JP4209618B2 - プラズマ処理装置及びリング部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば半導体ウエハ等の基板に対して例えばエッチング処理などのプラズマ処理を行うプラズマ処理装置及びこの装置に用いられるリング部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置の製造プロセスにおいては、例えばキャパシタや素子の分離、あるいはコンタクトホールの形成等のために、ドライエッチングが行われている。この処理を行う装置の一つに平行平板型プラズマ処理装置がある。この装置は図15に示すように、例えば気密なチャンバ1内に、下部電極を兼用する載置台11が配設されると共に、載置台11の上方にこれと対向してガス供給部を兼用する上部電極12が配設されている。13は排気管である。
【0003】
このようなプラズマ処理装置では、先ず載置台11上にウエハWを載置し、ガス供給部12からエッチングガスを導入すると共に、電極11,12間に高周波電源部Eから高周波電力を印加してプラズマを発生させ、このプラズマ中の反応性イオンによりウエハWのエッチングが行われる。
【0004】
この際載置台11上のウエハWの周りに、ウエハWを取り囲むように導電性又は半導電性の内側リング14を設けると共に、この内側リング14の周囲に絶縁体例えば石英(SiO2)よりなる外側リング16を設けることにより、ウエハWの周縁領域から内側リング14上方のプラズマの均一性を向上させ、ウエハWに対して均一なエッチングを行うようにしている。ここで前記内側リング14の上面は例えば図16に示すように、内方側から外方側に向けて平らに形成されており、例えば外端縁に沿って僅かに段部15が形成され、この段部15を外側リング16で押さえることにより載置台11に固定されるようになっている。
【0005】
また前記外側リング16は、外端縁側が外方に向かって下方側に傾斜する傾斜面として構成されており、これにより排気流の流れを均一に調整する役割や、内側リング14と共にプラズマの均一性を高める役割や、さらに外側リング16が石英により構成されている場合には、石英がエッチングされることにより生じる酸素ラジカルをウエハのエッチング処理の一部に利用するという役割を果たしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで本発明者らは、上述の形状の内側リング14を用いて、ウエハW表面に形成されたレジスト膜に対して所定のエッチング処理を行うと、ウエハWの周縁領域(外端縁近傍領域)のエッチングレートが変化することを把握している。例えば8インチサイズのウエハWを処理する際、内側リング14としては例えば幅が30mm程度、厚さが6.5mmのものが用いられるが、この場合には、図17に示すようにウエハWの周縁領域では一旦急激にエッチングレートが小さくなり、その後急激に大きくなって、この領域においてエッチングレートが跳ね上がる形状になってしまう。
【0007】
このようにレジスト膜のエッチングレートがウエハの周縁領域にて急激に大きくなると、レジストマスクの開いている領域がウエハ中央部よりも広げられてしまうことになり、このため線幅の均一性が低くなるし、またレジスト膜が薄層化していることから、レジスト膜が無くなって被マスク面が露出してしまう懸念もある。
【0008】
またウエハに形成するデバイス領域はエッチングレートが変化しない領域内に設定しなければならないことから、既述のようにウエハの外端縁側のエッチングレートが変化してしまうと、前記デバイス領域をウエハの外端縁よりもかなり内側の領域に形成しなければならず、歩留まりが低くなってしまう。
【0009】
本発明は、このような事情のもとになされたものであり、第1のリングとその外側の第2のリングの形状の最適化を図ることにより、均一なプラズマ処理を行うことができる技術を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るプラズマ処理装置は、載置台が内部に設けられた処理容器と、前記載置台上の被処理体を取り囲むように設けられた第1のリングと、この第1のリングを取り囲むように設けられた第2のリングと、を備え、前記載置台上に載置された被処理体をプラズマにより処理するプラズマ処理装置において、前記第1のリングは、内縁から外側に向かって前記被処理体の被処理面と略同じ高さに設定された平坦面部と、この平坦面部の外側に前記第2のリングよりも高くなるように設けられた凸部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また他の発明は、載置台が内部に設けられた処理容器と、前記載置台上の被処理体を取り囲むように設けられた導電性の第1のリングと、この第1のリングを取り囲むように設けられた絶縁性の第2のリングと、を備え、前記載置台上に載置された被処理体をプラズマにより処理するプラズマ処理装置において、
