JP4208049B2 - 画像処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は画像処理装置に関し、特に詳しくは、画像処理済みの画像を含む同一被写体についての2画像間での画像間演算に適した画像処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、同一被写体についての2以上の画像を比較読影して、両画像間の差異を調べ、その差異に基づいて被写体の検査などを行うことが、種々の分野において行われている。
【0003】
例えば、工業製品の製造分野においては、ある製品について新品の状態の時に撮影された画像と、当該製品の耐久試験後に撮影された画像とを比較読影して、両者の差異の大きな部位に注目することにより、製品の耐久性を向上させるべき部位を検討することが行われており、また医療分野においては、ある患者の異なる時期に撮影された複数枚の放射線画像を医師が比較読影することにより、新規に発生した病変を発見したり、疾患の進行状況や治癒状況を把握したりして治療方針を検討することが行われている。
【0004】
ところで、比較読影の対象となる2以上の画像を出力する場合、それらの画像を単に並べて出力するのが一般的であるが、読影者にとって最も関心があるのはこれらの画像間の差異である。しかし、上述したように例えば2つの画像を単に並べてこの差異を発見するのは、その差異が小さい程困難であり、比較読影の性能向上が求められている。
【0005】
そこで、比較読影の対象とされる2つの画像間で構造位置(解剖学的特徴位置)を対応させた減算(サブトラクション)処理をはじめとした画像間演算を行なって、上記差異を抽出・強調することが行われており(特許文献1等参照)、特に医療分野においては、近年、時系列放射線画像間の差分画像を作成する経時サブトラクション技術が提案され、作成した差分画像を時系列放射線画像と同時に観察することで診断支援を行う試みがある(非特許文献1参照)。
【0006】
このように画像間の差異のみが抽出・強調されることにより、読影者に対して画像間の差異を確実に認識させることができるため、例えば、医療分野においては、進行または治癒する病変部の見落としを防止することができると考えられる。
【0007】
なお、比較読影対象となる画像は、撮影時における被写体の姿勢の変化や撮影装置等の違いにより、一般的に被写体の構造物の位置が各画像で異なるため、これらの画像間演算を行う際には、各画像中に現れた構造物の位置(構造位置)を2つの画像間で対応させる位置合わせを行なうことが望ましい。例えばこの位置合わせとして、2つの画像間で平行移動、回転および拡大・縮小という大局的な変換(例えばアフィン変換等)を用いた第1の位置合わせと、この第1の位置合わせ後の画像について、多数の局所領域に分割したうえで、対応する局所領域同士の間で各々マッチングを行なった結果に基づいて、両画像をカーブフィッティング(例えば2次元10次多項式)による非線形歪変換(ワーピング)を用いた第2の位置合わせとを2段階的に行なう技術(特許文献2参照)などが知られている。
【0008】
【特許文献1】
特願平11−342900号公報
【0009】
【特許文献2】
特開2002−324238号公報
【0010】
【非特許文献1】
A.Kano, K.Doi, H.MacMahon, D.Hassell, M.L.Giger, “Digital image subtraction of temporally sequential chest images for detection of interval change”, Med. Phys. 21(3), March 1994, 453-461[1]
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、例えば上記位置合わせの技術(特許文献2参照)によって、構造物を完全に位置合わせした場合であっても、両画像間で対応する構造物の濃度や輝度などを表す具体的な信号値が一致していないときは、画像間演算により得られた画像間演算画像(差異画像)に、この信号値差によるアーチファクトが生じる場合がある。
