JP4209499B2 - 多環式多価アルコール類の製造法 - Google Patents

多環式多価アルコール類の製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アダマンタンなどの昇華性を有する多環式炭化水素類から、例えば1,3−アダマンタンジオールなどの対応する多環式多価アルコール類を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
多環式炭化水素類は、3次元的な対称構造を有していたり、各環が互いに安定化する構造を有しているため、特異な機能を有する。そのため、多環式炭化水素類にヒドロキシル基を複数個導入し、ポリエステルやポリカーボネートなどに誘導することにより、機能性を高めた種々の重合体を得ることができる。
このような重合体は、例えば、導光損失性、屈折率、複屈折率などの光学的特性、耐湿性、耐熱性、熱膨張率などの特性において高いレベルを有しており、光学材料、有機ガラス用透明樹脂コーティング剤、導電性ポリマー、写真感光性材料、蛍光性材料などへの利用が期待されている。
【0003】
アダマンタンなどの多環式炭化水素類のアルコール体の製造方法として、多環式炭化水素類を過剰量の臭素を用いて臭素化し、生成した臭素化物を過剰の硝酸銀や硫酸銀で加水分解する方法(特開平2−196744号公報)、多環式炭化水素類を濃酢酸溶液中、クロム酸を用いて酸化する方法(特公昭42−16621号公報)、触媒としてコバルト塩を用いて、融解アダマンタンを酸素酸化する方法(特公昭42−26792号公報)などが提案されている。
また、特開平9−327626号公報には、アダマンタンなどの多環式炭化水素類を特定構造を有するイミド化合物を触媒として酸素により酸化する方法が開示されている。この方法によれば、温和な条件下で、対応するジオール体などを収率よく得ることができる。
【0004】
しかし、多環式炭化水素類のなかでも、アダマンタン、ノルボルナン、ショウノウなどの昇華性を有する化合物は、溶媒に溶解した状態で加熱したり、気体を供給すると、揮発しやすいという特性を有する。そのため、このような化合物を基質(反応成分)として酸化する際には、基質が反応操作中に揮発して反応器の気相部や配管の内壁に固体状態で付着し、配管等を閉塞させるという問題が生じる。また、多環式炭化水素類を酸化すると、ヒドロキシル基の個数の異なる種々のアルコール類が得られるため、例えばジオール類を選択的に得ることは困難な場合が多い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、昇華性多環式炭化水素類が反応器や配管の内壁に付着するのを抑制し、反応操作を円滑に行うことのできる多環式多価アルコール類の製造法を提供することにある。
本発明の他の目的は、昇華性多環式炭化水素類の反応器内壁等への付着を抑制しつつ、高い選択率で所望の多環式多価アルコール類(例えば、ジオール類)を製造する方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、アダマンタンから1,3−アダマンタンジオールを工業的に効率よく製造できる方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、昇華性を有する多環式炭化水素類を空間部を有する反応系において酸化する際、温度条件の異なる2つの反応工程を組み合わせると、前記多環式炭化水素類が反応器や配管内壁に付着するのを抑制しつつ、高い選択率で対応する多環式多価アルコール類を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、昇華性を有する多環式炭化水素類を酸素酸化して、対応する多環式多価アルコール類を製造する方法であって、 A1 )アダマンタンを70℃以上95℃以下の温度条件下で酸化する第1酸化反応工程と、( B1 )次いで40℃以上70℃未満の温度条件下で酸化する第2酸化反応工程とにより1,3−アダマンタンジオールを生成させることを特徴とする多環式多価アルコール類の製造法を提供する。
なお、本明細書では、昇華性を有する多環式炭化水素類を酸素酸化して、対応する多環式多価アルコール類を製造する方法であって、温度条件の異なる2つの反応工程、(A)相対的に高温条件下で反応を行う第1酸化反応工程、及び(B)次いで相対的に低温条件下で反応を行う第2酸化反応工程を含む多環式多価アルコール類の製造法についても説明する。本明細書において、多環式多価アルコール類(ポリオール類)とは、ヒドロキシル基を2以上有する多環式アルコール類を意味する。また、「昇華性」とは、固体が固体状態から直接蒸発する性質のみならず、固体が溶媒に溶解した状態で揮発する性質をも意味するものとする。