前記第1のリングは、内縁から外側に向かって前記被処理体の被処理面と略同じ高さに設定された第1の平坦面部を備え、
前記第2のリングは、内縁から外側に向かって設定された第2の平坦面部と、この第2の平坦面部の外側に、斜め下方向に傾斜するよう設定された傾斜面と、を備え、前記第2の平坦面部は前記第1の平坦面部よりも低い位置に設けられることを特徴とする。
【0012】
このような構成では、前記第1のリングは、内縁から外側に向かって前記被処理体の被処理面と略同じ高さに設定された平坦面部を備えているので、被処理体の面内に亘って均一なプラズマ領域を形成することできて、均一なプラズマ処理を行うことができる。前記第1のリングは、前記平坦面部と前記凸部とを結ぶ傾斜部を有していてもよい。また第2のリングがプラズマによりエッチングされることにより発生する活性種が被処理体の周縁領域に飛散することが抑えられるので、この活性種による被処理体の表面への悪影響の発生を抑えることができる。
【0013】
ここで前記平坦面部の幅は10mm以上であることが好ましい。また前記第2のリングは、第1のリングを押さえる役割や処理容器内のガスの流れを調整する役割を有するものであり、例えば石英より構成されている。
更に他の発明は、プラズマ処理装置の処理容器の内部に設けられた載置台上の被処理体を周囲から取り囲むように設けられた第1のリングと、この第1のリングを取り囲むように設けられた石英からなる第2のリングと、を備えたリング部材であって、
前記第1のリングは、
内縁から外側に向かって前記被処理体の被処理面と略同じ高さに設定された平坦面部と、
プラズマ環境下において、前記第2のリングがエッチングされることにより発生する酸素ラジカルの前記被処理体への飛散を抑えるために、前記平坦面部の外側に前記第2のリングよりも高くなるように設けられた凸部と、を備えたことを特徴とする。
更にまた他の発明は、プラズマ処理装置の処理容器の内部に設けられた載置台上の被処理体を周囲から取り囲むように設けられた導電性の第1のリングと、この第1のリングを取り囲むように設けられた絶縁性の第2のリングと、を備えたリング部材であって、
前記第1のリングは、内縁から外側に向かって前記被処理体の被処理面と略同じ高さに設定された第1の平坦面部を備え、
前記第2のリングは、内縁から外側に向かって設定された第2の平坦面部と、この第2の平坦面部の外側に、斜め下方向に傾斜するよう設定された傾斜面と、を備え、前記第2の平坦面部は前記第1の平坦面部よりも低い位置に設けられたことを特徴とする。
上記以外の他の発明は、プラズマ処理装置の処理容器の内部に設けられた載置台上の被処理体を周囲から取り囲むように設けられた導電性の第1のリングと、この第1のリングを取り囲むように設けられた絶縁性の第2のリングと、を備えたリング部材であって、
前記第1のリングは、内縁から外側に向かって前記被処理体の被処理面と略同じ高さに設定された平坦面部と、この平坦面部の外側に前記第2のリングよりも高くなるように設けられた凸部と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係るプラズマ処理装置の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態に係るプラズマ処理装置を示す概略断面図であり、図中2は例えばアルミニウム等により円筒状に形成された処理容器であって、この容器2は内部に互いに対向に配設された上部電極3と下部電極4と、を備えている。
【0015】
前記処理容器2の側壁部には被処理体例えば半導体ウエハW(以下「ウエハW」という)を搬入及び搬出するために開口部21,22が形成されており、これら開口部21,22の外側には、処理容器2の内部を気密に保持しながら、前記開口部21,22を開閉するためのゲートバルブ23,24が設けられている。
【0016】
前記下部電極4はウエハの載置台を兼用するものであり、処理容器2の下部に設けられた昇降機構41の上に配設され、これにより昇降自在に構成されている。前記昇降機構41は、例えば油圧シリンダ、又はボールネジとナットの螺合結合機構とこの機構を回転駆動するサーボモータ等の組み合わせ機構等により構成される。前記昇降機構41の周囲と処理容器2の底壁の内壁との間にはベローズ体42が設けられ、これにより処理容器2内に発生したプラズマが下部電極4の下に入り込まないようになっている。
【0017】
このような下部電極4は、ハイパスフィルタ43を介して例えば2MHzの周波数を有する電圧を供給する高周波電源部44に接続されている。前記ハイパスフィルタ43は、前記上部電極3に印加される高周波成分の侵入を阻止するものである。