【0012】
一般的に、比較読影の対象とされる画像すなわち画像間演算の対象とされる画像は、当初から画像間演算を目的として取得されたものではなく、各画像自体が単独で観察読影に適した可視画像として再生されるように、画像毎にそれぞれ適正な画像処理条件にしたがって画像処理が施されている。特に時系列的に異なる時期にそれぞれ取得される画像は、各取得時期における状態を適切に把握することを目的として取得されるものであるため、取得されたその画像限りの画像処理条件が設定されて画像処理が施される。したがって、画像間演算の対象とされる画像は、それぞれ異なる画像処理条件で画像処理が施されている場合が多く、画像間で対応する構造物の濃度や輝度を表す信号値が一致せず、差異画像にこの信号差によるアーチファクトが生じる可能性が非常に高い。
【0013】
ところで、画像が保存される際は、本来、画像処理が施された後の画像(処理済画像)とともに画像処理が施される前の画像(処理前画像)が保存される。そこで、処理前画像同士を用いて画像間演算処理を行うようにすれば、上記問題を防ぐことができる。
【0014】
しかしながら、近年、画像の送受信に関する種々の規格が整備され、特に医療分野においてはDICOM等の規格が普及し、ネットワーク等を通じて簡単に画像の送受信ができるようになった。これに伴い、様々な形式や状態での画像がやり取りされ、処理済画像のみが存在する画像も扱われるようになり、処理済画像と処理前画像、または処理済画像同士の画像間演算処理も必要となってきている。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、比較読影の対象となる2画像が画像処理済みであるか否かを問わず、観察に適したこれら2画像間の画像間演算画像(差異画像)を得ることが可能な画像処理装置を提供することを目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の画像処理装置は、画像間演算の対象となる画像に、画像処理が施された処理済画像が含まれているときに、画像間演算によって得られる差異画像を、画像間演算の対象となる画像の画像処理が施される前の処理前画像を用いて画像間演算することにより得られる差異画像と同等の画像にする、若しくは近づける補正を行うものである。
【0017】
すなわち本発明の第1の画像処理装置は、同一被写体についての2つの画像間で、この2つの画像間の差異を求める画像間演算を行って上記差異を表す差異画像を得る画像間演算手段を備えた画像処理装置において、上記画像が、この画像自身に画像処理済みであるか否かを表す処理済確認情報が添付されたものであって、画像処理済みである上記画像については、この画像に対して施された画像処理の条件を表す画像処理条件情報がさらに添付されたものであり、上記2つの画像について、各画像が画像処理済みであるか否かを、各画像に添付された処理済確認情報に基づいて判別する判別手段と、上記2つの画像の少なくとも一方の画像に判別手段により画像処理済みであると判別された画像を用いて、画像間演算手段により得られる差異画像を、画像処理済みと判別された画像に添付された画像処理条件情報に基づいて、上記2つの画像の画像処理が施される前の画像を用いて画像間演算を行って得られる差異画像と同等の画像に補正する補正手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の第2の画像処理装置は、同一被写体についての2つの画像間で、この2つの画像間の差異を求める画像間演算を行って上記差異を表す差異画像を得る画像間演算手段を備えた画像処理装置において、上記画像が、この画像自身に画像処理済みであるか否かを表す処理済確認情報が添付されたものであり、上記2つの画像の少なくとも一方の画像に判別手段により画像処理済みであると判別された画像を用いて、画像間演算手段により得られる差異画像を、画像処理済みであると判別された画像に対して施される代表的な画像処理の条件に基づいて、上記2つの画像の画像処理が施される前の画像を用いて画像間演算を行って得られる差異画像に近づける補正を行う補正手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0019】
