上にトナー像を形成する。
(4)転写手段5は、感光体ドラム1上のトナー像を不図示の搬送手段によって搬送される紙等の記録シート6上に転写する。
(5)クリーニング手段7は、転写手段5で記録シート上6に転写されず感光体ドラム1上に残ったトナーを清掃する。
(6)転写手段5によって、トナー像を転写された記録シート6は定着手段8へ搬送される。定着手段8では、トナーは加熱され、記録シート6上に定着される。
【0004】
感光体ドラム1は図1中の矢印方向に回転するため、上記1ないし6の工程を繰り返すことによって記録シート6上に所望の画像が形成されていく。
電子写真プロセスを用いる画像形成装置での露光手段は、発光点として、いわゆるLD(レーザーダイオード)を出力画像に対応させて光変調を行う。このLDから発光されたレーザー光は、いわゆるコリメートレンズ、アパーチャー、シリンドリカルレンズ、ポリゴンミラー、f−θレンズを介して、感光体上に結像するようになっている。ポリゴンミラーは、回転する多面鏡であり、この回転によってレーザー光が感光体上を走査(主走査)する。一方、感光体は感光体駆動手段によりレーザーの走査方向に対して直交方向に駆動(副走査)しているため、レーザー光によって感光体を露光して所望の画像に対応する静電潜像を2次元的に感光体上に形成することができる。
【0005】
また、図4は従来の画像処理の工程を表したブロック図である。画像入力部はデジタル複写機などのスキャナに相当し、原稿読み取り入力画像データを画像処理部に送る。画像処理部ではこの入力された画像データに対してフィルタ処理、γ変換処理、擬似中間調処理といった各種画像処理を行い、処理結果(出力用画像データ)をビデオ信号処理部へと受け渡す。ビデオ信号処理部では、この出力用画像データを画像信号へと変換し、所定のタイミングで上記LDを駆動させる。また、上述のように複数のLDを搭載した画像形成装置では、このビデオ信号処理部において画像信号を、使用するLDごとに配分していく。
【0006】
最近の画像形成装置では、複数のLDを搭載するタイプが増えてきている。これは、毎分20枚以上プリント枚数の多い装置では、単独のLDで光変調を高速で行い、かつポリゴンミラーを高速で回転させる必要があるからである。複数のLDを搭載することにより、ポリゴンミラーで同時走査をすることで解決することが可能となるが、主走査を行う回転多面鏡(主走査同期信号)と副走査駆動系(副走査方向の記録開始信号)とが非同期であるために縦レジストズレ(副走査方向の位置ズレ)が発生する。
【0007】
レジストズレによって画像上もたらされる悪影響としては、モノクロ画像においては出力画像のページ間ごとに紙上での記録位置が、最も大きい場合でLD個の数に相当する長さだけずれるといった問題を引き起こす。例えば、解像度600dpiにおいて2つのLDを持つマルチビーム光学系では、84.7μm分ずれる。
この副走査方向のレジストズレは、カラー画像の場合においてさらに深刻な問題を引き起こす。カラー画像ではシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4版を紙上に重ねることによって画像の形成をおこなう。カラー画像において副走査方向のレジストズレは、CMYKの各版の重なりがずれることを意味する。このことは、画像品質上では次のような問題を引き起こす。
【0008】
(1)色のついた文字などでは文字が2重に見えたりぼやけたように見えたりし、狙いの色とは異なる色として再現される。
(2)ソリッド部の上下に、中央部分とは異なる色の部分が発現する。
(3)色が急激に変化するエッジ部(2つのソリッド部の境目)の間に隙間が生じたり、あるいは色づきが発生する。
【0009】
複数のLDを使用するマルチビーム光学系では、特許文献1に記載のように画像データの1ライン目で使用するLDを複数LDの中から選択する選択手段を搭載するタイプの画像形成装置が提案されている。この発明は、主走査同期信号と副走査記録開始信号との時間差を検出する検出手段を備え、この検出手段からの信号に応じて最初の1ライン目の記録に用いる光源を複数の光源から選択する光源選択手段を有することが特徴である。これにより、主走査を行う回転多面鏡と副走査駆動系とが非同期であることによって発生する縦レジストズレを低減することができるとしている。
【0010】
また、複数のLDを有する画像形成装置においては、複数のLD間の光量を完全に一致させることが難しいといった問題がある。複数のLD間に光量差が生じてしまう要因としては、(1)LDの温度特性がそれぞれ異なること、(2)LDのいわゆる劣化速度がそれぞれ異なること、(3)電気的クロストーク、熱的クロストークなどが挙げられる。これらのいずれの要因についても近年では改善がはかられてきているものの、完全にないといえるレベルまでには達していないのが現状である。
【0011】
このような問題に対して、特許文献2では、LDによって走査した感光体の表面電位を測定することによって、この結果から各LDのいわゆる発光duty比を個別に制御することによって、各LDの光量差の問題を解決している。
【0012】
【特許文献1】
特許第3236178号
【特許文献2】
特開2000−89526号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような副走査方向のレジストズレによる悪影響を低減することを課題とすることから、画像の1ライン目で使用するLDを複数のLDから選択するようなLD駆動を行うようにした。
しかしながら、発明者の実験によると、上述のLD間に光量差が生じた状態で、なおかつ、画像の1ライン目で使用するLDを複数のLDから選択するようなLD駆動をおこなった場合には、画像の1ライン目で使用するLDの選択が変わるごとに出力される画像の明度値または反射濃度が異なるといった問題が発生することが明らかになった。すなわち、同一の画像を複数枚数出力した場合などに、本来であればすべてのプリントで同じ明度であるべき画像が、プリント画像ごと異なる明度値として出力されてしまうといった現象が発生する。このことは、出力画像の安定性・信頼性の低下の要因となる。
【0014】
さらに、カラー画像の出力においては、やはり同じように同一の画像を複数枚数出力した場合などにおいて、本来であればすべてのプリントで同じであるべき色(明度、彩度、色相がすべて同じ)が、プリント画像ごとに別々の色として出力されてしまうといった現象が発生する。特に人間の視覚特性は、色相の変化に敏感であり、色相の変化に対しては、色みの変化として知覚される。このため、著しく出力画像の安定性、信頼性を低下させてしまう要因となる。
【0015】
このような、プリント画像ごとに画像の明度値や色が異なってプリントされてしまうといった問題に対しては、複数LD間の光量差をなくし完全に一致させることが、解決手段として挙げられるが、上述のとおり完全に光量差を0にすることは非常に困難である。とくに、LDの劣化速度などの違いもあるため、長期間にわたって光量差0を保障することは不可能である。また、1ライン目で使用するLDを複数のLDから選択せずに固定して使用するといったことも、解決手段として挙げられるが、上述ように副走査方向でのレジストズレによる出力画像の品質低下を引き起こす。