【0008】
【発明の実施の形態】
[昇華性多環式炭化水素類]
酸化反応に供する基質としては、昇華性を有する多環式炭化水素類であれば特に限定されず、広範な化合物を使用できる。このような多環式炭化水素類には、(i)非芳香族性炭素環に芳香族炭素環が縮合した縮合環炭化水素類、(ii)2〜4環程度の橋かけ環式炭化水素類が含まれる。より具体的には、前記多環式炭化水素類として、ノルボルナン、カンファー(ショウノウ)、ピネン、ピナン、カンフェン、ボルネンなどの2環系橋かけ環式炭化水素類;アダマンタンなどの3環系橋かけ環式炭化水素類、又はこれらの誘導体などの橋頭位に炭素−水素結合を有する多環式化合物などが挙げられる。好ましい多環式水素類には、橋かけ環式炭化水素類が含まれる。
【0009】
これらの化合物は、多環式炭化水素類の種類に応じて、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素原子)、オキソ基、置換オキシ基(例えば、C1-4アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(例えば、C1-4アルコキシ−カルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、アルキル基(例えば、C1-4アルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)、複素環基などを有していてもよい。
【0010】
なお、酸化反応には、前記多環式炭化水素類とともに、該多環式炭化水素類から多環式多価アルコール類を生成させる際の中間体に相当するモノオール類を供給してもよい。例えば、アダマンタンから1,3−アダマンタンジオールを製造する場合には、アダマンタンとともに1−アダマンタノールを反応系に供給してもよい。
【0011】
[酸化触媒及び酸素]
基質を酸素酸化する際に用いる触媒としては、基質の酸化を触媒する公知乃至周知の広範囲の物質を使用できる。このような酸化触媒のなかでも、下記式(1)
【化2】
Figure 0004209499
(式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R1及びR2は互いに結合して二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよい。Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示し、nは1〜3の整数を示す)
で表されるイミド化合物を触媒として用いると、温和な条件下で、基質を効率的に酸化できる。
【0012】
前記式(1)において、置換基R1及びR2のうちハロゲン原子には、ヨウ素、臭素、塩素およびフッ素原子が含まれる。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基などのC1-10アルキル基、好ましくはC1-6アルキル基、特にC1-4アルキル基が挙げられる。アリール基には、フェニル基、ナフチル基などが含まれ、シクロアルキル基には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などが含まれる。
【0013】
アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基などのC1-10アルコキシ基、好ましくはC1-6アルコキシ基、特にC1-4アルコキシ基が含まれる。アルコキシカルボニル基には、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル基などのC1-10アルコキシ−カルボニル基、好ましくはC1-6アルコキシ−カルボニル基、特にC1-4アルコキシ−カルボニル基が含まれる。アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ビバロイル基などのC1-6アシル基が例示できる。
【0014】
前記置換基R1及びR2は、同一又は異なっていてもよい。また、前記式(1)において、R1およびR2は互いに結合して、二重結合、または芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよい。好ましい芳香族性又は非芳香族性環は5〜12員環、特に6〜10員環程度であり、複素環又は縮合複素環であってもよいが、炭素環である場合が多い。このような環には、例えば、非芳香族性炭素環(シクロヘキサン環などの置換基を有していてもよいシクロアルカン環、シクロヘキセン環などの置換基を有していてもよいシクロアルケン環など)、非芳香族性橋かけ環(5−ノルボルネン環などの置換基を有していてもよい橋かけ式炭素環など)、ベンゼン環、ナフタレン環などの置換基を有していてもよい芳香族環が含まれる。前記環は、芳香族環で構成される場合が多い。