ここで、上記画像としては、通常のデジタルカメラ等により取得された画像をはじめ、CR(コンピューテッド・ラジオグラフィ)システムにより取得された放射線画像、CT装置やMRI装置により取得された断層画像等を適用することができる。なお画像の被写体としては、人体等の他、動植物、工業製品、地形、天体、風景等あらゆるものを適用することができる。
【0020】
上記第1および第2の画像処理装置において、画像処理は、階調処理を含むものであってもよい。
【0021】
階調処理とは、画像の濃度およびコントラストを調整する処理のことであり、例えば、注目している被写体の構造物が含まれる濃度帯が、階調レベルの主要部分に割り当てられるように階調カーブ(元の画素値と変換後の画素値との対応関係を表した曲線)を設定し、この階調カーブにしたがって画素値の変換を行う処理が考えられる。
【0022】
また、上記2つの画像における被写体の構造物の画像が略合致するよう、上記2つの画像を位置合せする位置合せ手段をさらに備え、画像間演算手段は、位置合せされた2つの画像間で、画像間演算を行うものであることが望ましい。
【0023】
処理済確認情報および画像処理条件情報は、例えば、画像を表す画像データのヘッダ部分に記述することができる。処理済確認情報としては、数値が設定された所定のパラメータを用いることができ、その数値によって画像が処理済画像であるか否かを表すようにすることができる。例えば、その数値が0のときは処理前画像を表し、1のときは処理済画像を表すようにする。また、画像処理条件情報としては、画像処理条件を特定する具体的なデータをそのまま用いたり、画像処理条件が幾つかのタイプに分けて予め用意されているときは、そのタイプを示す数値が設定された所定のパラメータを用いたりすることができる。例えば、画像処理が階調処理であるときには、前者の場合は、階調カーブ上の代表的な点を座標で示してその階調カーブを特定するようにしたり、また後者の場合は、所定のパラメータの値によって、予め用意されている階調カーブのタイプを特定するようにしたりすることができる。
【0024】
また、上記第1および第2の画像処理装置において、上記2つの画像は、経時的変化の比較対象となる、同一被写体についての撮影時期が異なる画像であってもよい。例えば、ある患者の同一患部を被写体とした、現在の画像と過去の画像が考えられる。
【0025】
上記第1の画像処理装置において、補正手段としては、処理済画像であると判別された画像に添付された画像処理条件情報から、その画像に対して施された画像処理の条件を特定し、その特定された画像処理の条件に応じて、その画像処理の効果の解除と画像間演算とを同時に行うことが可能な画像間演算の式を設定し、設定された画像間演算の式にしたがって画像間演算を行うことにより、通常の画像間演算により得られる差異画像を、上記2つの画像の処理前画像を用いて得られる差異画像と同等の画像に補正する手段が考えられる。なお、上記特定された画像処理の条件に応じて設定される画像間演算の式は、理論的に求めるようにしてもよいし、実験的に求めるようにしてもよい。
【0026】
また上記第2の画像処理装置において、補正手段としては、処理済画像であると判別された画像は一般的によく施される代表的な画像処理が施されていると想定し、その代表的な画像処理の効果を無効にするのと同時に画像間演算を行うことが可能な画像間演算の演算式を予め設定しておき、設定された演算式にしたがって画像間演算を行うことにより、通常の画像間演算によって得られる差異画像を、上記2つの画像の処理前画像を用いて画像間演算を行って得られる差異画像に近づける補正を行う手段が考えられる。
【0027】