【0016】
上記問題点に鑑み、本発明は、入力画像データから、LD駆動おこなうための出力用画像データを生成する中間調処理工程において、一定の条件を満足する擬似中間調処理方法と光書き込み装置とを組み合わせることによって、(1)副走査方向のレジストズレ、(2)出力画像ごとの明度、色相の変化という課題を同時に解決する方法及びそれを用いた画像形成装置を提供する。
【0017】
【課題を解決するための手段】
以上説明したように、本発明は、入力画像データに擬似中間調処理を施して出力用画像データを生成する擬似中間調処理装置と、前記出力用画像データに基づく変調信号により複数の発光点を駆動する発光点駆動装置、および、前記出力用画像データに対応して発光点を駆動する際に前記出力用画像データの1ライン目において使用する発光点を前記複数の発光点から選択する発光点選択装置、を有する画像形成装置において、前記擬似中間調処理装置は、組織的ディザ法により疑似中間調処理を行う疑似中間調処理装置であって、ディザの周期構造を決定する2つの並進ベクトルに関して、前記2つの並進ベクトルのいずれかの並進ベクトルの副走査方向成分が、前記発光点の数の整数倍とはならない、ディザ処理を行う擬似中間調処理装置であることを特徴とするの画像形成装置である。
発明は、前記画像形成装置は、発光点の個数が2つであり、2つの発光点間の光駆動時における光量差が2%以上30%以下であることを特徴とする画像形成装置である。
発明は、前記組織的ディザ法を使用する擬似中間調処理装置が、ドット集中型のディザ成長方法を使用した擬似中間調処理装置であることを特徴とする画像形成装置である。
発明は、前記複数の発光点が、1チップ上に複数のレーザーダイオードを配列した発光点アレイによって構成されることを特徴とする画像形成装置である。
発明は、前記複数の発光点が、1チップ上に1つのレーザーダイオードを配列したレーザーダイオード素子を複数搭載することにより構成されることを特徴とする画像形成装置である。
発明は、トナー現像装置を有し、複数色のトナー像を記録シート上で重ね合わせた画像を出力することを特徴とする画像形成装置である。
本発明は、前記複数色のトナー像が、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のトナー像であることを特徴とする画像形成装置である。
発明は、シアン、マゼンタ、イエローの3色についてのみ、上述したディザ周期構造をもつ疑似中間調処理を適用したことを特徴とする画像形成装置である。
【0018】
発明は、入力画像データに擬似中間調処理を施して出力用画像データを生成する擬似中間調処理を行い、前記出力用画像データに基づく変調信号により複数の発光点を駆動する発光点駆動装置と、前記出力用画像データに対応して発光点を駆動する際に前記出力用画像データの1ライン目の記録に使用する発光点を複数の発光点から選択する発光点選択装置とを有する画像形成装置を用いて、前記複数の発光点を前記出力用画像データに基づく変調信号により駆動する画像形成方法において、前記擬似中間調処理は、組織的ディザ法により行い、ディザの周期構造を決定する2つの並進ベクトルに関して、前記2つの並進ベクトルのいずれかの並進ベクトルの副走査方向成分が、前記発光点の数の整数倍とはならない、ディザ処理を行うことを特徴とする画像形成方法である。
発明は、前記画像形成装置は、発光点の個数が2つであり、2つの発光点間の光駆動時における光量差が2%以上30%以下であることを特徴とする画像形成方法である。
本発明は、前記複数の発光点は、1チップ上に複数のレーザーダイオードを配列した発光点アレイであることを特徴とする画像形成方法である。
発明は、前記複数の発光点は、1チップ上に1つのレーザーダイオードを配列したレーザーダイオード素子を複数搭載することにより構成されることを特徴とする画像形成方法である。
発明は、前記画像形成装置がトナー現像装置を有し、複数色のトナー像を記録シート上で重ね合わせた画像を出力することを特徴とする画像形成方法である。
発明は、前記複数色のトナー像が、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のトナー像であることを特徴とする画像形成方法である。
発明は、シアン、マゼンタ、イエローの3色についてのみ、上述したディザ周期構造をもつ疑似中間調処理を適用したことを特徴とする画像形成方法である。
【0019】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
実施例1に用いた画像形成装置の概略を図1に基づいて説明する。従来の画像形成装置と構成の一部が重複するためである。
【0020】
(1)感光体ドラム1は、導体(アルミニウムなど)の表面に、感光体を膜厚25μm(いわゆるCT層20μm、CG層1μm、UL層4μmの積層型OPCである。)で塗布することによって形成され、図2中の矢印方向に回転する。感光体ドラムの直径は60mmであり、周速は245mm/secである。
(2)帯電手段2は、いわゆる接触ローラ帯電装置であり、芯金上にいわゆる中抵抗の導電性をもつ弾性層(厚み3mm)が形成された構成の帯電ローラに、電源によって直流電圧(−1.21kV)を印加し、感光体を均一(−550V)に帯電する。
【0021】
(3)露光手段3は、帯電手段で均一に帯電された感光体の表面に、目的の画像に対応した光を照射することによって、静電潜像を形成する。露光手段の光源はレーザーダイオードであり、ポリゴンミラーによって、感光体上をレーザービームで照射しながら走査していく。いわゆるビーム径は主走査方向40μm、副走査方向40μmである。
(4)現像手段は、いわゆる2成分現像装置であり、トナー(体積平均粒径5.5μm)とキャリア(粒径35μm)をトナー濃度6.5%に混合した現像剤が現像容器内には収納されている。現像装置では、この現像剤を現像スリーブによって、感光体−現像スリーブ対向部へと搬送する。感光体−現像スリーブ間の距離(いわゆる現像ギャップ)は0.3mmである。現像スリーブには電源により直流電圧(−400V)が印加されているため、感光体上の静電潜像の対応してトナーが感光体上に付着する。(いわゆる反転現像)また、現像スリーブの周速は490mm/secである(いわゆる周速比は2.0である)。
【0022】
(5)転写手段5は、現像手段で現像されたトナー像を不図示の給紙手段から搬送された記録シート6上に転写する。実施例1の転写手段は転写ベルトと電源とからなり、電源から転写ベルトに電圧を印加する。印加する電圧は定電流制御とし、30μAである。
(6)クリーニング手段7は弾性体から形成されるブレードによって構成され、感光体上の残留トナー像(いわゆる転写残トナー)のクリーニングを行う。
(7)転写手段によっての記録シート(紙など)上に転写されたトナー像は、定着手段に搬送され、定着手段で加熱加圧することによって、トナー像が記録紙シート上に定着され、画像形成装置機外へと排出され、出力画像となる。
【0023】
実施例1においても、上述の(1)〜(7)の工程を繰り返すことによって、所望の画像を記録シート上に形成することが可能になる。