【0015】
前記環は、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換又は無置換アミノ基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。アルキル基には、前記例示のアルキル基、特に炭素数1〜6程度のアルキル基が含まれ、ハロアルキル基には、トリフルオロメチル基などの炭素数1〜4程度のハロアルキル基、アルコキシ基には、前記例示のアルコキシ基、特に炭素数1〜4程度のアルコキシ基、アルコキシカルボニル基には、前記と同様のアルコキシカルボニル基、特にアルコキシ部分の炭素数が1〜4程度のアルコキシカルボニル基が含まれる。また、アシル基としては、前記と同様のアシル基、特に炭素数1〜6程度のアシル基が例示され、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素原子などが例示できる。
好ましいイミド化合物には、下記式で表される化合物が含まれる。
【0016】
【化3】
Figure 0004209499
(式中、R3〜R6は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子を示す。R3〜R6は、隣接する基同士が互いに結合して芳香族性又は非芳香族性の環を形成していてもよい。R1、R2およびnは前記に同じ)
置換基R3〜R6において、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ハロゲン原子には、前記R1及びR2が互いに結合して形成する環が有していてもよい置換基と同様の置換基が含まれる。置換基R3〜R6は、通常、水素原子、炭素数1〜4程度のアルキル基、カルボキシル基、ニトロ基、ハロゲン原子である場合が多い。R3〜R6が互いに結合して形成する環としては、前記R1及びR2が互いに結合して形成する環と同様であり、特に芳香族性又は非芳香族性の5〜12員環が好ましい。
【0017】
前記式(1)において、Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示し、窒素原子NとXとの結合は単結合又は二重結合である。また、nは、通常、1〜3程度、好ましくは1又は2である。式(1)で表されるイミド化合物は酸化反応において、単独で又は二種以上混合して使用できる。
【0018】
前記式(1)で表される化合物は、慣用のイミド化反応、例えば、対応する酸無水物とヒドロキシルアミンNH2OHとを反応させ、酸無水物基の開環及び閉環を経てイミド化する方法により調製できる。前記イミド化合物に対応する酸無水物には、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸などの飽和又は不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物)、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸1,2−無水物などの飽和又は不飽和非芳香族性環状多価カルボン酸無水物(脂環式多価カルボン酸無水物)、無水ヘット酸、無水ハイミック酸などの橋かけ環式多価カルボン酸無水物(脂環式多価カルボン酸無水物)、無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ニトロフタル酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族多価カルボン酸無水物などが含まれる。
【0019】
好ましいイミド化合物としては、例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミドなど、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン酸イミドなど)などが挙げられる。特に好ましいイミド化合物には、脂環式多価カルボン酸無水物又は芳香族多価カルボン酸無水物、なかでも芳香族多価カルボン酸無水物から誘導されるN−ヒドロキシイミド化合物、例えば、N−ヒドロキシフタル酸イミドなどが含まれる。
【0020】
酸化触媒は、式(1)で表されるイミド化合物と助触媒とで構成してもよい。助触媒には、金属化合物、第4級アンモニウム塩などが含まれる。
【0021】