画像間演算としては、特に、2つの画像をそれぞれ表す画像データの画素を対応させた減算処理(サブトラクション処理)を適用するのが好ましく、この場合、単純な減算であってもよいし、重み付けを行ったうえでの減算であってもよい。減算処理によって得られた画像間演算画像は一般にサブトラクション画像と称され、このサブトラクション画像としては、時系列的に略同時に撮影して得られたエネルギー分布の互いに異なる2つの原画像(=オリジナルの画像;高圧画像(通常の放射線画像)、低圧画像(高圧抑制画像))に基づいて(単純減算または荷重減算)得られるエネルギーサブトラクション画像、時系列的に異なる時期に撮影して得られた2つの原画像に基づいて得られる経時サブトラクション画像、造影剤の注入前後にそれぞれ撮影して得られる血管の2つの原画像に基づいて得られるDSA(デジタルサブトラクション・アンギオグラフィ)画像等が含まれる。
【0028】
【発明の効果】
本発明の第1の画像処理装置によれば、同一被写体についての2つの画像にそれぞれ添付された、当該各画像自身が画像処理済みであるか否かを表す処理済確認情報に基づいて、当該各画像が画像処理済みであるか否かを判別し、画像処理済みであると判別された画像に添付された、当該画像に対して施された画像処理の条件を表す画像処理条件情報に基づいて、これら2つの画像間で画像間演算を行って得られる差異画像を、これら2つの画像の画像処理が施される前の処理前画像を用いて画像間演算を行って得られる差異画像と同等の画像に補正するので、これら2つの画像の画像処理が施される前の画像、すなわち画像処理による濃度シフトがなく両画像間で対応する被写体の構造物の濃度を表す信号値が略一致する画像を用いたときの差異画像と同等の画像を得ることができ、上記2つの画像間の差異画像における上記信号値の差に基づくアーチファクトの発生を防止することが可能となり、上記2つの画像が画像処理済みであるか否かを問わず、観察に適したこれら両画像間の差異画像を得ることができる。
【0029】
また、画像間演算の対象とされる2つの画像を、略同じ画像処理条件にしたがって画像処理が施された、同一被写体についての2つの画像間で画像間演算を行うと、これら2つの画像間の差異画像において、両画像間で対応する被写体の構造物の濃度を表す信号値の差によるアーチファクトは抑えられるものの、画像処理によってある特定の濃度帯が圧縮されることにより差異画像においてその濃度帯の差異が現れにくくなるという現象が起こるが、本発明の第1の画像処理装置によれば、画像間演算の対象とされる2つの画像を、画像処理による濃度シフトのない、画像処理が施される前の画像を用いたときの、両画像間の差異画像を得ることができるので、上記のような現象を抑えることができる。
【0030】
本発明の第2の画像処理装置によれば、同一被写体についての2つの画像にそれぞれ添付された、当該各画像が画像処理済みであるか否かを表す処理済確認情報に基づいて、当該各画像が画像処理済みであるか否かを判別し、画像処理済みであると判別された画像に対して施される代表的な画像処理の条件に基づいて、これら2つの画像間で画像間演算を行って得られる差異画像を、これら2つの画像の画像処理が施される前の処理前画像を用いて画像間演算を行って得られる差異画像に近づける補正をするので、上記2つの画像のいずれかが、画像処理済みではあるが当該画像に対して施された画像処理の条件が不明である画像であっても、このような画像に対して施される代表的な画像処理の条件に基づいて、上記2つの画像間の差異画像を、上記2つの画像の画像処理が施される前の画像を用いて画像間演算を行って得られる差異画像にできるだけ近づける補正を行うことができ、上記第1の画像処理装置の効果に準ずる効果を期待することができる。
【0031】
なお、上記第1および第2の画像処理装置において、同一被写体についての2つの画像における被写体の構造物の画像が略合致するよう、当該2つの画像を位置合せする位置合せ手段をさらに備え、画像間演算手段を、位置合せされた2つの画像間で画像間演算を行うものとすれば、差異画像において被写体の姿勢の変化や撮影装置等の違いによる位置ずれに基づくアーチファクトを低減することができ、より観察に適した差異画像を得ることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の画像処理装置の実施の形態について説明する。図1は、本発明による画像処理装置の第1実施形態の構成を示すブロック図である。なお、本実施形態においては、画像間演算の対象となる2つの画像を、経時的変化の比較対象となる同一被写体についての撮影時期が異なる2つの画像とし、具体的には、人体の胸部放射線画像を表す、現在撮影された現在画像と過去に撮影された過去画像とする。そして、本発明による画像処理装置1により、これらの画像間の差分を表す経時サブトラクション画像を得て、その画像を観察して新規病変部を発見する診断を行う場合を想定する。また、これらの画像は、その画像自身が画像処理済みであるか否かを表す処理済確認情報Zと、画像処理済みである画像(処理済画像)については、その画像に対して施された画像処理の条件を表す画像処理条件情報Cがさらに添付されるものとする。