図2は実施例1の書き込みユニットである。実施例1では、2つのLD31(レーザーダイオード)を搭載している。
【0024】
2つのLD31からのビームは(ハーフミラー)を使用して重ね合わせるようになっている。LD31からのレーザー光は、いわゆるコリメートレンズ32、NDフィルタ33、アパ−チャ−34、シリンドリカルレンズ35を介して、ポリゴンミラーへ36と照射される。実施例1ではポリゴンミラー36は、6面タイプであり、34724rpmの回転数で回転している。ポリゴンミラー36で反射されたレーザー光は、折り返しミラー38、f-θレンズ37を介して、感光体ドラム上で結像するようになっている。実施例1では、レーザービームの感光上でのいわゆるビーム径は、40μm(主走査方向)×40μm(副走査方向)になるように調整されている。また、レーザー光はポリゴンミラーが回転することによって、2LD同時に感光体上を走査する。
【0025】
実施例1では、解像度600dpiの画像形成装置であり、1pixelの大きさは、42.3μm×42.3μmである。実施例1では、1pixcelあたりを33.8nsecの時間で移動しながら、感光体にレーザービームを照射していく。このとき、いわゆる画素クロックは29.6MHzであり、29.6MHzの周波数でLDを光変調している。
【0026】
また、実施例1は、1pixelあたり256(8bit)階調の階調表現が可能な、いわゆる8bit書きこみを行うことができるように、LDのパルス幅を256段階で変化させることが可能な構成になっている。
また、実施例1では、上述のようにレーザー光がポリゴンミラーの回転によって、感光体上の走査を行うが、非画像領域にレーザー光が位置するときに、図5に図示された同期検知板に、レーザー光が入射するようになっている。この同期検知板は、レーザービームの入射によって基準信号である主走査同期信号が発生するような機構を有し、この主走査同期信号に基づいて、画像書き出し位置のタイミング、いわゆる画素クロックを形成するクロック信号のリセットを行うようになっている。これにより、感光体上の主走査方向の所定の位置に、光変調されたレーザー光を入射することが可能になる。
【0027】
また、実施例1では、副走査方向の記録開始位置(縦レジスト)は次のようにして決定される。第1に紙搬送経路の配置された紙検知センサによって紙位置を検知する。そして、この検知信号に基づいて生成される記録開始信号生成手段で生成された記録開始信号にもとづいてLDの駆動が始まり、感光体への光書込みが開始される。実施例1では、記録開始位置の検知を上述のような紙検知センサによって行うが、これは本発明の範囲を制限するものではなく、感光体駆動手段に内蔵されたロータリ・エンコーダーや、感光体ドラム表面に印字されたパターンを読み取るリニア・エンコーダーなどであっても良い。
【0028】
さらに、カラー機においては、中間転写ベルト上でCMYKの4版を重ねる画像形成装置が多く提案されているが、上記のエンコーダーを中間転写ベルトに採用して記録開始位置の検知を行う方法でも本発明の作用、効果はまったく変わらない。
また、先に中間転写ベルト上に転写される版においてあらかじめ位置を検知するためのパターンを印字しておき、この印字パターンを読み取ることによって記録開始位置の検知を行う方法でも、本発明の作用、効果はまったく変わらない。
【0029】
実施例1では、副走査方向の記録開始信号にもとづいてLD駆動を開始するが、その際に、副走査記録開始信号と主走査同期信号との時間(タイミング)を検出する時間差検出手段によって生成される時間差信号によって、画像の1ライン目の記録に使用するLDを複数のLDから選択するLD選択手段を有する。時間差信号によって複数LDを選択する方法については、従来技術と同じであるので詳細な説明は省略する。
【0030】
次に、実施例1の画像処理装置部の説明を行う。図3は、実施例1の画像形成装置のブロック図である。実施例1の画像形成装置は、いわゆるレーザープリンタタイプであるため、入力画像データはパソコンなどからの多値(8bit)画像であると想定する。(デジタル複写機などの場合には、原稿を読み取るスキャナが付加され、このスキャナ部から入力データが送られてくると考える。)入力画像データは、画像処理部において、MTFフィルタ処理部において強調処理され、次いでγ補正処理部により濃度制御され、次いで誤差拡散処理部によりプリンタ特性に合うように擬似中間調処理がほどこされ、出力用画像データとして、画像出力側(LD駆動側)へと引き渡される。
【0031】
MTFフィルタ処理部では、一定サイズのマトリクス内の各画素データと予め定められたフィルタ係数を用いて積和計算を行い画像中のエッジを強調する。MTFフィルタ処理は図4に示す従来の画像処理部の技術と同一であるので、詳細な説明は省略する。
γ補正処理部は出力画像の濃度を決める変換処理を行い、このとき濃度特性の設定は、予め用意された複数の濃度特性から選択された1種類を、システムバスを通してγ変換処理に設定することにより行う。γ変換補正処理部は、図4に示す従来の画像処理部の従来の技術と同一であるので詳細な説明は省略する。
【0032】
次に誤差拡散処理部について説明する。図5は、実施例1の誤差拡散処理部を示す図である。誤差拡散処理部は、加算部、量子化部、誤差演算部、誤差記憶部及び補正値演算部を含む。
図6は図5に示された補正値演算部における演算で用いられるウェイトマトリクスを示す図である。ここで、図6に示された数値は対応する画素における誤差の重みを意味し、*は注目画素をあらわす。なおウェイトマトリクスにおいては様々な構成が考えられ、図6に示された構成(ウェイトマトリクスA)に限られるものではない。また、上記ウェイトマトリクスは補正値演算部に含まれた記憶部にあらかじめ記憶される。
【0033】
まず、補正値演算部は誤差記憶部から量子化済み画素の誤差ex+j、y+jを読み出し、この誤差に対応するウイトマトリクスを内蔵された上記記憶部から読み出す。そして、以下のように上この誤差ex+j、y+jと対応するウェイトマトリクスとを画素毎に積算しこの画素毎積を加算するともにウェイトマトリクスの重みの和で除算して補正値Ex,yが算出される。
ここで、補正値Ex,yは例として図6に示されたウェイトマトリクスを用いて展開すると式1のように表すことが可能である。
【0034】
【式1】
Figure 0004209704
【0035】
次に、入力画像データdx,yと補正値Ex,yが加算部で加算され、補正画素データDx,yが出力される。次に量子化部によって補正画素データDx,yが量子化される。より具体的には、量子化部は実施例1では2であり、出力用画像データは0または1の値をとる。
そして、誤差演算部は補正画素データDx,yと出力用画像データOx,yおよびあらかじめ定められた値B(実施例1では量子化数が2であるため、255)に応じて注目画素における誤差ex,yが式2により算出される
【0036】
【式2】
Figure 0004209704
【0037】
実施例1では、量子化数は2であるが別の値でもよい。通常の多値誤差最小法では、Ox,y×Bの値は、0から入力画像データの最大値(たとえば255)の間で出力画像データOx,yの量子化数に応じて等分された値とされるが、任意の値としてもよい。その場合には出力画像データOx,yに応じた値を予め定めておいたルックアップテーブルなどが用いられる。