前記金属化合物を構成する金属元素としては、特に限定されず、周期表1〜15族の金属元素の何れであってもよい。なお、本明細書では、ホウ素Bも金属元素に含まれるものとする。例えば、前記金属元素として、周期表1族元素(Li、Na、Kなど)、2族元素(Mg、Ca、Sr、Baなど)、3族元素(Sc、ランタノイド元素、アクチノイド元素など)、4族元素(Ti、Zr、Hfなど)、5族元素(Vなど)、6族元素(Cr、Mo、Wなど)、7族元素(Mnなど)、8族元素(Fe、Ruなど)、9族元素(Co、Rhなど)、10族元素(Ni、Pd、Ptなど)、11族元素(Cuなど)、12族元素(Znなど)、13族元素(B、Al、Inなど)、14族元素(Sn、Pbなど)、15族元素(Sb、Biなど)などが挙げられる。好ましい金属元素には、遷移金属元素(周期表3〜12族元素)が含まれる。なかでも、周期表5〜11族元素、特に、5族、6族、7族及び9族元素が好ましく、とりわけ、V、Mo、Co、Mnなどが好ましい。金属元素の原子価は特に制限されないが、0〜6価程度である場合が多い。
【0022】
金属化合物としては、前記金属元素の単体、水酸化物、酸化物(複合酸化物を含む)、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、オキソ酸、オキソ酸塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩など)、イソポリ酸、ヘテロポリ酸などの無機化合物;有機酸塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、青酸塩、ナフテン酸塩、ステアリン酸塩など)、錯体などの有機化合物が挙げられる。前記錯体を構成する配位子としては、OH(ヒドロキソ)、アルコキシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなど)、アシル(アセチル、プロピオニルなど)、アルコキシカルボニル(メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなど)、アセチルアセトナト、シクロペンタジエニル基、ハロゲン原子(塩素、臭素など)、CO、CN、酸素原子、H2O(アコ)、ホスフィン(トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィンなど)のリン化合物、NH3(アンミン)、NO、NO2(ニトロ)、NO3(ニトラト)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェナントロリンなどの窒素含有化合物などが挙げられる。
【0023】
金属化合物の具体例としては、例えば、コバルト化合物を例にとると、水酸化コバルト、酸化コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、リン酸コバルトなどの無機化合物;酢酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルトなどの有機酸塩;コバルトアセチルアセトナトなどの錯体等の2価又は3価のコバルト化合物などが挙げられる。また、バナジウム化合物の例としては、水酸化バナジウム、酸化バナジウム、塩化バナジウム、塩化バナジル、硫酸バナジウム、硫酸バナジル、バナジン酸ナトリウムなどの無機化合物;バナジウムアセチルアセトナト、バナジルアセチルアセトナトなどの錯体等の2〜5価のバナジウム化合物などが挙げられる。さらに、モリブデン化合物の例としては、水酸化モリブデン、酸化モリブデン、塩化モリブデン、臭化モリブデン、硫化モリブデン、モリブデン酸又はその塩、リンモリブデン酸又はその塩、ケイモリブデン酸又はその塩などの無機化合物;モリブデンカルボニル、ビス(アセチルアセトナト)ジオキソモリブデン、クロロトリカルボニル(η−シクロペンタジエニル)モリブデン、ジブロモビス(η−シクロペンタジエニルモリブデンなどの錯体等の0〜6価のモリブデン化合物などが挙げられる。他の金属元素の化合物としては、前記コバルト、バナジウム又はモリブデン化合物に対応する化合物などが例示される。金属化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0024】
前記式(1)で表されるイミド化合物の使用量は、広い範囲で選択でき、例えば、基質1モルに対して0.0001〜1モル、好ましくは0.001〜0.5モル、さらに好ましくは0.01〜0.3モル程度である。また、助触媒の使用量も、反応性および選択率を低下させない範囲で適当に選択でき、例えば、基質1モルに対して0.0001〜0.7モル、好ましくは0.0001〜0.5モル、さらに好ましくは0.0001〜0.3モル程度であり、0.0005〜0.1モル程度である場合が多い。
【0025】