【0018】
前記下部電極4の上面には、ウエハWを固定するための静電チャック5が設けられている。この静電チャック5は、導電性のシート状の電極板51と、電極板51の表面を狭持するポリイミド層52とを有しており、電極板51は、ウエハWを仮保持するためのクーロン力を発生させる直流電源部53に電気的に接続されている。
【0019】
前記下部電極4の周囲には、例えば石英よりなる環状のベースプレート46が、下部電極と上面の高さ位置が揃えられるように設けられており、前記下部電極4の上面のウエハWの周囲には、前記下部電極4とベースプレートの両方に跨って、導電体例えばシリコン(Si)により形成された、環状の第1のリングをなす内側リング6が設けられている。この内側リング6は、ウエハ端部の濃いプラズマを拡散させ、プラズマの均一性を高めるためのものであり、これにより内側リング6としては電気伝導性に優れるたとえば2Ωのシリコンなどにより構成されることが望ましいが、導電性に限らず半導電性のものにより構成してもよい。
【0020】
この内側リング6の周囲にはベースプレート46の上面に絶縁体例えば石英(SiO2)により形成された第2のリングをなす環状の外側リング7が設けられており、これら内側リング6及び外側リング7は、例えば図2に示すように、夫々例えば下部電極4に載置されたウエハWと同心円状に配設され、リング部材を構成している。
【0021】
前記外側リング7は、内側リング6を下部電極4及びベースプレート46に押さえるカバーリングとしての役割と、内側リング6と共にウエハ端部から内側リング上方までのプラズマの均一性を高める役割と、後述するように処理容器2内のガスの流れを調整する役割と、外側リング7が石英により構成されている場合には、後述するように石英がエッチングされることにより発生する酸素ラジカルによりウエハのエッチングを助けるという役割と、を有するものである。
【0022】
図3には、前記内側リング6と外側リング7の断面図により、下部電極4上に載置されたウエハWと内側リング6と外側リング7との、夫々の上面の高さ位置の関係を示すが、内側リング6と外側リング7とにより、ウエハWの表面(被処理面)と上面の高さが略同じ高さに設定された平坦面部61と、この平坦面部61の外方側に設けられた凸部62と、この凸部62の外方側に設けられ、凸部62よりも上面の高さが低く設定されている部材とを形成するように構成される。
【0023】
具体的には、前記内側リング6は、例えば8インチサイズのウエハを処理する場合、下部電極4に載置されたウエハの外縁から僅かに離れた位置に位置する内端部60を有し、前記ウエハ表面と上面の高さが略同じ高さに設定されている第1の平坦面部61と、この平坦面部61の外方側に設けられた凸部62と、前記平坦面部61と凸部62とを結ぶ傾斜部63とを備えている。また内側リング6の凸部62の外方側は、凸部62よりも高さ位置が低い段部64として形成されており、この段部64の上に外側リング7の内端側が載せられるようになっていて、段部64の上の外側リング表面は平坦面(第2の平坦面部)71として形成され、この平坦面部71の上面の高さは例えば内側リング6の平坦面部61の上面と略同じ高さに設定されている。そして外側リング7の平坦面部71の外方側は外に向かって下側に傾斜する傾斜面部72として形成されている。
【0024】
こうして内側リング6と外側リング7は共に、下部電極4に載置されたウエハ表面と上面が略同じ高さである平坦面部61、71を有し、内側リング6の平坦面部61と外側リング7の平坦面部71との間には凸部62が形成されていることになる。この際内側リング6及び外側リング7の大きさの一例を示すと、例えば8インチサイズのウエハWに対しては、内側リング6全体の幅Aは29.0mm、第1の平坦部61の幅aは18mm、第1の平坦部61の厚さbは6.5mm、傾斜部63の幅cは1mm、凸部62の幅dは10mm、凸部62の厚さeは7.5mm、ウエハWと内側リング6の内端部60との距離fは1mm、第2の平坦面部71の幅gは10mmに設定されている。
【0025】
ここで下部電極4に載置されたウエハ表面と内側リング6の平坦面部61上面の高さが略同じ高さに設定されているとは、これらの高さが後述するようにエッチングによりレジスト膜に形成されるホール(孔部)の深さ方向の傾きが見られない程度に一致していることをいい、例えば両方の上面の高さ位置の差が1mm以内であることをいう。また前記内側リング6と外側リング7との間に凸部62があることに特徴があるが、この凸部62の高さはウエハの周縁領域のエッチングレートがその他の領域に比べて大きくならない程度の高さであればよく、例えば1mm程度であればよい。
【0026】
