JP4208347B2 - 押出成形体の切断装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、押出成形体の切断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
軟質の材料を成形する方法として押出成形が広く知られており、セラミックス、合成樹脂等の成形加工に適用されている。例えば、排気ガス浄化用の触媒の担体として用いられるセラミックスハニカム構造体の製造に適用されている。押出成形では、成形前の練った状態の材料が成形装置にて所定の断面形状を与えられて押し出されてくる。この連続的に押し出されてくる成形体は、切断装置により所定の長さに切断される。切断装置は、押出成形体を切断するワイヤがフレームに張設され、該フレームを押出成形体の切断方向に移動することでワイヤにより押出成形体を切断する。この時、切れ味が悪いと切断面の変形や潰れを生じるので切断装置には切れ味のよいものが望ましい。例えば、上記セラミックスハニカム構造体はセル壁厚が100μm以下になってくるとかなり保形性が低下するので、切れ味は重要である。
【0003】
特公平4−60402号公報には、所定間隔をおいて配設した1対のプーリーに切断用のワイヤを懸架し、ワイヤに張力を与えた状態でワイヤの両端を交互に引っ張る往復移動機構を設け、ワイヤを長さ方向に交互に往復運動させることにより、ワイヤの切断動作に引き切り動作を付加して切断抵抗を小さくして切れ味の向上を図ったものがある。また、特開昭63−67105号公報には、切断用のワイヤを、一端をスプリングと接続するともに他端にバイブレータ等の振動子を接続し、引き切り動作をさせるようにしたものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特公平4−60402号公報、上記特開昭63−67105号公報記載の技術では、引き切りの効果を高めるべく、ワイヤの往復運動のストロークを長くしたり、または速度を速くすると、ワイヤの張力が変動してワイヤの撓みが大きくなる。この結果、撓み方向の運動成分の影響で切断抵抗が大きくなるという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、ワイヤに撓みを生じることなく切れ味のよい押出成形体の切断装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明では、押出成形体を切断するワイヤを押出成形体と交叉する方向にフレームに張設し、該フレームを押出成形体の切断方向に移動させてワイヤにより押出成形体を切断する構成とする。さらに、上記フレームを、押出成形体の切断方向に移動自在な基台部と、基台部に上記ワイヤに沿う方向に微小移動自在に支持されたフレーム本体部とを有する構成とする。上記ワイヤの両端をフレーム本体部に固定せしめる。フレーム本体部を上記ワイヤに沿う方向に往復運動せしめる駆動手段を具備せしめる。
【0007】
ワイヤを直接駆動することなく押出成形体と交叉する方向に往復運動せしめることができるので、ワイヤの往復運動のストロークを長くしたり、または速度を速くしても、ワイヤに撓みを生じず、保形性の低い押出成形体に対してもすぐれた切れ味を発揮することができる。
【0008】
請求項2記載の発明では、上記フレーム本体部を上記基台部に上記ワイヤに沿う方向に揺動自在に軸支せしめる。上記駆動手段によるフレーム本体部に対する駆動作用点を上記フレーム本体部の軸支点から偏心せしめ、その偏心量を上記ワイヤと上記軸支点との間隔よりも小さく設定する。
【0009】
駆動手段により駆動作用点に与えられる往復運動がワイヤ位置において増幅されるから、駆動手段を小型化することができる。
【0010】
請求項3記載の発明では、上記基台部と上記フレーム本体部とを弾性部材により結合する。
【0011】
弾性部材が弾性変形する範囲内でフレーム本体部が上記ワイヤに沿う方向に微小移動自在となるとともに、弾性部材のバネ作用により駆動手段がフレーム本体部を効率よく往復運動させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1、図2、図3、図4に本発明の押出成形体の切断装置を示す。切断装置は、図1中、手前側から押し出されてゆく断面円形の押出成形体8を所定長さに切断するもので、押出成形体8と交叉する方向(図1中左右方向)に張設され押出成形体8を切断するワイヤ2を有する切断機構1と、切断機構1を押出成形体8の切断方向(図1中上下方向)に送るためのガイド7とからなる。なお図例では押出成形体8は排ガス浄化用触媒等に用いられるセラミックスハニカム構造体である。
【0013】
切断機構1は、ワイヤ2の張設用のフレーム3を備えている。フレーム3は、ステンレススティール等の剛性材を矩形の平板状に成形した基台部31とフレーム本体部32とが重なるように、かつ押出成形体8と交叉するように配設されてなる。また、基台部31とフレーム本体部32とは後述する回転軸33、結合部材5により結合している。基台部31、フレーム本体部32には、それぞれ押出成形体8の切断方向に、押出成形体8径よりも幅広の切り欠き301,302が形成され、押出成形体8が通過可能としてある。また、ガイド7にも、押出成形体8の切断方向に、押出成形体8径よりも幅広の切り欠き701が形成され、押出成形体8が通過可能としてある。