上述のようにして画像処理部において処理を施された結果は、出力用画像データとして次工程であるビデオ信号処理部へと送られる。ビデオ信号処理部では前述の出力用画像データを受け取り、発光点数(実施例1では2LD)分のデータをラインメモリ上に記憶し、前述のポリゴンミラーの回転に合わせて(主走査同期信号を基準にして)、光変調信号としてLD駆動ドライバー部へと出力する。LD駆動ドライバー部では前述の複数個のLDを同時に駆動することによって、感光体上に所望の潜像を形成していく。
【0038】
実施例1では、擬似中間調処理方法は、上述のように誤差拡散法である。誤差拡散法の詳細は上述の通りである。この誤差拡散法は、一般的にFMスクリーンと呼ばれる擬似中間調処理方法のひとつであり、ドットの密度(画像の空間周波数)を変化させて、画像の階調を再現している。このため、一定の周期構造を持たないといった特徴がある。したがって当然のことながら、副走査方向にも周期構造を持たない。誤差拡散法を使用することによって、擬似中間調処理後の出力用画像データは、周期的な構造を持たないため、請求項1の構成要件の一つである2チャネルのLDの使用頻度にかたよりがすくない画像出力用データを得ることができる。
【0039】
次に、実施例1の画像形成装置と、実施例1に対して、誤差拡散処理工程で使用するウェイトマトリクスのみを下記にようにかえた場合の画像出力結果を以下に示す。 (ウェイトマトリクスB、Cについては図7、8を参照)
実施例1−1(上記):誤差拡散A(600dpi(主)×600dpi(副)、ウェイトマトリクスA)
実施例1−2:誤差拡散B(600dpi(主)×600dpi(副)、ウェイトマトリクスB)
実施例1−3:誤差拡散C(600dpi(主)×600dpi(副)、ウェイトマトリクスC)
【0040】
また、発明者のおこなったこの実験では、2LDの光量差(ΔP)を下記の式3によって定義し、2LD間の光量差を意図的に0〜0.3(0〜30%)までふって画像出力を行っている。実際に実験時のP1、P2の値は表1に記載の通りである。
【0041】
【式3】
Figure 0004209704
【0042】
【表1】
LD1及びLD2の光量と光量差
Figure 0004209704
【0043】
なお、P1およびP2の測定は、実際に画像を出力する際に使用するPWM値(実施例1では128/256値)でLDを駆動した状態を再現して、横河電気製光パワーメーター(Model13292)を使用して測定を行ったものである。
また、実施例1で記載した構成をもつ実験機(リコー製 IMAGIO Color 8500)をベースにした実験機であり、主走査同期信号と副走査画像記録開始信号とのタイミングにより画像1ライン目で使用するLDを複数LDから選択する。)により、実験は行っている。
この実験での出力画像は、第一にはモノクロ画像とし、縦横15mm四方のパッチを256階調(8bitデータでの全階調)を含むオリジナル画像に対して、上述の実施例1−1〜1−3で記載したウェイトマトリクスを使用した擬似中間調処理(誤差拡散処理)を施し、出力用画像データを得た。この実験では、このようにして得た出力用画像データを用いて実験を行っている。
【0044】
この実験での出力画像の評価は、次のようにして行った。上記画像データを8枚出力し、各プリントの同一パッチの明度値(L*)を8枚分測定する。明度値の測定はX−Rite社製 分光測色濃度計(Model938)を使用しておこなった。5枚分の測色結果から明度値の平均値および標準偏差(σL*)を計算して記録する。このような明度値の平均値および標準偏差の計算を、すべての階調(256階調)について行う。このような評価を行うことにより、図9のようなグラフを得ることができる。上記の説明から明らかなように、縦軸(明度値の標準偏差)が大きくなるにしたがって、本来は同じ明度値となるべきはずのパッチが、プリントごとに異なる値を持ち、明度の差が大きくなっているということを意味する。(出力画像の安定性、信頼性が低いということを示す。) さらに、この標準偏差の最悪値(全明度の中でもっとも標準偏差の値が大きい(悪い)値を最悪値と定義する。)をその条件(その擬似中間調処理)における出力画像の安定性と考えて、評価をおこなった。
出力画像安定性(S、パッチ同一性)の定義式:S=全明度での標準偏差の最悪値
上記の実施例1−1〜1−3での擬似中間調処理を施した出力画像データを使用して、上述の方法で出力画像の安定性の評価を行った結果が表2である。
【0045】
【表2】
疑似中間調処理方法における2LD間光量差と画像出力安定性指標S
Figure 0004209704
【0046】
上記で定義した出力画像の安定性をあらわすSの値は、発明者の行った実験によればS>1.0となった場合にはパッチを横に置くことにより、明度の違いを一般の人であってもわずかに知覚することができるレベルであると考えられる。また、S<1.0であれば明度の違いを知覚できることはほとんどないレベルの差であると考えられる。
【0047】
実施例1−1〜1−3では出力画像安定性(S)の値は、0.8前後であり、良好な出力画像安定性を示していることがわかる。(比較例としての出力画像安定性の悪い例は、実施例4の項で提示することにする。)
このように実施例1の構成を持つ画像形成装置では、2LD間の光量差(ΔP)が2〜30%発生した場合でも、本発明で定義する出力画像安定性(S)の値は悪化しない。また、発明者の行ったパネルテスト(被験者5人)の3段階の評価(明度値の違いをまったく知覚できない:○、明度値の違いがあまり気にならない:△、明度値の違いが気になる:×)においても、全員が○を支持した。このことからも、実施例1の構成の画像形成装置では、「発明が解決しようとする課題」の項で記載した2つの問題((1)副走査方向のレジストズレにともなう問題、(2)複数LD間の光量差+画像1ライン目に使用するLDの選択にともなう複数枚同時プリント時に発生する明度値の安定性低下)の両立が可能となる光書込み方法と擬似中間調処理方法との組み合わせ条件を提案することができる。
【0048】
なお、実施例1の構成においては、2LD間の光量差が30%を超えた場合であっても、「発明が解決しようとする課題」の項で記載した2つの問題の両立は可能であった。しかしながら、2LD間の光量差が30%を超えた場合には、画像の粒状性の悪化が発生した。粒状性とは、画質項目のひとつであり、画像のざらつきをあらわす項目である。
このため、2LD間の光量差を2〜30%の範囲とすることによって、粒状性についても良好な出力画像を得ることができる画像形成装置の提案が可能となる。
【0049】
(実施例2)