【0033】
図1に示す画像処理装置1は、入力された人体の胸部放射線画像の現在画像と過去画像(以下、これらの画像を入力された元の画像という意味で、オリジナル画像という)P1,P2について、これら2つのオリジナル画像P1,P2にそれぞれ添付された処理済確認情報Z1,Z2に基づいて、オリジナル画像P1,P2が画像処理済みであるか否かを判別する判別手段10と、オリジナル画像P1,P2における被写体の構造物の画像が略合致するよう、これら2つの画像のうち一方を他方に合うように変形させて位置合せを行う位置合せ手段20と、判別手段20により画像処理済みであると判別されたオリジナル画像Piに添付された画像処理条件情報Ciに基づいて、オリジナル画像Piに対して施された画像処理の効果を無効にすると同時に画像間演算(本実施形態においてはサブトラクション処理)を行うことが可能な画像間演算の演算式を設定する演算式設定手段30(補正手段)と、位置合せ手段20により位置合せのための変形がなされた上記2つのオリジナル画像を用いて、演算式設定手段30により設定された画像間演算の演算式にしたがって画像間演算を行い、オリジナル画像P1,P2の画像処理が施される前の処理前画像を用いて得られる差異画像PS(本実施形態においては経時サブトラクション画像)と同等の画像を得る画像間演算手段40とを備えている。
【0034】
ここで、上記オリジナル画像P1,P2は、人体の胸部に放射線を照射し、この人体の胸部を透過した放射線を蓄積性蛍光体シート(照射された放射線のエネルギーを蓄積記録し、後に励起光を照射することにより、蓄積記録された放射線のエネルギーに応じた光量の輝尽発光光を発光する特性を有する輝尽性蛍光体層を備えたシート状の放射線検出パネル)に蓄積記録し、この放射線画像が記憶された蓄積性蛍光体シートから読み取って得られたデジタル画像データに基づいて表される、人体の胸部放射線画像である。また、これらの画像P1,P2は、現在撮影された現在画像と過去に撮影された過去画像であり、画像処理が施される前の処理前画像、または、画像処理が施された後の処理済画像のいずれかである。なお、ここでいう画像処理とは、標準的な画像をもとに、被写体の注目すべき領域や観察目的等に応じて設定される独自の画像処理条件にしたがって画像に対して施されるデータ変換処理のことであり、撮影装置により取得された画像を標準的な階調の画像にするために、撮影条件等に基づいて階調を調整する処理等は含まないものとする。
【0035】
また、本実施形態において、上記画像処理は階調処理とする。
【0036】
階調処理は、図2に示すような、処理前画像の画素値と階調処理後の画像の画素値との対応関係を表した階調カーブを設定し、設定された階調カーブにしたがって画素値の変換処理が行われるものである。なお、この階調カーブは幾つかのタイプに分けて予め用意されている。
【0037】
オリジナル画像P1,P2には、処理済確認情報Zおよび画像処理条件情報Cがヘッダ情報として付加されており、具体的には、処理済確認情報Zとして、画像処理済みであるか否かをそれぞれ数値の0と1で表すパラメータZ、画像処理条件情報Cとして、階調処理に用いられた階調カーブのタイプ番号を表すパラメータGが付加されている。
【0038】
次に、本実施形態の画像処理装置1の作用について説明する。
【0039】