酸化反応に利用される酸素は、活性酸素であってもよいが、分子状酸素を利用するのが有利である。分子状酸素は特に制限されず、純粋な酸素を用いてもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスで希釈した酸素を用いてもよい。操作性および安全性のみならず経済性などの点から、空気を使用するのが好ましい。
【0026】
酸素の使用量は、基質の種類に応じて、例えば、基質1モルに対して0.5モル以上(例えば、1モル以上)、好ましくは1〜100モル、さらに好ましくは2〜50モル程度である。
【0027】
[酸化反応]
酸化反応は、通常、反応に不活性な溶媒中で行われる。前記溶媒としては、例えば、酢酸、プロピオン酸などの有機酸;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド;t−ブタノール、t−アミルアルコールなどのアルコール;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル、及びこれらの混合溶媒などが挙げられる。溶媒としては、有機酸、ニトリル、ハロゲン化炭化水素などを用いる場合が多い。
【0028】
本発明の方法の主たる特徴は、温度条件の異なる2つの反応工程、すなわち(A)相対的に高温条件下で反応を行う第1酸化反応工程と、(B)次いで相対的に低温条件下で反応を行う第2酸化反応工程とを含む点にある。この方法では、最初に高温で反応させることにより、中間体であるモノオール類を速やかに生成させる。多環式炭化水素類は、ヒドロキシル基が導入されると、その昇華性が著しく低下する。そのため、反応の初期段階で、多環式炭化水素類をモノオール類に速やかに変換することにより、全反応工程を通じて、昇華による反応器や配管への付着、配管の閉塞等を顕著に抑制できる。そして、本発明の方法では、次いで低温下で反応を行うため、ヒドロキシル基導入以外の副反応を抑制できるとともに、アルコール類のなかでも低次酸化生成物、例えばジオール類、又はモノオール類及びジオール類が高い選択率で生成する。前記モノオール類は、反応系にリサイクルすることによりジオール類に変換できるため、トータルとして、ジオール類を高い選択率で得ることができる。なお、第1酸化反応工程(A)及び(B)の条件(例えば、反応温度、反応時間など)を適宜調整することにより、同様にして、トリオール類(又は、それ以上のヒドロキシル基を有するポリオール類)を高い選択率で得ることもできる。
【0029】
これに対し、反応を一貫して低温で行うと、多環式炭化水素類の転化速度が低く、反応混合液中の多環式炭化水素類濃度が高いレベルで推移する。そのため、多環式炭化水素類の昇華が著しく、反応器や配管の内壁に付着して、閉塞などのトラブルが発生しやすい。また、反応を一貫して高温で行う場合には、ヒドロキシル化反応以外の副反応が起きたり、ヒドロキシル基の導入数の異なる種々のポリオール類が生成して、反応の選択性が低下する。
【0030】
第1酸化反応工程における反応温度は、基質の種類によっても異なるが、例えば、アダマンタンなどの橋かけ環式炭化水素類などの場合、通常70℃以上(例えば70〜95℃程度)、好ましくは75〜90℃(特に75〜85℃)程度である。また、第2酸化反応工程における反応温度は、一般には70℃未満(例えば40℃以上70℃未満)、好ましくは50〜68℃、さらに好ましくは55〜65℃程度である。
【0031】
第1酸化反応工程における反応時間(滞留時間)は、反応の選択性を損なわない範囲で適宜選択でき、基質の種類によっても異なるが、例えば0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間程度である。第1酸化反応工程から第2酸化反応工程への移行は、基質である多環式炭化水素類の転化率が60〜90%、特に70〜90%となる時点とするのが好ましい。前記転化率が低すぎると昇華によるトラブルが発生しやすいく、逆に前記転化率が高い場合には、目的酸化生成物の選択性が低下しやすい。なお、前記転化率は、上記反応時間(回分式などの場合)又は滞留時間(連続式などの場合)や、反応温度を調整することによりコントロールできる。
【0032】
第2酸化反応工程における反応時間(滞留時間)は、反応収率及び反応の選択性を損なわない範囲で適当に選択でき、例えば、0.5〜10時間、好ましくは1〜7時間、さらに好ましくは2〜5時間程度である。
【0033】
反応は、常圧又は加圧下で行うことができ、加圧下で反応させる場合には、通常、1〜100atm(例えば、1.5〜80atm)、好ましくは2〜70atm、さらに好ましくは5〜50atm程度である。反応は、分子状酸素の存在下又は分子状酸素の流通下、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行うことができる。
【0034】