実施例2の画像形成装置の構成はほとんどの部分において実施例1と同じである。図10は実施例2の画像形成装置のブロック図であり、データフローを示している。実施例1との相違点は、出力用画像データとしてビデオ処理部に転送されてくるデータは、あらかじめ副走査方向レジストが発生しないように、LD1、LD2に割り振られた形で、ビデオ処理部に転送されてくる。実施例2においては主走査同期信号と副走査記録開始信号とのタイミングによって、LD1及びLD2へ流すデータを画像データのラインとして選択するようにしてある。このため、実施例2ではビデオ処理部から画像出力部に対して書き出しライン指示信号を送ることによって、画像出力部からビデオ信号処理部に転送されてくるデータを変更する。この転送データの具体的な変更方法は、画像データの初期の1走査分をビデオ処理部へ転送するかあるいは転送しないかによって行っている。このほかにも、空のラインを挿入するかしないかによっても、同様の操作が可能である。
【0050】
実施例2と実施例1とでは、出力用画像データと使用するLDとの対応関係を変更するという点では違いはないため、実施例1の項で記述した効果を、実施例2においてもそのまま実現することができる。しかしながら、実施例2では、ビデオ処理部においてLD1、LD2に相当するデータを入れ替えるような工程が必要ないため、ビデオ処理部での処理付加を軽減できるというメリットがある。実施例2ではその分の付加が画像出力部に及ぶわけであるが、通常画像出力部にはラインメモリなどが存在するため、メモリ上のデータを転送するタイミングをずらすだけでよい。実施例2の構成では、ビデオ処理部の処理負荷を軽減し、画像形成装置としても処理付加の少ない構成を提案することができる。
【0051】
(実施例3)
実施例3の画像形成装置の構成はほとんどの部分において実施例1と同じである。実施例3では擬似中間調処理工程が、万線処理であることが、実施例1との相違点である。実施例3での万線処理について以下に説明する。万線処理では、図11、12のように光書き込みを行われた画素が一列に並んでいることが特徴である。また、書き込みを行われた画素の一列がほぼ均等に成長していく(太くなっていく)。
このため、一般的にはLDの駆動方法としては、4〜8bitの多値書き込みを行う。
【0052】
実施例3では、解像度600dpi、線数200lpi、スクリーン角90度の万線処理を行っている。また、LD駆動方法としては4bit書き込みを行っている。より具体的な出力用画像データの作成方法については、一般的な組織的ディザ法と同じであり、閾値マトリクスのとり方を万線型の成長方法(画素が一列につらなるような形で太くなるような形で、高濃度を再現する。)になるようにきめている。組織的ディザ法による出力画像用データの作成方法(量子化方法)については、従来技術と同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0053】
図11および図12のように、多値書きこみ(4biti以上)を行う万線処理により擬似中間調処理が施された出力用画像データは、光書き込みを行われた画素が一列に並ぶような構造をもつ画像となる。このことはパッチ画像(平均的な濃度が一定の10mm四方程度の画像)などを形成する場合に、複数LDの使用頻度にほとんど差がないこと意味する。したがって、実施例1とじく本発明の課題を解決することができる。
【0054】
つぎに、万線処理として、以下の3種類の線数およびスクリーン角についての画像出力結果を下記に示す。
実施例3−1(上記図11):万線処理A(600dpi(主)×600dpi(副)、線数200lpi、スクリーン角90度)
実施例3−2(上記図12):万線処理B(600dpi(主)×600dpi(副)、線数212lpi、スクリーン角45度)
実施例3−3:万線処理A(600dpi(主)×600dpi(副)、線数134lpi、スクリーン角63.4度)
【0055】
擬似中間調処理工程を上記の万線処理に変更した以外は、実施例1と同じ構成の画像出力実験機を使用して、実施例1と同じ方法により出力画像の評価を行った。評価法もやはり実施例1と同じく、出力画像安定性の指標としてSを導出することにより行った。実験結果が表3である。
【0056】
【表3】
疑似中間調処理方法における2LD間光量差と画像出力安定性指標S
Figure 0004209704
【0057】
実施例3−1〜3−3においても、出力画像の安定性(S)の値は、0.8〜0.85程度であり良好な出力画像の安定性を示していることがわかる。
【0058】
(実施例4)
実施例4の画像形成装置の構成はほとんどの部分において実施例1と同じである。実施例4では擬似中間調処理工程が、組織的ディザ法であり以下の要件をみたす周期構造をもつことが、実施例1との相違点である。
実施例4での組織的ディザ法の満たす要件は、ディザの周期構造を決定する2つの並進ベクトルのどちらか一方が副走査方向に発光点の数の整数倍とはならないような長さをもつことである。この並進ベクトルとは、図13、14に示すように、2つの並進ベクトルによってディザの周期的な構造が記述できるようなベクトルのことである。多くの場合において、並進ベクトルの一方を90度回転させることによってもう一方の並進ベクトルと一致させることができる。この要件はディザの作成、本発明の両方にとって必須項目ではないが、オフセット印刷などにおいてこのような形態が多いため、踏襲されている場合が多い。
【0059】
図13、14の横方向を主走査方向、縦方向を副走査方向と考えると、図13では並進ベクトル1は副走査方向の長さが1画素であり、並進ベクトル2は副走査方向の長さが3画素である。したがって、図13では並進ベクトルの両方ともが発光点(この場合には2)の数の整数倍とはなっていない。
一方、図14では並進ベクトル1は副走査方向の長さが2画素、並進ベクトル2は副走査方向の長さが2画素となっている。したがってこの場合には、並進ベクトルの両方ともが発光点(この場合は2)の数の整数倍となっている。このため、図14の周期的構造をもつ組織的ディザ法では、請求項9の構成要件を満たさない。
【0060】
実施例4の画像形成装置では、組織的ディザ法は、線数が189.7lpi、スクリーン角が18.4度のディザマトリクス(図13のような周期的構造をもつ)を使用して擬似中間調処理(量子化)を行い、出力用画像データを得ている。実施例4では、図13からも分かるように、2つのLDに使用頻度差のない出力用画像データをえることができる。したがって、実施例1とじく本発明の目的とする課題を解決することができる。
【0061】
次に、組織的ディザ処理として、下記の7種類の線数およびスクリーン角についての画像出力結果を下記に示す。
実施例4−1:ディザ処理A(600dpi(主)×600dpi(副)、線数166.4lpi、スクリーン角33.7度)
実施例4−2(上記図13):ディザ処理B(600dpi(主)×600dpi(副)、線数189.7lpi、スクリーン角18.4度)
実施例4−3:ディザ処理C(600dpi(主)×600dpi(副)、線数200lpi、スクリーン角0度)
実施例4−4:ディザ処理D(600dpi(主)×600dpi(副)、線数268lpi、スクリーン角26.6度)
比較例1−1:ディザ処理E(600dpi(主)×600dpi(副)、線数150lpi、スクリーン角0度)
比較例1−2(上記図14):ディザ処理F(600dpi(主)×600dpi(副)、線数212lpi、スクリーン角45度)
比較例1−3:ディザ処理G(600dpi(主)×600dpi(副)、線数300lpi、スクリーン角0度)
【0062】