さらに内側リング6の平坦面部61の幅aは後述の実験例により例えば10mm以上であれば、レジスト膜のエッチングレートの面内均一性が高く、エッチングにより形成されるホールの深さ方向の傾きも発生しないことが確認されている。
【0027】
前記処理容器2の例えば底壁のベローズ体42の外側には、排気管47を介して真空ポンプ48が接続されており、処理容器2内の処理ガスは下部電極4の周囲から排気されるようになっている。この際外側リング7の傾斜面72に沿って排気流が流れていき、これにより下部電極4の周囲から均一に排気され、このように外側リング7は処理容器2の内部のガスの流れを調整する役割を果たしている。
【0028】
前記上部電極3は、処理容器2の上部側に下部電極4に対向して設けられており、中空構造であって、下側部分には多数のガス拡散孔30が穿設されている。これにより上部電極3には下部電極4に載置されたウエハWの略全面と対向するようにガス供給領域が形成されることとなる。このような上部電極3にはガス供給管31が接続されており、ガス供給管31から供給された処理ガスがガス拡散孔30を介して処理容器2内部に供給されるようになっている。
【0029】
この上部電極3にはローパスフィルタ32を介して、例えば高周波電源部44よりも高い周波数、例えば60MHzの周波数を有する電力を供給するための高周波電源部33に接続されている。前記ローパスフィルタ32は下部電極4に印加される高周波成分の侵入を阻止する働きを有する。上部電極3の周囲には、環状の石英により構成されたシールドリング34が上部電極3の外周部に嵌め込まれるように設けられており、これにより上部電極3を固定している図示しないネジをプラズマから保護するようになっている。
【0030】
続いて前記プラズマ処理装置の作用について説明する。先ずゲートバルブ23,24を開放し、図示しないロードロック室からウエハWを処理容器2内に搬入して、下部電極4の静電チャック5上に載置し、この後ゲートバルブ23,24を閉じる。この際搬入されるウエハWは、例えば表面のレジスト膜に所定のパターンが形成されたレジストマスクが形成されたものである。次いで排気管47を介して真空ポンプ48により処理容器2内を所定の真空雰囲気に排気する一方、ガス供給管31により処理ガス例えばエッチングガスを所定の流量で導入し、このエッチングガスを上部電極3に設けられたガス拡散孔30を介して均一に拡散させる。
【0031】
こうして処理容器2内を例えば数mTorr〜数十mTorrの真空度に維持すると共に、上部電極3に高周波電源部33から例えば60MHzの高周波電圧を与え、これにより所定時間例えば1秒以下のタイミングをあけて、下部電極4に高周波電源44から例えば2MHzの高周波電圧を印加し、両電極間にプラズマを発生させる。このプラズマの発生によりウエハWは静電チャック5上に強固に吸着保持される。
【0032】
一方発生したプラズマ中の反応性イオンによりウエハ表面に形成されたレジストマスクがエッチングされる。この際石英よりなる外側リング7はエッチングされて酸素ラジカルを発生し、この酸素ラジカルはウエハ表面のレジストマスクのエッチングに利用される。
【0033】
ここでウエハWの外側に導電性または半導電性よりなる内側リング6が設けられており、この内側リング6の外側に絶縁性の外側リング7が設けられているため、ウエハ端部の濃いプラズマが内側リング6に引き寄せられる状態で拡散し、さらに外側リング7上のプラズマが内側リング6に引き寄せられるため、ウエハWの端部から内側リングの上方側までプラズマの密度がほぼ均一になる。
【0034】
この際内側リング6を、ウエハ表面と上面の高さがほぼ同じに設定された平坦面部61とこの平坦面部61の外方側に設けられた凸部62とを備えるように構成すると共に、隣接する外側リング7の上面が内側リング6の凸部62よりも低くなるように構成しているので、ウエハW表面のレジスト膜のエッチングレートは、例えば図4に示すように、周縁領域においてもエッチングレートの跳ね上がりや、急激な落ち込みなどの発生が抑えられてウエハの面内においてほぼ均一になり、これによりウエハ面内において均一なエッチング処理を行うことができる。
【0035】
このようにエッチングレートの跳ね上がり現象が抑えられるのは、プラズマにるエッチングによって外側リング7から発生した酸素ラジカルが、例えば図5(a)に示すように、外側リング7の上面は隣接する凸部62の上面よりも低いため、前記酸素ラジカルが凸部62を越えられずにウエハWの外周縁近傍領域に直接飛散してこない。これに対し例えば図5(b)に示すように、内側リング6に凸部62を設けず、内側リング6とウエハWと外側リング7との夫々の上面の高さがほぼ同じである場合には、外側リング7からウエハWの周縁領域まで酸素ラジカルが直接飛散していくので、この領域ではこの酸素ラジカルによりレジスト膜が燃焼し、この熱によりエッチングレートが大きくなってしまう。このように内側リング6に凸部62を設けると、ウエハの周縁領域のレジスト膜が酸素ラジカルで燃焼し、これによりエッチングレートが大きくなるといったことが起こらないので、エッチングレートが急激に大きくなる現象の発生が抑えられると考えられる。