【0014】
フレーム本体部32には、上記切り欠き302をはさんで対向する位置にそれぞれワイヤ支持ピン4が突設し、両ワイヤ支持ピン4の間にワイヤ2が張設してある。ワイヤ2の両端部は、これをそれぞれワイヤ支持ピン4に数回巻き付けた後、上から図略の接着テープを貼ることでワイヤ支持ピン4に固定され、ワイヤ2が一定の張力を発生するようになっている。ワイヤ2には極細のタングステン線等が用いられる。なお、ワイヤ2のワイヤ支持ピン4への固定は、接着テープの他、公知の機械的な固定手段が用いられ得る。
【0015】
基台部31は、ガイド7の基台部31との対向面に切断方向に形成した溝701に摺動自在に保持され、フレーム3が押出成形体8の切断方向に移動できる。基台部31の端壁には把手311が設けてあり、作業者が切断機構1を動かすことができる。
【0016】
回転軸33は、ワイヤ2中点位置から上記切断方向に下ろした垂線上位置に押出成形体8の押し出し方向に設けてあり、フレーム本体部32が回転軸33位置を軸支点としてワイヤ2に沿う方向に揺動するようになっている。
【0017】
結合部材5は、基台部31とフレーム本体部32との間の扁平空間に設けてある。結合部材5はゴム等の棒状の弾性体51の両端から弾性体51の軸線に沿ってネジ部52,53が突出したもので、ネジ部52,53により基台部31、フレーム本体部32と結合する。結合部材5がフレーム本体部32の回転軸33回りの回転角度範囲を制限し、フレーム本体部32は、弾性体51が撓み変形する微小範囲内でのみワイヤ2に沿う方向に移動可能である。
【0018】
結合部材5は合計4箇所に設けられている。この4つの結合部材5の配置場所は、回転軸33位置よりもワイヤ2側に略均等に分散してあり、基台部31とフレーム本体部32とを結合する上で回転軸33に過剰な負担がかからないようになっている。なお、結合部材5の取付け数は結合強度の点から多い方がよいが、多すぎるとフレーム本体部32の移動範囲を減じてしまうので、3か4程度が望ましい。
【0019】
また、フレーム本体部32には、回転軸33から偏心した位置に駆動手段たる振動発生部6が設けてある。振動発生部6はフレーム本体部32を駆動するもので、フレーム本体部32にネジ止めされたモータ61と、その軸端部に固定された偏心ディスク62とから構成してある。偏心ディスク62は、モータ61のシャフトに同軸に取り付けられた真円ディスク621の周縁からアーム部622が伸び、その先端にウェイト623が取り付けられたもので、偏心ディスク62の重心はモータ61の軸心(回転中心)からウェイト623の分偏心している。この偏心ディスク62の重心は、モータ61への通電により回転した時に、モータ61の回転中心周りを公転運動するようになっている。モータ61の回転数は、かかる偏心ディスク62の重心の公転運動によりフレーム本体部32が振動する程度に高速域に設定される。なお、偏心ディスクは図例のものだけではなく、その重心位置と回転中心とが不一致なものであればよい。
【0020】
本発明の切断装置の作動について説明する。作業者は、モータ61に通電した状態でフレーム3の把手311を引き切断機構1を切断方向に移動させる。切断機構1の移動に伴ってワイヤ2が押出成形体8を切断する。
【0021】
さて、偏心ディスク62の重心が公転運動するのに伴い、フレーム本体部32は振動するが、フレーム本体部32の運動は、上記のごとく回転軸33を中心とするワイヤ2に沿う方向の移動に規定されているから、フレーム本体部32は実質的にワイヤ2に沿う方向にのみ往復運動(振動)せしめられるだけである。しかして、フレーム本体部32と一体のワイヤ2もその長さ方向にのみ振動する。ワイヤ2はワイヤ支持ピン4に固定されているからワイヤ2の張力は一定であり、振動振幅や周波数が大きくなってもワイヤ2に撓み等を生じることはない。しかもフレーム本体部32と基台部31とは弾性体51を介して結合しているから、弾性体51の撓みによるバネ作用で振動発生部6の発生する駆動力がフレーム本体部32の振動に効率よく変換され、ワイヤ2の振動は安定的に行われる。
【0022】
押出成形体8の切断時には、ワイヤ2の運動に振動発生部6の作用で引き切りの運動が加わるが、上記のごとく、ワイヤ2は押出成形体8と交叉する方向にのみ振動し、撓みによる押出成形体8の押出方向の振動成分が生じないから、すぐれた切れ味を発揮する。
【0023】
なお、図5に示すように、振動発生部6によるフレーム本体部2の駆動作用点(モータ61の取付け位置)を、その回転軸33位置からの偏心量L2 が、ワイヤ2と回転軸33との間隔L1 よりも短くなるように設定してあるので、振動発生部6により上記駆動作用点に与えられた振動がワイヤ2位置においてL1 /L2 倍に増幅され、小型の振動発生部6でもワイヤ2の往復運動に対して大きなストローク(振動振幅)を与えることができる。
【0024】