擬似中間調処理工程を上記のディザ処理に変更した以外は実施例1と同じ構成の画像出力実験機を使用している。また、評価法もやはり実施例1と同じく、出力画像安定性の指標としてSを算出することにより行った。その結果が表4である。
【0063】
【表4】
疑似中間調処理(組織的ディザ処理)方法における2LD間光量差と画像出力安定性指標S
Figure 0004209704
【0064】
実施例4−1〜4−4においても、出力画像の安定性(S)の値は、0.80〜0.90程度であり良好な出力画像の安定性を示していることがわかる。
これに対して、比較例1−1〜1−3においてはLD光量差が0%であれば問題がないが、以降LD光量差が大きくなるにしたがって、画像出力安定性(S)の値が1.0を超えるようになり、本来であれば同一となるはずのパッチの濃度が変化してしまうという問題が発生した。
次に、上記7種類のディザについて、2つの並進ベクトルの副走査方向の長さを列記したものが表5である。
【0065】
【表5】
組織的ディザにおける並進ベクトルの副走査方向の長さ
Figure 0004209704
【0066】
表5をみると、比較例1−1〜1−3では、2つの並進ベクトルの副走査方向への長さがいずれも発光点の数(この場合2LD)の整数倍になっていることが分かる。これに対して、実施例4−1〜4−4では少なくとも並進ベクトルのどちらか一方は、整数倍になっていない。組織的ディザの周期構造を請求項9の要件を満たすようにすることにより、複数LDの使用頻度に偏りの少ない出力用画像データを得ることができるようになる。そしてこの結果、本発明の課題の解決を行うことができる。
【0067】
さらに、発明者は上記の実施例1−1〜1−3、実施例2−1〜2−3、実施例4−1〜4−4、比較例1−1〜1−3について、実施例1の項で説明した、出力画像安定性(S)の値として選ばれたパッチ(出力画像の明度差がもっとも大きかったパッチ)に注目して、発光点の使用頻度を式4により算出した。
【0068】
【式4】
Figure 0004209704
【0069】
なお、多値書き込みを行った場合には、多値のレベルによる重み付けをおこなった。
その結果が、表6であるが実施例1−1〜1−3、実施例2−1〜2−3、実施例4−1〜4−4においては、この使用頻度差の値は小さく、比較例1−1〜1−3においては使用頻度差の値が大きいことが分かる。
【0070】
【表6】
実施例での2LD使用頻度差(△F)算出結果
Figure 0004209704
【0071】
発明者の行った実験によれば、上式で定義した使用頻度差の値が、0.1以下であれば、本発明の課題を解決することが可能である。
【0072】
(実施例5)
実施例5は実施例1とLDの構成以外の点はまったく同じである。実施例5では、LDは1チップ上に2つのLDを配置したLDアレイであることが、実施例1との相違点である。このような構成(LDアレイ)により2つのLD間の波長差を小さくできるなどの利点をもつ。LD間の光量のバラツキにこの波長差は直接的には関係しないが、感光体の分光感度特性がすべての波長について一定でないことから、発光光量のバラツキと同じ問題を引き起こすのである。また、LDアレイでは発光点が十数μm程度しか離れていないため、光束が走査レンズ(f−θレンズ)などを通過する際に、特性の近いところを通過するようにできる。このため、感光体位置でのビームスポット径のばらつきや、位置精度についても安定した光書きこみ系を実現することができる。
【0073】
(実施例6)
発明者は、実施例1の画像形成装置同じ構成の実験機(リコー製 IMAGIO Color 8500をベースにした実験機であり、リボルバータイプのCMYK4色の現像ユニットをもつ。)を使用して、いわゆる3Cブラック(CMYトナー像を重ね合わせて形成した無彩色)を形成して出力画像の安定性の評価を行った。画像の評価方法は実施例1とほぼ同じであるが、測定項目を実施例1での明度値の標準偏差ではなく式5で定義する色ばらつきとした。
【0074】
【式5】
Figure 0004209704
【0075】
CMYKの各版に対して、実施例4−2〜4−4に擬似中間調処理を適用してフルカラー画像を主力したところ、出力画像の同一であるべきパッチにおいて色が変化することがなく、安定した出力画像をえることができた。このとき、実施例4−2のスクリーン角を回転(71.6度)をC版として使用し、MYK版は実施例4−2〜4−4の順で適用した。
一方、上記のC版についてのみ、比較例1−2の擬似中間調処理を適用したところ、出力画像において本来同一であるべき色において異なる色(色ばらつきの大きい)の画像が出力されるようになった。
【0076】
さらに、CMYにのみ上述の実施例で説明した明度値の変化しない擬似中間調処理を適用して、K版にのみ比較例1−2を適用したところ、出力画像でのK版の明度値は変化したものの、色みの変化は起こらないことが明らかになった。フルカラー画像においては色重ねの問題から、一般にスクリーン角度差をつけた出力用画像データを作成することが多い。しかしながらこの場合には、異なる擬似中間調処理を組み合わせる必要があるため、複数LDの使用頻度差を一致させた擬似中間調処理をすべての版(CMYK4版)に適用することが難しい場合がある。このためこのように、CMY版にのみ使用頻度差の方よりの少ない擬似中間調処理を適用し、色相のみの変化を低減する方法も有用である。
【0077】
また、本発明は、図15に示すような、いわゆるタンデムタイプ(直接転写)のカラー画像形成装置、図16に示すような、いわゆるリボルバータイプのカラー画像形成装置及び図17に示すような、いわゆるタンデムタイプ(中間転写)のカラー画像形成装置で実施をしてもよい。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の画像形成装置は、複数の発光点(複数のレーザーダイオード)を有し、(1)出力用画像データとそれに対応する発光点との対応関係を画像出力ごとに変更し、(2)複数LDの使用頻度の偏りを小さくするような擬似中間調処理手段によって出力用画像データを生成する構成にしたので、複数LDの光量差若しくは出力画像データとそれに対応する発光点との対応関係の変更に伴う複数枚同時プリント時の明度値が変化するという課題を解決することができる。
【0079】
本発明の画像形成装置は、複数の発光点(複数のレーザーダイオード)を有する画像形成装置において、(1)画像1データ目で使用するLDを複数LDから選択する選択手段をもち、(2)複数LDの使用頻度の偏りを小さくするような擬似中間調処理手段によって出力用画像データを生成する構成にしたので、実施例1の項で説明したように、複数の発光点を有する画像形成装置に対して、(1)副走査方向のレジストズレにともなう問題、(2)複数LD間の光量差+画像1ライン目に使用するLDの選択にともなう複数枚同時プリント時の明度値変化という2つの問題を両立して同時に解決することができる。また、複数LD間の光量差は、長期間使用した場合の経時劣化が各LD間で異なるなどの原因によっても生じるため、長期間の使用に於いても上記2つの問題の発生することがない画像形成装置を実現することが可能となる。
【0080】