【0036】
また後述の実験例により明らかなように、ウエハ表面のレジスト膜にエッチングより形成するホールの深さ方向の傾きも抑えられる。このようにホールの深さ方向の傾きが抑えられるのは、次のような理由に基づくものと考えられる。つまり内側リング6は導電性の高いシリコンにより形成されており、内側リング6のウエハに隣接する側は、ウエハの表面と上面の高さ位置が揃えられていて、第1の平坦面部61が10mm以上とある程度の長さに設定されているので、ウエハに隣接する内側リング6表面に対し、電界は垂直に入射する方向を向く(図6(a)参照)。ここでエッチングに用いるイオンは電界の方向に沿って運動するので、前記イオンはウエハの周縁領域においても垂直に入射し、これによりウエハの周縁領域のホールにおいても垂直にエッチングが行われる。またこのようにウエハの周縁領域においても電界が垂直に入射する方向を向いていることから、高い効率で面内均一性の高いプラズマ処理を行うことができ、エッチングレートの高い面内均一性を確保できることになる。
【0037】
一方内側リング6の凸部がウエハに近すぎると、内側リング6は導電性であるので、凸部62に対して電界は曲がった状態で入射する方向に傾いてしまう(図6(b)参照)。このためこの影響を受け、凸部62に近いウエハの周縁領域においては、前記エッチングに用いるイオンが曲がった状態で入射し、これによりウエハの周縁領域のホールでは斜めにエッチングされるので、ホールの深さ方向の傾きが発生するためと考えられる。
【0038】
また従来のように、内側リング全体の厚さを大きくすると、図6(c)に示すように、電界ベクトルが外側に傾くので、ウエハの周縁領域においては電界が外側を向いてしまい、入射電子は電界の方向に従うのでホールの曲がりが発生すると考えられる。またこのようにウエハWの周縁領域ではエッチングに用いるイオンが傾いて入射するので、その他の領域に比べて当該領域ではエッチングレートが急激に小さくなってしまう。
【0039】
以上のように本実施の形態では、ウエハの面内全体に亘って均一なプラズマ処理を行うことができるので、ウエハ面内のエッチングレートをほぼ均一に揃えることができる。このためレジストマスクの開いている領域がウエハの中央部と周縁領域との間で異なるといったことがなく、線幅の均一性を確保することができる。またレジスト膜が無くなって被マスク面が露出してしまうといったおそれもない。
【0040】
さらにウエハの周縁領域までエッチングレートが均一であるので、ウエハの外端縁付近までデバイス領域を広げることができ、デバイスの歩留まりを高めることができる。さらにまたプラズマにより外側リング7から発生する活性種のウエハWの周縁領域への直接の飛散が抑えられるので、外側リング7の材質がウエハWの処理に与える影響が小さくなり、外側リング7の材質の選定の際の自由度が高くなる。
【0041】
続いて本発明の他の実施の形態について説明する。この実施の形態は、図7に示すように、内側リング8上面より外側リング9上面の高さを低く設定するものである。内側リング8は上述の実施の形態のように凸部が設けられているものであっても、凸部が設けられていない平坦なものであってもよいが、外側リング9上面の高さ位置は隣接する内側リング8上面の高さ位置よりも例えば1mm低くなるように設定されている。この際外側リング8上面の高さ位置と隣接する内側リング8上面の高さ位置との差は、ウエハの周縁部のエッチングレートがその他の領域に比べて大きくならない程度の高さであればよい。
【0042】
この実施の形態の凸部がもうけられていない構成の内側リング8と外側リング9の大きさの一例を示すと、内側リング8の幅hは29mm、厚さiは6.5mm、外側リング9の平坦面の幅jは10mm、内側リング8の内端部80と静電チャック5上のウエハWの外縁との距離kは1mm、内側リング8と外側リングとの高さの差lは1mmである。
【0043】
このような構成においても、外側リング9上面は内側リング8上面よりも高さが低く設定されているので、外側リング9がプラズマにエッチングされることにより当該外側リング9から発生した酸素ラジカルが内側リング8を飛び越えることができないので、ウエハの周縁領域が当該酸素ラジカルにより燃焼するといったことが起こるおそれがない。このためエッチングレートをウエハ面内に亘って揃えることができ、均一な処理を行うことができる。
【0044】
【実施例】
続いて上述の第1の実施の形態の効果を確認するために行った実験例1と第2の実施の形態の効果を確認するために行った実験例2について説明する。