本発明の切断装置により、セル壁厚0.06mm、セルピッチ0.9mm、外径φ100mmのハニカム構造体を切断し、図6に示すように切断面のつぶれ変形について調査した結果を示す。なお、判定は、つぶれ変形量が1mm未満の場合を○、1mm以上が×とした。ワイヤ2はφ0.05mmのものを用い、上記L1 /L2 =3とした。表中、本発明の実施例と比較する比較例を併せて示した。比較例1は実施例の構成から回転軸33を外し、ワイヤ2にその長さ方向に限定されない自由な振動が生じるようにしたものであり、比較例2は実施例の構成においてモータ61をオフにし、ワイヤ2に振動を与えないようにして実質的に最も単純な構成としたものである。
【0025】
結果は、表1より知られるように、ワイヤ2の振動数60Hz、振幅4mmの実施例1では、つぶれ変形量は0.8mmであり、振動数65Hz、振幅6.5mmの実施例2では、つぶれ変形量は0.3mmであり、いずれもセル壁厚0.1mm以下のハニカム構造体8をきれいな切断面で切断することができた。一方、ワイヤに振動を与えない比較例2では、つぶれ変形量は6.5mmに達した。このように、上記各実施例は優れた切れ味を発揮する。また、振動増幅作用のない比較例1では、モータ61の駆動条件が比較例2と同じであっても振動振幅は2mmで、つぶれ変形量は実施例2よりも大きい2.5mmであり、本実施形態の構成によれば、振動増幅作用により小型のモータ61でもすぐれた切れ味が得られることが分かる。
【0026】
【表1】
Figure 0004208347
【0027】
なお、図例では、モータ61により偏心ディスク62を回転しフレーム本体部32を振動させているが、他の構成でもよい。図7、図8は他の駆動手段を取り付けたフレーム本体部32であり、駆動手段としてバイブレータ6Aが取り付けてある。バイブレータ6Aは、振動方向がフレーム本体部32の揺動方向となるように取付け向きが決めてあり、フレーム本体部32をワイヤ2に沿う方向に振動せしめる。バイブレータ6Aには電気式の他、エア式のもの等が用いられ得る。
【0028】
また、フレーム本体部を効率よく振動させる弾性部材をフレームの基台部とフレーム本体部との間の扁平空間に設けることで、基台部とフレーム本体部間の結合強度を高める作用が得られるようにしているが、基台部とフレーム本体部間が回転軸の単独結合で強度上の問題がなければ、あるいは他の手段により補強が可能であれば、弾性部材を他の場所に設けることもできる。例えば基台部にフレーム本体部の側方位置に突出する突出部を設け、この突出部とフレーム本体部との間に、フレーム本体部の揺動方向に伸縮するスプリングを弾性部材として設ける。
【0029】
また、図例では、フレーム本体部を基台部に対して揺動せしめることで、フレーム本体部がワイヤに沿う方向に往復運動するようにしているが、フレーム本体部が基台部をワイヤに沿う方向に一次元移動自在なステージとして載置される構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の押出成形体の切断装置の平面図である。
【図2】図1におけるII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1におけるA矢視図である。
【図4】本発明の押出成形体の切断装置の切断機構の分解図である。
【図5】本発明の押出成形体の切断装置の切断機構の正面図である。
【図6】押出成形体の切断部の図である。
【図7】本発明の押出成形体の切断装置の変形例を示すフレーム本体部の正面図である。
【図8】図7におけるVIII−VIII線に沿う断面図である。
【符号の説明】
1 切断機構
2 ワイヤ
3 フレーム
31 基台部
32 フレーム本体部
33 回転軸
4 ワイヤ支持ピン
5 結合部材(弾性部材)
51 弾性体
52,53 ネジ部
6 振動発生部(駆動手段)
61 モータ
62 偏心ディスク
6A バイブレータ(駆動手段)
7 ガイド
8 押出成形体

Claims (3)

  1. 押出成形体を切断するワイヤを押出成形体と交叉する方向にフレームに張設し、該フレームを押出成形体の切断方向に移動させてワイヤにより押出成形体を切断する押出成形体の切断装置において、上記フレームを、押出成形体の切断方向に移動自在な基台部と、基台部に上記ワイヤに沿う方向に微小移動自在に支持されたフレーム本体部とを有する構成とし、上記ワイヤの両端をフレーム本体部に固定せしめ、かつ、上記フレーム本体部を上記ワイヤに沿う方向に往復運動せしめる駆動手段を具備することを特徴とする押出成形体の切断装置。
  2. 請求項1記載の押出成形体の切断装置において、上記フレーム本体部を上記基台部に上記ワイヤに沿う方向に揺動自在に軸支せしめ、上記駆動手段によるフレーム本体部に対する駆動作用点を上記フレーム本体部の軸支点から偏心せしめ、その偏心量を上記ワイヤと上記軸支点との間隔よりも小さく設定した押出成形体の切断装置。
  3. 請求項1または2いずれか記載の押出成形体の切断装置において、上記基台部と上記フレーム本体部とを弾性部材により結合した押出成形体の切断装置。
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