上記のようにして得られた反応生成物は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により、容易に分離精製できる。なお、中間体として得られる対応するモノオール類は、反応系にリサイクルできる。
【0035】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、反応温度の異なる2つの反応工程を組み合わせるので、昇華性多環式炭化水素類が反応器や配管の内壁に付着するのが抑制され、反応操作を円滑に行うことができる。また、昇華性多環式炭化水素類の反応器内壁等への付着を抑制しつつ、所望の多環式多価アルコール類、例えばジオール類を高い選択率で製造できる。
さらに、アダマンタンを基質とする場合には、1,3−アダマンタンジオールを工業的に効率よく製造できる。
【0036】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0037】
実施例1
アダマンタン50.00g、N−ヒドロキシフタルイミド12.00g、V(ACAC)3(バナジウム(III)アセチルアセトナト)0.128g、及び酢酸534gをオートクレーブに仕込み、反応圧力20kgf/cm2の条件下、オートクレーブ下部より空気を20リットル/時の流量で供給しつつ、反応温度80℃で2時間反応させ、その後、反応温度60℃で4時間反応させた。
その結果、アダマンタンの転化率98%で、1,3−アダマンタンジオールを収率29.0%(18.0g)、中間体である1−アダマンタノールを収率26.2%(14.7g)で得た。1,3−アダマンタンジオールと1−アダマンタノールの合計収率は55.2%であった。副生物として、2−アダマンタノン(収率8.2%;4.5g)、及び1,3,5−アダマンタントリオール(収率4.5%;3.0g)が生成していた。なお、反応温度80℃で2時間反応させた時点でのアダマンタンの転化率は、83.8%であった。
【0038】
比較例1
反応温度90℃で6時間反応させた点以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、アダマンタンの転化率99.8%で、1,3−アダマンタンジオールを収率28.5%(17.6g)、中間体である1−アダマンタノールを収率6.8%(3.8g)で得た。1,3−アダマンタンジオールと1−アダマンタノールの合計収率は35.3%であった。副生物として、2−アダマンタノン(収率7.6%;4.2g)、及び1,3,5−アダマンタントリオール(収率13.9%;9.4g)が生成していた。
【0039】
比較例2
反応温度60℃で6時間反応させた点以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、アダマンタンの転化率79.6%で、1,3−アダマンタンジオールを収率15.9%(9.8g)、中間体である1−アダマンタノールを収率33.3%(18.6g)で得た。1,3−アダマンタンジオールと1−アダマンタノールの合計収率は49.2%であった。副生物として、2−アダマンタノン(収率7.3%;4.0g)、及び1,3,5−アダマンタントリオール(収率1.4%;1.0g)が生成していた。なお、反応終了後、オートクレーブ内を調べたところ、反応器気相部の内壁に固体物質が多量に付着していた。

Claims (3)

  1. 昇華性を有する多環式炭化水素類を酸素酸化して、対応する多環式多価アルコール類を製造する方法であって、 A1 )アダマンタンを70℃以上95℃以下の温度条件下で酸化する第1酸化反応工程と、( B1 )次いで40℃以上70℃未満の温度条件下で酸化する第2酸化反応工程とにより1,3−アダマンタンジオールを生成させることを特徴とする多環式多価アルコール類の製造法。
  2. 下記式(1)
    Figure 0004209499
    (式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R1及びR2は互いに結合して二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよい。Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示し、nは1〜3の整数を示す)
    で表されるイミド化合物の存在下で酸化する請求項1記載の多環式多価アルコール類の製造法。
  3. 第1酸化反応工程においてアダマンタンの転化率が60〜90%となった時点で第2酸化反応工程に移行する請求項1記載の多環式多価アルコール類の製造法。
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