{実験例1}
先ず図8(a)〜(e)に示すように、5つのタイプの内側リング6,6´(内側リング6´は凸部が設けられていないタイプ)を用意し、同じ処理条件でエッチングを行って、エッチング処理の均一性を検査した。ここで5つのタイプの内側リング6,6´について説明すると、次の通りである。
(実験条件)
図8(a)のタイプ(実施例1)は、上述の実施の形態で説明したタイプの内側リング6であり、平坦面部61の長さaが20mmであり、平坦面部61の厚さが6.5mm、凸部62の厚さが7.5mmのもの
図8(b)のタイプ(実施例2)は、実施例1の内側リング6において、平坦面部61の長さaを10mmとしたもの
図8(c)のタイプ(比較例1)は、内側リング6´が平坦であり、厚さが6.5mmであって、ウエハ表面と内側リング6´表面との高さ位置がほぼ同じであるもの
図8(d)のタイプ(比較例2)は、内側リング6´が平坦であり、厚さが7.5mmであって、ウエハ表面より内側リング表面の高さ位置が高いもの
図8(e)のタイプ(比較例3)は、内側リング6´が、内側から外側に向けて徐々に高くなるように傾斜していき、内側の厚さが6.5mm、外側の厚さが7.5mmであって、ウエハ表面の高さ位置とほぼ同じ厚さからウエハ表面より高さ位置が高くなる厚さに変化するもの
またこのとき処理条件は以下の通りとし、実施例1,2と比較例1,2の内側リング6,6´に対してプロセス圧力を変えて同様の実験を行った。またエッチング処理の均一性は、ウエハ面内の37点のエッチングレートを測定し、この最大値と最小値と平均値とにより、(最大値−最小値)/(2×平均値)を算出して求めた。
(実験結果)
この結果を図9に示すが、これにより比較例1のタイプの内側リングに対して、実施例1,2のタイプと比較例2のタイプの内側リングを用いた場合にはエッチング処理の均一性が向上することが認められた。
【0045】
またエッチングレートのウエハ面内分布の形状を数値化したところ、図10に示す結果が得られた。図10では最も大きいプロット(実施例1を例にすると、最も大きい▲)が15mTorr、最も小さいプロットが35mTorr、間の大きさのプロットが25mTorrの結果を示している。また図10(a)中xは、ウエハの中央とウエハの外端縁から15mm内側の位置のエッチングレートの差、yはウエハの外端縁から15mm内側の位置とウエハの外端縁から3mm内側の位置のエッチングレートの差であり、x,yが小さいほど分布が平坦であり、原点(0,0)に近いほど均一性がよいことを示している。またグラフの周りに、グラフのエリア毎のエッチングレート分布の形状を示す。
【0046】
この結果より、実施例1,2のエッチングレート分布は原点に近いところにプロットされており、比較例1,2に比べてエッチングレートの均一性が向上していることが認められた。また実施例1,2は比較例1,2に対して、データの推移の程度が小さく、エッチングレートの均一性の圧力依存性が緩和されていることが理解される。
【0047】
また実施例1,2、比較例2,3の内側リングを用いて、上述の処理条件にて、幅0.3μm、深さ2μmのホールを1.2μm間隔で形成するエッチング処理を行い、このホールの形状を断面SEMにて確認したところ、図11に示す結果が得られた。ここで位置1はウエハ中央、位置2はウエハの外端縁から4.0mm内側の位置、位置3はウエハの外端縁から2.5mm内側の位置である。この結果実施例1,2の内側リング6ではウエハの外端縁2.5mmの位置までホールの曲がりが認められなかったのに対し、比較例2,3の内側リングではウエハの外端縁4.0mmの位置と、2.5mmの位置にてホールの曲がりが認められた。比較例2,3の内側リング6´でホールの曲がりが発生するのは、比較例2ではウエハWの外端縁付近では電界が外側に向いており、比較例3では傾斜面が長いためこれに沿って電界が曲がってしまい、このように電界が曲がるとエッチングに用いるイオンの入射方向は電界の方向に向いてしまうので、これにより夫々のケースでホールの伸びる方向が曲がってしまうためと考えられる。
【0048】
以上の実験により内側リング6の内側をウエハ表面の高さ位置と略一致する高さの平坦面部61とし、外側をこの平坦面部61より高さ位置の高い凸部62として、内側リング6全体の幅を29mm、凸部62の高さを1mm程度、平坦面部61の長さを10mm以上とすることにより、エッチングレートの跳ね上がり現象や落ち込み、ホールの曲がりの発生を抑えて、エッチングレートが均一になり、均一なエッチング処理を行うことが確認された。
{実験例2}
(実験条件)