まず、画像処理装置1に、図3に示すような、人体の胸部放射線画像であるオリジナル画像P1,P2が入力されると、判別手段10が、画像P1,P2にそれぞれ添付されたヘッダ情報から処理済確認情報としてのパラメータZ1,Z2を読み取り、そのパラメータの値によって、画像P1,P2が画像処理済みであるか否かを判別する(例えば、0は処理前、1は処理済みと判別する)。なお、ここでは、画像P1が現在撮影された画像処理が施されていない処理前画像、画像P2が過去に撮影された画像処理が施されている処理済画像であるものとし、また画像P1は病変部Kを含む胸部を表すものとする。
【0040】
また、位置合せ手段20は、前述の公知の技術であるアフィン変換や非線形歪変換(ワーピング)等を用いて、画像P1,P2のうち一方を他方に合わせるようにして位置合せを行う。ここでは、画像P2を画像P1に合うように変形させて画像P2wを得るようにする。
【0041】
演算式設定手段30は、判別手段10により画像処理済みであると判別されたオリジナル画像P2に添付されたヘッダ情報からパラメータG2を読み取り、階調処理に用いられた階調カーブのタイプを認識し、その階調カーブを用いた階調処理の効果を解除すると同時に通常の画像間演算を行うことが可能な画像間演算の式を設定する。画像間演算(サブトラクション処理)は、式(2)に示すような演算式にしたがって行われ、経時サブトラクション画像PSが得られる。
【0042】
PS=cont×(a×P1−b×P2w)+mid ・・・(2)
cont;コントラスト係数, a,b;係数, mid;中間値通常のサブトラクション処理では、a=b=1として演算が行われるが、例えば、画像P2が、図4に示すような階調カーブを用いた階調処理が施されていた場合には、この階調カーブを表す関数式をd′=f(d)として、cont=任意の値,a=1,b=f−1(P2w)とし、式(2)′に示すような演算式を設定する。
【0043】
PS=cont×(P1−f−1(P2w))+mid ・・・(2)′
そして、画像間演算手段40が、式(2)′にしたがって画像間演算を行い、オリジナル画像P1,P2の画像処理が施される前の処理前画像を用いて通常の画像間演算を行って得られる差異画像と同等の差異画像である経時サブトラクション画像PSを得る。
【0044】
図5は、このようにして得られた経時サブトラクション画像PSを表した図である。読影者は、この経時サブトラクション画像PSを観察することにより、胸部に新規に発生した病変部Kを容易に発見することができる。
【0045】
なお、画像間演算の式(2)における、コントラスト係数cont、係数a,bは、オリジナル画像P1またはP2に施された画像処理の条件から理論的に求めて決定してもよいし、実験的に求められた関数やテーブルに基づいて決定してもよい。
【0046】
このような上記第1実施形態における画像処理装置1によれば、同一被写体についての2つの画像にそれぞれ添付された、当該各画像自身が画像処理済みであるか否かを表す処理済確認情報に基づいて、当該各画像が画像処理済みであるか否かを判別し、画像処理済みであると判別された画像に添付された、当該画像に対して施された画像処理の条件を表す画像処理条件情報に基づいて、これら2つの画像間で画像間演算を行って得られる差異画像を、これら2つの画像の画像処理が施される前の処理前画像を用いて画像間演算を行って得られる差異画像と同等の画像に補正するので、これら2つの画像の画像処理が施される前の画像、すなわち画像処理による濃度シフトがなく両画像間で対応する被写体の構造物の濃度を表す信号値が略一致する画像を用いたときの差異画像と同等の画像を得ることができ、上記2つの画像間の差異画像における上記信号値の差に基づくアーチファクトの発生を防止することが可能となり、上記2つの画像が画像処理済みであるか否かを問わず、観察に適したこれら両画像間の差異画像を得ることができる。
【0047】
また、画像間演算の対象とされる2つの画像を、略同じ画像処理条件にしたがって画像処理が施された、同一被写体についての2つの画像間で画像間演算を行うと、これら2つの画像間の差異画像において、両画像間で対応する被写体の構造物の濃度を表す信号値の差によるアーチファクトは抑えられるものの、画像処理によってある特定の濃度帯が圧縮されることにより差異画像においてその濃度帯の差異が現れにくくなるという現象が起こるが、本発明の第1の画像処理装置によれば、画像間演算の対象とされる2つの画像を、画像処理による濃度シフトのない、画像処理が施される前の画像を用いたときの、両画像間の差異画像を得ることができるので、上記のような現象を抑えることができる。