本発明の画像形成装置は、複数の発光点(複数のレーザーダイオード)を有する画像形成装置において、(1)第一の発光点を使用して記録を行う出力用画像データをこの出力用画像データの複数ラインから選択する選択手段を持ち、(2)複数LDの使用頻度の偏りを小さくするような擬似中間調処理手段によって出力用画像データを生成する構成であるので、実施例2の項で説明したように、効果を得ることができる。
また、この構成では、ビデオ信号処理部(出力用画像データを対応するLD駆動信号に変更する処理部)における、複数LDへのデータの割り振りを変更するという比較的演算負荷の大きな処理工程が必要ではなくなり、出力用画像データの転送タイミングを変更するだけの比較的簡単な制御によって、効果を得ることができる。
【0081】
本発明の画像形成装置は、実施例4に記載したように、出力用画像データから算出した複数LDの使用頻度差の値が0.1以下である場合には、出力画像の安定性を表す指標であるSの値が1.0を上回るようなことがないため、出力画像の安定性が優れる。
本発明の画像形成装置は、光量差を2%以上30%以下の範囲にしてあるため、粒状性についても良好な出力画像を得ることができる。
【0082】
本発明の画像形成装置は、誤差拡散法が、入力画像から擬似中間調処理後画像を得る際に、各画素ごとの、入力画像の値と処理後画像との差を周辺の画素に振り分けるため、画像濃度の再現性が良く、モアレの発生を無くすること可能である。
本発明の画像形成装置は、2値誤差拡散方式を使用しているので、光書きこみ時の露光エネルギーの集中度合いが、多値誤差拡散方式にくらべて高いため、階調性向上する。
【0083】
本発明の画像形成装置は、万線処理法を使用しているので、LD駆動には2値書込みではなく多値書きこみ(4〜8bit書きこみ)が多く用いられ、連なった画素は同じ露光量、または非常に近い露光量で光書きこみが行われる。このため、このような万線処理法では、擬似中間調処理後の画像は、複数発光点(LD)に使用頻度、発光量ともにほとんど差がない。このため、画像データとそれに対応する発光点との対応関係が画像出力ごとに変化するような画像形成装置であっても、複数LDの光量差が原因となって、複数同時プリント時の出力画像の明度値が変化してしまうような問題は発生しない。
また、万線処理法による擬似中間調処理法は、誤差拡散法などに比べて、擬似中間調処理にかかる計算付加が小さいといった利点がある。
【0084】
本発明の画像形成装置は、組織的ディザ法を使用しているので、LDの使用頻度差に差が生じることをなくすことができ、複数LDの光量差が原因となって、複数同時プリント時の出力画像の明度値が変化してしまうような問題は発生しない。
また、ディザ法は上記の万線処理法などと同様に計算負荷が比較的少ないという特徴をもつとともに、画像の周期構造が一定であるという特徴をもつ。このことは、現像工程において、周波数依存性を有する電子写真方式の画像形成装置では、粒状性の悪化を最小限とどめることができる。
【0085】
本発明の画像形成装置は、さらに、電子写真方式においては、再現の難しいハイライト部において、ドットを集中させた成長方法を採用することによってハイライト部の再現性も向上する。また、ドット集中型の成長方法では、階調性に優れ、バンディング等の目立たない画像形成装置を提供することができる。
【0086】
本発明の画像形成装置は、発光点アレイにおいて、発光点の間隔が十数μm〜数十μmの間隔で1チップ上に配列してあることが特徴である。このような発光点アレイを電子写真装置の光学ユニットの光源とした場合の特徴としては、まず、発光点が極めて近いため、光学ユニット内を通過する各光源の光路がほぼ同じであることある。このことは、光学ユニット内に配置される光学素子(f−θレンズ、折り返しミラーなど)を上記光路が通過する位置が極めて近いことを意味する。このため、光学素子の特性が近い場所(部位)を複数の光源が使用できるようになり、(1)感光体上でのレーザービームの露光位置が各光源について一致させやすいこと、(2)感光体上でのレーザービームのいわゆるスポット径を一致させやすいこと、といった長所がある。さらに、半導体レーザーダイオードの場合には、製造上の理由により、1チップ上の形成されるLDアレイでは、各発光源の波長差が非常に小さいという特徴があり、感光体上での露光位置が発光源ごとにズレるという現象が発生しにくくなる。
【0087】
発光点アレイでは、上述のような長所がある反面、次に挙げるような欠点を併せ持つ。発光点アレイでは、上述したように各発行点間の距離が十数μm〜数十μmの間隔であるため、各発光点の発熱によって、1つの発光点の光変調の影響が隣接する発光点に光量の変動として影響する。いわゆる熱的なクロストークが大きい。また、LDの変調電流が隣接する発光点に電気的誘導を引き起こすような電気的なクロストークも大きい。このため、複数LDでの光量差が大きいという短所を併せ持つ。これに対して、この画像形成装置の構成では、出力画像上には各発光点の光量差によって引き起こされる安定性の低下(複数枚同時プリント時での明度値の変化)が発生しなくなる。このため、上述の発光点アレイの長所のみが生かせるようになり、位置精度の高い画像形成装置を提供することが可能となる。
【0088】
本発明の画像形成装置は、製造時での歩留まりが良く、安価な素子である発光点が単独タイプのレーザーダイオード素子を使用することができる。従来ではこのタイプのレーザーダイオード素子は、バラツキ(発光量の温度特性、経時劣化速度の違い)が大きく複数LDを搭載する場合には、従来技術で説明したような問題が非常に顕著であった。
これに対して、本発明では、複数LDの光量差に起因して発生する問題である、複数枚同時プリント時で発生する明度値の変化(出力画像の安定性の低下)の影響をなくす画像形成装置を提案している。このため、上記の単独タイプのレーザーダイオードを組みあわせた場合にもこのような問題は発生せず、安価で、安定性の高い画像形成装置を提供することができる。
【0089】
本発明の画像形成装置は、複数色のトナー像を記録シート上で重ね合わせた画像を出力するため、出力用画像データとそれに対応する発光点との対応関係を画像出力ごとに変化させるような駆動を行うことが非常に重要である。これは、従来技術で記載したように、副走査方向のレジストズレが複数色ごとに発生するため、色ずれ、色文字の再現不良等の問題が発生するためである。本発明は、上記の問題を解決し、それと同時に複数のLD光量差に起因する、複数枚同時プリント時の明度値の変化といった問題の発生しない画像形成装置を提供することができる。
【0090】
本発明の画像形成装置は、副走査方向のレジストズレが複数色ごとに発生することなく、色ずれ、色文字の再現不良等の問題が発生せず、複数のLD光量差に起因する、複数枚同時プリント時の色の変化(明度、彩度、色相)という問題の発生しない画像形成装置を提供することができる。
本発明の画像形成装置は、色相が変化するという出力画像の不安定さを解消しながら、擬似中間処理の選択肢を広げることが可能となる。これにより、ロゼッタモアレ等を目立ちにくくするスクリーン線数、スクリーン角をもつ擬似中間調処理方法の選択を広げることが可能となる画像形成装置を提供することができる。