この実験では、図12(a),(b)、図13(a),(b)に示すタイプの内側リングと外側リングを用意し、同じ処理条件でエッチングを行って、エッチング処理の均一性を検査した。ここで図12(a)のタイプ(実施例3)は、上述の実施の形態で説明したタイプの内側リング6であり、平坦面部61の長さaが20mm、平坦面部61の厚さが6.5mm、凸部62の厚さが7.5mmのものであって、外側リング7の上面の高さが凸部62の上面から1mm低く設定されているもの、図12(b)のタイプ(比較例4)は、内側リング6は実施例3と同じであり、外側リング7´の上面の高さが凸部62の上面と同じ高さに設定されているものである。
【0049】
また図13(a)のタイプ(実施例4)は、凸部が設けられていないタイプの内側リング8であり、幅が29mm、厚さが6.5mmのものであって、外側リング9の上面の高さが内側リング8の上面より1mm低く設定されているもの、図13(b)のタイプ(比較例5)は、内側リング8は実施例4と同じであり、外側リング9´の上面の高さが凸部62の上面と同じ高さに設定されているものである。
【0050】
またエッチング条件は以下の通りとし、プロセス圧力を変えて同様の実験を行った。またエッチング処理の均一性は実験例1と同じ手法により求めた。
(実験結果)
実施例3,比較例4の結果については図14に、実施例3は□、比較例4は○として夫々示す。この特性図においては、変動幅が小さい程エッチングレートの均一性が良いということを示しており、実施例3の方が変動幅が小さく、エッチングレートの均一性が良好であることが確認された。また実施例4,比較例5の結果についても実施例4の方が変動幅が小さく、エッチングレートの均一性が良好であることが確認された。
【0051】
これらの結果により外側リング上面の高さを内側リングの上面より低く設定することにより、ウエハの周縁領域でのエッチングレートの跳ね上がり現象や急激な下降を抑え、エッチングレートの高い面内均一性を確保できることが確認された。また実施例3,4についてエッチングにより形成されるホールの深さ方向の曲がりの発生状態を調べたところ、ホールの曲がりの発生は認められなかった。
【0052】
以上において、本発明ではプラズマ処理としてエッチング処理を例に挙げて説明したが、本発明はプラズマCVD装置やプラズマアッシング装置、プラズマスパッタ装置などの他のプラズマ処理装置にも適用することができる。またプラズマの発生手法としては本発明の構成に限らず、コイル型の高周波アンテナにより高周波電力を印加することによりプラズマを発生させるものであってもよい。さらに被処理体としては、半導体ウエハに限らず、LCD基板などであってもよい。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、第1のリングと第2のリングの形状の最適化を図ることにより、被処理体の面内に亘って均一なプラズマ処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るプラズマ処理装置の一実施の形態における全体構造を示す概略断面図である。
【図2】前記プラズマ処理装置に用いられる内側リングと外側リングとを示す平面図である。
【図3】前記内側リングと外側リングとを示す断面図である。
【図4】上記のプラズマ処理装置を用いてエッチング処理を行った場合のエッチングレートを示す特性図である。
【図5】上記の内側リングと外側リングの作用を説明するための断面図である。
【図6】上記の内側リングと外側リングの作用を説明するための断面図である。
【図7】本発明に係るプラズマ処理装置の他の実施の形態の要部を説明するための断面図である。
【図8】実験例1で使用した内側リングの形状を説明するための断面図である。
【図9】前記実験例で得られたエッチングレートを示す特性図である。
【図10】前記実験例で得られたエッチングレートを示す特性図である。
【図11】前記実験例で得られたエッチングにより形成されたホールの形状を示す特性図である。
【図12】実験例2で使用した内側リングの形状を説明するための断面図である。
【図13】実験例2で使用した他の内側リングの形状を説明するための断面図である。
【図14】前記実験例で得られたエッチングレートを示す特性図である。
【図15】従来のプラズマ処理装置を説明するための断面図である。
【図16】従来の内側リングを説明するための断面図である。
【図17】従来のプラズマ処理装置で処理を行った場合のエッチングレートを示す特性図である。
【符号の説明】
2 処理容器
3 上部電極
31 ガス供給管
33 高周波電源部
4 下部電極
44 高周波電源部
49 真空ポンプ
5 静電チャック
6 内側リング
61 第1の平坦面部
62 凸部
63 傾斜部
7 外側リング
71 第2の平坦面部
72 傾斜面部
Claims (13)