【0048】
なお、本発明による画像処理装置の第2実施形態として、上記第1実施形態をもとに、入力されるオリジナル画像P1,P2に少なくとも処理済確認情報Zが添付されるものとし(画像処理条件情報Cが添付されるか否かは問わない)、演算式設定手段30を、判別手段10により画像処理済みであると判別された画像を、当該画像に対して施される代表的な画像処理の効果を解除すると同時に画像間演算を行う演算式を設定するものとすることも考えられ、この場合は、同一被写体についての2つの画像にそれぞれ添付された、当該各画像が画像処理済みであるか否かを表す処理済確認情報に基づいて、当該各画像が画像処理済みであるか否かを判別し、画像処理済みであると判別された画像に対して施される代表的な画像処理の条件に基づいて、これら2つの画像間で画像間演算を行って得られる差異画像を、これら2つの画像の画像処理が施される前の処理前画像を用いて画像間演算を行って得られる差異画像に近づける補正をするので、上記2つの画像のいずれかが、画像処理済みではあるが当該画像に対して施された画像処理の条件が不明である画像であっても、このような画像に対して施される代表的な画像処理の条件に基づいて、上記2つの画像間の差異画像を、上記2つの画像の画像処理が施される前の画像を用いて画像間演算を行って得られる差異画像にできるだけ近づける補正を行うことができ、上記第1実施形態による画像処理装置1の効果に準ずる効果を期待することができる。
【0049】
さらに、本発明による画像処理装置の第3実施形態として、上記第1実施形態をもとに、入力されるオリジナル画像P1,P2に少なくとも処理済確認情報Zが添付されるものとし(画像処理条件情報Cが添付されるか否かは問わない)、演算式設定手段30を、判別手段10により画像処理済みであると判別された画像が画像処理条件情報Cが添付されたものであるときには、その画像処理条件情報Cに基づいて、当該画像に画像処理条件情報Cが添付されていないときには、その当該画像に対して一般的に施される代表的な画像処理の条件に基づいて、これら画像処理の効果を無効にすると同時に画像間演算を行う演算式を設定するものとし、画像間演算手段40が、設定された演算式にしたがって画像間演算を行い、画像間演算の対象とされる画像の画像処理が施される前の処理前画像を用いて得られる差異画像にできるだけ近い差異画像を得るものとすることも考えられる。この第3実施形態における画像処理装置は、具体的には、図6に示すような処理フローにしたがって処理を行う。
【0050】
はじめに、入力されたオリジナル画像P1のヘッダ情報からパラメータZ1を読み取り、画像処理済みであるか否かを判別する(ステップS1)。画像P1が画像処理済みでないときには、画像P2についての処理に移行し、画像P1が画像処理済みであるときには、画像処理条件情報C1としての、階調処理における階調カーブのタイプを特定するパラメータG1がヘッダ情報にあるかないかを判定する(ステップS2)。パラメータG1がある場合には、ヘッダ情報からそのパラメータG1を読み取って階調カーブのタイプを特定する(ステップS3)。パラメータG1がない場合には、画像P1に対して施される代表的な階調処理における階調カーブ(例えば、被写体の種類に応じて一般的によく用いられる階調カーブ)によって階調処理が施されたものとする(ステップS4)。
【0051】
続いて、オリジナル画像P2に対しても、ステップS1〜S4と同様の処理を行い、画像P2が画像処理済みであるときには画像P2に対して施された画像処理の条件を特定または想定する(ステップS5)。
【0052】
そして、画像P1と画像P2とを位置合せし(ステップS6)、画像P1またはP2に対して施された画像処理または施されたと想定される代表的な画像処理の効果を無効にすると同時に画像間演算を行う演算式を、それらの画像処理の条件に関する情報に基づいて設定し(ステップS7)、最終的には、その設定された演算式にしたがって画像間演算を行い、画像P1,P2の処理前画像を用いて得られる差異画像にできるだけ近い状態の画像を得る(ステップS8)。