本発明の画像形成方法に関しても、上述した画像形成装置と同じ効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の画像形成装置の概略図である。
【図2】 実施例1の光学ユニットの概略図である。
【図3】 実施例1の画像形成装置を示すブロック図である。
【図4】 従来の画像処理部を示すブロック図である。
【図5】 実施例1の誤差拡散処理部の説明図である。
【図6】 実施例1−1の誤差拡散マトリクスAである。
【図7】 実施例1−2の誤差拡散マトリクスBである。
【図8】 実施例1−3の誤差拡散マトリクスCである。
【図9】 実施例1の画像出力安定性Sを示すグラフである。
【図10】 実施例2の画像形成装置を示すブロック図である。
【図11】 実施例3−1の万線処理の画像構造例(1)を示す図である。
【図12】 実施例3−2の万線処理の画像構造例(2)を示す図である。
【図13】 実施例4のディザ周期構造と並進ベクトル例(1)である。
【図14】 実施例4のディザ周期構造と並進ベクトル例(2)である。
【図15】 直接転写方式のタンデムタイプのカラー画像形成装置を示す図である。
【図16】 リボルバータイプのカラー画像形成装置を示す図である。
【図17】 中間転写方式のタンデムタイプのカラー画像形成装置を示す図である。
【符号の説明】
1 感光体ドラム
2 帯電手段
3 露光手段
31 レーザーダイオード
32 コリメートレンズ
33 NDフィルタ
34 アパーチャー
35 シリンドリカルレンズ
36 ポリゴンミラー
37 f−θレンズ
38 折り返しミラー
39 同期検知板
4 現像手段
41 リボルバ現像ユニット
5 転写手段
51 紙搬送ドラム
52 紙搬送ベルト
53 中間転写ベルト
54 転写ローラ
55 張力ローラ
56 ベルトクリーニングユニット
6 記録シート
7 クリーニング手段
8 定着装置

Claims (15)

  1. 入力画像データに擬似中間調処理を施して出力用画像データを生成する擬似中間調処理装置と、
    前記出力用画像データに基づく変調信号により複数の発光点を駆動する発光点駆動装置、および、前記出力用画像データに対応して発光点を駆動する際に前記出力用画像データの1ライン目において使用する発光点を前記複数の発光点から選択する発光点選択装置、を有する画像形成装置において、
    前記擬似中間調処理装置は、組織的ディザ法により疑似中間調処理を行う疑似中間調処理装置であって、ディザの周期構造を決定する2つの並進ベクトルに関して、前記2つの並進ベクトルのいずれかの並進ベクトルの副走査方向成分が、前記発光点の数の整数倍とはならない、ディザ処理を行う擬似中間調処理装置である
    ことを特徴とするの画像形成装置。
  2. 請求項1に記載の画像形成装置において、
    前記画像形成装置は、発光点の個数が2つであり、2つの発光点間の光駆動時における光量差が2%以上30%以下である
    ことを特徴とする画像形成装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置において、
    前記組織的ディザ法を使用する擬似中間調処理装置が、ドット集中型のディザ成長方法を使用した擬似中間調処理装置である
    ことを特徴とする画像形成装置。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置において、
    前記複数の発光点が、1チップ上に複数のレーザーダイオードを配列した発光点アレイによって構成される
    ことを特徴とする画像形成装置。
  5. 請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置において、
    前記複数の発光点が、1チップ上に1つのレーザーダイオードを配列したレーザーダイオード素子を複数搭載することにより構成される
    ことを特徴とする画像形成装置。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置において、
    トナー現像装置を有し、複数色のトナー像を記録シート上で重ね合わせた画像を出力する
    ことを特徴とする画像形成装置。
  7. 請求項6に記載の画像形成装置において、
    前記複数色のトナー像が、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のトナー像である
    ことを特徴とする画像形成装置。
  8. 請求項7に記載の画像形成装置において、
    シアン、マゼンタ、イエローの3色についてのみ、請求項1に記載のディザ周期構造をもつ疑似中間調処理を適用した
    ことを特徴とする画像形成装置。
  9. 入力画像データに擬似中間調処理を施して出力用画像データを生成する擬似中間調処理を行い、
    前記出力用画像データに基づく変調信号により複数の発光点を駆動する発光点駆動装置と、前記出力用画像データに対応して発光点を駆動する際に前記出力用画像データの1ライン目の記録に使用する発光点を複数の発光点から選択する発光点選択装置とを有する画像形成装置を用いて、前記複数の発光点を前記出力用画像データに基づく変調信号により駆動する画像形成方法において、
    前記擬似中間調処理は、組織的ディザ法により行い、ディザの周期構造を決定する2つの並進ベクトルに関して、前記2つの並進ベクトルのいずれかの並進ベクトルの副走査方向成分が、前記発光点の数の整数倍とはならない、ディザ処理を行う
    ことを特徴とする画像形成方法。
  10. 請求項9に記載の画像形成方法において、
    前記画像形成装置は、発光点の個数が2つであり、2つの発光点間の光駆動時における光量差が2%以上30%以下である
    ことを特徴とする画像形成方法。
  11. 請求項9に記載の画像形成方法において、
    前記複数の発光点は、1チップ上に複数のレーザーダイオードを配列した発光点アレイである
    ことを特徴とする画像形成方法。
  12. 請求項9に記載の画像形成方法において、
    前記複数の発光点は、1チップ上に1つのレーザーダイオードを配列したレーザーダイオード素子を複数搭載することにより構成される
    ことを特徴とする画像形成方法。
  13. 請求項9に記載の画像形成方法において、
    前記画像形成装置はトナー現像装置を有し、複数色のトナー像を記録シート上で重ね合わせた画像を出力する
    ことを特徴とする画像形成方法。
  14. 請求項13に記載の画像形成方法において、
    前記複数色のトナーが、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のトナー像である
    ことを特徴とする画像形成方法。
  15. 請求項14に記載の画像形成方法において、
    シアン、マゼンタ、イエローの3色についてのみ、請求項9に記載のディザ周期構造をもつ疑似中間調処理を適用した
    ことを特徴とする画像形成方法。
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