- 載置台が内部に設けられた処理容器と、前記載置台上の被処理体を取り囲むように設けられた導電性の第1のリングと、この第1のリングを取り囲むように設けられた絶縁性の第2のリングと、を備え、前記載置台上に載置された被処理体をプラズマにより処理するプラズマ処理装置において、
前記第1のリングは、内縁から外側に向かって前記被処理体の被処理面と略同じ高さに設定された平坦面部と、この平坦面部の外側に前記第2のリングよりも高くなるように設けられた凸部と、を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。 - 前記第1のリングは、前記平坦面部と、前記凸部とを結ぶ傾斜部を有することを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
- 載置台が内部に設けられた処理容器と、前記載置台上の被処理体を取り囲むように設けられた導電性の第1のリングと、この第1のリングを取り囲むように設けられた絶縁性の第2のリングと、を備え、前記載置台上に載置された被処理体をプラズマにより処理するプラズマ処理装置において、
前記第1のリングは、内縁から外側に向かって前記被処理体の被処理面と略同じ高さに設定された第1の平坦面部を備え、
前記第2のリングは、内縁から外側に向かって設定された第2の平坦面部と、この第2の平坦面部の外側に、斜め下方向に傾斜するよう設定された傾斜面と、を備え、前記第2の平坦面部は前記第1の平坦面部よりも低い位置に設けられることを特徴とするプラズマ処理装置。 - 前記平坦面部の幅は、10mm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
- 被処理体の略全面と対向するようにガス供給領域を有する上部電極を設けると共に、載置台を下部電極として構成し、上部電極と下部電極との間に高周波電力を印加して処理ガスをプラズマ化することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
- 前記第2のリングは、第1のリングを押さえる役割を有するものであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
- 前記第2のリングは、処理容器内のガスの流れを調整する役割を有するものであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
- 前記第2のリングは、石英からなることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
- プラズマ処理は、レジストマスクが形成された被処理体に対して行うエッチングであることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
- プラズマ処理装置の処理容器の内部に設けられた載置台上の被処理体を周囲から取り囲むように設けられた第1のリングと、この第1のリングを取り囲むように設けられた石英からなる第2のリングと、を備えたリング部材であって、
前記第1のリングは、内縁から外側に向かって前記被処理体の被処理面と略同じ高さに設定された平坦面部と、
プラズマ環境下において、前記第2のリングがエッチングされることにより発生する酸素ラジカルの前記被処理体への飛散を抑えるために、前記平坦面部の外側に前記第2のリングよりも高くなるように設けられた凸部と、を備えたことを特徴とするリング部材。 - プラズマ処理装置の処理容器の内部に設けられた載置台上の被処理体を周囲から取り囲むように設けられた導電性の第1のリングと、この第1のリングを取り囲むように設けられた絶縁性の第2のリングと、を備えたリング部材であって、
前記第1のリングは、内縁から外側に向かって前記被処理体の被処理面と略同じ高さに設定された第1の平坦面部を備え、
前記第2のリングは、内縁から外側に向かって設定された第2の平坦面部と、この第2の平坦面部の外側に、斜め下方向に傾斜するよう設定された傾斜面と、を備え、前記第2の平坦面部は前記第1の平坦面部よりも低い位置に設けられたことを特徴とするリング部材。 - プラズマ処理装置の処理容器の内部に設けられた載置台上の被処理体を周囲から取り囲むように設けられた導電性の第1のリングと、この第1のリングを取り囲むように設けられた絶縁性の第2のリングと、を備えたリング部材であって、
前記第1のリングは、内縁から外側に向かって前記被処理体の被処理面と略同じ高さに設定された平坦面部と、この平坦面部の外側に前記第2のリングよりも高くなるように設けられた凸部と、を備えたことを特徴とするリング部材。 - 前記平坦面部の幅は、10mm以上であることを特徴とする請求項10または12に記載のリング部材。
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