【0053】
なお、上記第1、第2および第3実施形態においては、同一被写体についての2つの画像における被写体の構造物の画像が略合致するよう、当該2つの画像を位置合せする位置合せ手段20を備えているので、画像間演算手段40により得られる差異画像において、被写体の姿勢の変化や撮影装置等の違いによる位置ずれに基づくアーチファクトを低減することができ、より観察に適した差異画像を得ることができる。なお、この位置合せ手段20は、画像処理装置1において必ずしも必要というわけではなく、画像間演算の対象とされる2つの画像が、もともと、互いに位置ずれが略ないような状態のものであれば、位置合せをしなくても、観察に有効な差異画像を得ることが可能である。
【0054】
なお、処理済確認情報Zは、上記実施形態のように、画像処理条件情報Cとは別に設けられてもよいが、画像処理条件情報Cが処理済確認情報Zを兼用するものであってもよく、例えば、画像処理条件を特定するパラメータの値が所定の値、例えば0であるときには、画像処理が施されていない処理前画像を示すものとしてもよい。
【0055】
また、第3実施形態において、処理済確認情報Zは画像処理の種類別に用意し、画像処理の種類毎にその画像処理が施されているか否かを判別し、その結果に基づいて、画像間演算の演算式を設定するようにしてもよい。また、画像処理済みであると判別された画像が、画像処理の種類毎に画像処理条件情報Cを付しているか否かを判定し、画像処理条件情報Cを付していればその画像処理条件情報Cに基づいて、画像処理条件情報Cを付していなければ代表的な画像処理が施されているものとみなしてその代表的な画像処理の条件に基づいて、演算式を設定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態による画像処理装置の構成を示したブロック図
【図2】階調処理において用いられる階調カーブのタイプを示した図
【図3】画像処理装置に入力される人体の胸部放射線画像を表した図
【図4】階調処理において用いられる階調カーブを示した図
【図5】経時サブトラクション画像を表した図
【図6】第3実施形態による画像処理装置における処理フローを表した図
【符号の説明】
1 画像処理装置
10 判別手段
20 位置合せ手段
30 演算式設定手段(補正手段)
40 画像間演算手段
Claims (3)
- 同一被写体についての2つの画像間で、該2つの画像間の差異を求める画像間演算を行って前記差異を表す差異画像を得る画像間演算手段を備えた画像処理装置において、
前記画像が、該画像自身に画像処理済みであるか否かを表す処理済確認情報が添付されたものであって、画像処理済みである前記画像については、該画像に対して施された画像処理の条件を表す画像処理条件情報がさらに添付されたものであり、
前記画像処理が、設定された階調カーブにしたがって画素値を変換する階調処理であり、
前記2つの画像について、該各画像が画像処理済みであるか否かを、該各画像に添付された前記処理済確認情報に基づいて判別する判別手段と、
前記2つの画像のうち前記判別手段により画像処理済みであると判別された1つまたは2つの画像に添付された前記画像処理条件情報に基づいて、前記階調処理の効果を解除すると同時に前記2つの画像間の差異を求める演算式を、前記画像間演算手段が行う前記画像間演算の演算式として設定する演算式設定手段とを備えたことを特徴とする画像処理装置。 - 前記2つの画像における前記被写体の構造物の画像が略合致するよう、前記2つの画像を位置合せする位置合せ手段をさらに備え、
前記画像間演算手段が、前記位置合せされた2つの画像間で、前記画像間演算を行うものであることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。 - 前記2つの画像が、同一被写体についての撮影時期が異なる画像であることを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。
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